説明

有機EL照明装置

【課題】均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供する。
【解決手段】 アクティブエリアにおいて互いに略平行に延出した画素配線及び陰極配線と、前記画素配線に電気的に接続された陽極、前記陽極の上方に配置された陰極、及び、前記陽極と前記陰極との間に配置された有機層を備えた発光画素と、前記発光画素に隣接し、前記陰極配線と前記陰極とがコンタクトする陰極コンタクト用ドットと、を備えたことを特徴とする有機EL照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化問題に対して関心が高まっている。炭酸ガスの排出量を減らし、温暖化を低減するために、様々の省エネが模索されている。その中でも、照明器具のエネルギー利用の高効率化が、1つの重要なポイントとされている。現在、広く使われている白熱ランプ及び蛍光灯は、発光効率の点から飽和状態となり、さらに発光効率のよい照明器具の研究開発が盛んに行われている。
【0003】
中でも、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子を用いた照明装置に関しては、白熱ランプの発光効率(約15lm/W)や寿命(約1,000〜2,000時間)、及び、蛍光灯の発光効率(約50〜100lm/W)や寿命(約10,000時間)を上回ることが期待されており、地球環境に優しい照明になり得ると考えられている。
【0004】
一方で、次世代の照明として期待されて開発が進められている発光ダイオード(light emitting diode:LED)を用いたいわゆるLED照明装置については、複数のLEDを高密度で配置することにより発光強度ムラを減らしているが、高密度配置には限界がある。また、複数のLEDを実装していく必要があるので、組み立てコストが上昇し、さらには、大面積の面発光光源の製造が困難であるという問題点を有している。
【0005】
上記の問題点に関して、有機EL照明装置は、複数の有機EL素子を同一基板上に容易に作成できるという利点がある。したがって、前述したLED照明装置と比べて、素子を実装するコストを削減することができ、より低コストの照明装置が実現可能であると考えられている。
【0006】
ところで、有機EL照明装置に限らず、有機EL表示装置など、複数の有機EL素子を用いる有機EL装置においては、各有機EL素子間で性能のバラツキが不可避的に発生して、発光輝度のバラツキや、これに起因した色むらが発生するおそれがある。例えば、製造時にずれた色バランスを調整する方法については種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−171020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本実施形態の目的は、均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態によれば、
アクティブエリアにおいて互いに略平行に延出した画素配線及び陰極配線と、前記画素配線に電気的に接続された陽極、前記陽極の上方に配置された陰極、及び、前記陽極と前記陰極との間に配置された有機層を備えた発光画素と、前記発光画素に隣接し、前記陰極配線と前記陰極とがコンタクトする陰極コンタクト用ドットと、を備えたことを特徴とする有機EL照明装置が提供される。
【0010】
また、本実施形態によれば、
陰極電源供給パッド及び陽極電源供給パッドと、前記陽極電源供給パッドに電気的に接続され、アクティブエリアにおいて第1方向に延出した複数の画素配線と、前記陰極電源供給パッドに電気的に接続され、アクティブエリアの略中央において第1方向に直交する第2方向に延出した陰極コンタクトと、前記画素配線に電気的に接続された陽極、前記陽極の上方に配置され前記陰極コンタクトにコンタクトした陰極、及び、前記陽極と前記陰極との間に配置された有機層を備えた発光画素と、を備えたことを特徴とする有機EL照明装置が提供される。
【0011】
また、本実施形態によれば、
第1電源供給パッド及び第2電源供給パッドと、前記第1電源供給パッドに電気的に接続された第1バス配線と、前記第2電源供給パッドに電気的に接続された第2バス配線と、前記第1バス配線に電気的に接続された第1画素配線と、前記第2バス配線に電気的に接続された第2画素配線と、前記第1画素配線に電気的に接続された第1陽極、前記第1陽極の上方に配置された陰極、及び、前記第1陽極と前記陰極との間に配置された第1有機層を備えた第1色に発光する第1発光画素と、前記第2画素配線に電気的に接続された第2陽極、前記第2陽極の上方に配置された陰極、及び、前記第2陽極と前記陰極との間に配置された第2有機層を備えた第1色とは異なる第2色に発光する第2発光画素と、を備え、前記第1バス配線及び前記第1画素配線の配線抵抗、及び、前記第2バス配線及び前記第2画素配線の配線抵抗は、前記第1発光画素における電圧降下が前記第2発光画素における電圧降下と略同等となるように設定されたことを特徴とする有機EL照明装置が提供される。
