説明

有機EL素子

【課題】発光効率が高くかつ容易に製造可能であり、さらには、発光効率を高くして高輝度とすることにより、表示装置の画素の他、照明器具の発光素子としても用いることが可能な有機EL素子を提供する。
【解決手段】透明基板1上に、有機発光層4を透明電極3及び背面電極5にて挟持してなる発光素子6を備え、この透明基板1の表面の微細な凹凸面1a上に、この凹凸面1aを充填して平坦化する高屈折率層2を設け、この高屈折率層2は、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有し、この高屈折率微粒子の質量(M)と、高屈折率微粒子の質量(M)とバインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光効率が高く、照明装置の発光源としても利用することができる有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自己発光機能を有しかつ消費電力が小さい発光素子として、有機エレクトロルミネセンス(electro luminecence:EL)素子が注目されている。
この有機EL素子は、透明基板上に、有機発光層を一対の電極にて挟持した発光素子を備えたもので、固体素子であることから、従来の白熱電球や蛍光灯等の照明器具と比べて寿命が長くかつ耐衝撃性に優れており、しかも取り扱いが容易であるという特徴を有するために、フラットパネルディスプレイ(FPD)の表示面を構成する画素の他、様々な照明装置の発光素子としての利用等、今後幅広い用途が期待される素子である。
【0003】
しかしながら、従来の有機EL素子においては、有機発光層から放射された光の取り出し効率が20%を超えることが難しいという問題点があった。
その理由は、有機発光層から放射された光が透明電極や透明基板を透過して外部に取り出される際に、透明電極と透明基板との界面や透明基板と外部の空気との界面にて反射してしまい、その光強度が80%程度も減衰してしまうからである。
この問題点を解決するためには、反射の原因となる電極と透明基板との界面や透明基板と外部の空気との界面に、可視光線の波長以下の微細かつ周期的な凹凸構造を設けることが効果的であり、これまでにも様々な構造の有機EL素子が提案されている。
【0004】
例えば、屈折率差の大きい(界面における反射が大きい)透明電極と透明基板の間に微細な凹凸構造を設け、この凹凸構造の屈折率を、凸部にあたる透明基板側を透明基板自体の屈折率と同一とし、凹部にあたる透明電極側を透明電極の屈折率と近似させた構造の有機EL素子が提案されている(特許文献1)。
この有機EL素子では、有機発光層から放射された光が透明電極、凹凸構造を順次透過し、最後に透明基板を透過して空気中に放射される際に、透明電極から透明基板へ至るまでの屈折率変化が見かけ上連続的な変化となるために、界面における反射も低減されたものとなっており、光の取り出し効率の改善が図られている。
【特許文献1】特開2007−287486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の凹凸構造を有する有機EL素子においても、やはり、放射される光の強度の減衰をさらに小さくすることが求められているが、さらなる発光効率の向上が難しいという問題点があった。
従来の凹凸構造では、基板側の凸部についてはエッチング法等を利用して透明基板自体を加工する、あるいはナノインプリント法等を用いて透明基板上に透明基板と同等の屈折率を有する材料を用いてパターンを形成することにより作製することができる。
一方、凹部にあたる透明電極側は、透明電極として一般に屈折率が1.9から2.1のスズ添加酸化インジウム(Indium Tin Oxide:ITO)が用いられるために、凹部を構成する層についてはITOの屈折率に近似させた1.7以上かつ2.1以下の高屈折率に調整する必要がある。しかしながら、この凹部を構成する層を高屈折率に調整するためには、この高屈折率層を形成するための材料の選択及び高屈折率層の作製工程に限定要素が多く、作製が困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、有機EL素子の反射の原因となる電極と透明基板との界面に微細な凹凸を有する凹凸面を形成する場合に、この凹凸面の凹部を形成する高屈折率層が、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子を含むことにより、発光効率が高くかつ容易に製造可能な有機EL素子を提供することを目的とする。さらには、発光効率を高くして高輝度とすることにより、表示装置の画素としての用途だけではなく、照明器具の発光素子としても用いることが可能な有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、有機EL素子の電極と透明基板との界面に微細な凹凸を有する凹凸面を形成する場合に、高屈折率微粒子とバインダー成分を用いて形成した高屈折率層における高屈折率微粒子の屈折率と粒子径、及び高屈折率微粒子とバインダー成分との質量比を調整することにより、凹凸面の凹部を形成する高屈折率層の屈折率を必要とされる屈折率に容易に制御することができ、かつ製造が容易であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の有機EL素子は、透明基板上に、有機発光層を一対の電極にて挟持してなる発光素子を備えた有機EL素子において、前記透明基板の表面を微細な凹凸を有する凹凸面とするとともに、この凹凸面上に、この凹凸面に充填されて該凹凸面を平坦化する高屈折率層を設け、この高屈折率層は、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