説明

有機EL装置とその製造方法及び表示装置並びに電子機器

【課題】キャリアの輸送性を容易に調整する。
【解決手段】液相法により第1有機層103を成膜する工程と、第1有機層103に対し
て不溶化処理を施す工程と、不溶化処理を施された第1有機層103上に液相法により第
2有機層104を成膜する工程とを有し、第2有機層104におけるキャリアの輸送特性
に基づいて、第1有機層103の不溶化処理条件を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置とその製造方法及び表示装置並びに電子機器に関するものであ
る。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトルルミネッセンス(EL)素子は、有機材料を含む複数の薄膜を第1電極
と第2電極との間で挟んだ構造を有しており、これら2つの電極から注入したキャリアが
有機薄膜中で再結合することにより発光する素子である。
この有機EL素子(有機EL装置)は、薄型・軽量といった特徴を有し、ディスプレイ
への応用が期待されている。有機EL素子の製造方法としては、一般的に真空蒸着法等の
ドライプロセスや、スピンコート法、液滴吐出法(インクジェット法)等に代表されるウ
ェットプロセスが挙げられ、いずれの場合も複数の有機層を積層することにより有機EL
装置を形成している。
【0003】
これらの製造プロセスのうち、ウェットプロセス(液相法)は、大面積の有機ELパネ
ルを製造することが可能であることから注目されている技術であるが、複数の有機層を積
層する必要があることから、隣接する層間で互いに溶け出さないように異なる溶媒を交互
に用いて塗布・積層させたり、または有機層を成膜した後に溶媒に対して溶解しないよう
に不溶化処理を行う必要がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、有機EL素子の正孔注入層または正孔輸送層として、
ポリチオフェン誘導体とシランカップリング剤とを含有する液体を塗布法により成膜し、
熱硬化させる技術が開示されている。
また、特許文献2には、二重結合基やエポキシ基、環状エーテル基を有する低分子架橋
剤を含んだキャリア輸送性または発光性を有するポリマーを用い、紫外線照射、電子ビー
ム照射、プラズマ照射、または加熱により架橋させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−208254号公報
【特許文献2】特開2005−243300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
有機EL装置においては、2つの電極からそれぞれ注入される電子と正孔とのバランス
を保つことが難しいとされている。例えば、発光スペクトルを変更するために、使用する
材料を変えることで発光層中の発光構造を変化させた場合、同時に電子と正孔との輸送能
力にも変化が生じる。そのため、異なる発光色を有する発光材料では電子と正孔との輸送
能力が相違することから、同じ正孔注入層または正孔輸送層を用いた場合でも、発光層の
一つに対して最適なキャリア特性であっても、他の発光層に対しては最適とは限らず、各
色の発光層間でキャリアバランスを保つことが困難であった。
【0006】
そこで、上記キャリアバランスを保つために、発光材料や正孔注入層形成材料、正孔輸
送層形成材料等を適宜変更することによりキャリア輸送性を調整することも考えられるが
、各種発光構造を有する有機EL装置毎に材料を変更すると、生産効率が大幅に低下し、
また製造コストが上昇するという問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、キャリアの輸送性を容易に調整
できる有機EL装置とその製造方法及び表示装置並びに電子機器を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の有機EL装置の製造方法は、有機層を介して輸送されたキャリアにより発光層
が発光する有機EL装置の製造方法であって、液相法により第1有機層を成膜する工程と
、前記第1有機層に対して不溶化処理を施す工程と、前記不溶化処理を施された前記第1
有機層上に液相法により第2有機層を成膜する工程とを有し、前記第2有機層における前
記キャリアの輸送特性に基づいて、前記第1有機層の不溶化処理条件を調整することを特
徴とするものである。
【0009】
従って、本発明の有機EL装置の製造方法では、不溶化条件を調整することにより、第
2有機層に対して完全には不溶化しない状態とすることができる。そのため、第2有機層
形成材料を含む液状体を第1有機層上に塗布した際に、第1有機層形成材料が上記液状体
の溶液に溶出することにより、第2有機層には第1、第2有機層形成材料が混在する層が
形成される。第1有機層形成材料は、元来キャリア輸送性を有しているため、この材料が
第2有機層に溶出することにより、第2有機層でのキャリア輸送性を増加させることがで
