説明

有機ELディスプレイ装置の駆動装置

【課題】ディミング表示時に低輝度の階調を良好な表示品位で表示することができ、フリッカの発生を防止することができる有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【解決手段】 通常表示時には、第1行走査電極から順番に各走査電極を選択する。ディミング表示を行う時には、有機EL素子に流す定電流値を低下させる。そして、奇数行目の走査電極を順次選択し、奇数行目の各走査電極の選択が終了したならば、偶数行目の走査電極を順次選択する。この動作を繰り返す。すなわち、ディミング表示時にはインターレース駆動を行う。ディミング表示時の選択期間は、通常表示時の選択期間よりも長くする。また、その選択期間の上限は、1つのグループを走査する期間を16.7msecとすることによって定めた場合の選択期間の長さとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electroluminescence )ディスプレイ装置の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機薄膜を有する。陰極が陽極よりも高電位となるように両電極間に電圧を印加しても、有機薄膜にはほとんど電流が流れず、有機薄膜は発光しない。逆に、陽極が陰極よりも高電位となるように両極間に所定電圧(発光開始電圧)以上の電圧を印加すると、有機薄膜に電流が流れ、有機薄膜は発光する。この発光を利用した有機ELディスプレイ装置が知られている。
【0003】
有機ELディスプレイ装置では、例えば、複数の走査電極と複数の信号電極とが、有機薄膜を挟んで直交するように配置される。このような有機ELディスプレイ装置では、各走査電極と各信号電極との交差部分が画素として発光する。また、画素はマトリクス状に配置されることになる。この場合、線順次駆動によって、有機ELディスプレイ装置を駆動する。すなわち、各走査電極を順次選択し、選択行の表示データに応じて信号電極から選択された走査電極に電流を流す。
【0004】
線順次駆動による有機ELディスプレイ装置の駆動方法として、例えば、特許文献1,2に記載された駆動方法が知られている。特許文献1に記載された駆動方法では、選択行を切り替える際に、全ての走査電極および全ての信号電極を予め定めたリセット電位に設定し、その後、次の行を選択する。図12は、特許文献1に記載された駆動方法における駆動波形の例を示している。図12(a)に示す実線は第L行の走査電極の駆動波形であり、図12(b)に示す実線はその次の行(第L+1行)の走査電極の駆動波形である。また、図12に示す破線は、1本の信号電極の駆動波形である。図12に示すように、各行は、選択されているときに電位VSSに設定され、他の行が選択されている期間中には電位VCHに設定される。ただし、VSS<VCHの関係が成り立っている。また、発光させるべき画素の信号電極から選択行の走査電極に定電流が流れるように駆動され、その結果、その信号電極の電位は、VSSより高い電位となる。そして、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間では、各走査電極および各信号電極の電位はリセット電位(図12に示す例ではVSS)に設定される。なお、リセット電位は、逆バイアスの電圧印加によって画素に蓄積された電荷を放電させるための電位である。このように駆動することにより、逆バイアスの電圧印加によって画素に蓄積された電荷は放電し、選択期間開始時から画素が発光するまでの立ち上がり時間が短縮化される。逆バイアスとは、信号電極の電位と走査電極の電位との高低関係が、画素を発光させるときとは逆になっていることである。
【0005】
特許文献2に記載された駆動方法では、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、各信号電極の電位はリセット電位に設定される。また、この間、それまで選択されていた走査電極の電位はVCHに設定され、他の各走査電極はリセット電位VSSに設定される。このように駆動することによって、画素が発光するまでの立ち上がり時間を短縮化するとともに有機EL素子の寿命を長くできる。さらに、特許文献2には、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、次に選択する走査電極の電位をVCHに設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位VSSにする駆動方法も記載されている。また、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、それまで選択されていた走査電極および次に選択する走査電極の電位をVCHに設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位VSSに設定する駆動方法も記載されている。
【0006】
また、有機ELディスプレイ装置において中間調表示を行う場合がある。中間調表示方法として、パルス幅変調方式(PWM:Pulse Width Modulation)が知られている。PWMでは、選択期間における画素の発光時間の割合(信号電極から選択行の走査電極に定電流を流す時間の割合)を変化させることで、階調を変化させる。
【0007】
車載用ナビゲーションシステムの表示装置等では、周囲が明るいときに高輝度で画像を表示し、周囲が暗いときには低輝度で画像を表示するように切り替える。このような切り替えにおいて、高輝度での表示を通常表示と記すことにする。また、低輝度での表示をディミング表示と記すことにする。なお、通常表示の場合も、ディミング表示の場合も、それぞれPWMによって中間調表示を行うことができる。
【0008】
ディミング表示に切り替える場合、有機EL素子に流す定電流値を下げればよい。有機EL素子に流す定電流値を低下させることで、有機EL素子の発光輝度が低下してディミング表示が実現される。このような、ディミング表示の実現方法は、例えば、特許文献3や特許文献4に記載されている。
【0009】
また、PWMによって通常表示からディミング表示に切り替えることができる。この場合、有機EL素子に定電流を流す時間を短縮することによってディミング表示に切り替えればよい(例えば、特許文献3参照。)。なお、PWMによって通常表示からディミング表示に切り替える切替方法は、中間調表示の階調数が少ない場合に採用されることが多い。
【0010】
また、特許文献3には、選択期間内で画素を最大階調で表示するために有機EL素子に電流を流す時間がディミング表示時には通常表示時よりも短くなるように駆動する駆動装置が記載されている。
【0011】
また、特許文献4には、ディミング表示に切り替える場合、有機EL素子に流す定電流値を下げるとともに、非選択行の設定電位を通常表示時よりも低下させる駆動装置が記載されている。
【0012】
特許文献1〜4に記載された駆動装置は、いずれも走査電極を順番に選択する。
【0013】
【特許文献1】特開平9−232074号公報(第2−7頁、第1−15図)
【特許文献2】特開2003−295823号公報(第4−9頁、図1−10)
【特許文献3】特開2005−208259号公報(段落0012,0013,0025−0065)