有し、前記高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)と前記バインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の有機EL素子は、透明基板上に、有機発光層を一対の電極にて挟持してなる発光素子を備えた有機EL素子において、前記透明基板の表面に、微細な凹凸を有する凹凸面を備えた低屈折率層を設け、この低屈折率層上に、前記凹凸面に充填されて該凹凸面を平坦化する高屈折率層を設け、この高屈折率層は、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有し、前記高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)と前記バインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下であることを特徴とする。
【0010】
これらの有機EL素子では、前記高屈折率層は、前記高屈折率微粒子と前記バインダー成分と分散媒とを含有する塗料を塗布することにより形成され、前記塗料中の前記高屈折率微粒子の平均分散粒子径は7nm以上かつ100nm以下であり、前記塗料中の前記高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)と前記バインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下であることが好ましい。
前記高屈折率微粒子は、ジルコニアまたはチタニアであることが好ましい。
前記高屈折率微粒子は、その表面がシリコン化合物を含む表面修飾剤にて被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機EL素子によれば、透明基板の表面を微細な凹凸を有する凹凸面とするとともに、この凹凸面上に、この凹凸面に充填されて該凹凸面を平坦化する高屈折率層を設け、この高屈折率層を、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有したものとし、この高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)とバインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))を0.50以上かつ0.99以下としたので、有機発光層から放射される光の透明基板と高屈折率層との界面における反射光を低減することができ、発光効率を向上させることができ、しかも製造が容易である。
また、発光効率が高くかつ高輝度であるから、表示装置の画素としての用途だけではなく、照明器具の発光素子としても用いることができる。
【0012】
本発明の他の有機EL素子によれば、透明基板の表面に、微細な凹凸を有する凹凸面を備えた低屈折率層を設け、この低屈折率層上に、この凹凸面に充填されて該凹凸面を平坦化する高屈折率層を設け、この高屈折率層を、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有したものとし、この高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)とバインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))を0.50以上かつ0.99以下としたので、有機発光層から放射される光の透明基板と高屈折率層との界面における反射光を低減することができ、発光効率を向上させることができ、しかも製造が容易である。
また、発光効率が高くかつ高輝度であるから、表示装置の画素としての用途だけではなく、照明器具の発光素子としても用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の有機EL素子を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
「第1の実施形態」
図1は、本発明の第1の実施形態の有機EL素子を示す断面図であり、図において、1は表面がサンドブラスト法、エッチング法等により加工されて微細な凹凸を有する凹凸面1aとされたガラス等からなる透明基板、2は透明基板1の凹凸面1aに充填され該凹凸面1aを平坦化する高屈折率層、3は高屈折率層2の平坦な表面2a上に形成されITO等の透明電極材料からなる透明電極、4は透明電極3上に形成され正孔輸送層、発光層、電子輸送層等の多層構造からなる有機発光層、5は有機発光層4上に形成され金属アルミニウム等の電極材料からなる背面電極であり、有機発光層4を透明電極3及び背面電極5にて挟持することにより発光素子6が構成されている。
【0015】
透明基板1の凹凸面1aは、有機発光層4から放射された光を透過する際に、屈折率差の大きい高屈折率層2と透明基板1との界面における光の反射を防止するためのもので、その断面形状は、楔型状または鋸歯状が好ましく、この凹凸面1aの寸法、すなわち山と山との間隔(ピッチ)は有機発光層4から放射される光の波長以下が好ましい。なお、反射防止作用については後述する。
【0016】
高屈折率層2は、透明電極3との界面における光の反射を低減するために、その屈折率を透明電極3の屈折率に近似させたもので、例えば、透明電極3がITOからなる場合、その屈折率は1.7以上かつ2.1以下が好ましい。
その理由は、ITOの屈折率が1.9から2.1の範囲であることから、高屈折率層2の屈折率を上記範囲内とすることにより、透明電極3と高屈折率層2との界面における反射を防止することができるからである。
【0017】
