説明

有機EL表示装置とその製造方法

【課題】実用に耐える仕様とした有機EL表示装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】基板SUB1の主面上に陽極ADが成膜され、陽極ADの上に正孔輸送機能層HL、発光層LM、電子輸送機能層ELからなる有機膜が順次積層され、最上層に陰極CDが成膜された構造を持ち、LCRメータを用いて任意の周波数で直流バイアスを変化させて測定した5万時間経過後の前記有機膜の静電容量の値を、初期状態の静電容量の値の略々110%以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に係り、特に有機膜中の電荷蓄積に起因する輝度低下を抑制した有機EL表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、有機ELパネル(デバイス)と周辺回路を組み合わせて構成される。有機ELパネルは、発光層を含む多層の有機膜を陽極と陰極で挟んだ構造が一般的である。そして、前記陽極と陰極の間に直流電圧を印加し、陽極から正孔(ホール)、陰極から電子を有機膜にそれぞれ注入することで発光層が発光する。なお、有機EL表示装置は有機ELパネル(デバイス)と同じ意味で用いる場合もある。
【0003】
このとき、有機膜の各層間にエネルギー障壁が存在するため、すべての電荷が有機層中に移動せず、有機膜中に一部電荷蓄積が起こり、有機ELパネルの寿命劣化すなわち輝度低下の一因と言われている。
【0004】
有機ELパネルの電気的な評価において、発光開始電圧以下の静電容量変化が小さいほど、低電流における輝度の低下が小さい傾向にあり、パネル寿命が長いことが知られている。これに関連する従来技術を開示したものとして、非特許文献1を挙げることができる。
【非特許文献1】「JOURNAL OF APPLIED PHYSICS」 VOLUME 89,NUMBER 3 的nfluence of trapped and interfacial charges in organic multiplayer light light-emitting device
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、バイアス電圧(印加電圧)を0V以上に増加した場合、NPB(N,N'-ジ(ナフタレン‐1‐イル)‐N,N'-ジフェニルベンジジン)層がフラットバンド条件に達し、またその抵抗が急激に低下することを示しながら容量は増加する。バイアス電圧の増加と共にホールは陽極から注入され、NPB層とAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム)層の界面で静止した負電荷を減少させる。そして、VBI(ビルト‐イン‐ボルテージ(built-in-voltage))で負の界面電荷が完全に埋められ、フラットバンド状態になることが記述されている。しかし、静電容量変化と輝度低下の関係については特に論じられてはいない。
【0006】
本発明の目的は、試作品の特性評価に基づいて得られた実用に耐える仕様とした有機EL表示装置とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の有機EL表示装置は、LCRメータを用いて、任意の周波数で直流バイアスを変化させて測定した5万時間経過後の前記有機膜の静電容量の値を、初期状態の静電容量の値の110%以下とした。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の有機EL表示装置の製造方法は、ガラス板を好適とする基板の主面上に、ITO膜をスパッタし、パターニングして陽極を形成する工程と、
前記陽極を形成した基板に、CuPcとα―NPDとをそれぞれ真空蒸着して正孔輸送機能を有する有機層を成膜する工程と、
ホスト材にAlq3、ドーパント材にTPBを用いた真空共蒸着で発光層を成膜する工程と、
Alq3を真空蒸着して電子輸送機能層を成膜する工程と、
フッ化リチウム、アルミニウムを順に真空蒸着して陰極を成膜する工程とを含む。
【0009】
また、本発明の有機EL表示装置の製造方法は、ガラス板を好適とする基板の主面上に、アルミニウムとフッ化リチウムを順に真空蒸着して陰極を成膜する工程と、
Alq3を真空蒸着して電子輸送機能層を成膜する工程と、
ホスト材にAlq3、ドーパント材にTPBを用いた真空共蒸着で発光層を成膜する工程と、
