説明

有機ELドライバ用半導体装置

【課題】有機ELドライバを、半導体素子として高耐圧素子の使用を最小限に抑えて低電圧で高精度な素子を多用して構成することができ、チップ面積の縮小化、チップの低価格化および高精度化に対応することができる有機ELドライバ用半導体装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子2と、有機EL素子2と電気的特性がほぼ同一の半導体素子3と、半導体素子3を駆動する電流源4と、半導体素子3の電圧を分圧した検出電圧VRを生成する抵抗10、11と、検出電圧VRに応じた駆動電圧VFELを有機EL素子に供給する昇圧回路14と、抵抗10、11に流れる電流を補填する補正回路13とを有する構成とすることにより、有機ELドライバの構成として、使用する半導体素子の耐圧を低く抑えることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示部に有機ELを用いた表示パネルにおいて有機EL表示部を駆動するための有機ELドライバ用半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等のモバイル機器分野において、従来の液晶に変わる表示パネルとして有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いた表示パネルが有望視されている。
しかし、上記の有機EL素子は、自発光素子であるので、駆動時間や周囲環境により電流輝度特性が変化(劣化)する。
【0003】
このような特性劣化を抑えるために、従来技術(例えば、特許文献1を参照)によれば、有機EL素子と電気的特性がほぼ同一の半導体素子を設け、半導体素子を有機EL素子の発光頻度に応じて駆動し、該半導体素子の特性変化を示す特性変化信号を発生させ、特性変化検出信号に応じた電流レベル又は電圧レベルの駆動信号を有機EL素子に供給する構成が開示されている。
【0004】
図4は従来の有機ELドライバ用半導体装置の一構成例を示す回路ブロック図である。図4において、1はバッテリ等の直流電源であり、電源電圧VBをドライバ回路部に供給する。2は有機EL素子であり、3は有機EL素子2と電気的特性がほぼ同一の半導体素子である。4は電流源であり、電流ISを半導体素子3に流し込む。5はサンプルホールド回路であり、半導体素子3の両端に発生する電圧VFEXを検出する。6はバッファ回路、7はNチャンネルFETであり、電圧VFEXに基づくサンプルホールド回路による検出電圧が、バッファ回路6を介して、ゲートに印加される。8、9はPチャンネルFETであり、電流ミラー回路を構成して、NチャンネルFET7の電流に基づいて電流ミラー回路を介して有機EL素子2を駆動する。
【0005】
以上のように構成された従来の有機ELドライバ用半導体装置においては、半導体素子3の両端に発生する電圧VFEXに基づいた電流IFELにより、有機EL素子2が駆動される。
【特許文献1】特開2004−4759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記のような従来の有機ELドライバ用半導体装置では、半導体素子3や有機EL素子2の駆動電圧は20V近くまで上昇することから、従来のドライバを半導体装置で具現化するには、高耐圧のプロセスが要求されることとなる。
【0007】
このような高耐圧プロセスは高価であり、また高耐圧素子(DMOSトランジスタ、高耐圧MOSトランジスタ)はCMOSと比較してデバイス形状が大きいため、全てを高耐圧素子で構成すると、チップ面積が大きくなってしまうことから、チップの低価格化、省実装面積化が必須と言われているモバイル機器にはあまり適さない。
【0008】
また、DMOSトランジスタや高耐圧MOSトランジスタは、CMOSと比較して相対精度が取りづらく、相対精度が要求される電流ミラー回路には適さない。
本発明は、上記従来の問題点を解決するもので、有機ELドライバを、半導体素子として高耐圧素子の使用を最小限に抑えてCMOSのような低電圧で高精度な素子を多用して構成することができ、チップ面積の縮小化、チップの低価格化および高精度化に対応することができる有機ELドライバ用半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1記載の有機ELドライバ用半導体装置は、有機EL素子と、前記有機EL素子と電気的特性がほぼ同一の半導体素子と、前記半導体素子を駆動する電流源と、前記電流源に基づく前記半導体素子の駆動電圧を分圧した検出電圧を生成する分圧手段と、前記有機EL素子に前記分圧手段による検出電圧に応じた電圧を駆動電圧として供給する第1の昇圧回路と、前記分圧手段に流れる電流を補填する補正回路とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2記載の有機ELドライバ用半導体装置は、請求項1記載の有機ELドライバ用半導体装置であって、前記第1の昇圧回路の出力をさらに昇圧し、前記電流源と前記補正回路に電力供給する第2の昇圧回路を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3記載の有機ELドライバ用半導体装置は、請求項2記載の有機ELドライバ用半導体装置であって、前記第2の昇圧回路は、チャージポンプ回路で構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4記載の有機ELドライバ用半導体装置は、請求項1または請求項2または請求項3記載の有機ELドライバ用半導体装置であって、前記分圧手段は、前記半導体素子の電圧を分圧するように直列に