【0012】
また、本実施形態によれば、
第1電源供給パッド及び第2電源供給パッドと、前記第1電源供給パッドに電気的に接続された第1バス配線と、前記第2電源供給パッドに電気的に接続された第2バス配線と、前記第1バス配線に電気的に接続された第1画素配線と、前記第2バス配線に電気的に接続された第2画素配線と、前記第1画素配線に電気的に接続された第1陽極を含む第1発光画素と、前記第2画素配線に電気的に接続された第2陽極を含む第2発光画素と、を備え、前記第1電源供給パッドにおける前記第1バス配線及び前記第1画素配線の負荷は、前記第2電源供給パッドにおける前記第2バス配線及び前記第2画素配線の負荷と略同等であることを特徴とする有機EL照明装置が提供される。
【0013】
また、本実施形態によれば、
第1電源供給パッド及び第2電源供給パッドと、第1バス配線及び第2バス配線と、前記第1電源供給パッドと前記第1バス配線とを電気的に接続する第1接続配線と、前記第2電源供給パッドと前記第2バス配線とを電気的に接続する第2接続配線と、前記第1バス配線に電気的に接続された第1画素配線と、前記第2バス配線に電気的に接続された第2画素配線と、前記第1画素配線に電気的に接続された第1陽極を含む第1発光画素と、前記第2画素配線に電気的に接続された第2陽極を含む第2発光画素と、を備え、前記第1接続配線の配線抵抗及び前記第2接続配線の配線抵抗は、前記第1接続配線における電圧降下が前記第2接続配線における電圧降下と略同等となるように設定されたことを特徴とする有機EL照明装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態における有機EL照明装置の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示したパネル1の一画素の構成の一例を示す上面図である。
【図3】図3は、図2に示した一画素をA−B線で切断した断面構造の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、各発光画素の特性を均一化するための手法を説明するための図である。
【図5】図5は、各発光画素の特性を均一化するための他の手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本実施形態における有機EL照明装置の構成を概略的に示す平面図である。
【0017】
すなわち、有機EL装置は、ガラス基板などの光透過性を有する絶縁基板SUBを有する略矩形状のパネル1を備えている。このパネル1は、略矩形状のアクティブエリアAAにおいて、マトリクス状に配置された複数の画素PXを備えている。図示した例では、画素PXの各々は、赤色に発光する赤色画素PR、緑色に発光する緑色画素PG、青色に発光する青色画素PB、及び、陰極コンタクト用ドットPCによって構成されている。
【0018】
これらの赤色画素PR、緑色画素PG、青色画素PB、及び、陰極コンタクト用ドットPCは、アクティブエリアAAにおいて、例えば、X方向(第2方向)に沿って並んでいる。また、赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBは、後述するように、各々有機EL素子によって構成され、電流が供給されることによって発光する発光画素に相当する。なお、陰極コンタクト用ドットPCは、発光しない画素である。
【0019】
このようなアクティブエリアAAには、さらに、赤色画素PRに電気的に接続された赤画素配線LR、緑色画素PGに電気的に接続された緑画素配線LG、青色画素PBに電気的に接続された青画素配線LB、及び、陰極コンタクト用ドットPCに電気的に接続された陰極配線LCが形成されている。これらの赤画素配線LR、緑画素配線LG、青画素配線LB、及び、陰極配線LCは、例えば、X方向に直交するY方向(第1方向)に沿って互いに略平行に延出している。
【0020】
また、パネル1は、アクティブエリアAAの外側において、複数の外部入力電源端子Tを備えている。複数の外部入力電源端子Tは、X方向に沿って並んでいる。図示した例では、複数の外部入力電源端子Tは、アクティブエリアAAを挟んだ上下にそれぞれ略同様のパターンで形成されている。このような外部入力電源端子Tには、アクティブエリアAAの各画素PXを駆動するのに必要な電源や各種制御信号を供給するための駆動ICチップやフレキシブル配線基板(例えば、フレキシブル・プリンテッド・サーキット)などの各種信号源が実装される。
