説明

有機EL表示パネルおよびその製造方法

【課題】有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が未硬化の状態で外部に流出することを防止した有機EL表示パネルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】封止基板3は、基板本体21と、この基板本体21の一面(内面側)21aにおける周縁部に沿って立ち上がる壁部24が一体に形成されてなる。この壁部24の立ち上がり方向Sの頂面24aにおける外縁側には、流出防止壁25が形成される。流出防止壁25は、例えば柔軟な樹脂などからなる。こうした流出防止壁25は、立ち上がり方向Sにおける下面で壁部24の頂面24aに接し、上面で有機EL素子基板2に接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルとは、陽極電極と陰極電極の間に有機発光層を挟持してなる有機EL素子基板と、この有機EL素子基板に対向する封止基板とを、封止基板の外周部に配設した紫外線硬化型樹脂などのシール材により封止したものである。
【0003】
この有機EL表示パネルの製造時に、有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が完全に硬化する前に有機EL表示パネルの外側に向けて流出すると、有機EL表示パネルから引き出された引出配線に、流出したシール材が付着してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、未硬化のシール材が外側に流出して、有機EL表示パネルの引出配線などに付着すると、この引出配線に接続する電子部品が、樹脂などの絶縁材からなるシール材によって引出配線が覆われしまうために、引出配線と電子部品とが導通不良となるという障害の発生が懸念される。また、1枚の大きな基板を分割して複数の有機EL表示パネルを形成する、いわゆる多面取りによる製造においては、個々の有機EL表示パネルを切り出す分割位置に流出したシール材が付着して硬化すると、分割できなくなったり、設定した分割線とは異なる方向に基板が割れてしまうといった障害の発生が懸念される。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が未硬化の状態で外部に流出することを防止した有機EL表示パネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、陽極電極と陰極電極との間に有機発光層が挟持されてなる有機EL素子基板と、前記有機EL素子基板に対向して設けられる封止基板と、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止するシール材とを備える有機EL表示パネルであって、前記封止基板は、基板本体と、前記基板本体の一面の周縁部に沿って立ち上がる壁部と、前記壁部の頂面から立ち上がる流出防止壁とからなり、前記壁部の頂面では、前記流出防止壁が外縁寄りに、前記シール材が前記流出防止壁よりも内側にそれぞれ配されることを特徴とする有機EL表示パネルが提供される。前記流出防止壁は弾性を有する樹脂から構成されれば良い。
【0007】
また、本発明によれば、陽極電極と陰極電極との間に有機発光層が挟持されてなる有機EL素子基板と、前記有機EL素子基板に対向して設けられる封止基板と、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止するシール材とを備える有機EL表示パネルの製造方法であって、前記封止基板を構成する基板本体の周縁部に形成された壁部の頂面から立ち上がる流出防止壁を形成する工程と、前記流出防止壁に隣接してシール材を配する工程と、前記流出防止壁を圧縮しつつ前記シール材によって前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止する工程とを備えたことを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
有機EL表示パネルの製造時において、有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が、例えば未硬化の状態でその一部が外部に流出すると、有機EL表示パネルから引き出された引出配線などに付着して、引出配線に接続する電子部品が導通不良になることが懸念される。また、多面取りによる製造において、流出したシール材が分割予定位置に付着し、基板が設定外の方向に割れてしまうといった障害の発生が懸念される。
【0009】
しかし、本発明のように、シール材の外縁側に流出防止壁を形成することにより、未硬化のシール材が有機EL表示パネルの外側に流出することを防止する。これにより、未硬化のシール材が引出配線などに付着して、引出配線に接続する電子部品が導通不良になったり、多面取りによる製造において、流出したシール材が分割予定位置に付着して設定外の方向に割れてしまうといったことを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る有機EL表示パネルについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る有機EL表示パネルの一例を示す概略断面図である。また、図2は、有機EL表示パネルを構成する封止基板を示す外観斜視図である。有機EL表示パネル1は、有機EL素子基板(基板)2と、有機EL素子基板2に対向する封止基板3と、これら基板を接合して有機EL素子を封止するシール材4と、有機EL素子基板2と封止基板3とシール材4とから形成される密封空間に設けた捕水材5とから概略構成されている。
【0011】
有機EL素子基板2は、例えば厚さ0.4〜1.1mmの透明なガラス基板からなり、その上には、ITO等の透明な陽極電極11が形成されている。有機EL素子基板2の上部側10は、いわゆる視認側に当たる。
【0012】
そして、陽極電極11上には、光源となる有機発光層7,7・・・、アルミニウム等の金属材料からなる陰極電極8,8・・・、ポリイミド樹脂等からなる絶縁層6,6・・・が形成され、陽極電極11と陰極電極8とで有機発光層7を挟み込んで電流を印加できるようになっている。また、絶縁層6,6・・・には、ノボラック樹脂等からなる隔壁9,9・・・が形成されている。こうした陽極電極11と陰極電極8とで挟まれた有機発光層7に電流を印加することで、有機発光層7を発光させる。
【0013】
封止基板3は、例えばガラス、アクリル系樹脂などからなり、有機EL素子基板2と対面して覆うように設けられている。封止基板3は、基板本体21と、この基板本体21の一面(内面側)21aにおける周縁部に沿って立ち上がる壁部24が一体に形成されてなる。この壁部24の立ち上がり方向Sの頂面24aにおける外縁側には、流出防止壁25が形成される。流出防止壁25は、圧縮により変形可能な柔軟な樹脂、例えばポリイミド樹脂やポリウレタン等のゴム弾性樹脂などからなる。こうした流出防止壁25は、立ち上がり方向Sにおける下面で壁部24の頂面24aに接し、上面で有機EL素子基板2に接する。このような流出防止壁25の作用は後述する。