CuPcとα―NPDとをそれぞれ真空蒸着して正孔輸送機能を有する有機層を成膜する工程と、
ITO膜をスパッタし、パターニングして陽極を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
上記の5万時間経過後の前記有機膜の静電容量の値を、初期状態の静電容量の値の110%以下としたことで、実用に耐える有機EL表示装置の仕様(実用化の基準)が実現される。言い換えれば、その輝度が初期状態(例えば、出荷時)の値から、その値の1/2に低下するまでに要する時間(寿命)が5万時間以上である仕様を有することで、実用に耐える有機EL表示装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について実施例の図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明による有機EL表示装置の発光部の積層構造例を説明する模式図である。この有機EL表示装置は所謂ボトムエミッション型である。基板SUB1は、有機EL表示装置のパネルを構成するTFT基板であり、ガラス板を好適とする透明な絶縁基板である。この基板SUB1の内面すなわち主面上に一方の電極(ここでは陽極AD)が成膜されている。そして、この陽極ADの上に正孔輸送機能層HL、発光層LM、電子輸送機能層ELが順次積層され、最上層に他方の電極(ここでは、陰極CD)が成膜されている。なお、正孔輸送機能層HLは、正孔注入層HINと正孔輸送層HTLからなる。
【0013】
なお、図1は基板SUB1側(図1の下側)から発光を取り出すボトムエミッション型の層構造例を説明するものであるが、基板SUB1とは発光部を挟んで反対側(図1の上側)から発光を取り出す所謂トップエミッション型の有機EL表示装置では、その発光部は以下のような積層構造例となる。すなわち、基板SUB1の主面上に一方の電極として陰極を形成し、この陰極の上に電子輸送機能を有する一つ以上の有機層、前記発光層、正孔輸送機能を有する一つ以上の有機層の積層構造を成膜し、最上層に他方の電極である陽極を形成する。
【0014】
図2は、有機EL表示装置の有機層における静電容量に関する特性を説明する図である。有機EL表示装置はダイオード特性を有しており、正電圧方向(順バイアス方向)には電流は流れるが、負電圧方向(逆バイアス方向)には電流は流れない。この有機EL表示装置の静電容量を測定すると、負電圧方向においては電流が流れないため、静電容量が一定である。
【0015】
一方、正電圧方向では、電荷が注入されるまでは負電圧方向と同じ静電容量であるが、電荷が注入され始めると静電容量が増加し、発光が開始すると静電容量は急激に低下する。これをCR回路で説明するのが図2である。有機EL表示装置は正孔輸送機能層HLと発光層LMおよび電子輸送機能層ELの各容量の直列回路で置き換えられる。図2の(a)に電荷注入前の容量直列回路を示す。
【0016】
図2の(b)は電荷注入状態1(正孔注入)を示し、正孔輸送機能層HLは抵抗に変わる。同じく、図2の(c)は電荷注入状態2(電子注入)を示し、電子輸送機能層ELは抵抗に変わる。そして、発光層LMが発光を開始すると、この発光層LMも抵抗に変わり、図2の(d)に示したように、全体が抵抗成分となる。
【0017】
上記した有機EL表示装置の静電容量を式で表すと以下のようになる。すなわち、
1/C=(dεS)+(dεS)+(dεS)
ここで、
、d、dは、それぞれ正孔輸送機能層HL、発光層LM、電子輸送機能層ELの膜厚、
εは真空の誘電率、
ε、ε、εはそれぞれ正孔輸送機能層HL、発光層LM、電子輸送機能層ELの誘電率、
Sは電極及び有機層が接する界面の面積である。
【0018】
上記から明らかなように、容量から抵抗に移行し、上式の項が順に0になって行くと、静電容量は大きくなる。正孔輸送機能層HL、発光層LM、電子輸送機能層ELの全てが抵抗成分となった場合は、電荷が蓄積し難くなり、静電容量は小さくなる。
【0019】
発光開始以下の電圧であっても、有機膜への電荷の注入がなく、電荷が注入されると同時に発光が開始するような特性が得られるようにするには、図2の(a)から直接図2の(d)に移行することが望ましい。この場合、静電容量は、正電圧方向であっても発光開始電圧までは負電圧方向と同じ一定の静電容量となる。したがって、発光開始電圧以下において静電容量が一定で変化しない場合、発光開始以下の電圧で有機膜への電荷の注入が無く、電荷が注入されると同時に発光が開始する特性となり、有機膜中の電荷移動に対し障害が少なく、電荷蓄積も少なくなる。