この高屈折率層2は、高屈折率微粒子とバインダー成分とを含有しており、この高屈折率微粒子の平均分散粒子径は7nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上かつ50nm以下である。
ここで、平均分散粒子径が7nm未満では、微粒子の比表面積が大きくなり過ぎて表面活性が大きくなり、その結果、分散媒中に分散させた場合に凝集し易くなるからである。特に、この高屈折率微粒子の表面をシリコン化合物を含む表面修飾剤にて被覆した場合に、必要となる表面修飾剤の量が必然的に多くなり、しかも表面修飾剤の屈折率が高屈折率微粒子の屈折率と比べて低く、表面処理した高屈折微粒子の屈折率が低下し、必要とする高屈折率が得られなくなるからである。
【0018】
また、この高屈折率微粒子の平均分散粒子径が100nmを越えると、光の散乱が生じたり、透明基板1の凹凸面1a上に高屈折率層2を形成した場合に、凹凸面1aの微細な凹凸の間隙を埋めることができなくなったり、あるいは高屈折率層2と透明電極3との間の密着性が低下する等の問題が生じるので好ましくない。
【0019】
この高屈折率微粒子の屈折率は1.8以上が必要であり、好ましくは2.0以上である。
上述したように、高屈折率層2の屈折率は、透明電極3がITOの場合1.7以上が望ましいが、この高屈折率層2に含まれるバインダー成分が、例えばシリケート系材料(屈折率1.45〜1.46程度)のように比較的低屈折率であることから、高屈折率層2の屈折率を1.7以上に維持するためには、含有する高屈折率微粒子の屈折率を1.8以上とし、高屈折率層2の屈折率低下を防ぐ必要があるからである。
【0020】
この様な高屈折率微粒子としては、ジルコニア(屈折率2.05〜2.4)、チタニア(屈折率2.3〜2.7)、チタン酸カリウム(屈折率2.68)、チタン酸バリウム(屈折率2.3〜2.5)、酸化亜鉛(屈折率2.01〜2.03)の群から選択される1種のみを単体で、または2種以上を混合して用いることができる。
この様な高屈折率微粒子の中でも特に、ジルコニアまたはチタニアが好適に用いられる。ジルコニア、チタニアは、共に、屈折率が2.0以上と極めて高い金属酸化物であり、物質としての化学的安定性が高く、可視光線の帯域においても光の吸収が無く、粒径が小さいものが得られるので好ましい。
【0021】
この高屈折率微粒子は、その表面がシリコン化合物を含む表面修飾剤、特に有機シリコン化合物の表面修飾剤にて被覆されていることが好ましい。
この高屈折率微粒子の表面をシリコン化合物を含む表面修飾剤にて被覆することにより、後述の塗料において、表面被覆された高屈折率微粒子と、バインダー成分のアルコキシドモノマーやオリゴマー、あるいは、これらアルコキシドを原料としてこれを加水分解させた生成物等との相溶性が高まり、結果として、この高屈折率微粒子とバインダー成分との間で、良好な分散特性が得られるからである。
【0022】
この有機シリコン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシランメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシランカップリング剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシランカップリング剤;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリロキシシランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクロキシシランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシランカップリング剤;等のシリコーンカップリング剤、あるいは、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルが挙げられ、特に好ましくは、上記のシリコーンオイルである。
【0023】
また、バインダー成分としては、上記の高屈折率微粒子の付着強度及び微粒子間の空隙を埋めることができ、さらには耐熱性を備え、透明性を損なわないものであればよく、特に限定はされないが、例えば、酸化ケイ素系、酸化ジルコニウム系、酸化チタン系等の金属酸化物や無機酸化物、あるいはこれらの重合物が挙げられる。
中でも酸化ケイ素系の重合物(Si−O−Si結合の骨格を有するもの:シリケート系材料)は、重合度、すなわち分子量や、Si−O骨格の末端や中間においてSiに結合し、Si−O骨格形成には関与していない基である官能基の量等を制御し易く、容易に用いることができるので好適である。
【0024】
この高屈折率層2における高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)とバインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下が好ましく、より好ましくは0.70以上かつ0.95以下である。
ここで、比(M/(M+M))を0.50以上に限定した理由は、高屈折率層2の屈折率を1.7以上に維持するためである。高屈折率層2では、高屈折率微粒子の含有比率が多いことが望ましく、高屈折率微粒子の屈折率によるところも大きいが0.7以上であればより好ましい。これは、高屈折率微粒子の含有比率が50%未満になると、低屈折率材料であるバインダー成分の影響により十分な高屈折率が得られなくなるからである。
【0025】
また、比(M/(M+M))を0.99以下に限定した理由は、バインダー成分の含有比率が1%未満になると、高屈折率微粒子間の接合力が低下し、凹凸面1a上に該凹凸面1aを平坦化する高屈折率層2を形成した場合に、凹凸面1aと高屈折率層2との間で十分な密着性が得られなくなるからである。
