説明

有機EL表示装置の製造方法

【課題】インクジェット方式で発光層を形成する場合に塗工ムラが発生しない有機EL表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】アレイ基板10上に画素20が格子状に縦横に配置され、各画素20に対応する位置にインクジェットヘッド52,54のノズル36から発光材料を吐出して発光層を形成するものであり、アレイ基板10の第1の対角線方向Aに沿って第1のヘッド52を移動しながら発光材料を吐出させて発光層を形成し、次に、アレイ基板10の第2の対角線方向Bに沿って第2のヘッド54を移動しながら発光材料を吐出させてさらに発光材料を上塗りする工程とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式等の選択塗布方式で発光層を形成する有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のインクジェット方式による塗工方法が発達し、有機EL表示装置における画素の発光層の塗工に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機EL表示装置の画素にインクジェットヘッドのノズルから第1の方向に断続的に発光材料を吐出して発光層を形成し、さらに、他の色の発光層を形成する発光材料を第1の方向とほぼ直交する第2の方向にノズルから断続的に吐出して発光層を形成する製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−109754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなインクジェット方式等の選択塗布方式で発光層を形成する製造方法の場合に、隣接する画素同士の塗工ムラを低減することが難しく、この塗工ムラが点灯の際に輝度ムラとして現れることがある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、選択塗布方式で発光層を形成する場合に塗工ムラが発生しない有機EL表示装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、アレイ基板上に画素が格子状に縦横に配置された有機EL表示装置であって、前記各画素に対応する位置に選択塗布ヘッドのノズルから発光材料をそれぞれ吐出して各画素に発光層を形成する有機EL表示装置の製造方法において、前記アレイ基板の第1の対角線方向である第1の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素に発光層を形成する工程と、前記アレイ基板の第2の対角線方向である第2の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素の前記発光層の上にさらに前記発光材料を上塗りする工程と、を有することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法である。
【0007】
請求項2に係る発明は、アレイ基板上に画素が格子状に縦横に配置された有機EL表示装置であって、前記各画素に対応する位置に選択塗布ヘッドのノズルから発光材料をそれぞれ吐出して各画素に発光層を形成する有機EL表示装置の製造方法において、前記アレイ基板の第1の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素に発光層を形成する工程と、前記アレイ基板の前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素の前記発光層の上にさらに前記発光材料を上塗りする工程と、を有することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の有機EL表示装置の製造方法であると、第1の方向に沿って選択塗布ヘッドを移動しながら発光材料を吐出させて発光層を形成し、この第1の方向とは異なる第2の方向に沿って選択塗布ヘッドを移動しながら発光材料を吐出させて上塗りすることにより、発光材料の塗工ムラが発生しない。そのため、点灯の際に輝度ムラも発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図2は、有機EL表示装置の一部構造を概略的に示す縦断面図であり、ここでは特に一画素分で、かつ、発光層を形成する前のアレイ基板10の縦断面図を示している。
【0010】
アレイ基板10上には、走査線と、この走査線に直交するように配置された信号線と、信号線と走査線との交点付近に配置されたスイッチング素子である画素TFT(薄膜トランジスタ)と、画素TFTを介して信号線に接続される駆動トランジスタと称す)14と、駆動トランジスタ14に接続された画素20を有している。
【0011】
ガラス基板から構成された支持基板12上にこれら画素TFT、駆動トランジスタ14が形成され、ここではトップゲート構造の薄膜トランジスタを採用している。これらTFTは、支持基板12上に形成されたポリシリコン半導体層Pと、このポリシリコン半導体層Pと第1絶縁膜16を介して配置されたゲート電極Gと、第1絶縁膜16と第2絶縁膜18を介してポリシリコン半導体層Pのソース領域にコンタクトしたソース電極Sと、第1絶縁膜16及び第2絶縁膜18を介してポリシリコン半導体層Pのドレイン領域にコンタクトしたドレイン電極Dを備えている。画素TFTのソース電極は信号線に接続され、ゲート電極は走査線に接続される。また、画素TFTのドレイン電極は、駆動トランジスタ14のゲート電極Gに接続される。駆動トランジスタ14のソース電極Sは定電位端子に接続され、ドレイン電極Dは画素20の下部電極26に接続する。
