有機EL表示装置
【課題】 発光に伴う有機多層膜の温度上昇を抑制することによって発光効率を維持し、且つ長寿命化を図った有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】 有機EL発光素子15を形成した絶縁性基板11の背面に薄肉となる凹部11aを設け、この凹部11a内にアルミニウム板31をシリコン接着剤30で接着配置することにより、このアルミニウム板31が発熱源に近い凹部11aの底面に近接して密着配置されるので、アルミニウム板31により熱拡散が促進され、放熱効率を高めることができる。これによって有機発光膜13の発光効率を低下させることがなくなり、有機EL表示装置の長寿命化を図ることができる。
【解決手段】 有機EL発光素子15を形成した絶縁性基板11の背面に薄肉となる凹部11aを設け、この凹部11a内にアルミニウム板31をシリコン接着剤30で接着配置することにより、このアルミニウム板31が発熱源に近い凹部11aの底面に近接して密着配置されるので、アルミニウム板31により熱拡散が促進され、放熱効率を高めることができる。これによって有機発光膜13の発光効率を低下させることがなくなり、有機EL表示装置の長寿命化を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に有機発光層を設け、一対の電極により有機発光層に電界を印加させて発光させる有機EL表示装置に係り、特に発光領域を構成する有機発光層で生じた発熱による当該発光領域の効率低下を抑制して長寿命と信頼性向上を可能とした有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネル型の表示装置として液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)、電界放出型表示装置(FED)、有機EL表示装置(OLED)などが実用化ないし実用化研究段階にある。その中でも、有機EL表示装置は、薄型・軽量の自発光型表示装置の典型としてこれからの表示装置として極めて有望な表示装置である。有機EL表示装置には、所謂ボトムエミッション型とトップエミッション型とがある。
【0003】
ボトムエミッション型の有機EL表示装置は、ガラス基板を好適とする絶縁性基板上に第1の電極または一方の電極としてのITOなどの透明電極、電界の印加により発光する有機多層膜(有機発光層とも言う)、第2の電極または他方の電極としての反射性の金属電極を順次積層した発光機構により有機EL発光素子が構成される。この有機EL発光素子をマトリクス状に多数配列し、それらの積層構造を覆って封止缶とも称する他の基板を設け、上記発光構造を外部の雰囲気から遮断している。
【0004】
そして、例えば透明電極を陽極とし、金属電極を陰極として両者の電極間に電界を印加することにより、有機多層膜にキャリア(電子と正孔)が注入され、当該有機多層膜が発光する。この発光をガラス基板側から外部に出射する構成となっている。
【0005】
一方、トップエミッション型の有機EL表示装置は、上述した一方の電極を反射性を有する金属電極とし、他方の電極をITO等の透明電極として両者の電極間に電界を印加することにより、有機多層膜が発光し、この発光を上述した他方の電極側から出射する構成となっている。トップエミッション型では、ボトムエミッション型における封止缶としてガラス板を好適とする透明板が使用される。
【0006】
このように構成される有機EL表示装置では、有機EL発光素子の発光時に一方の電極と他方の電極との間に印加される電界に応じて発光機構の有機多層膜にキャリアが注入されて発光するが、注入されたキャリアの全てが発光に寄与するわけでなく、一部は発熱となって発光機構を加熱する。発光機構を構成する有機多層膜の材料は、一般に発熱によって発光特性が劣化し、寿命が低下する。このために発熱を除去する必要がある。このような発熱の対策を施したものとして、有機多層膜を形成した基板の背面に熱伝導性の高い金属放熱部材を貼り付けることにより、放熱効果を改善した構造が下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−343555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように構成された有機EL表示装置では、基板自体がガラスなどの熱伝導性の低い基板を使用した場合、単に基板の背面に放熱部材を設けたり、または貼り付けた構造では、有機多層膜と放熱部材との間の距離が大きく、十分な放熱効果が期待できず、これによって発光機構を構成する有機多層膜は点灯時の発熱によって発光特性の劣化が促進される。また、この発熱は、有機EL表示装置の長寿命化を阻害する要因となっている。
【0008】
したがって、本発明は前述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、このような発光に伴う有機多層膜の温度上昇を抑制することによって発光効率を維持し、且つ長寿命化を図った有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために本発明による有機EL表示装置は、複数の有機EL発光素子が形成された絶縁性基板の背面に薄肉となる凹部を設け、この凹部内に放熱部材を配設することにより、この放熱部材が発熱源に近い凹部の底面に近接配置されるので、放熱部材の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0010】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材をアルミニウム板材とすることにより、アルミニウム板材が発熱源に近接配置されるので、アルミニウム板材の熱拡散が促進されことで背景技術の課題を解決することができる。
