説明

有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器

【課題】機械的強度が強く、放熱性に優れた有機EL装置を提供する。
【解決手段】本発明の有機EL装置1は、有機EL素子が形成された有機ELパネル2と、有機ELパネル2と直接又は接着剤層を介して密着した、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを含む放熱部材(放熱シート51、金属板52)と、有機ELパネル2と前記放熱部材とを挟み込むように配置され、有機ELパネル2と前記放熱部材とのそれぞれに直接又は接着剤層を介して密着しこれらを一体に保持する、少なくとも一方が透明な一対の可撓性のフィルムシート(第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4B)と、を有し、前記一対のフィルムシートは、前記放熱部材の一部(金属板52)を外部に露出させた状態で有機ELパネル2の周縁部で互いに接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置は薄型、軽量な自発光素子として、携帯電話機やパーソナルコンピュータ、車載用モニター等への応用が期待されている。最近では、高耐熱性のガラス基板を50μm〜100μm程度まで薄型化し、周辺駆動回路を内蔵したフレキシブルで高機能な有機EL装置の開発も進められている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような薄型のガラス基板を用いた有機EL装置は、機械的な衝撃に弱く、厚みも薄いため取り扱い性が難しいという問題があった。特許文献2では、類似の構造を有する液晶装置において、薄型ガラス基板を用いた液晶パネルを0.3mmの厚い偏光板で補強し、これらをラミネートフィルムで挟んで一体化した構造が提案されている(特許文献2の図7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−58489号公報
【特許文献2】特許第4131639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ラミネートフィルムで覆われた有機ELパネルは発光時の熱がこもり易く、長時間使用すると、熱の影響により発光特性が変化してしまうという問題があった。特許文献2では、有機ELパネルの発光時の放熱の問題は考慮されておらず、適当な放熱手段も開示されていない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、機械的強度が強く、放熱性に優れた有機EL装置、有機EL装置の製造方法、電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の有機EL装置は、有機EL素子が形成された有機ELパネルと、前記有機ELパネルと直接又は接着剤層を介して密着した、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを含む放熱部材と、前記有機ELパネルと前記放熱部材とを挟み込むように配置され、前記有機ELパネルと前記放熱部材とのそれぞれに直接又は接着剤層を介して密着しこれらを一体に保持する、少なくとも一方が透明な一対の可撓性のフィルムシートと、を有し、前記一対のフィルムシートは、前記放熱部材の一部を外部に露出させた状態で前記有機ELパネルの周縁部で互いに接着されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、放熱部材と有機ELパネルとを一対のフィルムシートで一体化し、且つ、放熱部材の一部をフィルムシートの外部に露出しているため、放熱性に優れた有機EL装置が提供できる。この有機EL装置においては、放熱部材として、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを含むものを用いているため、有機ELパネルに発生した熱は放熱シートの面方向に伝達されてフィルムシートの外部に速やかに放出される。そのため、有機ELパネルの内部が高温に加熱されることがなく、発光特性を概ね一定に維持することができる。
【0009】
本発明の有機EL装置においては、前記放熱部材は、前記有機ELパネルに対して直接又は接着剤層を介して密着するグラファイトシートからなる前記放熱シートと、前記放熱シートの前記有機ELパネルが密着する側とは反対側の面に直接又は接着剤層を介して密着する金属製の放熱板と、を有し、前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出していることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、放熱性に優れたグラファイトシートと安価で入手が容易な金属製の放熱板とを組み合わせることにより、製造コストを抑えつつ、薄型で放熱効率の高い放熱部材を提供することができる。また、フィルムシートの外部に露出する部分が金属製の放熱板であるため、破断や磨耗等に対する耐久性も向上することができる。
【0011】
なお、放熱シートは放熱板と共に一対のフィルムシートの外部に露出させてもよい。この場合、放熱板によって放熱シートの機械的強度を高めることができ、放熱シートのみを外部に露出させた場合に比べて、放熱シートが破断しにくくなる。
【0012】
本発明の有機EL装置においては、前記一対のフィルムシートは前記有機ELパネルを内部に気密に封入すると共に、前記有機ELパネルの端面に形成された前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルとの間の隙間、及び、前記放熱部材の端面に形成された前記一対のフィルムシートと前記放熱部材との間の隙間に、それぞれ封止樹脂層が形成され、前記隙間が封止されていることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、フィルムシートと放熱部材との間に隙間が形成されないので、放熱部材からフィルムシートへの熱の移動が促進され、フィルムシートの表面からの放熱性も向上する。また、有機ELパネルの周囲が封止樹脂層とフィルムシートによって2重に封止されることになるため、有機ELパネルの封止性能も向上する。さらに、フィルムシートと放熱部材とが固定されているので、放熱部材に引っ張り応力等が加わっても、放熱部材と有機ELパネルとの間に位置ずれや剥がれが生じることがない。そのため、安定した放熱性を維持することができる。
【0014】
本発明の有機EL装置においては、前記有機ELパネルは、基材と、前記基材上に設けられた回路層と、前記回路層上に設けられた前記有機EL素子と、を有し、前記基材はガラス基板で構成されており、前記基材の厚みが20μm以上50μm以下であることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、薄いガラス基板を用いることで、有機ELパネルからの放熱性を高めることができる。また、透湿性の低いガラス基板を用いながら、プラスチックフィルム等の樹脂基板と同等の高い可撓性を付与することができ、フレキシブルな有機ELパネルを提供することができる。また、耐熱性の高いガラス基板を用いているため、例えば、低温ポリシリコン技術等により基材上に走査線駆動回路等の周辺駆動回路を形成することができ、これにより、有機EL装置の高性能化に寄与することができる。
【0016】
ここで、基材の厚みが20μmよりも薄くなると、ディンプルやピットと呼ばれる欠陥が多くなり、発光欠陥が顕著になる。また、50μmよりも厚くなると、十分な可撓性を付与できなくなると共に、基材上に形成された種々の樹脂層、例えば有機EL素子を覆う平坦化樹脂層等が、発光時の熱によって膨張し、有機EL素子を駆動する駆動素子を圧迫する惧れがある。しかし、20μm以上50μm以下の厚みでは、発光欠陥が1個以下となり、殆ど欠陥のない優れた発光特性が得られており、また上記厚みにおいては、有機ELパネルを一対のフィルムシートに挟み込む際の圧力によって殆ど割れが発生せず、高歩留まりな有機EL装置が提供できた。
【0017】
本発明の有機EL装置の製造方法は、有機EL素子が形成された有機ELパネルと、前記有機ELパネルと直接又は接着剤層を介して密着した、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを含む放熱部材と、を有する有機EL装置の製造方法であって、少なくも一方が透明な一対のフィルムシートの間に前記有機ELパネルと前記放熱部材とを配置し、前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルと前記放熱部材との積層体を一対の加圧手段の間に挿入する第1ステップと、前記一対のフィルムシートの間に接着剤を介在させ、前記放熱部材の一部を前記一対のフィルムシートの間から外部に露出させた状態で、前記一対の加圧手段によって前記積層体を加圧し、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で接着する第2ステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、放熱部材と有機ELパネルとを一対のフィルムシートで一体化し、且つ、放熱部材の一部をフィルムシートの外部に露出しているため、放熱性に優れた有機EL装置が提供できる。この有機EL装置においては、放熱部材として、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを含むものを用いているため、有機ELパネルに発生した熱は放熱シートの面方向に伝達されてフィルムシートの外部に速やかに放出される。そのため、有機ELパネルの温度が高温に加熱されることがなく、発光特性を概ね一定に維持することができる。
【0019】
本発明の有機EL装置の製造方法においては、前記第2ステップでは、前記一対の加圧手段によって前記積層体を加圧し、前記接着剤を前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネル及び前記放熱部材との間の隙間に押し広げて前記隙間を封止すると共に、前記有機ELパネルの周縁部で前記一対のフィルムシート同士が対向する部分と、前記放熱部材と前記フィルムシートとが対向する部分と、を前記接着剤を用いて接着することにより、前記有機ELパネルを前記一対のフィルムシートの内部に封止することが望ましい。
【0020】
この方法によれば、フィルムシートと放熱部材との間に隙間が形成されないので、放熱部材からフィルムシートへの熱の移動が促進され、フィルムシートの表面からの放熱性も向上する。また、有機ELパネルの周囲が封止樹脂層とフィルムシートによって2重に封止されることになるため、有機ELパネルの封止性能も向上する。さらに、フィルムシートと放熱部材とが固定されているので、放熱部材に引っ張り応力等が加わっても、放熱部材と有機ELパネルとの間に位置ずれや剥がれが生じることがない。そのため、安定した放熱性を維持することができる。
【0021】
本発明の有機EL装置の製造方法においては、前記一対の加圧手段は、一対の加圧ローラーであり、前記第1ステップでは、前記積層体を、前記一対のフィルムシートの前記放熱部材が露出する側とは反対側の端部から前記一対の加圧ローラーに挿入することが望ましい。
【0022】
この方法によれば、放熱部材と有機ELパネルとの間の段差によって有機ELパネルの表面や有機ELパネルの端部に気泡が残存する惧れが少ない。そのため、表示品質や封止性能に優れた有機EL装置が提供できると共に、残存した気泡によって放熱部材からフィルムシートへの熱の移動が阻害されることがないため、フィルムシートの表面からの放熱性も向上する。
【0023】
本発明の有機EL装置の製造方法においては、前記接着剤は熱可塑性の接着剤であり、前記接着剤は、前記一対のフィルムシートの互いに対向する面と、前記放熱部材の前記フィルムシートと対向する面と、にそれぞれ形成されていることが望ましい。
【0024】
この方法によれば、通常のラミネート装置を用いて製造を行えるため、新たな製造装置の開発が不要になる。
【0025】
本発明の電子機器は、上述した本発明の有機EL装置を備えていることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、機械的強度が強く、放熱性に優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL装置の分解斜視図である。
