説明

有機EL素子の封止方法及び封止装置

【課題】 従来の封止方法における有機EL素子への微量の酸素や水分の混入の問題や、封止用の接着の際、シーリング部に不活性ガスを噛み込んだ部位は後に外気と導通となる可能性が残り、大気中で充分な封止効果があげられない問題を解決できる、有機EL素子の封止方法と有機EL素子の封止装置を提供する。
【解決手段】 有機EL素子形成部材と、シール材用としての封止用接着剤層を第2の基板の一面の全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に対応する領域に配した接着剤層配設部材とを、不活性ガス雰囲気の環境下に、離れた状態で配し、前記不活性ガス雰囲気の圧を減圧した状態で、有機EL素子側、封止用接着剤側を互いに向かい合わせ、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを平行にして重ね合わせ、更に両部材を積層加圧し、且つ、加熱して、封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の第1の基材の一面側に有機EL素子を形成した有機EL素子形成部材の、有機EL素子形成面側に、一面全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に配したシール材としての接着部を介して、板状の第2の基材を接着配設し、有機EL素子を大気から隔離する封止方法と封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平面表示装置( 以下、フラットディスプレイとも言う) が多くの分野、場所で使われており、情報化が進む中で、ますます、その重要性が高まっている。
現在、フラットディスプレイの代表と言えば液晶ディスプレイ(以下、LCDとも言う)であるが、LCDとは異なる表示原理に基づくフラットディスプレイとして、有機EL、無機EL、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPとも言う)、ライトエミッティングダイオード表示装置(以下、LEDとも言う)、蛍光表示管表示装置(以下、VFDとも言う)、フィールドェミッションディスプレイ(以下、FEDとも言う)などの開発も活発に行われている。
これらの新しいフラットディスプレイはいずれも自発光型と呼ばれるもので、LCDとは次の点で大きく異なり、LCDには無い優れた特徴を有している。
LCDは、受光型と呼ばれ、液晶は自身では発光することはなく、外光を透過、遮断する、いわゆるシャッターとして動作し、表示装置を構成する。
このため光源を必要とし、ー般に、バックライトが必要である。
これに対して自発光型は、装置自身が発光するため別光源が不要である。
LCDのような受光型では表示情報の様態に拘わらず常にバックライトが点灯し、全表示状態とほぼ変わらない電力を消費することになる。
これに対して自発光型は、表示情報に応じて点灯する必要のある箇所だけが電力を消費するだけなので、受光型表示装置に比較して電力消費が少ないという利点が原理的にある。
LCDでは、バックライト光源の光を遮光して暗状態を得るため、少量であっても光漏れを完全に無くすことは困難であるのに対して、自発光型では発光しない状態がまさに暗状態であるので理想的な暗状態を容易に得ることができコントラストにおいても自発光型が圧倒的に優位である。
また、LCDは液晶の複屈折による偏光制御を利用しているため、観察する方向によって大きく表示状態が変わるいわゆる視野角依存性が強いが、自発光型ではこの問題がほとんど無い。
さらに、LCDは有機弾性物質である液晶の誘電異方性に由来する配向変化を利用するため、原理的に電気信号に対する応答時間が1msec以上である。
これに対して、開発が進められている上記の技術では電子、正孔といったいわゆるキャリア遷移、電子放出、プラズマ放電などを利用しているため、応答時間はnsec桁であり、液晶とは比較にならないほど高速であり、LCDの応答の遅さに由来する動画残像の問題が無い。
【0003】
これらの中でも、特に、有機ELの研究が活発である。
有機ELはOEL(Organic EL)または有機ライトエミッティングダイオード(OLED;Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれている。
OEL素子、OELD素子は、陽極と陰極の一対の電極間に有機化合物を含む(EL層)を挟持した構造となっており、Tang等の「アノード電極/ 正孔注入層/ 発光層/ カソード電極」の積層構造が基本になっている。(特許1526026号公報)
また、Tang等が低分子材料を用いているの対して、中野らは、高分子材料を用いている。(特開平3−273087号公報)
また、正孔注入層や電子注入層を用いて効率を向上させたり、発光層に蛍光色素等をドーブして発光色を制御することも行われている。
尚、ここでは、画素電極と対向電極が陽極、陰極のいずれかに相当し、ー対の電極を構成する。