【0011】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材を銅板材とすることにより、銅板材が発熱源に近接配置されるので、銅板材の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0012】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材を熱伝導性の高いシリコン接着材を用いて接着配置することにより、放熱部材が発熱源に近接配置されるので、放熱部材の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0013】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記凹部内に配置される放熱部材の外面や内面に微細な凹凸面を形成することにより、放熱部材の熱拡散がさらに促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0014】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材を金属膜とすることにより、金属膜が発熱源に近接配置されるので、金属膜の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0015】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記凹部内に配置された金属膜の外面に微細な凹凸面を形成することにより、金属膜の熱拡散がさらに促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0016】
なお、本発明は、前記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0017】
本発明による有機EL表示装置によれば、複数の有機EL発光素子を形成した絶縁性基板の背面に薄肉となる凹部を設け、この凹部内に放熱部材を設置することにより、この放熱部材が発熱源に近い凹部の底面に近接されるので、有機EL発光素子で発生した熱を効率良く拡散させ、放熱効率を高めることができる。これによって有機EL発光素子の発光効率を低下させることがなくなり、有機EL表示装置の長寿命化を図ることができるなどの極めて優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、トップエミッション型の有機EL表示装置を例とする。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明による有機EL表示装置の実施例1による有機EL素子の層構造を模式的に説明する要部断面図である。また、図2は、本発明による有機EL表示装置の実施例1の全体構造を模式的に説明する要部断面図である。さらに、図3は、図2に示す有機EL表示装置の背面から見た要部斜視図である。なお、これらの図では、説明を簡単にするために1画素のみを示し、画素を選択するスイッチング素子及び発光輝度を制御する制御素子などが搭載されるが、ここでは省略されている。
【0020】
図1に示した絶縁性基板11は、有機EL表示装置を構成するアクティブ・マトリクス基板(または薄膜トランジスタ基板、TFT基板とも称する)である。この絶縁性基板11は、セラミック板材またはガラス板材などから形成されている。この絶縁性基板11の主面には発光制御電極としての陰極12が画素毎に導電性金属膜のパターニングにより形成されている。この導電性金属膜としては、絶縁性基板11側から第1層としてアルミニウム(Al)層12aと、第2層として弗化リチウム(LiF)層12bとを用いた。なお、アルミニウム層12aの膜厚は例えば約200nm、弗化リチウム層12bの膜厚は例えば約1nm程度である。
【0021】
なお、上記導電性金属膜は、この他にMg/AlまたはMg/Inなどを用いても良い。これらの導電性金属膜を蒸着法あるいはスパッタリング法もしくはCVD法などにより絶縁性基板11の主面に成膜し、フォトリソグラフィー工程などを用いて所要の大きさにパターニングを施し、画素毎の陰極12を形成する。この陰極12は光反射性が良好であることが望ましい。
【0022】
また、この陰極12の上面には、有機EL発光素子の有機発光構造を構成する有機多層膜13が形成さている。この有機多層膜13は、陰極12側から電子輸送層13a,発光層13b,正孔輸送層13c,正孔注入層13dが順次積層されて形成されている。この有機多層膜13の膜厚は、例えば約150nm程度である。
【0023】
なお、上記の有機多層膜13の材料の一例は、以下のとおりである。すなわち、電子輸送層13aは、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)などが用いられる。また、発光層13bは、ホスト材料に9,10−ジフェニルアントラセンなどを、ドーパント材料にペリレンなどを用いた発光材料が用いられる。また、正孔輸送層13cは、α−NPD(α−ナフチルフェニルジアミン)などが用いられる。また、正孔注入層13dは、CuPc(銅フタロシアニン)などが用いられる。
【0024】
また、この有機多層膜13の上面には、陽極14が成膜されて有機EL発光素子15が形成されている。この陽極14には、ITO(In−Ti−O)やIZO(In−Zn−O)などの透明導電性薄膜を用いることができるが、ここでは、例えば膜厚約30nm以下のITO膜とした。なお、アクティブ・マトリクス型では、絶縁性基板11の主面にLTPS(低温ポリシリコン半導体膜)などで形成された薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を有する画素選択回路または画素駆動回路が形成されるが、ここでは図示を省略した。
【0025】
また、この有機EL発光素子15の最上層には、これらの陰極12,有機多層膜13及び陽極14を覆ってガスバリア性膜16が形成されている。このガスバリア性膜16としては、例えばポリマー膜,窒化珪素膜,酸化珪素膜などのガス非透過性材料層で形成され、特に有機多層膜13が外部雰囲気中の水分及びガス成分などの吸着から保護されるので、これに起因する発光特性の劣化を防止する。また、ガスバリア性膜16を形成した後、このガスバリア性膜16の表面に図示しないが、熱伝導性の高い金属膜を成膜しても良い。この金属膜の形成により、発光に起因する内部からの発熱を絶縁性基板11に放熱させることができるので、有機多層膜13の長寿命化が図れる。なお、最上層に形成されるガスバリア性膜16及び金属膜の膜厚は、数μm程度である。
【0026】
また、この絶縁性基板11の内面には、乾燥剤23が収納されており、この乾燥剤23は既知の乾燥剤をシート状に成形し、絶縁性基板11の内面に貼り付け、またはゲル状として塗布しても良い。この乾燥剤23の厚さは、例えば約100μm程度である。また、封着剤22には紫外線硬化型樹脂が用いられるが、他のシール材であってもよい。
【0027】
また、このように主面側に有機EL発光素子15が形成された絶縁性基板11上には、この有機EL発光素子15を覆うように絶縁性の透光性ガラス基板21がその周縁部に封止剤22を介在させて封止され、周囲環境からの湿気の侵入等による動作特性の劣化を防止し、安定した表示を可能にしている。この封止剤22には紫外線硬化型樹脂が用いられるが、他のシール材であってもよい。