きる。そのため、第1有機層の不溶化処理条件に応じて第1有機層形成材料の溶出量を変
化させ、第2有機層におけるキャリアの輸送特性を容易に調整することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、発光特性の異なる複数の前記発光層の間で前記不溶化処理条件を互
いに異ならせる構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、発光層毎に不溶化処理条件を設定することにより、発光特性
に応じてキャリアの輸送特性を制御することが可能になり、複数の発光層間でのキャリア
バランスを容易に保つことができる。
【0011】
また、この場合、第1発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層を成膜し
て前記不溶化処理を施した後に、第2発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有
機層を成膜して前記不溶化処理を施す手順を採用することができる。
この前記不溶化処理としては、加熱処理を含む手順とすることができる。
【0012】
これにより、本発明では、加熱処理のように異なる発光特性を有する複数の発光層に対
応する第1有機層に対して、一括して不溶化処理が施される処理であっても、異なる発光
特性の発光層毎に第1有機層の不溶化状態を異ならせることが可能になる。
このように、第1発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層に対して前記
不溶化処理を施した後に、第2発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層を
成膜する際には、発光層毎に選択的に第1有機層形成材料を含む液状体を塗布できる液滴
吐出方式を採用することが好ましい。
【0013】
また、本発明では、第1発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層、及び
第2発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層を一括的に成膜した後に、前
記異なる不溶化処理条件で前記第1有機層にそれぞれ前記不溶化処理を施す手順も好適に
採用できる。
この前記不溶化処理としては、エネルギ光の照射処理を含む手順とすることができる。
【0014】
これにより、本発明では、エネルギ光の照射処理のように、マスク等を用いることによ
り選択的に第1有機層に対する不溶化処理を施せる場合には、第1発光特性及び第2発光
特性を有する発光層に対応する第1有機層の不溶化状態を容易に異ならせることが可能に
なるため、これら第1有機層を一括的に成膜することができる。
上記照射処理に用いられるエネルギ光としては、紫外線、電子ビーム、プラズマ光等を
選択できる。
【0015】
上記の不溶化処理としては、前記第1有機層を構成する材料の分子について、当該分子
間に架橋を生じさせる処理を含む手順とすることが好ましい。
これにより、本発明では、不溶化条件(架橋処理条件)を調整することにより、第2有
機層に対して完全には架橋しない部分を形成することができる。そのため、第2有機層形
成材料を含む液状体を第1有機層上に塗布した際に、架橋反応により架橋しなかった第1
有機層形成材料が上記液状体の溶液に溶出することにより、第2有機層には第1、第2有
機層形成材料が混在する層が形成される。第1有機層形成材料は、元来キャリア輸送性を
有しているため、この材料が第2有機層に溶出することにより、第2有機層でのキャリア
輸送性を増加させることができる。そのため、第1有機層の不溶化処理条件に応じて第1
有機層形成材料の架橋率、すなわち溶出量を変化させ、第2有機層におけるキャリアの輸
送特性を容易に調整することが可能になる。
【0016】
なお、架橋処理として、第1有機層形成材料に架橋剤を含有させておき、当該架橋剤が
活性化される条件の処理を行うものとすることもできる。
である。
キャリア輸送性有機材料としては、トリフェニルアミン誘導体やポリチオフェン誘導体
等を用いることができ、架橋性有機材料としては、シランカップリング架橋剤や二重結合
基、エポキシ基、環状エーテル基等を含む架橋剤を用いることができる。
【0017】
前記第1有機層または前記第2有機層のいずれか一方としては、正孔輸送層や正孔注入
層、電子輸送層、電子注入層の他に、前記発光層とすることができる。
【0018】
一方、本発明の有機EL装置は、有機層を介して輸送されたキャリアにより発光層が発
光する有機EL装置であって、液相法により成膜された第1有機層と、前記液相法により
前記第1有機層上に成膜された第2有機層とを有し、前記第2有機層は、当該第2有機層
における前記キャリアの輸送特性に基づいて、第1有機層形成材料と第2有機層形成材料
とが混合された混合有機層を有することを特徴とするものである。
【0019】
従って、本発明では、第1有機層形成材料が上記液状体の溶液に溶出することにより、