そして、ー対の電極間に設けられる全ての層を、総称して、EL層と呼び、上記の正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層がこれに含まれる。
【特許文献1】特許1526026号公報
【特許文献2】特開平3−273087号公報
【0004】
図4に有機EL素子の断面構造を示す。
有機ELは、電極間に電場を印加し、EL層に電流を通じることで、発光するが、従来はー重頃励起状態から基底状態に戻る際の蛍光発光のみを利用していたが、最近の研究により、三重項励起状態から基底状態に戻る際の燐光発光を有効に利用することができるようになり、効率が向上している。
通常、ガラス基板やプラスチック基板といった透光性の支持基板(基板2)にー方の電極3を形成してから、発光層(有機EL層とも言う)4、対向電極5の順に形成して製造される。
一般には陽極がITOなどの透光性電極、陰極が金属で構成され非透光性電極であることが多い。
なお、図4では図示しないが、有機EL素子は水分や酸素による特性劣化が著しいため、ー般には、素子が水分や酸素に触れない様に不活性ガスを充満した上で、別基板を用いたり、薄膜蒸着によりいわゆる封止を行ない信頼性を確保している。
【0005】
EL層の形成方法としては、低分子材料ではー般に真空蒸着法が用いられ、高分子材料では溶液化して、スピンコートや印刷法、転写法が用いられる。
表示装置として微細画素を形成する場合には、低分子材料ではマスク蒸着法が用いられ、高分子材料ではインクジェット法や印刷法、転写法などが用いられる。
近年では塗付可能な低分子材料も報告されている。
【0006】
このような有機EL素子は、その寿命問題を克服する為に、できるだけ酸素や水分が少ない環境にて封止され、その後の大気環境下においても、外気との遮断を封止機能にて継続できることが必要である。
従来、封止方法として、不活性ガス充満環境下において、有機EL素子を配置した基板と背面基板との外周を封止用の接着剤にて接着する方法が採られている。
しかし、この封止方法は、不活性ガス充満環境下で行うが、微量の酸素や水分の混入は避けられないという欠点があり、また、封止用の接着の際、シーリング部に不活性ガスを噛み込んだ部位は後に外気と導通となる可能性が残り、大気中で充分な封止効果があげられない問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、近年、フラットディスプレイとして自発光型の有機EL素子が注目され、開発されているが、従来の、不活性ガス充満環境下において、有機EL素子を配置した基板と背面基板との外周を封止用の接着剤にて接着する封止方法では、有機EL素子への微量の酸素や水分の混入は避けられないという欠点があり、また、封止用の接着の際、シーリング部に不活性ガスを噛み込んだ部位は後に外気と導通となる可能性が残り、大気中で充分な封止効果があげられない問題があった。
本発明はこれらに対応するもので、従来の封止方法における有機EL素子への微量の酸素や水分の混入の問題や、封止用の接着の際、シーリング部に不活性ガスを噛み込んだ部位は後に外気と導通となる可能性が残り、大気中で充分な封止効果があげられない問題を解決できる、有機EL素子の封止方法と有機EL素子の封止装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機EL素子の封止方法は、板状の第1の基材の一面側に有機EL素子を形成した有機EL素子形成部材の、有機EL素子形成面側に、一面全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に配したシール材としての接着部を介して、板状の第2の基材を接着配設し、有機EL素子を大気から隔離する封止方法であって、前記有機EL素子形成部材と、シール材用としての封止用接着剤層を第2の基板の一面の全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に対応する領域に配した接着剤層配設部材とを、不活性ガス雰囲気の環境下に、離れた状態で配し、前記不活性ガス雰囲気の圧を減圧した状態で、有機EL素子側、封止用接着剤側を互いに向かい合わせ、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを平行にして重ね合わせ、更に両部材を積層加圧し、且つ、加熱して、封止することを特徴とするものである。
そして、上記の有機EL素子の封止方法であって、不活性ガスが充満した不活性ガス室内に配されたチャンバー中において、前記減圧、積層加圧、加熱の各処理を行い、封止することを特徴とするものである。
そしてまた、上記いずれか1項に記載の有機EL素子の封止方法であって、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材との両方を、10Pa〜10、000Paにて積層加圧することを特徴とするものである。