【0028】
また、この絶縁性基板11には、有機EL素子15と反対向する背面側に凹部11aが一体的に形成されている。この絶縁性基板11の背面に形成される凹部11aは、例えばサンドブラスト法による掘り込みにより形成されている。この絶縁性基板11の板厚Tは、約700μm程度であり、また、この凹部11aの深さDは、板厚Tの約1/3〜1/4の範囲であり、例えば約200μm程度である。また、この凹部11aは絶縁性基板11の成形時に一体的に成形するなどの手段により形成することも可能である。
【0029】
また、この絶縁性基板11の背面側に形成された凹部11aの内部底面には、熱伝導性の高いシリコン接着剤30を介して放熱部材として例えば熱拡散性の高いアルミニウム板31が接着配置されている。このアルミニウム板31の板厚は、約50μm〜約150μmの範囲である。さらにこのアルミニウム板31の外気と接触する最表面には微細な凹凸面31aが形成されており、この微細な凹凸面31aは、サンドブラスト法またはエッチンング法などにより形成される。なお、このアルミニウム板31は、絶縁性基板11の凹部11aに接着する以前に定型のアルミニウム板材の表面にサンドブラスト法またはエッチング法などにより微細な凹凸面を形成した後、所定の大きさに切断して形成しても良い。
【0030】
このように構成された有機EL表示装置において、有機EL発光素子15を構成する陰極12と陽極14との間に所定の電圧を印加することによる正孔注入層13dから発光層13bへの正孔の移送と、電子輸送層13aから注入される電子とで発光層13bを発光させ、透光性ガラス基板21側から外部上方に向かって発光光Lとして出射される。
【0031】
このように構成された有機EL表示装置は、絶縁性基板11の背面側に凹部11aを設け、この凹部11a内にアルミニウム板31を貼り付けるのみの構成となるので、有機EL表示装置の全体を薄く構成することができる。また、有機EL発光素子15とアルミニウム板31とが凹部21aの底部に形成される薄肉の部分を介して近接配置されるので、アルミニウム板31が発熱源となる有機EL素子15により近い位置となるので、大きな放熱効果を得ることができる。
【0032】
さらに、アルミニウム板31の最表面に微細な凹凸面31aを設けたことにより、放熱効果をさらに向上させることができる。また、絶縁性基板21に放熱部材としてのアルミニウム板31を設置する場合、その背面側に凹部11aが形成されているので、単にアルミニウム板31を貼り付けるよりも、その位置決めが極めて容易となり、生産性を向上させることができる。
【0033】
なお、上記実施例では、放熱部材として熱拡散性の高いアルミニウム板31を用いたが、このアルミニウム板31に代えて銅板を用いてもよく、また、これらの合金金属板材を用いても良い。さらに、これらの金属板材に代えて熱拡散性を有する金属板材であれば特に限定されるものではない。
【0034】
図4乃至図19は、絶縁性基板11の背面側に形成される凹部11aの他の実施例による構成を示す背面側から見た要部平面図である。これらの図4乃至図19に示すように絶縁性基板11に背面側に形成される凹部11aは、図2に示す有機EL発光素子15の配置個所等に対応して各種の形状が製作可能となるが、これらの凹部11aの形成方法としては、有機EL発光素子15の作製前では平板状に形成された絶縁性基板に例えばサンドブラスト法またはエッチング法の両方の手段によって形成することができるが、有機EL発光素子15の作製後では、有機EL発光素子15の損傷を考慮すると、サンドブラスト法により凹部11aを形成する手段の方がエッチング法よりも望ましい。
【実施例2】
【0035】
図20は、本発明による有機EL表示装置の実施例2による構成を模式的に説明する要部断面図であり、前述した図2と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図20において、図2と異なる点は、絶縁性基板11の背面側に形成された凹部11a内にはその内壁面の全面にわたって熱伝導性の高い金属材料、例えばアルミニウムまたは銅などの金属材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により金属膜40が形成されている。なお、この金属膜40の膜厚は、約10μm〜約250μmの範囲である。また、この金属膜40の外面には微細な凹凸面40aが形成されている。この微細な凹凸面40aは、例えばサンドブラスト法,エッチング法またはラビング法などの手段により形成されている。
【0036】
このように金属膜40を設けることにより、有機EL発光素子15と金属膜40とが凹部11aの底部に形成される薄肉の部分を介して近接配置されるので、金属膜40が発熱源となる有機EL発光素子15により近い位置となるので、有機EL発光素子15からの発熱を有効に外部に拡散させることができので、大きな放熱効果を得ることができる。さらに金属膜40の外面に微細な凹凸面40aを設けているので、熱拡散性をさらに向上させることができる。一方、絶縁性基板11の背面をサンドブラスト法等で粗くすれば、当該背面に形成される金属膜40の内面(絶縁性基板11に対向する面)にも凹凸が生じる。これにより、絶縁性基板11と金属膜40との接合面積が増し、有機EL発光素子15で生じた熱は、効率良く金属膜40に排出される。この金属膜40は、有機EL発光素子15を作製した後に形成することができるので、発熱対策が容易に実現可能となる。
【0037】
なお、この金属膜40に接地線を溶接などにより接続し、図示しないが画素を選択するスイッチング素子及び発光輝度を制御する制御素子などに電気的にアース接続しても良い。
【0038】
図21は、本発明を適用したトップエミッション型有機EL表示装置の画素に構成例を説明する回路図である。この画素PXはカラー表示では副画素(サブピクセル)となる。画素PXは、走査線GLとデータ線DLとに接続したスイッチング用の薄膜トランジスタジスタTFT1と、走査線GLで選択されたスイッチング用薄膜トランジスタTFT1のオンでデータ線DLから供給される表示データを電荷として蓄積する蓄積容量CPRと、有機EL発光素子15の駆動用薄膜トランジスタTFT2と、電流供給線CSLとで構成される。
【0039】
薄膜トランジスタTFT1のゲート電極は走査線GLに接続され、ドレイン電極はデータ線DLに接続されている。また、薄膜トランジスタTFT2のゲート電極は薄膜トランジスタTFT1のソース電極に接続され、この接続点に蓄積容量CPRの一方の電極(+極)が接続されている。薄膜トランジスタTFT2のドレイン電極は電流供給線CSLに接続され、ソース電極は有機EL発光素子15の陽極14に接続されている。
