説明

有機EL表示装置の製造方法

【課題】
エージング処理後に残存する酸素等の支燃性ガスによるダークスポットの発生・拡大を低減し、表示不良を確実に抑制すること。
【解決手段】
本発明に係る有機EL表示装置の製造方法では、基板1表面に陽極配線2と陰極配線5と有機発光層7を有する有機EL素子基板100を製造し、有機EL素子基板100上に、燃焼用電極端子対201、501で有機発光層7を挟持して構成された複合体を形成し、有機EL素子基板100表面に対向して封止基板8を設け、有機EL素子基板100表面が外気と遮断されるように封止し、有機EL素子基板100および封止基板8の間の封止空間に支燃性ガスを封入し、全陽極配線2と全陰極配線5の間にエージング電圧を印加した後に、燃焼用電極端子対201、501の間に燃焼用電圧を印加して、上記複合体を燃焼させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置の製造方法に関し、特にエージングのための酸素等の支燃性ガスを消費する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FPD(Flat Panel Display)として有機EL(Electro Luminescence)表示装置が注目されている。有機EL表示装置は自発光表示素子であり、液晶表示装置と比較して視野角が広く、バックライトが不要なため薄型化が可能である。また、応答速度も速く、有機物が有する発光性の多様性から、次世代の表示装置として期待されている。
【0003】
有機EL表示装置は、画素となる有機EL素子を複数配置した有機EL表示素子を備えている。たとえば、パッシブ型の有機EL表示素子は、ストライプ状に配列された陽極配線と、当該陽極配線に交差するようにストライプ状に配列された陰極配線との交差部の間に有機発光層が挟持された構造となっている。この一つの交差部に、発光素子としての画素が形成されている。有機EL表示素子は、このような画素がマトリックス状に配列されることにより構成されている。この有機EL表示素子は、携帯電話機などの表示装置や光源装置などとしての利用が期待されている。
【0004】
しかしながら、有機EL表示素子の実用化における問題として、異物の混入、有機発光層の膜厚不均一性などによる素子特性の低下が挙げられる。これらは有機EL表示装置の輝度ムラ、画素の非発光や非選択画素の発光を引き起こし、表示品質を低下させる。また、これらの不良は有機EL表示装置の使用とともに拡大し、有機EL表示素子を表示不良に至らせることもある。従って有機EL表示素子は製造段階から高い信頼性レベルが要求されている。
【0005】
このような有機EL表示素子を実用に供するのに、初期の発光時における発光特性の変化を取り除くために、数時間から数百時間に亘って発光を行わせ、発光特性の安定化を図る必要がある。この工程はエージングと呼ばれている。
例えば、有機EL表示素子の陽極配線の全てを、接続線を介して共通配線に短絡し、さらに、全ての陰極配線を、他の接続線を介して別の共通配線に短絡する。このエージング工程において、各共通配線から陽極配線の全てと陰極配線の全ての間に電圧パルスを印加する(たとえば、特許文献1)。
【0006】
また、有機EL素子基板上の有機EL層等を封止基板で封止し、封止空間に酸素等の支燃性ガスを充填した後、エージング処理を行う技術が提案されている。このように支燃性ガスを充填することにより、効率よく短絡した欠陥部を酸化(不導体化)させたり、飛散させたりでき、効果的なエージング処理を行える(たとえば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−146212号公報
【特許文献2】特開2004−178986号公報(段落0014〜段落0016)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機EL層は極めて水分に弱く、大気に曝してしまうと湿気を吸い込み、ダークスポット(非表示欠陥)が生じて、すぐに輝度と寿命が劣化してしまう。
従来から、有機EL素子基板および封止基板の間の封止空間に捕水剤を設けることにより、水分を主要因とするダークスポットの発生を低減している。
【0008】
特許文献1と特許文献2に記載の技術を適用した場合、エージング処理において、全ての酸素等の支燃性ガスが消費されず、有機EL素子基板および封止基板の間の封止空間に、酸素等の支燃性ガスが残存してしまう場合がある。
エージング処理後に残存した酸素等の支燃性ガスは、水分と同様に、有機EL表示素子のダークスポットを新たに発生させ、更に拡大させる要因となる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、エージング処理後に残存する酸素等の支燃性ガスによるダークスポットの発生・拡大を低減し、表示素子の表示不良を確実に抑制する有機EL表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る有機EL表示装置の製造方法は、基板表面に、陽極と、陰極と、陽極および上記陰極の間に配置された有機発光層とを有する素子基板を製造するステップと、素子基板上に、電極端子対で有機層を挟持して構成された複合体を設けるステップと、素子基板の表面に対向して封止基板を素子基板上に設けて、素子基板の表面が外気と遮断されるように封止するステップと、素子基板および封止基板の間の空間に、支燃性ガスを封入するステップと、陽極と陰極との間に、エージング電圧を印加するステップと、エージング電圧の印加後に、電極端子対の間に燃焼用電圧を印加して、複合体を燃焼させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