また、上記いずれかの有機EL素子の封止方法であって、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材の少なくとも一方の保持を、静電保持方式にて行うことを特徴とするものである。
また、上記いずれかの有機EL素子の封止方法であって、前記封止用接着剤層は、熱硬化性の接着剤からなり、前記加熱により硬化させることを特徴とするものであり、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材の少なくとも一方の保持を、静電方式にて行うもので、50℃〜100℃にて前記加熱を行うことを特徴とするものである。
また、上記いずれかの有機EL素子の封止方法であって、第1の基材、第2の基材が、ガラス基板あるいは樹脂フィルムであることを特徴とするものである。
【0009】
尚、ここで、板状の第1の基材の一面側に有機EL素子を形成した有機EL素子形成部材を、有機EL形成基板とも言い、また、第1の基板側から発光を放出する場合、有機EL素子を大気から隔離するための封止体としての第2の基板を、背面基板とも言う。
また、ここで、有機EL素子形成部材、接着剤層配設部材の天地の配置は問わない。
また、チャンバーの減圧、開放のタイミングは、両部材の積層加圧以降であれば、様々な場合がある。
また、ここでは、不活性ガスとは、有機EL素子の機能を悪化させる要因とならないガス種で、安全性が高く、作業性の良く、安価で汎用的なものが好ましく、一般的には、N2 ガスがこれに相当する。
【0010】
本発明の有機EL素子の封止装置は、板状の第1の基材の一面側に有機EL素子を形成した有機EL素子形成部材の、有機EL素子形成面側に、一面全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に配したシール材としての接着部を介して、板状の第2の基材を接着配設し、有機EL素子を大気から隔離する封止方法で、前記有機EL素子形成部材と、シール材用としての封止用接着剤層を第2の基板の一面の全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に対応する領域に配した接着剤層配設部材とを、不活性ガス雰囲気の環境下に、離れた状態で配し、前記不活性ガス雰囲気の圧を減圧した状態で、有機EL素子側、封止用接着剤側を互いに向かい合わせ、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを平行にして重ね合わせ、更に両部材を積層加圧し、且つ、加熱して、封止する有機EL素子の封止方法を、行うための封止装置であって、不活性ガスが充満された不活性ガス室と、該不活性ガス室内に配置され、減圧機構を備えたチャンバーと、該チャンバー内において、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを、1対の板状の保持部にて、それぞれを、平行に保持し、平行に重ね合わせでき、且つ、保持部により保持された両部材を両部材を積層加圧する際の圧を調整できる保持加圧調整部と、前記加熱を行うための加熱部とを、備えていることを特徴とするものである。
そして、上記の有機EL素子の封止装置であって、前記保持加圧調整部は、地側に第1の保持部と、天側に第2の保持部とを備え、各保持部は、それぞれに、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを、それぞれ、保持し、両部材の間隔を狭め、該両部材を挟み、該両部材を積層した状態で調整した圧で積層加圧するものであることを特徴とするものであり、天側に第2の保持部は、静電保持方式により保持するものであることを特徴とするものである。
また、上記いずれかの有機EL素子の封止方法であって、少なくとも一方の保持部は、加熱部を兼ねるヒートプレートであることを特徴とするものである。
【0011】
(作用)
本発明の有機EL素子の封止方法は、このような構成にすることにより、従来の封止方法における有機EL素子への微量の酸素や水分の混入の問題や、封止用の接着の際、シーリング部に不活性ガスを噛み込んだ部位は後に外気と導通となる可能性が残り、大気中で充分な封止効果があげられない問題を解決できる、有機EL素子の封止方法の提供を可能としている。
詳しくは、不活性ガス充満の環境下において、更に減圧した上で、有機EL素子を配設した有機EL素子形成部材と、接着剤層配設部材とを、接着することにより、封止後の初期状態での酸素や水分の混入を極めて少なく抑え、且つ、従来の封止方法におけるシーリング部の不活性ガス噛み込みも無くすことができ、結果、良好な封止効果を得ることを可能としている。
具体的には、有機EL素子形成部材と、シール材用としての封止用接着剤層を第2の基板の一面の全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に対応する領域に配した接着剤層配設部材とを、不活性ガス雰囲気の環境下に、離れた状態で配し、前記不活性ガス雰囲気の圧を減圧した状態で、有機EL素子側、封止用接着剤側を互いに向かい合わせ、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを平行にして重ね合わせ、更に両部材を積層加圧し、且つ、加熱して、封止することにより、これを達成している。
