説明

有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法

【課題】固体封止後にナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーを用いたレーザーリペア方法により異常箇所を修復することができる有機EL照明パネルを提供する。
【解決手段】ITOガラス基板1と、ITOガラス基板1上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイス2と、有機ELデバイス2を封止する封止用ガラス基板3と、ITOガラス基板1及び有機ELデバイス2と封止用ガラス基板3とを接着するシート状接着剤とを備え、シート状接着剤10は、有機ELデバイス2と接しない部分は硬化して有機ELデバイス2を封止していることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス照明パネル(以下、有機EL照明パネルという)における有機EL素子や陽極電極や陰極電極等により構成される有機ELデバイスの封止方法には、缶により封止を行う缶封止型(下記特許文献1,2参照)と、ガラスや膜を張り合わせることにより封止を行う固体封止型(下記特許文献3,4参照)とがある。
【0003】
ところで、有機EL照明パネルにおける有機EL素子は、非常に薄い膜であるため導電性の異物の影響を非常に受けやすく、輝点や黒点等の異常発光点や、陰極と陽極との間のショートなどの問題が発生しやすい(下記特許文献5参照)。このため、異常発光点やショート等の問題を解決するための方法として、異常発光点やショート発生箇所等の異常箇所にナノ秒オーダーのパルス幅のレーザー(例えば、YAGレーザー)を照射して修復するレーザーリペア方法が知られている。
【0004】
そして、缶封止型の有機EL照明パネルの場合、缶の内部は中空か、液体で満たされているため、有機ELデバイスにレーザーを照射したときに熱を分散させることができるため、レーザーリペア方法を適用することが可能である。
【0005】
しかし、固体封止型の有機EL照明パネルの場合、有機ELデバイスにナノ秒オーダーのパルス幅のレーザーを照射したときに熱が蓄熱して熱を分散させることができないため、熱が集中して有機ELデバイスを破損し、異常箇所が拡大しまう虞がある。
【0006】
このため、固体封止型の有機EL照明パネルにおいては、レーザーの照射を数十ピコ秒以下のパルス時間にした蓄熱させにくい超短パルスレーザー(例えば、ピコ秒レーザーやフェムト秒レーザー)を用いることにより不要な熱の発生を抑制するレーザーリペア方法(下記特許文献5参照)や、封止前に有機ELデバイスに通電し電流のリーク箇所を破壊する方法(下記特許文献6参照)等が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−214152号公報
【特許文献2】特開2003−173868号公報
【特許文献3】特開平08−124677号公報
【特許文献4】特開2003−178867号公報
【特許文献5】特開2009−266917号公報
【特許文献6】特開2008−004770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した超短パルスレーザーを用いるレーザーリペア方法には、ナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザー(例えば、YAGレーザー)装置に比べ、費用が高いという問題がある。また、封止前に通電し電流のリーク箇所を破壊する方法には、有機ELデバイスの封止後に実施することができないという問題がある。
【0009】
以上のことから、本発明は、固体封止後にナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーを用いたレーザーリペア方法により異常箇所を修復することができる有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための第1の発明に係る有機EL照明パネルは、
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と、
前記基板及び有機ELデバイスと前記封止用基板とを接着するシート状接着剤と
を備え、
前記シート状接着剤は、前記有機ELデバイスと接しない部分は硬化して前記有機ELデバイスを封止している
ことを特徴とする。
【0011】
上記の課題を解決するための第2の発明に係る有機EL照明パネルは、
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と、
有機ELデバイスと前記封止用基板とを接着するシート状接着剤と、
前記基板と前記封止用基板とを接着するシール剤と
を備え、
前記シール剤は、硬化して前記有機ELデバイスを封止している
ことを特徴とする。
【0012】
上記の課題を解決するための第3の発明に係る有機EL照明パネルは、第1の発明又は第2の発明に係る有機EL照明パネルにおいて、
前記シート状接着剤は、前記有機ELデバイスと接する部分は粘性が低い状態を維持する
ことを特徴とする。
【0013】
上記の課題を解決するための第4の発明に係る有機EL照明パネルの製造方法は、
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と
を備える有機EL照明パネルにおいて、
前記封止用基板に粘性が低いシート状接着剤を貼り付け、
前記基板と前記封止用基板とを貼り合せ、
前記シート状接着剤の前記有機ELデバイスと接しない部分を硬化させて前記有機ELデバイスを封止する
ことを特徴とする。
【0014】
上記の課題を解決するための第5の発明に係る有機EL照明パネルの製造方法は、第4の発明に係る有機EL照明パネルの製造方法において、