第2有機層に第1、第2有機層形成材料が混在する層が形成されることにより、元来キャ
リア輸送性を有する第1有機層形成材料が第2有機層に溶出することにより、第2有機層
でのキャリア輸送性を増加させることができる。そのため、第1有機層形成材料の溶出量
を変化させて混合率を調整することにより、第2有機層におけるキャリアの輸送特性を容
易に調整することが可能になる。
【0020】
前記混合有機層としては、前記第1有機層の前記第2有機層に対する不溶化状態が調整
されて、第1有機層形成材料と第2有機層形成材料とが混合される構成を好適に採用でき
る。
これにより、本発明では、不溶化状態を調整することにより、第1有機層形成材料と第
2有機層形成材料との混合率を調整して、第2有機層におけるキャリアの輸送特性を容易
に調整することが可能になる。
【0021】
また、本発明では、発光特性の異なる複数の前記発光層の間で前記不溶化状態が互いに
異なる構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、発光層毎に不溶化処理条件を設定することにより、発光特性
に応じてキャリアの輸送抑制を制御することが可能になり、複数の発光層間でのキャリア
バランスを容易に保つことができる。
【0022】
前記第1有機層または前記第2有機層のいずれか一方としては、正孔輸送層や正孔注入
層、電子輸送層、電子注入層の他に、前記発光層とすることができる。
【0023】
そして、本発明の表示装置は、先に記載の有機EL装置を備えることを特徴とするもの
であり、本発明の電子機器は、先に記載の表示装置を備えることを特徴とするものである

従って、本発明では、キャリアバランスを容易に保つことができ、生産性に優れ、また
製造コスト低減に寄与できる表示装置及び電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の有機EL装置とその製造方法及び表示装置並びに電子機器の実施の形態
を、図1ないし図7を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材
の縮尺を適宜変更している。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明の製造方法を用いて製造された有機EL素子(有機EL装置)100の
構成を示す要部断面図である。
この有機EL素子100は、基体101上に陽極(第1電極)102と、陰極(第2電
極)105とを有し、これら陽極102と陰極105との間に、有機層110を備えたも
のである。
【0026】
この有機EL素子100は、基体101上に陽極(第1電極)102と、陰極(第2電
極)105とを有し、これら陽極102と陰極105との間に、有機層110を備えたも
のである。有機層110は、正孔注入/輸送層(第1有機層)103と、発光層(第2有
機層)104とが積層されて構成される。この有機EL素子100は、発光層104で発
光した光を基体101側から射出するボトムエミッション方式となっている。
【0027】
基体101は、ガラス基板等の透明基板(図示せず)上にTFT素子からなる駆動素子
(図示せず)や各種配線(図示せず)等を形成して構成されたもので、これら駆動素子や
各種配線の上に絶縁層や平坦化膜を介して陽極102が形成されている。
陽極102は、基体101上にパターニングされて形成され、かつ、TFT素子からな
る駆動素子や前記各種配線等と接続されたもので、本実施例では、ITO(Indium Tin O
xide)によって形成されている。
【0028】
正孔注入/輸送層103は、陽極102が形成された基体101の全面に形成されてい
る。正孔注入/輸送層103は、陽極102から注入された正孔を発光層104に輸送・
注入するためのものであり、公知の材料を用いることができる。例えば、トリフェニルア
ミン系誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアニリン、ポリピロールなどを用いることが
できる。更に具体的には、3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフ
ォン酸(PEDOT/PSS)などを用いることができ、これらキャリア輸送性(正孔輸
送性)が良好な材料と、シランカップリング架橋剤や二重結合基、環状エーテル基等を含
む架橋剤とを含んで構成されている。
【0029】
発光層104は、陰極105から注入される電子と、正孔注入/輸送層103から注入
される正孔が結合して所定帯域の波長の光を発光する。この発光層104の材料としては
具体的には、ポリフルオレン誘導体(PF)、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PP
V)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリ
チオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などの高
分子有機材料が好適に用いられる。
【0030】
また、これらの高分子有機材料に、ペニレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色
素などの高分子有機材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、
テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6,キナクリドン等の低分子有機材
料をドープして用いることもできる。
【0031】
陰極105は、発光層104へ効率的に電子注入を行うことができる仕事関数の低い金
属、例えばマグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)等の金属材料と、アルミニウム(
Al)、金(Au)、銀(Ag)等の電気抵抗が低い金属とが積層されたものから形成さ
れている。この陰極105上には、不図示の封止層が形成されている。
【0032】
次に、このような構成の有機EL素子100の製造方法について、図2及び図3を参照
して説明する。図2及び図3は、有機EL素子100の一製造工程を示す説明図である。
[基板処理工程]
まず、従来と同様にして、ガラスからなる基体101上にTFT素子や各種配線等を形
成し、さらに、層間絶縁層や平坦化膜を形成した後、蒸着法等によってITOを成膜し、
さらにパターニングすることによって陽極102を形成する。これにより、図2(a)に
示すように、基体101上に陽極102が形成される。この後、陽極102が形成された
基板を洗浄後、大気圧において酸素プラズマ処理を行い、基板表面を親水性に改質する。
これにより、陽極102の仕事関数を上げることができる。
【0033】
[正孔注入/輸送層形成工程(第1有機層形成工程)]
次に、陽極102が形成された基体101の全面に、正孔注入/輸送層103を形成す
る。ここでは、まず正孔注入/輸送層形成材料(第1有機層形成材料)を溶媒または分散
媒に溶解または分散させた液状体をスピンコーティング法により、所定の膜厚に成膜して
、図2(b)に示すように、プレ正孔注入/輸送層103aを形成する。
【0034】
続いて、プレ正孔注入/輸送層103aの不溶化処理を行う(不溶化処理工程)。具体
的には、図2(c)に示すように、プレ正孔注入/輸送層103aが成膜された基体10
1を加熱されたホットプレート120上に載置し、焼成処理(加熱処理)を行う。このよ
うな焼成処理により、図2(d)に示すようにプレ正孔注入/輸送層103aは、基体1
01側が不溶化されて不溶化層103bを形成する。つまり、当該正孔注入/輸送層10
3上に配する発光層104の形成工程において用いる有機溶媒(特定溶媒)に対して不溶
な不溶化層103bが形成されることとなる。
【0035】
なお、プレ正孔注入/輸送層103aのうち不溶化されるのはホットプレート120側
の一部であって、ホットプレート120とは反対側の不溶化層103b上には、加熱条件
(すなわち不溶化処理条件)に応じた量で、図2(d)に示すように、完全には不溶化状
態とはならないプレ正孔注入/輸送層103aの一部が残存することとなる。ここで、プ
レ正孔注入/輸送層103aは溶媒(特定溶媒)に対して溶解性(易溶性)を示すものを
用いている。
【0036】
ここで、上記焼成処理によりプレ正孔注入/輸送層103aの一部が不溶化する機構は
以下のような態様による。つまり、プレ正孔注入/輸送層103aを構成する材料の分子
について、当該分子間に架橋を生じさせることで不溶化層103bを生成しており、架橋
処理として本実施形態では、プレ正孔注入/輸送層103aに上記架橋剤を含有させてお
き、当該架橋剤が活性化される条件の加熱処理を行うものとしている。この場合、加熱処
理に限られず、紫外線照射処理等を行って架橋剤を活性化させることも可能である。
【0037】
また、架橋処理としては、プレ正孔注入/輸送層103aに対して架橋可能な官能基を
導入させておき、その官能基が活性化される条件の加熱処理を行うものとすることができ
る。なお、この場合でも、例えば紫外線照射によって官能基を活性化させることも可能で
ある。
【0038】
以上のような不溶化処理を施すことにより、プレ正孔注入/輸送層103aの一部が不
溶化層103bとなり、該不溶化層103b上にプレ正孔注入/輸送層103aの一部が
残存する(図2(d))。
【0039】
[発光層形成工程(第2有機層形成工程)]
次に、図3(a)に示すように、一部に溶解層のプレ正孔注入/輸送層103aを有す
る正孔注入/輸送層103上に、発光層形成材料(第2有機層形成材料)を溶媒に溶解さ
せた液状体をスピンコーティング法により所定の膜厚により形成した後、焼成処理を行っ
て溶媒を蒸発させて、発光層104を形成する。
【0040】
ここで、発光層形成材料を含む液状体を正孔注入/輸送層103上に塗布した際には、