更に具体的には、不活性ガスが充満した密閉室内に配されたチャンバー中において、前記減圧、積層加圧、加熱の各処理を行い、封止する請求項2の発明の形態が挙げられる。 また、有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材との両方を、10Pa〜10、000Paにて積層加圧する請求項3の発明の形態とすることにより、確実に、有機EL素子にダメージを与えずに、封止を行うことができ、これにより、酸素や水分の混入を少なく抑えることを可能としている。
特に、有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材の少なくとも一方の保持を、静電保持方式にて行う請求項4の発明の形態とすることにより、減圧環境下において、有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材の少なくとも一方の保持を可能としている。
尚、減圧環境下では、例えば、有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材を地側に向けて、これらの第1の基材側あるいは第2の基材側から真空吸着にて保持しようとする場合、自重に抗して保持することはできず、また、冶具による保持では、各部材に疵等つくことがあり、各基材がフィルムの場合には、平坦状に保つことも保持することも難しい。
また、封止用接着剤層としては、熱硬化性の接着剤からなり、前記加熱により硬化させる形態が挙げられ、この場合で、且つ、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材の少なくとも一方の保持を、静電保持方式にて行う場合は、通常の市販の静電接着チャックは100℃以上は無理で、硬化処理の面からは50℃以上であり、結局、50℃〜100℃にて前記加熱を行うことが必要となる。
また、第1の基材、第2の基材としては、ガラス基板あるいは樹脂フィルムが挙げられる。
【0012】
本発明の有機EL素子の封止装置は、このような構成にすることにより、従来の封止方法における有機EL素子への微量の酸素や水分の混入の問題や、封止用の接着の際、シーリング部に不活性ガスを噛み込んだ部位は後に外気と導通となる可能性が残り、大気中で充分な封止効果があげられない問題を解決できる、有機EL素子の封止装置の提供を可能としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記のように、従来の封止方法における有機EL素子への微量の酸素や水分の混入の問題や、封止用の接着の際、シーリング部に不活性ガスを噛み込んだ部位は後に外気と導通となる可能性が残り、大気中で充分な封止効果があげられない問題を解決できる、有機EL素子の封止方法と、有機EL素子の封止装置の提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明の有機EL素子の封止方法を実施するための装置の1例を示した概略断面図で、図2は本発明の有機EL素子の封止方法の実施の形態の1例の処理フローの1例を示したフロー図で、図3は本発明の有機EL素子の封止方法により封止された有機EL素子形成基板の1例を示した断面図である。
尚、図2におけるS1〜S8は処理ステップを示す。
図1〜図3中、10は不活性ガス室、11は壁部、12は保持加圧調整部、12aは載置用保持部(第1の保持部とも言う)、12bは静電式保持部(第2の保持部とも言う)、12cは加圧調整部、13はチャンバー、14は減圧部、15は減圧開放部(バルブとも言う)、16は加熱部、20は有機EL素子形成部材、21は第1の基材(ここではガラス基板)、22は有機EL素子部、22aは第1の電極配線、22bは有機EL部、22cは第2の電極配線、30は接着剤層配設部材、31は第2の基材(ここではフィルム基材)、32は封止用接着剤層、32Aは硬化した封止用接着剤層(接着部とも言う)、40は(封止された)表示部材である。
【0015】
本発明の有機EL素子の封止方法の実施の形態の1例を、図に基づいて説明する。
本例は、有機EL素子を用いた表示部材を作製するための封止方法で、図3に示すように、ガラス基板からなる板状の第1の基材21の一面側に有機EL素子22を形成した有機EL素子形成部材20の、有機EL素子形成22面側に、全面に配したシール材としての接着部32Aを介して、樹脂フィルムからなる板状の第2の基材31を接着配設して、有機EL素子を大気から隔離する構造の表示部を、作製する際の、封止の仕方の1例である。
