有機EL表示装置の封止リペア方法
【課題】実用的且つ多様な接着材料に対応できる有機EL表示装置の封止リペア方法を提供することを課題とした。
【解決手段】キャップ型封止材7により、基板18上に形成した有機発光層を気密に覆うように、キャップ型封止材7の端部と基板18とを接着剤16を介して接着固定する形態の有機EL表示装置の該接着部分のリペア方法であって、当該リペア方法は、レーザ光吸収性のバインダ17を接着部分に塗布する工程、バインダにレーザ照射19することにより熱歪を発生する工程、キャップ型封止材7を基板1から引き離す工程、キャップ型封止材を改めて基板に接着する工程、とを有することを特徴とする有機EL表示装置のリペア方法である。
【解決手段】キャップ型封止材7により、基板18上に形成した有機発光層を気密に覆うように、キャップ型封止材7の端部と基板18とを接着剤16を介して接着固定する形態の有機EL表示装置の該接着部分のリペア方法であって、当該リペア方法は、レーザ光吸収性のバインダ17を接着部分に塗布する工程、バインダにレーザ照射19することにより熱歪を発生する工程、キャップ型封止材7を基板1から引き離す工程、キャップ型封止材を改めて基板に接着する工程、とを有することを特徴とする有機EL表示装置のリペア方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置の封止部におけるリペア方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示装置は、視認性やフレキシブル性に優れ、且つ発色性が多様であることから、車載用コンポや携帯電話等のディスプレイや表示素子に広く利用されている。
【0003】
これら有機EL表示装置は、このような優れた特性を有する一方で、一般に水分に対して極めて弱いということで知られている。一例としては、有機EL素子の外周部を封止材で封止する際に取り込まれた環境雰囲気中の水分や、封止層欠陥部を透過して素子内に浸入する水分により、有機EL表示装置にダークスポットと称する非発光領域が発生し、発光が維持できなくなるという寿命上の問題が生じている。
【0004】
このため、従来のボトムエミッション型有機EL表示装置においては、水分を遮断する金属又はガラス製の封止材(封止キャップ)を素子裏面に接着剤で貼り合わせて中空構造とし、接着剤断面から侵入する水分は、封止材の内側に設けた吸湿性吸着材からなる多孔質吸着シートで捕まえて発光部位に到達させない構造を一般に用いてきた。
【0005】
ここにおける封止工程においては、しばしば素子と封止材との「位置ズレ」あるいは「接着剤の塗布不良」によって「接着部位への気泡の混入」といった封止不良が起こる。
【0006】
これらの有機EL表示装置における封止不良に対する封止リペアにあっては、接着剤硬化後では、研削等の比較的簡便な物理的手法によって封止部位を除去することが困難である。例えば、封止キャップを用いた有機EL表示装置と同様の封止キャップを用いた半導体素子の封止リペアを挙げると、いわゆる半導体素子上の封止材及び接着剤を研削によって除去するリペアでは、基板表面が損傷される可能性が高く、多くの工程と慎重な作業が必要となる。
【0007】
なお、従来の接着剤においてエポキシ系樹脂のそれについては、キシレンに6時間程度浸漬させて溶かして封止材(封止キャップ)を引き離す方法も可能である。しかしこの方法で接着剤は完全に溶解されず、封止材の除去に大きな剥離剪断力が必要になる問題、あるいは基板表面が溶媒中へ浸漬することで不具合が発生するという問題等により実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−67916号公報
【特許文献2】特開平10−137660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでは封止工程を完了した有機EL表示装置に封止不良が検知されたものについては、実用的なリペア方法がなかったために、元来高価なものであるにもかかわらず多くが破棄されており、歩留まり低下とコストアップの一因となっていた。また、従来技術にてリペアを行うにも熱や溶剤を用いる接着剤の溶融又は溶解であるため、使用できる接着剤が制限され十全な封止効果を得られないという問題があった。
そこで、本発明は実用的且つ多様な接着材料に対応できる有機EL表示装置の封止リペア
方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、キャップ型封止材により、基板上に形成した有機発光層を気密に覆うように、キャップ型封止材の端部と基板とを接着剤を介して接着固定する形態の有機EL表示装置の該接着部分のリペア方法であって、当該リペア方法は、レーザ光吸収性のバインダを接着部分に塗布する工程、バインダにレーザ照射することにより接着剤と基板間に熱歪を発生する工程、キャップ型封止材を基板から引き離す工程、キャップ型封止材を改めて基板に接着する工程、とを有することを特徴とする有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記バインダが、カーボンペースト、銀ペースト、クロムペースト、金ペースト、ニッケルペースト、パラジウムペーストのいずれから選択されるか、あるいはそれらの混合ペーストであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記キャップ型封止材がガラス製であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記レーザ照射を不活性ガス環境下にて行うことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、封止不良を起こした有機EL素子の封止材と基板の接着部に塗布したバインダに対し、レーザ光を照射し接着部に熱歪みを発生させることで、封止材を素子基板から容易に剥離可能としたもので、発光部分にダメージを与えることがない。
したがって、有機EL素子を封止前の再度の封止が可能な状態へ戻すことが可能となり歩留まりの向上とコスト低下が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)有機EL表示装置の模式図、(b)有機EL表示装置の有機発光媒体層の成膜前の模式図、(c)有機EL表示装置の有機発光媒体層の成膜後の模式図である。
【図2】有機EL表示装置の有機発光媒体層の成膜するための印刷機の模式図である。
【図3】有機EL表示装置の封止部のリペアにおける模式図である。
【図4】リペア部位を拡大した模式図である。
【図5】比較例3の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明の適用されうる典型的な有機EL表示装置の断面図を示した。
【0017】
以下、図面を参照して本発明を説明する。なお、本発明はパッシブマトリクス方式、アクティブマトリクス方式の有機EL表示装置のどちらにも適用可能である。
【0018】
図1(a)に示すように、本発明の有機EL素子は、ガラス基板1の上に、第一電極2を有している。パッシブマトリックス方式の場合、この第一電極2はストライプ状のパターンを有している。アクティブマトリックス方式の場合、第一電極2は画素ごとのパターンを有している。
【0019】
また、図(b)は、第一電極上に正孔輸送層4と有機発光層5を塗布する前の状態を示し、図(c)は、正孔輸送層4と有機発光層5を塗布した後の状態を模式的に示す図であ
る。
【0020】
更に、有機発光層5上に第二電極6が配置される。パッシブマトリックス方式の場合、ストライプ状を有する第一電極2と直交する形で第二電極6はストライプ状に設けられる。アクティブマトリックス方式の場合、第二電極6は、有機発光層全面に形成されるベタ電極である。
【0021】
次に、本発明に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する。