このような製造方法を採用することにより、エージング処理後に残存する酸素等の支燃性ガスによるダークスポットの発生・拡大を低減し、有機EL表示素子の表示不良を確実に抑制することができる。
【0012】
また、電極端子対の一方は、陽極または陰極と接続されてもよい。これにより、有機EL表示装置の非表示領域を低減し、画素領域を確保することができる。
【0013】
また、好ましくは、電極端子対の一方は、陽極と同一部材により同時に形成され、電極端子対の他方は、陰極と同一部材により同時に形成され、有機層は有機発光層と同一部材により同時に形成される。このようにすることにより、効率的に、電極端子対および有機層を素子基板上に形成することができる。
【0014】
また、電極端子対の間に異物を付着させるステップを含めてもよい。このようにすることにより、エージング電圧の印加後に、電極端子対の間に燃焼用電圧を印加して、複合体を燃焼させるステップにおいて、電極端子対や有機層を効果的に燃焼させることができ、酸素等の支燃性ガスを効率的に消費することができる。
【0015】
また、好ましくは、電極端子対の間に印加する燃焼用電圧は、エージング電圧より大きい電圧とする。このようにすることにより、エージング電圧の印加後に、電極端子対の間に燃焼用電圧を印加して、複合体を燃焼させるステップにおいて、電極端子対や有機層を効果的に燃焼させることができ、酸素等の支燃性ガスを効率的に消費することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エージング処理後に残存する酸素等の支燃性ガスによるダークスポットの発生・拡大を低減し、有機EL表示素子の表示不良を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法について、図に基づいて説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成について、図に基づいて説明する。
図1は、有機EL表示装置の構成を示す図であって、図1(a)は電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図であり、図1(b)は図1(a)のX−Xにおける断面図である。なお、図1(a)では封止基板8および捕水剤10を省略している。
【0018】
図1(a)および図1(b)に示されるように、有機EL素子基板100は、基板1上に陽極配線2、陰極配線5、燃焼用配線20、有機発光層7、絶縁膜4、陰極隔壁6等が形成されて構成されている。
基板1上に陽極配線2がストライプ状に形成される。基板1には例えばガラス基板が用いられる。陽極配線2の材料には、例えばITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。
【0019】
図1(a)に示されるように、燃焼用配線20が陽極配線2と平行に設けられている。燃焼用配線20は、陽極配線2と異なる幅で形成してもよい。また、燃焼用配線20は複数本設けてもよい。燃焼用配線20の材料には、陽極配線2と同様に例えばITOが用いられる。
陽極配線2および燃焼用配線20の上に積層して、開口部3を有する絶縁膜4が形成される。開口部3は、陽極配線2または燃焼用配線20と、陰極配線5との交差部に設けられる。
【0020】
図1(a)および図1(b)に示されるように、有機発光層7は陽極配線2および燃焼用配線20の上に積層して形成される。なお、有機発光層7は、例えば、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等の複数層により形成されるが、図1では、これらの複数層をまとめて有機発光層7として示している。
図1(b)に示されるように、陰極配線5は、有機発光層7上に形成される。
【0021】
また、図1(a)および図1(b)に示されるように、陰極隔壁6が、陽極配線2および燃焼用配線20と直交するように、絶縁膜4上に形成されている。陰極隔壁6が有機発光層7や陰極配線5を分離することにより、陰極隔壁6間に有機発光層7が形成され、ストライプ状にされた陰極配線5が形成される。陰極配線5の材料には、通常はアルミニウムAlまたはアルミニウム合金が用いられる。なお、AlやAl合金の他に、Li等のアルカリ金属、Ag、Ca、Mg、Y、Inやこれらを含む合金を、陰極配線5の材料に用いてもよい。陽極配線2と陰極配線5の交差部では、陽極配線2は陽極として、陰極配線5は陰極として機能する。
【0022】