【0026】
この高屈折率層2は、表面をサンドブラスト法、エッチング法等により微細な凹凸を有する凹凸面1aに加工した透明基板1を用意し、この透明基板1の凹凸面1aに上述した高屈折率微粒子及びバインダー成分と分散媒とを含有する塗料を塗布することにより形成することができる。
【0027】
この塗料中の高屈折率微粒子の平均分散粒子径は7nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上かつ50nm以下である。
また、この塗料中の高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)とバインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下が好ましく、より好ましくは0.70以上かつ0.95以下である。
この高屈折率微粒子の平均分散粒子径及び比(M/(M+M))を数値限定した理由については、既に説明しているので、ここでは省略する。
【0028】
上記のバインダー成分を用いる方法としては、これらバインダー成分の超微粒子を高屈折率微粒子とともに塗料中に分散させても良いが、バインダー成分原料としてのアルコキシドモノマーやオリゴマー、あるいは、これらアルコキシドを原料としてこれを加水分解させた生成物、例えば、一般にゾルやゲルと称されるもの等を塗料中に含有させ、塗布後に加熱処理を行ない、アルコキシドモノマーやオリゴマーを分解・重合させて酸化物系の重合物を得る方法、または、加水分解生成物を脱水・重合あるいは脱水・縮合させて酸化物系の重合物を得る方法が好適である。
【0029】
上記の分散媒としては、高屈折率層2の製造工程において揮発性や毒性に問題がなければ良く、バインダー成分の溶解性や高屈折率微粒子の分散性の面から適宜選定することが好ましい。
上記の分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類等が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種のみ、または2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
これらの分散媒のうち、塗料用として特に好ましいものは、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類である。
【0031】
この高屈折率層2の形成方法としては、透明基板1の微細な凹凸面1aに、上述した高屈折率微粒子及びバインダー成分と分散媒とを含有する塗料を塗布し、この凹凸面1aの微細な凹凸の間隙を充填するように高屈折率層2を形成すればよい。
塗料の塗布方法としては、スピンコート法、スプレイコート法、スリットコート法等の各種方法が挙げられるが、透明基板1の凹凸面1aの微細な凹凸の間隙を充填するように高屈折率層2が形成されればよく、これらの方法に限定されるものではない。
また、バインダー成分を重合させ、塗布された高屈折率層を緻密化するとともに透明基板1との密着性を向上させるために、塗布後に加熱処理を行なうことが好ましい。
【0032】
有機EL素子では、透明電極3と背面電極5との間に所定の直流電圧を印加すると、有機発光層4にイオンが注入されて再結合が起こり、この再結合により光L1が出射される。
通常の有機EL素子においては、有機発光層4から出射された光Lは、透明電極3を透過し透明基板1に直接入射する。透明電極は高屈折率(1.9〜2.1)のITOで形成されており、透明電極3と透明基板1(シリカ系ガラスの場合、屈折率は1.4〜1.45程度)との屈折率差が大きいため、透明電極3と透明基板1の界面での反射光の強度が大きく、この反射光の強度を低減することが、有機EL素子の発光効率の向上に不可欠である。
【0033】
本実施形態の有機EL素子では、有機発光層4から出射された光Lは、透明電極3を透過し高屈折率層2に入射する。この透明電極3と高屈折率層2との界面においては、両者の屈折率を近似させているために反射光はほとんど発生しない。
次いで、この高屈折率層2を透過した光Lは、凹凸面1aから透明基板1内に入射する。
【0034】
本実施形態の有機EL素子では、透明基板1の凹凸面1aが楔型状または鋸歯状の形状に光の波長以下の寸法で形成されているので、光Lが透明基板1の凹凸面1a内の高屈折率層の部分を透過する場合、この部分が光Lに対して屈折率が連続的に変化する一体の物体として作用し、透過する光Lは界面を感じることがない。これにより、光Lが高屈折率層2と透明基板1の凹凸面1aとの界面を透過する際には、反射光R1はほとんど発生しないこととなる。
このようにして、透明電極3と透明基板1との間の反射光R1を大幅に低減することができる。
【0035】
透明基板1内に入射した光Lは、透明基板1から外方へ向かって出射する際に透明基板1と空気との界面、すなわち透明基板1の出射側の表面で反射光R2が発生するが、この反射光R2の強度は、通常の有機EL素子の透明電極と透明基板との間の反射光R1の強度と比べて弱い。
したがって、透明電極3と透明基板1との間の反射光R1を大幅に低減することにより、有機EL素子の反射光を大幅に低減することができ、有機EL素子の発光効率を大きく向上させることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の有機EL素子によれば、透明基板1の表面を微細な凹凸を有する凹凸面1aとするとともに、この凹凸面1a上に、この凹凸面1aに充填されて凹凸面1aを平坦化する高屈折率層2を設け、この高屈折率層2を、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有したものとし、この高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)とバインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))を0.50以上かつ0.99以下としたので、有機発光層4から放射される光Lの透明基板1と高屈折率層2との界面における反射光R1の強度を低減することができ、有機EL素子の発光効率を向上させることができる。