【特許文献4】特開2005−181967号公報(段落0010,0021−0130)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図13は、特許文献1に記載された駆動方法において、有機EL素子に流す定電流値を下げてディミング表示に切り替えた場合の駆動波形の例を示す。図13(a),(b)に示す実線は、図12(a),(b)に示す実線と同様に、それぞれ第L行、第L+1行の走査電極の駆動波形を示している。また、図13に示す破線は、図12に示す破線と同様に、1本の信号電極の駆動波形を示している。ディミング表示時(図13)における信号電極の電位は、通常表示時(図12)における信号電極の電位よりも低くなる。
【0015】
ディミング表示に切り替えた結果、信号電極の電位が低くなると、信号電極電位と選択されていない走査電極の電位VCHとの電位差が大きくなってしまう。この場合、選択期間開始時における信号電極の電位が、本来設定されるべき電位よりも高くなってしまい、その後、本来の電位まで下がっていくという現象が生じる(図13参照。)。この理由について説明する。選択期間の開始直前には、各走査電極および各信号電極はいずれもリセット電位(本例ではVSS)に設定されている。このとき、1本の信号電極と各走査電極との電位差は0Vである。この後、選択期間が開始されると、選択行以外の各走査電極の電位はVCHに設定され、信号電極はVCHよりも低い電位に設定される。しかし、1本の信号電極は、各走査電極とともにキャパシタを形成している状態にあり、選択期間の開始直前における電位差が0Vであったため、信号電極電位は、設定された定電流値で取る電位にならず、VCHに近づくような値になってしまう。従って、信号電極の電位は、選択期間開始時には本来設定されるべき電位より高くなってしまい、その後本来の電位に下がるという現象が生じてしまう。この現象は、選択期間における信号電極の電位と電位VCHとの差が大きいほど、顕著に現れる。
【0016】
このように選択期間中に信号電極の電位が変化すると、PWMによって中間調表示を行う際、良好な階調リニアリティが得られなくなってしまう。すなわち、各階調輝度の変化の仕方が一定にならず、良好な表示品位を保てなくなってしまう。特に、低輝度の階調を表示しようとしても、選択期間開始時に信号電極の電位が一旦上昇してしまうため、所望の輝度より高い輝度になってしまう。
【0017】
このような問題は、PWMによって通常表示からディミング表示に切り替える場合、すなわち、有機EL素子に定電流を流す時間を短縮することによってディミング表示に切り替える場合にも生じる。
【0018】
また、ディスプレイ装置に生じるちらつきや、走査電極のスキャン(走査)の様子が画面に現れてしまうことをフリッカと呼ぶ。フリッカを生じないように有機ELディスプレイ装置を駆動することが好ましい。
【0019】
そこで、本発明は、ディミング表示時に低輝度の階調を良好な表示品位で表示することができ、また、フリッカの発生を防止することができる有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の態様1は、複数の走査電極と複数の信号電極との間に有機薄膜が配置された有機ELディスプレイ装置の駆動装置であって、走査電極を選択する走査電極ドライバと、信号電極から有機薄膜に定電流を流す信号電極ドライバと、走査電極ドライバおよび信号電極ドライバを制御する制御部とを備え、制御部が、第1の表示態様または第1の表示態様よりも低い輝度で画像を表示する第2の表示態様を走査電極ドライバおよび信号電極ドライバに指示し、第2の表示態様を指示しているときの走査電極の選択期間が、第1の表示態様を指示しているときの走査電極の選択期間よりも長くなるように走査電極ドライバを制御し、走査電極ドライバが、第1の表示態様が指示されているときに、各走査電極を順番に選択し、第2の表示態様が指示されているときに、予め定められた走査電極の各グループ毎に順番に、グループに属する各走査電極を順番に選択することを特徴とする有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【0021】
本発明の態様2は、態様1において、走査電極ドライバが、第2の表示態様が指示されているときに、奇数行目の走査電極のグループに属する各走査電極を順番に選択することと、偶数行目の走査電極のグループに属する各走査電極を順番に選択することとを繰り返す有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【0022】
本発明の態様3は、態様1,2のいずれかにおいて、信号電極ドライバが、第1の表示態様が指示されているときに、第1の定電流を流し、第2の表示態様が指示されているときに、第1の定電流よりも電流値が低い第2の定電流を流し、走査電極ドライバが、第1の表示態様が指示されているときに、選択した走査電極を選択時電位に設定し、選択していない走査電極を第1の非選択時電位に設定し、第2の表示態様が指示されているときに、選択した走査電極を選択時電位に設定し、選択していない走査電極を第1の非選択時電位よりも低い第2の非選択時電位に設定する有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【0023】
本発明の態様4は、態様1,2,3のうちのいずれかにおいて、走査電極ドライバと、信号電極ドライバと、制御部とを含むICを備えた有機ELディスプレイ装置の駆動装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第2の表示態様(ディミング表示)のときに低輝度の階調を良好な表示品位で表示することができ、また、フリッカの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、電位および電圧の単位は、特に単位を記さない限り、V(ボルト)であるものとする。
【0026】
[実施の形態1]図1は、本発明の第1の実施の形態の有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図である。なお、以下の説明では、有機EL素子に流す定電流値を低下させることでディミング表示を実現する場合を例にして説明する。
【0027】
有機ELディスプレイ装置(以下、表示パネルと記す。)1は、複数の走査電極(図示略。)と複数の信号電極(図示略。)とを備える。各走査電極と各信号電極とは、有機薄膜を挟んで直交するように配置される。各走査電極と各信号電極との交差部分がそれぞれ画素となる。各画素において、信号電極側から走査電極側に電流が流れることにより、その画素の有機薄膜が発光する。この表示パネル1は、駆動装置(コントローラ2等を含む駆動装置)に従って、通常表示(第1の表示態様)とディミング表示(第2の表示態様)の双方を行う。また、通常表示時とディミング表示時それぞれにおいて、PWMによる中間調表示を行う。
【0028】
以下の説明において、通常表示時に発光画素に流れる定電流を第1の定電流と記す。また、ディミング表示時において発光画素に流れる定電流を第2の定電流と記す。
【0029】
また、以下の説明において、選択時電位は、選択期間中に選択した走査電極に対して設定する電位である。非選択時電位は、ある走査電極の選択期間中、選択されていない各走査電極に対して設定する電位である。