接続された複数の抵抗素子により構成し、前記補正回路は、前記複数の抵抗素子の任意の接続点電位が入力され、前記分圧手段による検出電圧を前記複数の抵抗素子の接続点と接地電位間の抵抗値で除した電流を生成して出力することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5記載の有機ELドライバ用半導体装置は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の有機ELドライバ用半導体装置であって、前記第1の昇圧回路は、前記検出電圧を前記分圧手段の分圧比の逆数倍に昇圧することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項6記載の有機ELドライバ用半導体装置は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の有機ELドライバ用半導体装置であって、前記第1の昇圧回路は、ブーストコンバータ回路で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、特性変化検出に用いるサンプルホールド回路の入力段に、電圧を分割するための抵抗と、それらの抵抗によって消費される電流を補填するための補正回路と、駆動信号を供給する昇圧回路を有する構成とすることにより、有機ELドライバの構成として、使用する半導体素子の耐圧を低く抑えることができる。
【0016】
そのため、有機ELドライバを、半導体素子として高耐圧素子の使用を最小限に抑えてCMOSのような低電圧で高精度な素子を多用して構成することができ、チップ面積の縮小化、チップの低価格化および高精度化に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を示す有機ELドライバ用半導体装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は本実施の形態の有機ELドライバ用半導体装置の内部構成例を示す回路ブロック図である。図1において、1はバッテリ等の直流電源であり、電源電圧VBをドライバ回路部に供給する。2は有機EL素子であり、3は有機EL素子2の電気的特性と実質的に同一の電気的特性を有する半導体素子である。4は電流源であり、電流ISを半導体素子3に流し込む。10、11は抵抗であり、半導体素子3の駆動電圧VFEXを抵抗分割して検出電圧VRを生成する。12は補正回路であり、駆動電圧VFEXの検出電圧VRが入力され、半導体素子3に補正電流を供給する。13は第1の昇圧回路であり、駆動電圧VFEXの検出電圧VRがサンプルホールド回路5を介してFB端子に入力され、有機EL素子2の駆動電圧VFELを出力する。14は第2の昇圧回路であり、電圧VFELが入力されて内部電源電圧VHを出力する。内部電源電圧VHは電流源4及び補正回路12のバイアス電源電圧である。
【0018】
以上のように構成された有機ELドライバ用半導体装置について、その動作を以下に説明する。
高電圧を発生する半導体素子駆動電圧VFEXは、抵抗10と抵抗11の抵抗分割により低耐圧素子が使用できるレベルまで低電圧化され検出電圧VRとなり、サンプルホールド回路5に保持される。その際、抵抗10と抵抗11にも電流Ishが流れ、半導体素子3以外に電流を消費する。
【0019】
抵抗11の抵抗値をRとすると、

Ish=VR/R

で表される。この電流Ishによって半導体素子3の駆動電圧VFEXに生じる誤差を補正するように、電流Ishを別途補正回路12から補填する。補正回路12は検出電圧VRが入力され、電流Ish(=VR/R)と同じ電流を発生させ、半導体素子3への電流源4の駆動電流ISに加算する形で電流を出力する。
【0020】
図2は本実施の形態の有機ELドライバ用半導体装置における補正回路12の内部構成例を示す回路図である。図2において、15は演算増幅器、16はNMOSトランジスタ、17は抵抗11と同じ特性・抵抗値を持つ抵抗、18と19は電流ミラー回路を構成するPMOSトランジスタである。
【0021】
以上のように構成された補正回路12において、演算増幅器15とNMOSトランジスタ16はバッファ回路を構成し、NMOSトランジスタ16のソース電位を、演算増幅器15の+端子に入力される検出電圧VRと等しくなるように調整する。NMOSトランジスタ16のソースに接続される抵抗17は、抵抗11と同じ抵抗値Rを有するので、NMOSトランジスタ16を介して抵抗17に流れる補正電流Ish2は、VR/Rとなり、前記Ishと同じ電流値となる。
【0022】
この補正電流Ish2(=Ish)は、PMOSトランジスタ18およびPMOSトランジスタ19で構成された電流ミラー回路によって生成され、駆動電流ISに加算されて半導体素子3と抵抗10との接続点に供給される。このように、抵抗10と抵抗11に流れる電流Ishは補正電流Ish2によって補填され、駆動電流ISは全て半導体素子3に供給され、半導体素子3の駆動電圧VFEXに生じる誤差が解消される。
【0023】
また、図1に示すように、半導体素子3の駆動電圧として、サンプルホールド回路5に保持された検出電圧VRを基に、FB端子を経由して、第1の昇圧回路13および第2の昇圧回路14(例えばブーストコンバータ)により、必要な内部電源電圧(バイアス電源電圧)VHを生成し、半導体素子2の駆動電圧VFELは、第1の昇圧回路13により検出電圧VRを基に駆動電圧VFEXと同じ電圧まで昇圧されることで生成される。
【0024】
なお、昇圧回路13の電圧昇圧率は、抵抗10と抵抗11により容易に算出可能である。また、逆に昇圧回路13で電圧昇圧できる比率で抵抗10と抵抗11の抵抗値を決めてもよい。