【0037】
しかも、透明基板1の微細な凹凸面1aに高屈折率微粒子及びバインダー成分と分散媒とを含有する塗料を塗布すればよいので、製造が容易である。
また、発光効率が高くかつ高輝度であるから、表示装置の画素としての用途だけではなく、照明器具の発光素子としても用いることができる。
【0038】
「第2の実施形態」
図2は、本発明の第2の実施形態の有機EL素子を示す断面図であり、本実施形態の有機EL素子が第1の実施形態の有機EL素子と異なる点は、第1の実施形態の有機EL素子では、透明基板1の表面をサンドブラスト法等により微細加工して微細な凹凸を有する凹凸面1aとし、この凹凸面1a上に、凹凸面1aに充填されて平坦化する高屈折率層2を設けたのに対し、本実施形態の有機EL素子では、ガラス等からなる平板状の透明基板11の表面11aに、微細な凹凸を有する凹凸面12aを備えた低屈折率層12を設け、この低屈折率層12上に、凹凸面12aに充填されて凹凸面12aを平坦化する高屈折率層13を設けた点である。
【0039】
低屈折率層12は、透明基板11と同等の材質からなるもので、屈折率が透明基板11と近似したものである。この低屈折率層12と透明基板11との界面における反射光を極力低減するためには、低屈折率層12の屈折率と透明基板11の屈折率とが同等であることが好ましい。
【0040】
この低屈折率層12の凹凸面12aは、有機発光層4から放射された光を透過する際に、この凹凸面12aと高屈折率層13との界面における光の反射を防止するためのもので、その断面形状は、楔型状または鋸歯状が好ましく、この凹凸面12aの寸法、すなわち山と山との間隔(ピッチ)は有機発光層4から放射される光の波長以下が好ましい。
【0041】
この凹凸面12aを有する低屈折率層12は、ガラス基板等の透明基板11の表面11aに、透明基板11と屈折率が近似した無機材料となる化合物、例えばシリコンアルコキシドやアルキルシリケート等のケイ素有機化合物の加水分解生成物であるゾル・ゲル層や、シリコンアルコキシドやアルキルシリケート等のケイ素有機化合物と分散媒とを含む塗料を塗布した塗布層を形成し、このゾル・ゲル層や未硬化の塗布層に凹凸面12aの形状を形成した「型(スタンパ)」を圧着して、型の形状をゾル・ゲル層や塗布層に転写する、いわゆるナノインプリント法により形成することができる。
【0042】
また、ガラス基板等の透明基板11の表面11aに、透明基板11と屈折率が近似した無機材料となる化合物、例えばシリコンアルコキシドやアルキルシリケート等のケイ素有機化合物と分散媒とを含む塗料を塗布し、熱処理して低屈折率層12を形成し、この低屈折率層12の表面ををサンドブラスト法、エッチング法等により微細加工して微細な凹凸を有する凹凸面12aとし、この凹凸面12aに第1の実施形態で得られた高屈折率微粒子及びバインダー成分と分散媒とを含有する塗料を塗布することにより形成してもよい。
【0043】
なお、透明基板11の材質及び高屈折率層13の材質や製造方法については、第1の実施形態の透明基板1及び高屈折率層2と全く同様であるので、説明を省略する。
【0044】
本実施形態の有機EL素子では、有機発光層4から出射された光Lは、透明電極3を透過し高屈折率層13に入射する。この透明電極3と高屈折率層13との界面においては、両者の屈折率が近似しているために反射光はほとんど発生しない。
【0045】
次いで、高屈折率層13を透過した光Lは、凹凸面12aから低屈折率層12内に入射する。
ここでは、低屈折率層12の凹凸面12aが楔型状または鋸歯状の形状に光の波長以下の寸法で形成されているので、光Lが低屈折率層12の凹凸面12a内の高屈折率層の部分を透過する場合、この部分が光Lに対して屈折率が連続的に変化する一体の物体として作用し、透過する光Lは界面を感じることがない。これにより、光Lが高屈折率層13と低屈折率層12の凹凸面12aとの界面を透過する際には、反射光R11はほとんど発生しないこととなる。
【0046】
このようにして、透明電極3と透明基板11との間の反射光R11を大幅に低減することができる。
したがって、透明電極3と透明基板11との間の反射光R11を大幅に低減することにより、有機EL素子の反射光を大幅に低減することができ、有機EL素子の発光効率を大きく向上させることができる。
本実施形態の有機EL素子においても、第1の実施形態の有機EL素子と全く同様の作用、効果を奏することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0048】
「実施例1」
(ジルコニア微粒子の作製)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加え、混合物を得た。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、上記のスラリー中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30質量%であった。
【0049】
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、600℃にて2時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した。その後、乾燥器にて乾燥させ、ジルコニア微粒子(Z−1)を作製した。