【0021】
外部入力電源端子Tの各々は、赤電源供給パッドTR、緑電源供給パッドTG、青電源供給パッドTB、及び、陰極電源供給パッドTCを有している。これらの赤電源供給パッドTR、緑電源供給パッドTG、及び、青電源供給パッドTBは、陽極電源供給パッドに相当する。
【0022】
このようなアクティブエリアAAの外側においては、さらに、赤バス配線BR、緑バス配線BG、青バス配線BB、及び、陰極バス配線BCが形成されている。これらの赤バス配線BR、緑バス配線BG、青バス配線BB、及び、陰極バス配線BCは、例えば、X方向に沿って互いに略平行に延出している。図示した例では、これらの赤バス配線BR、緑バス配線BG、青バス配線BB、及び、陰極バス配線BCは、アクティブエリアAAを挟んだ上下にそれぞれ略同様のパターンで形成されている。
【0023】
赤画素配線LRは、アクティブエリアAAから外側に引き出され、赤バス配線BRと電気的に接続されている。アクティブエリアAAに配置されたすべての赤画素配線LRは、赤バス配線BRに接続されている。同様に、緑画素配線LGの各々は、アクティブエリアAAから外側に引き出され、緑バス配線BGと電気的に接続されている。青画素配線LBの各々は、アクティブエリアAAから外側に引き出され、青バス配線BBと電気的に接続されている。陰極配線LCの各々は、アクティブエリアAAから外側に引き出され、陰極バス配線BCと電気的に接続されている。
【0024】
赤バス配線BRは、複数の赤電源供給パッドTRを共通化するものであり、赤電源供給パッドTRの各々と赤接続配線CRを介して電気的に接続されている。同様に、緑バス配線BGは、緑電源供給パッドTGの各々と緑接続配線CGを介して電気的に接続されている。青バス配線BBは、青電源供給パッドTBの各々と青接続配線CBを介して電気的に接続されている。陰極バス配線BCは、陰極電源供給パッドTCの各々と陰極接続配線CCを介して電気的に接続されている。
【0025】
アクティブエリアAAの略中央には、X方向に沿って延出した第1陰極コンタクトCT1が形成されている。この第1陰極コンタクトCT1は、アクティブエリアAAを略2分するように横切っている。このような第1陰極コンタクトCT1の具体的な構成については、例えば、陰極コンタクト用ドットPCの集合体として構成することが可能である。この第1陰極コンタクトCT1は、アクティブエリアAAの外側においてY方向に沿って延出した第2陰極コンタクトCT2及び第3陰極コンタクトCT3と電気的に接続されている。つまり、第2陰極コンタクトCT2は、アクティブエリアAAを挟んで第3陰極コンタクトCT3と対向している。これらの第1陰極コンタクトCT1、第2陰極コンタクトCT2、及び、第3陰極コンタクトCT3は、陰極バス配線BCを介して陰極電源供給パッドTCと電気的に接続されている。
【0026】
陰極CEは、アクティブエリアAAの略全体にわたって延在し、第1陰極コンタクトCT1にコンタクトしている。さらに、陰極CEは、アクティブエリアAAの外側にも延在し、第2陰極コンタクトCT2及び第3陰極コンタクトCT3にコンタクトしている。加えて、アクティブエリアAAにおいては、陰極CEは、各画素PXに配置された陰極コンタクト用ドットPCにコンタクトしている。
【0027】
このような構成によれば、赤電源供給パッドTRに供給された陽極電源は、赤接続配線CR及び赤バス配線BRを介して赤画素配線LRに接続された赤色画素PRの各々に供給される。同様に、緑電源供給パッドTGに供給された陽極電源は、緑接続配線CG及び緑バス配線BGを介して緑画素配線LGに接続された緑色画素PGの各々に供給される。青電源供給パッドTBに供給された陽極電源は、青接続配線CB及び青バス配線BBを介して青画素配線LBに接続された青色画素PBの各々に供給される。
【0028】
一方で、陰極電源供給パッドTCに供給された陰極電源は、陰極接続配線CC及び陰極バス配線BCを介して、陰極配線LCに接続された陰極コンタクト用ドットPCの各々に供給されるとともに、第1乃至第3陰極コンタクトCT1乃至CT3の各々に供給される。陰極コンタクト用ドットPC及び第1乃至第3陰極コンタクトCT1乃至CT3に供給された陰極電源は、陰極CEに供給される。
【0029】
なお、赤画素配線LR、緑画素配線LG、青画素配線LB、陰極配線LCや、赤バス配線BR、緑バス配線BG、青バス配線BB、陰極バス配線BCなどのパネル1に形成された各種配線は、絶縁層を介した2層以上の配線層を用いて形成されている。
【0030】
図2は、図1に示したパネル1の一画素PXの構成の一例を示す上面図である。
【0031】