【0030】
駆動装置は、駆動IC10と、電源回路5とを備え、駆動IC10は、コントローラ(制御部)2と、走査電極ドライバ部(走査電極ドライバ)3と、信号電極ドライバ部(信号電極ドライバ)4とを含んでいる。また、コントローラ2は、表示される画像のデータを記憶するメモリ2を含んでいる。コントローラ2は、走査電極ドライバ部3と、信号電極ドライバ部4とを制御することにより、表示パネル1に画像を表示させる。
【0031】
また、駆動IC10に含まれるコントローラ2には、外部MPU(Micro Processing Unit)6が接続される。外部MPU6は、コントローラ2に対して、コントローラ2内部のレジスタ設定(レジスタの記憶内容)を指示する信号や、メモリ2に記憶させる表示データを送信する。外部MPU6がコントローラ2に送信する信号には、通常表示あるいはディミング表示を指示する信号が含まれる。また、外部MPU6は、コントローラ2に表示データを送信して、コントローラ2内部のメモリ2に記憶される表示データを書き換える。図1では、外部MPU6からコントローラ2に送信する信号およびデータをまとめてI/F信号と表記して示している。
【0032】
表示データは、個々の画素に対応させて、最高輝度から最低輝度までの各階調のうちのいずれかを示すデータを含んでいる。このように、表示データは、中間調を示す画素のデータを含んでいる。なお、通常表示とディミング表示とを切り替える場合であっても、表示内容を変化させないのであれば、外部MPU6は表示データを変化させない。ただし、この場合、表示内容は変化しないが、表示される画像の輝度は変化する。
【0033】
コントローラ2は、通常表示を行うのかディミング表示を行うのかを示す情報を記憶するレジスタを備え、そのレジスタに記憶されている情報に応じて、通常表示を行うのか、ディミング表示を行うのかを決定し、後述する切替制御信号を出力する。また、コントローラ2は、このレジスタの記憶内容を、外部MPU6からの指示(信号)によって変更する。
【0034】
また、走査電極は、予めグループ分けされている。走査電極をp個のグループに分ける場合には、個々の走査電極の行の順番を示す値がp×n−(p−1)、p×n−(p−2)、・・・、p×nのいずれに合致するのかに応じて、走査電極の行の順番を示す値がp×n−(p−1)のグループ、p×n−(p−2)のグループ、・・・、p×nのグループに分ければよい。ここで、nは1以上の整数である。例えば、走査電極を2個のグループに分けるとする。この場合、p=2である。すると、各走査電極は、走査電極の行の順番を示す値が2×n−1のグループ(すなわち、奇数行目の走査電極のグループ)と、走査電極の行の順番を示す値が2×nのグループ(すなわち、偶数行目の走査電極のグループ)とに分けられる。ここでは、p=2の場合を示したが、pは3以上であってもよい。以下、説明を簡単にするため、上述のように走査電極を奇数行目の走査電極のグループと、偶数行目の走査電極のグループとに分ける場合を例にして説明する。
【0035】
コントローラ2は、通常表示時には、各走査電極を1行目から順番に選択していくように走査電極ドライバ部3を制御する。また、コントローラ2は、ディミング表示時には、1つのグループに属する各走査電極を1本ずつ選択し、そのグループに属する各走査電極の選択が全て終わった後、他のグループに属する各走査電極を1本ずつ選択していくことを繰り返すように、走査電極ドライバ部3を制御する。そして、全てのグループの走査電極を選択した後、再度、最初のグループの走査電極から同様に選択していくように走査電極ドライバ部3を制御する。すなわち、各グループ毎に順番に、グループに属する各走査電極を順番に選択するように走査電極ドライバ部3を制御する。本例では、コントローラ2は、奇数行目の走査電極を1本ずつ選択し、奇数行目の各走査電極の選択が全て終わった後、偶数行目の走査電極を1本ずつ選択するように走査電極ドライバ部3を制御する。そして、偶数行目の各走査電極の選択が終了した後、再度、奇数行目の走査電極を1本ずつ選択することを繰り返すように、走査電極ドライバ部3を制御する。このように、本例では(p=2の場合では)、ディミング表示時にインターレース駆動を行う。
【0036】
また、コントローラ2は、ディミング表示時における走査電極の選択期間が通常表示時における走査電極の選択期間よりも長くなるように制御する。
【0037】
PWMにより中間調表示を行う場合、最大輝度の表示を行うために電流を流す時間を等分に分割し、有機EL素子を発光させる場合には、輝度に応じて、その等分に分割した時間の一部または全部で有機EL素子に電流を流す。なお、最大輝度の表示を行うために電流を流す時間は、例えば、選択期間であるが、選択期間より短い期間であることもある。ディミング表示時における選択期間を通常表示時よりも長くすることで、この分割された個々の時間の長さも長くなる。その結果、図13に示すような選択期間開始時における信号電極の電位上昇の影響が少なくなる。すなわち、階調リニアリティが向上し、低輝度の階調も低い輝度で良好に発光させることができるようになる。特に、コントローラ2は、ディミング表示時における走査電極の選択期間が通常表示時における走査電極の選択期間の1.5倍以上になるように制御することが好ましい。
【0038】
ディミング表示時における選択期間を通常表示時よりも長くすることで、階調リニアリティが向上し、低輝度の階調も低い輝度で良好に表示できるようになる。しかし、選択期間が長すぎると、フリッカが発生する。そのため、ディミング表示時における選択期間の上限は、1つのグループを走査する期間を16.7msecとすることによって定めた場合の選択期間とする。
【0039】
走査電極ドライバ部3は、コントローラ2に従って、個々の走査電極を1本ずつ選択し、選択行および非選択行の走査電極の電位をそれぞれ設定する。そして、各走査電極を選択しながら走査電極を走査していく。各走査電極の電位を設定するための電圧は、電源回路5から供給される。走査電極ドライバ部3は、選択行の走査電極を選択時電位(VSSとする。)に設定する。また、ある走査電極の選択期間中、他の各走査電極の電位を非選択時電位(VCHとする。)に設定する。
【0040】
信号電極ドライバ部4は、コントローラ2および選択行の表示データに従って、選択期間中、発光させるべき画素が存在する信号電極から選択行走査電極に定電流を流す。すなわち、信号電極ドライバ部4は、発光させるべき画素が存在する信号電極から選択されている走査電極上の有機薄膜に定電流を流す。ただし、信号電極ドライバ部4は、コントローラ2に従って定電流値を切り替える。コントローラ2が通常表示を指示している場合、信号電極ドライバ部4は第1の定電流を流す。また、コントローラ2がディミング表示を指示している場合、信号電極ドライバ部4は第2の定電流を流す。第2の定電流量は、第1の定電流量よりも少ない。
【0041】
また、信号電極ドライバ部4は、表示データに基づいて画素に定電流を流す時間を調整することにより中間調表示を行う。信号電極ドライバ部4は、有機EL素子を発光させる場合には、輝度に応じて、等分に分割された時間(最大輝度の表示を行うために電流を流す時間が等分に分割された時間)の一部または全部において有機EL素子に電流を流す。有機EL素子を発光させない場合(すなわち最低階調の場合)、信号電極ドライバ部4は、選択期間中、有機EL素子に定電流を流さなければよい。
