説明

有機EL表示パネル

【課題】 有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が未硬化の状態で流出しても、有機EL表示パネルを構成する有機EL素子の特性を損なうことがない有機EL表示パネルを提供する。
【解決手段】 複数の陽極電極30と陰極電極8との間に有機発光層7が挟持されてなる有機EL素子基板2と、有機EL素子基板2に対向して設けられる封止基板11と、封止基板11の外縁部に配設され、有機EL素子基板2と封止基板11とを封止するシール材4とを備える有機EL表示パネルであって、複数の陰極電極30を分離する隔壁9が形成されてなる隔壁形成領域Kとシール材4との間に突条20を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルとは、陽極電極と陰極電極の間に有機発光層を挟持してなる有機EL素子基板と、この有機EL素子基板に対向する封止基板とを、封止基板の外周部に配設した紫外線硬化型樹脂などのシール材により封止したものである。
【0003】
この有機EL表示パネルの製造時に、有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が完全に硬化する前に流出し、有機EL素子に浸透して動作不良を引き起こすといった事例を生じることが知られている。特にシール材の流出は、陰極電極を分離する隔壁に沿って侵攻していく。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、未硬化のシール材が流出して有機EL素子に浸透すると、有機EL素子の特性劣化を起こし、輝度低下や画素の縮小、有機EL表示パネルの寿命低下などを生じさせる原因となる。また、有機発光層が破壊されて発光しない原因となることもある。しかしながら、生産性の向上の観点からも、未硬化のシール材の流出を完全に防止することは難しいのも現状である。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が未硬化の状態で流出しても、有機EL表示パネルを構成する有機EL素子の特性を損なうことがない有機EL表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、複数の陽極電極と陰極電極との間に有機発光層が挟持されてなる有機EL素子基板と、前記有機EL素子基板に対向して設けられる封止基板と、前記封止基板の外縁部に配設され、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止するシール材とを備える有機EL表示パネルであって、前記複数の陰極電極を分離する隔壁が形成されてなる隔壁形成領域と前記シール材との間に突条が形成され、前記突条は、前記封止基板の外縁部の内側に沿って延び、かつ前記有機EL素子基板の表面から前記封止基板に向けて立ち上がっていることを特徴とする有機EL表示パネルが提供される。
【0007】
前記突条は、前記有機EL素子基板から遠ざかる方向に向かって、幅が漸増するように形成されればよい。前記突条は、前記シール材よりも内側で前記隔壁形成領域を取り巻くように前記有機EL素子基板の外周付近に形成されていればよい。前記突条は、互いに並列に複数形成されていればよい。前記突条は、高さが3〜5μmの範囲に形成されていればよい。前記シール材は、紫外線硬化樹脂から形成されればよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機EL表示パネルによれば、有機EL表示パネルの製造時などで、有機EL素子基板と封止基板とを封止するシール材が、例えば未硬化の状態でその一部が密閉空間Pに流出しても、シール材と隔壁形成領域との間に、陽極電極を取り囲むように突条を形成されているので、未硬化の状態で流出したシール材は陽極電極に達することなく突条で留められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の有機EL表示パネルについて、図面を参照して説明する。図1は、本発明の有機EL表示パネルの一実施形態を示す上面平面図であり、図2は、図1のA−A線における断面図である。本実施形態に係る有機EL表示パネル1は、有機EL素子基板2と、有機EL素子基板2に対向する封止基板3と、これら基板を接合して封止する紫外線硬化型のシール材4とから概略構成されている。また、有機EL素子基板2と封止基板3とシール材4とから形成される密封空間Pには、水分を捕捉する捕水材5が設けられていてもよい。
【0010】
有機EL素子基板2は、厚さ0.4〜1.1mmの透明なガラス基板からなり、その上には、ITO等の透明な陽極電極30が形成されている。有機EL素子基板2の下部側10は、いわゆる視認側に当たる。
【0011】
そして、陽極電極30上には、自発光源となる有機発光層7、アルミニウム等の金属材料からなる陰極電極8、ポリイミド樹脂等からなる絶縁層6,6・・・、及び隔壁9,9・・・が形成されていて、陽極電極30と陰極電極8とで有機発光層7を挟み込んで電流を印加できるようになっている。図1を参照して、各陰極電極8、8・・を分離する隔壁が形成されている領域を隔壁形成領域Kとし、この隔壁形成領域K内に画像表示領域が存在している。
【0012】
有機EL素子基板2を覆うように、ガラス、アクリル系樹脂などからなる透明な封止基板3が設けられている。封止基板3の形状は、例えば平板状の基板の中央部に凹部を形成して、外周部の厚みが中央部の厚みより厚くなっており、外周部には、厚さ10〜20μm程度のシール材4が配設されている。そして、有機EL素子基板2と封止基板3とは、シール材4によって封止され、密封空間Pが区画されている。
【0013】
このシール材4は、例えば、エポキシ系、アクリル系等の紫外線硬化型樹脂からなるものである。そのなかでも、外部からの水分の浸入を防止する点から、透水性の低い樹脂であるのが好ましい。このシール材4は、ディスペンサ塗布により、封止基板3の外周部または有機EL素子基板2上の接合させる面に形成し、紫外線を照射してシール材4を露光重合し、有機EL素子基板2と封止基板3とを接合させる。
【0014】
捕水材5は、封止基板3の中央部内側の有機EL素子基板2と対向する面に、有機EL素子基板2と当接しないように距離を100〜300μm保って、封止基板3の中央部内側全面に配設されている。