すなわち、画素PXは、X方向に並んだ陰極コンタクト用ドットPC、赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBを備えている。これらの赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBは、実質的に略同一構造であり、それぞれ陽極となる透過電極AT及び反射電極ARを備えている。陰極コンタクト用ドットPCは、透過電極ATを備えている。
【0032】
これらの透過電極AT及び反射電極ARは、リブRBによって囲まれている。図示した例では、赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBのそれぞれにおいて、リブRBの開口(第2開口)RBHの面積(開口率)は実質的に同一である。このことは、製造時において、同一マスクで発光層を形成することが可能であり、製造コストを抑制することが出来る。
【0033】
透過電極ATは、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)などの光透過性を有する導電材料によって形成されている。反射電極ARは、例えば、アルミニウム(Al)などの光反射性を有する導電材料によって形成されている。リブRBは、例えば、樹脂材料などの絶縁材料によって形成されている。
【0034】
赤色画素PRにおいて、リブRBの開口RBHには、反射電極ARに接触する赤有機層ORが配置されている。この赤有機層ORは、赤色に発光する発光層を含んでいる。同様に、緑色画素PGにおいて、リブRBの開口RBHには、緑色に発光する発光層を含む緑有機層OGが配置されている。また、青色画素PBにおいて、リブRBの開口RBHには、青色に発光する発光層を含む青有機層OBが配置されている。これらの赤有機層OR、緑有機層OG、及び、青有機層OBは、各々の発光層に加えて、必要に応じてホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層などを含んでいても良い。
【0035】
陰極コンタクト用ドットPCにおいては、透過電極ATは、コンタクトホールCHを介して陰極配線LCと電気的に接続されている。同様に、赤色画素PRにおいては、透過電極ATは、コンタクトホールCHを介して赤画素配線LRと電気的に接続されている。緑色画素PGにおいては、透過電極ATは、コンタクトホールCHを介して緑画素配線LGと電気的に接続されている。青色画素PBにおいては、透過電極ATは、コンタクトホールCHを介して青画素配線LBと電気的に接続されている。
【0036】
陰極CEは、図示を省略するが、画素PXの全体を覆うように配置されている。すなわち、この陰極CEは、赤有機層OR、緑有機層OG、及び、青有機層OBを覆うとともに、陰極コンタクト用ドットPCにおいては、リブRBの開口RBHに配置され、陰極配線LCと電気的に接続された透過電極ATにコンタクトしている。この陰極コンタクト用ドットPCにおいて、透過電極ATはリブRBによって囲まれており、このリブRBの開口(第1開口)RBHは、赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBのそれぞれにおけるリブRBの開口(第2開口)RBHの面積(開口率)と略同一である。このため、陰極コンタクト用ドットPCにおいて透過電極ATは比較的大きな面積にわたって陰極CEとのコンタクトが可能となる。
【0037】
図3は、図2に示した一画素PXをA−B線で切断した断面構造の一例を示す断面図である。
【0038】
絶縁基板SUBの上には、陰極配線LC、赤画素配線LR、緑画素配線LG、及び、青画素配線LBがそれぞれ形成されている。これらの陰極配線LC、赤画素配線LR、緑画素配線LG、及び、青画素配線LBは、絶縁膜ILによって覆われている。図示したように、絶縁膜ILには、陰極配線LC及び青画素配線LBに至るコンタクトホールCHが形成されるのに加えて、図示しないが、赤画素配線LR及び緑画素配線LGに至るコンタクトホールも形成されている。
【0039】
絶縁膜ILの上には、透過電極ATが形成されている。この透過電極ATは、コンタクトホールCHまで延在している。図示したように、陰極コンタクト用ドットPCにおいては、コンタクトホールCHに延在した透過電極ATが陰極配線LCと電気的に接続されている。青色画素PBにおいても、コンタクトホールCHに延在した透過電極ATが青画素配線LBと電気的に接続されている。
【0040】
赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBの各々の透過電極(第2透過電極)ATの上には、反射電極ARが形成されている。これらの反射電極ARは、それぞれリブRBによって囲まれている。なお、図示した例では、陰極コンタクト用ドットPCについては、透過電極(第1透過電極)ATの上に反射電極は形成されていない。陰極CEは、赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBの各々の反射電極ARの上方に配置されるとともに、陰極コンタクト用ドットPCの透過電極ATにコンタクトしている。