【0042】
電源回路5は、走査電極ドライバ部3に電圧VSSと電圧VCHとを供給する。また、信号電極ドライバ部4に、電圧VSSと、信号電極ドライバ用電源電圧VSHとを供給する。なお、電圧VSHは、信号電極ドライバ部4が備える定電流回路を駆動するための電圧である。従って、各信号電極の電位はVSHとして設定されるわけではない。
【0043】
図2は、コントローラ2が信号電極ドライバ部4に出力する制御信号を示す説明図である。コントローラ2は、1行分の表示データの中から各列のデータを順次取得するタイミングを規定するCP(データ転送用クロックパルス)と、選択する走査電極の切り換えを示すLP(ラッチパルス)とを信号電極ドライバ部4に出力する。また、コントローラ2は、信号電極ドライバ部4に1行分の表示データ(Data)を取り込ませる。LPの立ち下がり(ローレベルになるタイミング)からLPの立ち上がり(ハイレベルになるタイミング)までが選択期間となる。ただし、既に説明したように、ディミング表示時と通常表示時とでは選択期間の長さは異なり、ディミング表示時の方が選択期間は長くなる。コントローラ2は、次の選択期間に選択される走査電極の行を指定して、メモリにその行の表示データをデータ出力領域にコピーさせる。また、コントローラ2は、選択期間中、信号電極の数と同数のパルス信号としてCPを信号電極ドライバ部4に出力する。信号電極ドライバ部4は、CPの立ち下がりタイミング毎に、データ出力領域にコピーされた1行分の表示データ(Data)から各画素のデータを1つずつ取得する。この表示データは、次の選択期間に選択される走査電極の行の表示データである。
【0044】
ただし、「次の選択期間に選択される走査電極」は、通常表示時とディミング表示時とで異なる。通常表示時における「次の選択期間に選択される走査電極」は、現在選択している走査電極の次の走査電極である。ディミング表示時における「次の選択期間に選択される走査電極」は、原則として、現在選択している走査電極と同じグループに属する次の走査電極である。例えば、現在選択している走査電極が奇数行の走査電極であれば、その次の奇数行の走査電極が「次の選択期間に選択される走査電極」に該当する。ただし、現在選択している走査電極が奇数行の走査電極のうち最後の走査電極であれば、偶数行の走査電極のうちの最初の走査電極(すなわち、第2行走査電極)が「次の選択期間に選択される走査電極」に該当する。現在選択している走査電極が偶数行の走査電極の場合も同様である。
【0045】
信号電極ドライバ部4は、選択期間が終了すると、その選択期間内に取得した1行分の表示データに基づいて、次の選択期間中に発光させるべき画素が存在する信号電極を判定するとともに、どの階調で表示するのかを判定する。また、信号電極ドライバ部4は、LPがハイレベルになっている間(すなわち、選択期間終了時から次の選択期間の開始までの間)、各信号電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
【0046】
信号電極ドライバ部4は、次の選択期間が開始されると、発光させるべき画素が存在する信号電極に定電流を流す。また、各信号電極において、階調に応じた時間が経過したときに、定電流を停止する。そして、信号電極ドライバ部4は、定電流を流していた信号電極の電位をVSSに設定する。
【0047】
また、図1に示すように、コントローラ2は信号電極ドライバ部4に切替制御信号(通常表示かディミング表示かを指示する制御信号)も出力する。コントローラ2は、切替制御信号を出力して、信号電極ドライバ部4が流す定電流の切り替えを制御する。信号電極ドライバ部4は、切替制御信号によって通常表示を指示されている場合、定電流として第1の定電流を流す。一方、切替制御信号によってディミング表示を指示されている場合、定電流として第2の定電流を流す。
【0048】
図3は、コントローラ2が走査電極ドライバ部3に出力する制御信号を示す説明図である。コントローラ2は、LPと、FLM(ファーストラインマーカ)とを走査電極ドライバ部3に出力する。また、コントローラ2は、LPおよびFLMの他に、切替制御信号(通常表示かディミング表示かを指示する制御信号)と、グループ指示信号も走査電極ドライバ部3に出力する。グループ指示信号は、走査対象とする走査電極のグループを指示する制御信号である。本例では、奇数行の走査電極を走査するのか、あるいは偶数行の走査電極を走査するのかを指示する。通常表示時に出力されるFLMは、第1行から各走査電極を順次選択していくことを指示する制御信号である。また、ディミング表示時に出力されるFLMは、1つのグループ(グループ指示信号から定まるグループ)に属する各走査電極を、そのグループにおける最初の走査電極から順次選択していくことを指示する制御信号である。本例では、ディミング表示時に出力されるFLMは、第1行走査電極から順次奇数行の走査電極を選択していくこと、あるいは、第2行走査電極から順次偶数行の走査電極を選択していくことを指示する。走査電極ドライバ部3は、FLMがハイレベルになると、通常表示時にはLPに応じて第1行から各走査電極を順次選択していく。また、ディミング表示時には、LPに応じて、グループ指示信号によって定まるグループの最初の走査電極から、そのグループの各走査電極を順次選択していく。走査電極ドライバ部3は、LPがハイレベルになっている間(すなわち、選択期間終了時から次の選択期間の開始までの間)、各走査電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
【0049】
既に説明したように、LPの立ち下がり(ローレベルになるタイミング)からLPの立ち上がり(ハイレベルになるタイミング)までが選択期間である。従って、コントローラ2は、ディミング表示時には、LPの立ち下がりからLPの立ち上がりまでの期間を、通常表示よりも長くすればよい。特に、ディミング表示時には、LPの立ち下がりからLPの立ち上がりまでの期間が、通常表示時の1.5倍以上であることが好ましい。さらに、LPの立ち下がりからLPの立ち上がりまでの期間の上限は、1つのグループを走査する期間を16.7msecとすることによって決まる選択期間の長さとすることが好ましい。
【0050】
コントローラ2は、例えば、通常表示時であってもディミング表示時であっても、同一の周期でFLMを出力してもよい。この場合、通常表示時には、FLMがハイレベルになってから、次にFLMがハイレベルになるまでの間に、全走査電極が走査される。一方、ディミング表示時には、p=2の場合、FLMがハイレベルになってから、次にFLMがハイレベルになるまでの間に、奇数行目の走査電極(あるいは偶数行目の走査電極)のみが走査される。従って、同一の周期でFLMを出力する(同一の周期でFLMをハイレベルにする)場合、ディミング表示時における選択期間は、通常表示時における選択期間のほぼ2倍になる。
【0051】