ここで、図1(a)および図1(b)に示されるように、燃焼用配線20と陰極配線5の1本(例えば図1(a)の紙面一番上の陰極配線5を選択)との交差部で、有機発光層7を挟持する。この燃焼用配線20および陰極配線5の交差部では、燃焼用配線20および陰極配線5は電極端子として機能し、それぞれ第一および第二の燃焼用電極端子201、501を構成する。これら第一および第二の燃焼用電極端子201、501を燃焼用電極端子対とする。なお、陰極配線5を複数本選択してもよく、この場合には、燃焼用電極端子対は複数となる。また、燃焼用配線20を陽極配線2と平行に形成せず、陰極配線5と平行に形成してもよい。
【0023】
このようにして、有機EL素子基板100の表面上に、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間で有機発光層7を挟持した複合体を設ける。
複合体は、第一および第二の燃焼用電極端子201、501に電圧を印加することにより、エージング後に封止空間内に残存した酸素や窒素等の支燃性ガスを用いて燃焼される。このように、複合体は、特に、エージング後に封止空間内に残存した酸素や窒素等の支燃性ガスを消費するのに用いられる。
なお、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間で有機発光層7を挟持するとしたが、有機発光層に代えて、発光しない有機材料により形成された有機層を挟持するように構成してもよい。
【0024】
また、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の一方または双方の表面を、例えば、手で触ったり、布等を用いて拭いたりすることにより、ほこりや油等の異物を、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の一方または双方の表面に付着させてもよい。また、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間の有機発光層7の表面を、例えば、手で触ったり、布等を用いて拭いたりすることにより、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間の有機発光層7の表面にほこりや油等の異物を付着させる。このようにすることにより、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間で短絡が生じやすくなる。
【0025】
また、燃焼用配線20の幅を広くした場合、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の領域が、陽極配線2および陰極配線5の交差部で形成される画素領域よりも大きくなる。第一および第二の燃焼用電極端子201、501の領域は表示領域外となる。また、燃焼用配線20が配置されたライン上に配列された開口部3は、表示画素として機能しないため、有機EL表示装置の表示領域100aは、図1の点線で示された領域となる。
【0026】
図1(a)および図1(b)に示されるように、陰極隔壁6は、陰極配線5と平行に配設される。陰極隔壁6は、陰極配線5の配線同士が導通しないように、複数の陰極配線5を空間的に分離する役割を担っている。
図1(b)に示されるように、陰極隔壁6の断面形状は逆テーパ形状となっており、陰極隔壁6を逆テーパ形状にすることにより、陰極隔壁6の側壁およびの立ち上がり部分が影となり、製造工程において、複数の陰極配線5を空間的に分離することができる。
【0027】
図1(b)に示されるように、有機EL素子基板100の表面、すなわち基板1の有機発光層7等が配置された面上には、封止基板8が対向するように配置され、基板1上の有機発光層7等が外気と遮断されるように封止されている。図1(b)に示されるように、封止基板8の基板1との対向側の中央部には、凹部8aが形成されている。
また、図1(b)に示されるように、封止基板8と基板1とは、封止基板8の外周に塗布されたシール材9により貼り合わされる。
基板1上の有機発光層7等は、両基板1、8およびシール材9によって封止されることで、空気中の水分にさらされないように保たれる。
【0028】
また、基板1と封止基板8との間の封止空間には、酸素や窒素等の支燃性ガスが封入されている。
図1(b)に示されるように、捕水剤10が、基板1上に形成された陽極配線2や陰極配線5や有機層7等と隙間を空けて、封止空間内に設けられている。捕水剤10は、封止基板8に、基板1の表面に対して対向するように取り付けられている。
【0029】
捕水剤10は、吸水剤および不活性液体を主成分とする。吸水剤には、例えば、酸化カルシウムCaO、酸化バリウムBaO等のアルカリ土類金属酸化物、ゼオライト、珪藻土等が用いられる。
また、不活性液体には、例えば、不活性潤滑油が用いられる。捕水剤10に含まれる吸水剤や不活性液体は、それぞれ1種類だけ用いてもよいし、複数種類用いてもよい。
【0030】
次に、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を図に基づいて説明する。