前記シート状接着剤は、硬化剤が配合されることにより硬化させる
ことを特徴とする。
【0015】
上記の課題を解決するための第6の発明に係る有機EL照明パネルの製造方法は、第4の発明に係る有機EL照明パネルの製造方法において、
前記シート状接着剤は、前記シート状接着剤に第1の硬化剤を配合し、前記シート状接着剤の前記有機ELデバイスと接しない部分に第1の硬化剤と反応して硬化する第2の硬化剤を塗布することにより硬化させる
ことを特徴とする。
【0016】
上記の課題を解決するための第7の発明に係る有機EL照明パネルの製造方法は、
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と
を備える有機EL照明パネルにおいて、
前記封止用基板の前記有機ELデバイスと対向する部分に粘性が低いシート状接着剤を貼り付け、
前記封止用基板の前記有機ELデバイスと対向しない部分にシール剤を塗布し、
前記基板と前記封止用基板とを貼り合せ、
前記シール剤を硬化させて前記有機ELデバイスを封止する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、固体封止後にナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーを用いたレーザーリペア方法により異常箇所を修復することができる有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施例に係る有機EL照明パネルにおけるITOガラス基板への封止用ガラス基板の張り合わせの様子を示した模式図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る有機EL照明パネルにおけるITOガラス基板への封止用ガラス基板の張り合わせの様子を示した模式図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る有機EL照明パネルにおけるITOガラス基板への封止用ガラス基板の張り合わせの様子を示した模式図である。
【図6】本発明の第3の実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
【図7】本発明の第4の実施例に係る有機EL照明パネルにおけるITOガラス基板への封止用ガラス基板の張り合わせの様子を示した模式図である。
【図8】本発明の第4の実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る有機EL照明パネルを実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法の第1の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係る有機EL照明パネルの構成について説明する。
図1は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおける酸化インジウム錫(ITO)ガラス基板1への封止用ガラス基板3の張り合わせの様子を示した模式図である。なお、図1(a)は貼り合せ前の状態を示した斜視図であり、図1(b)は貼り合せ後の状態を示した斜視図である。また、図1(a)においては、ITOガラス基板1側については上面から見た状態を示し、封止ガラス基板3側については下面から見た状態を示している。
【0021】
図1に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルは、上面にITOの透明電極が形成されたITOガラス基板1と、ITOガラス基板1上に形成された有機EL素子や、陰極電極等により構成される有機ELデバイス2とを備えている。なお、本実施例においては、基板としてITOガラス基板1を用いたが、これ以外にも、フレキシブルプリント基板を含むプラスチック基板、金属基板、セラミック基板等を用いることも可能である。また、本実施例においては、上面に透明電極が形成された基板を用いたが、これ以外にも、半透明の電極等を用いることも可能である。また、有機ELデバイス2の構造自体は、従来知られているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0022】
また、本実施例に係る有機EL照明パネルは、有機ELデバイス2を封止する封止用ガラス基板3と、封止用ガラス基板3の下面に貼り付けられたシート状の接着剤(以下、シート状接着剤という)10とを備えている。なお、本実施例においては、封止用基板として封止用ガラス基板3を用いたが、これ以外にも、フレキシブルプリント基板を含むプラスチック基板、金属基板、セラミック基板等を用いることも可能である。また、本実施例においては、シート状接着剤10には、シート状接着剤10を硬化させる熱硬化性の硬化剤を配合することとする。このため、本実施例においては、シート状接着剤10は、加熱することにより硬化させることができる。
【0023】
次に、本実施例に係る有機EL照明パネルの製造方法について説明する。
図1(a)に示すように、本実施例においては、封止用ガラス基板3の下面にシート状接着剤10を貼り付ける。なお、有機ELデバイス2の面積は、封止用ガラス基板3の面積よりも小さい。
【0024】
図1(b)に示すように、ITOガラス基板1上に形成された有機ELデバイス2を封止用ガラス基板3により完全に覆うように、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせる。なお、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた時点では、シート状接着剤10は粘性が低い状態を維持し未だ硬化していない状態である。