【0022】
基板としては、絶縁性を有する基板であれば使用することができる。しかし、基板側から光が出射するボトムエミッション方式の有機EL表示装置とする場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
【0023】
例えば、ガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、有機発光媒体層への水分の侵入を防ぐことを目的として、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
【0024】
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
【0025】
また、これらに薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、アクティブマトリックス方式の有機EL表示装置用の基板とすることが可能である。薄膜トランジスタとしては、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0026】
活性層は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。
【0027】
これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法、SiH4ガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法、Si2H6ガスを用いてLPCVD法により、また、SiH4ガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザ等のレーザによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス)、減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にn+ポリシリコンのゲート電極を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0028】
ゲート絶縁膜としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO2;ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO2等を用いることができる。
【0029】
ゲート電極としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミ、銅等の金属、チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属、ポリシリコン、高融点金属のシリサイド、ポリサイド等が挙げられる。
【0030】
また、薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。本件の有機EL表示装置は薄膜トランジスタが有機EL表示装置のスイッチング素子として機能するように接続されている必要があり、トランジスタのドレイン電極と有機EL表示装置の第一電極2が電気的に接続されている。薄膜トランジスタとドレイン電極と有機EL表示装置の第一電極2との接続は、平坦化膜を貫通するコンタクトホール内に形成された接続配線を介して行われる。
【0031】
基板上には第一電極2が設けられる。第一電極2を陽極とした場合、その材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等の金属複合酸化物や金、白金、クロムなどの金属材料を単層または積層したものをいずれも使用できる。第一電極2の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。
【0032】
なお、低抵抗であること、溶剤耐性があること、また、ボトムミッション方式としたときには透明性が高いことなどからITOが好ましく使用できる。ITOはスパッタ法によりガラス基板上1に形成され、フォトリソ法によりパターニングされて第一電極2となる。
【0033】
第一電極2を形成後、第一電極縁部を覆うようにして画素隔壁3が形成される。画素隔壁3は絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。感光性材料としては、ポジ型であってもネガ型であってもよく、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることができる。また、隔壁形成材料として、SiO2、TiO2等を用いることもできる。
【0034】
隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。また、隔壁形成材料がSiO2、TiO2の場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
【0035】
次に、有機発光媒体層を形成する。有機発光媒体層は、有機発光層5単独から構成されたものでもよいし、正孔輸送層4と有機発光層5、その他正孔注入層、電子輸送層、電子注入層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層は必要に応じて適宜選択される。
【0036】
有機発光層5は電流を流すことにより発光する層である。有機発光層5の形成する有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート) 亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート) アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラートシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0037】
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光対等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
【0038】
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP) 、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3 )ポリ[2−(2’ −エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF) などの高分子発光材料であってもよい。PPV前駆体、PNV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、これら高分子材料に前記低分子発光材料の分散又は共重合した材料や、その他既存の発光材料を用いることもできる。
【0039】
正孔輸送層4の材料としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4 ,4’− ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’ −ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0040】
また、電子輸送層の材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3, 4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
【0041】
有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール
、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0042】
正孔輸送材料、電子輸送材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。特に、正孔輸送材料をインキ化する場合には水またはアルコール類が好適である。
【0043】
有機発光媒体層は湿式成膜法により形成される。なお、有機発光媒体層が積層構造から構成される場合には、その各層の全てを湿式成膜法により形成する必要はない。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、有機発光層5を形成する場合、例えば印刷法を用いれば画素部に選択的に適用することができる。このため、各画素に、互いに異なる色彩に発光する発光層を印刷して、カラー表示のできる有機EL素子を製造することも可能となる。
【0044】
特に、有機発光層5の形成方法は凸版印刷法によって好適に形成される。凸版印刷法はインクジェット法と異なり、版と基板が直接的に接するようにしてインキが転移されるため、隔壁は低くすることが望ましい。本発明において凸版印刷法に用いる凸版は水現像タイプの樹脂凸版を用いることが好ましい。本発明における樹脂版を構成する水現像タイプの感光性樹脂としては、例えば親水性のポリマーと不飽和結合を含むモノマーいわゆる架橋性モノマー及び光重合開始剤を構成要素とするタイプが挙げられる。このタイプでは、親水性ポリマーとしてポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等が用いられる。また、架橋性モノマーとしては、例えばビニル結合を有するメタクリレート類が挙げられ、光重合開始剤としては例えば芳香族カルボニル化合物が挙げられる。中でも、印刷適性の面からポリアミド系の水現像タイプの感光性樹脂が好適である。
【0045】
有機発光層5の形成に用いる印刷装置は、平板に印刷する方式の凸版印刷装置であれば使用可能であるが、以下に示すような印刷装置が望ましい。図2に本発明の凸版印刷装置の概略図を示した。本製造装置は、インクタンク8とインキチャンバー9とアニロックスロール10と樹脂凸版12を取り付けした版胴11を有している。インクタンク8には、溶剤で希釈された有機発光インキが収容されており、インキチャンバー9にはインクタンク8より有機発光インキが送り込まれるようになっている。アニロックスロール10は、インキチャンバー9のインキ供給部及び版胴11に接して回転するようになっている。
【0046】
アニロックスロール10の回転にともない、インキチャンバー9から供給された有機発光インキはアニロクスロール10表面に均一に保持されたあと、版胴11に取り付けされた樹脂凸版12の凸部に均一な膜厚で転移する。さらに、被印刷基板13は摺動可能な基板固定台上に固定され、版のパターンと基板のパターンの位置調整機構により、位置調整しながら印刷開始位置まで移動して、版胴11の回転に合わせて樹脂凸版12の凸部が基板に接しながらさらに移動し、ステージ14上にある被印刷基板13の所定位置にパターニングしてインキを転移する。
【0047】
次に、第二電極6を形成する。第二電極6を陰極とした場合その材料としては電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、AL、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒
体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm 程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。また、トップエミッション方式の有機EL素子とする場合は、陰極は透明性を有する必要があり、例えば、これら金属とITO等の透明導電層の組み合わせによる透明化が可能となる。
【0048】
第二電極6の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。厚さは10nm〜1μm程度が望ましい。なお、本発明では第一の電極を陰極、第二の電極を陽極とすることも可能である。
【0049】
この有機EL表示装置は両電極間に発光材料が挟みこまれた部位に対し電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光媒体層や電極形成材料の一部は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける必要がある。
【0050】
封止体は、例えば第一電極2、有機発光層5を含む有機発光媒体層、第二電極6が形成された基板に対して、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラスの封止材7を用い、封止材7と有機EL表示装置を水分や酸素を排除し窒素やアルゴンといった不活性ガス環境となるグローブボックス内にて貼り合わせることにより形成される(図1)。
【0051】
このとき貼り合せの際には接着部位に対し、接着剤16を介して貼り合せが行われ、この接着剤16はディスペンサーにより一般に5〜10μmの厚みで塗布される。またここで用いた接着剤16の種類としては多くエポキシ樹脂が用いられ具体的にはビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンからなるプレポリマーといったエポキシ樹脂、その他にもアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、エチレンエチルアクリレートポリマー等といったアクリル樹脂やシリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂並びに熱硬化型接着性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを使用することができる。
【0052】
また、ここで接着剤16を凝固させる手段としては、エポキシ樹脂プレポリマーの(接着剤16)塗布部位以外にマスクを施し紫外光365nmをマスク非被覆部に1分〜2分照射し接着剤16を重合させることで封止体を完成させることが出来る。
【0053】
ここでは一例として光硬化型接着性樹脂を用いた封止手順を記載したが本発明はこれに限るものではない。
【0054】
以下ここで発生した封止不良に対する対応を以下に記す。
【0055】
水分や酸素を排除し窒素やアルゴンといった不活性ガス環境となるグローブボックス内にて、封止不良がある有機EL表示装置の基板と接着剤との界面(接着剤16)及び封止材7に対して、バインダ塗布用ディスペンサー15(特許文献2を参照)を用いて、バインダ17を第一電極2に付着しないように10μm程度の厚さで塗布する(図4参照)。
【0056】
バインダ17は、金属粉末粒径が一般に100μm以下からなり該当含有率が10〜90wt%、シート抵抗率が22〜98Ω/Sqかつ表面粗度が3.6〜11.4μmからなる市販の銀ペースト、ニッケルペースト、金ペースト、パラジウムペースト、クロムペーストまたはカーボンペースト、または前記ペースト類の様々な混合比からなるブレンド剤(一例として長野テクトロン株式会社の銀及びカーボンからなるブレンド剤など)といった材料を適宜選択して使用する。
【0057】
このとき10μm程度以上の厚さでバインダ17を塗布すると液垂れにより第一電極2に付着してしまう恐れがあるため塗布する厚さには注意を払う必要がある。
【0058】
塗布されたバインダ17に向かって基板側面よりレーザ照射装置19を用い、出力50〜100μJ、パルス幅3〜10nsecにてレーザを照射する。
【0059】
このとき上記出力値、パルス幅以上では発熱量が大きすぎるためTFT回路18にまで熱が移ってしまい焼けてしまう恐れがあり、また上記出力値、パルス幅以下ではTFT回路18から封止材7と接着剤16を解離するための発熱量が得られないため、本出力値およびパルス幅には注意を払う必要がある。