プレ正孔注入/輸送層103aが残留するため、正孔注入/輸送層103が完全には不溶
化されていないことから、プレ正孔注入/輸送層103aに含まれる正孔注入/輸送層形
成材料が発光層形成材料を含む液状体に溶出することにより、発光層104には発光層形
成材料と正孔注入/輸送層形成材料とが混在する層(混合有機層)が形成される。この正
孔注入/輸送層形成材料は、元来、正孔輸送性(キャリア輸送性)を有しているため、こ
の材料が発光層104に溶出することにより、溶出量に応じて発光層104に対する正孔
輸送性が高まることになる。
【0041】
[陰極形成工程]
つぎに、発光層104上に真空蒸着法で、Ca、Alを順次積層させて、図3(b)に
示すように、Ca層、Al層からなる陰極105を形成する。その後、封止工程を行って
、本実施形態の有機EL素子100を製造するものとしている。
【0042】
(実施例)
ガラスからなる基体101上にTFT素子や各種配線等を形成し、さらに、層間絶縁層
や平坦化膜を形成した後、蒸着法等によってITOを成膜し、さらにパターニングするこ
とによって陽極102を形成した。この後、陽極102が形成された基板を洗浄後、大気
圧において酸素プラズマ処理を行い、基板表面を親水性に改質した。
【0043】
次に、陽極102が形成された基体101に、正孔注入/輸送層形成材料を含む溶液を
スピンコーティングにより塗布した。この溶液としては、メタノールとテトラヒドロフラ
ン(THF)の混合溶媒に、トリフェニルアミン誘導体として[化1]に示すようなポリ
(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−アルト−(N,N'−ビス(4−ターシャリ
ー−ブチルフェニル)−N,N'−ジフェニルベンジジン−4',4''−ジイル)(以下PF8−
TPD)を用い、シランカップリング剤としてγグリシジルオキシプロピルトリメトキシ
シランを添加して溶解したものである。
【0044】
【化1】

【0045】
次いで、上記溶液が塗布された複数(ここでは5つ)の基体101を、120〜200
℃の間で温度を変えて、それぞれ1時間、窒素雰囲気中のホットプレート上で加熱した。
各基体101における正孔注入/輸送層の膜厚を計測した後に、THF溶媒に約1分間浸
漬してリンスし、再度膜厚を計測した。そして、リンス前の膜厚に対するリンス後の膜厚
を不溶化率とした。
【0046】
このときの架橋反応温度に対する不溶化率を図4に示す。
この図に示されるように、架橋反応温度が上がるに従って不溶化率も上がり、約200
℃の架橋反応温度でTHFに溶解しなくなった(不溶化率100%)。
【0047】
次いで、上記の5つの架橋反応温度でそれぞれ不溶化処理を施した基体101を用いて
上記の有機EL素子100を作製し、8V時における電流密度を計測したところ、図5に
示すように、架橋反応温度が低いほど高い電流密度となる結果が得られた。
【0048】
なお、比較例として、図1に示した有機EL素子100に対して発光層104を有しな
い素子を、上記5つの架橋反応温度で加熱し、且つTHFでリンスした後の正孔注入/輸
送層の膜厚が同一となるように作製し、電流密度−電圧特性を計測した。
その結果、架橋反応温度を変えても電流密度−電圧特性の計測値に変化がなかったこと
から、図5に示した結果は発光層104に溶出した正孔注入/輸送層形成材料の量の差に
より、発光層104における正孔輸送特性(キャリア輸送特性)が変化した結果と想定さ
れる。
【0049】
以上のように、本実施の形態では、正孔注入/輸送層103に対する不溶化処理条件を
変える(調整する)ことにより、正孔輸送特性を容易に調整することが可能になる。換言
すると、所望の発光特性を得るために、この発光特性に対応した正孔輸送特性を生じさせ
るには、当該正孔輸送特性に応じた処理条件により正孔注入/輸送層103に不溶化処理
を施せばよくなる。
従って、本実施形態では、発光特性を変更する場合に、キャリア輸送特性を変える必要
が生じても、発光材料や正孔注入/輸送層形成材料を変更することなく、例えば不溶化処
理時の加熱温度を適切な温度に設定するという簡単な作業で容易に対応することができ、
生産効率の低下及び製造コストの上昇を防ぐことができる。
【0050】
(第2実施形態)
続いて、有機EL装置の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、複数の画素領域を有し、互いに異なる発光特性により各画素領域で複
数の発光色で発光する有機EL装置について説明する。
【0051】
図6に、有機EL装置100における表示領域の断面構造を拡大した図を示す。この図
6には3つの画素領域Aを示している。有機EL装置100は、基板2上に、TFTなど
の回路等が形成された回路素子部14と、有機層(発光部)110が形成されたEL素子
部11とが順次積層されて構成されている。
この有機EL装置100においては、有機層110から基板2側に発した光が、回路素
子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、有機層