【0012】
画素20は、第2絶縁膜18の上に配置された第3絶縁膜22の上に配置されている。すなわち、画素20の下部電極26が第3絶縁膜22の上層に形成され、第3絶縁膜22に設けられているコンタクトホール28によって駆動トランジスタ14のドレイン電極Dと接続されている。下部電極26は、光透過性導電材料であるITO(Indium Tin Oxide)で形成され、ここでは陽極として機能している。
【0013】
この下部電極26の上層にはアクリル樹脂よりなる隔壁24が形成されている。隔壁24は横方向に隣接する画素20を区画する。このアクリル樹脂で形成された隔壁24を形成するには、UV光でマスク露光する。
【0014】
隔壁24の開口により露出された下部電極26の上に、少なくとも発光層を含む光活性層が積層される。この光活性層は、下部電極26に対向配置された陰極の上部電極(不図示)との間に挟持されるものである。この光活性層は、RGB各色共通に形成されるホール輸送層、エレクトロン輸送層、及び各色毎に形成される有機発光層の多層構造で構成されてもよいし、または、各層が機能的に複合された層構造で形成されてもよい。本実施形態では、ホール輸送層30と有機発光層32の二層で構成されている。
【0015】
ホール輸送層30は、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体より形成され、有機発光層は赤(R)、緑(G)、青(B)に発光する有機化合物によって形成されている。この有機発光層32は、例えば高分子系材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニデンビニデン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などを積層して構成されている。
【0016】
このホール輸送層30と有機発光層32を形成には、まず、インクジェット方式によりホール輸送層30を形成する材料を滴下する。次に、その上に有機発光層32を形成する発光材料を滴下する。
【0017】
有機発光層32を形成するためのインクジェット方式の塗工装置について図1に基づいて説明する。
【0018】
アレイ基板10を載置するためのテーブル50が設けられている。このテーブル50の対角線の方向の外方には、それぞれ第1のインクジェットヘッド(第1のヘッドという)52と、第2のインクジェットヘッド(第2のヘッドという)54が配置されている。第1のヘッド52は、塗工したいアレイ基板10の対角線方向Bの長さと同じ幅を有し、その下面に赤色、緑色、青色の各発光材料を吐出するためのノズル36が幅方向に沿って並べられている。第2のヘッド54も同様の構成を有している。
【0019】
第1のヘッド52は、テーブル50に載置されたアレイ基板10の第1の対角線方向Aに沿って移動する。
【0020】
第2のヘッド54は、前記第1の対角線方向Aと交わる第2の対角線方向Bに沿って移動するものであり、第1の対角線方向Aと第2の対角線方向Bの交わる角度をθとする。また、第1のヘッド52及び第2のヘッド54ともに、ノズル36とアレイ基板10の距離は、約300μmに設定されている。
【0021】
次に、このインクジェット方式の塗工装置を用いた有機発光層32を形成する工程について説明する。
【0022】
図1に示すように下部電極26の上に隔壁24を形成したアレイ基板10を、テーブル50の上に載置する。
【0023】
次に、第1のヘッド52を、第1の対角線方向Aに沿って移動させながら、発光材料を間欠的に画素20に相当する位置に吐出する。この場合に、第1のヘッド52の移動速度に合わせて、赤色の画素20Rの位置には、赤色の発光材料を吐出するノズル36Rが吐出し、緑色のノズル36Gが緑色の画素20Gにきたときに緑色の発光材料を吐出し、青色のノズル36Bが緑色の画素20Bにきたときに青色の発光材料を吐出する。また、図1に示すように、アレイ基板10の角部において塗布する画素20の数が少ないため、第1のヘッド52の中央部でかつ必要なノズル36のみ発光材料を吐出し、移動とともにその吐出するノズル36の数を次第に増やし、アレイ基板10のほぼ中央部、即ち第2の対角線方向Bの位置にきたときに第1のヘッド52の幅方向にある全てのノズル36から発光材料を吐出させる。その後、第1のヘッド52の移動とともに逆に吐出するノズル36の数を次第に減らし、アレイ基板10の反対側の角部において最小の数とする。そして、1回目の塗工を終了させる。
【0024】
次に、この第1のヘッド52による塗工が済んだ後に、第2のヘッド54を第2の対角線方向Bに沿って移動させる。この塗工方法は第1のヘッド52と同様である。
【0025】
このようにすることで画素20毎に、第1のヘッド52によって塗工された第1の発光層の上に、第2のヘッド54から吐出された発光材料が上塗りされることにより、塗工ムラが線状に視認されることを抑制でき、塗工ムラの視認を抑制することができる。
【0026】
また、信号線の配線方向と所定の角度を持って塗布するため、筋状のムラの視認を低減することも可能となる。
【0027】
そのため、このアレイ基板10を用いた有機EL表示装置を点灯させた場合に、輝度ムラが発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0028】