【0060】
ここで用いるレーザ照射装置19は例えばフォトニックインストゥルメンツ株式会社製MicroPointレーザ発生装置がある。
【0061】
しかし、ここでは上記のレーザ照射装置を例に挙げているが実際にはこれに限定するものではない。
【0062】
照射されたレーザの熱はバインダ17を経由し、封止材7及び接着剤16を加熱し、熱により封止材7及び接着剤16が膨張し、膨張率の違いから歪みが発生し解離しやすくなり、TFT回路基板18から接着剤16と封止材7を剥離することでき、再利用可能な基板となる(図3および図4)。
【0063】
これにより通常の接着剤16に用いられるエポキシ樹脂は、レーザ光を吸収することが出来ないが、バインダを介することでレーザ光由来の熱を吸収し封止材7を解離できた。従来技術(例えば、特許文献1)にてリペアを行うに場合にも、加熱や溶剤による接着剤の溶融又は溶解があったが、この時はエポキシ接着剤の素材の選択にある程度の制限があった。しかし、本実施例においてはエポキシ樹脂の素材、例えば旭電化工業株式会社製アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP−4530、アデカレジンEP−4901、大日本インキ工業株式会社製エピクロン840、エピクロン857、エピクロン830、JER株式会社製エピコート828、エピコート801、エピコート807といった特定の素材に限定することなくリペアすることができる。
【実施例1】
【0064】
薄膜トランジスタがスイッチング素子として機能するために平坦化膜に作製されたコンタクトホールを介して第一電極2と接続されるように形成されたトップエミッション用バックプレーンを用い、画素数240×320ドットでサブピクセル数720×320ドットとした。そして、120μm×360μm ピッチでサブピクセル間スペースは縦40μm 、横100μm となるようにITOをスパッタリング法によりパターン形成し、第一電極2とした。
【0065】
次に、ポジ型の感光性材料であるTELRシリーズ(東京応化社製)をスピンコート法にて有効面全面に塗布した。そして、露光(10sec)、現像処理をおこない図1(b)に示したような高さ0.5μmの画素隔壁3を形成した。
【0066】
次に、第一電極2上に正孔輸送層4として、厚さ0.1μmのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物(以下PEDOT/PSSという)を水に分散させ、スピンコート法により成膜した。その後、メタノールを用いてふき
取ることによって有効画素周辺にある不必要箇所にある正孔輸送インキを取り除いた。
【0067】
次に、赤色5(R)、緑色5(G)、青色5(B)の発光色を有する有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体らを、水現像タイプの感光性樹脂凸版を用いた凸版印刷法で各色についておこない、有機発光層5を形成した。このとき、150線/インチのアニロックスロールを使用して、得られた有機発光層5の膜厚は各色80nmであった。
【0068】
次に、第二電極6として真空蒸着法でBaを5nm、その上にAlを20nm成膜した。その後大気暴露することなく露点−80度、酸素濃度1ppmの窒素下で、いわゆる不活性ガス環境下で光硬化型接着剤をディスペンサーに10μmの厚さで塗布しガラスキャップ7を張り付け、365nmの紫外光を1分間接着部位に照射することによって封止をおこない、有機EL表示装置を得た。
【0069】
ここで発生した封止ズレに対するリペア法としてまず、水分や酸素を排除し窒素やアルゴンといった不活性ガス環境となるグローブボックス内にて有機EL表示装置と封止ガラス7及び接着剤16の界面に対しバインダ塗布用ディスペンサー15を用いバインダ17として粉末粒径が90μmからなり含有率が80wt%、シート抵抗率が74Ω/Sqかつ表面粗度が4.1μmからなる長野テクトロン株式会社製銀ペーストを10μmの厚さで塗布した後に、フォトニックインストゥルメンツ株式会社製MicroPointoレーザ発生装置を用いこの部位に向かって熱歪みを発生させる出力100μJ、パルス幅3nsecにてレーザを照射し、接着剤16と封止ガラス7に熱歪みを発生させTFT回路18から剥離 (図4)。
【0070】
封止ガラス7を剥離した有機EL表示装置は有機発光層5やTFT回路18などに不具合を発生することもなく、封止前と同様の状態を維持しており再度封止しリペア品として完成させ特性を検査した結果、良品と遜色ない結果が得られた(表1)。
【0071】
(比較例1)
実施例1と同様の工程を経て発生した封止不良の有機EL表示装置を300℃のホットプレート上で加温し接着剤16の融解を試みた。その結果、封止ガラス7の剥離に成功したが有機層の一部が加温による熱変形(膜ムラ)が見られ、再封止後の有機EL表示装置の特性低下が見られた(表1)。
【0072】
(比較例2)
実施例1と同様の工程を経て発生した封止不良の有機EL表示装置をキシレンへ6時間浸漬し接着剤16の溶解を試みた。その結果、封止ガラス7の剥離に成功したが浸漬した際に有機層へのキシレンの浸透により有機層の一部の膨潤状態(膜ムラ)が見られ、再封止後の有機EL表示装置の特性低下が見られた(表1)。
【0073】
(比較例3)
実施例1と同様の工程を経て発生した封止不良の有機EL表示装置の封止部に対して研磨剤を用い板ヤスリブラシ20により封止ガラス7と接着剤16の界面の研磨を試みた。その結果、封止ガラス7の剥離に成功したが研磨によるTFT回路18の一部配線断裂21が確認され封止前の有機EL表示装置の状態へと復元は出来なかった(図5及び表1)。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、これまで廃棄されるべき封止部に不良を起こした有機EL表示装置が、封止材を剥離することで再度封止可能な有機EL表示装置先駆体として再生でき、歩留まり
の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・ガラス基板
2・・・第一電極
3・・・画素隔壁
4・・・正孔輸送層
5・・・有機発光層
6・・・第二電極層
7・・・封止材
8・・・インキタンク
9・・・インキチャンバー
10・・・アニロクスロール
11・・・版胴
12・・・樹脂凸版
13・・・被印刷基板
14・・・ステージ
15…バインダ塗布用ディスペンサー
16・・・接着剤
17・・・バインダ
18・・・TFT回路基板
19・・・レーザ照射装置
20・・・…板ヤスリブラシ
21・・・配線断裂
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置の封止部におけるリペア方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL表示装置は、視認性やフレキシブル性に優れ、且つ発色性が多様であることから、車載用コンポや携帯電話等のディスプレイや表示素子に広く利用されている。
【0003】
これら有機EL表示装置は、このような優れた特性を有する一方で、一般に水分に対して極めて弱いということで知られている。一例としては、有機EL素子の外周部を封止材で封止する際に取り込まれた環境雰囲気中の水分や、封止層欠陥部を透過して素子内に浸入する水分により、有機EL表示装置にダークスポットと称する非発光領域が発生し、発光が維持できなくなるという寿命上の問題が生じている。
【0004】
このため、従来のボトムエミッション型有機EL表示装置においては、水分を遮断する金属又はガラス製の封止材(封止キャップ)を素子裏面に接着剤で貼り合わせて中空構造とし、接着剤断面から侵入する水分は、封止材の内側に設けた吸湿性吸着材からなる多孔質吸着シートで捕まえて発光部位に到達させない構造を一般に用いてきた。