【0050】
(ジルコニア高屈折率塗料の作製)
上記のジルコニア微粒子(Z−1)30gに、分散媒としてMEKを68.5g、表面修飾剤としてシランカップリング剤 KBM−303(信越化学(株)社製)を1.5g加えて混合し、その後分散処理を行い、ジルコニア分散液(Z−1)を作製した。
このジルコニア分散液(Z−1)95gに、バインダー成分原料として、シリカゾルのアルコール分散液 HAS−10(コルコート社製)を15g、溶媒としてMEKを110g加え、攪拌混合することにより、実施例1のジルコニア高屈折率塗料(Z−1)を作製した。なお、バインダー成分原料であるシリカゾルは、後の加熱処理により脱水・重合してシリケート系バインダー成分となる。
【0051】
(有機EL素子用基板の作製)
屈折率1.50のガラス基板の表面にサンドブラスト法により凹凸面を形成し、次いで、この凹凸面を平坦化する様にジルコニア高屈折率塗料(Z−1)をスリットコート法にて塗布し、次いで、大気中、400℃にて5分焼成し、ガラス基板の凹凸面に高屈折率層が形成された有機EL素子用基板(Z−1)を作製した。
【0052】
(有機EL素子の作製)
有機EL素子用基板(Z−1)の高屈折率層の表面に、ITO膜をスパッタ法により成膜し、透明電極とした。次いで、この透明電極上に発光色が白色の有機発光層を真空蒸着法により成膜した。
次いで、この有機発光層上に金属アルミニウム膜を蒸着法により成膜して背面電極とし、有機EL素子を作製した。
以上の作製条件をまとめて、表1に示す。
【0053】
(評価)
作製した高屈折率塗料、有機EL素子用基板及び有機EL素子それぞれの評価を、下記の方法により行った。評価結果を表1に示す。
(1)塗料中の高屈折率微粒子の平均分散粒子径
ジルコニア高屈折率塗料(Z−1)をMEKにて希釈し、ジルコニア微粒子の含有率を1質量%に調製した試料を作製し、この試料の粒度分布を、動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用いて測定し、この測定結果から平均分散粒子径を求めた。
【0054】
(2)高屈折率層の屈折率
屈折率1.50のガラス基板の表面にジルコニア高屈折率塗料(Z−1)をスピンコート法にて塗布し、次いで、大気中、400℃にて5分焼成し、ガラス基板の表面に高屈折率層が形成された試料を作製した。
この試料の高屈折率層の屈折率を、多入角エリプソメーター M―2000D(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製)を用いて測定した。
(3)有機EL素子用基板のヘイズ
有機EL素子用基板のヘイズ値を、オートマチックヘーズメーター TC−HIIIDP(東京電色社製)を用いて測定した。
(4)有機EL素子用基板の着色
有機EL素子用基板に形成された高屈折率層の着色の有無を目視にて評価した。ここでは、着色が認められなかったものを「○」、着色が認められたものを「×」とした。
【0055】
(5)高屈折率層の密着性
有機EL素子用基板の高屈折率層の表面にセロハンテープを貼り、このセロハンテープを剥した際の高屈折率層の表面における剥れの有無を目視にて評価した。ここでは、剥れが認められなかったものを「○」、剥れが認められたものを「×」とした。
(6)有機EL素子の発光強度
有機EL素子の全波長の発光強度を、分光放射輝度計 CS−1000A(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
得られた全波長の発光強度について、後述する比較例1の有機EL素子(ガラス基板の表面に直接、透明電極、有機発光層、背面電極を順次成膜したもの)を基準として相対値化し、発光強度が10%以上向上したものを「◎」、5%以上かつ10%未満向上したものを「○」、5%未満しか向上しなかったものを「△」、全く向上しないか低下したものを「×」とした。
以上の評価結果をまとめて、表2に示す。
【0056】
「実施例2」
実施例1にて作製したジルコニア分散液(Z−1)80gに、バインダー成分原料として、シリカゾルのアルコール分散液 HAS−10(コルコート社製)を60g、溶媒としてMEKを80g加え、攪拌混合することにより、実施例2のジルコニア高屈折率塗料(Z−2)を作製した。
このジルコニア高屈折率塗料(Z−2)を用いて、実施例1に準じて有機EL素子用基板及び有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0057】
「実施例3」
(チタニア微粒子の作製)
4塩化チタン1540gに純水40L(リットル)をゆっくりと加え、さらに28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、酸化チタン前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加え、混合物を得た。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、上記のスラリー中のチタンイオンの酸化チタン換算値に対して30質量%であった。
【0058】
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、600℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した。その後、乾燥器にて乾燥させ、チタニア微粒子(T−1)を作製した。
【0059】
(チタニア高屈折率塗料の作製)
上記のチタニア微粒子(T−1)30gに、分散媒としてMEKを68.5g、表面修飾剤としてシランカップリング剤 KBM−503(信越化学社製)を1.5g加えて混合し、その後分散処理を行い、チタニア分散液(T−1)を作製した。