【図2】放熱シートの概略構成を示す断面図である。
【図3】有機EL装置の平面図である。
【図4】図2のA−A′線に沿う断面図である。
【図5】有機ELパネルの詳細構成を示す有機EL装置の断面図である。
【図6】有機EL装置の製造方法の説明図である。
【図7】有機EL装置の製造方法の説明図である。
【図8】有機EL装置の製造方法の説明図である。
【図9】有機EL装置の製造方法の説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る有機EL装置の分解斜視図である。
【図11】発光時表示領域の温度の経時変化を示す実施例である。
【図12】発光時の表示領域の温度分布を示す実施例である。
【図13】本発明の電子機器の一例であるブック型ディスプレイの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。かかる実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではない。下記の実施形態において、各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0029】
なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定して、各部材の位置関係を説明する。この際、水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。本実施形態の場合、X軸方向を走査線の延在方向、Y軸方向をデータ線の延在方向、Z軸方向を観察者による有機ELパネルの観察方向としている。
【0030】
[第1の実施の形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1の分解斜視図である。有機EL装置1は、有機ELパネル2と、有機ELパネル2の端部に接続された配線基板3(配線基板3A,3B,3C)と、有機ELパネル2の裏面(観察側とは反対側)に配置された放熱部材5(放熱シート51、放熱板52)と、有機ELパネル2と配線基板3と放熱部材5とを間に挟み込んで一体に保持する封止体4(第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4B)と、を備えている。なお、有機EL装置1には、フレームその他の付帯機器が必要に応じて付設されるが、図1ではそれらの図示は省略している。
【0031】
有機ELパネル2は、互いに対向する第1基板10と第2基板20とを備えている。第1基板10と第2基板20とが対向する対向領域の周縁部には、平面視矩形枠状のシール材30が設けられている。第1基板10と第2基板20とはシール材30によって互いに接着されている。第1基板10、第2基板20及びシール材30によって囲まれる空間(セルギャップ)には、封止樹脂が封入されている。
【0032】
シール材30の内側には表示領域Adが設けられている。表示領域Adには、X軸方向に延びる複数の走査線12とY軸方向に延びる複数のデータ線11とが平面視格子状に設けられている。走査線12とデータ線11との交差部には、赤色、緑色又は青色のいずれかの色に対応したサブ画素が設けられている。各サブ画素には有機EL素子が形成されており、赤色、緑色、青色のいずれかの光を発するようになっている。第1基板10上には、このようなサブ画素がマトリクス状に配置されており、これら複数のサブ画素によって表示領域Adが形成されている。それぞれのサブ画素にはTFT(Thin Film Transistor)等の画素スイッチング素子(駆動素子)が設けられているが、図1ではそれらの図示は省略している。
【0033】
表示領域Adとシール材30との間には、走査線駆動回路13A,13Bが設けられている。走査線駆動回路13A,13Bは、表示領域AdのX方向両側に1つずつ設けられている。走査線駆動回路13A,13Bは、Y方向に沿って形成され、表示領域AdからX方向に延在された複数の走査線12が、一走査線12毎に、左右のいずれかの走査線駆動回路13A,13Bのいずれかと接続されている。走査線駆動回路13A,13Bは、表示領域Adに設けられた画素スイッチング素子と共に、低温ポリシリコン技術を用いて第1基板10上に一体に形成されている。
【0034】
第1基板10には、第2基板20の外側へ張り出す張出し部10cが設けられている。張出し部10cには、各々が複数の外部端子からなる複数の端子部19A,19B,19Cが設けられている。端子部19A,19B,19Cのうち張出し部10cの中央部に設けられた端子部19Aは、各々がデータ線11と接続された複数の外部端子を含み、その左右両側に設けられた端子部19B,19Cは、それぞれ一対の走査線駆動回路13A,13Bのいずれかと接続された複数の外部端子を含んでいる。
【0035】
それぞれの端子部19A,19B,19Cには、接着剤7A,7B,7Cを介して複数の配線基板3A,3B,3Cのいずれかが接続されている。端子部19Aに接続された配線基板3Aにはデータ線駆動回路である半導体チップ6が実装されている。接着剤7A,7B,7Cは、ACF(Anisotropic Conductive Film;異方性導電膜)等の導電性の接着剤が用いられるが、配線基板3A,3B,3Cの外部端子と端子部19A,19B,19Cの外部端子の一方又は双方を突起状に形成し、両者を直接接触させて導通させる場合には、NCF(Non-Conductive Film;非導電膜)等の絶縁性の接着剤を用いることもできる。突起状の端子としては、特開2006ー196570号公報に記載されているような、突起状に形成された樹脂コアの表面を導電膜で覆ったバンプ電極を好適に用いることができる。
【0036】
なお、NCFを用いる場合には、NCFとして透光性のものを用いれば、配線基板3A,3B,3Cの外部端子と端子部19A,19B,19Cの外部端子とをアライメントする際に、配線基板3A,3B,3Cの外部端子と端子部19A,19B,19Cの外部端子との平面的な重なり具合を直接確認できるためアライメントが容易になり、また精度も向上することができる。
【0037】
有機ELパネル2の背面側(第1基板10の第2基板20が配置された側とは反対側)には、グラファイト等の高熱伝導性部材を含む放熱シート51と、アルミニウム等の金属製の放熱板52とを有機ELパネル2側から順に積層した放熱部材5が設けられている。
【0038】
放熱シート51は、層厚方向(Z方向)よりも面内方向(XY平面方向)に高い熱伝導性を有するものである。例えば、グラファイトの層状構造が巨視的なスケールで積み重なった高配向性グラファイトを用いたグラファイトシートが好適である。このような放熱シートとしては、特開昭58−147087号公報、特開昭60−012747号公報、特開平07−109171号公報、特許第3948000号等に開示されたものを用いることができる。特に、パナソニック株式会社製のPGSグラファイトシート(商品名)は、熱伝導率が銅(Cu)の2〜4倍、アルミニウム(Al)の3〜6倍という高い熱伝導性を有し、紙のような柔軟性(可撓性)を備えていることから、本実施形態の放熱シート51として好適である。
【0039】
放熱シート51は、少なくとも表示領域Adと重なる位置に設けられており、望ましくは、走査線駆動回路13A,13B等の周辺駆動回路を含む位置に設けられている。このようにすることで、表示領域Adや周辺駆動回路から発生した熱を効率よく外部に放出することができる。なお、本実施形態では、放熱シート51は、表示領域Adと走査線駆動回路13A,13Bの形成領域とを覆い、第1基板10よりも広い面積で形成されている。
【0040】
放熱板52は、銅やアルミニウム等の金属又はその合金からなる高熱伝導率の金属板である。面内方向の熱伝導率はグラファイトシートよりも小さいものの、安価で加工も容易であるため、柔軟性を持った放熱板を提供できる。本実施形態では、放熱板52としてリン青銅を用い、50μm程度まで薄くすることにより可撓性と形状復元性(バネ性)を持たせている。
【0041】
放熱板52は、少なくとも表示領域Adと重なる位置に設けられ、一部が第1基板10の張出し部10cの外側に張り出している。放熱板52は、望ましくは、走査線駆動回路13A,13B等の周辺駆動回路を含む位置に設けられている。このようにすることで、表示領域Adや周辺駆動回路から発生した熱を効率よく外部に放出することができる。なお、本実施形態では、表示領域Adと走査線駆動回路13A,13Bの形成領域とを覆い、第1基板10よりも広い面積で形成されている。
【0042】
図2は放熱シート51の断面構造の一例を示す模式図である。放熱シート51は、PETセパレータと、両面テープ30μm(粘着材13μm/PETフィルム4μm/粘着材13μm)と、グラファイトシート70μmと、両面テープ10μm(粘着材3μm/PETフィルム4μm/粘着材3μm)と、タック性シート53μm(PETフィルム38μm/粘着樹脂15μm)と、PETセパレータと、を順に積層したものである。使用するときは、一方のPETセパレータを取り外し、粘着材を介して有機ELパネルと密着された後、他方のPETセパレータを取り外し、粘着材を介して放熱板52と密着させる。
【0043】
図1に戻って、有機ELパネル2の外面側には、有機ELパネル2と密着してこれを内部に封入する可撓性の封止体4が設けられている。封止体4は、有機ELパネル2と配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5とを挟み込むように配置された一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bを備えている。一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bのうち、少なくとも観察側に配置された第1可撓性シート部材4Aは透明な材料で構成されている。
【0044】
第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bは、一面側に接着剤層42A,42Bが形成された可撓性のフィルムシート41A,41Bによって構成されている。接着剤層42A,42Bを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂等の種々の材料を用いることができるが、本実施形態では、熱可塑性樹脂を用いることとする。熱可塑性樹脂からなる接着剤層を備えたフィルムシートは、一般にラミネートフィルムと呼ばれている。
【0045】
第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bは、それぞれ有機ELパネル2よりも広い面積で形成されている。第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bは、配線基板3A,3B,3Cの端子部19A,19B,19Cと接続された側とは反対側の端部(半導体チップ6が実装された部分を含む)と、放熱部材5の張出し部10cの外側に張り出した部分と、を外部に露出させた状態で、有機ELパネル2の外側となる周縁部で接着剤層42A,42Bによって互いに接着されている。
【0046】
また、有機ELパネル2の周縁部に位置する配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5との表裏両面、すなわち各部材の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと対向する面には、それぞれ接着剤層5A,5B,8A,8B,8C,9A,9B,9Cが設けられている。そして、配線基板3A,3B,3Cに設けられた接着剤層8A,8B,8Cと、第1可撓性シート部材4Aに設けられた接着剤層42Aと、を用いて、第1可撓性シート部材4Aと配線基板3A,3B,3Cとが互いに接着され、放熱部材5に設けられた接着剤層5Aと、第1可撓性シート部材4Aに設けられた接着剤層42Aと、を用いて、第1可撓性シート部材4Aと放熱部材5とが互いに接着され、放熱部材5に設けられた接着剤層5Bと、第2可撓性シート部材4Bに設けられた接着剤層42Bと、を用いて、第2可撓性シート部材4Bと放熱部材5とが互いに接着され、配線基板3A,3B,3Cに設けられた接着剤層9A,9B,9Cと、放熱部材5に設けられた接着剤層5Aと、を用いて、配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5とが互いに接着されている。接着剤層5A,5B,8A,8B,8C,9A,9B,9Cは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂等の種々の材料を用いることができるが、本実施形態では、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることとする。