110から基板2の反対側に発した光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び
基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
なお、陰極12として透明な材料を用いることにより、この陰極12側から光を出射さ
せることも可能である。
【0052】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、
この下地保護膜2c上には多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されてい
る。なお、半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度
Pイオン打ち込みによって形成されており、また、Pが導入されなかった部分はチャネル
領域141cとなっている。
さらに、回路素子部14には、下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート
絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等から
なるゲート電極143が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明
な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bとが形成されている。ゲート電極1
43は、半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。
【0053】
また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bには、半導体膜141のソース・ドレ
イン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145、146が形
成されており、これらコンタクトホール145、146内にはそれぞれ導電材料が埋め込
まれている。
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所
定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極
111に接続されている。
また、もう一方のコンタクトホール146が電源線163に接続されている。
このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された薄膜トランジス
タ123が形成されている。
【0054】
EL素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機層110と、各
画素電極111及び有機層110の間に備えられて各有機層110を区画するバンク部1
12と、有機層110上に形成された対向電極(陰極)12とを主体として構成されてい
る。
ここで、画素電極111は、透明導電性材料、例えばITOによって形成されたもので
、平面視略矩形にパターニングされたものである。この各画素電極111…の間にはバン
ク部112が設けられている。
【0055】
バンク部112は、基板2側にSiO等からなる無機バンク層112aと、この無機
バンク層112a上に形成された有機バンク層112bとから構成されたものである。
無機バンク層112aは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されたもの
で、平面視した状態で画素電極111の周囲と無機バンク層112aとが平面的に重なる
ように配置された構造となっている。また、有機バンク層112bも、平面視した状態で
画素電極111の一部と重なるように配置されている。
また、有機バンク層112bには開口部112cが形成されており、後述するようにこ
の開口部112c内に機能層の形成材料が配置され成膜されることにより、機能層からな
る有機層110が形成されるようになっている。なお、有機バンク層112bは、アクリ
ル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性のある材料によっって形成されている。
【0056】
有機層110は、画素電極(陽極)111と対向電極(陰極)12との間に配設された
ことにより、これら画素電極111と対向電極12と共に有機EL素子を構成するものと
なっている。ここで、本実施形態においては、異なる発光特性としてフルカラー表示をな
すべく、赤色の発光特性を有する画素Rとなる有機EL素子と、緑色の発光特性を有する
画素Gとなる有機EL素子と、青色の発光特性を有する画素Bとなる有機EL素子とが備
えられている。
【0057】
本実施形態では、これら3種類の有機EL素子それぞれが、その有機層110として、
正孔注入/輸送層(第1有機層)151(151R、151G、151B)と発光層(第