図2は、本発明に係る有機EL表示装置の製造方法の工程を示すフロー図である。
有機EL素子基板製造工程(S201)では、基板1の表面に、複数の陽極配線2と、複数の陽極配線2に対して交差して配置された複数の陰極配線5と、陽極配線2および陰極配線5の交差部の間に配置された有機発光層7とを有する有機EL素子基板100を製造する。
【0031】
具体的には、基板1の表面上にITOを成膜し、感光性樹脂をITO上に塗布し、露光、現像、エッチングをして、複数の陽極配線2および燃焼用配線20を同一材料により同時に形成する。このとき、同時に、複数の陽極配線2の全てを接続する陽極用共通配線(不図示)を形成する。この陽極用共通配線2は、陽極配線2の全てを短絡させるために設け、後述のエージング処理(S203)で用いられる。
また、各有機EL表示素子内の引き回し配線を、フォトリソグラフィ及びエッチングによって形成する。このとき、同時に、この複数の陰極配線5の全てを接続する陰極用共通配線(不図示)を形成する。この陰極用共通配線は、陰極配線5の全てを短絡させるために設け、陽極用共通配線と同様に、後述のエージング処理(S203)で用いられる。
【0032】
次に各有機EL表示素子内の引き回し配線や陽極配線2などの上に、絶縁膜4を塗布し露光、現像を行って開口部3を形成する。さらに、陰極隔壁6を形成した後、有機発光層7を積層する。最後に、陰極配線5を形成し、陰極配線5を引き回し配線に接続する。このとき、陰極隔壁6が有機発光層7や陰極配線5を分離することにより、陰極隔壁6間に有機発光層7が形成され、ストライプ状にされた陰極配線5が形成される。
【0033】
有機EL素子基板製造工程(S201)が終了すると、基板1上に形成された複数のパッシブ型の有機EL表示素子における各陽極配線2が陽極用共通配線(不図示)に接続され、複数の陽極配線2の全てに陽極用共通配線から同じ信号を供給することができる。また、複数の有機EL表示素子における各陰極配線5が陰極用共通配線(不図示)に接続され、複数の陰極配線5の全てに、陰極用共通配線から同じ信号を供給することができる。
また、図1(a)および図1(b)に示されるように、燃焼用配線20および陰極配線5の交差部には、第一および第二の燃焼用電極端子201、501(燃燃焼用電極端子対)が形成される。また、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間で、有機層が挟持される。このようにして、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間で有機層を挟持して構成された複合体が、基板1上に設けられる。
【0034】
なお、好ましくは、上述の通り、燃焼用電極端子対の一方は、陽極配線2と同一部材により同時に形成し、燃焼用電極端子対の他方は、陰極配線5と同一部材により同時に形成し、燃焼用電極端子対の間の有機層を、陽極配線2および陰極配線5の交差部に形成される有機発光層7と同一部材により同時に形成するとよい。このようにしたことにより、燃焼用電極端子対および有機層を有機EL素子基板100上に効率よく形成することができる。一方、燃焼用電極端子対や燃焼用電極端子対の間の有機層のそれぞれを、複数の陽極配線2形成時や複数の陰極配線5形成時や有機発光層7形成時と同時に形成せず、それぞれ別工程で形成してもよい。
【0035】
封止工程(S202)では、有機EL素子基板製造工程(S201)で基板1上に形成された有機発光層7を空気中の水分から守るために、封止基板8を基板1に対して対向配置し、シール材9によって双方の基板1、8を接合する。このとき、2枚の基板1、8とシール材9により形成された封止空間内に、酸素や窒素等の支燃性ガスを封入する。酸素や窒素等の支燃性ガスを封入することにより、エージング工程(S203)の際に、陽極配線2や陰極配線5や有機層7を効率よく燃焼させることができる。
【0036】
次に、エージング工程(S203)を実施する。全ての陽極配線2が接続されている陽極用共通配線(不図示)と、全ての陰極配線5が接続されている陰極用共通配線(不図示)との間に、エージング用の電圧印加装置を接続し、基板1の周囲温度を室温以上、好ましくは80℃以上の高温に設定して通電処理を行ない、陽極配線2と陰極配線5が短絡した欠陥部を破壊し除去する。高温で通電処理を行うことによって、短い時間で短絡した欠陥部を修復させることができる。
【0037】
実際のエージング工程(S204)では、例えば、125℃の環境下で、AC+7V/−35V、20Hz(実効値−10V〜−20V)の電圧を、全陽極配線2と全陰極配線5間に印加する。このとき、欠陥部の陽極配線2や、陰極配線5や、陽極配線2および陰極配線5の交差部の有機発光層7、またはこれらの組合せが、封止空間内に封入された酸素や窒素等の支燃性ガスを用いて燃焼され、また、飛散される。一方、エージング工程(S203)の後に、封止空間内に酸素や窒素等の支燃性ガスが残存する場合もある。
【0038】