【0041】
赤色画素PRにおいては、反射電極ARと陰極CEとの間に赤有機層ORが配置され、赤色に発光する有機EL素子OLEDrが構成されている。同様に、緑色画素PGにおいては、反射電極ARと陰極CEとの間に緑有機層OGが配置され、緑色に発光する有機EL素子OLEDgが構成されている。青色画素PBにおいては、反射電極ARと陰極CEとの間に青有機層OBが配置され、青色に発光する有機EL素子OLEDbが構成されている。つまり、陰極CEは、赤有機層OR、緑有機層OG、及び、青有機層OBの上に配置され、しかも、陰極コンタクト用ドットPCの透過電極ATにコンタクトしている。
【0042】
このような構成のパネル1においては、赤色画素PRの赤有機層OR、緑色画素PGの緑有機層OG、及び、青色画素PBの青有機層OBの各々について、少なくとも発光層はマスク蒸着などの手法を用いて塗り分けられている。画素PXのホワイトバランスについては、赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBの各々に供給される陽極電源で調整される。
【0043】
ところで、有機EL装置において、有機EL表示装置は一般的に線順次方式であり、最大電流値はアクティブエリアAAの1列分のみの電流値となる。陰極CEへの電源供給は、アクティブエリアAAの外側に設置された陰極コンタクトから行われる。しかしながら、有機EL照明装置は面方式であり、最大電流値は全ての画素PXの電流値となる。このように、全ての画素PXに一斉に電流が流れるため、陰極CEの電流負荷が大きくなり、輝度低下の原因となる。特に、陰極コンタクトから離れた画素ほど輝度が低下する傾向にあり、アクティブエリアAAの中央部が周辺部と比較して輝度が低下する(中央輝度ムラ)といった現象が発生する。
【0044】
上記の本実施形態によれば、アクティブエリアAAの画素PXが、発光画素のみならず、陰極コンタクト用ドットPCを備えている。このため、陰極CEの電流負荷を低減することができる。したがって、アクティブエリアAAの全体における発光画素の各々の発光輝度のバラツキを抑制することができるとともに、色むらの発生を抑制し、均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供することが可能となる。
【0045】
なお、陰極コンタクト用ドットPCは、各画素PXに設ける必要はなく、陰極電流を見積もり、何画素毎に陰極コンタクト用ドットPCを配置するかを決定しても良い。例えば、電流の見積もりによっては、数画素に1個の割合で陰極コンタクト用ドットPCを配置する場合もありうる。
【0046】
また、本実施形態によれば、アクティブエリアAAの略中央を横切る第1陰極コンタクトCT1を備えている。これにより、特に、アクティブエリアAAの略中央における陰極CEの電流負荷を低減することができる。したがって、均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供することが可能となる。なお、上記の例では、陰極コンタクト用ドットPCを設け、且つ、第1陰極コンタクトCT1を設けたが、いずれか一方のみであっても、陰極CEの電流負荷を低減する効果は発揮されることは言うまでもない。
【0047】
図4は、各発光画素の特性を均一化するための手法を説明するための図である。
【0048】
発光画素である赤色画素PRに対しては、赤電源供給パッドTR、赤接続配線CR、及び、赤バス配線BRを介して赤画素配線LRから陽極電源が供給される。同様に、発光画素である緑色画素PGに対しては、緑電源供給パッドTG、緑接続配線CG、及び、緑バス配線BGを介して緑画素配線LGから陽極電源が供給される。同様に、発光画素である青色画素PBに対しては、青電源供給パッドTB、青接続配線CB、及び、青バス配線BBを介して青画素配線LBから陽極電源が供給される。
【0049】
赤色画素PRの有機EL素子OLEDr、緑色画素PGの有機EL素子OLEDg、及び、青色画素PBの有機EL素子OLEDbの各々の素子特性のばらつきは、各々の有機EL素子に接続されたバス配線及び画素配線の配線抵抗によって補正する。この配線抵抗は、バス配線及び画素配線の配線幅、及び、バス配線及び画素配線の配線長に基づく値である。すなわち、配線抵抗は、配線幅が大きいほど小さく、また、配線長が短いほど小さい。
【0050】
本実施形態においては、赤色画素PR、緑色画素PG、及び、青色画素PBの各発光画素についてそれぞれの基準電圧降下を見積もり、各発光画素における電圧降下を均一化するように、あるいは、各発光画素の素子特性を均一化するように、各画素配線及び各バス配線の配線抵抗を調整する。
