有機EL装置、電子機器、有機EL装置の製造方法
【課題】高い発光輝度と色再現性が得られる有機EL装置、この有機EL装置を備えた電子機器、有機EL装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】本適用例の有機EL装置10は、素子基板1上に順に積層形成された反射層21と、透明な第1の電極としての画素電極23と、有機発光層を含む機能層24r,24g,24bと、透明な第2の電極としての陰極25と、光路長調整層27r,27g,27bと、半透過反射層28と、を備え、反射層21と半透過反射層28の間で光共振器を構成した。光路長調整層27r,27g,27bは、有機EL素子20の発光色に応じて適正な光路長となるように層厚を設定した。
【解決手段】本適用例の有機EL装置10は、素子基板1上に順に積層形成された反射層21と、透明な第1の電極としての画素電極23と、有機発光層を含む機能層24r,24g,24bと、透明な第2の電極としての陰極25と、光路長調整層27r,27g,27bと、半透過反射層28と、を備え、反射層21と半透過反射層28の間で光共振器を構成した。光路長調整層27r,27g,27bは、有機EL素子20の発光色に応じて適正な光路長となるように層厚を設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子としての有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を有する有機EL装置、電子機器、有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置として、第1透明電極、発光層および第2透明電極を有する有機発光素子と、有機発光素子を制御するスイッチング素子を有する駆動層とを備え、駆動層内の層間絶縁膜を介して反射膜を設け、反射膜が第1透明電極の外側にある有機発光表示装置が知られている(特許文献1)。
上記有機発光表示装置は、発光層からそのまま第2透明電極側に射出した発光と反射膜で反射した発光とが共振して輝度が上昇する、所謂光共振構造を有している。この光共振構造は、発光層における発光色すなわち光の波長に応じて、発光層と反射膜との間の距離が設定されている。これにより、発光色ごとの輝度を高めようとするものである。
【0003】
さらには、有機発光層を含む機能層を有する発光素子が複数形成された素子基板と、複数の発光素子に対応する色要素が形成された封止基板とが接着層を介して接合された有機EL発光装置が知られている(特許文献2)。
上記有機EL発光装置は、色要素として発光色に対応したカラーフィルタを備え、カラーフィルタによって発光色の色度補正を行い、より鮮やかな色表現を可能としたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2002−252087号公報
【特許文献2】特開2007−128741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の有機発光表示装置並びに有機EL発光装置では、第1透明電極上に発光層が積層形成されるため、発光層の膜厚がばらつくと、ねらいの光共振構造が得られないおそれがある。
また、カラーフィルタが形成された封止基板と、機能層が形成された素子基板と接合させる場合、発光領域とカラーフィルタの着色領域とが平面的に位置精度よく合致していないと、光漏れが発生して適正に色度補正がなされないというおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の有機EL装置は、トップエミッション型の有機EL装置であって、基板上に順に積層形成された反射層と、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、半透過反射層と、を備え、前記反射層と前記半透過反射層の間で光共振器が構成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1の電極と機能層と第2の電極とにより有機EL素子が構成され、当該有機EL素子上に、光共振器を構成する光路長調整層と半透過反射層とが積層されている。したがって、有機EL素子の発光状態に応じて光路長調整層の層厚を調整すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するトップエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例の有機EL装置において、前記半透過反射層上に発光色に対応した少なくとも1色のフィルタエレメントが形成されていることが好ましい。
この構成によれば、光共振器上に積層された少なくとも1色のフィルタエレメントを備えることにより、発光色の色度が補正され、優れた色度バランスと高い発光輝度とを有するトップエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の有機EL装置において、前記半透過反射層と前記少なくとも1色のフィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、ガスバリア性を有する保護膜を設けることにより、フィルタエレメントから放出される水蒸気などのガス成分が半透過反射層を通じて有機EL素子に到達することを防ぐことができる。すなわち、フィルタエレメントから放出されるガス成分により、有機EL素子が失活することを防ぎ、長い発光寿命が得られる有機EL装置を提供することができる。
【0011】
[適用例4]本適用例の他の有機EL装置は、ボトムエミッション型の有機EL装置であって、透明な基板上に順に積層形成された半透過反射層、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、反射層と、を備え、前記半透過反射層と前記反射層との間で光共振器が構成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1の電極と機能層と第2の電極とにより有機EL素子が構成され、当該有機EL素子上に、光共振器を構成する光路長調整層と反射層とが積層されている。したがって、有機EL素子の発光状態に応じて光路長調整層の層厚を調整すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の有機EL装置において、前記基板上の複数の画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層が形成され、前記発光色に対応して前記光路長調整層の層厚が設定されていることが好ましい。
この構成によれば、発光色ごとに好ましい光共振状態が得られる。すなわち、高い発光輝度を有し、フルカラーの発光が可能なトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の有機EL装置において、前記光路長調整層は、光透過性の超微粒子または前記超微粒子を含む光透過性の高分子膜からなることを特徴とする。
この構成によれば、超微粒子を介して発光が伝達され、光路長調整層における発光の漏れなどの輝度損失を低減することができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の有機EL装置において、前記光路長調整層における光の散乱状態がレイリー散乱となるように、前記超微粒子の粒径が選定されていることが好ましい。
この構成によれば、光路長調整層における光の散乱状態がレイリー散乱となるので、可視光の散乱が抑制され、より高い透明性を有する光路長調整層とすることができる。すなわち、光路長調整層において発光が減衰し難く、より高い輝度の発光を得ることができる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の有機EL装置において、前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、光路長調整層から放出される水蒸気などのガス成分により、有機EL素子が失活することを低減し、長い発光寿命を有する有機EL素子を備えたトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0017】
[適用例9]上記適用例の有機EL装置において、前記複数の画素領域を区画する隔壁部を備え、前記第2の電極は、前記隔壁部と前記複数の画素領域とを覆うように形成され、前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、発光を阻害しない隔壁部上に補助電極が設けられ、第2の電極の面抵抗ばらつきを低減することができる。したがって、発光時に機能層を介して第1の電極と第2の電極との間を流れる電流が複数の有機EL素子間においてばらつくことを低減することができる。すなわち、複数の有機EL素子間においてより均一な発光輝度が得られるトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0018】
[適用例10]本適用例の電子機器は、上記適用例の有機EL装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、高い発光輝度を有するトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を備え、優れた視認性を有する電子機器を提供することができる。
【0019】
[適用例11]本適用例の有機EL装置の製造方法は、トップエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、基板上の画素領域に反射層を形成する反射層形成工程と、前記反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、前記光路長調整層上に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程とを備え、前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、第1電極形成工程と機能層形成工程と第2電極形成工程とにより有機EL素子が形成される。そして、光路長調整層形成工程では、当該有機EL素子上に、半透過反射層と反射層との間で光共振器を構成する光路長調整層が形成される。したがって、有機EL素子の発光状態を考慮して光路長調整層の層厚を設定すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するトップエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0021】
[適用例12]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記基板上の複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、フィルタエレメント形成材料を含む少なくとも1色の液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して、少なくとも1色のフィルタエレメントを前記半透過反射層上に形成する成膜工程とを備えたことを特徴とする。
この方法によれば、吐出工程と成膜工程とにより、少なくとも1色のフィルタエレメントを光共振器上に積層形成することができる。したがって、有機EL素子からの発光が漏れなくフィルタエレメントを通過し、発光色の色度をフィルタエレメントにより補正して、優れた色度バランスと高い発光輝度とを有するトップエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0022】
[適用例13]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記半透過反射層と前記フィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えることが好ましい。
この方法によれば、ガスバリア性を有する保護膜を形成することにより、フィルタエレメントから放出される水蒸気などのガス成分が半透過反射層を通じて有機EL素子に到達することを防ぐことができる。すなわち、フィルタエレメントから放出されるガス成分により、有機EL素子が失活することを防ぎ、長い発光寿命が得られるトップエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0023】
[適用例14]本適用例の他の有機EL装置の製造方法は、ボトムエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、基板上の画素領域に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程と、前記半透過反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、前記光路長調整層上に反射層を形成する反射層形成工程とを備え、前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、第1電極形成工程と機能層形成工程と第2電極形成工程とにより有機EL素子が形成される。そして、光路長調整層形成工程では、当該有機EL素子上に、半透過反射層と反射層との間で光共振器を構成する光路長調整層が形成される。したがって、有機EL素子の発光状態を考慮して光路長調整層の層厚を設定すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0025】
[適用例15]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記機能層形成工程は、前記基板上の複数の前記画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層を形成し、前記光路長調整層形成工程は、前記機能層における発光波長に応じて、前記光路長調整層の層厚を設定することが好ましい。
この方法によれば、機能層における発光波長に応じて、光路長調整層の層厚を設定するので、発光色ごとに好ましい共振状態が得られる。すなわち、高い発光輝度を有し、フルカラーの発光が可能なトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0026】
[適用例16]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、前記機能層形成工程は、有機発光層形成材料を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記有機発光層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする。
この方法によれば、吐出工程において有機発光層形成材料を含む液状体を吐出することにより、画素領域ごとに材料の無駄を省いて効率よく有機発光層を形成することができる。
【0027】
[適用例17]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、前記光路長調整層形成工程は、光透過性の超微粒子を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記光路長調整層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする。
この方法によれば、吐出工程において光透過性の超微粒子を含む液状体を吐出することにより、画素領域ごとに材料の無駄を省いて効率よく光路長調整層を形成することができる。また、液状体の吐出量を調整すれば、光路長調整層の層厚を容易に可変することができる。すなわち、超微粒子からなり発光の損失が低減された光路長調整層を所望の層厚で形成することができる。
【0028】
[適用例18]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えることが好ましい。
この方法によれば、湿式法を用いて光路長調整層を形成しても、第2の電極が保護膜で保護されるので、光路長調整層から放出される水蒸気などのガス成分により、有機EL素子が失活することを低減し、長い発光寿命を有する有機EL素子を備えたトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0029】
[適用例19]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記第2電極形成工程は、前記隔壁部と前記複数の前記画素領域とを覆うように前記第2の電極を形成し、前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極を形成する補助電極形成工程を備えることが好ましい。
この方法によれば、補助電極形成工程では、発光を阻害しない隔壁部上に補助電極を形成し、第2の電極の面抵抗ばらつきを低減することができる。したがって、発光時に機能層を介して第1の電極と第2の電極との間を流れる電流が複数の有機EL素子間においてばらつくことを低減することができる。すなわち、複数の有機EL素子間においてより均一な発光輝度が得られるトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0031】
(実施形態1)
<トップエミッション型の有機EL装置>
本実施形態は、発光素子としての有機EL素子を備えた有機EL装置を例に図1〜図3を参照して説明する。
図1は有機EL装置を示す概略正面図、図2は有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図、図3は有機EL装置の構造を示す概略断面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置10は、R(赤)、G(緑)、B(青)、3色の発光画素7を備えた素子基板1と、素子基板1に所定の間隔を置いて対向配置された封止基板2とを備えている。封止基板2は、複数の発光画素7が設けられた発光領域6を額縁状に封着するように、高い気密性を有する封着剤を用いて素子基板1に接合されている。
【0033】
発光画素7は、発光素子としての有機EL素子を備えるものであって、同色の発光が得られる発光画素7が、縦方向(Y軸方向)に配列した所謂ストライプ方式となっている。なお、実際には、発光画素7は微細なものであり、図示の都合上拡大して現している。
【0034】
素子基板1は、封止基板2よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、発光画素7を駆動する2つの走査線駆動回路部3と1つのデータ線駆動回路部4が設けられている。走査線駆動回路部3、データ線駆動回路部4は、例えば、電気回路が集積されたICとして素子基板1に実装してもよいし、当該駆動回路部3,4を素子基板1の表面に直接形成してもよい。
【0035】
素子基板1の端子部1aには、これらの駆動回路部3,4と外部駆動回路とを接続するための中継基板5が実装されている。中継基板5は、例えば、フレキシブル回路基板などを用いることができる。
【0036】
次に、本実施形態の有機EL装置10の電気的な構成について説明する。図2に示すように、有機EL装置10は、発光画素7を駆動するスイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。
【0037】
有機EL装置10は、走査線駆動回路部3に接続されX軸方向に延在する複数の走査線31と、データ線駆動回路部4に接続されY軸方向に延在する複数の信号線41と、各信号線41に並列して延在する複数の電源線42と、を備えている。マトリクス状に直交する走査線31と信号線41とによって区画された領域内に発光画素7が設けられている。
【0038】
それぞれの発光画素7は、走査線31を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT11と、このTFT11を介して信号線41から供給される画素信号を保持する保持容量13と、該保持容量13によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT12と、この駆動用TFT12を介して電源線42に電気的に接続したときに該電源線42から駆動電流が流れ込む第1の電極としての画素電極23と、この画素電極23と第2の電極としての陰極25との間に挟み込まれた機能層24とを有している。
【0039】