なお、上述の実施形態においては、対角線方向に沿って塗布したがこれに限定されず、アレイ基板の一辺に対して所定の角度をもっと方向に沿ってスキャンしても同様の効果を得ることができる。
【0029】
また、上述の実施形態においては、ヘッドの幅とヘッドの長軸方向と平行なアレイ基板の幅とを一致させたが、これに限定されず、ヘッドの幅を幅狭とし、同一方向に複数回スキャンすることにより全面に塗布してもよい。
【0030】
また、個々のパネルに対応するアレイ基板に塗布することを例にとり説明したが、複数のパネルを一のアレイ基板上に形成するものであってもよい。
【0031】
なお、ホール輸送層30も有機発光層32の塗工前に同様に塗工している。このように他の光活性層にも本発明を適用することができる。
【0032】
また、インクジェット方式について説明したが、他の選択塗布方式を用いてもよい。
【0033】
次に、図3に基づいて第2の実施形態の有機EL表示装置の製造方法について説明する。
【0034】
本実施形態と第1の実施形態の異なる点は、第1のヘッド52と第2のヘッド54の配置の仕方にある。
【0035】
図3に示すように本実施形態では、第1のヘッド52がアレイ基板10のY軸方向に沿って移動し、第2のヘッド54がX軸方向に沿って移動する。即ち、第1のヘッド52と第2のヘッド54が直交するように移動する。
【0036】
本実施形態においても、1つの画素について発光材料が2回塗工されることとなり、アレイ基板10全体において塗工ムラが発生しない。そのため、点灯時に輝度ムラも発生しない。
【0037】
上記各実施形態では、移動方向毎に第1のヘッド52及び第2のヘッド54を設けたが、これに代えて、ヘッドは1個だけ設け、各塗工が終わった場合にテーブル50をθ度または90度回転させ、1つのヘッドで2方向の塗工を可能にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態の製造方法を示す平面図である。
【図2】有機EL表示装置における画素部分の拡大縦断面図である。
【図3】第2の実施形態の製造方法を示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 アレイ基板
14 駆動トランジスタ
20 画素
24 隔壁
30 ホール輸送層
32 有機発光層
50 テーブル
52 第1のヘッド
54 第2のヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ基板上に画素が格子状に縦横に配置された有機EL表示装置であって、前記各画素に対応する位置に選択塗布ヘッドのノズルから発光材料をそれぞれ吐出して各画素に発光層を形成する有機EL表示装置の製造方法において、
前記アレイ基板の第1の対角線方向である第1の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素に発光層を形成する工程と、
前記アレイ基板の第2の対角線方向である第2の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素の前記発光層の上にさらに前記発光材料を上塗りする工程と、
を有する
ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項2】
アレイ基板上に画素が格子状に縦横に配置された有機EL表示装置であって、前記各画素に対応する位置に選択塗布ヘッドのノズルから発光材料をそれぞれ吐出して各画素に発光層を形成する有機EL表示装置の製造方法において、
前記アレイ基板の第1の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素に発光層を形成する工程と、
前記アレイ基板の前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って前記選択塗布ヘッドを移動しながら前記発光材料を吐出させて前記各画素の前記発光層の上にさらに前記発光材料を上塗りする工程と、
を有する
ことを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。
【請求項3】
移動方向毎に異なる選択塗布ヘッドを備え、
前記一の選択塗布ヘッドで前記第1の方向で塗工した後、前記他の選択塗布ジェットで前記第2の方向を塗工する
ことを特徴とする請求項1または2記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記アレイ基板は回転自在なテーブルの上に載置され、
前記選択塗布ヘッドで前記第1の方向を塗工した後、前記テーブルを所定角度回転させ、同一の前記選択塗布ヘッドで前記第2の方向を塗工する
ことを特徴とする請求項1または2記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記画素がR、G、Bの三色あり、
前記2方向の塗工を前記色毎に行う
ことを特徴とする請求項1または2記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記画素がR、G、Bの三色あり、
前記2方向の塗工を三色同時に行う
ことを特徴とする請求項1または2記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−80545(P2007−80545A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263082(P2005−263082)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】