【0040】
画素PXが走査線GLで選択されて薄膜トランジスタTFT1がオンとなると、データ線DLから供給される表示データが蓄積容量CPRに蓄積される。そして、薄膜トランジスタTFT1がオフした時点で薄膜トランジスタTFT2がオンとなり、電流供給線CSLから有機EL表示素子15に流れ、ほぼ1フレームの期間(または1フィールド期間)にわたってこの電流を持続させる。この時に流れる電流は、蓄積容量CPRに蓄積されているデータ信号に対応する電荷で規定される。この回路は最も単純な構成であり、他に種々の回路構成が知られている。
【0041】
図22は、図21に示した画素の回路を基板上で実現した構成例を説明する画素付近の平面図である。図中、図21と同一の符号は同一部分に対応し、DEは画素の開口部である。薄膜トランジスタTFT1と薄膜トランジスタTFT2とは画素の開口部DEに隣接する非表示部に配置される。
【0042】
図23は、有機EL表示装置の駆動回路を含めた等価回路である。画素PXはマトリクス状に配列されて表示領域ARを形成する。データ線DLはデータ線駆動回路DDRにより駆動される。また、走査線GLは走査線駆動回路GDRで駆動される。電流供給線CSLは電流供給バスラインCSLBを介して図示しない電流供給回路に接続している。なお、TMは外部入力端子を示す。
【0043】
なお、前述した実施例においては、トップエミッション型の有機EL表示装置について説明したが、ボトムエミッション型の有機EL表示装置においても、封止ガラス基板に凹部を設け、この凹部内に放熱部材を配設しても、前述とほぼ同様の効果が得られることは勿論である。
【0044】
また、前述した各実施例においては、有機EL表示装置を用いた有機ELパネルについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、携帯性を重視する小型情報端末(携帯,PDA等)用の有機ELパネルまたはモニタ用有機ELディスプレイの全般に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による有機EL表示装置の有機EL発光素子の層構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明による有機EL表示装置の実施例1の構成を模式的に示す要部断面図である。
【図3】図2に示す有機EL表示装置の背面側から見た要部斜視図である。
【図4】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図5】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図6】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図7】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図8】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図9】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図10】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図11】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図12】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図13】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図14】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図15】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図16】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図17】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図18】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図19】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図20】本発明による有機EL表示装置の実施例2による構成を模式的に示す要部断面図である。
【図21】本発明を適用したトップエミッション型有機EL表示装置の1つの有機EL発光素子すなわち1画素付近の構成を示す回路図である。
【図22】図21に示した画素を基板上で実現した構成例を説明する画素付近の平面図である。
【図23】有機EL表示装置の駆動回路を含めた等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
11・・・絶縁性基板、11a・・・凹部、12・・・陰極、12a・・・アルミニウム層、12b・・・弗化リチウム層、13・・・有機発光膜、13a・・・電子輸送層、13b・・・発光層、13c・・・正孔輸送層、13d・・・正孔注入層、14・・・陽極、15・・・有機EL発光素子、16・・・ガスバリア性膜、21・・・透光性ガラス基板、22・・・封止剤、23・・・乾燥剤、30・・・シリコン接着剤、31・・・アルミニウム板、31a・・・凹凸面、40・・・金属膜、41a・・・凹凸面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に有機発光層を設け、一対の電極により有機発光層に電界を印加させて発光させる有機EL表示装置に係り、特に発光領域を構成する有機発光層で生じた発熱による当該発光領域の効率低下を抑制して長寿命と信頼性向上を可能とした有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネル型の表示装置として液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)、電界放出型表示装置(FED)、有機EL表示装置(OLED)などが実用化ないし実用化研究段階にある。その中でも、有機EL表示装置は、薄型・軽量の自発光型表示装置の典型としてこれからの表示装置として極めて有望な表示装置である。有機EL表示装置には、所謂ボトムエミッション型とトップエミッション型とがある。
【0003】