走査線31が駆動されてスイッチング用のTFT11がオン状態になると、そのときの信号線41の電位が保持容量13に保持され、該保持容量13の状態に応じて、駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12を介して、電源線42から画素電極23に電流が流れ、さらに機能層24を介して陰極25に電流が流れる。機能層24は、これを流れる電流量に応じて発光する。すなわち、画素電極23と陰極25と機能層24とにより、発光素子としての有機EL素子20が構成されている。
【0040】
次に、有機EL装置10の詳しい構造について、図3を参照して説明する。なお、図3においては、素子基板1に形成された各TFT11,12および保持容量13を含む回路部1bの詳細は、図示省略した。
【0041】
図3に示すように、素子基板1は、複数の画素領域Eを有している。各画素領域Eには、反射層21、絶縁膜22、画素電極23、機能層24、陰極25、保護膜26、光路長調整層27、半透過反射層28、保護膜29が順に積層されている。前述したように画素電極23と、機能層24と、陰極25とにより有機EL素子20を構成するものである。有機EL素子20から射出して半透過反射層28を透過する発光と、有機EL素子20から射出して半透過反射層28と反射層21とで反射して再び半透過反射層28を透過する発光とが共振するように、発光色に応じた層厚を有する光路長調整層27r,27g,27bが有機EL素子20上に設けられている。すなわち、有機EL装置10は、反射層21と半透過反射層28との間で光共振器が構成され、封止基板2側から発光が射出するトップエミッション型の有機EL装置である。
【0042】
素子基板1は、例えばガラス基板などの透明な基板、あるいは例えばシリコン基板などの不透明な基板の両方を用いることができる。
【0043】
素子基板1上に設けられた反射層21は、光共振器を構成するものであって、高い光反射率が得られる材料で構成することが好ましい。例えば、アルミ(Al)や、アルミの化合物であるAlNdなどが挙げられる。厚みは、およそ50nm〜100nmである。
また、反射層21の表面(反射面)は、反射光の散乱を防ぐためほぼ平坦となることが望ましい。それゆえに、素子基板1の表面に形成された回路部1bにおける凹凸を緩和する絶縁性を有する平坦化層を設け、該平坦化層上に反射層21を形成することが好ましい。
【0044】
反射層21を覆うように積層された絶縁膜22は、高い光透過率が得られる材料で構成されることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、あるいはこれらの混合物が挙げられる。厚みはおよそ10nmである。
【0045】
反射層21上に絶縁膜22を介して積層された画素電極23は、透明な導電膜からなるものであって、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜が挙げられる。厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0046】
本実施形態では、反射層21と画素電極23との間に絶縁膜22を設けたが、これは、画素電極23のパターニングに際して、下層に位置する反射層21がエッチングされないように絶縁膜22で保護する役割を担うものである。したがって、反射層21や画素電極23の材料の選択やパターニング方法によっては、絶縁膜22を設けなくてもよい。すなわち、反射層21を構成する薄膜に画素電極23を構成する薄膜を積層してからパターニングを行う手法を用いて、素子基板1上に平面的にほぼ同一形状の反射層21と画素電極23とを形成してもよい。
【0047】
画素電極23を有する画素領域Eは、画素電極23の周縁部を覆うように設けられた第1隔壁部51と、第1隔壁部51上に設けられた第2隔壁部52と、さらに第2隔壁部52上に設けられた第3隔壁部54とにより区画されている。
【0048】
第1隔壁部51は、絶縁性の無機材料からなるものであって、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、あるいはこれらの混合物が挙げられる。厚みはおよそ5nm〜10nmである。画素電極23の周縁部を覆うように第1隔壁部51を設けることにより、後に積層される陰極25と画素電極23との第2隔壁部52際における短絡を防止するものである。
【0049】
第2隔壁部52は、絶縁性の有機化合物からなるものであって、例えば、ポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂を用いることができる。厚みはおよそ1μm〜1.5μmである。
【0050】
画素電極23上に積層された機能層24は、有機発光層を含む複数種の有機層からなる。本実施形態では、有機発光層における発光色に応じて、画素領域Eに塗り分け形成される。機能層24rは赤色(R)の発光色が得られ、機能層24gは緑色(G)の発光色が得られ、機能層24bは青色(B)の発光色が得られる。これらを総称して機能層24と呼ぶ。
【0051】
機能層24の具体的な例としては、正孔注入輸送層、有機発光層、電子注入輸送層が積層されたものが挙げられる。厚みはおよそ100nmである。
【0052】
正孔注入輸送層の形成材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体等を用いることができる。この場合、有機発光層に対して画素電極23側から注入される正孔(ホール)の注入量と、陰極25側から注入される電子の注入量とのキャリアバランスを考慮すると、仕事関数の関係からポリチオフェン誘導体を用いることが好ましい。
【0053】
有機発光層の形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。塗布型の発光材料としては高分子有機材料が好適であり、例えば、ペニレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などが挙げられる。また、これらの高分子有機材料に、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドンなどの低分子有機材料をドープしてもよい。
【0054】
燐光であれば、例えば、燐光用ホスト材料として、4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル(CBP)誘導体を用い、これに赤色燐光材料である白金ポルフィリン錯体(PtOEP)誘導体、緑色燐光材料であるイリジウム錯体のIr(ppy)3誘導体、青色燐光材料であるイリジウム錯体のFIrpic誘導体を発光色に応じて添加し、シクロヘキシルベンゼン、ジハライドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の有機溶媒、あるいはこれらの有機溶媒の混合溶媒に溶解させた溶液を用いることができる。特に、イリジウム錯体に対して優れた溶解性を示すジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの塩素系有機溶媒が好ましい。
【0055】
電子注入輸送層の形成材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フェナンソロリン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ヒドロキシキノリン誘導体などが挙げられ、これらの形成材料を用いた成膜方法としては、真空蒸着法が好ましい。
【0056】
陰極25は、透明な導電膜からなり、機能層24と第2隔壁部52とを覆うように設けられている。陰極25の形成材料としては、ITO、IZO、SnO2、In2O3、ZnO:Alまたはこれらの酸化物の複合体を用いることができる。厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0057】
本実施形態では、第2隔壁部52を覆う陰極25上に補助電極53が設けられている。その目的は、陰極25の抵抗のばらつきを抑制して、有機EL素子20に流れる電流量を安定化させようとするものである。したがって、補助電極53を設ける位置としては、発光を阻害しない第2隔壁部52上が好ましく、且つ平面的には画素領域E(すなわち発光画素7)を取り囲んで格子状に設けることが望ましい。補助電極53の形成材料としては、陰極25よりも面抵抗が小さい、Alなどの金属材料が挙げられる。
【0058】
陰極25を覆うように保護膜26が設けられている。保護膜26は、有機EL素子20に発光を阻害する水蒸気などのガスが侵入することを防ぐものである。したがって、高いガスバリア性(気体非透過性)と光透明性とを兼ね備える材料で形成されることが好ましい。形成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの材料の混合物が挙げられる。厚みはおよそ5nm〜50nmである。
【0059】
画素領域Eには、光共振器において発光色ごとに所定の光路長を付与するため、光路長調整層27r,27g,27bが層厚を異ならせて設けられている。詳しくは、後述する。
【0060】
第3隔壁部54は、保護膜26で覆われた第2隔壁部52上に設けられている。その目的は、層厚が異なる光路長調整層27r,27g,27bを塗り分け形成するにあたり、画素領域E内に吐出された液状体を保持する役目を果たす。第3隔壁部54の形成材料は、第2隔壁部52と同様に、ポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂を用いることができる。厚みはおよそ1μm〜1.5μmである。
【0061】
光路長調整層27r,27g,27bと第3隔壁部54とを覆うように半透過反射層28が設けられている。半透過反射層28は、光共振器を構成するものであり、光透過性と光反射性とを兼ね備える必要がある。有機EL素子20における発光を効率よく取り出すため、透過率は50%以上とする。半透過反射層28の形成材料としては、Ca−Ag、Mg−Agの合金を用いることができる。例えば、Mg−Agの合金では、光の消衰係数を考慮すると、透過率を50%以上とするためには、厚みが20nm以下となり、10nm〜20nmが好ましい。
【0062】
半透過反射層28を覆うように保護膜29が設けられている。その目的は、保護膜26と同様に、有機EL素子20に発光を阻害する水蒸気などのガスの侵入を防ぎ、且つ取り扱いなどにより半透過反射層28にキズなどの欠損が生ずることを防止するものである。形成材料は、ガスバリア性と光透明性とを兼ね備えた酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの材料の混合物が挙げられる。厚みはおよそ5nm〜50nmである。
【0063】
赤(R)、緑(G)、青(B)、3色の発光が得られる複数の有機EL素子20を備えた素子基板1は、空間70を介して封止基板2と接合される。
【0064】
封止基板2は、透明な基板であって、例えば、ガラス基板を用いることができる。前述したように、封止基板2は、発光領域6(図1参照)を囲む領域において封着剤により素子基板1と接合され、空間70に水蒸気等のガスが侵入しないように封着される。これにより、有機EL素子20を保護する保護膜26,29と相まって、より長い発光寿命を確保し、高い信頼性を有する有機EL装置10を実現している。
【0065】
本実施形態では、素子基板1と封止基板2とを所定の間隔で対向させることにより空間70を設けたが、これに限定されず、空間70を透明な封着剤により充填した構造としてもよい。
また、空間70の間隔を保つために、素子基板1と封止基板2との間にスペーサ(貝柱やギャップ材)を配置してもよい。スペーサを配置する場所は、第3隔壁部54上が好ましい。スペーサを設けることにより、封止基板2を外側から押圧しても、封止基板2がたわみ難く、封止基板2によって有機EL素子20が損傷することを防ぐことができる。
【0066】
次に、光共振構造について説明する。発光色ごとに所望のピーク波長λの発光を取り出そうとする場合、反射層21と半透過反射層28との光学的距離Lと、光が反射層21および半透過反射層28で反射する際に生じる位相シフトΦ(ラジアン)との関係が以下の数式(1)で導かれることが知られている(国際公開;WO01/039554号公報)。
(2L)/λ+Φ/2π=m(mは整数)・・・・(1)
【0067】
そこで、本実施形態では、赤色(R)の波長域を600nm〜750nmとし、緑色(G)の波長域を500nm〜600nmとし、青色(B)の波長域を400nm〜500nmとして、この間にピーク波長λが得られるように、発光色ごとの光学的距離Lを設定した。
【0068】
光学的距離Lは、反射層21と半透過反射層28との間に存在する各層の光学的な距離の和により求められる。本実施形態では、絶縁膜22、画素電極23、機能層24、陰極25、保護膜26、それぞれの層厚をほぼ一定としているため、発光色ごとの光学的距離Lは、光路長調整層27r,27g,27bの光学的な距離によって決まる。
【0069】
光路長調整層27r,27g,27bの光学的な距離は、層厚と屈折率とにより決まる。
本実施形態の光路長調整層27r,27g,27bは、光透過性を有する超微粒子からなることを特徴としている。適度な屈折率と粒径を有する超微粒子を選定して、層厚を異ならせることにより、発光色ごとに好適な光学的距離Lを実現して、光共振状態を最適化した。
【0070】
具体的には、超微粒子として粒子径が10nm〜30nm(数平均粒径22nm)のアンチモンドープ酸化スズ(ATO)を用いた。アンチモンドープ酸化スズの屈折率nは、およそ1.65である。そして、赤色の発光色に対応する光路長調整層27rの層厚を150nmとし、緑色の発光色に対応する光路長調整層27gの層厚を90nmとし、青色の発光色に対応する光路長調整層27bの層厚を60nmとした。
【0071】
超微粒子を用いて光路長調整層27r,27g,27bを形成する方法としては、液滴吐出法(インクジェット法)を用いている。詳しくは、有機EL装置10の製造方法において述べる。
【0072】
超微粒子を用いる場合、粒子径のサイズ効果による光の散乱を考慮する必要がある。超微粒子を球形として定義したとき、散乱係数の波長λと散乱粒子の粒子直径Dの大きさに関わるサイズパラメータをαとすると、以下の数式(2)が成り立つことが知られている。
α=πD/λ・・・・(2)
【0073】
α<0.4がレイリー散乱の領域とされ、0.4<α<3がミー散乱の領域とされ、3<αが回折散乱の領域とされている。ミー散乱の領域では、可視光の散乱が起こるのでレイリー散乱の領域にあることが好ましい。レイリー散乱の領域とすることで可視光の散乱が抑制され、光路長調整層27r,27g,27bの透明性が増すことになる。
【0074】
具体的には、数式(2)においてαを0.4とするとD=0.4λ/π≒0.127λとなるため、最も波長が短い青色の発光を基準とすれば、λ=400nmとしたときには、粒子直径Dはおよそ50nmとなる。すなわち、超微粒子の粒径を50nm以下とすることが好ましい。
【0075】
発光色ごとに超微粒子の粒径を変えても構わないとすれば、光路長調整層27rは、赤色の波長域の下限値を基準とすると、λ=600nmのとき、粒径は76nm以下とすることが好ましい。同様に、光路長調整層27gは、緑色の波長域の下限値を基準とすると、λ=500nmのとき、粒径は63nm以下とすることが好ましい。
【0076】
<有機EL装置の製造方法>
次に、有機EL装置10の製造方法について、図4〜図8を参照して説明する。図4は有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図5〜図8における(a)〜(q)は有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0077】
図4に示すように、本実施形態の有機EL装置10の製造方法は、素子基板1に反射層21を形成する反射層形成工程(ステップS1)と、反射層21を覆う絶縁膜22を形成する絶縁膜形成工程(ステップS2)と、画素電極23を形成する画素電極形成工程(ステップS3)とを備えている。また、第1隔壁部51を形成する第1隔壁部形成工程(ステップS4)と、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する第2隔壁部形成工程(ステップS5)と、画素電極23上に機能層24を形成する機能層形成工程(ステップS6)とを備えている。そして、機能層24と第2隔壁部52とを覆う陰極25を形成する陰極形成工程(ステップS7)と、陰極25の補助電極53を形成する補助電極形成工程(ステップS8)と、陰極25を覆う保護膜26を形成する第1保護膜形成工程(ステップS9)とを備えている。さらに、第3隔壁部54を形成する第3隔壁部形成工程(ステップS10)と、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに光路長調整層27r,27g,27bを形成する光路長調整層形成工程(ステップS11)と、光路長調整層27r,27g,27bを覆う半透過反射層28を形成する半透過反射層形成工程(ステップS12)と、半透過反射層28を覆う保護膜29を形成する第2保護膜形成工程(ステップS13)と、有機EL素子20が形成された素子基板1と封止基板2とを接合して封着する封止工程(ステップS14)とを備えている。
【0078】
なお、素子基板1上に有機EL素子20を駆動するための回路部1bを形成する工程の説明は省略するが、薄膜トランジスタや保持容量並びにこれらの素子を繋ぐ配線等の形成方法は公知の形成方法を用いることができる。
【0079】
図4のステップS1は、反射層形成工程である。ステップS1では、図5(a)に示すように、素子基板1の回路部1b上に発光画素7(図1参照)に対応した反射層21を形成する。形成方法としては、アルミ(Al)をターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ50nm〜100nmのアルミ薄膜を形成する。フォトリソグラフィ法により該アルミ薄膜を所定の形状にパターニングすることにより、反射層21を形成する。形成材料は前述したようにアルミに限定されず、AlNdでもよい。反射層21の形成方法は、スパッタ法に限定されず、マスク蒸着法を用いて選択的に形成する方法も採用することができる。そして、ステップS2へ進む。
【0080】
図4のステップS2は、絶縁膜形成工程である。ステップS2では、図5(b)に示すように、反射層21を覆う絶縁膜22を形成する。形成方法としては、酸化シリコンをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ5nm〜50nmの酸化シリコン薄膜を各反射層21を覆うように形成する。フォトリソグラフィ法により該酸化シリコン薄膜を所定の形状にパターニングすることにより、絶縁膜22を形成する。形成材料は前述したように酸化シリコンに限定されず、窒化シリコンまたはこれらの化合物でもよい。そして、ステップS3へ進む。
【0081】
図4のステップS3は、画素電極形成工程である。ステップS3では、図5(c)に示すように、反射層21上に画素電極23を形成する。形成方法としては、ITOをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ10nm〜20nmの透明導電膜を形成する。フォトリソグラフィ法により該透明導電膜を所定の形状にパターニングすることにより、画素電極23を形成する。形成材料は前述したようにITOに限定されず、IZOでもよい。反射層21は絶縁膜22により覆われているので、透明導電膜をパターニングする際に、反射層21がエッチングされることはない。また、絶縁膜22を介することにより画素電極23の密着性も確保できる。透明導電膜の形成方法は、スパッタ法に限定されず、真空蒸着法、CVD法等も採用することができる。そして、ステップS4へ進む。
【0082】
図4のステップS4は、第1隔壁部形成工程である。ステップS4では、図5(d)に示すように、各画素電極23間を埋めると共に、画素電極23の周縁部を覆う第1隔壁部51を形成する。形成方法としては、画素電極23の必要な部分をフォトレジストによりマスキングした状態で、酸化シリコンをターゲットとしスパッタ法で厚みがおよそ5nm〜50nmの薄膜を成膜して第1隔壁部51とする方法が挙げられる。そして、ステップS5へ進む。
【0083】