次に、複合体燃焼処理を行う(S204)。具体的には、燃焼用配線20および陰極配線5の1本(例えば図1(a)の紙面一番上の陰極配線5を選択)の間に燃焼用電圧を印加することにより、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間に燃焼用電圧を印加する。このとき、第一および第二の燃焼用電極端子201、502や、第一および第二の燃焼用端子201、501の間の有機層7、またはこれらの組合せが、エージング工程(S203)の後に封止空間内に残存した酸素や窒素等の支燃性ガスを用いて燃焼され、また、飛散される。また、燃焼用電圧は、エージング工程(S203)の際に、複数の陽極配線2の全てと複数の陰極配線5の全ての間に加えるエージング電圧(実効値)よりも、高い電圧とする。実際の複合体燃焼処理(S204)では、例えば、第一および第二の燃焼用電極端子201、501の間にDC−30Vの電圧を印加する。
【0039】
このように、複合体燃焼処理(S204)を行うことにより、エージング工程(S203)で残存した封止空間内の酸素や窒素等の支燃性ガスを消費することができる。そして、エージング処理後に残存する酸素等の支燃性ガスによるダークスポットの発生・拡大を低減することができる。
【0040】
次に、切断工程(S205)を実施する。表示領域を囲むように切断線を設定し、切断線に沿って基板1および封止基板8を切断して複数の有機EL表示素子に分離する。次に光学フイルム貼付工程(S206)で偏光板等の光学フイルムを有機EL表示素子に貼り付ける。そして、実装工程(S207)で、駆動回路などの周辺回路を各有機EL表示素子に実装して有機EL表示装置を得る。
【0041】
以上のように、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を採用することにより、エージング処理後に残存する酸素等の支燃性ガスによるダークスポットの発生・拡大を低減し、表示素子の表示不良を確実に抑制することができる。
【0042】
以上の説明は、本発明を実施の形態を説明するものであり、本発明が以上の実施の形態に限定されるものではない。また、当業者であれば、以上の実施の形態の各要素を、本発明の範囲において、容易に変更、追加、変換することが可能である。
また、上記発明の実施態様では、パッシブ型有機EL装置として説明したが、アクティブ型有機EL表示装置にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】有機EL表示素子の構成を示す図であって、図1(a)は電極が形成される側から基板を観察した状況を示す模式図であり、図1(b)は図1(a)のX−Xにおける断面図である。
【図2】本発明に係る有機EL表示装置の製造方法の工程を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0044】
1 基板
2 陽極配線
3 開口部
4 絶縁膜
5 陰極配線
6 陰極隔壁
7 有機発光層
8 封止基板
9 シール材
10 捕水剤
20 燃焼用配線
100 有機EL素子基板
100a 表示領域
201 第一の燃焼用電極端子
501 第二の燃焼用電極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に、陽極と、陰極と、上記陽極および上記陰極の間に配置された有機発光層とを有する素子基板を製造するステップと、
上記素子基板上に、電極端子対で有機層を挟持して構成された複合体を設けるステップと、
上記素子基板の表面に対向して封止基板を上記素子基板上に設けて、上記素子基板の表面が外気と遮断されるように封止するステップと、
上記素子基板および上記封止基板の間の空間に、支燃性ガスを封入するステップと、
上記陽極と上記陰極との間に、エージング電圧を印加するステップと、
上記エージング電圧の印加後に、上記電極端子対の間に燃焼用電圧を印加して、上記複合体を燃焼させるステップと、を含む有機EL表示装置の製造方法。
【請求項2】
上記電極端子対の一方は、上記陽極または上記陰極と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項3】
上記電極端子対の一方は、上記陽極と同一部材により同時に形成され、上記電極端子対の他方は、上記陰極と同一部材により同時に形成され、上記有機層は上記有機発光層と同一部材により同時に形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項4】
上記電極端子対の間に異物を付着させるステップを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項5】
上記燃焼用電圧は、エージング電圧より大きい電圧であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−331812(P2006−331812A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152876(P2005−152876)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【出願人】(000167783)広島オプト株式会社 (95)
【Fターム(参考)】