【0020】
その結果、電荷の蓄積による抵抗の上昇や、電荷そのものによる有機膜の劣化が防止される。そして、有機膜の劣化による輝度の低下、駆動電圧の上昇が抑制される。次に、本発明の有機EL表示装置の実施例について、その製造方法で説明する。以下で説明する各実施例においては、ガラス基板の主面にITOをスパッタし、陽極形成のためのパターニングを行った基板を用いたボトムエミッション型の有機EL表示装置について説明する。なお、ガラス基板の主面にアルミニウムをスパッタし、陰極形成のためのパターニングを行った基板を用いたトップエミッション型の有機EL表示装置については、電極と有機膜の積層が上記と逆である点を除いて、略々同様であるので、説明は省略する。
【実施例1】
【0021】
ITO膜をスパッタし、陽極(および配線)を形成した基板に、CuPcとα―NPDとをそれぞれ真空蒸着して正孔輸送機能を有する有機層を成膜した。次に、ホスト材にAlq3、ドーパント材にTPBを用いた真空共蒸着で発光層を成膜した。そして、Alq3を真空蒸着して電子輸送機能層を成膜した。最後に、フッ化リチウムとアルミニウムを順に真空蒸着して陰極を成膜した。
【0022】
この蒸着時の基板温度をTb、蒸着する有機層材料のガラス転移温度をTgとしたとき、Tb=(Tg−273)/3+273(K)となるように温度制御を行いながら蒸着する。有機層のガラス転移温度Tgは、使用する有機材料の中で最も低いガラス転移温度を有する材料を用いた。また、蒸着時の真空度は1×10−11Pa以下、蒸着レートは0.1Å/secとした。
【0023】
こうして製造した有機EL表示装置の静電容量を横河電機製のLCRメータ(製品型式:YHP4275A)を用い、10kHZの周波数で−3〜7Vまで直流バイアスを変化させて測定した。図3は、実施例1の静電容量の測定結果を説明する図である。図3に示したように、正電圧方向で発光する直前までの電圧に至るまでの静電容量変化量は約2×10-11Fと非常に小さく、最大値は0Vでの静電容量の略々102%であった。また、初期6V印加における電流値で定電流駆動させ、放置したときの輝度変化は10000時間で、初期の約88%であった。
【実施例2】
【0024】
ITO膜をスパッタし、陽極(および配線)を形成した基板に、当該ITO膜表面の清浄度を高めて有機膜との接合状態をしょうもうする状態にするため、有機膜の成膜前に、陽極を形成した前記基板の表面に、酸素プラズマ処理、UVオゾンガス処理、2−プロパノール洗浄、UVオゾンガス処理を順に行った。酸素プラズマ処理はITO表面に固着した大きな有機汚染物質(例えば、DOP:フタル酸ジ‐2‐エチルヘキシル)を分解する。UVオゾンガス処理は、有機汚染物質の微量残渣を除去し、ITO表面を補修する。そして、2−プロパノール洗浄と再度のUVオゾンガス処理は汚れの再付着を防止する。
【0025】
こうして処理した基板に実施例1と同様の正孔輸送機能を有する有機層、発光層、電子輸送機能層を成膜した。最後に、フッ化リチウムとアルミニウムを順に真空蒸着して陰極を成膜して有機EL表示装置を製造した。
【0026】
こうして製造した有機EL表示装置の静電容量について、実施例1と同様の方法で測定した。図4は、実施例2の静電容量の測定結果を説明する図である。図4に示したように、正電圧方向で発光する直前までの電圧に至るまでの静電容量変化量は約8×10-11Fであり、略々一定の静電容量で、最大値は0Vでの静電容量の略々104%であった。また、初期6V印加における電流値で定電流駆動させ、放置したときの輝度変化は10000時間で、初期の約79%であった。
【実施例3】
【0027】
有機膜の蒸着時に当該有機膜中に不純物が取り込まれることで、電荷の移動が阻害されたり、有機膜自身の変質を防止するため、蒸着時の真空度を1×10-11Pa以下、蒸着レートを0.1Å/secとした。このような条件下で、陽極を形成した基板の主面上に実施例1と同様の正孔輸送機能を有する有機層、発光層、電子輸送機能層を成膜した。最後に、フッ化リチウムとアルミニウムを順に真空蒸着して陰極を成膜して有機EL表示装置を製造した。
【0028】
こうして製造した有機EL表示装置の静電容量について、実施例1と同様の方法で測定したところ、正電圧方向で発光する直前までの電圧に至るまでの静電容量変化量は約3.5×10-11Fと非常に小さく、最大値は0Vでの静電容量の略々103%であった。また、初期6V印加における電流値で定電流駆動させ、放置したときの輝度変化は10000時間で、初期の約85%であった。