図4のステップS5は、第2隔壁部形成工程である。ステップS5では、図5(e)に示すように、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する。形成方法としては、第1隔壁部51が形成された素子基板1の表面に、感光性のポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂を塗布して、厚みがおよそ1μm〜1.5μmの感光性樹脂層を形成する。そして、当該感光性樹脂層を露光・現像することにより、画素電極23をとり囲む第2隔壁部52を形成する。第2隔壁部52により区画された領域が画素領域Eとなる。なお、第2隔壁部52の厚み(言い換えれば高さ)は、以降の工程において、画素領域Eの塗布される液状体の総量と画素領域Eの平面的な面積により決定される。そして、ステップS6へ進む。
【0084】
図4のステップS6は、機能層形成工程である。前述したように本実施形態の機能層24は、正孔注入輸送層、有機発光層、電子注入輸送層が積層されたものであり、本実施形態では、正孔注入輸送層、有機発光層をそれぞれ液滴吐出法(インクジェット法)を用いて形成する。
【0085】
まず、図5(e)に示した画素領域Eを後の液状体の吐出に対応して予め表面処理する。酸素ガスを処理ガスとするプラズマ処理を施す。これにより、無機材料からなる画素電極23の表面と画素領域E内に突出した同じく無機材料からなる第1隔壁部51の表面を親液化する。続いて、フッ素系の例えばCF4を処理ガスとするプラズマ処理を施す。これにより、有機材料からなる第2隔壁部52の表面(頭頂部、側面部)を撥液化する。
【0086】
次に、図6(f)に示すように、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体を画素領域Eに塗布し、塗布された液状体を乾燥させて溶媒成分を除去することにより成膜して正孔注入輸送層を形成する。塗布方法として、吐出ヘッドのノズルから液状体を液滴として吐出するインクジェット法を用いる。吐出ヘッドは、インクジェットプリンタなどの記録装置に搭載されているものであり、ノズルから液滴を吐出する駆動手段として圧電素子を備えている。当該液状体が充填された吐出ヘッドと素子基板1とを走査することにより、各画素領域Eに液滴として吐出する。
また、予め表面処理が施されているので画素領域E内に着弾した液滴は、よく濡れ広がる。第2隔壁部52に掛かって着弾した液滴も表面が撥液化されているので、画素領域E内に収容される。
これにより、必要量の液状体を液滴として(量的、吐出位置的な観点で)高精度に、且つ無駄なく塗布することが可能である。
【0087】
本実施形態では、正孔注入輸送層形成材料として、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を用い、これにグリコール系、アルコール系、エーテル系の有機溶媒(主溶媒)を加えて溶解させ、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルフォン酸(DMSO)、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)などの副溶媒を添加した液状体(溶液)を使用して、画素領域Eに吐出した。
【0088】
次に、有機発光層形成材料を含む液状体を同様にして画素領域Eに吐出し、吐出された液状体を乾燥させて溶媒成分を除去することにより成膜して、正孔注入輸送層上に有機発光層を形成する。当然ながら赤、緑、青、3色の発光色が得られる有機発光層形成材料が前述した形成材料の中から選択された3種の液状体(溶液)を用いる。当該液状体は、それぞれ異なる吐出ヘッドに充填され、ノズルから液滴として発光色に応じた所望の画素領域Eに吐出する。
【0089】
これらの液状体の乾燥方法としては、赤外線等を照射するランプアニールや、ヒータによる基板の加熱などの方法を採用することができるが、溶媒成分を均質に乾燥させることができる点で、減圧乾燥が好ましい。
【0090】
次に、前述した形成材料を用いて電子注入輸送層を有機発光層上に形成する。形成方法としては真空蒸着法を用いる。
【0091】
以上の工程を経ることにより、図6(g)に示すように、画素領域Eに機能層24r,24g,24bが形成される。なお、本実施形態では、各機能層24r,24g,24bの厚みがほぼ同等となるように液状体を塗布した。そして、ステップS7へ進む。
【0092】
図4のステップS7は、陰極形成工程である。ステップS7では、図6(h)に示すように、各機能層24r,24g,24bと第2隔壁部52とを覆う陰極25を形成する。形成方法としては、ITOを蒸着源とし真空蒸着法によって厚みがおよそ10nm〜20nmの透明な導電膜からなる陰極25を形成する。形成材料は前述したようにITOに限定されない。真空蒸着法はスパッタ法に比べて機能層24r,24g,24bに熱衝撃などのダメージを与え難いので、歩留りよく有機EL素子20を製造することができる。そして、ステップS8へ進む。
【0093】
図4のステップS8は、補助電極形成工程である。ステップS8では、図6(i)に示すように、第2隔壁部52を覆う陰極25上に補助電極53を形成する。形成方法としては、形成材料であるアルミを蒸着源としてマスク蒸着する方法が挙げられる。補助電極53の厚みや形成幅は、陰極25の面抵抗や有機EL素子20を流れる電流量を考慮して設定する。そして、ステップS9へ進む。
【0094】
図4のステップS9は、第1保護膜形成工程である。ステップS9では、図7(j)に示すように、陰極25および補助電極53を覆う保護膜26を形成する。形成方法としては、酸化シリコンを蒸着源とし真空蒸着法によって厚みがおよそ5nm〜50nmとなるように保護膜26を形成する。前述したように形成材料としては酸化シリコンに限定されない。そして、ステップS10へ進む。
【0095】
図4のステップS10は、第3隔壁部形成工程である。ステップS10では、図7(k)に示すように、第2隔壁部52上に第3隔壁部54を形成する。形成方法は、第2隔壁部52の場合と同じである。ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂の有機材料からなり厚みおよそ1μm〜2μmの第3隔壁部54を形成する。そして、ステップS11へ進む。
【0096】
図4のステップS11は、光路長調整層形成工程である。本実施形態では、機能層24r,24g,24bの形成方法と同様にインクジェット法を用いて、光路長調整層27r,27g,27b(図3参照)を形成する。液状体(溶液)の構成は、以下の通り。
超微粒子;アンチモンドープ酸化スズ;粒径10nm〜30nm(数平均22nm)
分散溶媒;トルエンとトリメチルベンゼン混合液;混合比20:80
ATO固形分;30wt%
この液状体の塗布にあたり、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに対して、親液性と撥液性とを付与する表面処理(プラズマ処理)を予め行うことが好ましい。
【0097】
図7(m)に示すように、超微粒子を含む上記液状体を吐出ヘッドに充填し、画素領域Eに液滴として吐出する。上記液状体の吐出量は、発光色ごとに異ならせる。そして、図8(n)に示すように、吐出された上記液状体を乾燥することにより成膜して、発光色ごとに層厚が異なる光路長調整層27r,27g,27bを形成する。インクジェット法を採用しているので、発光色ごとに所定量の上記液状体を精度よく塗布することができる。これにより、光路長調整層27r,27g,27bの層厚をねらいの値(光路長調整層27rが150nm、光路長調整層27gが90nm、光路長調整層27bが60nm)とすることができる。
【0098】
なお、上記液状体の構成は、これに限定されない。例えば、超微粒子としては、ATO以外にも、In2O3、SnO2、ITO、SiO2、TiO2、ZnOなどの超微粒子を用いることもできる。この場合、超微粒子の粒径は、およそ22nmであるが、吐出ヘッドのノズルから上記液状体を吐出することを考慮すれば、ノズル径よりも小さくなるように設定することは言うまでもない。
また、分散溶媒に対する超微粒子の分散性を考慮して、樹脂バインダーに超微粒子を混ぜ合わせたものを用いてもよい。樹脂バインダーとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。そして、ステップS12へ進む。
【0099】
図4のステップS12は、半透過反射層形成工程である。ステップS12では、図8(p)に示すように、各光路長調整層27r,27g,27bと第3隔壁部54とを覆う半透過反射層28を形成する。形成方法としては、形成材料としてMg−Agの合金を使用し、真空蒸着法またはスパッタ法を用いて成膜する方法が挙げられる。前述したように、50%以上の透過率を確保しつつ、光反射性を持たせるため、膜厚は、およそ10nm〜20nmとする。形成材料はMg−Agの合金に限定されず、Ca−Agの合金でもよい。そして、ステップS13へ進む。
【0100】
図4のステップS13は、第2保護膜形成工程である。ステップS13では、図8(q)に示すように、半透過反射層28を覆う保護膜29を形成する。保護膜29の形成方法は、ステップS9と同様なため、説明を省略する。そして、ステップS14へ進む。
【0101】
図4のステップS14は、封止工程である。ステップS14では、図3に示すように、素子基板1と封止基板2とを空間70を介して封着する。
【0102】
以上の有機EL装置10の製造工程によれば、インクジェット法を用いているので、必要量の液状体が精度よく所望の画素領域Eに吐出され、所望の層厚を有する機能層24r,24g,24bおよび光路長調整層27r,27g,27bを形成することができる。すなわち、光共振構造が最適化された有機EL装置10を製造することができる。
また、有機EL素子20の発光状態(輝度や分光特性、色度分布)のばらつきを考慮して、有機EL素子20上に光路長調整層27r,27g,27bと半透過反射層28とを積層すれば、より好適な光共振構造を有する有機EL装置10を製造することができる。
【0103】
図9は有機EL装置の分光特性を示すグラフである。図9に示すように、本実施形態の有機EL装置10は、光路長調整層27r,27g,27bを設けない場合に比べて、赤色(R)の波長域(600nm〜750nm)、緑色(G)の波長域(500nm〜600nm)、青色(B)の波長域(400nm〜500nm)においてそれぞれピーク波長が得られる。また、その光強度は、およそ1.5倍に上昇している。さらには、分光特性がシャープになっている。
【0104】
図10は有機EL装置の発光における色度分布を示すグラフである。図10に示すように、本実施形態の有機EL装置10は、色再現性を示すNTSC比がほぼ100%であった。これに対して光路長調整層27r,27g,27bを設けない場合は、NTSC比が63%であった。すなわち、色再現性が向上した。
【0105】
(実施形態2)
<他のトップエミッション型の有機EL装置>
次に、他のトップエミッション型の有機EL装置について図11を参照して説明する。なお、実施形態1の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。
【0106】
図11は、他の有機EL装置の構造を示す要部概略断面図である。図11に示すように、本実施形態の有機EL装置80は、上記実施形態1の有機EL装置10に対して、画素領域Eに発光色に対応したフィルタエレメントとしての着色層61r,61g,61bを備えている。また、第3隔壁部54上に第4隔壁部55を設け、着色層61r,61g,61bが液滴吐出法(インクジェット法)を用いて形成されている。
【0107】
着色層61r,61g,61bは、公知の材料を用いることができ、例えば、色材としての顔料が透明な有機樹脂材料に分散された着色層形成材料からなる。着色層61rは赤色のフィルタエレメントであり、着色層61gは緑色のフィルタエレメントであり、着色層61bは青色のフィルタエレメントである。
【0108】
着色層61r,61g,61bは、画素領域Eにおいて保護膜29上に積層形成されている。
【0109】
第2隔壁部52上に形成された補助電極53は、アルミなどの導電性金属材料からなり、低い面抵抗を示す膜厚を有することから、遮光性をも兼ね備えることとなる。したがって、着色層61r,61g,61b間において遮光膜(所謂ブラックマトリクス)の機能を果たす。
【0110】
このような有機EL装置80によれば、反射層21と半透過反射層28との間で最適化された光共振器が構成されると共に、有機EL素子20の発光色に対応した着色層61r,61g,61bを備えているので、発光の色度補正がなされ、高い発光輝度と、優れた色再現性とを実現したトップエミッション型の有機EL装置80を提供することができる。
【0111】
また、封止基板2の素子基板1に面する側に各色のフィルタエレメントを設ける場合に比べて、着色層61r,61g,61bが保護膜29上に積層されているため、視差(視角方向の差)による色度ずれが防止される。
【0112】
なお、有機EL装置80の着色層61r,61g,61bは、3色に限定されない。例えば、有機EL素子20の発光における色度に応じて、少なくとも1色の着色層を備えれば、色度補正がなされ、色再現性を高めることができる。
【0113】
<他のトップエミッション型の有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置80の製造方法について図12および図13を参照して説明する。図12は実施形態2の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図13(a)および(b)は実施形態2の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0114】
図12に示すように、本実施形態の有機EL装置80の製造方法は、素子基板1に反射層21を形成する反射層形成工程(ステップS21)と、反射層21を覆う絶縁膜22を形成する絶縁膜形成工程(ステップS22)と、画素電極23を形成する画素電極形成工程(ステップS23)とを備えている。また、第1隔壁部51を形成する第1隔壁部形成工程(ステップS24)と、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する第2隔壁部形成工程(ステップS25)と、画素電極23上に機能層24を形成する機能層形成工程(ステップS26)とを備えている。また、機能層24と第2隔壁部52とを覆うように陰極25を形成する陰極形成工程(ステップS27)と、陰極25の補助電極53を形成する補助電極形成工程(ステップS28)と、陰極25を覆うように保護膜26を形成する第1保護膜形成工程(ステップS29)とを備えている。また、第3隔壁部54を形成する第3隔壁部形成工程(ステップS30)と、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに光路長調整層27r,27g,27bを形成する光路長調整層形成工程(ステップS31)と、光路長調整層27r,27g,27bを覆うように半透過反射層28を形成する半透過反射層形成工程(ステップS32)とを備えている。そして、半透過反射層28を覆う保護膜29を形成する第2保護膜形成工程(ステップS33)と、第3隔壁部54上に第4隔壁部55を形成する第4隔壁部形成工程(ステップS34)と、着色層61r,61g,61bを形成する着色層形成工程(ステップS35)と、有機EL素子20が形成された素子基板1と封止基板2とを接合して封着する封止工程(ステップS36)とを備えている。
【0115】
ステップS21〜ステップS33は、上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法におけるステップS1〜ステップS13と同じであるため説明を省略する。ステップS36の封止工程も同様である。したがって、上記実施形態1と異なるステップS34、ステップS35について説明する。
【0116】
図12のステップS34は、第4隔壁部形成工程である。ステップS34では、図11に示すように、第3隔壁部54上に第4隔壁部55を形成する。実質的には、保護膜29上に形成する。形成方法は、第3隔壁部54の形成方法と同じであり、感光性のポリイミド系樹脂または感光性のアクリル系樹脂を塗布し、これを露光・現像することにより、有機材料をからなる第4隔壁部55を形成する。厚み(高さ)はおよそ1.5μm〜2μmである。そして、ステップS35へ進む。
【0117】
図12のステップS35は、着色層形成工程である。ステップS35では、図13(a)に示すように、前述した着色層形成材料を含む液状体を色ごとに異なる吐出ヘッドに充填し、吐出ヘッド(R,G,B)と素子基板1とを走査して、第4隔壁部55により区画された所望の画素領域Eに対応する色の液状体を吐出する。必要量の液状体が液滴として画素領域Eに吐出される。
【0118】
液状体は、溶媒として水や有機溶媒を用いることができる。溶媒に対して5wt%〜15wt%程度の着色層形成材料を分散させる。吐出特性を安定化させるために、粘度や表面張力を調整する。調整方法としては、補助的な溶媒を用いたり、界面活性剤等を添加する方法がある。粘度が3mPa,s以上20mPa,s以下、表面張力が30mN/m以上45mN/m以下に調整されてなることが好ましい。
【0119】
なお、上記3色の液状体を吐出するにあたり、第4隔壁部55により区画された画素領域Eに対して親液性と撥液性とを付与する表面処理(プラズマ処理)を予め行うことが好ましい。
【0120】
吐出された液状体を減圧乾燥などの方法を用いて乾燥し、溶媒成分を除去することにより成膜して、図13(b)に示すように、画素領域E内に所望の厚みの着色層61r,61g,61bを形成することができる。
【0121】
このような有機EL装置80の製造方法によれば、着色層61r,61g,61bにより発光の色度補正がなされ、高い発光輝度と、優れた色再現性とを実現したトップエミッション型の有機EL装置80を製造することができる。
また、インクジェット法を用いて着色層61r,61g,61bを形成するので、着色層形成材料の無駄を省いて効率よく着色層61r,61g,61bを形成することができる。
【0122】
さらに、着色層61r,61g,61bは、2つの保護膜26,29と光路長調整層27とを介して有機EL素子20に積層されるので、湿式のインクジェット法を用いて形成しても、有機EL素子20の発光に与える影響を少なくすることができる。
【0123】
なお、着色層形成工程(ステップS35)では、3色の液状体を吐出することに限定されない。有機EL素子20の発光における色度に応じて、少なくとも1色の液状体を吐出し、少なくとも1色の着色層を形成すればよい。
【0124】
図14(a)は実施形態2の有機EL装置の分光特性を示すグラフ、(b)は実施形態2の有機EL装置の色度図である。図14(a)に示すように、本実施形態の有機EL装置80は、光路長調整層27r,27g,27bに加えて、着色層61r,61g,61bを設けることにより、発光色ごとの分光特性がさらにシャープになっている。
また、図14(b)に示すように、色再現性を示すNTSC比は、さらに拡張して118%の値を示した。すなわち、上記実施形態1の有機EL装置10に比べてさらに高い色再現性を有する。
【0125】
(実施形態3)
<ボトムエミッション型の有機EL装置>
次に、ボトムエミッション型の有機EL装置について図15を参照して説明する。なお、実施形態1の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。また、主に構成が異なる部分について説明する。
【0126】
図15は実施形態3の有機EL装置の構造を示す概略断面図である。図15に示すように、本実施形態の有機EL装置90は、有機EL素子20からの発光が素子基板1側に射出するボトムエミッション型の有機EL装置である。上記実施形態1の有機EL装置10に対して、光共振器等の構造が異なる。
【0127】
すなわち、素子基板1は、透明なガラス基板等を用いる。これに対して封止基板2は、透明なガラス基板でも、不透明なセラミックス基板やステンレスなどの金属基板でもよい。
【0128】
図示省略したが、素子基板1は、有機EL素子20をスイッチングするための回路部を備えることは言うまでもない。
【0129】
素子基板1上に半透過反射層28と、半透過反射層28を覆う絶縁膜22と、画素電極23とが順に積層されている。
【0130】
第1隔壁部51および第2隔壁部52並びに第3隔壁部54により区画された画素領域Eには、画素電極23上に機能層24、陰極25、保護膜26、光路長調整層27、反射層21、保護膜29が順に積層されている。
【0131】
画素電極23と、機能層24と、陰極25とにより有機EL素子20が構成されている。機能層24rは赤(R)の発光が得られる有機発光層を有し、機能層24gは緑(G)の発光が得られる有機発光層を有し、機能層24bは青(B)の発光が得られる有機発光層を有している。半透過反射層28と反射層21との間で光共振器が構成され、発光色に対応して最適な光路長を付与する光路長調整層27r,27g,27bが設けられている。