簡単には、ガラス基板からなる板状の第1の基材21の一面側に有機EL素子22を形成した有機EL素子形成部材20と、シール材用としての熱硬化性の封止用接着剤層32を第2の基板31の一面の全面に配した接着剤層配設部材30とを、不活性ガス雰囲気の環境下に、離れた状態で配し、前記不活性ガス雰囲気の圧を減圧した状態で、有機EL素子22側、封止用接着剤32側を互いに向かい合わせ、前記有機EL素子形成部材20と接着剤層配設部材30とを平行にして重ね合わせ、更に両部材を積層加圧し、且つ、加熱して、封止し、更に減圧を開放して、前述の表示部を得るものである。
【0016】
はじめに、本例の有機EL素子の封止方法を実施するための装置の1例を図1に基づいて、簡単に説明しておく。
尚、これを以って、本発明の有機EL素子の封止装置の実施の形態例の説明に代える。 図1に示す有機EL素子の封止装置は、不活性ガスであるN2 ガスが充満された不活性ガス室10と、該不活性ガス室内10に配置され、不活性ガスに充満されたチャンバー13内の圧を減圧する減圧部14と、減圧開放部15とを備えている。
そしてまた、チャンバー13内において、前記有機EL素子形成部材20と接着剤層配設部材30とを、1対の板状の保持部、載置用保持部(第1保持部)12aと静電式保持部(第2の保持部)12bにて、それぞれを、平行に保持し、平行に重ね合わせでき、且つ、両保持部により保持された両部材20、30を積層加圧する際の圧を調整できる保持加圧調整部12と、前記加熱を行うための加熱部16とを、備えている。
【0017】
第1の保持部12aとしては、熱伝導性等からアルミニウム(以下Al)を用いているが、熱伝導性が良く、加工性の良く、平坦性良く有機EL素子形成部材20を保持できるものであれば、これに限定はされない。
第2の保持部12bとしては、天地方向移動可能なもので、保持を静電方式とするため、保持する側の表面の材質は限定される。
尚、静電方式は、第2の保持部内に電極部を内装した状態で、制御して電荷を発生させて、接着剤層配設部材30を保持するもので、現在は、静電チャック等の名で市販されている。
ここでは、第1の保持部12aと第2の保持部12bの、保持する面は互いに平行である。
後に述べるが、本例の場合、加圧調整部12cによる正圧加圧によりシリンダーを地方向に動かし、また、加圧調整部12cによる負圧加圧によりシリンダー(図示していない)を天方向に動かし、シリンダーにつながった第2の保持部12bを移動する。 ここでは、第2の保持部12bの基材としては、アルミニウムを用いているが、これに限定はされない。
【0018】
保持加圧調整部12は、地側に有機EL素子形成部材20をその第1の基材21面全体で載置する第1の保持部12aと、天側に接着剤層配設部材30を第2の基材31全面で均一に静電式にて保持する第2の保持部12bとを備え、各保持部12a、12bは、それぞれ、両部材20、30を保持し、両部材20、30の間隔を狭め、該両部材20、30を挟み、該両部材を積層した状態で、加圧調整部12cで調整した圧で積層加圧するものである。
加圧調整部12cとしては、例えば、正加圧用のエアーと負加圧用のエアーにより、加圧する圧力を制御するエアシリンダ構成のものが挙げられる。
加圧は、封止用接着剤層32の厚さやその材質等にもよるが、有機EL素子にダメージを与えない10、000Pa程度以下で、封止の効果を得る、特に、側面部における封止用接着剤層32の好適な広がりを期待できる10Pa以上で制御する。
好ましくは、3000Pa〜6000Paである。
本例の場合は、第2の保持部12bがアルミニウム板を使用しており、第2の保持部12bの自重による圧が大きいため、自重の圧を減らすように加圧調整部12cで負圧をかけて積層加圧の圧を調整する。
尚、本例では、保持加圧調整部12の加圧調整部12cが第2の保持部12bを第1の保持部12a側に移動するための駆動源となっており、加圧調整部12cにて所定の正圧力としてシリンダーを動かして、地方向に移動させ、また、加圧調整部12cにて所定の負圧力としてシリンダーを動かして、天方向に移動させる。
【0019】
また、本例においては、第1の保持部12a内に、有機EL素子形成部材20、もしくは両部材20、30を全面に均一に加熱できる過熱部16を備えており、第1の保持部12aはヒートプレートでもある。
加熱は、接着材層32が熱硬化性の場合は、硬化する温度以上にできることが要求されるが、静電式の第2の保持部を用いているため、一般には、100℃以下としないと、保持機能が損なわれてしまうため、通常は、50℃〜100℃の範囲で加熱する。
【0020】
チャンバーとしては、減圧、減圧の開放に耐え、且つ、各部の動作を問題なくできるものが要求される。
減圧部14は、真空引きを行うもので、VACポンプ等である。
減圧開放部15は、真空開放を行うもので、ここでは、開閉バルブである。
通常、減圧は、圧が低いほど酸素の含有量の面からは好ましいが、30、000Pa以下であれば、封止効果の面からは十分である。
30、000Pa〜5、000Pa、好ましくは、30、000Pa〜20、000Paとするため、チャンバー13の壁部の材質としてはアクリル等の樹脂でも良いが、これに限定はされない。
【0021】
次いで、図1に示す封止装置を用いた場合の、本例の有機EL素子の封止方法の処理の1例を図2の基づいて、説明する。