【0029】
次に、本発明の上記各実施例との効果を比較するために、比較例1〜2について説明する。
【比較例1】
【0030】
比較例1では、基板上のITOの洗浄、基板温度、真空度などを特に考慮せずに、一般的な有機EL表示装置の製造方法に準じて実施例1と同様の材料を用いて図1で説明した正孔輸送機能(正孔注入層、正孔輸送層)、発光層、電子輸送機能層、および陰極を形成した。
【0031】
こうして製造した有機EL表示装置の静電容量について、実施例1と同様の方法で測定した。図5は、比較例1の静電容量の測定結果を説明する図である。図5に示したように、正電圧方向で発光する直前までの電圧に至るまでの静電容量変化量は約3.8×10-10Fであり、本発明の実施例1〜3と比較して非常に大である。最大値は0Vでの静電容量の略々114%であった。また、初期6V印加における電流値で定電流駆動させ、放置したときの輝度変化は10000時間で、初期の約69%であった。
【比較例2】
【0032】
比較例1と同様に、一般的な有機EL表示装置の製造方法に準じて実施例1と同様の材料を用いて図1で説明した正孔輸送機能(正孔注入層、正孔輸送層)、発光層、電子輸送機能層、および陰極を形成した。ただし、比較例2では、成膜時間の短縮のため、蒸着レートを比較例1の3倍とした。
【0033】
こうして製造した有機EL表示装置の静電容量について、実施例1と同様の方法で測定した。図6は、比較例2の静電容量の測定結果を説明する図である。図6に示したように、正電圧方向で発光する直前までの電圧に至るまでの静電容量変化量は約3.8×10-10Fであり、本発明の実施例1〜3と比較して非常に大である。最大値は0Vでの静電容量の略々120%であった。また、初期6V印加における電流値で定電流駆動させ、放置したときの輝度変化は10000時間で、初期の約51%であった。
【0034】
図7は、本発明の実施例と比較例の有機EL表示装置を、初期6V印加における電流値で定電流駆動させたときの発光輝度の時間変化を説明する図である。図7に示されたように、ITO洗浄や蒸着時の条件を厳密に制御した本発明の実施例1、2は、これらを考慮しない比較例1、2に比べて発光輝度の低下が緩やかであることが分かる。
【0035】
ところで、液晶表示装置などに用いるバックライトの輝度半減時間は、一般的に5万時間である。図8は、本発明の有機EL比装置の発光輝度の時間変化を5万時間まで外挿し、初期値に対する5万時間後の輝度比と0Vに対する最大静電容量の比をプロットした図である。図8において、5万時間の輝度比と静電容量比には相関関係が見られ、静電容量比が110%以下であれば輝度半減時間を5万時間以上確保することが可能で、液晶表示装置と同等以上の寿命を達成できる。
【0036】
図9は、本発明による有機EL比装置の1画素付近の構造例を説明する断面図である。図9において、薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSは、ガラス基板SUB1の主面上に下地層として窒化シリコン膜SINと酸化シリコン膜SIOを有する。この下地層上にポリシリコン半導体層PSI、ゲート電極GT、ゲート絶縁膜LNS、ソース電極SD1、ドレイン電極SD2からなる薄膜トランジスタが形成されている。ITOをパターニングした陽極ADがパッシベーション膜PASの上層に形成されており、コンタクトホールを通してソース電極SD1に接続している。
【0037】
陽極ADの上には、正孔輸層機能層HTLが形成されている。正孔輸層機能層HTLの上には特定の色光を発光する発光層LMが成膜されている。発光層LMの上に電子輸層機能層ETLを有し、フッ化リチウムの陰極バッファ層BFとアルミニウム膜ALからなる陰極CDが形成されている。なお、陽極ADと陰極CDとの間に形成される発光に寄与する有機層として、ホール注入層、発光層、電子注入層などのように機能ごとに区分けして成膜するもの、あるいはこれらの機能を兼用した層とするもの、等がある。
【0038】
上記の構造とした薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSは、封止板SUB2で密封して封止される。図9の例では、薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSの陰極CDと封止板SUB2の間にエポキシ樹脂などの充填材STFを配置している。しかし、基板TRSと封止板SUB2の間を乾燥空間としてもよい。乾燥空間の維持には両基板の適当な位置に乾燥剤を配置するのが望ましい。