【0005】
ここにおける封止工程においては、しばしば素子と封止材との「位置ズレ」あるいは「接着剤の塗布不良」によって「接着部位への気泡の混入」といった封止不良が起こる。
【0006】
これらの有機EL表示装置における封止不良に対する封止リペアにあっては、接着剤硬化後では、研削等の比較的簡便な物理的手法によって封止部位を除去することが困難である。例えば、封止キャップを用いた有機EL表示装置と同様の封止キャップを用いた半導体素子の封止リペアを挙げると、いわゆる半導体素子上の封止材及び接着剤を研削によって除去するリペアでは、基板表面が損傷される可能性が高く、多くの工程と慎重な作業が必要となる。
【0007】
なお、従来の接着剤においてエポキシ系樹脂のそれについては、キシレンに6時間程度浸漬させて溶かして封止材(封止キャップ)を引き離す方法も可能である。しかしこの方法で接着剤は完全に溶解されず、封止材の除去に大きな剥離剪断力が必要になる問題、あるいは基板表面が溶媒中へ浸漬することで不具合が発生するという問題等により実用的でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−67916号公報
【特許文献2】特開平10−137660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでは封止工程を完了した有機EL表示装置に封止不良が検知されたものについては、実用的なリペア方法がなかったために、元来高価なものであるにもかかわらず多くが破棄されており、歩留まり低下とコストアップの一因となっていた。また、従来技術にてリペアを行うにも熱や溶剤を用いる接着剤の溶融又は溶解であるため、使用できる接着剤が制限され十全な封止効果を得られないという問題があった。
そこで、本発明は実用的且つ多様な接着材料に対応できる有機EL表示装置の封止リペア
方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、キャップ型封止材により、基板上に形成した有機発光層を気密に覆うように、キャップ型封止材の端部と基板とを接着剤を介して接着固定する形態の有機EL表示装置の該接着部分のリペア方法であって、当該リペア方法は、レーザ光吸収性のバインダを接着部分に塗布する工程、バインダにレーザ照射することにより接着剤と基板間に熱歪を発生する工程、キャップ型封止材を基板から引き離す工程、キャップ型封止材を改めて基板に接着する工程、とを有することを特徴とする有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記バインダが、カーボンペースト、銀ペースト、クロムペースト、金ペースト、ニッケルペースト、パラジウムペーストのいずれから選択されるか、あるいはそれらの混合ペーストであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記キャップ型封止材がガラス製であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記レーザ照射を不活性ガス環境下にて行うことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、封止不良を起こした有機EL素子の封止材と基板の接着部に塗布したバインダに対し、レーザ光を照射し接着部に熱歪みを発生させることで、封止材を素子基板から容易に剥離可能としたもので、発光部分にダメージを与えることがない。
したがって、有機EL素子を封止前の再度の封止が可能な状態へ戻すことが可能となり歩留まりの向上とコスト低下が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)有機EL表示装置の模式図、(b)有機EL表示装置の有機発光媒体層の成膜前の模式図、(c)有機EL表示装置の有機発光媒体層の成膜後の模式図である。
【図2】有機EL表示装置の有機発光媒体層の成膜するための印刷機の模式図である。
【図3】有機EL表示装置の封止部のリペアにおける模式図である。
【図4】リペア部位を拡大した模式図である。
【図5】比較例3の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明の適用されうる典型的な有機EL表示装置の断面図を示した。
【0017】
以下、図面を参照して本発明を説明する。なお、本発明はパッシブマトリクス方式、アクティブマトリクス方式の有機EL表示装置のどちらにも適用可能である。
【0018】
図1(a)に示すように、本発明の有機EL素子は、ガラス基板1の上に、第一電極2を有している。パッシブマトリックス方式の場合、この第一電極2はストライプ状のパターンを有している。アクティブマトリックス方式の場合、第一電極2は画素ごとのパターンを有している。
【0019】
また、図(b)は、第一電極上に正孔輸送層4と有機発光層5を塗布する前の状態を示し、図(c)は、正孔輸送層4と有機発光層5を塗布した後の状態を模式的に示す図であ
る。
【0020】
更に、有機発光層5上に第二電極6が配置される。パッシブマトリックス方式の場合、ストライプ状を有する第一電極2と直交する形で第二電極6はストライプ状に設けられる。アクティブマトリックス方式の場合、第二電極6は、有機発光層全面に形成されるベタ電極である。
【0021】
次に、本発明に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する。
【0022】
基板としては、絶縁性を有する基板であれば使用することができる。しかし、基板側から光が出射するボトムエミッション方式の有機EL表示装置とする場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
【0023】
例えば、ガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、有機発光媒体層への水分の侵入を防ぐことを目的として、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
【0024】
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
【0025】
また、これらに薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、アクティブマトリックス方式の有機EL表示装置用の基板とすることが可能である。薄膜トランジスタとしては、公知の薄膜トランジスタを用いることができる。具体的には、主として、ソース/ドレイン領域及びチャネル領域が形成される活性層、ゲート絶縁膜及びゲート電極から構成される薄膜トランジスタが挙げられる。薄膜トランジスタの構造としては、特に限定されるものではなく、例えば、スタガ型、逆スタガ型、トップゲート型、コプレーナ型等が挙げられる。
【0026】
活性層は、特に限定されるものではなく、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、セレン化カドミウム等の無機半導体材料又はチオフエンオリゴマー、ポリ(p−フェリレンビニレン)等の有機半導体材料により形成することができる。
【0027】
これらの活性層は、例えば、アモルファスシリコンをプラズマCVD法により積層し、イオンドーピングする方法、SiH4ガスを用いてLPCVD法によりアモルファスシリコンを形成し、固相成長法によりアモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法、Si2H6ガスを用いてLPCVD法により、また、SiH4ガスを用いてPECVD法によりアモルファスシリコンを形成し、エキシマレーザ等のレーザによりアニールし、アモルファスシリコンを結晶化してポリシリコンを得た後、イオンドーピング法によりイオンドーピングする方法(低温プロセス)、減圧CVD法又はLPCVD法によりポリシリコンを積層し、1000℃以上で熱酸化してゲート絶縁膜を形成し、その上にn+ポリシリコンのゲート電極を形成し、その後、イオン打ち込み法によりイオンドーピングする方法(高温プロセス)等が挙げられる。