【0132】
光路長調整層27r,27g,27bは、それぞれアンチモンドープ酸化スズ(ATO)からなる数平均粒径が22nmの超微粒子により構成され、上記実施形態1と同じである。すなわち、光路長調整層27rの層厚は150nmであり、光路長調整層27gの層厚は90nmであり、光路長調整層27bの層厚は60nmである。
【0133】
このような構成によれば、最適化された光共振構造を備え、高い発光輝度と色再現性を有するボトムエミッション型の有機EL装置90を提供することができる。
【0134】
<ボトムエミッション型の有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置90の製造方法について図16および図17を参照して説明する。図16は実施形態3の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図17(a)〜(d)は実施形態3の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0135】
図16に示すように、本実施形態の有機EL装置90の製造方法は、素子基板1に半透過反射層28を形成する半透過反射層形成工程(ステップS41)と、半透過反射層28を覆う絶縁膜22を形成する絶縁膜形成工程(ステップS42)と、画素電極23を形成する画素電極形成工程(ステップS43)とを備えている。また、第1隔壁部51を形成する第1隔壁部形成工程(ステップS44)と、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する第2隔壁部形成工程(ステップS45)と、画素電極23上に機能層24を形成する機能層形成工程(ステップS46)とを備えている。そして、機能層24と第2隔壁部52とを覆う陰極25を形成する陰極形成工程(ステップS47)と、陰極25の補助電極53を形成する補助電極形成工程(ステップS48)と、陰極25を覆う保護膜26を形成する第1保護膜形成工程(ステップS49)とを備えている。さらに、第3隔壁部54を形成する第3隔壁部形成工程(ステップS50)と、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに光路長調整層27r,27g,27bを形成する光路長調整層形成工程(ステップS51)と、光路長調整層27r,27g,27bを覆う反射層21を形成する反射層形成工程(ステップS52)と、反射層21を覆う保護膜29を形成する第2保護膜形成工程(ステップS53)と、有機EL素子20が形成された素子基板1と封止基板2とを接合して封着する封止工程(ステップS54)とを備えている。
【0136】
以降、上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法に対して同じ工程の説明は省略し、異なる工程について説明する。
【0137】
図16のステップS41は、半透過反射層形成工程である。ステップS41では、図17(a)に示すように、素子基板1の回路部(図示省略)上に発光画素7(図1参照)に対応した半透過反射層28を形成する。形成方法としては、形成材料としてMg−Agの合金を使用し、マスク蒸着する方法が挙げられる。50%以上の透過率を確保しつつ、光反射性を持たせるため、膜厚は、およそ10nm〜20nmとする。形成材料はMg−Agの合金に限定されず、Ca−Agの合金でもよい。そして、ステップS42へ進む。
【0138】
図16のステップS42には、絶縁膜形成工程である。ステップS42では、図17(b)に示すように、半透過反射層28を覆う絶縁膜22を形成する。形成方法としては、酸化シリコンをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ5nm〜50nmの酸化シリコン薄膜を半透過反射層28を覆うように形成する。フォトリソグラフィ法により該酸化シリコン薄膜を所定の形状にパターニングすることにより、絶縁膜22を形成する。形成材料は前述したように酸化シリコンに限定されず、窒化シリコンまたはこれらの化合物でもよい。そして、ステップS43へ進む。
【0139】
図16のステップS43は、画素電極形成工程である。ステップS43では、図17(c)に示すように、半透過反射層28上に画素電極23を形成する。形成方法としては、ITOをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ10nm〜20nmの透明導電膜を形成する。フォトリソグラフィ法により該透明導電膜を所定の形状にパターニングすることにより、画素電極23を形成する。形成材料はITOに限定されず、IZOでもよい。透明導電膜の形成方法は、スパッタ法に限定されず、真空蒸着法、CVD法等も採用することができる。そして、ステップS44へ進む。
【0140】
図16のステップS44〜ステップS51は、上記実施形態1のステップS4〜ステップS11と同じであるため、説明を省略する。
【0141】
続いて、図16のステップS52は、反射層形成工程である。ステップS52では、光路長調整層27r,27g,27bと第3隔壁部54とを覆うように反射層21を形成する。形成方法としては、形成材料としてアルミ(Al)を用い、真空蒸着法またはスパッタ法により成膜する方法が挙げられる。厚みがおよそ50〜100nmとなるように成膜する。そして、ステップS53へ進む。
【0142】
図16のステップ53は、第2保護膜形成工程である。ステップS53では、図17(d)に示すように、反射層21を覆う保護膜29を形成する。形成方法は、酸化シリコンを蒸着源とし真空蒸着法によって厚みがおよそ5nm〜50nmとなるように保護膜29を形成する。形成材料としては酸化シリコンに限定されず、窒化シリコンまたはこれらの化合物でもよい。
【0143】
このような有機EL装置90の製造方法によれば、最適化された光共振構造を備え、高い発光輝度と色再現性を有するボトムエミッション型の有機EL装置90を製造することができる。
【0144】
(実施形態4)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について携帯型電話機を例に説明する。図18は、電子機器としての携帯型電話機を示す概略図である。
【0145】
図18に示すように、本実施形態の電子機器としての携帯型電話機100は、操作ボタン103を備えた本体102と、本体102にヒンジを介して折畳式に取り付けられた表示部101とを備えている。
表示部101には、上記実施形態1の有機EL装置10または上記実施形態2の有機EL装置80あるいは上記実施形態3の有機EL装置90のいずれかが搭載されている。
したがって、高い発光輝度と色再現性を有し、見映えのよい携帯型電話機100を提供することができる。
【0146】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0147】
(変形例1)上記実施形態1の有機EL装置10において、各機能層24r,24g,24bの厚みはほぼ同等としたが、これに限定されない。例えば、発光色ごとに厚みを異ならせてもよい。言い換えれば、所望の発光が得られるように各機能層24r,24g,24bを構成する有機発光層などの層構造を変えてもよい。各機能層24r,24g,24bの厚みが異なっていたとしても、最適な光学的距離Lとなるように光路長調整層27r,27g,27bの層厚を設定すればよい。また、光路長調整層27r,27g,27bを液滴吐出法(インクジェット法)により形成するので、液状体の吐出量を調整することにより、層厚の調整を容易に行うことができる。
【0148】
(変形例2)上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法において、機能層24r,24g,24bのうち正孔注入輸送層、有機発光層を形成する方法は、液滴吐出法(インクジェット法)に限定されない。例えば、所望の部位に成膜が可能なマスク蒸着法を用いることができる。したがって、有機発光層は、低分子の有機発光材料を用いて成膜してもよい。
【0149】
(変形例3)発光色に応じた光路長調整層27r,27g,27bを含む光共振器の構成は、3色の発光が得られる有機EL素子20に対応したものに限定されない。図19(a)および(b)は、変形例の有機EL装置を示す概略図である。同図(a)は概略正面図、同図(b)は同図(a)のA−A線で切った概略断面図である。例えば、図19(a)に示すように、変形例の有機EL装置200は、平面視でほぼ円形の発光画素207が千鳥に配列した素子基板201と、素子基板201に接合され、これを封着する封止基板202とを備える。
発光画素207の等価回路は、図2に示した発光画素7と同様であって、有機EL素子と薄膜トランジスタと保持容量とを有する。発光画素207は、例えば、赤色などの単色発光が得られるものである。
上記薄膜トランジスタを駆動する駆動回路との電気的な接続は、端子部201aに実装された中継基板203を介して行われる。
図19(b)に示すように、素子基板201上には、発光が素子基板201側に漏れないように膜形成領域204に亘って設けられた反射層211と、反射層211を覆う絶縁膜212と、反射層211に積層された複数の画素電極213とを備える。
複数の画素電極213を覆って順に積層された機能層214、陰極216、保護膜218、光路長調整層219、半透過反射層221、保護膜222を有する。
画素電極213と、機能層214と、陰極216とにより有機EL素子が構成され、反射層211と半透過反射層221との間で光共振器が構成されている。
膜形成領域204は、複数の画素電極213を囲むように設けられ、第1隔壁部215とこれに重畳された第2隔壁部220とにより区画されている。第1隔壁部215上には補助電極217が設けられている。
封止基板202は、額縁状に設けられた接着層206により素子基板201と接合されている。
このような構成によれば、高い発光輝度で単色の発光が得られる複数の有機EL素子を備えたトップエミッション型の有機EL装置200を提供することができる。このような有機EL装置200は、例えば、画像形成装置における感光体ドラムの露光用光源として用いることができる。
また、各部の製造方法は、上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法を適用することができる。複数の有機EL素子を取り囲むように第1隔壁部215、第2隔壁部220を有しているので、機能層214および光路長調整層219は、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて形成することができる。言い換えれば、隔壁部は有機EL素子を1つずつ区画しなくてもよい。
【0150】
(変形例4)上記実施形態1の有機EL装置10または上記実施形態2の有機EL装置80あるいは上記実施形態3の有機EL装置90のいずれかが搭載される電子機器は、携帯型電話機100に限定されない。例えば、パーソナルコンピュータや携帯型情報端末、カーナビゲータ、ビューワーなどの各種表示装置などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】実施形態1の有機EL装置を示す概略正面図。
【図2】実施形態1の有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】実施形態1の有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図4】実施形態1の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図5】(a)〜(e)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図6】(f)〜(i)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図7】(j)〜(m)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図8】(n)〜(q)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図9】実施形態1の有機EL装置の分光特性を示すグラフ。
【図10】実施形態1の有機EL装置の発光における色度分布を示すグラフ。
【図11】実施形態2の有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図12】実施形態2の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図13】(a)および(b)は実施形態2の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図14】(a)は実施形態2の有機EL装置の分光特性を示すグラフ、(b)は実施形態2の有機EL装置の色度図。
【図15】実施形態3の有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図16】実施形態3の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図17】(a)〜(d)は実施形態3の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図18】実施形態4の電子機器としての携帯型電話機を示す概略図。
【図19】(a)は変形例の有機EL装置を示す概略正面図、(b)は(a)のA−A線で切った概略断面図。
【符号の説明】
【0152】
1…基板としての素子基板、2…封止基板、7…発光画素、10,80…トップエミッション型の有機EL装置、20…有機EL素子、21…反射層、23…第1の電極としての画素電極、24,24r,24g,24b…機能層、25…第2の電極としての陰極、26,29…保護膜、27,27r,27g,27b…光路長調整層、28…半透過反射層、52…隔壁部としての第2隔壁部、53…補助電極、61r,61g,61b…フィルタエレメントとしての着色層、90…ボトムエミッション型の有機EL装置、100…電子機器としての携帯型電話機、E…画素領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子としての有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を有する有機EL装置、電子機器、有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置として、第1透明電極、発光層および第2透明電極を有する有機発光素子と、有機発光素子を制御するスイッチング素子を有する駆動層とを備え、駆動層内の層間絶縁膜を介して反射膜を設け、反射膜が第1透明電極の外側にある有機発光表示装置が知られている(特許文献1)。
上記有機発光表示装置は、発光層からそのまま第2透明電極側に射出した発光と反射膜で反射した発光とが共振して輝度が上昇する、所謂光共振構造を有している。この光共振構造は、発光層における発光色すなわち光の波長に応じて、発光層と反射膜との間の距離が設定されている。これにより、発光色ごとの輝度を高めようとするものである。
【0003】
さらには、有機発光層を含む機能層を有する発光素子が複数形成された素子基板と、複数の発光素子に対応する色要素が形成された封止基板とが接着層を介して接合された有機EL発光装置が知られている(特許文献2)。
上記有機EL発光装置は、色要素として発光色に対応したカラーフィルタを備え、カラーフィルタによって発光色の色度補正を行い、より鮮やかな色表現を可能としたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2002−252087号公報
【特許文献2】特開2007−128741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の有機発光表示装置並びに有機EL発光装置では、第1透明電極上に発光層が積層形成されるため、発光層の膜厚がばらつくと、ねらいの光共振構造が得られないおそれがある。
また、カラーフィルタが形成された封止基板と、機能層が形成された素子基板と接合させる場合、発光領域とカラーフィルタの着色領域とが平面的に位置精度よく合致していないと、光漏れが発生して適正に色度補正がなされないというおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の有機EL装置は、トップエミッション型の有機EL装置であって、基板上に順に積層形成された反射層と、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、半透過反射層と、を備え、前記反射層と前記半透過反射層の間で光共振器が構成されていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第1の電極と機能層と第2の電極とにより有機EL素子が構成され、当該有機EL素子上に、光共振器を構成する光路長調整層と半透過反射層とが積層されている。したがって、有機EL素子の発光状態に応じて光路長調整層の層厚を調整すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するトップエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例の有機EL装置において、前記半透過反射層上に発光色に対応した少なくとも1色のフィルタエレメントが形成されていることが好ましい。
この構成によれば、光共振器上に積層された少なくとも1色のフィルタエレメントを備えることにより、発光色の色度が補正され、優れた色度バランスと高い発光輝度とを有するトップエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の有機EL装置において、前記半透過反射層と前記少なくとも1色のフィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、ガスバリア性を有する保護膜を設けることにより、フィルタエレメントから放出される水蒸気などのガス成分が半透過反射層を通じて有機EL素子に到達することを防ぐことができる。すなわち、フィルタエレメントから放出されるガス成分により、有機EL素子が失活することを防ぎ、長い発光寿命が得られる有機EL装置を提供することができる。
【0011】
[適用例4]本適用例の他の有機EL装置は、ボトムエミッション型の有機EL装置であって、透明な基板上に順に積層形成された半透過反射層、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、反射層と、を備え、前記半透過反射層と前記反射層との間で光共振器が構成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1の電極と機能層と第2の電極とにより有機EL素子が構成され、当該有機EL素子上に、光共振器を構成する光路長調整層と反射層とが積層されている。したがって、有機EL素子の発光状態に応じて光路長調整層の層厚を調整すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の有機EL装置において、前記基板上の複数の画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層が形成され、前記発光色に対応して前記光路長調整層の層厚が設定されていることが好ましい。
この構成によれば、発光色ごとに好ましい光共振状態が得られる。すなわち、高い発光輝度を有し、フルカラーの発光が可能なトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の有機EL装置において、前記光路長調整層は、光透過性の超微粒子または前記超微粒子を含む光透過性の高分子膜からなることを特徴とする。
この構成によれば、超微粒子を介して発光が伝達され、光路長調整層における発光の漏れなどの輝度損失を低減することができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の有機EL装置において、前記光路長調整層における光の散乱状態がレイリー散乱となるように、前記超微粒子の粒径が選定されていることが好ましい。
この構成によれば、光路長調整層における光の散乱状態がレイリー散乱となるので、可視光の散乱が抑制され、より高い透明性を有する光路長調整層とすることができる。すなわち、光路長調整層において発光が減衰し難く、より高い輝度の発光を得ることができる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の有機EL装置において、前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、光路長調整層から放出される水蒸気などのガス成分により、有機EL素子が失活することを低減し、長い発光寿命を有する有機EL素子を備えたトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0017】
[適用例9]上記適用例の有機EL装置において、前記複数の画素領域を区画する隔壁部を備え、前記第2の電極は、前記隔壁部と前記複数の画素領域とを覆うように形成され、前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、発光を阻害しない隔壁部上に補助電極が設けられ、第2の電極の面抵抗ばらつきを低減することができる。したがって、発光時に機能層を介して第1の電極と第2の電極との間を流れる電流が複数の有機EL素子間においてばらつくことを低減することができる。すなわち、複数の有機EL素子間においてより均一な発光輝度が得られるトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を提供することができる。
【0018】
[適用例10]本適用例の電子機器は、上記適用例の有機EL装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、高い発光輝度を有するトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を備え、優れた視認性を有する電子機器を提供することができる。
【0019】
[適用例11]本適用例の有機EL装置の製造方法は、トップエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、基板上の画素領域に反射層を形成する反射層形成工程と、前記反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、前記光路長調整層上に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程とを備え、前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、第1電極形成工程と機能層形成工程と第2電極形成工程とにより有機EL素子が形成される。そして、光路長調整層形成工程では、当該有機EL素子上に、半透過反射層と反射層との間で光共振器を構成する光路長調整層が形成される。したがって、有機EL素子の発光状態を考慮して光路長調整層の層厚を設定すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するトップエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0021】
[適用例12]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記基板上の複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、フィルタエレメント形成材料を含む少なくとも1色の液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して、少なくとも1色のフィルタエレメントを前記半透過反射層上に形成する成膜工程とを備えたことを特徴とする。
この方法によれば、吐出工程と成膜工程とにより、少なくとも1色のフィルタエレメントを光共振器上に積層形成することができる。したがって、有機EL素子からの発光が漏れなくフィルタエレメントを通過し、発光色の色度をフィルタエレメントにより補正して、優れた色度バランスと高い発光輝度とを有するトップエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0022】
[適用例13]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記半透過反射層と前記フィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えることが好ましい。
この方法によれば、ガスバリア性を有する保護膜を形成することにより、フィルタエレメントから放出される水蒸気などのガス成分が半透過反射層を通じて有機EL素子に到達することを防ぐことができる。すなわち、フィルタエレメントから放出されるガス成分により、有機EL素子が失活することを防ぎ、長い発光寿命が得られるトップエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0023】
[適用例14]本適用例の他の有機EL装置の製造方法は、ボトムエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、基板上の画素領域に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程と、前記半透過反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、前記光路長調整層上に反射層を形成する反射層形成工程とを備え、前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、第1電極形成工程と機能層形成工程と第2電極形成工程とにより有機EL素子が形成される。そして、光路長調整層形成工程では、当該有機EL素子上に、半透過反射層と反射層との間で光共振器を構成する光路長調整層が形成される。したがって、有機EL素子の発光状態を考慮して光路長調整層の層厚を設定すれば、好ましい光共振状態が得られる。ゆえに、好ましい光共振状態が得られ高い発光輝度を有するボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0025】
[適用例15]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記機能層形成工程は、前記基板上の複数の前記画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層を形成し、前記光路長調整層形成工程は、前記機能層における発光波長に応じて、前記光路長調整層の層厚を設定することが好ましい。
この方法によれば、機能層における発光波長に応じて、光路長調整層の層厚を設定するので、発光色ごとに好ましい共振状態が得られる。すなわち、高い発光輝度を有し、フルカラーの発光が可能なトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0026】
[適用例16]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、前記機能層形成工程は、有機発光層形成材料を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記有機発光層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする。
この方法によれば、吐出工程において有機発光層形成材料を含む液状体を吐出することにより、画素領域ごとに材料の無駄を省いて効率よく有機発光層を形成することができる。
【0027】
[適用例17]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、前記光路長調整層形成工程は、光透過性の超微粒子を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記光路長調整層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする。
この方法によれば、吐出工程において光透過性の超微粒子を含む液状体を吐出することにより、画素領域ごとに材料の無駄を省いて効率よく光路長調整層を形成することができる。また、液状体の吐出量を調整すれば、光路長調整層の層厚を容易に可変することができる。すなわち、超微粒子からなり発光の損失が低減された光路長調整層を所望の層厚で形成することができる。
【0028】
[適用例18]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えることが好ましい。
この方法によれば、湿式法を用いて光路長調整層を形成しても、第2の電極が保護膜で保護されるので、光路長調整層から放出される水蒸気などのガス成分により、有機EL素子が失活することを低減し、長い発光寿命を有する有機EL素子を備えたトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【0029】
[適用例19]上記適用例の有機EL装置の製造方法において、前記第2電極形成工程は、前記隔壁部と前記複数の前記画素領域とを覆うように前記第2の電極を形成し、前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極を形成する補助電極形成工程を備えることが好ましい。
この方法によれば、補助電極形成工程では、発光を阻害しない隔壁部上に補助電極を形成し、第2の電極の面抵抗ばらつきを低減することができる。したがって、発光時に機能層を介して第1の電極と第2の電極との間を流れる電流が複数の有機EL素子間においてばらつくことを低減することができる。すなわち、複数の有機EL素子間においてより均一な発光輝度が得られるトップエミッション型あるいはボトムエミッション型の有機EL装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0031】
(実施形態1)
<トップエミッション型の有機EL装置>
本実施形態は、発光素子としての有機EL素子を備えた有機EL装置を例に図1〜図3を参照して説明する。
図1は有機EL装置を示す概略正面図、図2は有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図、図3は有機EL装置の構造を示す概略断面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置10は、R(赤)、G(緑)、B(青)、3色の発光画素7を備えた素子基板1と、素子基板1に所定の間隔を置いて対向配置された封止基板2とを備えている。封止基板2は、複数の発光画素7が設けられた発光領域6を額縁状に封着するように、高い気密性を有する封着剤を用いて素子基板1に接合されている。
【0033】
発光画素7は、発光素子としての有機EL素子を備えるものであって、同色の発光が得られる発光画素7が、縦方向(Y軸方向)に配列した所謂ストライプ方式となっている。なお、実際には、発光画素7は微細なものであり、図示の都合上拡大して現している。
【0034】
素子基板1は、封止基板2よりも一回り大きく、額縁状に張り出した部分には、発光画素7を駆動する2つの走査線駆動回路部3と1つのデータ線駆動回路部4が設けられている。走査線駆動回路部3、データ線駆動回路部4は、例えば、電気回路が集積されたICとして素子基板1に実装してもよいし、当該駆動回路部3,4を素子基板1の表面に直接形成してもよい。
【0035】
素子基板1の端子部1aには、これらの駆動回路部3,4と外部駆動回路とを接続するための中継基板5が実装されている。中継基板5は、例えば、フレキシブル回路基板などを用いることができる。
【0036】
次に、本実施形態の有機EL装置10の電気的な構成について説明する。図2に示すように、有機EL装置10は、発光画素7を駆動するスイッチング素子として薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下TFTと略記する)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。
【0037】
有機EL装置10は、走査線駆動回路部3に接続されX軸方向に延在する複数の走査線31と、データ線駆動回路部4に接続されY軸方向に延在する複数の信号線41と、各信号線41に並列して延在する複数の電源線42と、を備えている。マトリクス状に直交する走査線31と信号線41とによって区画された領域内に発光画素7が設けられている。
【0038】
それぞれの発光画素7は、走査線31を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT11と、このTFT11を介して信号線41から供給される画素信号を保持する保持容量13と、該保持容量13によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT12と、この駆動用TFT12を介して電源線42に電気的に接続したときに該電源線42から駆動電流が流れ込む第1の電極としての画素電極23と、この画素電極23と第2の電極としての陰極25との間に挟み込まれた機能層24とを有している。
【0039】
走査線31が駆動されてスイッチング用のTFT11がオン状態になると、そのときの信号線41の電位が保持容量13に保持され、該保持容量13の状態に応じて、駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12を介して、電源線42から画素電極23に電流が流れ、さらに機能層24を介して陰極25に電流が流れる。機能層24は、これを流れる電流量に応じて発光する。すなわち、画素電極23と陰極25と機能層24とにより、発光素子としての有機EL素子20が構成されている。
【0040】
次に、有機EL装置10の詳しい構造について、図3を参照して説明する。なお、図3においては、素子基板1に形成された各TFT11,12および保持容量13を含む回路部1bの詳細は、図示省略した。
【0041】
図3に示すように、素子基板1は、複数の画素領域Eを有している。各画素領域Eには、反射層21、絶縁膜22、画素電極23、機能層24、陰極25、保護膜26、光路長調整層27、半透過反射層28、保護膜29が順に積層されている。前述したように画素電極23と、機能層24と、陰極25とにより有機EL素子20を構成するものである。有機EL素子20から射出して半透過反射層28を透過する発光と、有機EL素子20から射出して半透過反射層28と反射層21とで反射して再び半透過反射層28を透過する発光とが共振するように、発光色に応じた層厚を有する光路長調整層27r,27g,27bが有機EL素子20上に設けられている。すなわち、有機EL装置10は、反射層21と半透過反射層28との間で光共振器が構成され、封止基板2側から発光が射出するトップエミッション型の有機EL装置である。
【0042】
素子基板1は、例えばガラス基板などの透明な基板、あるいは例えばシリコン基板などの不透明な基板の両方を用いることができる。
【0043】
素子基板1上に設けられた反射層21は、光共振器を構成するものであって、高い光反射率が得られる材料で構成することが好ましい。例えば、アルミ(Al)や、アルミの化合物であるAlNdなどが挙げられる。厚みは、およそ50nm〜100nmである。
また、反射層21の表面(反射面)は、反射光の散乱を防ぐためほぼ平坦となることが望ましい。それゆえに、素子基板1の表面に形成された回路部1bにおける凹凸を緩和する絶縁性を有する平坦化層を設け、該平坦化層上に反射層21を形成することが好ましい。
【0044】
反射層21を覆うように積層された絶縁膜22は、高い光透過率が得られる材料で構成されることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、あるいはこれらの混合物が挙げられる。厚みはおよそ10nmである。
【0045】
反射層21上に絶縁膜22を介して積層された画素電極23は、透明な導電膜からなるものであって、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜が挙げられる。厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0046】
本実施形態では、反射層21と画素電極23との間に絶縁膜22を設けたが、これは、画素電極23のパターニングに際して、下層に位置する反射層21がエッチングされないように絶縁膜22で保護する役割を担うものである。したがって、反射層21や画素電極23の材料の選択やパターニング方法によっては、絶縁膜22を設けなくてもよい。すなわち、反射層21を構成する薄膜に画素電極23を構成する薄膜を積層してからパターニングを行う手法を用いて、素子基板1上に平面的にほぼ同一形状の反射層21と画素電極23とを形成してもよい。
【0047】
画素電極23を有する画素領域Eは、画素電極23の周縁部を覆うように設けられた第1隔壁部51と、第1隔壁部51上に設けられた第2隔壁部52と、さらに第2隔壁部52上に設けられた第3隔壁部54とにより区画されている。
【0048】
第1隔壁部51は、絶縁性の無機材料からなるものであって、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、あるいはこれらの混合物が挙げられる。厚みはおよそ5nm〜10nmである。画素電極23の周縁部を覆うように第1隔壁部51を設けることにより、後に積層される陰極25と画素電極23との第2隔壁部52際における短絡を防止するものである。
【0049】
第2隔壁部52は、絶縁性の有機化合物からなるものであって、例えば、ポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂を用いることができる。厚みはおよそ1μm〜1.5μmである。
【0050】
画素電極23上に積層された機能層24は、有機発光層を含む複数種の有機層からなる。本実施形態では、有機発光層における発光色に応じて、画素領域Eに塗り分け形成される。機能層24rは赤色(R)の発光色が得られ、機能層24gは緑色(G)の発光色が得られ、機能層24bは青色(B)の発光色が得られる。これらを総称して機能層24と呼ぶ。
【0051】
機能層24の具体的な例としては、正孔注入輸送層、有機発光層、電子注入輸送層が積層されたものが挙げられる。厚みはおよそ100nmである。
【0052】
正孔注入輸送層の形成材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体等を用いることができる。この場合、有機発光層に対して画素電極23側から注入される正孔(ホール)の注入量と、陰極25側から注入される電子の注入量とのキャリアバランスを考慮すると、仕事関数の関係からポリチオフェン誘導体を用いることが好ましい。
【0053】
有機発光層の形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。塗布型の発光材料としては高分子有機材料が好適であり、例えば、ペニレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などが挙げられる。また、これらの高分子有機材料に、例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドンなどの低分子有機材料をドープしてもよい。
【0054】
燐光であれば、例えば、燐光用ホスト材料として、4,4−ジカルバゾール−4,4−ビフェニル(CBP)誘導体を用い、これに赤色燐光材料である白金ポルフィリン錯体(PtOEP)誘導体、緑色燐光材料であるイリジウム錯体のIr(ppy)3誘導体、青色燐光材料であるイリジウム錯体のFIrpic誘導体を発光色に応じて添加し、シクロヘキシルベンゼン、ジハライドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等の有機溶媒、あるいはこれらの有機溶媒の混合溶媒に溶解させた溶液を用いることができる。特に、イリジウム錯体に対して優れた溶解性を示すジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの塩素系有機溶媒が好ましい。
【0055】
電子注入輸送層の形成材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、フェナンソロリン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン誘導体、フルオレン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ヒドロキシキノリン誘導体などが挙げられ、これらの形成材料を用いた成膜方法としては、真空蒸着法が好ましい。
【0056】
陰極25は、透明な導電膜からなり、機能層24と第2隔壁部52とを覆うように設けられている。陰極25の形成材料としては、ITO、IZO、SnO2、In2O3、ZnO:Alまたはこれらの酸化物の複合体を用いることができる。厚みはおよそ10nm〜20nmである。
【0057】
本実施形態では、第2隔壁部52を覆う陰極25上に補助電極53が設けられている。その目的は、陰極25の抵抗のばらつきを抑制して、有機EL素子20に流れる電流量を安定化させようとするものである。したがって、補助電極53を設ける位置としては、発光を阻害しない第2隔壁部52上が好ましく、且つ平面的には画素領域E(すなわち発光画素7)を取り囲んで格子状に設けることが望ましい。補助電極53の形成材料としては、陰極25よりも面抵抗が小さい、Alなどの金属材料が挙げられる。
【0058】
陰極25を覆うように保護膜26が設けられている。保護膜26は、有機EL素子20に発光を阻害する水蒸気などのガスが侵入することを防ぐものである。したがって、高いガスバリア性(気体非透過性)と光透明性とを兼ね備える材料で形成されることが好ましい。形成材料としては、酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの材料の混合物が挙げられる。厚みはおよそ5nm〜50nmである。
【0059】
画素領域Eには、光共振器において発光色ごとに所定の光路長を付与するため、光路長調整層27r,27g,27bが層厚を異ならせて設けられている。詳しくは、後述する。
【0060】
第3隔壁部54は、保護膜26で覆われた第2隔壁部52上に設けられている。その目的は、層厚が異なる光路長調整層27r,27g,27bを塗り分け形成するにあたり、画素領域E内に吐出された液状体を保持する役目を果たす。第3隔壁部54の形成材料は、第2隔壁部52と同様に、ポリイミド系樹脂やアクリル系樹脂を用いることができる。厚みはおよそ1μm〜1.5μmである。
【0061】
光路長調整層27r,27g,27bと第3隔壁部54とを覆うように半透過反射層28が設けられている。半透過反射層28は、光共振器を構成するものであり、光透過性と光反射性とを兼ね備える必要がある。有機EL素子20における発光を効率よく取り出すため、透過率は50%以上とする。半透過反射層28の形成材料としては、Ca−Ag、Mg−Agの合金を用いることができる。例えば、Mg−Agの合金では、光の消衰係数を考慮すると、透過率を50%以上とするためには、厚みが20nm以下となり、10nm〜20nmが好ましい。
【0062】
半透過反射層28を覆うように保護膜29が設けられている。その目的は、保護膜26と同様に、有機EL素子20に発光を阻害する水蒸気などのガスの侵入を防ぎ、且つ取り扱いなどにより半透過反射層28にキズなどの欠損が生ずることを防止するものである。形成材料は、ガスバリア性と光透明性とを兼ね備えた酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの材料の混合物が挙げられる。厚みはおよそ5nm〜50nmである。
【0063】
赤(R)、緑(G)、青(B)、3色の発光が得られる複数の有機EL素子20を備えた素子基板1は、空間70を介して封止基板2と接合される。
【0064】
封止基板2は、透明な基板であって、例えば、ガラス基板を用いることができる。前述したように、封止基板2は、発光領域6(図1参照)を囲む領域において封着剤により素子基板1と接合され、空間70に水蒸気等のガスが侵入しないように封着される。これにより、有機EL素子20を保護する保護膜26,29と相まって、より長い発光寿命を確保し、高い信頼性を有する有機EL装置10を実現している。
【0065】
本実施形態では、素子基板1と封止基板2とを所定の間隔で対向させることにより空間70を設けたが、これに限定されず、空間70を透明な封着剤により充填した構造としてもよい。
また、空間70の間隔を保つために、素子基板1と封止基板2との間にスペーサ(貝柱やギャップ材)を配置してもよい。スペーサを配置する場所は、第3隔壁部54上が好ましい。スペーサを設けることにより、封止基板2を外側から押圧しても、封止基板2がたわみ難く、封止基板2によって有機EL素子20が損傷することを防ぐことができる。
【0066】
次に、光共振構造について説明する。発光色ごとに所望のピーク波長λの発光を取り出そうとする場合、反射層21と半透過反射層28との光学的距離Lと、光が反射層21および半透過反射層28で反射する際に生じる位相シフトΦ(ラジアン)との関係が以下の数式(1)で導かれることが知られている(国際公開;WO01/039554号公報)。
(2L)/λ+Φ/2π=m(mは整数)・・・・(1)
【0067】
そこで、本実施形態では、赤色(R)の波長域を600nm〜750nmとし、緑色(G)の波長域を500nm〜600nmとし、青色(B)の波長域を400nm〜500nmとして、この間にピーク波長λが得られるように、発光色ごとの光学的距離Lを設定した。
【0068】
光学的距離Lは、反射層21と半透過反射層28との間に存在する各層の光学的な距離の和により求められる。本実施形態では、絶縁膜22、画素電極23、機能層24、陰極25、保護膜26、それぞれの層厚をほぼ一定としているため、発光色ごとの光学的距離Lは、光路長調整層27r,27g,27bの光学的な距離によって決まる。
【0069】
光路長調整層27r,27g,27bの光学的な距離は、層厚と屈折率とにより決まる。
本実施形態の光路長調整層27r,27g,27bは、光透過性を有する超微粒子からなることを特徴としている。適度な屈折率と粒径を有する超微粒子を選定して、層厚を異ならせることにより、発光色ごとに好適な光学的距離Lを実現して、光共振状態を最適化した。
【0070】
具体的には、超微粒子として粒子径が10nm〜30nm(数平均粒径22nm)のアンチモンドープ酸化スズ(ATO)を用いた。アンチモンドープ酸化スズの屈折率nは、およそ1.65である。そして、赤色の発光色に対応する光路長調整層27rの層厚を150nmとし、緑色の発光色に対応する光路長調整層27gの層厚を90nmとし、青色の発光色に対応する光路長調整層27bの層厚を60nmとした。
【0071】
超微粒子を用いて光路長調整層27r,27g,27bを形成する方法としては、液滴吐出法(インクジェット法)を用いている。詳しくは、有機EL装置10の製造方法において述べる。
【0072】
超微粒子を用いる場合、粒子径のサイズ効果による光の散乱を考慮する必要がある。超微粒子を球形として定義したとき、散乱係数の波長λと散乱粒子の粒子直径Dの大きさに関わるサイズパラメータをαとすると、以下の数式(2)が成り立つことが知られている。
α=πD/λ・・・・(2)
【0073】
α<0.4がレイリー散乱の領域とされ、0.4<α<3がミー散乱の領域とされ、3<αが回折散乱の領域とされている。ミー散乱の領域では、可視光の散乱が起こるのでレイリー散乱の領域にあることが好ましい。レイリー散乱の領域とすることで可視光の散乱が抑制され、光路長調整層27r,27g,27bの透明性が増すことになる。
【0074】
具体的には、数式(2)においてαを0.4とするとD=0.4λ/π≒0.127λとなるため、最も波長が短い青色の発光を基準とすれば、λ=400nmとしたときには、粒子直径Dはおよそ50nmとなる。すなわち、超微粒子の粒径を50nm以下とすることが好ましい。
【0075】
発光色ごとに超微粒子の粒径を変えても構わないとすれば、光路長調整層27rは、赤色の波長域の下限値を基準とすると、λ=600nmのとき、粒径は76nm以下とすることが好ましい。同様に、光路長調整層27gは、緑色の波長域の下限値を基準とすると、λ=500nmのとき、粒径は63nm以下とすることが好ましい。
【0076】
<有機EL装置の製造方法>
次に、有機EL装置10の製造方法について、図4〜図8を参照して説明する。図4は有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図5〜図8における(a)〜(q)は有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0077】
図4に示すように、本実施形態の有機EL装置10の製造方法は、素子基板1に反射層21を形成する反射層形成工程(ステップS1)と、反射層21を覆う絶縁膜22を形成する絶縁膜形成工程(ステップS2)と、画素電極23を形成する画素電極形成工程(ステップS3)とを備えている。また、第1隔壁部51を形成する第1隔壁部形成工程(ステップS4)と、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する第2隔壁部形成工程(ステップS5)と、画素電極23上に機能層24を形成する機能層形成工程(ステップS6)とを備えている。そして、機能層24と第2隔壁部52とを覆う陰極25を形成する陰極形成工程(ステップS7)と、陰極25の補助電極53を形成する補助電極形成工程(ステップS8)と、陰極25を覆う保護膜26を形成する第1保護膜形成工程(ステップS9)とを備えている。さらに、第3隔壁部54を形成する第3隔壁部形成工程(ステップS10)と、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに光路長調整層27r,27g,27bを形成する光路長調整層形成工程(ステップS11)と、光路長調整層27r,27g,27bを覆う半透過反射層28を形成する半透過反射層形成工程(ステップS12)と、半透過反射層28を覆う保護膜29を形成する第2保護膜形成工程(ステップS13)と、有機EL素子20が形成された素子基板1と封止基板2とを接合して封着する封止工程(ステップS14)とを備えている。
【0078】
なお、素子基板1上に有機EL素子20を駆動するための回路部1bを形成する工程の説明は省略するが、薄膜トランジスタや保持容量並びにこれらの素子を繋ぐ配線等の形成方法は公知の形成方法を用いることができる。
【0079】
図4のステップS1は、反射層形成工程である。ステップS1では、図5(a)に示すように、素子基板1の回路部1b上に発光画素7(図1参照)に対応した反射層21を形成する。形成方法としては、アルミ(Al)をターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ50nm〜100nmのアルミ薄膜を形成する。フォトリソグラフィ法により該アルミ薄膜を所定の形状にパターニングすることにより、反射層21を形成する。形成材料は前述したようにアルミに限定されず、AlNdでもよい。反射層21の形成方法は、スパッタ法に限定されず、マスク蒸着法を用いて選択的に形成する方法も採用することができる。そして、ステップS2へ進む。
【0080】
図4のステップS2は、絶縁膜形成工程である。ステップS2では、図5(b)に示すように、反射層21を覆う絶縁膜22を形成する。形成方法としては、酸化シリコンをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ5nm〜50nmの酸化シリコン薄膜を各反射層21を覆うように形成する。フォトリソグラフィ法により該酸化シリコン薄膜を所定の形状にパターニングすることにより、絶縁膜22を形成する。形成材料は前述したように酸化シリコンに限定されず、窒化シリコンまたはこれらの化合物でもよい。そして、ステップS3へ進む。
【0081】
図4のステップS3は、画素電極形成工程である。ステップS3では、図5(c)に示すように、反射層21上に画素電極23を形成する。形成方法としては、ITOをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ10nm〜20nmの透明導電膜を形成する。フォトリソグラフィ法により該透明導電膜を所定の形状にパターニングすることにより、画素電極23を形成する。形成材料は前述したようにITOに限定されず、IZOでもよい。反射層21は絶縁膜22により覆われているので、透明導電膜をパターニングする際に、反射層21がエッチングされることはない。また、絶縁膜22を介することにより画素電極23の密着性も確保できる。透明導電膜の形成方法は、スパッタ法に限定されず、真空蒸着法、CVD法等も採用することができる。そして、ステップS4へ進む。
【0082】
図4のステップS4は、第1隔壁部形成工程である。ステップS4では、図5(d)に示すように、各画素電極23間を埋めると共に、画素電極23の周縁部を覆う第1隔壁部51を形成する。形成方法としては、画素電極23の必要な部分をフォトレジストによりマスキングした状態で、酸化シリコンをターゲットとしスパッタ法で厚みがおよそ5nm〜50nmの薄膜を成膜して第1隔壁部51とする方法が挙げられる。そして、ステップS5へ進む。
【0083】
図4のステップS5は、第2隔壁部形成工程である。ステップS5では、図5(e)に示すように、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する。形成方法としては、第1隔壁部51が形成された素子基板1の表面に、感光性のポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂を塗布して、厚みがおよそ1μm〜1.5μmの感光性樹脂層を形成する。そして、当該感光性樹脂層を露光・現像することにより、画素電極23をとり囲む第2隔壁部52を形成する。第2隔壁部52により区画された領域が画素領域Eとなる。なお、第2隔壁部52の厚み(言い換えれば高さ)は、以降の工程において、画素領域Eの塗布される液状体の総量と画素領域Eの平面的な面積により決定される。そして、ステップS6へ進む。
【0084】
図4のステップS6は、機能層形成工程である。前述したように本実施形態の機能層24は、正孔注入輸送層、有機発光層、電子注入輸送層が積層されたものであり、本実施形態では、正孔注入輸送層、有機発光層をそれぞれ液滴吐出法(インクジェット法)を用いて形成する。
【0085】
まず、図5(e)に示した画素領域Eを後の液状体の吐出に対応して予め表面処理する。酸素ガスを処理ガスとするプラズマ処理を施す。これにより、無機材料からなる画素電極23の表面と画素領域E内に突出した同じく無機材料からなる第1隔壁部51の表面を親液化する。続いて、フッ素系の例えばCF4を処理ガスとするプラズマ処理を施す。これにより、有機材料からなる第2隔壁部52の表面(頭頂部、側面部)を撥液化する。
【0086】
次に、図6(f)に示すように、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体を画素領域Eに塗布し、塗布された液状体を乾燥させて溶媒成分を除去することにより成膜して正孔注入輸送層を形成する。塗布方法として、吐出ヘッドのノズルから液状体を液滴として吐出するインクジェット法を用いる。吐出ヘッドは、インクジェットプリンタなどの記録装置に搭載されているものであり、ノズルから液滴を吐出する駆動手段として圧電素子を備えている。当該液状体が充填された吐出ヘッドと素子基板1とを走査することにより、各画素領域Eに液滴として吐出する。
また、予め表面処理が施されているので画素領域E内に着弾した液滴は、よく濡れ広がる。第2隔壁部52に掛かって着弾した液滴も表面が撥液化されているので、画素領域E内に収容される。
これにより、必要量の液状体を液滴として(量的、吐出位置的な観点で)高精度に、且つ無駄なく塗布することが可能である。
【0087】
本実施形態では、正孔注入輸送層形成材料として、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を用い、これにグリコール系、アルコール系、エーテル系の有機溶媒(主溶媒)を加えて溶解させ、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルフォン酸(DMSO)、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)などの副溶媒を添加した液状体(溶液)を使用して、画素領域Eに吐出した。
【0088】
次に、有機発光層形成材料を含む液状体を同様にして画素領域Eに吐出し、吐出された液状体を乾燥させて溶媒成分を除去することにより成膜して、正孔注入輸送層上に有機発光層を形成する。当然ながら赤、緑、青、3色の発光色が得られる有機発光層形成材料が前述した形成材料の中から選択された3種の液状体(溶液)を用いる。当該液状体は、それぞれ異なる吐出ヘッドに充填され、ノズルから液滴として発光色に応じた所望の画素領域Eに吐出する。
【0089】
これらの液状体の乾燥方法としては、赤外線等を照射するランプアニールや、ヒータによる基板の加熱などの方法を採用することができるが、溶媒成分を均質に乾燥させることができる点で、減圧乾燥が好ましい。
【0090】
次に、前述した形成材料を用いて電子注入輸送層を有機発光層上に形成する。形成方法としては真空蒸着法を用いる。
【0091】
以上の工程を経ることにより、図6(g)に示すように、画素領域Eに機能層24r,24g,24bが形成される。なお、本実施形態では、各機能層24r,24g,24bの厚みがほぼ同等となるように液状体を塗布した。そして、ステップS7へ進む。
【0092】
図4のステップS7は、陰極形成工程である。ステップS7では、図6(h)に示すように、各機能層24r,24g,24bと第2隔壁部52とを覆う陰極25を形成する。形成方法としては、ITOを蒸着源とし真空蒸着法によって厚みがおよそ10nm〜20nmの透明な導電膜からなる陰極25を形成する。形成材料は前述したようにITOに限定されない。真空蒸着法はスパッタ法に比べて機能層24r,24g,24bに熱衝撃などのダメージを与え難いので、歩留りよく有機EL素子20を製造することができる。そして、ステップS8へ進む。
【0093】
図4のステップS8は、補助電極形成工程である。ステップS8では、図6(i)に示すように、第2隔壁部52を覆う陰極25上に補助電極53を形成する。形成方法としては、形成材料であるアルミを蒸着源としてマスク蒸着する方法が挙げられる。補助電極53の厚みや形成幅は、陰極25の面抵抗や有機EL素子20を流れる電流量を考慮して設定する。そして、ステップS9へ進む。
【0094】
図4のステップS9は、第1保護膜形成工程である。ステップS9では、図7(j)に示すように、陰極25および補助電極53を覆う保護膜26を形成する。形成方法としては、酸化シリコンを蒸着源とし真空蒸着法によって厚みがおよそ5nm〜50nmとなるように保護膜26を形成する。前述したように形成材料としては酸化シリコンに限定されない。そして、ステップS10へ進む。
【0095】
図4のステップS10は、第3隔壁部形成工程である。ステップS10では、図7(k)に示すように、第2隔壁部52上に第3隔壁部54を形成する。形成方法は、第2隔壁部52の場合と同じである。ポリイミド系樹脂またはアクリル系樹脂の有機材料からなり厚みおよそ1μm〜2μmの第3隔壁部54を形成する。そして、ステップS11へ進む。
【0096】
図4のステップS11は、光路長調整層形成工程である。本実施形態では、機能層24r,24g,24bの形成方法と同様にインクジェット法を用いて、光路長調整層27r,27g,27b(図3参照)を形成する。液状体(溶液)の構成は、以下の通り。
超微粒子;アンチモンドープ酸化スズ;粒径10nm〜30nm(数平均22nm)
分散溶媒;トルエンとトリメチルベンゼン混合液;混合比20:80
ATO固形分;30wt%
この液状体の塗布にあたり、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに対して、親液性と撥液性とを付与する表面処理(プラズマ処理)を予め行うことが好ましい。
【0097】
図7(m)に示すように、超微粒子を含む上記液状体を吐出ヘッドに充填し、画素領域Eに液滴として吐出する。上記液状体の吐出量は、発光色ごとに異ならせる。そして、図8(n)に示すように、吐出された上記液状体を乾燥することにより成膜して、発光色ごとに層厚が異なる光路長調整層27r,27g,27bを形成する。インクジェット法を採用しているので、発光色ごとに所定量の上記液状体を精度よく塗布することができる。これにより、光路長調整層27r,27g,27bの層厚をねらいの値(光路長調整層27rが150nm、光路長調整層27gが90nm、光路長調整層27bが60nm)とすることができる。
【0098】
なお、上記液状体の構成は、これに限定されない。例えば、超微粒子としては、ATO以外にも、In2O3、SnO2、ITO、SiO2、TiO2、ZnOなどの超微粒子を用いることもできる。この場合、超微粒子の粒径は、およそ22nmであるが、吐出ヘッドのノズルから上記液状体を吐出することを考慮すれば、ノズル径よりも小さくなるように設定することは言うまでもない。
また、分散溶媒に対する超微粒子の分散性を考慮して、樹脂バインダーに超微粒子を混ぜ合わせたものを用いてもよい。樹脂バインダーとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。そして、ステップS12へ進む。
【0099】
図4のステップS12は、半透過反射層形成工程である。ステップS12では、図8(p)に示すように、各光路長調整層27r,27g,27bと第3隔壁部54とを覆う半透過反射層28を形成する。形成方法としては、形成材料としてMg−Agの合金を使用し、真空蒸着法またはスパッタ法を用いて成膜する方法が挙げられる。前述したように、50%以上の透過率を確保しつつ、光反射性を持たせるため、膜厚は、およそ10nm〜20nmとする。形成材料はMg−Agの合金に限定されず、Ca−Agの合金でもよい。そして、ステップS13へ進む。
【0100】
図4のステップS13は、第2保護膜形成工程である。ステップS13では、図8(q)に示すように、半透過反射層28を覆う保護膜29を形成する。保護膜29の形成方法は、ステップS9と同様なため、説明を省略する。そして、ステップS14へ進む。
【0101】
図4のステップS14は、封止工程である。ステップS14では、図3に示すように、素子基板1と封止基板2とを空間70を介して封着する。
【0102】
以上の有機EL装置10の製造工程によれば、インクジェット法を用いているので、必要量の液状体が精度よく所望の画素領域Eに吐出され、所望の層厚を有する機能層24r,24g,24bおよび光路長調整層27r,27g,27bを形成することができる。すなわち、光共振構造が最適化された有機EL装置10を製造することができる。
また、有機EL素子20の発光状態(輝度や分光特性、色度分布)のばらつきを考慮して、有機EL素子20上に光路長調整層27r,27g,27bと半透過反射層28とを積層すれば、より好適な光共振構造を有する有機EL装置10を製造することができる。
【0103】
図9は有機EL装置の分光特性を示すグラフである。図9に示すように、本実施形態の有機EL装置10は、光路長調整層27r,27g,27bを設けない場合に比べて、赤色(R)の波長域(600nm〜750nm)、緑色(G)の波長域(500nm〜600nm)、青色(B)の波長域(400nm〜500nm)においてそれぞれピーク波長が得られる。また、その光強度は、およそ1.5倍に上昇している。さらには、分光特性がシャープになっている。
【0104】
図10は有機EL装置の発光における色度分布を示すグラフである。図10に示すように、本実施形態の有機EL装置10は、色再現性を示すNTSC比がほぼ100%であった。これに対して光路長調整層27r,27g,27bを設けない場合は、NTSC比が63%であった。すなわち、色再現性が向上した。
【0105】
(実施形態2)
<他のトップエミッション型の有機EL装置>
次に、他のトップエミッション型の有機EL装置について図11を参照して説明する。なお、実施形態1の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。
【0106】
図11は、他の有機EL装置の構造を示す要部概略断面図である。図11に示すように、本実施形態の有機EL装置80は、上記実施形態1の有機EL装置10に対して、画素領域Eに発光色に対応したフィルタエレメントとしての着色層61r,61g,61bを備えている。また、第3隔壁部54上に第4隔壁部55を設け、着色層61r,61g,61bが液滴吐出法(インクジェット法)を用いて形成されている。
【0107】
着色層61r,61g,61bは、公知の材料を用いることができ、例えば、色材としての顔料が透明な有機樹脂材料に分散された着色層形成材料からなる。着色層61rは赤色のフィルタエレメントであり、着色層61gは緑色のフィルタエレメントであり、着色層61bは青色のフィルタエレメントである。
【0108】
着色層61r,61g,61bは、画素領域Eにおいて保護膜29上に積層形成されている。
【0109】
第2隔壁部52上に形成された補助電極53は、アルミなどの導電性金属材料からなり、低い面抵抗を示す膜厚を有することから、遮光性をも兼ね備えることとなる。したがって、着色層61r,61g,61b間において遮光膜(所謂ブラックマトリクス)の機能を果たす。
【0110】
このような有機EL装置80によれば、反射層21と半透過反射層28との間で最適化された光共振器が構成されると共に、有機EL素子20の発光色に対応した着色層61r,61g,61bを備えているので、発光の色度補正がなされ、高い発光輝度と、優れた色再現性とを実現したトップエミッション型の有機EL装置80を提供することができる。
【0111】
また、封止基板2の素子基板1に面する側に各色のフィルタエレメントを設ける場合に比べて、着色層61r,61g,61bが保護膜29上に積層されているため、視差(視角方向の差)による色度ずれが防止される。
【0112】
なお、有機EL装置80の着色層61r,61g,61bは、3色に限定されない。例えば、有機EL素子20の発光における色度に応じて、少なくとも1色の着色層を備えれば、色度補正がなされ、色再現性を高めることができる。
【0113】
<他のトップエミッション型の有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置80の製造方法について図12および図13を参照して説明する。図12は実施形態2の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図13(a)および(b)は実施形態2の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0114】
図12に示すように、本実施形態の有機EL装置80の製造方法は、素子基板1に反射層21を形成する反射層形成工程(ステップS21)と、反射層21を覆う絶縁膜22を形成する絶縁膜形成工程(ステップS22)と、画素電極23を形成する画素電極形成工程(ステップS23)とを備えている。また、第1隔壁部51を形成する第1隔壁部形成工程(ステップS24)と、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する第2隔壁部形成工程(ステップS25)と、画素電極23上に機能層24を形成する機能層形成工程(ステップS26)とを備えている。また、機能層24と第2隔壁部52とを覆うように陰極25を形成する陰極形成工程(ステップS27)と、陰極25の補助電極53を形成する補助電極形成工程(ステップS28)と、陰極25を覆うように保護膜26を形成する第1保護膜形成工程(ステップS29)とを備えている。また、第3隔壁部54を形成する第3隔壁部形成工程(ステップS30)と、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに光路長調整層27r,27g,27bを形成する光路長調整層形成工程(ステップS31)と、光路長調整層27r,27g,27bを覆うように半透過反射層28を形成する半透過反射層形成工程(ステップS32)とを備えている。そして、半透過反射層28を覆う保護膜29を形成する第2保護膜形成工程(ステップS33)と、第3隔壁部54上に第4隔壁部55を形成する第4隔壁部形成工程(ステップS34)と、着色層61r,61g,61bを形成する着色層形成工程(ステップS35)と、有機EL素子20が形成された素子基板1と封止基板2とを接合して封着する封止工程(ステップS36)とを備えている。
【0115】
ステップS21〜ステップS33は、上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法におけるステップS1〜ステップS13と同じであるため説明を省略する。ステップS36の封止工程も同様である。したがって、上記実施形態1と異なるステップS34、ステップS35について説明する。
【0116】
図12のステップS34は、第4隔壁部形成工程である。ステップS34では、図11に示すように、第3隔壁部54上に第4隔壁部55を形成する。実質的には、保護膜29上に形成する。形成方法は、第3隔壁部54の形成方法と同じであり、感光性のポリイミド系樹脂または感光性のアクリル系樹脂を塗布し、これを露光・現像することにより、有機材料をからなる第4隔壁部55を形成する。厚み(高さ)はおよそ1.5μm〜2μmである。そして、ステップS35へ進む。
【0117】
図12のステップS35は、着色層形成工程である。ステップS35では、図13(a)に示すように、前述した着色層形成材料を含む液状体を色ごとに異なる吐出ヘッドに充填し、吐出ヘッド(R,G,B)と素子基板1とを走査して、第4隔壁部55により区画された所望の画素領域Eに対応する色の液状体を吐出する。必要量の液状体が液滴として画素領域Eに吐出される。
【0118】
液状体は、溶媒として水や有機溶媒を用いることができる。溶媒に対して5wt%〜15wt%程度の着色層形成材料を分散させる。吐出特性を安定化させるために、粘度や表面張力を調整する。調整方法としては、補助的な溶媒を用いたり、界面活性剤等を添加する方法がある。粘度が3mPa,s以上20mPa,s以下、表面張力が30mN/m以上45mN/m以下に調整されてなることが好ましい。
【0119】
なお、上記3色の液状体を吐出するにあたり、第4隔壁部55により区画された画素領域Eに対して親液性と撥液性とを付与する表面処理(プラズマ処理)を予め行うことが好ましい。
【0120】
吐出された液状体を減圧乾燥などの方法を用いて乾燥し、溶媒成分を除去することにより成膜して、図13(b)に示すように、画素領域E内に所望の厚みの着色層61r,61g,61bを形成することができる。
【0121】
このような有機EL装置80の製造方法によれば、着色層61r,61g,61bにより発光の色度補正がなされ、高い発光輝度と、優れた色再現性とを実現したトップエミッション型の有機EL装置80を製造することができる。
また、インクジェット法を用いて着色層61r,61g,61bを形成するので、着色層形成材料の無駄を省いて効率よく着色層61r,61g,61bを形成することができる。
【0122】
さらに、着色層61r,61g,61bは、2つの保護膜26,29と光路長調整層27とを介して有機EL素子20に積層されるので、湿式のインクジェット法を用いて形成しても、有機EL素子20の発光に与える影響を少なくすることができる。
【0123】
なお、着色層形成工程(ステップS35)では、3色の液状体を吐出することに限定されない。有機EL素子20の発光における色度に応じて、少なくとも1色の液状体を吐出し、少なくとも1色の着色層を形成すればよい。
【0124】
図14(a)は実施形態2の有機EL装置の分光特性を示すグラフ、(b)は実施形態2の有機EL装置の色度図である。図14(a)に示すように、本実施形態の有機EL装置80は、光路長調整層27r,27g,27bに加えて、着色層61r,61g,61bを設けることにより、発光色ごとの分光特性がさらにシャープになっている。
また、図14(b)に示すように、色再現性を示すNTSC比は、さらに拡張して118%の値を示した。すなわち、上記実施形態1の有機EL装置10に比べてさらに高い色再現性を有する。
【0125】
(実施形態3)
<ボトムエミッション型の有機EL装置>
次に、ボトムエミッション型の有機EL装置について図15を参照して説明する。なお、実施形態1の構成と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。また、主に構成が異なる部分について説明する。
【0126】
図15は実施形態3の有機EL装置の構造を示す概略断面図である。図15に示すように、本実施形態の有機EL装置90は、有機EL素子20からの発光が素子基板1側に射出するボトムエミッション型の有機EL装置である。上記実施形態1の有機EL装置10に対して、光共振器等の構造が異なる。
【0127】
すなわち、素子基板1は、透明なガラス基板等を用いる。これに対して封止基板2は、透明なガラス基板でも、不透明なセラミックス基板やステンレスなどの金属基板でもよい。
【0128】
図示省略したが、素子基板1は、有機EL素子20をスイッチングするための回路部を備えることは言うまでもない。
【0129】
素子基板1上に半透過反射層28と、半透過反射層28を覆う絶縁膜22と、画素電極23とが順に積層されている。
【0130】
第1隔壁部51および第2隔壁部52並びに第3隔壁部54により区画された画素領域Eには、画素電極23上に機能層24、陰極25、保護膜26、光路長調整層27、反射層21、保護膜29が順に積層されている。
【0131】
画素電極23と、機能層24と、陰極25とにより有機EL素子20が構成されている。機能層24rは赤(R)の発光が得られる有機発光層を有し、機能層24gは緑(G)の発光が得られる有機発光層を有し、機能層24bは青(B)の発光が得られる有機発光層を有している。半透過反射層28と反射層21との間で光共振器が構成され、発光色に対応して最適な光路長を付与する光路長調整層27r,27g,27bが設けられている。
【0132】
光路長調整層27r,27g,27bは、それぞれアンチモンドープ酸化スズ(ATO)からなる数平均粒径が22nmの超微粒子により構成され、上記実施形態1と同じである。すなわち、光路長調整層27rの層厚は150nmであり、光路長調整層27gの層厚は90nmであり、光路長調整層27bの層厚は60nmである。
【0133】
このような構成によれば、最適化された光共振構造を備え、高い発光輝度と色再現性を有するボトムエミッション型の有機EL装置90を提供することができる。
【0134】
<ボトムエミッション型の有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置90の製造方法について図16および図17を参照して説明する。図16は実施形態3の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、図17(a)〜(d)は実施形態3の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0135】
図16に示すように、本実施形態の有機EL装置90の製造方法は、素子基板1に半透過反射層28を形成する半透過反射層形成工程(ステップS41)と、半透過反射層28を覆う絶縁膜22を形成する絶縁膜形成工程(ステップS42)と、画素電極23を形成する画素電極形成工程(ステップS43)とを備えている。また、第1隔壁部51を形成する第1隔壁部形成工程(ステップS44)と、第1隔壁部51上に第2隔壁部52を形成する第2隔壁部形成工程(ステップS45)と、画素電極23上に機能層24を形成する機能層形成工程(ステップS46)とを備えている。そして、機能層24と第2隔壁部52とを覆う陰極25を形成する陰極形成工程(ステップS47)と、陰極25の補助電極53を形成する補助電極形成工程(ステップS48)と、陰極25を覆う保護膜26を形成する第1保護膜形成工程(ステップS49)とを備えている。さらに、第3隔壁部54を形成する第3隔壁部形成工程(ステップS50)と、第3隔壁部54により区画された画素領域Eに光路長調整層27r,27g,27bを形成する光路長調整層形成工程(ステップS51)と、光路長調整層27r,27g,27bを覆う反射層21を形成する反射層形成工程(ステップS52)と、反射層21を覆う保護膜29を形成する第2保護膜形成工程(ステップS53)と、有機EL素子20が形成された素子基板1と封止基板2とを接合して封着する封止工程(ステップS54)とを備えている。
【0136】
以降、上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法に対して同じ工程の説明は省略し、異なる工程について説明する。
【0137】
図16のステップS41は、半透過反射層形成工程である。ステップS41では、図17(a)に示すように、素子基板1の回路部(図示省略)上に発光画素7(図1参照)に対応した半透過反射層28を形成する。形成方法としては、形成材料としてMg−Agの合金を使用し、マスク蒸着する方法が挙げられる。50%以上の透過率を確保しつつ、光反射性を持たせるため、膜厚は、およそ10nm〜20nmとする。形成材料はMg−Agの合金に限定されず、Ca−Agの合金でもよい。そして、ステップS42へ進む。
【0138】
図16のステップS42には、絶縁膜形成工程である。ステップS42では、図17(b)に示すように、半透過反射層28を覆う絶縁膜22を形成する。形成方法としては、酸化シリコンをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ5nm〜50nmの酸化シリコン薄膜を半透過反射層28を覆うように形成する。フォトリソグラフィ法により該酸化シリコン薄膜を所定の形状にパターニングすることにより、絶縁膜22を形成する。形成材料は前述したように酸化シリコンに限定されず、窒化シリコンまたはこれらの化合物でもよい。そして、ステップS43へ進む。
【0139】
図16のステップS43は、画素電極形成工程である。ステップS43では、図17(c)に示すように、半透過反射層28上に画素電極23を形成する。形成方法としては、ITOをターゲットとしスパッタ法によって厚みがおよそ10nm〜20nmの透明導電膜を形成する。フォトリソグラフィ法により該透明導電膜を所定の形状にパターニングすることにより、画素電極23を形成する。形成材料はITOに限定されず、IZOでもよい。透明導電膜の形成方法は、スパッタ法に限定されず、真空蒸着法、CVD法等も採用することができる。そして、ステップS44へ進む。
【0140】
図16のステップS44〜ステップS51は、上記実施形態1のステップS4〜ステップS11と同じであるため、説明を省略する。
【0141】
続いて、図16のステップS52は、反射層形成工程である。ステップS52では、光路長調整層27r,27g,27bと第3隔壁部54とを覆うように反射層21を形成する。形成方法としては、形成材料としてアルミ(Al)を用い、真空蒸着法またはスパッタ法により成膜する方法が挙げられる。厚みがおよそ50〜100nmとなるように成膜する。そして、ステップS53へ進む。
【0142】
図16のステップ53は、第2保護膜形成工程である。ステップS53では、図17(d)に示すように、反射層21を覆う保護膜29を形成する。形成方法は、酸化シリコンを蒸着源とし真空蒸着法によって厚みがおよそ5nm〜50nmとなるように保護膜29を形成する。形成材料としては酸化シリコンに限定されず、窒化シリコンまたはこれらの化合物でもよい。
【0143】
このような有機EL装置90の製造方法によれば、最適化された光共振構造を備え、高い発光輝度と色再現性を有するボトムエミッション型の有機EL装置90を製造することができる。
【0144】
(実施形態4)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について携帯型電話機を例に説明する。図18は、電子機器としての携帯型電話機を示す概略図である。
【0145】
図18に示すように、本実施形態の電子機器としての携帯型電話機100は、操作ボタン103を備えた本体102と、本体102にヒンジを介して折畳式に取り付けられた表示部101とを備えている。
表示部101には、上記実施形態1の有機EL装置10または上記実施形態2の有機EL装置80あるいは上記実施形態3の有機EL装置90のいずれかが搭載されている。
したがって、高い発光輝度と色再現性を有し、見映えのよい携帯型電話機100を提供することができる。
【0146】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0147】
(変形例1)上記実施形態1の有機EL装置10において、各機能層24r,24g,24bの厚みはほぼ同等としたが、これに限定されない。例えば、発光色ごとに厚みを異ならせてもよい。言い換えれば、所望の発光が得られるように各機能層24r,24g,24bを構成する有機発光層などの層構造を変えてもよい。各機能層24r,24g,24bの厚みが異なっていたとしても、最適な光学的距離Lとなるように光路長調整層27r,27g,27bの層厚を設定すればよい。また、光路長調整層27r,27g,27bを液滴吐出法(インクジェット法)により形成するので、液状体の吐出量を調整することにより、層厚の調整を容易に行うことができる。