先ず、予め、ガラス基板からなる第1の基材31の一面上に有機EL素子を形成した有機EL素子形成部材20と、シール材用としての封止用接着剤層32を第2の基板31の一面全面に配した接着剤層配設部材30とを、用意しておき、両部材20、30をそれぞれ、N2 からなる不活性ガス雰囲気が充満した不活性ガス室10に入れる。(S1)
尚、通常、N2 からなる不活性ガス雰囲気が充満した不活性ガス室10では、酸素含有量を1ppm以下とできる。
次いで、チャンバー13を開放して不活性ガス雰囲気が充満した状態で、有機EL素子形成部材20を、チャンバー内の第1の保持部12a上に、その有機EL層部22側を天側にして載置き、また、接着剤層配設部材30を、チャンバー内の第2の保持部12bにて、その第2の基材31を静電式にて保持する。(S2)
次いで、チャンバーを閉じた状態にして、両部材20、30を離れた状態で、所定の圧力範囲に減圧部14にて減圧する。(S3)
通常、減圧は、圧が低いほど酸素の含有量の面からは好ましいが、ここでは、30、0〜5、000Pa、好ましくは、30、000Pa〜20、000Pの範囲に減圧する。 次いで、加圧調整部12cにて所定の正圧力としてシリンダーを動かして、第1の保持部12aと第2の保持部12b間の間隔を狭めることにより、有機EL素子形成部材20と接着剤層配設部材30との間隔を狭め、両保持部12a、12bにより両部材20、30を積層した状態で挟む。(S4)
尚、本例では、保持加圧調整部12の加圧調整部12cが第2の保持部12bを第1の保持部12a側に移動するための駆動源となっており、加圧調整部12cにて所定の正圧力としてシリンダーを動かして、地方向に移動させ、また、加圧調整部12cにて所定の負圧力としてシリンダーを天方向に移動させる。
次いで、挟んだ後、加圧調整部12cの圧を所定の圧に調整して両部材20、30を積層加圧し、同時に所定の温度に加熱し(S5)、封止用接着剤層32を硬化させる。(S6) 加圧は、封止用接着剤層32の厚さやその材質等にもよるが、10Pa〜10、000Paの範囲、好ましくは、3000Pa〜6000Paで行う。
加熱は、通常は、50℃〜100℃の範囲で行う。
次いで、減圧を開放した(S7)後、チャンバー13から、更に、不活性ガス質10から封止された表示部(図3参照)を取り出す。(S8)
このようにして、封止を行う。
【0022】
尚、本例は1例で、本発明は、これに限定されない。
本例では、第2の基材の一面全面にシール材用の封止用接着剤層を配して、封止を行っているが、第2の基材の一面の有機EL素子形成領域周辺にのみシール材用の封止用接着剤層を配して、封止を行う形態も挙げられる。
また、本例では、封止用接着剤層32として、熱硬化性の接着剤層を用いているが、これに限定はされない。
例えば、UV硬化型の接着剤層で封止効果の良いものを用いても良い。
尚、熱硬化性の接着剤層としては、エポキシ系等が一般的に用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の有機EL素子の封止方法を実施するための装置の1例を示した概略断面図である。
【図2】本発明の有機EL素子の封止方法の実施の形態の1例の処理フローの1例を示したフロー図である。
【図3】本発明の有機EL素子の封止方法により封止された有機EL素子形成基板の1例を示した断面図である。
【図4】有機EL素子の断面構造の1例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 発光
2 基板
3 透明電極
4 発光層
5 多雨項電極
10 不活性ガス室
11 壁部
12 保持加圧調整部
12a 載置用保持部(第1の保持部とも言う)
12b 静電式保持部(第2の保持部とも言う)
12c 加圧調整部
13 チャンバー
14 減圧部
15 減圧開放部(バルブとも言う)
16 加熱部
20 有機EL素子形成部材
21 第1の基材(ここではガラス基板)
22 有機EL素子部
22a 第1の電極配線
22b 有機EL部
22c 第2の電極配線
30 接着剤層配設部材
31 第2の基材(ここではフィルム基材)
32 封止用接着剤層
32A 硬化した封止用接着剤層(接着部とも言う)
40 (封止された)表示部材




【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1の基材の一面側に有機EL素子を形成した有機EL素子形成部材の、有機EL素子形成面側に、一面全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に配したシール材としての接着部を介して、板状の第2の基材を接着配設し、有機EL素子を大気から隔離する封止方法であって、前記有機EL素子形成部材と、シール材用としての封止用接着剤層を第2の基板の一面の全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に対応する領域に配した接着剤層配設部材とを、不活性ガス雰囲気の環境下に、離れた状態で配し、前記不活性ガス雰囲気の圧を減圧した状態で、有機EL素子側、封止用接着剤側を互いに向かい合わせ、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを平行にして重ね合わせ、更に両部材を積層加圧し、且つ、加熱して、封止することを特徴とする有機EL素子の封止方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL素子の封止方法であって、不活性ガスが充満した不活性ガス室内に配されたチャンバー中において、前記減圧、積層加圧、加熱の各処理を行い、封止することを特徴とする有機EL素子の封止方法。