図4、図5および図6は、本実施の形態における駆動波形の例を示す説明図である。図4は、通常表示時における駆動波形の例を示している。図5は、ディミング表示時において奇数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示している。図6は、ディミング表示時において偶数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示している。以下の説明では、切替制御信号が、通常表示を指示するときにはローレベルの信号として出力され、ディミング表示を指示するときにはハイレベルの信号として出力される場合を例にして説明する。また、グループ指示信号が、奇数行の走査電極のグループを指示するときにはハイレベルの信号として出力され、偶数行の走査電極のグループを指示するときにはローレベルの信号として出力される場合を例にして説明する。
【0052】
まず、図4を参照して、通常表示時におけるコントローラ2、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4の動作について説明する。コントローラ2は、切替制御信号として通常表示を指示する信号(本例ではローレベル)を出力する。
【0053】
走査電極ドライバ部3は、切替制御信号がローレベルになっている場合には、コントローラ2から入力されるグループ指示信号のレベルによらず、第1行の走査電極から各走査電極を順次走査する。
【0054】
コントローラ2は、第1行から各走査電極を順次走査することを指示する場合、FLMをローレベルからハイレベルにする。そして、FLMがハイレベルになっている間にLPをハイレベルに立ち上げ、続いてLPをローレベルに戻す。FLMがハイレベルになっているときにLPがローレベルからハイレベルに変化すると、走査電極ドライバ部3は、そのタイミングで最終行の選択期間を終了する。また、FLMがハイレベルになっているときにLPがハイレベルからローレベルに変化すると、走査電極ドライバ部3は、そのタイミングから第1行の選択期間を開始する。コントローラ2は、第1行の選択期間中にFLMをハイレベルからローレベルにする。
【0055】
走査電極ドライバ部3は、FLMがハイレベルになっている間にLPがハイレベルからローレベルに変化すると、そのタイミングで、第1行走査電極の電位を選択時電位VSSに設定し、他の各走査電極の電位を非選択時電位VCHに設定する。また、信号電極ドライバ部4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第1行走査電極に定電流を流す。このとき、通常表示が指示されているので、信号電極ドライバ部4は第1の定電流を流す。このときの信号電極の電位をVs1とする。また、他の各信号電極の電位をVSSに設定することにより、他の各信号電極から第1行走査電極に電流が流れないようにする。この結果、第1の定電流が流された信号電極と第1行走査電極との交差部分の有機薄膜が発光する。なお、発光開始電圧をVとした場合、Vs1−V<VCHを満足するように、VCHを定めておく。このように非選択時電位VCHを定めておくことで、信号電極から非選択行の走査電極に電流が流れることを防止できる。
【0056】
第1行の選択期間の間、信号電極ドライバ部4は、次に選択される第2行の表示データをメモリ2から取得する。
【0057】
コントローラ2がLPをハイレベルに立ち上げると、第1行の選択期間が終了する。LPがハイレベルになっている間、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4は、それぞれ各走査電極、各信号電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
【0058】
コントローラ2がLPをハイレベルからローレベルに変化させると、走査電極ドライバ部3は、そのタイミングで、第2行走査電極の電位を選択時電位VSSに設定し、他の各走査電極の電位を非選択時電位VCHに設定する。また、信号電極ドライバ部4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第2行走査電極に定電流を流す。このとき、通常表示が指示されているので、信号電極ドライバ部4は第1の定電流を流す。以降、コントローラ2、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4は、同様の動作を繰り返す。
【0059】
なお、図4に示す例において、各信号電極に定電流が流される時間は、選択期間よりも短くなっている。このことは、中間調表示を行っていることを意味している。
【0060】
次に、図5および図6を参照して、ディミング表示時におけるコントローラ2、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4の動作について説明する。コントローラ2は、切替制御信号としてディミング表示を指示する信号(本例ではハイレベル)を出力する。
【0061】
コントローラ2は、切替制御信号をハイレベルにして出力している場合、FLMをハイレベルにして、LPを立ち上げるタイミング時に、グループ指示信号のレベルを切り替える。すなわち、奇数行の走査電極のグループ指示と、偶数行の走査電極のグループ指示とを切り替える。走査電極ドライバ部3は、切替制御信号がハイレベルになっていて、グループ指示信号がハイレベルならば、奇数行の各走査電極を第1行走査電極から順に選択していく。また、切替制御信号がハイレベルになっていて、グループ指示信号がローレベルならば、偶数行の各走査電極を第2行走査電極から順に選択していく。
【0062】
図5を参照して、ディミング表示時に奇数行の各走査電極を順に選択する動作を説明する。コントローラ2は、奇数行の各走査電極を第1行走査電極から順に選択していくことを指示する場合、FLMをローレベルからハイレベルにする。FLMがハイレベルになっている間にLPをハイレベルに立ち上げ、続いてLPをローレベルに戻す。ここで、LPをハイレベルに立ち上げるときに、コントローラ2は、グループ指示信号をローレベル(本例では偶数行のグループ指示)から、ハイレベル(本例では奇数行のグループ指示)に切り替える。
【0063】
FLMがハイレベルになっているときにLPがローレベルからハイレベルに変化すると、走査電極ドライバ部3は、そのタイミングで、偶数行の走査電極のグループの最後の走査電極の選択期間を終了する。また、FLMがハイレベルになっているときにLPがハイレベルからローレベルに変化すると、このときのグループ指示信号はハイレベルであるので、走査電極ドライバ部3は、奇数行の走査電極のグループの最初の走査電極(すなわち第1行走査電極)の選択期間を開始する。コントローラ2は、この選択期間中にFLMをハイレベルからローレベルにする。
【0064】
走査電極ドライバ部3は、FLMがハイレベルになっている間にLPがハイレベルからローレベルに変化すると、そのタイミングで、第1行走査電極の電位を選択時電位VSSに設定し、他の各走査電極の電位を非選択時電位VCHに設定する。また、信号電極ドライバ部4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第1行走査電極に定電流を流す。このとき、ディミング表示が指示されているので、信号電極ドライバ部4は第2の定電流を流す。このときの信号電極の電位をVs2とする。また、他の各信号電極の電位をVSSに設定することにより、他の各信号電極から第1行走査電極に電流が流れないようにする。この結果、第2の定電流が流された信号電極と第1行走査電極との交差部分の有機薄膜が発光する。第2の定電流値は第1の定電流値より低いので、通常表示時よりも有機薄膜の発光輝度は低くなり、ディミング表示が実現される。