【0148】
(変形例2)上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法において、機能層24r,24g,24bのうち正孔注入輸送層、有機発光層を形成する方法は、液滴吐出法(インクジェット法)に限定されない。例えば、所望の部位に成膜が可能なマスク蒸着法を用いることができる。したがって、有機発光層は、低分子の有機発光材料を用いて成膜してもよい。
【0149】
(変形例3)発光色に応じた光路長調整層27r,27g,27bを含む光共振器の構成は、3色の発光が得られる有機EL素子20に対応したものに限定されない。図19(a)および(b)は、変形例の有機EL装置を示す概略図である。同図(a)は概略正面図、同図(b)は同図(a)のA−A線で切った概略断面図である。例えば、図19(a)に示すように、変形例の有機EL装置200は、平面視でほぼ円形の発光画素207が千鳥に配列した素子基板201と、素子基板201に接合され、これを封着する封止基板202とを備える。
発光画素207の等価回路は、図2に示した発光画素7と同様であって、有機EL素子と薄膜トランジスタと保持容量とを有する。発光画素207は、例えば、赤色などの単色発光が得られるものである。
上記薄膜トランジスタを駆動する駆動回路との電気的な接続は、端子部201aに実装された中継基板203を介して行われる。
図19(b)に示すように、素子基板201上には、発光が素子基板201側に漏れないように膜形成領域204に亘って設けられた反射層211と、反射層211を覆う絶縁膜212と、反射層211に積層された複数の画素電極213とを備える。
複数の画素電極213を覆って順に積層された機能層214、陰極216、保護膜218、光路長調整層219、半透過反射層221、保護膜222を有する。
画素電極213と、機能層214と、陰極216とにより有機EL素子が構成され、反射層211と半透過反射層221との間で光共振器が構成されている。
膜形成領域204は、複数の画素電極213を囲むように設けられ、第1隔壁部215とこれに重畳された第2隔壁部220とにより区画されている。第1隔壁部215上には補助電極217が設けられている。
封止基板202は、額縁状に設けられた接着層206により素子基板201と接合されている。
このような構成によれば、高い発光輝度で単色の発光が得られる複数の有機EL素子を備えたトップエミッション型の有機EL装置200を提供することができる。このような有機EL装置200は、例えば、画像形成装置における感光体ドラムの露光用光源として用いることができる。
また、各部の製造方法は、上記実施形態1の有機EL装置10の製造方法を適用することができる。複数の有機EL素子を取り囲むように第1隔壁部215、第2隔壁部220を有しているので、機能層214および光路長調整層219は、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて形成することができる。言い換えれば、隔壁部は有機EL素子を1つずつ区画しなくてもよい。
【0150】
(変形例4)上記実施形態1の有機EL装置10または上記実施形態2の有機EL装置80あるいは上記実施形態3の有機EL装置90のいずれかが搭載される電子機器は、携帯型電話機100に限定されない。例えば、パーソナルコンピュータや携帯型情報端末、カーナビゲータ、ビューワーなどの各種表示装置などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】実施形態1の有機EL装置を示す概略正面図。
【図2】実施形態1の有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】実施形態1の有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図4】実施形態1の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図5】(a)〜(e)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図6】(f)〜(i)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図7】(j)〜(m)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図8】(n)〜(q)は実施形態1の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図9】実施形態1の有機EL装置の分光特性を示すグラフ。
【図10】実施形態1の有機EL装置の発光における色度分布を示すグラフ。
【図11】実施形態2の有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図12】実施形態2の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図13】(a)および(b)は実施形態2の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図14】(a)は実施形態2の有機EL装置の分光特性を示すグラフ、(b)は実施形態2の有機EL装置の色度図。
【図15】実施形態3の有機EL装置の構造を示す概略断面図。
【図16】実施形態3の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート。
【図17】(a)〜(d)は実施形態3の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図。
【図18】実施形態4の電子機器としての携帯型電話機を示す概略図。
【図19】(a)は変形例の有機EL装置を示す概略正面図、(b)は(a)のA−A線で切った概略断面図。
【符号の説明】
【0152】
1…基板としての素子基板、2…封止基板、7…発光画素、10,80…トップエミッション型の有機EL装置、20…有機EL素子、21…反射層、23…第1の電極としての画素電極、24,24r,24g,24b…機能層、25…第2の電極としての陰極、26,29…保護膜、27,27r,27g,27b…光路長調整層、28…半透過反射層、52…隔壁部としての第2隔壁部、53…補助電極、61r,61g,61b…フィルタエレメントとしての着色層、90…ボトムエミッション型の有機EL装置、100…電子機器としての携帯型電話機、E…画素領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップエミッション型の有機EL装置であって、
基板上に順に積層形成された反射層と、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、半透過反射層と、を備え、
前記反射層と前記半透過反射層の間で光共振器が構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記半透過反射層上に発光色に対応した少なくとも1色のフィルタエレメントが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記半透過反射層と前記少なくとも1色のフィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
ボトムエミッション型の有機EL装置であって、
透明な基板上に順に積層形成された半透過反射層、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、反射層と、を備え、
前記半透過反射層と前記反射層との間で光共振器が構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項5】
前記基板上の複数の画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層が形成され、
前記発光色に対応して前記光路長調整層の層厚が設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記光路長調整層は、光透過性の超微粒子または前記超微粒子を含む光透過性の高分子膜からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記光路長調整層における光の散乱状態がレイリー散乱となるように、前記超微粒子の粒径が選定されていることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記複数の画素領域を区画する隔壁部を備え、
前記第2の電極は、前記隔壁部と前記複数の画素領域とを覆うように形成され、
前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
トップエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、
基板上の画素領域に反射層を形成する反射層形成工程と、
前記反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、
前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、
前記光路長調整層上に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程とを備え、
前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板上の複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、
フィルタエレメント形成材料を含む少なくとも1色の液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して、少なくとも1色のフィルタエレメントを前記半透過反射層上に形成する成膜工程とを備えたことを特徴とする請求項11に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項13】
前記半透過反射層と前記フィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えることを特徴とする請求項12に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項14】
ボトムエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、
基板上の画素領域に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程と、
前記半透過反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、
前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、
前記光路長調整層上に反射層を形成する反射層形成工程とを備え、
前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項15】
前記機能層形成工程は、前記基板上の複数の前記画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層を形成し、
前記光路長調整層形成工程は、前記機能層における発光波長に応じて、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項16】
前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、
前記機能層形成工程は、有機発光層形成材料を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記有機発光層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項17】
前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、
前記光路長調整層形成工程は、光透過性の超微粒子を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記光路長調整層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護層形成工程を備えることを特徴とする請求項17に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項19】
前記第2電極形成工程は、前記隔壁部と前記複数の前記画素領域とを覆うように前記第2の電極を形成し、
前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極を形成する補助電極形成工程を備えたことを特徴とする請求項11乃至18のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項1】
トップエミッション型の有機EL装置であって、
基板上に順に積層形成された反射層と、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、半透過反射層と、を備え、
前記反射層と前記半透過反射層の間で光共振器が構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記半透過反射層上に発光色に対応した少なくとも1色のフィルタエレメントが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
前記半透過反射層と前記少なくとも1色のフィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
ボトムエミッション型の有機EL装置であって、
透明な基板上に順に積層形成された半透過反射層、透明な第1の電極と、有機発光層を含む機能層と、透明な第2の電極と、光路長調整層と、反射層と、を備え、
前記半透過反射層と前記反射層との間で光共振器が構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項5】
前記基板上の複数の画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層が形成され、
前記発光色に対応して前記光路長調整層の層厚が設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記光路長調整層は、光透過性の超微粒子または前記超微粒子を含む光透過性の高分子膜からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記光路長調整層における光の散乱状態がレイリー散乱となるように、前記超微粒子の粒径が選定されていることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜が設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記複数の画素領域を区画する隔壁部を備え、
前記第2の電極は、前記隔壁部と前記複数の画素領域とを覆うように形成され、
前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の有機EL装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項11】
トップエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、
基板上の画素領域に反射層を形成する反射層形成工程と、
前記反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、
前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、
前記光路長調整層上に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程とを備え、
前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板上の複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、
フィルタエレメント形成材料を含む少なくとも1色の液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して、少なくとも1色のフィルタエレメントを前記半透過反射層上に形成する成膜工程とを備えたことを特徴とする請求項11に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項13】
前記半透過反射層と前記フィルタエレメントとの間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えることを特徴とする請求項12に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項14】
ボトムエミッション型の有機EL装置の製造方法であって、
基板上の画素領域に半透過反射層を形成する半透過反射層形成工程と、
前記半透過反射層上に透明な第1の電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1の電極上に有機発光層を含む機能層を形成する機能層形成工程と、
前記機能層上に透明な第2の電極を形成する第2電極形成工程と、
前記第2の電極上に光路長調整層を形成する光路長調整層形成工程と、
前記光路長調整層上に反射層を形成する反射層形成工程とを備え、
前記光路長調整層形成工程は、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層を透過する発光と、前記有機発光層から射出し前記半透過反射層と前記反射層とで反射して前記半透過反射層を透過する発光とが共振するように、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項15】
前記機能層形成工程は、前記基板上の複数の前記画素領域に複数の発光色に対応した前記機能層を形成し、
前記光路長調整層形成工程は、前記機能層における発光波長に応じて、前記光路長調整層の層厚を設定することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項16】
前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、
前記機能層形成工程は、有機発光層形成材料を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記有機発光層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする請求項11乃至15のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項17】
前記基板上の前記複数の前記画素領域を区画する隔壁部を形成する隔壁部形成工程を備え、
前記光路長調整層形成工程は、光透過性の超微粒子を含む液状体を前記画素領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記光路長調整層を形成する成膜工程とを含むことを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2の電極と前記光路長調整層との間に、ガスバリア性を有する保護膜を形成する保護層形成工程を備えることを特徴とする請求項17に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項19】
前記第2電極形成工程は、前記隔壁部と前記複数の前記画素領域とを覆うように前記第2の電極を形成し、
前記隔壁部上に前記第2の電極に比べて面抵抗が低い補助電極を形成する補助電極形成工程を備えたことを特徴とする請求項11乃至18のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−272150(P2009−272150A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121926(P2008−121926)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]