2有機層)150(150R、150G、150B)とを備えた構成となっている。これ
ら正孔注入/輸送層151(151R、151G、151B)は、上記第1実施形態の正
孔注入/輸送層103と同様の材料で形成される。また、発光層150(150R、15
0G、150B)も、上記第1実施形態の発光層104と同様の材料で形成される。
【0058】
次に、このような構成の有機EL装置100を製造するには、まず、従来と同様にして
図6に示すように基板2上にTFT素子(薄膜トランジスタ123)や各種配線等を形成
し、さらに層間絶縁膜や平坦化膜を形成する。
次に、この基板2上に蒸着法等によってITOを成膜し、さらにパターニングすること
によって画素電極111を形成する。
【0059】
続いて、前記画素電極111の周囲を囲むようにして基板2上にSiOからなる無機
バンク112aを形成する。さらに、この無機バンク112a上に樹脂からなる有機バン
ク112bを形成し、これにより画素電極111上に開口部112cを形成する。なお、
前記有機バンク112bに用いられる材料としては、ポリイミド、アクリル樹脂などが挙
げられる。これらの材料としては、予めフッ素元素を含有したものを用いてもよい。
次いで、無機バンク112a、有機バンク112bで囲まれた開口部112cに対して
酸素プラズマ-CF4プラズマの連続処理を行うことにより、基板2上の濡れ性を制御す
る。
【0060】
この後、インクジェット法等の液滴吐出法によって正孔注入層の形成材料を含有する液
状材料を前記開口部112c内に選択的に配し、正孔注入/輸送層151(151R、1
51G、151B)を形成し、次いでこの正孔注入/輸送層151(151R、151G
、151B)に対して不溶化処理を施す。そして、成膜された正孔注入/輸送層151(
151R、151G、151B)上に、液滴吐出法により発光層150(150R、15
0G、150B)を成膜する。
これら正孔注入/輸送層151(151R、151G、151B)及び発光層150(
150R、150G、150B)の成膜手順は、不溶化処理方法に応じて異なる順序が設
定される。
【0061】
(加熱による不溶化処理の場合)
上記第1実施形態と同様に、ホットプレート等を用いた加熱処理により正孔注入/輸送
層151(151R、151G、151B)を、異なる条件で不溶化させる場合、例えば
R・G・Bの各色で異なる劣化特性を調整するために、青色の発光層150Bに対応する
正孔注入/輸送層151Bを第1条件(第1加熱条件)で不溶化し、赤色及び緑色の発光
層150R、150Gに対応する正孔注入/輸送層151R、151Gを第2条件(第2
加熱条件)で不溶化する場合には、まず、青色に対応する画素領域に正孔注入/輸送層形
成材料及び架橋剤を含む液状体の液滴を塗布した後に、第1加熱条件による不溶化処理を
施して正孔注入/輸送層151Bを成膜する。これにより、第1加熱条件に応じて架橋さ
れた不溶化層及び一部がプレ正孔注入/輸送層として残留する正孔注入/輸送層151B
が形成される。
【0062】
次いで、正孔注入/輸送層151B上に発光層形成材料を含む液状体の液滴を塗布する
とともに、焼成処理を行って溶媒を蒸発させる。これにより、正孔注入/輸送層151B
の一部のプレ正孔注入/輸送層が溶出して混在し、第1加熱条件に対応した正孔輸送性を
有する発光層150Bが成膜される。
【0063】
続いて、青色の場合と同様に、赤色及び緑色に対応する画素領域に正孔注入/輸送層形
成材料及び架橋剤を含む液状体の液滴を塗布した後に、第2加熱条件による不溶化処理を
施して正孔注入/輸送層151R、151Gをそれぞれ成膜する。これにより、第2加熱
条件に応じて架橋された不溶化層及び一部がプレ正孔注入/輸送層として残留する正孔注
入/輸送層151R、151Gが形成される。
次いで、正孔注入/輸送層151R、151G上に発光層形成材料を含む液状体の液滴
をそれぞれ塗布するとともに、焼成処理を行って溶媒を蒸発させる。これにより、正孔注
入/輸送層151R、151Gの一部のプレ正孔注入/輸送層が溶出して混在し、第2加
熱条件に対応した正孔輸送性を有する発光層150R、150Gがそれぞれ成膜される。
【0064】
このように、基板2に対して不溶化処理が一括して行われ、個別の条件での不溶化処理
が困難な加熱処理の場合には、異なる条件による処理が行われるように、一旦正孔注入/
輸送層及び発光層を形成した後に、他の画素領域の正孔注入/輸送層及び発光層を形成す
ることにより、異なる正孔輸送性を有する画素(発光層)を形成することができる。
【0065】
(エネルギー光による不溶化処理の場合)
例えば、紫外光や電子ビーム、プラズマ光等のエネルギー光を照射することにより、正
孔注入/輸送層を不溶化する場合には、不溶化処理を施す画素領域に対応するマスクを用
いることにより、個別の条件での不溶化処理が可能になるため、正孔注入/輸送層151
(151R、151G、151B)の成膜は一括して行われる。