【0047】
図3は有機EL装置1を第1可撓性シート部材4A側から見た平面図、図3(b)は有機EL装置1を第2可撓性シート部材4B側から見た平面図である。
【0048】
図3(a)に示すように、第1可撓性シート部材4A側から見て有機ELパネル2の周縁部には、第1可撓性シート部材4A(接着剤層42A)と第2可撓性シート部材4B(接着剤層42B)との接着部71と、第1可撓性シート部材4A(接着剤層42A)と配線基板3A,3B,3C(接着剤層8A,8B,8C)との接着部72と、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4B(接着剤層42A)と放熱部材5(接着剤層5A)との接着部73とが、有機ELパネル2の外周を構成する4つの辺に沿って隙間無く連続的に形成されている。また、配線基板3A,3B,3Cの裏面に隠れているが、接着部72と重なる位置に、配線基板3A,3B,3C(接着剤層9A,9B,9C)と放熱部材5(接着剤層5A)との接着部74が設けられ、接着部71,73,74が、有機ELパネル2の外周を構成する4つの辺に沿って隙間無く連続的に形成されている。
【0049】
また、図3(b)に示すように、第2可撓性シート部材4B側から見て有機ELパネル2の周縁部には、第2可撓性シート部材4B(接着剤層42B)と放熱部材5(接着剤層5B)との接着部75が設けられ、接着部71,75が、有機ELパネル2の外周を構成する4つの辺に沿って隙間無く連続的に形成されている。
【0050】
さらに、接着部71,72,73,74,75とシール材30とにより囲まれる空間には第3封止樹脂層43が封入され、当該空間が封止されている。
【0051】
そして、このような構成により、有機ELパネル2が一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの内部、すなわち封止体4の内部に気密に封入されている。
【0052】
なお、図3では、放熱シート51を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bよりも小さい面積で形成し、放熱板52のみが可撓性シート部座右4A,4Bの外部に露出しているものとしたが、放熱部材5の構成はこのようなものに限定されず、放熱シート51と放熱板52の双方を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの外部に露出させても良い。
【0053】
図4は図3のA−A′線に沿う断面図である。有機ELパネル2の第2基板20の主面と放熱部材5(詳しくは放熱板52)の主面には、それぞれ第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとが密着して配置されている。第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bは、有機ELパネル2及び放熱部材5の端部で湾曲し、直接又は配線基板3A及び/又は放熱部材5(詳しくは放熱板52)を介して密着している。第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとが密着する部分は、接着剤層42Aと接着剤層42Bとにより接着され、第1可撓性シート部材4Aと配線基板3Aとが密着する部分は、接着剤層42Aと接着剤層8Aとにより接着され、第2可撓性シート部材4Bと放熱部材5とが密着する部分は、接着剤層42Bと接着剤層5Bとにより接着され、配線基板3Aと放熱部材5とが密着する部分は、接着剤層9Aと接着剤層5Aとにより接着されている。
【0054】
有機ELパネル2の端部には、有機ELパネル2と配線基板3Aとの間の段差や、有機ELパネル2と放熱部材5との間の段差や、それらの端部形状に起因して生じた隙間4H1が形成されている。このような隙間4H1には、第1封止樹脂層43が設けられている。第1封止樹脂層43は、第1基板10の端面、第2基板20の端面、及びシール材30の端面をそれぞれ覆って、第1基板10及び第2基板20の外周全体を取り囲むように設けられている。
【0055】
また、配線基板3Aと放熱部材5との間には、放熱部材5と有機ELパネル2との間の段差に起因して生じた隙間4H2が形成されている。このような隙間4H2には、第4封止樹脂層45が設けられている。第4封止樹脂層45は、第1基板10の端面を覆って配線基板3Aの幅方向(X方向)全体に隙間無く設けられている。
【0056】
有機ELパネル2の外周部には、このような第1封止樹脂層43及び第4封止樹脂層45が隙間4H1,4H2を埋めるように設けられており、これにより、有機ELパネル2の端部が第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと配線基板3Aと封止樹脂層43,45とによって封止されるようになっている。
【0057】
また、第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとの端面には、両者の境界部を覆って第2封止樹脂層44が設けられている。第2封止樹脂層44は、第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとの境界部、及び第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと配線基板3Aとの境界部をそれぞれ覆って、封止体4の外周全体を取り囲むように設けられている。そして、第1封止樹脂層43と第4封止樹脂層45と第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと配線基板3Aと協働して高い封止性能を実現している。
【0058】
封止樹脂層43,44は、例えば、一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bを加熱圧着したときに、接着剤層42A,42Bが軟化して形成されるように接着剤層42A,42Bの膜厚を設定するか、または、積極的に隙間4Hや第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの端面に封止樹脂を充填しても良い。例えば、有機ELパネル2を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bで挟み込む際に、有機ELパネル2の端部に封止樹脂を配置し、一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bでその封止樹脂を押し広げることで、有機ELパネル2の端部及び第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの境界部に隙間なく封止樹脂層を配置することができる。
【0059】
図5は、有機EL装置1の詳細構成を示す断面図である。有機ELパネル2は、第1基板10と第2基板20とが対向して配置され、第1基板10と第2基板20とが接着層36を介して接着され一体化されたものである。
【0060】
第1基板10上には複数の有機EL素子60が形成されている。有機EL素子60は、陽極(画素電極)としての第1電極16と陰極(共通電極)としての第2電極18とにより、例えば白色の光を発生する有機発光層17を挟持した構成を有する。第1基板10上には、複数の有機EL素子60を覆うように薄膜封止層66が形成されている。
【0061】
有機EL素子60は、第1基板10上ではマトリクス状に規則的に配列され表示領域Adを構成している。表示領域Lの外側の領域は非表示領域である。なお、有機EL素子60は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3種類の有機材料を使い分けて3種類の有機EL素子、例えば赤色光を発生する有機EL素子、緑色光を発生する有機EL素子、青色光を発生する有機EL素子としても良い。
【0062】
第1基板10は、第1基材10Aを備えている。第1基材10Aは、ガラス基板やプラスチック基板等の絶縁性基板、或いは、ステンレス板やアルミ板等の導電性基板を用いることができる。第1基材10Aは厚みを薄くすることにより可撓性を付与されている。
【0063】
本実施形態では、低温ポリシリコン技術を用いて周辺駆動回路内蔵型の有機ELパネルを製造するので、第1基材10Aとして耐熱性の高いガラス基板を用いている。この場合、第1基材10Aの厚みは10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0064】
例えば、第1基材10Aの厚みが20μmよりも薄くなると、ディンプルやピットと呼ばれる欠陥が多くなり、発光欠陥が顕著になる。
【0065】
また、50μmよりも厚くなると、第1基材10Aに十分な可撓性を付与できなくなると共に、第1基材10A上に形成された種々の樹脂層、例えば有機EL素子60を覆う有機緩衝層68や、第2基板20との間に充填される第3封止樹脂層35等が、発光時の熱によって膨張し、有機EL素子60を駆動する画素スイッチング素子15を圧迫する惧れがある。
【0066】
50μmよりも薄いガラス基板を用いた場合には、画素スイッチング素子15に加わる圧力をガラス基板が撓むことで緩和することができるが、ガラス基板の可撓性が低くなると、このような効果が得られにくくなり、駆動素子が破壊されたり、駆動素子の電気的特性が劣化してしまう惧れがある。特に、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bで覆われた有機ELパネル2は発光時の熱がこもり易いので、通常の有機ELパネルに比べて、特別の配慮が必要となる。
【0067】
出願人は、このような第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bを用いた場合の特殊性に鑑み、ガラス基板の厚みと発光欠陥の発生数との関係を検討した。そして、ガラス基板の厚みが20μm以上50μm以下である場合に、特に良好な機械的強度と電気的特性が得られることが明らかになった。
【0068】
すなわち、ガラス基板の厚みが20μmよりも薄い場合には、ディンプル等の影響による発光欠陥が多くなり、50μmよりも厚くなると、TFT等の画素スイッチング素子15の破損や電気的特性の劣化が生じ、20μm以上50μm以下の厚みでは、発光欠陥が1個以下となり、殆ど欠陥のない優れた発光特性が得られた。また、上記の厚みにおいては、有機ELパネル2を一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bに挟み込む際の圧力によって殆ど割れが発生せず、高歩留まりな有機EL装置1が提供できた。
【0069】
以上のように、20μm以上50μm以下の厚みのガラス基板を用いることで、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bを用いた場合のように、発光時の熱の影響が顕著になる有機EL装置1においても良好な機械的強度と優れた電気的特性が得られるようになる。
【0070】
第1基材10A上には、無機絶縁層14と樹脂平坦化層63とからなる回路層64が形成されている。無機絶縁層14は、例えば酸化珪素(SiO2)や窒化珪素(SiN)等の珪素化合物により形成されている。無機絶縁層14上には、複数の有機EL素子60に1対1で対応する複数の薄膜トランジスタ(TFT)からなる画素スイッチング素子15と、有機EL素子60の第2電極18と接続される第2電極接続配線18Aとが形成されている。また、図1に示した走査線12、データ線12、走査線駆動回路13A,13Bや、第1電極16に電流を供給する電源線等もこの層に形成されている。
【0071】
無機絶縁層14上には、Al(アルミニウム)合金等からなる金属反射層62が内装された樹脂平坦化層63が形成されている。樹脂平坦化層63は、絶縁性の樹脂材料、例えば感光性のアクリル樹脂や環状オレフィン樹脂等により形成されている。
【0072】
樹脂平坦化層63上の金属反射層62と平面的に重なる領域には、有機EL素子60の第1電極16(画素電極)が形成されている。第1電極16は、正孔注入性の高いITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)等の金属酸化物により形成されている。第1電極16は、樹脂平坦化層63及び無機絶縁層14を貫通するコンタクトホール(図示略)を介して、第1基材10A上の画素スイッチング素子15に接続されている。
【0073】
樹脂平坦化層63上(回路層64上)には、有機EL素子60を区画するために、例えばアクリル樹脂等からなる絶縁性の隔壁層61が形成されている。隔壁層61は、第1電極16の上部を露出させる複数の開口部61Hを有している。
【0074】
開口部61Hと隔壁層61による凹凸形状に沿って、隔壁層61及び第1電極16の上面を覆うように有機発光層17が形成されている。
【0075】
有機発光層17は、電界により注入された正孔と電子との再結合により励起して発光する発光層を含むものである。有機発光層17は、発光層以外の層をも含む多層構造とすることも可能である。発光層以外の層としては、正孔を注入し易くするための正孔注入層、注入された正孔を発光層へ輸送し易くするための正孔輸送層、電子を注入し易くするための電子注入層、注入された電子を発光層へ輸送し易くするための電子輸送層等、上記の再結合に寄与する層が挙げられる。
【0076】
有機発光層17の発光層としては、低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料が挙げられる。
【0077】
低分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に低いものである。また、高分子系有機EL材料は、正孔と電子との再結合により励起して発光する有機化合物のうち、分子量が比較的に高いものである。
【0078】
これら低分子系有機EL材料あるいは高分子系有機EL材料は、有機EL素子60の発する色の光(白色光)に応じた物質となっている。発光層における再結合に寄与する層の材料は、この層に接する層の材料に応じた物質となっている。
【0079】
有機発光層17上には、有機発光層17をその凹凸形状に沿って覆うように、第2電極18が形成されている。第2電極18は、例えば有機発光層17へ電子を注入し易くするための電子注入バッファ層と、電子注入バッファ層上に形成された電気抵抗の小さい導電層とを有する。
【0080】
電子注入バッファ層は、例えば、LiF(フッ化リチウム)やCa(カルシウム)、MgAg(マグネシウム‐銀合金)により形成されている。また、導電層は、例えばITOやAl等の金属により形成された電気抵抗の小さい導電層である。導電層は表示領域Adの全面に形成されたものでなくても良く、例えば、MgとAgの合金からなる透明度の高い第1導電層を表示領域Adの全面に形成し、Al等からなる低抵抗で透明度の低い第2導電層を補助電極として隔壁層61と重なる部分にストライプ状に形成しても良い。
【0081】
第2電極18は、表示領域Adの周縁部(非表示領域)に形成されたAl等の無機導電膜からなる第2電極接続配線18Aと接続されている。第2電極接続配線18Aは、図示略の引き回し配線を介して端子部19B,19C(図1参照)と接続されている。第2電極接続配線18Aは、矩形に形成された表示領域Adの3辺(図1に示した端子部19Aが形成されていない辺)に沿って連続的に形成されている。
【0082】
第2電極17は、表示領域Adの全面を覆って、表示領域Adの周囲を囲む第2電極接続配線12に接続されている。また、第2電極17は、隔壁層61のうち、特に最外周を形成する部分、すなわち有機発光層17の最外周位置のものの外側部を覆った状態でこれを囲む部分(以下、囲み部材ともいう)の回路層64上で露出する部位全体を覆って形成されており、これにより、第2電極18が、前記囲み部材と共に、表示領域Adに設けられた複数の有機EL素子60の外側を封止している。特に、有機EL素子60は、無機絶縁層14上に形成され、第2電極18の外周部は無機絶縁層14と接触しているため、複数の有機EL素子60の底面、上面、側面の全てが無機膜で覆われることになり、高い封止性能が実現される。
【0083】
第2電極18上には、無機絶縁層14、樹脂平坦化層63及び有機EL素子60の第2電極18を覆う薄膜封止層66が形成されている。薄膜封止層66は、第2電極17の回路層64上で露出する部位全体を覆って無機絶縁層14と接する電極保護層67と、電極保護層67の少なくとも表示領域Adに形成された部分を覆う有機緩衝層(平坦化樹脂層)68と、有機緩衝層68の回路層64上で露出する部位全体を覆って、電極保護層67又は無機絶縁層14と接する無機ガスバリア層69とを備えている。
【0084】
電極保護層67は、無基材料、例えば、珪素酸窒化物(SiON)等の珪素化合物により構成されている。
【0085】
有機緩衝層68は、隔壁層61とその開口部61Hによる凹凸形状を埋めるように形成され、回路層64上の凹凸を平坦化している。また、無機ガスバリア層69に密着し、かつ機械的衝撃に対して緩衝機能を有する。有機緩衝層68を構成する材料としては、例えばエポキシ化合物等の透明性が高く、透湿性の低い樹脂を用いることができる。
【0086】
無機ガスバリア層69は、無基材料、特に、透光性、ガスバリア性、耐水性を考慮して、例えばSiON等により形成されている。
【0087】
薄膜封止層66は、第2電極17と共に、外部から有機EL素子へ水分や酸素が浸入しないようにするための封止部材として機能する。薄膜封止層66のうち無機ガスバリア層69は、有機緩衝層67によって平坦化された面に形成されており、電極保護層67に比べてステップカバレッジ性がよく、高い封止機能が得られる。特に、有機緩衝層68で機械的衝撃が緩和されるため、クラック等も生じにくく、長期にわたって優れた封止性能を維持することが可能である。
【0088】
また、無機ガスバリア層69は、直接又は無機膜である電極保護層67を介して無機絶縁層14と接しているため、無機ガスバリア層69と無機絶縁層14との界面から水分や酸素が浸入する惧れは少ない。そのため、同じく無機絶縁層14と接して形成される第2電極17と協働して極めて高い封止性能を実現することができる。
【0089】
第1基板10の薄膜封止層66が形成された面には、第2基板20が対向して配置されている。第2基板20は、接着層36を介して第1基板10上の薄膜封止層66と接着されている。
【0090】
第2基板20は、例えば透明ガラス基板または透明プラスチック基板等の光透過性を有する材料で構成された第2基材20Aを備えている。本実施形態では、第2基板20による封止性能を良好にするために、プラスチック基板に比べて透湿性の低いガラス基板を用い、これを薄くすることにより、可撓性を付与している。この場合、第2基材20Aの厚みは10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上40μm以下である。
【0091】
第2基材20Aの第1基板10と対向する面には、カラーフィルタ層21が形成されている。カラーフィルタ層21は、赤色サブ画素、緑色サブ画素、青色サブ画素にそれぞれ対応して、赤色着色層22R、緑色着色層22G、青色着色層22Bがマトリクス状に規則的に配列された構成を有する。また、カラーフィルタ層21は、各着色層22R,22G,22Bの周囲を囲む位置に、より具体的には隔壁層61に対応する領域にブラックマトリクス層(遮光層)23を備えている。ブラックマトリクス層23を構成する材料としては、例えばCr(クロム)等を用いることができる。
【0092】
着色層22R,22G,22Bは、第1電極16上に形成された白色の有機発光層17に対向して平面的に重なるように配置されている。これにより、複数の有機発光層17から発せられた光は、それぞれに対応する着色層22R,22G,22Bを透過し、赤色光、緑色光、青色光の各色光として観察者側に出射されるようになっている。
【0093】
また、カラーフィルタ層21は、着色層22R,22G,22B及びブラックマトリクス層23上を覆うオーバーコート層24と、オーバーコート層24上を覆う無機ガスバリア層25とを備えている。
【0094】
オーバーコート層24は、表示領域Adの内側から非表示領域の周辺のシール材30の形成領域近傍まで延設されている。オーバーコート層24は、例えばアクリルやポリイミド等の樹脂材料により形成されている。無機ガスバリア層25は、無基材料、例えば、珪素酸窒化物(SiON)等の珪素化合物により形成されている。
【0095】
接着層36は、第2基板20の外周に沿って枠状に形成されたシール材30と、シール材30の枠内の領域に隙間なく充填された第3封止樹脂層35とにより構成されている。
【0096】
第3封止樹脂層35は、第1基板10と第2基板20との間に設けられて薄膜封止層66の少なくとも表示領域Adに対応する部位を覆うものである。第3封止樹脂層35の材料としては、例えばウレタン系樹脂やアクリル系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した低弾性樹脂を用いることができる。
【0097】
シール材30は、第1基板10と第2基板20との間に、第3封止樹脂層35を囲むように非表示領域に設けられたものである。シール材30の材料としては、水分透過率が低い材料、例えばエポキシ系樹脂に硬化剤として酸無水物を添加し、促進剤としてシランカップリング剤を添加した高接着性の接着剤を用いることができる。
【0098】
第1基材10の外面には、放熱シート51と放熱板52とが第1基材10A側から順に密着して配置されている。また、放熱板52と第2基材20Aの外面には、それぞれ第2可撓性シート部材4Bと第1可撓性シート部材4Aとが密着している。
【0099】
図6〜図9は有機EL装置1の製造方法の説明図である。図6〜図9では、有機EL装置1の製造方法のうち、有機ELパネル2と配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5とを第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bで一体化する工程を中心に説明する。なお、以下の説明では、図1を参照しつつ説明を行う。
【0100】
まず、図6に示すように、ガラス基板を薄くして可撓性を付与した有機ELパネル2の端部に配線基板3A,3B,3Cを接続し、有機ELパネル2と配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5との積層体を第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとの間に配置する。薄型ガラス基板を用いた有機ELパネル2の作製方法は、特許文献1,2等に記載された公知の方法を用いることができる。
【0101】
次に、図7に示すように、前記積層体をY正方向側(有機ELパネル2の配線基板3A,3B,3Cが接続される側とは反対側の端部、及び、放熱部材5が第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの外側に露出する側とは反対側の端部)から一対の加圧ローラー81,82の間に挿入する。そして、第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとの互いに対向する面に接着剤層42A,42B、接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9C及び接着剤層5A,5Bを介在させ、配線基板3A,3B,3Cの一部(端子部19A,19B,19Cと接続された側とは反対側の端部)及び放熱部材5の一部(張出し部10cから外側に張り出した部分)を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの外部に露出させた状態で、一対の加圧ローラー81,82によって前記積層体を加熱しつつ加圧する。
【0102】
そして、接着剤層42A,42B及び接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9Cを第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと有機ELパネル2及び配線基板3A,3B,3Cとの間の隙間4H1(図4参照)に押し広げて隙間4H1を封止すると共に、有機ELパネル2の周縁部で第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとが対向する部分と、第1可撓性シート部材4Aと配線基板3A,3B,3Cとが対向する部分と、第2可撓性シート部材4Bと放熱部材5とが対向する部分と、配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5とが対向する部分と、を接着剤層42A,42B、接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9C、及び接着剤層5A,5Bを用いて接着し、有機ELパネル2を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの内部に封止する。
【0103】
また、この工程では、接着剤層42A,42B、接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9Cの一部を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの外部にはみ出させ、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの端面に、両者の境界部を封止する第2封止樹脂層44を形成する。
【0104】
図8は、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bを加圧ローラー81,82の搬送方向に沿って進行させ、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの配線基板3A,3B,3C側の端部まで接着した状態を示す図である。この状態において、有機ELパネル2の周縁部は、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと配線基板3A,3B,3Cと接着剤層42A,42B、接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9C及び接着剤層5A,5Bとにより、一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの内部に気密に封入される。また、接着剤層42A,42B及び接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9Cの一部が流動して第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと有機ELパネル2との間の隙間を埋めることにより、有機ELパネル2の周縁部が封止される。
【0105】
以上により、有機EL装置1が完成する。図7及び図8に示した封止工程が終了したら、図9に示すように、加圧ローラーを逆方向に回転し、搬入方向とは逆方向に有機EL装置1を取り出す。
【0106】
なお、上記の製造方法では、積層体を加圧する一対の加圧手段として、一対の加圧ローラー81,82を用いたが、加圧手段としてはこのようなものに限定されず、種々の加圧手段を用いることができる。例えば、平板状の加圧部材を前記積層体の両側に配置し、その間に前記積層体を挟んで加圧しても良い。また、加圧ローラー81,82で加熱しつつ加圧したのは、接着剤層42A,42B,8A,8B,8C,9A,9B,9C,5A,5Bとして熱可塑性又は熱硬化性の接着剤を用いたからであるが、接着剤層42A,42B,8A,8B,8C,9A,9B,9C,5A,5Bとして紫外線硬化型の接着剤層を用いた場合には、加熱処理は不要である。
【0107】
さらに、上記の製造方法では、予め接着剤層42A,42B,8A,8B,8C,9A,9B,9C,5A,5Bをフィルムシート41A,41B、配線基板3A,3B,3C、及び放熱部材5にそれぞれ形成してから加圧処理をしたが、フィルムシート41A,41Bの間に接着剤を塗布し若しくは滴下しつつ、フィルムシート41A,41Bの貼り合せを行っても良い。フィルムシート41Aと有機ELパネル2とを接着剤層42A,42Bを介さずに直接密着させることにより、明るい表示が可能となる。
【0108】
以上説明した本実施形態の有機EL装置1及びその製造方法によれば、放熱部材5と有機ELパネル2とを一対の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bで一体化し、且つ、放熱部材5の一部を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの外部に露出しているため、放熱性に優れた有機EL装置が提供できる。この有機EL装置1においては、放熱部材5として、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シート51を含むものを用いているため、有機ELパネル2に発生した熱は放熱シート51の面方向に伝達されて第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの外部に速やかに放出される。そのため、有機ELパネル2の内部が高温に加熱されることがなく、発光特性を概ね一定に維持することができる。
【0109】
また、放熱部材5として、放熱性に優れたグラファイトシートからなる放熱シート51と、安価で入手が容易な金属製の放熱板52とを用いているため、製造コストを抑えつつ、薄型で放熱効率の高い放熱部材5を提供することができる。また、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの外部に露出する部分が金属製の放熱板52であるため、破断や磨耗等に対する耐久性も向上することができる。
【0110】
また、本実施形態の有機EL装置では、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bは、放熱部材5及び配線基板3A,3B,3Cと接着されることにより有機ELパネル2を内部に気密に封入すると共に、有機ELパネル2の端面に形成された第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと有機ELパネル2との間の隙間4H1、放熱部材5の端面に形成された第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと放熱部材5との間の隙間4H1、及び、配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5の間に形成された隙間4H2に、それぞれ封止樹脂層43,45が形成され、前記隙間4H1,4H2が封止されている。そのため、有機ELパネル2の周囲を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと第1封止樹脂層43とにより2重に封止することができ、その結果、機械的強度が高く、封止性能にも優れた有機EL装置1が提供できる。
【0111】
すなわち、特許文献2の有機EL装置では、ラミネートフィルム(本実施形態の第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bに相当)と有機ELパネルとの隙間に空気層が存在するため(特許文献2の図7)、有機ELパネルの周囲は空気層を介してラミネートフィルムによって封止されることになる。この場合、ラミネートフィルムは外部の空気層から内部の有機ELパネルを保護することはできるが、既にラミネートフィルムと有機ELパネルとの隙間に形成された空気層から有機ELパネルを保護することはできない。したがって、ラミネートフィルムによる封止機能も限定的なものとなる。
【0112】
それに対して、本実施形態の有機EL装置1では、有機ELパネル2と第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bとの間には空気層が介在しないので、有機ELパネル2の周囲が第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと第1封止樹脂層43とにより2重に封止されることとなる。そのため、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bを封止部材として十分に機能させることができ、高い封止性能が実現されることとなる。
【0113】
また、本実施形態の有機EL装置1では、配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5と第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bとは互いに接着されているので、有機ELパネル2の周囲が隙間無く封止されることになり、配線基板3A,3B,3Cと第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bとの界面や、放熱部材と可撓性シート部材4A,4Bとの界面から水分や酸素が浸入することもない。
【0114】
すなわち、特許文献2の有機EL装置では、一対のラミネートフィルムの間に配線基板を介在させているが、ラミネートフィルムの内面に形成される熱可塑性の接着剤は、ポリイミド樹脂等で形成される配線基板との間では実質的な接着力を持たず、配線基板から容易に剥がれて配線基板との間に隙間を形成する。そのため、有機ELパネルを湾曲させたり、落下等の機械的衝撃を加えたりすると、配線基板とラミネートフィルムとの間に剥がれが生じ、その隙間から水分や酸素が侵入してしまう。
【0115】
それに対して、本実施形態の有機EL装置1では、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと配線基板3A,3B,3C及び放熱部材5とが互いに強固に接着されているので、有機Eパネル2を湾曲させたり、落下等の機械的衝撃を加えたりしても、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと配線基板3A,3B,3C及び放熱部材5との間に剥がれが生じることがなく、高い封止性能を維持することができる。
【0116】
また、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bが配線基板3A,3B,3Cと有機ELパネル2との接続部を覆って配線基板3A,3B,3Cと接着されているので、有機Eパネル2に落下等の機械的衝撃を加えても、配線基板3A,3B,3Cと有機ELパネル2との接続部に傷等が生じることがなく、また、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと配線基板3A,3B,3Cが固定されているので、配線基板3A,3B,3Cに引っ張り応力等が加わっても、配線基板3A,3B,3Cと有機ELパネル2との接続部に剥がれが生じることがない。
【0117】
すなわち、特許文献2の有機EL装置では、ラミネートフィルムと配線基板とが実質的に接着されない状態であるので、配線基板に引っ張り応力を加えると、その応力が直接配線基板と有機ELパネルとの接続部に加わり、剥がれ等の原因となる。それに対して、本実施形態の有機EL装置1では、そのような応力は第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bに吸収されるので、配線基板3A,3B,3Cと有機ELパネル2との接続部に強い応力が加わることはない。
【0118】
したがって、本実施形態の有機EL装置1によれば、機械的強度や封止性能に優れるだけでなく、配線基板3A,3B,3Cと有機ELパネル2との接続信頼性も向上した有機EL装置が提供できる。
【0119】
また、本実施形態の有機EL装置1では、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと放熱部材5とが固定されているので、放熱部材5に引っ張り応力等が加わっても、放熱部材5と有機ELパネル2との間に位置ずれや剥がれが生じることがない。そのため、安定した放熱性を維持することができる。
【0120】
さらに、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと放熱部材5との間に隙間(空気層)が形成されないので、放熱部材5から第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bへの熱の移動が促進され、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの表面からの放熱性も向上する。
【0121】
また、本実施形態の有機EL装置1では、透湿性の低いガラス基板を含む第2基板20で発光素子部65が形成された面を封止しているので、封止性能を更に高めることができると共に、第2基板20が有機EL素子60を保護するので、第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bで有機ELパネル2を挟み込むときに、有機EL素子60がダメージを受けにくくなる。そのため、有機EL素子60の発光特性を良好に維持することができ、また、製造歩留まりも向上することができる。
【0122】
さらに、本実施形態の有機EL装置1では、有機EL素子60を無機絶縁層14上に形成し、有機EL素子60を覆う薄膜封止層66の無機ガスバリア層69を直接又は無機膜である電極保護層67を介して無機絶縁層14と接触させているので、有機EL素子60の周囲を無機膜で包み込むことができ、更に封止性能が向上する。その上、本実施形態では、薄膜封止層66の表面を第3封止樹脂層35で覆い、且つ、第3封止樹脂層35の周囲を透湿性の低いシール材30でシールしているため、シール材30と隣接して設けられた第1封止樹脂層44とそれと隣接する接着剤層42A,42B及び第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bと共に、有機EL素子60の周囲を何重にも封止することができ、極めて封止性能の高い有機EL装置1が得られる。
【0123】
[変形例]
第1の実施形態では、ガラス基板を薄くして可撓性を付与した有機ELパネル2の端部に配線基板3A,3B,3Cを接続し、有機ELパネル2と配線基板3A,3B,3Cと放熱部材5との積層体を第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとの間に配置し、有機ELパネル2を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの内部に封止する構成とした。
【0124】
しかし、配線基板3A,3B,3Cをあらかじめ第1可撓性シート部材4Aの有機ELパネル2と接続される側の面に接続しておき、配線基板3A,3B,3Cが接続された第1可撓性シート部材4Aと第2可撓性シート部材4Bとの間に有機ELパネル2と放熱部材5を配置し、前記有機ELパネル2を配線基板3A,3B,3Cが接続される側とは反対側の端部から一対の加圧ローラー81,82の間に挿入し、有機ELパネル2を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bの内部に封止するようにしても良い。
【0125】
有機ELパネル2は非常に薄く、また可撓性を有しているために、ハンドリングが容易でない。このため、あらかじめ第1可撓性シート部材4Aに配線基板3A,3B,3Cを接続しておく本変形例では、有機ELパネル2に配線基板3A,3B,3Cを接続したのちに、配線基板3A,3B,3Cが接続された有機ELパネル2を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bで封止する場合に比べて有機ELパネル2をハンドリングする機会が少なくなり、製造が容易になる。
【0126】
また有機ELパネル2と配線基板3A,3B,3Cとの接続にACFを用いる場合においては、あらかじめ有機ELパネル2に配線基板3A,3B,3Cを接続しておく方法の場合、有機ELパネル2の第1基板10は非常に薄く形成されているために、第1基板10からはみ出したACFが、第1基板10の端面(側面)でとどまらず、有機ELパネル2を設置しているステージにまで広がってしまい、有機ELパネル2をステージから移動させる際に、ステージと第1基板10とに付着したACFによって第1基板10が割れてしまうことがある。
【0127】
これに対して、あらかじめ第1可撓性シート部材4Aに配線基板3A,3B,3Cを接続しておく本形態例においては、加圧ローラー81,82を用いて有機ELパネル2を第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bで封止するのと同時に、有機ELパネル2と配線基板3A,3B,3Cとを接続することになる。このため、有機ELパネル2と配線基板3A,3B,3Cを接続する際には、ステージに有機ELパネル2を設置する必要がなく、また、はみ出したACFは配線基板3A,3B,3Cと第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bとの接続領域内に収まるため第1基板10が割れる惧れをなくすことができる。
【0128】
なお、本形態例では、第1可撓性シート部材4Aにあらかじめ配線基板3A,3B,3Cを接続しておく例を説明したが、第1可撓性シート部材4Aにあらかじめ配線と外部端子をパターニングし、第1可撓性シート部材4Aを配線基板として利用しても良い。
【0129】
この構成によれば、配線基板3A,3B,3Cや、その表面に形成される接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9Cが不要になるので、部品点数を大幅に減らすことができる。また、配線基板3A,3B,3Cや接着剤層8A,8B,8C,9A,9B,9Cによる段差が生じないので、有機ELパネル2と第1可撓性シート部材4A,第2可撓性シート部材4Bとの隙間に空気層が混入しにくくなり、極めて高い封止性能が得られる。
【0130】
[第2の実施の形態]
図10は本発明の第2実施形態に係る有機EL装置110の分解斜視図である。本実施形態の有機EL装置110は、2枚の有機ELパネル201,202を用いて両面表示を可能としたものである。
【0131】
有機EL装置101は、第1有機ELパネル201と、第1有機ELパネル201の端部に接続された第1配線基板301(301A,301B,301C)と、第1有機ELパネル201の裏面(観察側とは反対側)に配置された放熱部材500(第1放熱シート511、放熱板520、第2放熱シート512)と、放熱部材500の第1有機ELパネル201とは反対側に配置された第2有機ELパネル202と、第2有機ELパネル202の端部に接続された第2配線基板302(302A,302B,302C)と、第1有機ELパネル201と第1配線基板301と放熱部材501と第2有機ELパネル202と第2配線基板302とを間に挟み込んで一体に保持する封止体400(第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400B)と、を備えている。
【0132】
本実施形態の有機EL装置110において第1実施形態の有機EL装置1と異なる点は、放熱部材500の両側に一対の有機ELパネル201,202を配置し、それらを挟み込むように一対の第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bを配置した点である。第1有機ELパネル201と第2有機ELパネル202の構成は、いずれも第1実施形態の有機ELパネル2と同じであり、第1配線基板301と第2配線基板302の構成は、いずれも第1実施形態の配線基板3と同じである。
【0133】
放熱部材500は、金属製の放熱板520と、その両面側に配置された一対の放熱シート511,512と、を備えている。放熱板520の構成は、第1実施形態の放熱板52と同じであり、放熱シート511,512の構成は、第1実施形態の放熱シート51と同じである。
【0134】
第1有機ELパネル201と第2有機ELパネル202は、互いに同じ構造及び同じ大きさで形成されており、Z方向から見たときに、第1有機ELパネル201と第2有機ELパネル202の互いに対応する構成部材同士は完全に重なるように配置されている。第1配線基板301A,301B,301Cと第2配線基板302A,302B,302Cもそれぞれ同じ構造及び同じ大きさで形成されており、Z方向から見たときに、第1配線基板301A,301B,301Cと第2配線基板302A,302B,302Cの互いに対応する構成部材同士は完全に重なるように配置されている。
【0135】
第1有機ELパネル201と第2有機ELパネル202は、互いに有機EL素子が形成された第1基板105,205同士を対向させて配置され、その間に放熱部材500が挟まれている。
【0136】
放熱部材500は、第1放熱シート511と放熱板520と第2放熱シート512の3層構造を有し、第1放熱シート511と第1有機ELパネル201とが密着され、第2放熱シート512と第2有機ELパネル202とが密着されている。
【0137】
第1放熱シート511は、少なくとも第1有機ELパネル201の表示領域Ad1と重なる位置に設けられており、望ましくは、走査線駆動回路131A,131B等の周辺駆動回路を含む位置に設けられている。同様に、第2放熱シート512は、少なくとも第2有機ELパネル202の表示領域Ad2と重なる位置に設けられており、望ましくは、走査線駆動回路132A,132B等の周辺駆動回路を含む位置に設けられている。このようにすることで、表示領域Ad1,Ad2や周辺駆動回路から発生した熱を効率よく外部に放出することができる。なお、本実施形態では、放熱シート511,512は、表示領域Ad1,Ad2と走査線駆動回路131A,131B,132A,132Bの形成領域とを覆い、各有機ELパネル201,202の第1基板105,205よりも広い面積で形成されている。
【0138】
放熱板520は、少なくとも表示領域Ad1,Ad2と重なる位置に設けられ、一部が第1基板105,205の張出し部105c,205cの外側に張り出している。放熱板520は、望ましくは、走査線駆動回路131A,131B,132A,132B等の周辺駆動回路を含む位置に設けられている。このようにすることで、表示領域Ad1,Ad2や周辺駆動回路から発生した熱を効率よく外部に放出することができる。なお、本実施形態では、表示領域Ad1,Ad2と走査線駆動回路131A,131B,132A,132Bの形成領域とを覆い、第1基板105,205よりも広い面積で形成されている。
【0139】
第1有機ELパネル201の外面側(第2基板106のZ正方向側)と第2有機ELパネル202の外面側(第2基板206のZ負方向側)、には、有機ELパネル2と密着してこれを内部に封入する可撓性の封止体400が設けられている。封止体400は、有機ELパネル201,202と配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと放熱部材500とを挟み込むように配置された一対の第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bを備えている。一対の第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bは、それぞれ透明な材料で構成されている。
【0140】
第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bは、一面側に接着剤層420A,420Bが形成された可撓性のフィルムシート410A,410Bによって構成されている。接着剤層420A,420Bを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂等の種々の材料を用いることができるが、本実施形態では、熱可塑性樹脂を用いることとする。
【0141】
第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bは、それぞれ有機ELパネル201,202よりも広い面積で形成されている。第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bは、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cの端子部191A,191B,191C,192A,192B,192Cと接続された側とは反対側の端部(半導体チップ601,602が実装された部分を含む)と、放熱部材500の張出し部105c,205cの外側に張り出した部分と、を外部に露出させた状態で、有機ELパネル201,202の外側となる周縁部で接着剤層420A,420Bによって互いに接着されている。
【0142】
また、有機ELパネル201,202の周縁部に位置する配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと放熱部材500との表裏両面には、それぞれ接着剤層500A,500B,801A,801B,801C,802A,802B,802C,901A,901B,901C,902A,902B,902Cが設けられている。
【0143】
そして、第1可撓性シート部材400Aと第1配線基板301A,301B,301Cと放熱板部材500との間では、配線基板301A,301B,301Cに設けられた接着剤層801A,801B,801Cと、第1可撓性シート部材400Aに設けられた接着剤層420Aと、を用いて、第1可撓性シート部材400Aと第1配線基板301A,301B,301Cとが互いに接着され、放熱部材500に設けられた接着剤層500Aと、第1可撓性シート部材400Aに設けられた接着剤層420Aと、を用いて、第1可撓性シート部材400Aと放熱部材500とが互いに接着され、第1配線基板301A,301B,301Cに設けられた接着剤層901A,901B,901Cと、放熱部材500に設けられた接着剤層500Aと、を用いて、第1配線基板301A,301B,301Cと放熱部材500とが互いに接着されている。
【0144】
また、第2可撓性シート部材400Bと第2配線基板302A,302B,302Cと放熱部材500との間では、第12配線基板302A,302B,302Cに設けられた接着剤層802A,802B,802Cと、第2可撓性シート部材400Bに設けられた接着剤層420Bと、を用いて、第2可撓性シート部材400Bと第2配線基板302A,302B,302Cとが互いに接着され、放熱部材500に設けられた接着剤層500Bと、第2可撓性シート部材400Bに設けられた接着剤層420Bと、を用いて、第2可撓性シート部材400Bと放熱部材500とが互いに接着され、第2配線基板302A,302B,302Cに設けられた接着剤層902A,902B,902Cと、放熱部材500に設けられた接着剤層500Bと、を用いて、第2配線基板302A,302B,302Cと放熱部材500とが互いに接着されている。
【0145】
接着剤層500A,500B,801A,801B,801C,802A,802B,802C,901A,901B,901C,902A,902B,902Cは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂等の種々の材料を用いることができるが、本実施形態では、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いることとする。
【0146】
そして、第1実施形態で説明したのと同様の原理で、第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの接着剤層420A,420Bや、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302C及び放熱部材500に設けられた各接着剤層500A,500B,801A,801B,801C,802A,802B,802C,901A,901B,901C,902A,902B,902Cが有機ELパネル201,201と第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bとの隙間、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bとの隙間、放熱部材500と第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bとの隙間、及び、放熱部材500と配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cとの隙間にそれぞれ入り込み、その隙間を封止する。そして、このような構成により、有機ELパネル201,202が一対の第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの内部、すなわち封止体400の内部に気密に封入されている。
【0147】
有機EL装置110の製造方法は、第1実施形態で説明した方法と同じである。すなわち、ガラス基板を薄くして可撓性を付与した第1有機ELパネル201と第2有機ELパネル202の端部に、それぞれ第1配線基板301A,301B,301Cと第2配線基板302A,302B,302Cを接続し、第1有機ELパネル201と配線基板301A,301B,301Cと放熱部材500と第2有機ELパネル202と配線基板302A,302B,302Cとの積層体を第1可撓性シート部材400Aと第2可撓性シート部材400Bとの間に配置する。
【0148】
次に、前記積層体をY正方向側(有機ELパネル201,202の配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cが接続される側とは反対側の端部、及び、放熱部材500が第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの外側に露出する側とは反対側の端部)から一対の加圧ローラーの間に挿入する。そして、第1可撓性シート部材400Aと第2可撓性シート部材400Bとの互いに対向する面に接着剤層420A,420B、接着剤層801A,801B,801C,802A,802B,802C,901A,901B,901C,902A,902B,902C及び接着剤層500A,500Bを介在させ、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cの一部(端子部191A,191B,191C,192A,192B,192Cと接続された側とは反対側の端部)及び放熱部材500の一部(張出し部105c,205cから外側に張り出した部分)を第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの外部に露出させた状態で、一対の加圧ローラーによって前記積層体を加熱しつつ加圧する。
【0149】
そして、接着剤層420A,420B及び接着剤層801A,801B,801C,802A,802B,802C,901A,901B,901C,902A,902B,902Cを第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bと有機ELパネル201,202及び配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cとの間の隙間に押し広げて該隙間を封止すると共に、有機ELパネル201,202の周縁部で第1可撓性シート部材400Aと第2可撓性シート部材400Bとが対向する部分と、第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bと配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cとが対向する部分と、第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bと放熱部材500とが対向する部分と、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと放熱部材500とが対向する部分と、を接着剤層420A,420B、接着剤層801A,801B,801C,802A,802B,802C,901A,901B,901C,902A,902B,902C、及び接着剤層500A,500Bを用いて接着し、有機ELパネル201,202を第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの内部に封止する。
【0150】
また、この工程では、接着剤層420A,420B、接着剤層801A,801B,801C,802A,802B,802C,901A,901B,901C,902A,902B,902Cの一部を第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの外部にはみ出させ、第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの端面に、両者の境界部を封止する第2封止樹脂層を形成する。
【0151】
この封止工程が終了したら、加圧ローラーを逆方向に回転し、搬入方向とは逆方向に有機EL装置110を取り出す。これにより有機EL装置110が完成する。
【0152】
以上説明した本実施形態の有機EL装置110及びその製造方法によれば、放熱部材500と有機ELパネル201,202とを一対の第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bで一体化し、且つ、放熱部材500の一部を第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの外部に露出しているため、放熱性に優れた有機EL装置が提供できる。この有機EL装置110においては、放熱部材500として、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シート511,512を含むものを用いているため、有機ELパネル201,202に発生した熱は放熱シート511,512の面方向に伝達されて第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの外部に速やかに放出される。そのため、有機ELパネル201,202の内部が高温に加熱されることがなく、発光特性を概ね一定に維持することができる。
【0153】
また、第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bは、放熱部材500及び配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと接着されることにより有機ELパネル201,202を内部に気密に封入すると共に、有機ELパネル201,202の端面に形成された第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bと有機ELパネル201,202との間の隙間、放熱部材500の端面に形成された第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bと放熱部材500との間の隙間、及び、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと放熱部材500の間に形成された隙間に、それぞれ封止樹脂層が形成され、前記隙間が封止されている。そのため、有機ELパネル201,202の周囲を第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bと該封止樹脂層とにより2重に封止することができ、その結果、機械的強度が高く、封止性能にも優れた有機EL装置が提供できる。
【0154】
また、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bとが固定されるため、配線基板301A,301B,301C,302A,302B,302Cと有機ELパネル201,202との接続部に剥がれが生じる惧れが少なく、また、放熱部材500と第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bとが固定されるため、放熱部材500と有機ELパネル201,202との間の位置ずれが生じにくく、安定した放熱性が得られる。
【0155】
なお、第2実施形態では、ガラス基板を薄くして可撓性を付与した第1有機ELパネル201,第2有機ELパネル202の端部に第1配線基板301(301A,301B,301C),第2配線基板302(302A,302B,302C)を接続し、第1有機ELパネル201,第2有機ELパネル202と第1配線基板301(301A,301B,301C),第2配線基板302(302A,302B,302C)と放熱部材501との積層体を第1可撓性シート部材400Aと第2可撓性シート部材400Bとの間に配置し、第1有機ELパネル201,第2有機ELパネル202を第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの内部に封止する構成とした。
【0156】
しかし、第1実施形態の変形例のように、第1配線基板301(301A,301B,301C)をあらかじめ第1可撓性シート部材400Aの第1有機ELパネル201と接続される側の面に接続しておき、第2配線基板302(302A,302B,302C)をあらかじめ第2可撓性シート部材400Bの第2有機ELパネル202と接続される側の面に接続しておき、第1配線基板301(301A,301B,301C)が接続された第1可撓性シート部材400Aと第2配線基板302(302A,302B,302Cが接続された第2可撓性シート部材400Bとの間に第1有機ELパネル201,第2有機ELパネル202を配置し、第1有機ELパネル201,第2有機ELパネル202を第1配線基板301(301A,301B,301C),第2配線基板302(302A,302B,302C)が接続される側とは反対側の端部から一対の加圧ローラーの間に挿入し、第1有機ELパネル201,第2有機ELパネル202を第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bの内部に封止するようにしても良い。
【0157】
また、第1実施形態の変形例のように、第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bにあらかじめ配線と外部端子をパターニングし、第1可撓性シート部材400A,第2可撓性シート部材400Bを配線基板として利用しても良い。
【0158】
[実施例]
次に、図11及び図12を用いて、本発明の効果を説明する。
【0159】
図11は、有機EL装置を発光させたときの、表示領域の温度の経時変化を示す図である。図11において、横軸は時間、縦軸は表示領域の全面(全画素)を発光させたときの表示領域の温度(可撓性シート部材の表面の温度)を示している。
【0160】
測定対象物である有機EL装置は、3行×3列の9つの画素を有する有機ELパネルを放熱部材と共に一対のラミネートフィルムで一体化したものを用いた。実験は室温環境下(23℃)で行い、非点灯の状態から始めて100分間連続して発光を行った。
【0161】
図11において、「片面:無」は、第1実施形態の片面発光型の構成において放熱シートを設けない場合(放熱板のみを設ける場合)を意味する(実施例1)。「片面:25μm」は、第1実施形態の片面発光型の構成において25μmの厚みのPGSグラファイトシート(商品名、パナソニック株式会社製)を放熱シートとして用いた場合を意味する(実施例2)。「片面:70μm」は、第1実施形態の片面発光型の構成において70μmの厚みのPGSグラファイトシート(商品名、パナソニック株式会社製)を放熱シートとして用いた場合を意味する(実施例3)。「両面:25μm片面点灯」は、第2実施形態の両面発光型の構成において25μmの厚みのPGSグラファイトシート(商品名、パナソニック株式会社製)を放熱シートとして用い、1枚の有機ELパネルのみを発光させた場合を意味する(実施例4)。「両面:25μm両面点灯」は、第2実施形態の両面発光型の構成において25μmの厚みのPGSグラファイトシート(商品名、パナソニック株式会社製)を放熱シートとして用い、2枚の有機ELパネルを発光させた場合を意味する(実施例5)。
【0162】
図11に示すように、実施例1〜5の有機ELパネルでは、長時間発光させても55℃程度までしか温度は上昇しない。放熱部材を設けない従来の有機EL装置では、長時間発光させると、表示領域の温度が100℃近くにまで達し、有機EL素子の発光特性に悪影響を及ぼす場合があったが、本実施例1〜5の有機EL装置では、それよりもはるかに低い温度に留めることができ、発光特性への影響も非常に小さいものとなった。
【0163】
特に、放熱シートを設けた実施例2〜5の有機EL装置では、表示領域の温度は40℃未満となっており、非常に低い温度に抑えることができた。この温度では、発光特性への影響は殆ど生じない。
【0164】
図12は、実施例1,2,4,5の有機EL装置における表示領域の温度分布を示す図である。図12(a)〜図12(d)は、それぞれ実施例1,2,4,5に対応する図である。図12(a)〜図12(d)において、上側は、放熱部材がラミネートフィルムから露出する部分である。
【0165】
図12に示すように、各実施例の有機EL装置の面内では、表示領域に設けられた9つの画素の温度は概ね均一である。中央部の画素が周辺部の画素よりも温度が非常に高くなる等の大きな温度分布は生じておらず、概ね均一な温度分布となっている。そのため、各画素の発光特性は概ね均一であり、発光特性への影響も均一となっている。
【0166】
特に、放熱シートを設けた実施例2,4,5の有機EL装置では、各画素で発生した熱は放熱シートを介して表示領域全面に分散されており、放熱シートを設けない実施例1の構成に比べて、個々の画素の温度も低下している。例えば、放熱シートを設けた実施例2の有機EL装置では、放熱シートを設けない実施例1の有機EL装置に比べて、一つ一つの画素の温度は20℃程度低くなっている。
【0167】
このように、本発明の有機EL装置によれば、放熱効果が高く、各画素の発光特性が均一な有機EL装置を提供することができる。
【0168】
図13は、有機EL装置1を備えた電子機器の一例であるブック型のディスプレイ1000の概略構成図である。図13(a)はディスプレイ1000の斜視図であり、図13(b)は電子ディスプレイのコネクター部の構成を示す概略断面図である。
【0169】
ディスプレイ1000は、有機EL装置1を電子ペーパーとして用いたブック型のディスプレイである。このディスプレイ1000には、本の綴じ代に相当する部分に、電子ペーパー1の配線基板3に接続可能なコネクター1002を備えたヒンジ部1001が設けられている。ヒンジ部1001には、コネクター1002が回転軸Axを中心に回転可能に取り付けられており、コネクター1002を回転させることにより、電子ペーパー1を通常の紙をめくるようにめくれるようになっている。
【0170】
ヒンジ部1001には複数の電子ペーパー1A,1Bが着脱可能に接続されていても良い。これにより、ルーズリーフのように必要な枚数だけ電子ペーパーを着脱して持ち運べるようになる。
【0171】
なお、本発明の有機EL装置は、上述したブック型のディスプレイに限らず、種々の電子機器に搭載することができる。この電子機器としては例えば、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のディジタルビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用ディスプレイ、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等があり、前記有機EL装置は、これらの表示手段として好適に用いることができる。さらに、本発明の有機EL装置は、表示デバイス以外のデバイス、例えば、プリンタヘッドの露光ヘッドの光源として用いることもできる。
【符号の説明】
【0172】
1…有機EL装置、2…有機ELパネル、4…封止体、4A,4B…可撓性シート部材、4H1…隙間、5…放熱部材、5A,5B…接着剤層、10…第1基板、10A…第1基材、41A,41B…フィルムシート、42A,42B…接着剤層、43…第1封止樹脂層、51…放熱シート、52…放熱板、60…有機EL素子、64…回路層、81,82…加圧ローラー(加圧手段)、1000…ブック型ディスプレイ(電子機器)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子が形成された有機ELパネルと、
前記有機ELパネルと直接又は接着剤層を介して密着した、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを含む放熱部材と、
前記有機ELパネルと前記放熱部材とを挟み込むように配置され、前記有機ELパネルと前記放熱部材とのそれぞれに直接又は接着剤層を介して密着しこれらを一体に保持する、少なくとも一方が透明な一対の可撓性のフィルムシートと、を有し、
前記一対のフィルムシートは、前記放熱部材の一部を外部に露出させた状態で前記有機ELパネルの周縁部で互いに接着されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記放熱部材は、前記有機ELパネルに対して直接又は接着剤層を介して密着するグラファイトシートからなる前記放熱シートと、前記放熱シートの前記有機ELパネルが密着する側とは反対側の面に直接又は接着剤層を介して密着する金属製の放熱板と、を有し、 前記放熱板の一部が前記一対のフィルムシートの外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記一対のフィルムシートは前記有機ELパネルを内部に気密に封入すると共に、
前記有機ELパネルの端面に形成された前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルとの間の隙間、及び、前記放熱部材の端面に形成された前記一対のフィルムシートと前記放熱部材との間の隙間に、それぞれ封止樹脂層が形成され、前記隙間が封止されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
前記有機ELパネルは、基材と、前記基材上に設けられた回路層と、前記回路層上に設けられた前記有機EL素子と、を有し、
前記基材はガラス基板で構成されており、前記基材の厚みが20μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項5】
有機EL素子が形成された有機ELパネルと、前記有機ELパネルと直接又は接着剤層を介して密着した、層厚方向よりも面内方向に高い熱伝導性を有する放熱シートを含む放熱部材と、を有する有機EL装置の製造方法であって、
少なくも一方が透明な一対のフィルムシートの間に前記有機ELパネルと前記放熱部材とを配置し、前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネルと前記放熱部材との積層体を一対の加圧手段の間に挿入する第1ステップと、
前記一対のフィルムシートの間に接着剤を介在させ、前記放熱部材の一部を前記一対のフィルムシートの間から外部に露出させた状態で、前記一対の加圧手段によって前記積層体を加圧し、前記一対のフィルムシートを前記有機ELパネルの周縁部で接着する第2ステップと、を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2ステップでは、前記一対の加圧手段によって前記積層体を加圧し、前記接着剤を前記一対のフィルムシートと前記有機ELパネル及び前記放熱部材との間の隙間に押し広げて前記隙間を封止すると共に、前記有機ELパネルの周縁部で前記一対のフィルムシート同士が対向する部分と、前記放熱部材と前記フィルムシートとが対向する部分と、を前記接着剤を用いて接着することにより、前記有機ELパネルを前記一対のフィルムシートの内部に封止することを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
前記一対の加圧手段は、一対の加圧ローラーであり、
前記第1ステップでは、前記積層体を、前記一対のフィルムシートの前記放熱部材が露出する側とは反対側の端部から前記一対の加圧ローラーに挿入することを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
前記接着剤は熱可塑性の接着剤であり、前記接着剤は、前記一対のフィルムシートの互いに対向する面と、前記放熱部材の前記フィルムシートと対向する面と、にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機EL装置を備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−21357(P2013−21357A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−211950(P2012−211950)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2009−77571(P2009−77571)の分割
【原出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】