【0025】
また、電流源4や補正回路12のバイアス電源電圧VHは、駆動電圧VFEXより高い電圧が必要となるため、第1の昇圧回路13とは別の第2の昇圧回路14を用いて、駆動電圧VFEL(=VFEX)から昇圧する。
【0026】
以上のように、本実施の形態によれば、高電圧を低電圧に落とすことで高耐圧対応の半導体素子の使用を削減し、第1の昇圧回路13によって半導体素子3に発生する駆動電圧VFEXと同じ駆動電圧VFELが出力される。
【0027】
この電圧で有機EL素子を駆動すれば、有機ELドライバとしての機能を、半導体素子として高耐圧素子の使用を最小限に抑えて、電力容量的に無理のないCMOSのような低電圧で高精度な半導体素子を多用して実現することができる。
【0028】
なお、上記の実施の形態において、第1の昇圧回路13や第2の昇圧回路14は、ブーストコンバータやチャージポンプ等の昇圧回路で実現可能である。
例えば、図3は本実施の形態の有機ELドライバ用半導体装置における第1の昇圧回路と第2の昇圧回路の内部構成例を示す回路図であり、ブーストコンバータで構成された第1の昇圧回路13の出力である駆動電圧VFEL(=VFEX)に電源電圧VBを加算して、バイアス電源電圧VHを得る第2の昇圧回路14を示している。
【0029】
図3の第2の昇圧回路14において、ブーストコンバータで構成された第1の昇圧回路13のスイッチ素子Qがオンの時、ダイオード140を介してコンデンサ141が電源電圧VBまで充電される。次に、スイッチ素子Qがオフの時、コンデンサ141はダイオード142を介してコンデンサ143へ放電される。結果的に、コンデンサ143は、ほぼ電源電圧VBに充電される。
【0030】
このような構成によって、駆動電圧VFEXに電源電圧VBを加算して、バイアス電源電圧VHを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の有機ELドライバ用半導体装置は、有機ELドライバを、半導体素子として高耐圧素子の使用を最小限に抑えてCMOSのような低電圧で高精度な素子を多用して構成することができ、チップ面積の縮小化、チップの低価格化および高精度化に対応することができるもので、携帯電話、DSC、PDA、ゲーム機等のモバイル機器の表示デバイスとして有望視される有機EL素子等のドライバ用デバイスとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態の有機ELドライバ用半導体装置の構成を示す回路ブロック図
【図2】同実施の形態の有機ELドライバ用半導体装置における補正回路の構成を示す回路図
【図3】同実施の形態の有機ELドライバ用半導体装置における第1の昇圧回路と第2の昇圧回路の構成を示す回路図
【図4】従来の有機ELドライバ用半導体装置の構成を示す回路ブロック図
【符号の説明】
【0033】
1 直流電源
2 有機EL素子
3 (有機EL素子2と実質的に同じ電気的特性を持つ)半導体素子
4 電流源
5 サンプルホールド回路
10、11 抵抗
12 補正回路
13 第1の昇圧回路
14 第2の昇圧回路
VFEL (有機EL素子2の)駆動電圧
VFEX 半導体素子駆動電圧
IS 半導体素子駆動電流
Ish 抵抗10,11に流れる電流
VR (VFEXの)検出電圧
VH 内部電源電圧
Ish2 補正電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子と、
前記有機EL素子と電気的特性がほぼ同一の半導体素子と、
前記半導体素子を駆動する電流源と、
前記電流源に基づく前記半導体素子の駆動電圧を分圧した検出電圧を生成する分圧手段と、
前記有機EL素子に前記分圧手段による検出電圧に応じた電圧を駆動電圧として供給する第1の昇圧回路と、
前記分圧手段に流れる電流を補填する補正回路とを有する
ことを特徴とする有機ELドライバ用半導体装置。
【請求項2】
前記第1の昇圧回路の出力をさらに昇圧し、前記電流源と前記補正回路に電力供給する第2の昇圧回路を有する
ことを特徴とする請求項1記載の有機ELドライバ用半導体装置。
【請求項3】
前記第2の昇圧回路は、チャージポンプ回路で構成した
ことを特徴とする請求項2記載の有機ELドライバ用半導体装置。
【請求項4】
前記分圧手段は、前記半導体素子の電圧を分圧するように直列に接続された複数の抵抗素子により構成し、
前記補正回路は、前記複数の抵抗素子の任意の接続点電位が入力され、前記分圧手段による検出電圧を前記複数の抵抗素子の接続点と接地電位間の抵抗値で除した電流を生成して出力する
ことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載の有機ELドライバ用半導体装置。
【請求項5】
前記第1の昇圧回路は、前記検出電圧を前記分圧手段の分圧比の逆数倍に昇圧する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の有機ELドライバ用半導体装置。
【請求項6】
前記第1の昇圧回路は、ブーストコンバータ回路で構成した
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の有機ELドライバ用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−147666(P2007−147666A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337926(P2005−337926)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】