【0028】
ゲート絶縁膜としては、通常、ゲート絶縁膜として使用されているものを用いることができ、例えば、PECVD法、LPCVD法等により形成されたSiO2;ポリシリコン膜を熱酸化して得られるSiO2等を用いることができる。
【0029】
ゲート電極としては、通常、ゲート電極として使用されているものを用いることができ、例えば、アルミ、銅等の金属、チタン、タンタル、タングステン等の高融点金属、ポリシリコン、高融点金属のシリサイド、ポリサイド等が挙げられる。
【0030】
また、薄膜トランジスタは、シングルゲート構造、ダブルゲート構造、ゲート電極が3つ以上のマルチゲート構造であってもよい。また、LDD構造、オフセット構造を有していてもよい。さらに、1つの画素中に2つ以上の薄膜トランジスタが配置されていてもよい。本件の有機EL表示装置は薄膜トランジスタが有機EL表示装置のスイッチング素子として機能するように接続されている必要があり、トランジスタのドレイン電極と有機EL表示装置の第一電極2が電気的に接続されている。薄膜トランジスタとドレイン電極と有機EL表示装置の第一電極2との接続は、平坦化膜を貫通するコンタクトホール内に形成された接続配線を介して行われる。
【0031】
基板上には第一電極2が設けられる。第一電極2を陽極とした場合、その材料としては、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等の金属複合酸化物や金、白金、クロムなどの金属材料を単層または積層したものをいずれも使用できる。第一電極2の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。
【0032】
なお、低抵抗であること、溶剤耐性があること、また、ボトムミッション方式としたときには透明性が高いことなどからITOが好ましく使用できる。ITOはスパッタ法によりガラス基板上1に形成され、フォトリソ法によりパターニングされて第一電極2となる。
【0033】
第一電極2を形成後、第一電極縁部を覆うようにして画素隔壁3が形成される。画素隔壁3は絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。感光性材料としては、ポジ型であってもネガ型であってもよく、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることができる。また、隔壁形成材料として、SiO2、TiO2等を用いることもできる。
【0034】
隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。また、隔壁形成材料がSiO2、TiO2の場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
【0035】
次に、有機発光媒体層を形成する。有機発光媒体層は、有機発光層5単独から構成されたものでもよいし、正孔輸送層4と有機発光層5、その他正孔注入層、電子輸送層、電子注入層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層は必要に応じて適宜選択される。
【0036】
有機発光層5は電流を流すことにより発光する層である。有機発光層5の形成する有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート) 亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート) アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラートシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0037】
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光対等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
【0038】
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP) 、ポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイド(PPP−NEt3 )ポリ[2−(2’ −エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF) などの高分子発光材料であってもよい。PPV前駆体、PNV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、これら高分子材料に前記低分子発光材料の分散又は共重合した材料や、その他既存の発光材料を用いることもできる。
【0039】
正孔輸送層4の材料としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4 ,4’− ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’ −ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
【0040】
また、電子輸送層の材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3, 4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
【0041】
有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール
、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。また、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
【0042】
正孔輸送材料、電子輸送材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。特に、正孔輸送材料をインキ化する場合には水またはアルコール類が好適である。
【0043】
有機発光媒体層は湿式成膜法により形成される。なお、有機発光媒体層が積層構造から構成される場合には、その各層の全てを湿式成膜法により形成する必要はない。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、有機発光層5を形成する場合、例えば印刷法を用いれば画素部に選択的に適用することができる。このため、各画素に、互いに異なる色彩に発光する発光層を印刷して、カラー表示のできる有機EL素子を製造することも可能となる。
【0044】
特に、有機発光層5の形成方法は凸版印刷法によって好適に形成される。凸版印刷法はインクジェット法と異なり、版と基板が直接的に接するようにしてインキが転移されるため、隔壁は低くすることが望ましい。本発明において凸版印刷法に用いる凸版は水現像タイプの樹脂凸版を用いることが好ましい。本発明における樹脂版を構成する水現像タイプの感光性樹脂としては、例えば親水性のポリマーと不飽和結合を含むモノマーいわゆる架橋性モノマー及び光重合開始剤を構成要素とするタイプが挙げられる。このタイプでは、親水性ポリマーとしてポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等が用いられる。また、架橋性モノマーとしては、例えばビニル結合を有するメタクリレート類が挙げられ、光重合開始剤としては例えば芳香族カルボニル化合物が挙げられる。中でも、印刷適性の面からポリアミド系の水現像タイプの感光性樹脂が好適である。