【0025】
図2は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
図2に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた後に、シート状接着剤10の有機ELデバイス2と接しない部分10a(図2中に斜線で示す部分)のみ加熱して硬化させ、有機ELデバイス2を封止する。なお、この時点においても、シート状接着剤10の有機ELデバイス2と接する部分は粘性が低い状態を維持し未だ硬化していない状態である。
【0026】
本実施例においては、シート状接着剤10の有機ELデバイス2と接しない部分10aの硬化は、例えば、レーザーを照射することにより加熱して硬化させるか、硬化させたい部分のみを加熱して熱硬化させることができる加熱装置を用いて硬化させるなどして行う。
【0027】
そして、シート状接着剤10の有機ELデバイス2と接しない部分10aのみ硬化させた後、レーザーリペア方法により有機ELデバイス2の異常箇所の修復を行う。なお、この時点においても、シート状接着剤10の有機ELデバイス2と接する部分は粘性が低い状態を維持し未だ硬化していない状態である。このため、有機ELデバイス2の異常箇所にナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーを照射した場合であっても、熱が蓄積せずに、熱を分散させることができるため、異常箇所を拡大させることなく修復することができる。
【0028】
そして、本実施例においては、レーザーリペア方法による有機ELデバイス2の異常箇所の修復後に、シート状接着剤10の有機ELデバイス2と接する部分を加熱して硬化させる。
【0029】
したがって、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、有機ELデバイス2と接触している部分のシート状接着剤10の粘性が低い状態を維持することにより、レーザーリペア時の異常箇所における蓄熱を軽減することができるため、固体封止型の有機EL照明パネルでありながら、ナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーにより異常箇所の修復を行うことができる。これにより、歩留まりの向上を図ることができる。
【実施例2】
【0030】
以下、本発明に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法の第2の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係る有機EL照明パネルの構成について説明する。
図3は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおけるITOガラス基板1への封止用ガラス基板3の張り合わせの様子を示した模式図である。なお、図3(a)は貼り合せ前の状態を示した斜視図であり、図3(b)は貼り合せ後の状態を示した斜視図である。また、図3(a)においては、ITOガラス基板1側については上面から見た状態を示し、封止ガラス基板3側については下面から見た状態を示している。
【0031】
図3に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルは、上面にITOの透明電極が形成されたITOガラス基板1と、ITOガラス基板1上に形成された有機EL素子や、陰極電極等により構成される有機ELデバイス2とを備えている。なお、有機ELデバイス2の構造自体は、従来知られているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0032】
また、本実施例に係る有機EL照明パネルは、有機ELデバイス2を封止する封止用ガラス基板3と、封止用ガラス基板3の下面に貼り付けられたシート状の接着剤であるシート状接着剤11a,11bとを備えている。本実施例においては、シート状接着剤の有機ELデバイス2と接しない部分11aにのみ熱硬化性の硬化剤を配合し、有機ELデバイス2と接する部分11bには硬化剤を配合しないこととする。
【0033】
このため、本実施例においては、シート状接着剤11a,11bは、有機EL照明パネル全体を加熱することにより、有機ELデバイス2と接しない部分11aのみを硬化させることができる。
【0034】
なお、シート状接着剤11a,11b自体には熱可塑性の材料を用いることにより、レーザーリペア時にシート状接着剤11bの粘性を低下させて、レーザーリペア時の異常箇所における蓄熱をより軽減することができため、異常箇所を拡大させること無く的確に修復を行うことが可能である。
【0035】
次に、本実施例に係る有機EL照明パネルの製造方法について説明する。
図3(a)に示すように、本実施例においては、封止用ガラス基板2の下面にシート状接着剤11a,11bを貼り付ける。なお、有機ELデバイス2の面積は、封止用ガラス基板3の面積よりも小さい。
【0036】
図3(b)に示すように、ITOガラス基板1上に形成された有機ELデバイス2を封止用ガラス基板3により完全に覆うように、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせる。なお、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた時点では、シート状接着剤11a,11bは粘性が低い状態を維持し未だ硬化していない状態である。
【0037】
図4は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