【0014】
壁部24の頂面24aの流出防止壁25よりも内側(封止基板3の中心側)には、封止基板3と有機EL素子基板2とを接続して封止するシール材4が形成されている。こうしたシール材4によって、有機EL素子基板2と封止基板3との間を密閉した密封空間Pが区画される。密封空間Pの内部では、有機EL素子基板2の発光特性の劣化を招く水分量が極めて少なく抑えられている。シール材4は、例えばエポキシ系、アクリル系等の紫外線硬化型樹脂からなるものである。これらのなかでも、外部からの水分の浸入を防止する点から、透水性の低い樹脂であることが好ましい。シール材4は、ディスペンサ塗布により、壁部24の頂面24aまたは有機EL素子基板2の周縁の接合部分に形成し、紫外線を照射してシール材4を露光重合し、有機EL素子基板2と封止基板3とを接合させればよい。
【0015】
封止基板3の一面21aにおける壁部24で囲まれた内側には、捕水材5が設けられている。捕水材5は、有機EL素子基板2と封止基板3とで区画された密閉領域P内の水分を捕捉するものである。捕水材とは、捕水機能を有する物質を粘性のある溶媒に混合したものや樹脂中に混合したものであり、捕水機能を有する物質としては、例えば、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、モレキュラーシーブなどの物理吸着型のものや、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸チタンなどの化学吸着型のものを挙げることができる。なお、こうした捕水材5は特に設けられなくてもよい。
【0016】
以上のような構成の有機EL表示パネルの作用について、図3を参照して説明する。図3はシール材付近を拡大して示す説明図である。有機EL表示パネル1の製造時などで、有機EL素子基板2と封止基板3とを封止するシール材4が、例えば未硬化の状態でその一部が外縁側Rに流出すると、有機EL表示パネル1から引き出された引出配線などに付着して、引出配線に接続する電子部品が導通不良になることが懸念される。また、多面取りによる製造において、流出したシール材が分割予定位置に付着し、基板が設定外の方向に割れてしまうといった障害の発生が懸念される。
【0017】
しかし、本発明のように、シール材4の外縁側に流出防止壁25を形成することにより、未硬化のシール材4が有機EL表示パネル1の外側に流出することを防止する。これにより、未硬化のシール材4が引出配線などに付着して、引出配線に接続する電子部品が導通不良になったり、多面取りによる製造において、流出したシール材が分割予定位置に付着して設定外の方向に割れてしまうといったことを防止することができる。
【0018】
次に、上述した流出防止壁を備えた有機EL表示パネルの製造方法のうち、封止工程に関して説明する。まず、図4aに示すように、封止基板3を構成する壁部24の頂面24aに、樹脂等からなる流出防止壁25を形成する。流出防止壁25は、壁部24の頂面24aにおける外縁側に、例えば幅W=0.01〜1.0mm、高さH=0.01〜0.1mmで形成されればよい。
【0019】
図4bに示すように、こうして形成した流出防止壁25の内側に、シール材4を積層する。シール材4は、壁部24の頂面24aに、形成時の流出防止壁25の高さよりも低く盛り付けられればよい。
【0020】
そして、図5aに示すように、予め形成された有機EL素子基板2を封止基板3に対面させて押し付ける。これにより、図5bに示すように柔軟な樹脂などから形成された流出防止壁25は、壁部24の頂面24aと有機EL素子基板2との間で圧縮され、シール材4が有機EL表示パネル1の外部に流出しないように、封止基板3と有機EL素子基板2との間で密着する。この後、紫外線などでシール材4を硬化させれば、封止基板3と有機EL素子基板2とが封止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の有機EL表示パネルの一例を示す断面図である。
【図2】封止基板を示すの外観斜視図である。
【図3】本発明の有機EL表示パネルの作用を示す説明図である。
【図4】本発明の有機EL表示パネルの製造方法を示す断面図である。
【図5】本発明の有機EL表示パネルの製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…有機EL表示パネル、2…有機EL素子基板、3…封止基板、6…絶縁層、7…有機発光層、8…陰極電極、9…隔壁、24…壁部、25…流出防止壁。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極電極と陰極電極との間に有機発光層が挟持されてなる有機EL素子基板と、前記有機EL素子基板に対向して設けられる封止基板と、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止するシール材とを備える有機EL表示パネルであって、
前記封止基板は、基板本体と、前記基板本体の一面の周縁部に沿って立ち上がる壁部と、前記壁部の頂面から立ち上がる流出防止壁とからなり、前記壁部の頂面では、前記流出防止壁が外縁寄りに、前記シール材が前記流出防止壁よりも内側にそれぞれ配されることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項2】
前記流出防止壁は弾性を有する樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示パネル。
【請求項3】
陽極電極と陰極電極との間に有機発光層が挟持されてなる有機EL素子基板と、前記有機EL素子基板に対向して設けられる封止基板と、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止するシール材とを備える有機EL表示パネルの製造方法であって、
前記封止基板を構成する基板本体の周縁部に形成された壁部の頂面から立ち上がる流出防止壁を形成する工程と、前記流出防止壁に隣接してシール材を配する工程と、前記流出防止壁を圧縮しつつ前記シール材によって前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止する工程とを備えたことを特徴とする有機EL表示パネルの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−149367(P2007−149367A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338472(P2005−338472)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】