ボトムエミッション型の有機EL表示装置は、ガラス基板を好適とする絶縁性基板上に第1の電極または一方の電極としてのITOなどの透明電極、電界の印加により発光する有機多層膜(有機発光層とも言う)、第2の電極または他方の電極としての反射性の金属電極を順次積層した発光機構により有機EL発光素子が構成される。この有機EL発光素子をマトリクス状に多数配列し、それらの積層構造を覆って封止缶とも称する他の基板を設け、上記発光構造を外部の雰囲気から遮断している。
【0004】
そして、例えば透明電極を陽極とし、金属電極を陰極として両者の電極間に電界を印加することにより、有機多層膜にキャリア(電子と正孔)が注入され、当該有機多層膜が発光する。この発光をガラス基板側から外部に出射する構成となっている。
【0005】
一方、トップエミッション型の有機EL表示装置は、上述した一方の電極を反射性を有する金属電極とし、他方の電極をITO等の透明電極として両者の電極間に電界を印加することにより、有機多層膜が発光し、この発光を上述した他方の電極側から出射する構成となっている。トップエミッション型では、ボトムエミッション型における封止缶としてガラス板を好適とする透明板が使用される。
【0006】
このように構成される有機EL表示装置では、有機EL発光素子の発光時に一方の電極と他方の電極との間に印加される電界に応じて発光機構の有機多層膜にキャリアが注入されて発光するが、注入されたキャリアの全てが発光に寄与するわけでなく、一部は発熱となって発光機構を加熱する。発光機構を構成する有機多層膜の材料は、一般に発熱によって発光特性が劣化し、寿命が低下する。このために発熱を除去する必要がある。このような発熱の対策を施したものとして、有機多層膜を形成した基板の背面に熱伝導性の高い金属放熱部材を貼り付けることにより、放熱効果を改善した構造が下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2002−343555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように構成された有機EL表示装置では、基板自体がガラスなどの熱伝導性の低い基板を使用した場合、単に基板の背面に放熱部材を設けたり、または貼り付けた構造では、有機多層膜と放熱部材との間の距離が大きく、十分な放熱効果が期待できず、これによって発光機構を構成する有機多層膜は点灯時の発熱によって発光特性の劣化が促進される。また、この発熱は、有機EL表示装置の長寿命化を阻害する要因となっている。
【0008】
したがって、本発明は前述した従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、このような発光に伴う有機多層膜の温度上昇を抑制することによって発光効率を維持し、且つ長寿命化を図った有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために本発明による有機EL表示装置は、複数の有機EL発光素子が形成された絶縁性基板の背面に薄肉となる凹部を設け、この凹部内に放熱部材を配設することにより、この放熱部材が発熱源に近い凹部の底面に近接配置されるので、放熱部材の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0010】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材をアルミニウム板材とすることにより、アルミニウム板材が発熱源に近接配置されるので、アルミニウム板材の熱拡散が促進されことで背景技術の課題を解決することができる。
【0011】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材を銅板材とすることにより、銅板材が発熱源に近接配置されるので、銅板材の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0012】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材を熱伝導性の高いシリコン接着材を用いて接着配置することにより、放熱部材が発熱源に近接配置されるので、放熱部材の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0013】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記凹部内に配置される放熱部材の外面や内面に微細な凹凸面を形成することにより、放熱部材の熱拡散がさらに促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0014】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記放熱部材を金属膜とすることにより、金属膜が発熱源に近接配置されるので、金属膜の熱拡散が促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0015】
本発明による他の有機EL表示装置は、好ましくは、上記構成において、上記凹部内に配置された金属膜の外面に微細な凹凸面を形成することにより、金属膜の熱拡散がさらに促進されることで背景技術の課題を解決することができる。
【0016】
なお、本発明は、前記各構成及び後述する実施の形態に記載される構成に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱することなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0017】
本発明による有機EL表示装置によれば、複数の有機EL発光素子を形成した絶縁性基板の背面に薄肉となる凹部を設け、この凹部内に放熱部材を設置することにより、この放熱部材が発熱源に近い凹部の底面に近接されるので、有機EL発光素子で発生した熱を効率良く拡散させ、放熱効率を高めることができる。これによって有機EL発光素子の発光効率を低下させることがなくなり、有機EL表示装置の長寿命化を図ることができるなどの極めて優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。なお、ここでは、トップエミッション型の有機EL表示装置を例とする。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明による有機EL表示装置の実施例1による有機EL素子の層構造を模式的に説明する要部断面図である。また、図2は、本発明による有機EL表示装置の実施例1の全体構造を模式的に説明する要部断面図である。さらに、図3は、図2に示す有機EL表示装置の背面から見た要部斜視図である。なお、これらの図では、説明を簡単にするために1画素のみを示し、画素を選択するスイッチング素子及び発光輝度を制御する制御素子などが搭載されるが、ここでは省略されている。