図4に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた後に、有機EL照明パネル全体を加熱することにより、シート状接着剤11a,11bの有機ELデバイス2と接しない部分11a(図4中に斜線で示す部分)のみを硬化させ、有機ELデバイス2を封止する。
【0038】
このように、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、シート状接着剤11a,11bの有機ELデバイス2と接しない部分11aにのみ硬化剤を配合しているため、有機ELデバイス2と接しない部分11aのみが硬化する。また、有機ELデバイス2と接する部分11bには硬化剤を配合していないため、有機ELデバイス2と接する部分は粘性が低い状態を維持し硬化しない。
【0039】
シート状接着剤11a,11bの有機ELデバイス2と接しない部分11aのみ硬化させた後、レーザーリペア方法により有機ELデバイス2の異常箇所の修復を行う。そして、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、有機ELデバイス2と接する部分11bは粘性が低い状態を維持し硬化しないため、有機ELデバイス2の異常箇所にナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーを照射した場合であっても、熱が蓄積せずに、熱を分散させることができるため、異常箇所を拡大させることなく修復することができる。
【0040】
したがって、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、シート状接着剤11a,11bの有機ELデバイス2と接触している部分11bの粘性が低い状態を維持することにより、レーザーリペア時の異常箇所における蓄熱を軽減することができるため、固体封止型の有機EL照明パネルでありながら、ナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーにより異常箇所の修復を行うことができる。これにより、歩留まりの向上を図ることができる。
【0041】
また、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた後に、有機EL照明パネル全体を加熱するだけで、レーザーや特別な加熱装置等を用いることなくシート状接着剤11a,11bの有機ELデバイス2と接しない部分11aのみを硬化させることができるため、製造時の手間を省くことができ、製造コストを低減することができる。
【実施例3】
【0042】
以下、本発明に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法の第3の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係る有機EL照明パネルの構成について説明する。
図5は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおけるITOガラス基板1への封止用ガラス基板3の張り合わせの様子を示した模式図である。なお、図5(a)は貼り合せ前の状態を示した斜視図であり、図5(b)は貼り合せ後の状態を示した斜視図である。また、図5(a)においては、ITOガラス基板1側については上面から見た状態を示し、封止ガラス基板側3については下面から見た状態を示している。
【0043】
図5に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルは、上面にITOの透明電極が形成されたITOガラス基板1と、ITOガラス基板1上に形成された有機EL素子や、陰極電極により構成される有機ELデバイス2とを備えている。なお、有機ELデバイス2の構造自体は、従来知られているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0044】
また、本実施例に係る有機EL照明パネルは、有機ELデバイス2を封止する封止用ガラス基板3と、封止用ガラス基板3の下面の有機ELデバイス2と接しない部分に貼り付けられたシート状接着剤12と、封止用ガラス基板3の有機ELデバイス2と接しない部分に塗布された熱硬化性のシール剤20とを備えている。
【0045】
本実施例においては、シート状接着剤4には、硬化剤を配合しないこととする。このため、本実施例においては、有機EL照明パネル全体を加熱することにより有機ELデバイス2と接しない部分に塗布された封止用のシール剤20のみを硬化させることができる。
【0046】
なお、シート状接着剤12自体には熱可塑性の材料を用いることにより、レーザーリペア時にシート状接着剤12の粘性を低下させて、レーザーリペア時の異常箇所における蓄熱をより軽減することができため、異常箇所を拡大させること無く的確に修復を行うことが可能である。
【0047】
次に、本実施例に係る有機EL照明パネルの製造方法について説明する。
図5(a)に示すように、本実施例においては、封止用ガラス基板3の下面の有機ELデバイス2と対向する部分にシート状接着剤20を貼り付け、封止用ガラス基板3の下面の有機ELデバイス2と対向しない部分に封止用のシール剤20を塗布する。なお、シール剤20は、ディスペンサー等を用いて塗布する。また、有機ELデバイス2の面積は、封止用ガラス基板3の面積よりも小さい。
【0048】
そして、図5(b)に示すように、ITOガラス基板1上に形成された有機ELデバイス2を封止用ガラス基板3により完全に覆うように、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせる。なお、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた時点では、シール剤20は未だ硬化していない状態である。
【0049】
図6は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