【0015】
有機EL素子基板2の周縁部において、シール材4と隔壁形成領域Kとの間には、有機EL素子基板2の内面15から立ち上がる細長い壁状の突条20が形成されている。こうした突条20は、陽極電極(電極)30を四方から取り囲むように、全体が矩形に形成されている。なお、図中において、突条20は有機EL素子基板2に直接形成されているが、突条20と有機EL素子基板2との間に絶縁膜や陽極電極形成膜材料を配してもよい。このように、絶縁膜や陽極電極形成膜材料を介して突条20を形成すると基板との密着性が向上する。
【0016】
このような突条20の断面は、有機EL素子基板2の内面15から遠ざかるほど幅Wが漸増する、いわゆる逆三角形状を成し、例えば高さが3〜5μm程度に形成される。突条20は、例えば、クラリアント社製AZCTP−100(商品名)、JSR社製BPR−500(商品名)等の紫外線硬化樹脂から形成されていればよい。
【0017】
図3は、こうした突条の作用を示す、シール材付近を拡大して示す説明図である。有機EL表示パネル1の製造時などで、有機EL素子基板2と封止基板3とを封止するシール材4が、例えば未硬化の状態でその一部が密閉空間Pに流出すると、有機発光層7などに付着すれば表示特性に影響を与える懸念がある。しかし、本発明のように、シール材4と隔壁形成領域Kとの間に、隔壁形成領域K(画像表示領域)を取り囲むように突条20を形成することにより、未硬化の状態で流出したシール材4は画像表示領域内にある有機発光層7に達することなく突条20で留められる。
【0018】
しかも、こうした突条20はその断面が有機EL素子基板2の内面15から遠ざかるほど幅Wが漸増する、いわゆる逆三角形状を成しているため、未硬化の状態で流出したシール材4が、この突条20を乗り越えて陽極電極(電極)30に達することを極めて困難にしている。このように、シール材4と隔壁形成領域Kとの間に突条20を形成することにより、未硬化の状態のシール材4流出しても、有機EL素子に浸透して動作不良を引き起こすといった不具合が生じることが無い。また、隔壁形成領域K内に形成される隔壁9,9・・・と突条20とき離間して形成することが好ましい。
【0019】
なお、こうした突条は、隔壁形成領域Kを四方の一部を囲むように形成されていてもよい。図4は、本発明の第2の実施形態を示す平面図である。この実施形態では、突条41は有機EL素子基板40に形成された矩形のシール材42のうちの対面する2辺の内側だけに形成されている。この突条41が形成される2辺は、陽極電極(電極)44の上に形成された隔壁49,49‥が延長される方向に対して直交する方向とされている。
【0020】
製造時に未硬化のシール材42が流出した場合、隔壁49,49‥の延長方向Lに沿ってシール材42が拡散し、隔壁49,49‥と直交する方向には未硬化のシール材42は広がらないと推測される。従って、この実施形態のように、陽極電極(電極)44の上に形成された隔壁49,49‥が延長される方向に対して直交する方向にのみ突条41を形成することでも、充分に未硬化のシール材42の拡散防止に効果がある。
【0021】
また、突条は、複数平行に形成されていてもよい。図5は、本発明の第3の実施形態を示す平面図である。この実施形態では、有機EL素子基板50に形成された隔壁形成領域Kを取り囲むように、複数の突条51,51が形成されている。このように突条51,51を複数形成することで、未硬化のシール材52が流出した場合に、シール材の拡散をより確実に防止することができる。また好ましくは、シール材52と突条51、互いに隣接する突条51、51どうし、突条51と隔壁形成領域Kはそれぞれ離間して配置する。それぞれの配置距離は異なっていてもよい。それぞれを離間して配置することでシール材52の進入を効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の有機EL表示パネルの一例を示す平面図である。
【図2】本発明の有機EL表示パネルの一例を示す断面図である。
【図3】本発明の有機EL表示パネルの作用を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…有機EL表示パネル、2…有機EL素子基板、3…封止基板、4,42,52…シール材、20,41,51…突条、30…陽極電極(電極)、K…隔壁形成領域。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の陽極電極と陰極電極との間に有機発光層が挟持されてなる有機EL素子基板と、前記有機EL素子基板に対向して設けられる封止基板と、前記封止基板の外縁部に配設され、前記有機EL素子基板と前記封止基板とを封止するシール材とを備える有機EL表示パネルであって、
前記複数の陰極電極を分離する隔壁が形成されてなる隔壁形成領域と前記シール材との間に突条が形成され、
前記突条は、前記封止基板の外縁部の内側に沿って延び、かつ前記有機EL素子基板の表面から前記封止基板に向けて立ち上がっていることを特徴とする有機EL表示パネル。
【請求項2】
前記突条は、前記有機EL素子基板から遠ざかる方向に向かって、幅が漸増するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示パネル。
【請求項3】
前記突条は、前記シール材よりも内側で前記隔壁形成領域を取り巻くように前記有機EL素子基板の外周付近に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示パネル。
【請求項4】
前記突条は、互いに並列に複数形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項5】
前記突条は、高さが3〜5μmの範囲に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。
【請求項6】
前記シール材は、紫外線硬化樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機EL表示パネル。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate