説明

有機EL表示装置

【課題】第二有機化合物層の発光時に、第二電極から接続電極へ電流が流れて第一有機化合物層が発光するのを防止でき、色ずれがなく、輝度低下のない良好な有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】基板11の上に、第一電極12、第一有機化合物層14、第二電極15、第二有機化合物層16及び第三電極17が積層され、第三電極17を駆動回路に接続するための接続電極12Aを有し、第一有機化合物層14または/および第2有機化合物層16には、第二電極15に接する電子注入層EILまたは正孔注入層HILが形成され、第二電極15から接続電極12Aに至るリークパスが形成されうる経路、及び接続電極12Aの面上のいずれかの部分には、第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16のうち、少なくとも、電子注入層EILまたは正孔注入層HILが部分的に存在しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に発光層を含む有機化合物層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を複数備えた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして、自発光型のデバイスである有機EL表示装置が注目されている。
【0003】
有機EL表示装置の開口率を向上させて長寿命化を実現するために、異なる発光色を有する有機化合物層を複数積層した有機EL表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この様な異なる発光色を有する有機化合物層を複数積層した有機EL表示装置の一形態を図4に示す。図4は従来の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)における積層構造を示す概略断面図である。
【0005】
図4に示すように、この有機EL表示装置40は、基板41上に第一電極42、第一有機化合物層44、第二電極45、第一有機化合物層44と逆極性の第二有機化合物層46、及び第三電極47が積層されている。第一電極42の周囲は素子分離膜43で覆われ、第二電極45を共通電極、第一電極42及び第三電極47を駆動電極としている。
【0006】
第一有機化合物層44は発光層と電子注入層をこの順で含み、これと逆極性の第二有機化合物層46は電子注入層と発光層をこの順で含んでいる。この有機EL表示装置は、第二電極45を接地(GND)し、第一電極42及び第三電極47にそれぞれ所望の電位をかけることで、第一有機化合物層44と第二有機化合物層46とを個別に、もしくは同時に発光させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−282240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の積層構成の有機EL表示装置では、図4に示すように、素子分離膜43の開口部48内に、これより小さな開口のコンタクトホール49を形成している。このように素子分離膜43の開口部48よりも開口の小さなコンタクトホール49を形成すると、次の様な問題があった。即ち、第二有機化合物層(上層有機化合物層)46の発光時に、コンタクトホール49の周囲に存在する素子分離膜43の開口部48上の第一有機化合物層(下層有機化合物層)44が発光するという問題があった。これは、第二電極(中間電極)45の上下に設けられた電子注入層EILが一般に低抵抗であるため、電子注入層EILが第二電極45と近い電位となる。この電子注入層EILをリークパスLPとして素子分離膜43の開口部48内の接続電極42Aに電流が流れて発生する。この問題は、有機EL表示装置の駆動電圧を低減すべく、電子注入層EILとして高電子注入性を有する材料を用いると、より顕著になる。
【0009】
この様な問題が発生すると、例えば、第二有機化合物層46が赤色発光、第一有機化合物層44が青色発光である場合に、第二有機化合物層46の赤色表示を行う際に、同時に第一有機化合物層44が青色発光する。このため、発光色が赤色と青色との混色であるマゼンタとなり、有機EL表示装置40の色ずれが生じる。また、第二有機化合物層46を発光させるための電流の一部が第一有機化合物層44にも流れることによって、第二有機化合物層の輝度が低下してしまう。
【0010】
そこで本発明の目的は、第二有機化合物層の発光時に、第二電極から接続電極へ電流が流れて第一有機化合物層が発光するのを防止でき、色ずれがなく、輝度低下のない良好な有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成すべく成された本発明の構成は以下の通りである。
【0012】
即ち、本発明に係る有機EL表示装置は、基板の上に、第一電極、第一有機化合物層、第二電極、第二有機化合物層及び第三電極が積層され、上記第三電極を駆動回路に接続するための接続電極を有する有機EL素子を複数配列してなる有機EL表示装置であって、
上記第一有機化合物層または/および上記第2有機化合物層には、上記第二電極に接する電子注入層または正孔注入層が形成されており、
上記第二電極から上記接続電極に至るリークパスが形成されうる経路の少なくとも一部分、及び上記接続電極の面上の全体には、上記第一有機化合物層及び上記第二有機化合物層のうち、少なくとも、上記電子注入層または上記正孔注入層が存在しないことを特徴とする有機EL表示装置である。
【0013】
また、本発明に係る有機EL表示装置の製造方法は、基板の上に、第一電極、第一有機化合物層、第二電極、第二有機化合物層及び第三電極が積層され、前記第三電極を駆動回路に接続するための接続電極を有する有機EL素子を複数配列してなる有機EL表示装置の製造方法であって、
前記第二電極から前記接続電極に至るリークパスが形成されうる経路の少なくとも一部分、及び前記接続電極の面上の全体において、レーザー加工により、前記第一有機化合物層及び前記第二有機化合物層のうち、少なくとも、前記電子注入層または前記正孔注入層を除去することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第二電極から接続電極に至るリークパスが形成されうる経路、及び接続電極の面上のいずれかの部分には、第一有機化合物層及び上記第二有機化合物層のうち、少なくとも、電子注入層または正孔注入層が部分的に存在しない。したがって、第二有機化合物層の発光時に、電子注入層または正孔注入層をリークパスとして、第二電極から接続電極へ電流が流れて第一有機化合物層が発光するのを防止できる。よって、色ずれがなく、輝度低下のない良好な有機EL表示装置を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態の有機EL表示装置の1画素における積層構造を示す概略断面図である。
【図2】第2の実施形態の有機EL表示装置の1画素における積層構造を示す概略断面図である。
【図3】第3の実施形態の有機EL表示装置の1画素における積層構造を示す概略断面図である。
【図4】従来の有機EL表示装置の1画素における積層構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は本実施形態に限定されない。なお、図面では、説明の都合上から、各層を認識可能な大きさで表しており、図面の縮尺は実際とは異なっている。また、本明細書で特に図示または記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知または公知技術を適用する。
【0017】
〔第1の実施形態〕
図1を参照して、本発明に係る第1の実施形態の有機EL表示装置の積層構成について説明する。本実施形態で例示する有機EL表示装置は、基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置であり、表示装置の利用者は光取り出し側から観察することになる。図1は本実施形態の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)における積層構造を示す概略断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の有機EL表示装置10は、画素がマトリクス状に複数配列されて有機EL表示装置10の表示領域が構成されている。本実施形態の有機EL表示装置10は、概ね基板11上に第一電極12、第一有機化合物層14、第二電極15、上記第一有機化合物層14と逆極性の第二有機化合物層16、及び第三電極17が積層されている。第一電極12の周囲は素子分離膜13で覆われ、該素子分離膜13の開口部には第一電極12の中央部が露出されている。第二電極(中間電極)15は共通電極となっており、第一電極(下部電極)12及び第三電極(上部電極)17は駆動電極となっている。対向する第一電極12と第二電極15とに第一有機化合物層14が挟持されて第一有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子が構成される。また、対向する第二電極15と第三電極17とに第二有機化合物層16が挟持されて第一有機EL素子と逆極性の第二有機EL素子が構成される。
【0019】
以下、逆極性の有機EL素子を積層した有機EL表示装置10の各構成要素について詳細に説明する。
【0020】
(基板)
基板1としてはガラス板等の絶縁性基板を用い、この基板1上には不図示の駆動回路が形成されている。駆動回路としては、例えば、多結晶シリコン(p−Si)や非晶質シリコン(a−Si)等からなる薄膜トランジスタ(TFT)を備えるアクティブマトリクス回路が好適である。駆動回路上には、不図示の絶縁層が形成されている。絶縁層は非導電体の材料で形成され、例えば、窒化珪素や酸化珪素、またはアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料が用いられる。
【0021】
(第一電極)
絶縁層上には、駆動回路に電気的に接続された第一電極12が、有機EL素子ごとに形成されている。本実施形態では、基板11と反対側へ有機EL素子の発光光を取り出すように構成しているため、第一電極12は反射機能を有している。第一電極12には、例えば、Al、Ag、Au、ITO(インジウム錫酸化物)、InZnO(インジウム亜鉛酸化物)、ZnOなどの有機EL素子の電極として公知の材料が用いられる。
【0022】
(素子分離膜)
第一電極12上には、少なくとも該第一電極12の周囲を矩形に覆うように、素子分離膜(バンク層)13が形成されている。素子分離膜13は、後に堆積する有機化合物層が第一電極12の膜厚の段差部で途切れないようにするとともに、有機EL素子の発光領域を規定している。素子分離膜13としては、非導電体からなる絶縁材料が好適に用いられ、具体的には、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料が好適に用いられる。
【0023】
(第一有機化合物層)
第一電極12上には、第一有機化合物層14が形成される。本実施形態の第一有機化合物層14は、少なくとも、発光層、電子注入層をこの順で積層して形成される。第一有機化合物層14として、この他にホール注入層、ホールブロック層、電子ブロック層、電子輸送層等の機能をもつ層を更に積層してもよい。第一有機化合物層14の各層には、公知の材料を用いることができる。
【0024】
(第二電極)
第一有機化合物層14上には、第二電極15が形成される。第二電極15には、第一電極12と同様の材料を用いることができる。ただし、有機EL素子の発光光を取り出すためには、第二電極15は透明もしくは半透明でなければならない。第二電極15には、例えば、透明導電膜や薄膜金属からなる半透過導電膜、あるいはそれらを積層した膜が用いられる。各有機EL素子上の第二電極15は電気的に連結されており、共通電極として機能する。
【0025】
(第二有機化合物層)
第二電極15上には、第二有機化合物層16が形成されている。本実施形態の第二有機化合物層16は、少なくとも、電子注入層、発光層をこの順で積層して形成される。第二有機化合物層16として、この他にホール注入層、ホールブロック層、電子ブロック層、電子輸送層等の機能をもつ層を更に積層してもよい。第二有機化合物層16の各層には、公知の材料を用いることができる。
【0026】
(第三電極)
第二有機化合物層16上には、駆動回路に電気的に接続された第三電極17が形成されている。第三電極17には、第一電極12と同様の材料を用いることができる。ただし、本実施形態の構成にかかわらず、有機EL素子の発光光を取り出すためには、上記第一電極12と第三電極17との少なくとも一方を透明もしくは半透明にしなければならない。光取り出し側に形成する電極には、例えば、透明導電膜や薄膜金属からなる半透過導電膜、あるいはそれらを積層した膜が用いられる。
【0027】
(接続電極)
第一電極12の側方には、素子分離膜13を介して接続電極12Aが並設されており、この接続電極12Aは上記絶縁層に形成した不図示のコンタクトホールを介して駆動回路に接続されている。接続電極12Aは、第三電極17を駆動回路に接続するための電極であり、実質的には第一電極12と同一の構造・材質を有している。通常、この接続電極12A上には第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16が形成され、これら有機化合物層14、16にはコンタクトホールが形成され、該コンタクトホールを介して第三電極17が接続電極12Aに接続されている。しかし、本実施形態では、接続電極12Aの面上の全体に第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16は存在せず、この接続電極12Aの露出面上に第三電極17が直接形成されている。即ち、本実施形態では、素子分離膜13の開口部18内の接続電極12A上に第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16を形成しないか、もしくは第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16を取り除いて、接続電極12Aを露出させている。よって、接続電極12Aの露出面上の全体に第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16が存在しないので、素子分離膜13の開口部18と同等の大きさのコンタクトホール19が形成されていることになる。
【0028】
(封止)
本実施形態の有機EL表示装置10は、不図示の封止手段を用いて封止され、外部の水分や酸素などから保護される。封止手段としては、例えば、掘り込みを入れたガラスを基板1と貼り合わせて内部に吸湿剤を封入する方法、または窒化珪素などからなる無機膜で有機EL素子を覆う方法、その他の公知の方法を用いることができる。
【0029】
(製造方法)
次に、図1を参照して、本実施形態の有機EL表示装置10の製造方法について説明する。
【0030】
まず、ガラス板等の絶縁性基板11上に、周知の方法でTFT等の駆動回路(図示せず)を形成する。駆動回路上には、非導電体の材料からなる不図示の絶縁層を形成する。絶縁層としては、例えば、プラズマCVD法を用いて窒化珪素を形成し、フォトリソグラフィ法により加工する。或いは、感光性アクリル樹脂をスピンコーターで塗布した後に、フォトリソグラフィ法により加工してもよい。このとき絶縁層には、第一電極(接続電極12Aを含む)12及び第三電極17を駆動回路に接続するための不図示のコンタクトホールを同時に形成する。
【0031】
第一電極12及び接続電極12Aの形成は、例えば、スパッタリング法を用い、AlとITOの積層膜を形成して、フォトリソグラフィ法により有機EL素子に対応するパターンに形成する。
【0032】
素子分離膜13は、第一電極(接続電極12Aを含む)12の周囲を覆うように有機EL素子間に形成し、発光領域を規定する。素子分離膜13は、スピンコーターで基板全体に形成した後、フォトリソグラフィ法により開口部18を形成する。素子分離膜13の開口部18は、少なくとも一部が絶縁層に形成したコンタクトホールと重なるように形成する。或いは、素子分離膜13の開口部18と絶縁層に形成したコンタクトホールを異なる領域に形成して、上記開口部18と絶縁層に形成したコンタクトホールを導電層で接続することもできる。この場合、導電層は、第一電極12と同様の材料を用い、第一電極12と同時に形成することができる。素子分離膜13の加工工程後は十分にアニールして絶縁層や素子分離膜13に含まれる水分を脱水し、後に形成する有機EL素子が水分で劣化するのを防止する。
【0033】
第一有機化合物層14は、公知の材料を用いて、例えば蒸着法、レーザー転写法、インクジェットを用いた塗布法等で形成することができる。蒸着法において、有機化合物層14を有機EL素子ごとに膜厚や材料を変えて形成する場合は、メタルマスクを用いて形成する。第一有機化合物層14を形成した後、封止工程までは露点管理した雰囲気中で工程を行い、工程中に水分が有機EL素子へ浸入するのを防止する。
【0034】
第二電極15としては、例えば蒸着法を用いて、Ag薄膜を形成する。第二電極15は、例えばメタルマスクを用いて、所望の領域にのみ形成することができる。具体的には、少なくとも後述するコンタクトホール19が形成される領域は避けるように、第二電極15を形成する。
【0035】
第二有機化合物層16は、第一有機化合物層14と同様の方法で形成することができる。第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16には、コンタクトホール19が形成される。このコンタクトホール19は、第二有機化合物層16の形成後に、例えばレーザーを用いて、第一有機化合物層14と第二有機化合物層16を同時に除去することで形成できる。このときコンタクトホール19は、上記素子分離膜13の開口部18と同等の大きさで形成する。レーザー加工には、例えばYAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。
【0036】
第三電極17としては、例えば蒸着法を用いて、Ag薄膜を形成する。第三電極17は、例えばメタルマスクを用いて、所望の領域にのみ形成することができる。
【0037】
封止法として薄膜封止を用いる場合は、例えばプラズマCVD法を用いて、窒化珪素からなる無機膜を形成して封止膜とする。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の有機EL表示装置10は、第二電極(中間電極)15を介して、互に逆極性の第一有機化合物層14と第二有機化合物層16を積層した有機EL表示装置である。そして、この様な有機EL表示装置において、第三電極17を駆動回路に接続する接続電極12Aの露出面上の全体には第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16が存在しない。したがって、第二有機化合物層16の発光時に、電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)をリークパスとして第一有機化合物層14が発光するのを防止することができ、色ずれがなく、輝度低下のない良好な有機EL表示装置10を得ることができる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
次に図2を参照して、本発明に係る第2の実施形態の有機EL表示装置の積層構成について説明する。図2は本実施形態の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)における積層構造を示す概略断面図である。なお、第1の実施形態と同様の構造を有する構成要素については、同一の符号を付して説明する。
【0040】