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれか1項に記載の有機EL素子の封止方法であって、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材との両方を、10Pa〜10、000Paにて積層加圧することを特徴とする有機EL素子の封止方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機EL素子の封止方法であって、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材の少なくとも一方の保持を、静電保持方式にて行うことを特徴とする有機EL素子の封止方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機EL素子の封止方法であって、前記封止用接着剤層は、熱硬化性の接着剤からなり、前記加熱により硬化させることを特徴とする有機EL素子の封止方法。
【請求項6】
請求項5に記載の有機EL素子の封止方法であって、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材の少なくとも一方の保持を、静電方式にて行うもので、50℃〜100℃にて前記加熱を行うことを特徴とする有機EL素子の封止方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の有機EL素子の封止方法であって、第1の基材、第2の基材が、ガラス基板あるいは樹脂フィルムであることを特徴とする有機EL素子の封止方法。
【請求項8】
板状の第1の基材の一面側に有機EL素子を形成した有機EL素子形成部材の、有機EL素子形成面側に、一面全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に配したシール材としての接着部を介して、板状の第2の基材を接着配設し、有機EL素子を大気から隔離する封止方法で、前記有機EL素子形成部材と、シール材用としての封止用接着剤層を第2の基板の一面の全面もしくは有機EL素子形成領域周辺に対応する領域に配した接着剤層配設部材とを、不活性ガス雰囲気の環境下に、離れた状態で配し、前記不活性ガス雰囲気の圧を減圧した状態で、有機EL素子側、封止用接着剤側を互いに向かい合わせ、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを平行にして重ね合わせ、更に両部材を積層加圧し、且つ、加熱して、封止する有機EL素子の封止方法を、行うための封止装置であって、不活性ガスが充満された不活性ガス室と、該不活性ガス室内に配置され、減圧機構を備えたチャンバーと、該チャンバー内において、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを、1対の板状の保持部にて、それぞれを、平行に保持し、平行に重ね合わせでき、且つ、保持部により保持された両部材を両部材を積層加圧する際の圧を調整できる保持加圧調整部部と、前記加熱を行うための加熱部とを、備えていることを特徴とする有機EL素子の封止装置。
【請求項9】
請求項8に記載の有機EL素子の封止装置であって、前記保持加圧調整部は、地側に第1の保持部と、天側に第2の保持部とを備え、各保持部は、それぞれに、前記有機EL素子形成部材と接着剤層配設部材とを、それぞれ、保持し、両部材の間隔を狭め、該両部材を挟み、該両部材を積層した状態で調整した圧で積層加圧するものであることを特徴とする有機EL素子の封止装置。
【請求項10】
請求項9に記載の有機EL素子の封止装置であって、天側に第2の保持部は、静電保持方式により保持するものであることを特徴とする有機EL素子の封止装置。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれか1項に記載の有機EL素子の封止方法であって、少なくとも一方の保持部は、加熱部を兼ねるヒートプレートであることを特徴とする有機EL素子の封止装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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