【0065】
第1行の選択期間の間、信号電極ドライバ部4は、次に選択される奇数行(ここでは第3行)の表示データをメモリ2から取得する。
【0066】
コントローラ2がLPをハイレベルに立ち上げると、第1行の選択期間が終了する。既に説明したように、コントローラ2は、ディミング表示時における選択期間を、通常表示時における選択期間よりも長くする。特に、通常表示時における選択期間の1.5倍以上にすることが好ましい。ただし、コントローラ2は、ディミング表示時における選択期間が、1つのグループを走査する期間を16.7msecとすることによって定めた場合の選択期間の長さ以下になるようにする。図4、図5および図6では、コントローラ2が同一周期でFLMを出力して(同一周期でFLMをハイレベルにして)、ディミング表示時における選択期間が通常表示時における選択期間のほぼ2倍になるようにしている場合を例に示している。
【0067】
LPがハイレベルになっている間、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4は、それぞれ各走査電極、各信号電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
【0068】
コントローラ2がLPをハイレベルからローレベルに変化させると、走査電極ドライバ部3は、そのタイミングで、次の奇数行の走査電極(ここでは第3行走査電極)の電位を選択時電位VSSに設定し、他の各走査電極の電位を非選択時電位VCHに設定する。また、信号電極ドライバ部4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第3行走査電極に定電流を流す。このとき、ディミング表示が指示されているので、信号電極ドライバ部4は第2の定電流を流す。以降、コントローラ2、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4は、奇数行の走査電極のグループの最後の走査電極の選択期間終了まで同様の動作を繰り返す。その後、コントローラ2は、以下に図6を参照して説明するように、走査電極ドライバ部3が偶数行の各走査電極を第2行走査電極から順に選択していくように制御する。
【0069】
図6を参照して、ディミング表示時に偶数行の各走査電極を順に選択する動作を説明する。コントローラ2は、偶数行の各走査電極を第2行走査電極から順に選択していくことを指示する場合、FLMをローレベルからハイレベルにする。FLMがハイレベルになっている間にLPをハイレベルに立ち上げ、続いてLPをローレベルに戻す。ここで、LPをハイレベルに立ち上げるときに、コントローラ2は、グループ指示信号をハイレベル(本例では奇数行のグループ指示)からローレベル(本例では偶数行のグループ指示)に切り替える。
【0070】
FLMがハイレベルになっているときにLPがローレベルからハイレベルに変化すると、走査電極ドライバ部3は、そのタイミングで、奇数行の走査電極のグループの最後の走査電極の選択期間を終了する。また、FLMがハイレベルになっているときにLPがハイレベルからローレベルに変化すると、このときのグループ指示信号はローレベルであるので、走査電極ドライバ部3は、偶数行の走査電極のグループの最初の走査電極(すなわち第2行走査電極)の選択期間を開始する。コントローラ2は、この選択期間中にFLMをハイレベルからローレベルにする。
【0071】
走査電極ドライバ部3は、FLMがハイレベルになっている間にLPがハイレベルからローレベルに変化すると、そのタイミングで、第2行走査電極の電位を選択時電位VSSに設定し、他の各走査電極の電位を非選択時電位VCHに設定する。また、信号電極ドライバ部4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第2行走査電極に定電流を流す。このとき、ディミング表示が指示されているので、信号電極ドライバ部4は第2の定電流を流す。このときの信号電極の電位はVs2である。また、他の各信号電極の電位をVSSに設定することにより、他の各信号電極から第2行走査電極に電流が流れないようにする。この結果、第2の定電流が流された信号電極と第2行走査電極との交差部分の有機薄膜が発光する。
【0072】
第2行の選択期間の間、信号電極ドライバ部4は、次に選択される偶数行(ここでは第4行)の表示データをメモリ2から取得する。
【0073】
コントローラ2がLPをハイレベルに立ち上げると、第2行の選択期間が終了する。この選択期間は、通常表示時における選択期間よりも長い。
【0074】
LPがハイレベルになっている間、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4は、それぞれ各走査電極、各信号電極の電位をリセット電位VSSに設定する。
【0075】
コントローラ2がLPをハイレベルからローレベルに変化させると、走査電極ドライバ部3は、そのタイミングで、次の偶数行の走査電極(ここでは第4行走査電極)の電位を選択時電位VSSに設定し、他の各走査電極の電位を非選択時電位VCHに設定する。また、信号電極ドライバ部4は、直前の選択期間において取得した表示データに基づいて、発光させるべき画素が存在する信号電極から第4行走査電極に定電流を流す。このとき、ディミング表示が指示されているので、信号電極ドライバ部4は第2の定電流を流す。以降、コントローラ2、走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4は、偶数行の走査電極のグループの最後の走査電極の選択期間終了まで同様の動作を繰り返す。その後、コントローラ2は、図5を参照して説明したように、走査電極ドライバ部3が奇数行の各走査電極を第1行走査電極から順に選択していくように制御する。
【0076】
このようにして、本例では、コントローラ2は、ディミング表示時にインターレース駆動を行う。
【0077】
なお、図5および図6に示す例において、各信号電極に定電流が流される時間は、選択期間よりも短くなっている。このことは、中間調表示を行っていることを意味している。また、図5および図6に示す例において、各信号電極に定電流が流される時間は、通常表示時よりも長くなっている。これは、選択期間が長くなったことにより、最大輝度の表示を行うために電流を流す時間が等分に分割された時間も長くなったためである。この等分に分割された時間が長くなったため、選択期間開始時における信号電極の電位上昇の影響が少なくなり、低輝度の階調も低い輝度で良好に発光させることができるようになる。
【0078】
また、ディミング表示時においても走査電極の選択期間の上限は、1つのグループを走査する期間を16.7msecとすることによって定めた場合の選択期間の長さである。従って、フリッカの発生を防止できる。
【0079】