このチタニア分散液(T−1)50gに、バインダー成分原料として、シリカゾルのアルコール分散液 HAS−10(コルコート社製)を150g、溶媒としてMEKを20g加え、攪拌混合することにより、実施例3のチタニア高屈折率塗料(T−1)を作製した。
【0060】
(有機EL素子用基板及び有機EL素子の作製ならびに評価)
このチタニア高屈折率塗料(T−1)を用いて、実施例1に準じて有機EL素子用基板及び有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0061】
「実施例4」
実施例1にて作製したジルコニア分散液(Z−1)80gに、分散媒としてMEKを68.5g、表面修飾剤としてプライサーフ A212E(第一工業製薬社製)を1.5g加えて混合し、その後分散処理を行い、ジルコニア分散液(Z−2)を作製した。
このジルコニア分散液(Z−1)80gに、バインダー成分原料として、シリカゾルのアルコール分散液 HAS−10(コルコート社製)を60g、溶媒としてMEKを80g加え、攪拌混合することにより、実施例4のジルコニア高屈折率塗料(Z−3)を作製した。
このジルコニア高屈折率塗料(Z−3)を用いて、実施例1に準じて有機EL素子用基板及び有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0062】
「実施例5」
屈折率1.50のガラス基板の表面に、シリカゾルのアルコール分散液 HAS−10(コルコート社製)をスピンコート法により塗布し、乾燥させて、厚みが2μmのシリカゲル層を形成した。次いで、このシリカゲル層にサンドブラスト法により凹凸面を形成したスタンパを押し当て、凹凸面の形状をシリカゲル層に転写した後、400℃にて10分間加熱処理し、低屈折率層を形成した。
この低屈折率層を形成したガラス基板を用いて、実施例1に準じて有機EL素子用基板及び有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0063】
「比較例1」
屈折率1.50のガラス基板そのものを有機EL素子用基板(R−1)とし、この有機EL用基板(R−1)を用いて、実施例1に準じて有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0064】
「比較例2」
実施例1にて作製したジルコニア分散液(Z−1)40gに、バインダー成分原料として、シリカゾルのアルコール分散液 HAS−10(コルコート社製)を180g加え、攪拌混合することにより、比較例2のジルコニア高屈折率塗料(Z−4)を作製した。
このジルコニア高屈折率塗料(Z−4)を用いて、実施例1に準じて有機EL素子用基板及び有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0065】
「比較例3」
(チタニア微粒子の作製)
4塩化チタン1540gに純水40L(リットル)をゆっくりと加え、さらに28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、酸化チタン前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加え、混合物を得た。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、上記のスラリー中のチタンイオンの酸化チタン換算値に対して30質量%であった。
【0066】
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。
次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、800℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した。その後、乾燥器にて乾燥させ、チタニア微粒子(T−2)を作製した。
【0067】
(チタニア高屈折率塗料の作製)
上記のチタニア微粒子(T−2)30gに、分散媒としてMEKを68.5g、表面修飾剤としてシランカップリング剤 KBM−503(信越化学(株)社製)を1.5g加えて混合し、その後分散処理を行い、チタニア分散液(T−2)を作製した。
このチタニア分散液(T−2)50gに、バインダー成分原料として、シリカゾルのアルコール分散液 HAS−10(コルコート社製)を150g、溶媒としてMEKを20g加え、攪拌混合することにより、比較例3のチタニア高屈折率塗料(T−2)を作製した。
【0068】
(有機EL素子用基板及び有機EL素子の作製ならびに評価)
このチタニア高屈折率塗料(T−2)を用いて、実施例1に準じて有機EL素子用基板及び有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0069】
「比較例4」
実施例1にて作製したジルコニア分散液(Z−1)100gに、MEKを40g加え、攪拌混合することにより、比較例4のジルコニア高屈折率塗料(Z−5)を作製した。
このジルコニア高屈折率塗料(Z−5)を用いて、実施例1に準じて有機EL素子用基板及び有機EL素子を作製し、実施例1に準じて各種の評価を行った。作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
上記の評価結果によれば、実施例1から3の透明基板は、それらの表面を微細な凹凸を有する凹凸面とするとともに、この凹凸面の微細な凹凸を充填するように高屈折率層が形成されており、この高屈折率層は、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有し、かつ、この高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)とバインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))が0.50以上かつ0.99以下となっている。