【0039】
図10は、本発明を適用した有機ELパネルの回路構成例を示す図である。図10に示したように、表示領域DIPには、複数のデータ線DL(DL(m+1)、DL(m)、DL(m−1)・・・)と複数のゲート線GL(GL(n+1)、 GL(n)、 GL(n−1)・・・)がマトリクス状に交差配置されている。各データ線DLとゲート線GLで囲まれた画素PXには、スイッチング素子(コントロール・トランジスタ)である薄膜トランジスタSW1、電流供給トランジスタ(ドライブ・トランジスタ)である薄膜トランジスタSW2、データ保持用のコンデンサC、および有機EL素子OLEが配置される。
【0040】
薄膜トランジスタSW1の制御電極(ゲート)はゲート線GLに、チャネルの一端(ドレイン)はデータ線DLに接続されている。薄膜トランジスタSW2のゲートは薄膜トランジスタSW1のチャネルの他端(ソース)に接続されており、この接続点にはコンデンサCの一方の電極(+極)が接続されている。薄膜トランジスタSW2のチャネルの一端(ドレイン)は電流供給線PLに、その他端(ソース)は前記した一方の電極(陽極)と他方の電極(陰極)で挟まれた有機膜で構成された有機EL素子OLEの陽極に接続されている。データ線DLはデータ駆動回路DDRで駆動され、走査線(ゲート線)GLは走査駆動回路DDGで駆動される。また、電流供給線PLは共通電位供給バスラインPLAを通して電流供給回路PWに接続される。
【0041】
図10において、1つの画素PXが走査線GLで選択されて、その薄膜トランジスタSW1がターン・オンすると、データ線DLから供給される画像データがコンデンサCに蓄積される。その後、薄膜トランジスタSW1がターン・オフした時点で薄膜トランジスタSW2がターン・オンし、電流供給線PLから有機EL素子OLEに、ほぼ1フレーム期間に亘って電流が流れる。有機EL素子OLEに流れる電流は薄膜トランジスタSW2により調整され、また、薄膜トランジスタSW2のゲートには、コンデンサCに蓄積されている電荷に応じた電圧が印加される。これを各画素について制御することにより、複数の画素の発光が制御され、表示領域DIPに二次元の画像が再現される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による有機EL表示装置の発光部の積層構造例を説明する模式図である。
【図2】有機EL表示装置の有機層における静電容量に関する特性を説明する図である。
【図3】本発明の実施例1の静電容量の測定結果を説明する図である。
【図4】本発明の実施例2の静電容量の測定結果を説明する図である。
【図5】比較例1の静電容量の測定結果を説明する図である。
【図6】比較例2の静電容量の測定結果を説明する図である。
【図7】本発明の実施例と比較例の有機EL表示装置を、初期6V印加における電流値で定電流駆動させたときの発光輝度の時間変化を説明する図である。
【図8】本発明の有機EL比装置の発光輝度の時間変化を5万時間まで外挿し、初期値に対する5万時間後の輝度比と0Vに対する最大静電容量の比をプロットした図である。
【図9】本発明による有機EL比装置の1画素付近の構造例を説明する断面図である。
【図10】本発明を適用した有機ELパネルの回路構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
SUB1・・・基板、AD・・・陽極、HL・・・正孔輸送機能層、LM・・・発光層、EL・・・電子輸送機能層、CD・・・陰極。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面上に、一方の電極と発光層を含む有機膜および他方の電極とを順次積層して形成された有機EL表示装置であって、
LCRメータを用いて、任意の周波数で直流バイアスを変化させて測定した5万時間経過後の前記有機膜の静電容量の値が、初期状態の静電容量の値の略々110%以下であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陽極で、前記他方の電極は陰極であり、
前記有機膜が、前記陽極側から順に、正孔輸送機能を有する一つ以上の有機層、前記発光層、電子輸送機能を有する一つ以上の有機層の積層構造からなることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陽極で、前記他方の電極は陰極であり、