【0020】
図1に示した絶縁性基板11は、有機EL表示装置を構成するアクティブ・マトリクス基板(または薄膜トランジスタ基板、TFT基板とも称する)である。この絶縁性基板11は、セラミック板材またはガラス板材などから形成されている。この絶縁性基板11の主面には発光制御電極としての陰極12が画素毎に導電性金属膜のパターニングにより形成されている。この導電性金属膜としては、絶縁性基板11側から第1層としてアルミニウム(Al)層12aと、第2層として弗化リチウム(LiF)層12bとを用いた。なお、アルミニウム層12aの膜厚は例えば約200nm、弗化リチウム層12bの膜厚は例えば約1nm程度である。
【0021】
なお、上記導電性金属膜は、この他にMg/AlまたはMg/Inなどを用いても良い。これらの導電性金属膜を蒸着法あるいはスパッタリング法もしくはCVD法などにより絶縁性基板11の主面に成膜し、フォトリソグラフィー工程などを用いて所要の大きさにパターニングを施し、画素毎の陰極12を形成する。この陰極12は光反射性が良好であることが望ましい。
【0022】
また、この陰極12の上面には、有機EL発光素子の有機発光構造を構成する有機多層膜13が形成さている。この有機多層膜13は、陰極12側から電子輸送層13a,発光層13b,正孔輸送層13c,正孔注入層13dが順次積層されて形成されている。この有機多層膜13の膜厚は、例えば約150nm程度である。
【0023】
なお、上記の有機多層膜13の材料の一例は、以下のとおりである。すなわち、電子輸送層13aは、Alq3(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)などが用いられる。また、発光層13bは、ホスト材料に9,10−ジフェニルアントラセンなどを、ドーパント材料にペリレンなどを用いた発光材料が用いられる。また、正孔輸送層13cは、α−NPD(α−ナフチルフェニルジアミン)などが用いられる。また、正孔注入層13dは、CuPc(銅フタロシアニン)などが用いられる。
【0024】
また、この有機多層膜13の上面には、陽極14が成膜されて有機EL発光素子15が形成されている。この陽極14には、ITO(In−Ti−O)やIZO(In−Zn−O)などの透明導電性薄膜を用いることができるが、ここでは、例えば膜厚約30nm以下のITO膜とした。なお、アクティブ・マトリクス型では、絶縁性基板11の主面にLTPS(低温ポリシリコン半導体膜)などで形成された薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を有する画素選択回路または画素駆動回路が形成されるが、ここでは図示を省略した。
【0025】
また、この有機EL発光素子15の最上層には、これらの陰極12,有機多層膜13及び陽極14を覆ってガスバリア性膜16が形成されている。このガスバリア性膜16としては、例えばポリマー膜,窒化珪素膜,酸化珪素膜などのガス非透過性材料層で形成され、特に有機多層膜13が外部雰囲気中の水分及びガス成分などの吸着から保護されるので、これに起因する発光特性の劣化を防止する。また、ガスバリア性膜16を形成した後、このガスバリア性膜16の表面に図示しないが、熱伝導性の高い金属膜を成膜しても良い。この金属膜の形成により、発光に起因する内部からの発熱を絶縁性基板11に放熱させることができるので、有機多層膜13の長寿命化が図れる。なお、最上層に形成されるガスバリア性膜16及び金属膜の膜厚は、数μm程度である。
【0026】
また、この絶縁性基板11の内面には、乾燥剤23が収納されており、この乾燥剤23は既知の乾燥剤をシート状に成形し、絶縁性基板11の内面に貼り付け、またはゲル状として塗布しても良い。この乾燥剤23の厚さは、例えば約100μm程度である。また、封着剤22には紫外線硬化型樹脂が用いられるが、他のシール材であってもよい。
【0027】
また、このように主面側に有機EL発光素子15が形成された絶縁性基板11上には、この有機EL発光素子15を覆うように絶縁性の透光性ガラス基板21がその周縁部に封止剤22を介在させて封止され、周囲環境からの湿気の侵入等による動作特性の劣化を防止し、安定した表示を可能にしている。この封止剤22には紫外線硬化型樹脂が用いられるが、他のシール材であってもよい。
【0028】
また、この絶縁性基板11には、有機EL素子15と反対向する背面側に凹部11aが一体的に形成されている。この絶縁性基板11の背面に形成される凹部11aは、例えばサンドブラスト法による掘り込みにより形成されている。この絶縁性基板11の板厚Tは、約700μm程度であり、また、この凹部11aの深さDは、板厚Tの約1/3〜1/4の範囲であり、例えば約200μm程度である。また、この凹部11aは絶縁性基板11の成形時に一体的に成形するなどの手段により形成することも可能である。
【0029】
また、この絶縁性基板11の背面側に形成された凹部11aの内部底面には、熱伝導性の高いシリコン接着剤30を介して放熱部材として例えば熱拡散性の高いアルミニウム板31が接着配置されている。このアルミニウム板31の板厚は、約50μm〜約150μmの範囲である。さらにこのアルミニウム板31の外気と接触する最表面には微細な凹凸面31aが形成されており、この微細な凹凸面31aは、サンドブラスト法またはエッチンング法などにより形成される。なお、このアルミニウム板31は、絶縁性基板11の凹部11aに接着する以前に定型のアルミニウム板材の表面にサンドブラスト法またはエッチング法などにより微細な凹凸面を形成した後、所定の大きさに切断して形成しても良い。
【0030】
このように構成された有機EL表示装置において、有機EL発光素子15を構成する陰極12と陽極14との間に所定の電圧を印加することによる正孔注入層13dから発光層13bへの正孔の移送と、電子輸送層13aから注入される電子とで発光層13bを発光させ、透光性ガラス基板21側から外部上方に向かって発光光Lとして出射される。
【0031】
このように構成された有機EL表示装置は、絶縁性基板11の背面側に凹部11aを設け、この凹部11a内にアルミニウム板31を貼り付けるのみの構成となるので、有機EL表示装置の全体を薄く構成することができる。また、有機EL発光素子15とアルミニウム板31とが凹部21aの底部に形成される薄肉の部分を介して近接配置されるので、アルミニウム板31が発熱源となる有機EL素子15により近い位置となるので、大きな放熱効果を得ることができる。