【0073】
また、実施例5の透明基板は、その表面に微細な凹凸を有する低屈折率層を形成するとともに、低屈折率層の凹凸面の微細な凹凸を充填するように高屈折率層が形成されており、この高屈折率層は、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有し、かつ、この高屈折率微粒子の質量(MH)と、この高屈折率微粒子の質量(MH)とバインダー成分の質量(MB)との和(MH+MB)との比(MH/(MH+MB))が0.50以上かつ0.99以下となっている。
【0074】
したがって、実施例1から3及び実施例5は、有機EL素子用基板としての特性に優れるとともに、この基板を用いて作製された有機EL素子は、基準となる比較例1の有機EL素子と比べて、5%〜10%以上の発光強度の増加が認められ、良好な特性を示している。
また、実施例4の透明基板は、実施例1から3の透明基板と同様、発光強度の増加が認められたが、表面修飾剤として有機系のプライサーフ A212Eを用いたために、高屈折率層に多少の着色が認められた。
【0075】
一方、比較例2においては、高屈折率層中のバインダー成分の量が多すぎるために、この高屈折率層の屈折率が低下しており、反射光の発生を防止する機能が十分ではなかった。したがって、反射光の光量が多く、十分な発光強度の増加を得ることができなかった。
また、比較例3においては、高屈折率微粒子の平均分散粒子径が大きすぎたために、ヘイズ値が上昇し、十分な発光強度の増加を得ることができなかった。
また、比較例4においては、高屈折率層がバインダー成分を含有していなかったために、良好な高屈折率層を形成することができず、したがって、この高屈折率層の上に有機EL素子を形成することが難しかった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態の有機EL素子を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の有機EL素子を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 透明基板
1a 凹凸面
2 高屈折率層
2a 表面
3 透明電極
4 有機発光層
5 背面電極
6 発光素子
11 透明基板
11a 表面
12 低屈折率層
12a 凹凸面
13 高屈折率層
L 光
R1、R2 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、有機発光層を一対の電極にて挟持してなる発光素子を備えた有機EL素子において、
前記透明基板の表面を微細な凹凸を有する凹凸面とするとともに、この凹凸面上に、この凹凸面に充填されて該凹凸面を平坦化する高屈折率層を設け、
この高屈折率層は、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有し、
前記高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)と前記バインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下であることを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
透明基板上に、有機発光層を一対の電極にて挟持してなる発光素子を備えた有機EL素子において、
前記透明基板の表面に、微細な凹凸を有する凹凸面を備えた低屈折率層を設け、この低屈折率層上に、前記凹凸面に充填されて該凹凸面を平坦化する高屈折率層を設け、
この高屈折率層は、平均分散粒子径が7nm以上かつ100nm以下、かつ屈折率が1.8以上の高屈折率微粒子と、バインダー成分とを含有し、
前記高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)と前記バインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下であることを特徴とする有機EL素子。
【請求項3】
前記高屈折率層は、前記高屈折率微粒子と前記バインダー成分と分散媒とを含有する塗料を塗布することにより形成され、
前記塗料中の前記高屈折率微粒子の平均分散粒子径は7nm以上かつ100nm以下であり、
前記塗料中の前記高屈折率微粒子の質量(M)と、この高屈折率微粒子の質量(M)と前記バインダー成分の質量(M)との和(M+M)との比(M/(M+M))は、0.50以上かつ0.99以下であることを特徴とする請求項1または2記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記高屈折率微粒子は、ジルコニアまたはチタニアであることを特徴とする請求項1、2または3記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記高屈折率微粒子は、その表面がシリコン化合物を含む表面修飾剤にて被覆されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の有機EL素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−129184(P2010−129184A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299250(P2008−299250)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】