図6に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた後に、有機EL照明パネル全体を加熱することにより、シール剤20(図4中に斜線で示す部分)のみを硬化させ、有機ELデバイス2を封止する。このように、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、シート状接着剤12は硬化剤を配合していないため粘性が低い状態を維持し硬化せず、シール剤20のみが硬化する。
【0050】
シール剤20を硬化させた後、レーザーリペア方法により有機ELデバイス2の異常箇所の修復を行う。そして、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、シート状接着剤12の有機ELデバイス2と接する部分は粘性が低い状態を維持し硬化しないため、有機ELデバイス2の異常箇所にナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーを照射した場合であっても、熱が蓄積せずに、熱を分散させることができるため、異常箇所を拡大させることなく修復することができる。
【0051】
したがって、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、有機ELデバイス2と接触している部分のシート状接着剤12の粘性が低い状態を維持することにより、レーザーリペア時の異常箇所における蓄熱を軽減することができるため、固体封止型の有機EL照明パネルでありながら、ナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーにより異常箇所の修復を行うことができる。これにより、歩留まりの向上を図ることができる。
【0052】
また、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた後に、有機EL照明パネル全体を加熱するだけで、レーザーや特別な加熱装置等を用いることなくシール剤20のみを硬化させることができるため、製造時の手間を省くことができ、製造コストを低減することができる。
【0053】
また、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、シート状接着剤12には硬化剤を配合しないため、シート状接着剤12の形成が容易である。このため、シート状接着剤12の形成に要する手間を省くことができ、製造コストを低減することができる。
【実施例4】
【0054】
以下、本発明に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法の第4の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係る有機EL照明パネルの構成について説明する。
図7は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおけるITOガラス基板1への封止用ガラス基板3の張り合わせの様子を示した模式図である。なお、図7(a)は貼り合せ前の状態を示した斜視図であり、図7(b)は貼り合せ後の状態を示した斜視図である。また、図7(a)においては、ITOガラス基板1側については上面から見た状態を示し、封止ガラス基板3側については下面から見た状態を示している。
【0055】
図7に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルは、上面にITOの透明電極が形成されたITOガラス基板1と、ITOガラス基板1上に形成された有機EL素子や、陰極電極により構成される有機ELデバイス2とを備えている。なお、有機ELデバイス2の構造自体は、従来知られているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0056】
また、有機ELデバイス2を封止する封止用ガラス基板3と、封止用ガラス基板3の下面に貼り付けられたシート状の接着剤であるシート状接着剤13とを備えている。本実施例においては、シート状接着剤13には第1の硬化剤を配合し、シート状接着剤の有機ELデバイス2と接しない部分13aにのみ第2の硬化剤を塗布する。本実施例においては、第1の硬化剤は、第2の硬化剤と混ざることにより硬化する材料を用いることとする。このため、本実施例においては、シート状接着剤13の有機ELデバイスと接しない部分13aのみを硬化させることができる。
【0057】
なお、シート状接着剤13自体には熱可塑性の材料を用いることにより、レーザーリペア時にシート状接着剤13の粘性を低下させて、レーザーリペア時の異常箇所における蓄熱をより軽減することができため、異常箇所を拡大させること無く的確に修復を行うことが可能である。
【0058】
次に、本実施例に係る有機EL照明パネルの製造方法について説明する。
図7(a)に示すように、本実施例においては、封止用ガラス基板3の下面に第1の硬化剤が配合されたシート状接着剤13を貼り付け、シート状接着剤13の有機ELデバイス2と対向しない部分13aに第2の硬化剤を塗布する。なお、有機ELデバイス2の面積は、封止用ガラス基板3の面積よりも小さい。
【0059】
図7(b)に示すように、ITOガラス基板1上に形成された有機ELデバイス2を封止用ガラス基板3により完全に覆うように、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせる。
【0060】
図8は、本実施例に係る有機EL照明パネルにおける封止の様子を示した平面図である。