【0051】
以下に、より具体的な電圧降下の算出方法を示す。なお、ここでは、1本の画素配線に複数の同色の色画素が接続されている場合について説明する。つまり、アクティブエリアAAにおいて、1本の画素配線に対応する1列はすべて同色の色画素からなり、各画素配線に接続された色画素の個数は、いずれの色においても同数である。
【0052】
各1列当たりの電流値×配線抵抗(画素配線+バス配線)=1列当たりの電圧降下
上記式により、1本の赤画素配線LRに接続された赤色画素PRにおける電圧降下、1本の緑画素配線LGに接続された緑色画素PGにおける電圧降下、及び、1本の青画素配線LBに接続された青色画素PBにおける電圧降下がそれぞれ算出される。
【0053】
例えば、青色画素PBの駆動電流が他の色画素よりも高いため、青色画素PBにおける電圧降下を基準として、各発光画素の素子特性を均一化する場合について説明する。まず、上記式により、青色画素PBにおける基準電圧降下を見積もる。そして、例えば、見積もった青色画素PBにおける電圧降下と、赤色画素PR及び緑色画素PGの各々における電圧降下とが略同等となるように、配線抵抗を補正する。この配線抵抗を補正するに当たり、レイアウトの都合上、配線長Lを変更しにくい場合、配線幅Wにより配線抵抗の補正が可能である。
【0054】
図示した例では、各配線抵抗の補正のため、青画素配線LBの配線幅WBは、赤画素配線LRの配線幅WR及び緑画素配線LGの配線幅WGのいずれよりも大きく設定されている。同様に、青バス配線BBの配線幅は、赤バス配線BRの配線幅及び緑バス配線BGの配線幅のいずれよりも大きく設定されている。これにより、各発光画素における電圧降下を略同等とすることが可能となる、あるいは、各発光画素の素子特性を均一化することが可能となる。したがって、均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供することが可能となる。
【0055】
なお、上記以外の各配線抵抗の補正のためのその他の例として、配線幅は同一とする一方で配線長を変更しても良いし、配線幅及び配線長の双方を変更しても良い。
【0056】
図5は、各発光画素の特性を均一化するための他の手法を説明するための図である。
【0057】
本実施形態においては、複数の電源供給パッドについて、1個の電源供給パッド当たりの(バス配線+画素配線)負荷が略同等となるように構成されている。
【0058】
一例として、アクティブエリアAAにおいて、赤色画素PR、緑色画素PG、青色画素PB、及び、陰極コンタクト用ドットPCからなる画素PXがX方向に120個並んだ場合について説明する。いま、電源供給パッドの数が24個(つまり、陰極電源供給パッドTC、赤電源供給パッドTR、緑電源供給パッドTG、及び、青電源供給パッドTBの各々が6個ずつ)である場合には、各電源供給パッドから等間隔にバス配線に接続していくと、120画素/24個=5画素となり、1電源供給パッド当たり5画素分となるように各電源供給パッドをバス配線に接続する。
【0059】
つまり、図中の左側の第1赤電源供給パッドTRに接続された赤バス配線BRには5本の赤画素配線LRが電気的に接続されている一方で、図中の右側の第2赤電源供給パッドTRに接続された赤バス配線BRにも同数本つまり5本の赤画素配線LRが電気的に接続されており、1個の電源供給パッド当たりの(バス配線+画素配線)負荷が略同等である。なお、緑電源供給パッドTG、青電源供給パッドTB、陰極電源供給パッドTCの各々についても、1個当たりの負荷が略同等である。
【0060】
これにより、電源供給パッド間での輝度傾斜の発生を抑制することができる。したがって、均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態においては、複数の電源供給パッドについて、各電源供給パッドと各バス配線との間を接続する接続配線における電圧降下を略同等とするように構成されている。
【0062】
図示したように、電源供給パッドのピッチと画素配線のピッチとが異なる場合、電源供給パッドとバス配線とを接続する接続配線の長さが相違することがある。例えば、図中の左側の第1青電源供給パッドTBと青バス配線BBとを接続する第1青接続配線CBの配線長は、図中の右側の第2青電源供給パッドTBと青バス配線BBとを接続する第2青接続配線CBの配線長よりも短い。第1青接続配線CBの配線幅が第2青接続配線CBの配線幅と同一である場合、第2青接続配線CBの配線抵抗は、第1青接続配線CBの配線抵抗よりも高い。このため、第2青接続配線CBにおける電圧降下が第1青接続配線CBにおける電圧降下よりも大きくなる。
【0063】