【0045】
有機発光層5の形成に用いる印刷装置は、平板に印刷する方式の凸版印刷装置であれば使用可能であるが、以下に示すような印刷装置が望ましい。図2に本発明の凸版印刷装置の概略図を示した。本製造装置は、インクタンク8とインキチャンバー9とアニロックスロール10と樹脂凸版12を取り付けした版胴11を有している。インクタンク8には、溶剤で希釈された有機発光インキが収容されており、インキチャンバー9にはインクタンク8より有機発光インキが送り込まれるようになっている。アニロックスロール10は、インキチャンバー9のインキ供給部及び版胴11に接して回転するようになっている。
【0046】
アニロックスロール10の回転にともない、インキチャンバー9から供給された有機発光インキはアニロクスロール10表面に均一に保持されたあと、版胴11に取り付けされた樹脂凸版12の凸部に均一な膜厚で転移する。さらに、被印刷基板13は摺動可能な基板固定台上に固定され、版のパターンと基板のパターンの位置調整機構により、位置調整しながら印刷開始位置まで移動して、版胴11の回転に合わせて樹脂凸版12の凸部が基板に接しながらさらに移動し、ステージ14上にある被印刷基板13の所定位置にパターニングしてインキを転移する。
【0047】
次に、第二電極6を形成する。第二電極6を陰極とした場合その材料としては電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、AL、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒
体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm 程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。また、トップエミッション方式の有機EL素子とする場合は、陰極は透明性を有する必要があり、例えば、これら金属とITO等の透明導電層の組み合わせによる透明化が可能となる。
【0048】
第二電極6の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。厚さは10nm〜1μm程度が望ましい。なお、本発明では第一の電極を陰極、第二の電極を陽極とすることも可能である。
【0049】
この有機EL表示装置は両電極間に発光材料が挟みこまれた部位に対し電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光媒体層や電極形成材料の一部は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける必要がある。
【0050】
封止体は、例えば第一電極2、有機発光層5を含む有機発光媒体層、第二電極6が形成された基板に対して、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラスの封止材7を用い、封止材7と有機EL表示装置を水分や酸素を排除し窒素やアルゴンといった不活性ガス環境となるグローブボックス内にて貼り合わせることにより形成される(図1)。
【0051】
このとき貼り合せの際には接着部位に対し、接着剤16を介して貼り合せが行われ、この接着剤16はディスペンサーにより一般に5〜10μmの厚みで塗布される。またここで用いた接着剤16の種類としては多くエポキシ樹脂が用いられ具体的にはビスフェノール化合物とエピクロルヒドリンからなるプレポリマーといったエポキシ樹脂、その他にもアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、エチレンエチルアクリレートポリマー等といったアクリル樹脂やシリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂並びに熱硬化型接着性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸変性物からなる熱可塑性接着性樹脂などを使用することができる。
【0052】
また、ここで接着剤16を凝固させる手段としては、エポキシ樹脂プレポリマーの(接着剤16)塗布部位以外にマスクを施し紫外光365nmをマスク非被覆部に1分〜2分照射し接着剤16を重合させることで封止体を完成させることが出来る。
【0053】
ここでは一例として光硬化型接着性樹脂を用いた封止手順を記載したが本発明はこれに限るものではない。
【0054】
以下ここで発生した封止不良に対する対応を以下に記す。
【0055】
水分や酸素を排除し窒素やアルゴンといった不活性ガス環境となるグローブボックス内にて、封止不良がある有機EL表示装置の基板と接着剤との界面(接着剤16)及び封止材7に対して、バインダ塗布用ディスペンサー15(特許文献2を参照)を用いて、バインダ17を第一電極2に付着しないように10μm程度の厚さで塗布する(図4参照)。
【0056】
バインダ17は、金属粉末粒径が一般に100μm以下からなり該当含有率が10〜90wt%、シート抵抗率が22〜98Ω/Sqかつ表面粗度が3.6〜11.4μmからなる市販の銀ペースト、ニッケルペースト、金ペースト、パラジウムペースト、クロムペーストまたはカーボンペースト、または前記ペースト類の様々な混合比からなるブレンド剤(一例として長野テクトロン株式会社の銀及びカーボンからなるブレンド剤など)といった材料を適宜選択して使用する。
【0057】
このとき10μm程度以上の厚さでバインダ17を塗布すると液垂れにより第一電極2に付着してしまう恐れがあるため塗布する厚さには注意を払う必要がある。
【0058】
塗布されたバインダ17に向かって基板側面よりレーザ照射装置19を用い、出力50〜100μJ、パルス幅3〜10nsecにてレーザを照射する。
【0059】
このとき上記出力値、パルス幅以上では発熱量が大きすぎるためTFT回路18にまで熱が移ってしまい焼けてしまう恐れがあり、また上記出力値、パルス幅以下ではTFT回路18から封止材7と接着剤16を解離するための発熱量が得られないため、本出力値およびパルス幅には注意を払う必要がある。
【0060】
ここで用いるレーザ照射装置19は例えばフォトニックインストゥルメンツ株式会社製MicroPointレーザ発生装置がある。
【0061】
しかし、ここでは上記のレーザ照射装置を例に挙げているが実際にはこれに限定するものではない。
【0062】
照射されたレーザの熱はバインダ17を経由し、封止材7及び接着剤16を加熱し、熱により封止材7及び接着剤16が膨張し、膨張率の違いから歪みが発生し解離しやすくなり、TFT回路基板18から接着剤16と封止材7を剥離することでき、再利用可能な基板となる(図3および図4)。
【0063】
これにより通常の接着剤16に用いられるエポキシ樹脂は、レーザ光を吸収することが出来ないが、バインダを介することでレーザ光由来の熱を吸収し封止材7を解離できた。従来技術(例えば、特許文献1)にてリペアを行うに場合にも、加熱や溶剤による接着剤の溶融又は溶解があったが、この時はエポキシ接着剤の素材の選択にある程度の制限があった。しかし、本実施例においてはエポキシ樹脂の素材、例えば旭電化工業株式会社製アデカレジンEP-4100、アデカレジンEP−4530、アデカレジンEP−4901、大日本インキ工業株式会社製エピクロン840、エピクロン857、エピクロン830、JER株式会社製エピコート828、エピコート801、エピコート807といった特定の素材に限定することなくリペアすることができる。
【実施例1】
【0064】
薄膜トランジスタがスイッチング素子として機能するために平坦化膜に作製されたコンタクトホールを介して第一電極2と接続されるように形成されたトップエミッション用バックプレーンを用い、画素数240×320ドットでサブピクセル数720×320ドットとした。そして、120μm×360μm ピッチでサブピクセル間スペースは縦40μm 、横100μm となるようにITOをスパッタリング法によりパターン形成し、第一電極2とした。