【0032】
さらに、アルミニウム板31の最表面に微細な凹凸面31aを設けたことにより、放熱効果をさらに向上させることができる。また、絶縁性基板21に放熱部材としてのアルミニウム板31を設置する場合、その背面側に凹部11aが形成されているので、単にアルミニウム板31を貼り付けるよりも、その位置決めが極めて容易となり、生産性を向上させることができる。
【0033】
なお、上記実施例では、放熱部材として熱拡散性の高いアルミニウム板31を用いたが、このアルミニウム板31に代えて銅板を用いてもよく、また、これらの合金金属板材を用いても良い。さらに、これらの金属板材に代えて熱拡散性を有する金属板材であれば特に限定されるものではない。
【0034】
図4乃至図19は、絶縁性基板11の背面側に形成される凹部11aの他の実施例による構成を示す背面側から見た要部平面図である。これらの図4乃至図19に示すように絶縁性基板11に背面側に形成される凹部11aは、図2に示す有機EL発光素子15の配置個所等に対応して各種の形状が製作可能となるが、これらの凹部11aの形成方法としては、有機EL発光素子15の作製前では平板状に形成された絶縁性基板に例えばサンドブラスト法またはエッチング法の両方の手段によって形成することができるが、有機EL発光素子15の作製後では、有機EL発光素子15の損傷を考慮すると、サンドブラスト法により凹部11aを形成する手段の方がエッチング法よりも望ましい。
【実施例2】
【0035】
図20は、本発明による有機EL表示装置の実施例2による構成を模式的に説明する要部断面図であり、前述した図2と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図20において、図2と異なる点は、絶縁性基板11の背面側に形成された凹部11a内にはその内壁面の全面にわたって熱伝導性の高い金属材料、例えばアルミニウムまたは銅などの金属材料を真空蒸着法またはスパッタリング法により金属膜40が形成されている。なお、この金属膜40の膜厚は、約10μm〜約250μmの範囲である。また、この金属膜40の外面には微細な凹凸面40aが形成されている。この微細な凹凸面40aは、例えばサンドブラスト法,エッチング法またはラビング法などの手段により形成されている。
【0036】
このように金属膜40を設けることにより、有機EL発光素子15と金属膜40とが凹部11aの底部に形成される薄肉の部分を介して近接配置されるので、金属膜40が発熱源となる有機EL発光素子15により近い位置となるので、有機EL発光素子15からの発熱を有効に外部に拡散させることができので、大きな放熱効果を得ることができる。さらに金属膜40の外面に微細な凹凸面40aを設けているので、熱拡散性をさらに向上させることができる。一方、絶縁性基板11の背面をサンドブラスト法等で粗くすれば、当該背面に形成される金属膜40の内面(絶縁性基板11に対向する面)にも凹凸が生じる。これにより、絶縁性基板11と金属膜40との接合面積が増し、有機EL発光素子15で生じた熱は、効率良く金属膜40に排出される。この金属膜40は、有機EL発光素子15を作製した後に形成することができるので、発熱対策が容易に実現可能となる。
【0037】
なお、この金属膜40に接地線を溶接などにより接続し、図示しないが画素を選択するスイッチング素子及び発光輝度を制御する制御素子などに電気的にアース接続しても良い。
【0038】
図21は、本発明を適用したトップエミッション型有機EL表示装置の画素に構成例を説明する回路図である。この画素PXはカラー表示では副画素(サブピクセル)となる。画素PXは、走査線GLとデータ線DLとに接続したスイッチング用の薄膜トランジスタジスタTFT1と、走査線GLで選択されたスイッチング用薄膜トランジスタTFT1のオンでデータ線DLから供給される表示データを電荷として蓄積する蓄積容量CPRと、有機EL発光素子15の駆動用薄膜トランジスタTFT2と、電流供給線CSLとで構成される。
【0039】
薄膜トランジスタTFT1のゲート電極は走査線GLに接続され、ドレイン電極はデータ線DLに接続されている。また、薄膜トランジスタTFT2のゲート電極は薄膜トランジスタTFT1のソース電極に接続され、この接続点に蓄積容量CPRの一方の電極(+極)が接続されている。薄膜トランジスタTFT2のドレイン電極は電流供給線CSLに接続され、ソース電極は有機EL発光素子15の陽極14に接続されている。
【0040】
画素PXが走査線GLで選択されて薄膜トランジスタTFT1がオンとなると、データ線DLから供給される表示データが蓄積容量CPRに蓄積される。そして、薄膜トランジスタTFT1がオフした時点で薄膜トランジスタTFT2がオンとなり、電流供給線CSLから有機EL表示素子15に流れ、ほぼ1フレームの期間(または1フィールド期間)にわたってこの電流を持続させる。この時に流れる電流は、蓄積容量CPRに蓄積されているデータ信号に対応する電荷で規定される。この回路は最も単純な構成であり、他に種々の回路構成が知られている。
【0041】
図22は、図21に示した画素の回路を基板上で実現した構成例を説明する画素付近の平面図である。図中、図21と同一の符号は同一部分に対応し、DEは画素の開口部である。薄膜トランジスタTFT1と薄膜トランジスタTFT2とは画素の開口部DEに隣接する非表示部に配置される。
【0042】
図23は、有機EL表示装置の駆動回路を含めた等価回路である。画素PXはマトリクス状に配列されて表示領域ARを形成する。データ線DLはデータ線駆動回路DDRにより駆動される。また、走査線GLは走査線駆動回路GDRで駆動される。電流供給線CSLは電流供給バスラインCSLBを介して図示しない電流供給回路に接続している。なお、TMは外部入力端子を示す。
【0043】
なお、前述した実施例においては、トップエミッション型の有機EL表示装置について説明したが、ボトムエミッション型の有機EL表示装置においても、封止ガラス基板に凹部を設け、この凹部内に放熱部材を配設しても、前述とほぼ同様の効果が得られることは勿論である。
【0044】
また、前述した各実施例においては、有機EL表示装置を用いた有機ELパネルについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、携帯性を重視する小型情報端末(携帯,PDA等)用の有機ELパネルまたはモニタ用有機ELディスプレイの全般に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による有機EL表示装置の有機EL発光素子の層構造を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明による有機EL表示装置の実施例1の構成を模式的に示す要部断面図である。