図8に示すように、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた後に、一定の時間が経過させ、シート状接着剤13の有機ELデバイス2と接しない部分13a(図8中に斜線で示す部分)のみを硬化させ、有機ELデバイス2を封止する。
【0061】
このように、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、第1の硬化剤が配合されたシート状接着剤13の有機ELデバイス2と接しない部分13aにのみ第2の硬化剤を塗布しているため、シート状接着剤13の有機ELデバイス2と接しない部分13aのみが硬化する。また、シート状接着剤13の有機ELデバイス2と接する部分には第2の硬化剤を塗布しないため、シート状接着剤13の有機ELデバイス2と接する部分は粘性が低い状態を維持し硬化しない。
【0062】
シート状接着剤13の有機ELデバイス2と接しない部分13aのみ硬化させた後、レーザーリペア方法により有機ELデバイス2の異常箇所の修復を行う。そして、本実施例に係る有機EL照明パネルにおいては、シート状接着剤13の有機ELデバイス2と接する部分は粘性が低い状態を維持し硬化しないため、有機ELデバイス2の異常箇所にナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーを照射した場合であっても、熱が蓄積せずに、熱を分散させることができるため、異常箇所を拡大させることなく修復することができる。
【0063】
したがって、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、有機ELデバイス2と接触している部分のシート状接着剤13の粘性が低い状態を維持することにより、レーザーリペア時の異常箇所における蓄熱を軽減することができるため、固体封止型の有機EL照明パネルでありながら、ナノ秒オーダーの長いパルス幅のレーザーにより異常箇所の修復を行うことができる。これにより、歩留まりの向上を図ることができる。
【0064】
また、本実施例に係る有機EL照明パネル及び有機EL照明パネルの製造方法によれば、ITOガラス基板1と封止用ガラス基板3とを貼り合わせた後に、一定の時間を経過させることにより、有機EL照明パネルを加熱することなくシート状接着剤13の有機ELデバイス2と接しない部分13aのみを硬化させることができるため、製造時の手間を省くことができ、製造コストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、例えば、固体封止型の有機EL照明パネル及び固体封止型の有機EL照明パネルの製造方法に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 ITOガラス基板
2 有機ELデバイス
3 封止用ガラス基板
10,11a,11b,12,13 シート状接着剤
20 シール剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と、
前記基板及び有機ELデバイスと前記封止用基板とを接着するシート状接着剤と
を備え、
前記シート状接着剤は、前記有機ELデバイスと接しない部分は硬化して前記有機ELデバイスを封止している
ことを特徴とする有機EL照明パネル。
【請求項2】
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と、
有機ELデバイスと前記封止用基板とを接着するシート状接着剤と、
前記基板と前記封止用基板とを接着するシール剤と
を備え、
前記シール剤は、硬化して前記有機ELデバイスを封止している
ことを特徴とする有機EL照明パネル。
【請求項3】
前記シート状接着剤は、前記有機ELデバイスと接する部分は粘性が低い状態を維持する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL照明パネル。
【請求項4】
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と
を備える有機EL照明パネルにおいて、
前記封止用基板に粘性が低いシート状接着剤を貼り付け、
前記基板と前記封止用基板とを貼り合せ、
前記シート状接着剤の前記有機ELデバイスと接しない部分を硬化させて前記有機ELデバイスを封止する
ことを特徴とする有機EL照明パネルの製造方法。
【請求項5】
前記シート状接着剤は、硬化剤が配合されることにより硬化させる
ことを特徴とする請求項4に記載の有機EL照明パネルの製造方法。
【請求項6】
前記シート状接着剤は、前記シート状接着剤に第1の硬化剤を配合し、前記シート状接着剤の前記有機ELデバイスと接しない部分に第1の硬化剤と反応して硬化する第2の硬化剤を塗布することにより硬化させる
ことを特徴とする請求項4に記載の有機EL照明パネルの製造方法。
【請求項7】
電極が形成される基板と、
前記基板上に形成される有機EL素子を有する有機ELデバイスと、
前記有機ELデバイスを封止する封止用基板と
を備える有機EL照明パネルにおいて、
前記封止用基板の前記有機ELデバイスと対向する部分に粘性が低いシート状接着剤を貼り付け、
前記封止用基板の前記有機ELデバイスと対向しない部分にシール剤を塗布し、
前記基板と前記封止用基板とを貼り合せ、
前記シール剤を硬化させて前記有機ELデバイスを封止する
ことを特徴とする有機EL照明パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−249021(P2011−249021A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117932(P2010−117932)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(510038670)Lumiotec株式会社 (5)
【Fターム(参考)】