図2に示すように、本実施形態の有機EL表示装置20は、接続電極12Aの露出上の全体に第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16を形成している。しかし、これらの有機化合物層14、16には電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)を形成せず、存在しない。本実施形態では、第二電極(中間電極)15を接地(GND)し、第一電極12及び第二電極17に所望の電位をかけているので、接続電極12A上の第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16に電子注入層EILが存在しない。
【0041】
これに限定されず、第二電極(中間電極)15に接する層が正孔注入層HILの場合には、接続電極12A上の第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16に正孔注入層を形成せず、存在しない。
【0042】
なお、電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)を形成した後除去する場合には、例えばYAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。また本実施形態では、第1の実施形態と異なり、従来と同様の開口の大きさでコンタクトホール29を形成している。
【0043】
本実施形態の有機EL表示装置20によれば、接続電極12Aの露出面上の全体に第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16を形成しているが、電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)を形成せず、存在しない。したがって、第二有機化合物層16の発光時に、電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)をリークパスとして第一有機化合物層14が発光するのを防止することができ、色ずれがなく、輝度低下のない良好な有機EL表示装置20を得ることができる。
【0044】
〔第3の実施形態〕
次に図3を参照して、本発明に係る第3の実施形態の有機EL表示装置の積層構成について説明する。図3は本実施形態の有機EL表示装置の1画素(ピクセル)における積層構造を示す概略断面図である。なお、第1の実施形態と同様の構造を有する構成要素については、同一の符号を付して説明する。
【0045】
図3に示すように、本実施形態では、第二電極15から接続電極12Aへ至るリークパスの経路の少なくとも一部分において、第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16うち、少なくとも電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)を切断除去している。本実施形態では、第二電極(中間電極)15を接地(GND)し、第一電極12及び第二電極17に所望の電位をかけているので、第二電極15から接続電極12Aへ至るリークパスの経路の途中で部分的に電子注入層EILを切断除去している。
【0046】
これに限定されず、第二電極(中間電極)15に接する層が正孔注入層HILの場合には、第二電極15から接続電極12Aへ至るリークパスの経路の途中で正孔注入層HILを切断してもよい。電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)の切断には、例えばYAGレーザー(SHG、THG含む)、エキシマレーザーなど一般に薄膜加工に使用する公知の手法を用いることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、従来と同様の開口の大きさでコンタクトホール29を形成している。
【0048】
本実施形態の有機EL表示装置30によれば、第二電極15から接続電極12Aへ至るリークパスLの経路の途中において、第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16のうち、少なくとも電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)を部分的に切断している。即ち、第二電極15から接続電極12Aへ至るリークパスの経路の途中において、部分的に電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)が存在しない。したがって、第二有機化合物層16の発光時に、電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)をリークパスとして第一有機化合物層14が発光するのを防止することができ、色ずれがなく、輝度低下のない良好な有機EL表示装置30を得ることができる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【0050】
例えば、第一有機化合物層14と第二有機化合物層16の間に位置する第2電極(中間電極)15は、導電層/絶縁層/導電層のように二つ以上の導電層の間に絶縁層を有する構成とし、異なる有機化合物層を独立駆動できるよう構成されていてもよい。この場合には、第一有機化合物層14と第二有機化合物層16との極性を必ずしも逆方向にする必要はない。そして、上記の実施形態と同様の構成で、第2電極15に接する電子注入層EIL(または正孔注入層HIL)を形成しないか、取り除くことになる。
【0051】
上記の実施形態では、本発明を基板側とは反対側(透明電極側)から有機EL素子の光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の有機EL表示装置に適用したが、基板側から光を取り出すボトムエミッション型の有機EL表示装置に適用することもできる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明に係る有機EL表示装置の実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
【0053】
〔実施例〕
実施例は、上記3つの形態の代表的な例として、図1に示した構成の有機EL表示装置を作製した。
【0054】
まず、縦100mm、横100mm、厚さ0.5mmのガラス基板11上に、p−SiからなるTFTを備える駆動回路(図示せず)を形成した。次に、駆動回路上に絶縁層を形成した。絶縁層としては、スピンコーターを用いてフォトレジタイプの紫外線硬化性アクリル樹脂を塗布し、コンタクトホールのパターンを有するフォトマスクを載せて、1800mWの照度で露光した。さらに現像液で現像し、200℃でポストベークして、第一電極12及び第三電極17を駆動回路と電気的に接続するための不図示のコンタクトホールを有する膜厚2μmの絶縁層を形成した。
【0055】
次に、第一電極(接続電極12Aを含む)12として、スパッタリング法により、膜厚100nmのAlと膜厚50nmのInZnOとの積層膜を形成した。第一電極12は、基板上の積層体全面に形成した後、フォトリソグラフィにて駆動回路に対応した有機EL素子のパターンに形成した。各第一電極2は、絶縁層に形成したコンタクトホールを介して各駆動回路に電気的に接続した。
【0056】
絶縁層及び第一電極12の上に、スピンコーターでポリイミド樹脂を厚さ1.6μmに塗布した後、各画素の発光領域と上記接続電極12Aの形成領域に形成されたポリイミド樹脂をフォトリソグラフィで除去し、開口部18を有する素子分離膜13とした。
【0057】
素子分離膜13等が形成された基板を、圧力10-2Pa、150℃雰囲気下で10分加熱した後、第一電極12上に第一有機化合物層14を形成した。第一有機化合物層14には、抵抗加熱蒸着法を用いて、公知の有機材料からなるホール輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層を積層した。本実施例では、第一有機化合物層14の発光層として、青色に発光する有機材料を用いた。
【0058】
続いて、積層した第一有機化合物層14上には、スパッタリング法により、InZnOからなる第二電極15を50nmの膜厚で形成した。第二電極15は、メタルマスクを用いて、上記接続電極12Aの形成領域には形成されないように形成した。
【0059】
続いて、第二電極15上に、第二有機化合物層16を形成した。第二有機化合物層16には、抵抗加熱蒸着法を用いて、公知の有機材料からなる電子注入層、電子輸送層、発光層、ホール輸送層及びホール注入層を積層した。本実施例では、第二有機化合物層16の発光層として、赤色に発光する有機材料を用いた。第二有機化合物層16の形成後に、コンタクトホール18の形成領域に波長255nm、パルス幅10nsのエキシマレーザーを照射し、第一有機化合物層14及び第二有機化合物層16を一括で除去して、コンタクトホール19を形成した。このコンタクトホール19は、素子分離膜13の開口部18と同等の大きさに形成される。
【0060】
続いて、第二有機化合物層16及び接続電極12Aの露出面上に、スパッタリング法により、Agからなる第三電極17を15nmの膜厚で形成した。第三電極17は基板上の略全面に形成した後に、波長255nm、パルス幅10nsのエキシマレーザーを用いて、各画素毎に独立して形成されるようにパターニングした。このとき各第三電極17は、絶縁層に形成したコンタクトホール及びコンタクトホール18を介して、駆動回路と電気的に接続される。
【0061】
次に、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法により、窒化珪素からなる無機保護膜を成膜した。保護膜の膜厚は6μmとし、有機EL素子が形成された基板面全体を覆うように形成した。
【0062】
以上のようにして作製した有機EL表示装置11に対して、表示確認を行った。まず、第二電極15を接地(GND)し、第一電極12にプラスの電圧を印加すると、第一有機化合物層14の青色の発光色が得られた。次に、第二電極15を接地(GND)し、第三電極17にプラスの電圧を印加すると、第二有機化合物層16の赤色の発光色が得られた。次に、第二電極15を接地(GND)し、第一電極12及び第三電極17にプラスの電圧を印加すると、第一有機化合物層14の青色の発光色と、第二有機化合物層16の赤色の発光色が混色したマゼンダの発光色が得られた。
【0063】
このように実施例の有機EL表示装置によれば、色ずれがなく、輝度低下のない有機EL表示装置を得ることができた。
【0064】
〔比較例〕
比較例として、図4に示したコンタクトホール49が素子分離膜43の開口部48の内側に形成された有機EL表示装置40を作製し、表示確認を行った。比較例は、コンタクトホール49の大きさを変えたこと以外、使用材料、製造方法は実施例の有機EL表示装置と同様とした。
【0065】
以上のようにして作製した比較例の有機EL表示装置40に対して、表示確認を行った。まず、第二電極45を接地(GND)し、第一電極42にプラスの電圧を印加すると、第一有機化合物層44の青色の発光色が得られた。次に、第二電極45を接地(GND)し、第三電極47にプラスの電圧を印加すると、マゼンタの発光色が得られた。顕微鏡観察の結果、第二有機化合物層46の赤色の発光とともに、素子分離膜43の開口部48内のコンタクトホール49の周辺領域では第一有機化合物層44の青色の発光が発生していた。
【0066】
即ち、比較例の有機EL表示装置40では、第二有機化合物層46のみを単独で発光させることはできず、有機EL素子の発光色に色ずれが生じていた。
【符号の説明】
【0067】
10、20、30 有機EL表示装置、11 基板、12 第一電極、13 素子分離膜、14 第一有機化合物層、15 第二電極、16 第二有機化合物層、17 第三電極、18 開口部、19 コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、第一電極、第一有機化合物層、第二電極、第二有機化合物層及び第三電極が積層され、前記第三電極を駆動回路に接続するための接続電極を有する有機EL素子を複数配列してなる有機EL表示装置であって、
前記第一有機化合物層または/および前記第二有機化合物層には、前記第二電極に接する電子注入層または正孔注入層が形成されており、
前記第二電極から前記接続電極に至るリークパスが形成されうる経路の少なくとも一部分、または/および前記接続電極の面上の全体には、前記第一有機化合物層及び前記第二有機化合物層のうち、少なくとも、前記電子注入層または前記正孔注入層が存在しないことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第二電極は、前記第一有機化合物層が構成要素となる有機EL素子と、前記第二有機化合物層が構成要素となる有機EL素子との共通電極であって、
前記第一有機化合物層と前記第二有機化合物層とは逆極性に積層されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記接続電極の周囲は素子分離膜で覆われ、
前記素子分離膜の開口部内の前記接続電極の面上の全体には、前記電子注入層または前記正孔注入層が形成されていないか、除去されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記接続電極の周囲は素子分離膜で覆われ、
前記素子分離膜の開口部内の前記接続電極の面上の全体には、前記第一有機化合物及び前記第二有機化合物層が形成されていないか、除去されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第二電極から前記接続電極に至るリークパスが形成されうる経路において、前記電子注入層または前記正孔注入層が部分的に形成されていないか、部分的に除去されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
基板の上に、第一電極、第一有機化合物層、第二電極、第二有機化合物層及び第三電極が積層され、前記第三電極を駆動回路に接続するための接続電極を有する有機EL素子を複数配列してなる有機EL表示装置の製造方法であって、
前記第二電極から前記接続電極に至るリークパスが形成されうる経路の少なくとも一部分、または/および前記接続電極の面上の全体において、レーザー加工により、前記第一有機化合物層及び前記第二有機化合物層のうち、少なくとも、前記電子注入層または前記正孔注入層を除去することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−38544(P2012−38544A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177141(P2010−177141)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】