そこで、図4に示した例と同様に、第2青接続配線CBの配線幅WB2は、第1青接続配線CBの配線幅WB1よりも大きく設定される。これにより、第1青接続配線CBの配線抵抗及び第2青接続配線CBの配線抵抗は、第1青接続配線CBにおける電圧降下が第2青接続配線CBにおける電圧降下と略同等となるように設定することが可能となる。
【0064】
なお、赤接続配線CR、緑接続配線CG、陰極接続配線CCの各々についても、同様の補正が可能である。
【0065】
これにより、電源供給パッド間での輝度傾斜の発生を抑制することができる。したがって、均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供することが可能となる。
【0066】
なお、上記の説明において、各電源供給パッドから供給される電源電圧は、有機EL素子の駆動電圧+電圧降下分(画素配線+バス配線+電源供給PAD−バス配線間)の値を入力する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記した陰極コンタクト用ドットPCの設置、第1陰極コンタクトCT1の設置、バス配線及び画素配線の配線抵抗による補正、1個の電源供給パッドあたりの(バス配線+画素配線)負荷の均一化、及び、接続配線の配線抵抗による補正の少なくとも1つ、あるいは、上記の補正方法を組み合わせることにより、均一な輝度で発光できる有機EL照明装置を提供することができる。
【0068】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…パネル
AA…アクティブエリア
PX…画素(PR…赤色画素 PG…緑色画素 PB…青色画素 PC…陰極コンタクト用ドット)
LR…赤画素配線 LG…緑画素配線 LB…青画素配線 LC…陰極配線
T…外部入力電源端子(TR…赤電源供給パッド TG…緑電源供給パッド TB…青電源供給パッド TC…陰極電源供給パッド)
BR…赤バス配線 BG…緑バス配線 BB…青バス配線 BC…陰極バス配線
CR…赤接続配線 CG…緑接続配線 CB…青接続配線 CC…陰極接続配線
CT1乃至CT3…陰極コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブエリアにおいて互いに略平行に延出した画素配線及び陰極配線と、
前記画素配線に電気的に接続された陽極、前記陽極の上方に配置された陰極、及び、前記陽極と前記陰極との間に配置された有機層を備えた発光画素と、
前記発光画素に隣接し、前記陰極配線と前記陰極とがコンタクトする陰極コンタクト用ドットと、
を備えたことを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項2】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上方に配置された画素配線及び陰極配線と、
前記画素配線及び前記陰極配線の上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に配置され、前記絶縁膜に形成された第1コンタクトホールを介して前記陰極配線に電気的に接続された第1透過電極と、
前記絶縁膜の上に配置され、前記絶縁膜に形成された第2コンタクトホールを介して前記画素配線に電気的に接続された第2透過電極と、
前記第2透過電極の上に配置された反射電極と、
前記反射電極の上に配置された有機層と、
前記有機層の上に配置されるとともに前記第1透過電極にコンタクトした陰極と、
を備えたことを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項3】
さらに、前記第1透過電極を囲む第1開口が形成されるとともに前記第2透過電極及び前記反射電極を囲む第2開口が形成されたリブを備え、前記第1開口の面積と前記第2開口の面積とが略同一であることを特徴とする請求項2に記載の有機EL照明装置。
【請求項4】
陰極電源供給パッド及び陽極電源供給パッドと、
前記陽極電源供給パッドに電気的に接続され、アクティブエリアにおいて第1方向に延出した複数の画素配線と、
前記陰極電源供給パッドに電気的に接続され、アクティブエリアの略中央において第1方向に直交する第2方向に延出した第1陰極コンタクトと、
前記画素配線に電気的に接続された陽極、前記陽極の上方に配置され前記第1陰極コンタクトにコンタクトした陰極、及び、前記陽極と前記陰極との間に配置された有機層を備えた発光画素と、
を備えたことを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項5】
さらに、アクティブエリアの外側において第1方向に延出した第2陰極コンタクトを備え、
前記陰極は、アクティブエリアの外側にも延在して前記第2陰極コンタクトにコンタクトしたことを特徴とする請求項4に記載の有機EL照明装置。