【0065】
次に、ポジ型の感光性材料であるTELRシリーズ(東京応化社製)をスピンコート法にて有効面全面に塗布した。そして、露光(10sec)、現像処理をおこない図1(b)に示したような高さ0.5μmの画素隔壁3を形成した。
【0066】
次に、第一電極2上に正孔輸送層4として、厚さ0.1μmのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸の混合物(以下PEDOT/PSSという)を水に分散させ、スピンコート法により成膜した。その後、メタノールを用いてふき
取ることによって有効画素周辺にある不必要箇所にある正孔輸送インキを取り除いた。
【0067】
次に、赤色5(R)、緑色5(G)、青色5(B)の発光色を有する有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体らを、水現像タイプの感光性樹脂凸版を用いた凸版印刷法で各色についておこない、有機発光層5を形成した。このとき、150線/インチのアニロックスロールを使用して、得られた有機発光層5の膜厚は各色80nmであった。
【0068】
次に、第二電極6として真空蒸着法でBaを5nm、その上にAlを20nm成膜した。その後大気暴露することなく露点−80度、酸素濃度1ppmの窒素下で、いわゆる不活性ガス環境下で光硬化型接着剤をディスペンサーに10μmの厚さで塗布しガラスキャップ7を張り付け、365nmの紫外光を1分間接着部位に照射することによって封止をおこない、有機EL表示装置を得た。
【0069】
ここで発生した封止ズレに対するリペア法としてまず、水分や酸素を排除し窒素やアルゴンといった不活性ガス環境となるグローブボックス内にて有機EL表示装置と封止ガラス7及び接着剤16の界面に対しバインダ塗布用ディスペンサー15を用いバインダ17として粉末粒径が90μmからなり含有率が80wt%、シート抵抗率が74Ω/Sqかつ表面粗度が4.1μmからなる長野テクトロン株式会社製銀ペーストを10μmの厚さで塗布した後に、フォトニックインストゥルメンツ株式会社製MicroPointoレーザ発生装置を用いこの部位に向かって熱歪みを発生させる出力100μJ、パルス幅3nsecにてレーザを照射し、接着剤16と封止ガラス7に熱歪みを発生させTFT回路18から剥離 (図4)。
【0070】
封止ガラス7を剥離した有機EL表示装置は有機発光層5やTFT回路18などに不具合を発生することもなく、封止前と同様の状態を維持しており再度封止しリペア品として完成させ特性を検査した結果、良品と遜色ない結果が得られた(表1)。
【0071】
(比較例1)
実施例1と同様の工程を経て発生した封止不良の有機EL表示装置を300℃のホットプレート上で加温し接着剤16の融解を試みた。その結果、封止ガラス7の剥離に成功したが有機層の一部が加温による熱変形(膜ムラ)が見られ、再封止後の有機EL表示装置の特性低下が見られた(表1)。
【0072】
(比較例2)
実施例1と同様の工程を経て発生した封止不良の有機EL表示装置をキシレンへ6時間浸漬し接着剤16の溶解を試みた。その結果、封止ガラス7の剥離に成功したが浸漬した際に有機層へのキシレンの浸透により有機層の一部の膨潤状態(膜ムラ)が見られ、再封止後の有機EL表示装置の特性低下が見られた(表1)。
【0073】
(比較例3)
実施例1と同様の工程を経て発生した封止不良の有機EL表示装置の封止部に対して研磨剤を用い板ヤスリブラシ20により封止ガラス7と接着剤16の界面の研磨を試みた。その結果、封止ガラス7の剥離に成功したが研磨によるTFT回路18の一部配線断裂21が確認され封止前の有機EL表示装置の状態へと復元は出来なかった(図5及び表1)。
【0074】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明によれば、これまで廃棄されるべき封止部に不良を起こした有機EL表示装置が、封止材を剥離することで再度封止可能な有機EL表示装置先駆体として再生でき、歩留まり
の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・ガラス基板
2・・・第一電極
3・・・画素隔壁
4・・・正孔輸送層
5・・・有機発光層
6・・・第二電極層
7・・・封止材
8・・・インキタンク
9・・・インキチャンバー
10・・・アニロクスロール
11・・・版胴
12・・・樹脂凸版
13・・・被印刷基板
14・・・ステージ
15…バインダ塗布用ディスペンサー
16・・・接着剤
17・・・バインダ
18・・・TFT回路基板
19・・・レーザ照射装置
20・・・…板ヤスリブラシ
21・・・配線断裂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ型封止材により、基板上に形成した有機発光層を気密に覆うように、キャップ型封止材の端部と基板とを接着剤を介して接着固定する形態の有機EL表示装置の該接着部分のリペア方法であって、当該リペア方法は、レーザ光吸収性のバインダを接着部分に塗布する工程、バインダにレーザ照射することにより接着剤と基板間に熱歪を発生する工程、キャップ型封止材を基板から引き離す工程、キャップ型封止材を改めて基板に接着する工程、とを有することを特徴とする有機EL表示装置のリペア方法。
【請求項2】
前記バインダが、カーボンペースト、銀ペースト、クロムペースト、金ペースト、ニッケルペースト、パラジウムペーストのいずれから選択されるか、あるいはそれらの混合ペーストであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法。
【請求項3】
前記キャップ型封止材がガラス製であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法。
【請求項4】
前記レーザ照射を不活性ガス環境下にて行うことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法。
【請求項1】
キャップ型封止材により、基板上に形成した有機発光層を気密に覆うように、キャップ型封止材の端部と基板とを接着剤を介して接着固定する形態の有機EL表示装置の該接着部分のリペア方法であって、当該リペア方法は、レーザ光吸収性のバインダを接着部分に塗布する工程、バインダにレーザ照射することにより接着剤と基板間に熱歪を発生する工程、キャップ型封止材を基板から引き離す工程、キャップ型封止材を改めて基板に接着する工程、とを有することを特徴とする有機EL表示装置のリペア方法。
【請求項2】
前記バインダが、カーボンペースト、銀ペースト、クロムペースト、金ペースト、ニッケルペースト、パラジウムペーストのいずれから選択されるか、あるいはそれらの混合ペーストであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法。
【請求項3】
前記キャップ型封止材がガラス製であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法。
【請求項4】
前記レーザ照射を不活性ガス環境下にて行うことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置のリペア方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−216308(P2012−216308A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79099(P2011−79099)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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