図7は、ディミング表示時における偶数行選択時および奇数行選択時の信号電極電位の変化を示す模式図である。図7において、実線は走査電極の駆動波形を示し、破線は信号電極の駆動波形を示している。本発明では、例えば、図7に模式的に示すように、奇数行目のグループおよび偶数行目のグループのようにグループに分類して、グループ毎に走査電極を選択していく。すなわち、ディミング表示時には隣接する走査電極を連続して選択しないようにして、選択される走査電極が空間的に分散されるようにしている。選択期間が長くなると、走査電極の走査の様子が見えてしまうことがある(すなわち、フリッカが生じることがある)。しかし、上述のように走査電極をグループに分類して、グループ毎に走査電極を選択することで、選択期間が長くなってもフリッカの発生を防止することができる。
【0080】
また、駆動IC10が、コントローラ2と、走査電極ドライバ部3と、信号電極ドライバ部4とを含む構成であるので、外部MPU6は、駆動ICに対して、通常表示あるいはディミング表示を指示する信号を送信すれば、通常表示とディミング表示との切り替えを行うことができる。
【0081】
なお、駆動IC10がコントローラ2と、走査電極ドライバ部3と、信号電極ドライバ部4とを含む構成とするのではなく、コントローラ2、走査電極ドライバ部3、および信号電極ドライバ部4を、それぞれ別個の回路として備えていてもよい。
【0082】
なお、走査電極全体の本数が奇数の場合、奇数行目の走査電極の本数は、偶数行目の走査電極の本数よりも1多くなる。この場合、FLMをハイレベルにする周期が一定になるように、偶数行目の各走査電極を選択した後にダミー期間を設ければよい。
【0083】
また、第1の実施の形態では、有機EL素子に流す定電流値を低下させることでディミング表示を実現する場合を例にして説明したが、有機EL素子に定電流を流す時間を短縮することによってディミング表示を実現してもよい。すなわち、PWMによって通常表示からディミング表示に切り替えてもよい。
【0084】
[実施の形態2]図8は、本発明の第2の実施の形態の有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図である。第2の実施の形態では、有機EL素子に流す定電流値を低下させることでディミング表示を行うことを前提とする。また本実施の形態では、走査電極の非選択時電位を、通常表示時とディミング表示時とで切り替える。通常表示時における非選択時電位をVCH1とし、ディミング表示時における非選択時電位をVCH2とする。ただし、VCH2<VCH1である。
【0085】
図8では、第1の実施の形態と同様の構成要素については、図1と同一の符号を付している。表示パネル1、信号電極ドライバ部4、外部MPU6は、それぞれ第1の実施の形態における表示パネル1、信号電極ドライバ部4、外部MPU6と同様である。
【0086】
第2の実施の形態では、コントローラ2は、切替制御信号(通常表示かディミング表示かを指示する制御信号)を走査電極ドライバ部3および信号電極ドライバ部4だけでなく、電源回路5に対しても出力する。コントローラ2の他の動作は第1の実施の形態と同様である。
【0087】
電源回路5は、第1の実施の形態と同様に、走査電極ドライバ部3に電圧VSSを供給し、信号電極ドライバ部4に、電圧VSSと、信号電極ドライバ用電源電圧VSHとを供給する。ただし、第2の実施の形態では、電源回路5は、走査電極ドライバ部3に対して、電圧VCH1と電圧VCH2との切り替えを行って電圧VCH1または電圧VCH2供給する。
【0088】
電源回路5は、通常表示時(切替制御信号が通常表示を指示している場合)には、走査電極ドライバ部3に電圧VCH1を出力する。また、ディミング表示時(切替制御信号がディミング表示を指示している場合)には、走査電極ドライバ部3に電圧VCH2を出力する。このように、電源回路5は、出力電圧VCH1およびVCH2の切り替えを、コントローラ2が出力する切替制御信号に従って行う。
【0089】
図9は、電源回路5における電圧VCH1およびVCH2の出力部の構成例を示すブロック図である。電源回路5は、電源電圧を分圧する抵抗11〜13と、演算増幅器(以下、オペアンプと記す。)14,15と、スイッチ16とを備える。抵抗11は、電源電圧に接続され、抵抗13は接地される。抵抗12は、抵抗11と抵抗13との間に配置される。分圧によって抵抗11,12間に生じた電圧VCH1inは、ボルテージフォロワ接続されたオペアンプ14の非反転入力端子に入力される。同様に、分圧によって抵抗12,13間に生じた電圧VCH2inは、ボルテージフォロワ接続されたオペアンプ15の非反転入力端子に入力される。オペアンプ14,15は、それぞれ電圧VCH1,VCH2を出力する。分圧で得られた電圧VCH1in,VCH2inは、それぞれ電圧VCH1,VCH2と等しい。
【0090】
スイッチ16は、コントローラ2(図9において図示せず。)が出力する切替制御信号に応じて、走査電極ドライバ部3に接続される配線17を、オペアンプ14の出力端またはオペアンプ15の出力端に接続させる。切替制御信号が通常表示を指示している場合、スイッチ16は、配線17をオペアンプ14の出力端に接続させる。この結果、電源回路5から走査電極ドライバ部3に電圧VCH1が出力される。一方、切替制御信号がディミング表示を指示している場合、スイッチ16は、配線17をオペアンプ15の出力端に接続させる。この結果、電源回路5から走査電極ドライバ部3に電圧VCH2が出力される。
【0091】
このように、電源回路5は、通常表示時には非選択時電位VCH1を出力し、ディミング表示時にはVCH1よりも低い非選択時電位VCH2を出力する。
【0092】
走査電極ドライバ部3は、電源回路5からの電圧出力に応じて、通常表示時には、選択されていない走査電極の電位を非選択時電位VCH1に設定し、ディミング表示時には、選択されていない走査電極の電位を非選択時電位VCH2に設定する。走査電極ドライバ部3の他の動作は第1の実施の形態と同様である。
【0093】
第2の実施の形態における通常表示時の駆動波形は、第1の実施の形態における通常表示時の駆動波形(図4参照。)と同様である。なお、本実施の形態における選択時電位VCH1は、図4に示す非選択時電位VCHに相当する。
【0094】
図10は、ディミング表示時において奇数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示す。第1の実施の形態で示した図5と比較すると、非選択時電位が通常表示時よりも低いVCH2に設定される点で異なる。その他の点に関しては、第1の実施の形態における駆動波形(図5参照。)と同様である。
【0095】
図11は、ディミング表示時において偶数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示す。第1の実施の形態で示した図6と比較すると、非選択時電位が通常表示時よりも低いVCH2に設定される点で異なる。その他の点に関しては、第1の実施の形態における駆動波形(図6参照。)と同様である。
【0096】
第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。第2の実施の形態では、ディミング表示時に非選択時電位を通常表示時よりも低下させるので、選択期間開始時における信号電極電位の上昇量が少なくなる。その結果、より階調リニアリティを向上させ、低輝度の階調も低い輝度でより良好に発光させることができる。
【0097】