前記有機膜が、前記陽極側から順に、正孔輸送機能を有する一つ以上の有機層、発光機能および電子輸送機能を有する一つ以上の有機層の積層構造からなることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陽極で、前記他方の電極は陰極であり、
前記有機膜が発光層のみであることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陽極で、前記他方の電極は陰極であり、
前記有機膜が、前記陽極側から順に、発光層、電子輸送機能を有する層の積層構造である事を特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陰極で、前記他方の電極は陽極であり、
前記有機膜が、前記陰極側から順に、電子輸送機能を有する一つ以上の有機層、前記発光層、正孔輸送機能を有する一つ以上の有機層の積層構造からなることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陰極で、前記他方の電極は陽極であり、
前記有機膜が、前記陰極側から順に、発光機能および電子輸送機能を有する一つ以上の有機層、正孔輸送機能を有する一つ以上の有機層の積層構造からなることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陰極で、前記他方の電極は陽極であり、
前記有機膜が発光層のみであることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の有機EL表示装置であって、
前記一方の電子は陰極で、前記他方の電極は陽極であり、
前記有機膜が、前記陰極側から順に、電子輸送機能を有する層、発光層の積層構造であることを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項10】
ガラス板を好適とする基板の主面上に、ITO膜をスパッタし、パターニングして陽極を形成する工程と、
前記陽極を形成した基板に、CuPcとα―NPDとをそれぞれ真空蒸着して正孔輸送機能を有する有機層を成膜する工程と、
ホスト材にAlq3、ドーパント材にTPBを用いた真空共蒸着で発光層を成膜する工程と、
Alq3を真空蒸着して電子輸送機能層を成膜する工程と、
フッ化リチウム、アルミニウムを順に真空蒸着して陰極を成膜する工程と、
を含む有機EL表示装置の製造方法。
【請求項11】
ガラス板を好適とする基板の主面上に、アルミニウムとフッ化リチウムを順に真空蒸着して陰極を成膜する工程と、
Alq3を真空蒸着して電子輸送機能層を成膜する工程と、
ホスト材にAlq3、ドーパント材にTPBを用いた真空共蒸着で発光層を成膜する工程と、
CuPcとα―NPDとをそれぞれ真空蒸着して正孔輸送機能を有する有機層を成膜する工程と、
ITO膜をスパッタし、パターニングして陽極を形成する工程と、
を含む有機EL表示装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の有機EL表示装置の製造方法であって、
蒸着時の基板温度をTb、前記有機層のガラス転移温度をTgとしたとき、Tb=(Tg−273)/3+273(K)となるように温度制御を行いながら蒸着することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の有機EL表示装置の製造方法であって、
前記有機層のガラス転移温度Tgは、使用する有機材料の中で最も低いガラス転移温度を有する材料を用いることを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の有機EL表示装置の製造方法であって、
前記陽極を形成した前記基板の表面に、酸素プラズマ処理、UVオゾンガス処理、2−プロパノール洗浄、UVオゾンガス処理を順に行うことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項15】
請求項10又は11に記載の有機EL表示装置の製造方法であって、
前記蒸着時の真空度を1×10−11Pa以下、蒸着レートを0.1Å/secとすることを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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