【図3】図2に示す有機EL表示装置の背面側から見た要部斜視図である。
【図4】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図5】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図6】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図7】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図8】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図9】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図10】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図11】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図12】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図13】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図14】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図15】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図16】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図17】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図18】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図19】本発明による有機EL表示装置の封止ガラス基板の背面側に形成される凹部の他の実施例を示す要部平面図である。
【図20】本発明による有機EL表示装置の実施例2による構成を模式的に示す要部断面図である。
【図21】本発明を適用したトップエミッション型有機EL表示装置の1つの有機EL発光素子すなわち1画素付近の構成を示す回路図である。
【図22】図21に示した画素を基板上で実現した構成例を説明する画素付近の平面図である。
【図23】有機EL表示装置の駆動回路を含めた等価回路を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
11・・・絶縁性基板、11a・・・凹部、12・・・陰極、12a・・・アルミニウム層、12b・・・弗化リチウム層、13・・・有機発光膜、13a・・・電子輸送層、13b・・・発光層、13c・・・正孔輸送層、13d・・・正孔注入層、14・・・陽極、15・・・有機EL発光素子、16・・・ガスバリア性膜、21・・・透光性ガラス基板、22・・・封止剤、23・・・乾燥剤、30・・・シリコン接着剤、31・・・アルミニウム板、31a・・・凹凸面、40・・・金属膜、41a・・・凹凸面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と対向して周縁部に封止部材を介在させて気密封止された絶縁性基板の主面内に複数の有機EL発光素子が配設され、且つ当該複数の有機EL発光素子と対向する背面に凹部が形成され、当該凹部内に放熱部材が配設されたことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記放熱部材は、アルミニウム板材とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記放熱部材は、銅板材とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記放熱部材は、熱伝導性の高いシリコン接着材を介して接着配置させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記放熱部材の外面に微細な凹凸面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記放熱部材は、金属膜とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記金属膜は、外面に微細な凹凸面を有することを特徴とする請求項6に記載の有機EL表示装置。
【請求項1】
透光性基板と対向して周縁部に封止部材を介在させて気密封止された絶縁性基板の主面内に複数の有機EL発光素子が配設され、且つ当該複数の有機EL発光素子と対向する背面に凹部が形成され、当該凹部内に放熱部材が配設されたことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記放熱部材は、アルミニウム板材とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記放熱部材は、銅板材とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記放熱部材は、熱伝導性の高いシリコン接着材を介して接着配置させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記放熱部材の外面に微細な凹凸面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記放熱部材は、金属膜とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記金属膜は、外面に微細な凹凸面を有することを特徴とする請求項6に記載の有機EL表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−49057(P2006−49057A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227500(P2004−227500)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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