上述の各実施の形態では、奇数行目の走査電極のグループと偶数行目の走査電極とのグループに分けて、ディミング表示時に、各グループ毎に走査電極を選択する場合を示した。走査電極のグループ分けでは、グループ数を3以上(p≧3)としてもよい。この場合、3つ以上のグループをそれぞれ指定できるように、各グループをそれぞれ識別可能なビット数の情報をグループ指示信号とすればよい。例えば、走査電極のグループ数が3つであるならば、2ビットの情報で各グループを識別できる。コントローラ2は、第1グループ、第2グループ、第3グループをそれぞれ指定する場合、例えば、2ビットの“01”,“10”,“11”という情報をグループ指示信号として出力すればよい。
【0098】
また、各グループの走査電極の数が同一でなく、FLMをハイレベルにする周期が一定になるようにするときには、走査電極数の少ないグループの各走査電極を選択した後にダミー期間を設ければよい。ダミー期間を設けることで、FLMをハイレベルにする周期を一定にすることができる。
【0099】
また、上記の各実施の形態では、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、各信号電極電位および各走査電極電位をリセット電位に設定する場合を例に説明した。特許文献2に記載されている駆動方法のように、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、それまで選択していた走査電極の電位を非選択時電位に設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位に設定してもよい。あるいは、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、次に選択する走査電極の電位を非選択時電位に設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位に設定してもよい。また、あるいは、選択期間終了時から次の選択期間開始時までの間、それまで選択していた走査電極および次に選択する走査電極の電位を非選択時電位に設定し、他の各走査電極の電位をリセット電位に設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、有機ELディスプレイ装置に高輝度での画像表示および低輝度での画像表示を行わせる場合に適用可能である。例えば、周囲が明るいときに高輝度で画像を表示し、周囲が暗いときには低輝度で画像を表示する車載用ナビゲーションシステムの表示装置等の駆動装置として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施の形態の有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図。
【図2】コントローラが信号電極ドライバ部に出力する制御信号を示す説明図。
【図3】コントローラが走査電極ドライバ部に出力する制御信号を示す説明図。
【図4】通常表示時における駆動波形の例を示す説明図。
【図5】ディミング表示時において奇数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示す説明図。
【図6】ディミング表示時において偶数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示す説明図。
【図7】ディミング表示時における偶数行選択時および奇数行選択時の信号電極電位の変化を示す模式図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の有機ELディスプレイ装置の駆動装置の例を示すブロック図。
【図9】電源回路における電圧VCH1およびVCH2の出力部の構成例を示すブロック図。
【図10】ディミング表示時において奇数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示す説明図。
【図11】ディミング表示時において偶数行の走査電極のグループを走査する場合の駆動波形の例を示す説明図。
【図12】従来の駆動方法における駆動波形の例を示す説明図。
【図13】従来の駆動方法において、定電流値を下げてディミング表示に切り替えた場合の駆動波形の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0102】
1 有機ELディスプレイ装置
2 コントローラ
メモリ
3 走査電極ドライバ部
4 信号電極ドライバ部
5 電源回路
6 外部MPU
10 駆動IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査電極と複数の信号電極との間に有機薄膜が配置された有機ELディスプレイ装置の駆動装置であって、
走査電極を選択する走査電極ドライバと、
信号電極から有機薄膜に定電流を流す信号電極ドライバと、
走査電極ドライバおよび信号電極ドライバを制御する制御部とを備え、
制御部は、
第1の表示態様または第1の表示態様よりも低い輝度で画像を表示する第2の表示態様を走査電極ドライバおよび信号電極ドライバに指示し、
第2の表示態様を指示しているときの走査電極の選択期間が、第1の表示態様を指示しているときの走査電極の選択期間よりも長くなるように走査電極ドライバを制御し、
走査電極ドライバは、
第1の表示態様が指示されているときに、各走査電極を順番に選択し、
第2の表示態様が指示されているときに、予め定められた走査電極の各グループ毎に順番に、グループに属する各走査電極を順番に選択する
ことを特徴とする有機ELディスプレイ装置の駆動装置。
【請求項2】
走査電極ドライバは、
第2の表示態様が指示されているときに、奇数行目の走査電極のグループに属する各走査電極を順番に選択することと、偶数行目の走査電極のグループに属する各走査電極を順番に選択することとを繰り返す
請求項1に記載の有機ELディスプレイ装置の駆動装置。
【請求項3】
信号電極ドライバは、
第1の表示態様が指示されているときに、第1の定電流を流し、
第2の表示態様が指示されているときに、第1の定電流よりも電流値が低い第2の定電流を流し、
走査電極ドライバは、
第1の表示態様が指示されているときに、選択した走査電極を選択時電位に設定し、選択していない走査電極を第1の非選択時電位に設定し、
第2の表示態様が指示されているときに、選択した走査電極を選択時電位に設定し、選択していない走査電極を第1の非選択時電位よりも低い第2の非選択時電位に設定する
請求項1または請求項2に記載の有機ELディスプレイ装置の駆動装置。
【請求項4】
走査電極ドライバと、信号電極ドライバと、制御部とを含むICを備えた
請求項1、2または3のうちのいずれか1項に記載の有機ELディスプレイ装置の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−219434(P2007−219434A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−42851(P2006−42851)
【出願日】平成18年2月20日(2006.2.20)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】