【請求項6】
前記第1陰極コンタクトは、前記陰極電源供給パッドに電気的に接続されアクティブエリアにおいて第1方向に延出した陰極配線と前記陰極とがコンタクトする陰極コンタクト用ドットの集合体によって構成されたことを特徴とする請求項4または5に記載の有機EL照明装置。
【請求項7】
第1電源供給パッド及び第2電源供給パッドと、
前記第1電源供給パッドに電気的に接続された第1バス配線と、
前記第2電源供給パッドに電気的に接続された第2バス配線と、
前記第1バス配線に電気的に接続された第1画素配線と、
前記第2バス配線に電気的に接続された第2画素配線と、
前記第1画素配線に電気的に接続された第1陽極、前記第1陽極の上方に配置された陰極、及び、前記第1陽極と前記陰極との間に配置された第1有機層を備えた第1色に発光する第1発光画素と、
前記第2画素配線に電気的に接続された第2陽極、前記第2陽極の上方に配置された陰極、及び、前記第2陽極と前記陰極との間に配置された第2有機層を備えた第1色とは異なる第2色に発光する第2発光画素と、
を備え、
前記第1バス配線及び前記第1画素配線の配線抵抗、及び、前記第2バス配線及び前記第2画素配線の配線抵抗は、前記第1発光画素における電圧降下が前記第2発光画素における電圧降下と略同等となるように設定されたことを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項8】
前記第1発光画素は青色に発光する青色画素であって、前記第2発光画素は赤色に発光する赤色画素または緑色に発光する緑色画素であって、
前記第1画素配線の配線幅は、前記第2画素配線の配線幅よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項7に記載の有機EL照明装置。
【請求項9】
前記第1発光画素は青色に発光する青色画素であって、前記第2発光画素は赤色に発光する赤色画素または緑色に発光する緑色画素であって、
前記第1バス配線の配線幅は、前記第2バス配線の配線幅よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項7または8に記載の有機EL照明装置。
【請求項10】
第1電源供給パッド及び第2電源供給パッドと、
前記第1電源供給パッドに電気的に接続された第1バス配線と、
前記第2電源供給パッドに電気的に接続された第2バス配線と、
前記第1バス配線に電気的に接続された第1画素配線と、
前記第2バス配線に電気的に接続された第2画素配線と、
前記第1画素配線に電気的に接続された第1陽極を含む第1発光画素と、
前記第2画素配線に電気的に接続された第2陽極を含む第2発光画素と、
を備え、
前記第1電源供給パッドにおける前記第1バス配線及び前記第1画素配線の負荷は、前記第2電源供給パッドにおける前記第2バス配線及び前記第2画素配線の負荷と略同等であることを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項11】
前記第1バス配線に電気的に接続された第1画素配線の本数は、前記第2バス配線に電気的に接続された第2画素配線の本数と同数であることを特徴とする請求項10に記載の有機EL照明装置。
【請求項12】
第1電源供給パッド及び第2電源供給パッドと、
第1バス配線及び第2バス配線と、
前記第1電源供給パッドと前記第1バス配線とを電気的に接続する第1接続配線と、
前記第2電源供給パッドと前記第2バス配線とを電気的に接続する第2接続配線と、
前記第1バス配線に電気的に接続された第1画素配線と、
前記第2バス配線に電気的に接続された第2画素配線と、
前記第1画素配線に電気的に接続された第1陽極を含む第1発光画素と、
前記第2画素配線に電気的に接続された第2陽極を含む第2発光画素と、
を備え、
前記第1接続配線の配線抵抗及び前記第2接続配線の配線抵抗は、前記第1接続配線における電圧降下が前記第2接続配線における電圧降下と略同等となるように設定されたことを特徴とする有機EL照明装置。
【請求項13】
前記第1接続配線の配線長は前記第2接続配線の配線長よりも短く、前記第2接続配線の配線幅は前記第1接続配線の配線幅よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項12に記載の有機EL照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−18895(P2012−18895A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157265(P2010−157265)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】