次いで、例えば青色に対応する画素領域が開口するマスクを用いて、正孔注入/輸送層
151Bに対して上記エネルギー光の照射処理を第1照射条件(例えば照射時間大)で施
す。続いて、赤色及び緑色に対応する画素領域が開口するマスクを用いて、正孔注入/輸
送層151R、151Gに対して上記エネルギー光の照射処理を第2照射条件(例えば照
射時間小)でそれぞれ施す。
【0066】
これにより、第1照射条件及び第2照射条件に応じて架橋された不溶化層及び一部がプ
レ正孔注入/輸送層として残留する正孔注入/輸送層151R、151G、151Bが形
成される。
次いで、正孔注入/輸送層151R、151G、151B上に発光層形成材料を含む液
状体の液滴をそれぞれ塗布するとともに、焼成処理を行って溶媒を蒸発させる。これによ
り、正孔注入/輸送層151R、151G、151Bの一部のプレ正孔注入/輸送層が溶
出して混在し、第1照射条件及び第2照射条件に対応した正孔輸送性を有する発光層15
0R、150G、150Bがそれぞれ成膜される。
【0067】
このように、エネルギー光の照射による不溶化処理の場合には、マスクを用いることに
より、正孔注入/輸送層151R、151G、151Bを一括して成膜することが可能に
なり、生産性の向上に寄与できる。
また、本実施形態では、複数の発光特性を有する有機EL装置100に対しても、各発
光特性に応じて正孔注入/輸送層151(151R、151G、151B)に不溶化処理
条件を調整することにより、不溶化状態を異ならせて正孔の輸送特性を制御することが可
能になり、複数の発光層間でのキャリアバランスを容易に保つことができる。
【0068】
(電子機器)
次に、本発明の有機EL装置を適用可能な電子機器の具体例について図7を参照して説
明する。図7(a)は、有機EL装置を可搬型のパーソナルコンピュータ(いわゆるノー
ト型パソコン)300の表示部に適用した例を示す斜視図である。同図に示すように、パ
ーソナルコンピュータ(電子機器)300は、キーボード301を備えた本体部302と
、有機EL装置を適用した表示部(表示装置)303とを備えている。
【0069】
図7(b)は、有機EL素子を携帯電話機(電子機器)400の表示部に適用した例を
示す斜視図である。同図に示すように、携帯電話機400は、複数の操作ボタン401の
ほか、受話口402、送話口403とともに、有機EL装置を適用した表示部(表示装置
)404を備えている。
本実施形態の電子機器では、上記の有機EL装置を備えているので、画素間の発光特性
のバランスが取られて高品質の表示特性を有し、また生産性に優れ、製造コスト低減に寄
与できる表示装置及び電子機器を得ることができる。
【0070】
本発明の発光装置に係る有機EL素子は、上述した携帯電話機やノートパソコン以外に
も、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、パーソナルコ
ンピュータ、ワークステーション、デジタルスチルカメラ、車載用モニタ、デジタルビデ
オカメラ、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナ
ビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション
、テレビ電話機、およびPOS端末機などの電子機器に広く適用することができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発
明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材
の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計
要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、上記実施形態では、有機層が正孔注入/輸送層と発光層とからなる構成とした
が、これに限定されるものではなく、正孔注入層と正孔輸送層とが個別に設けられる構成
であってもよい。また、発光層と陰極との間に電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層は
、発光層に電子を注入する役割を果たすものである。電子輸送層を形成する材料としては
、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン及びその誘導体、ベンゾキノン及びそ
の誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノ
アンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレ
ン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金
属錯体などを用いることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、正孔注入/輸送層に不溶化処理を施し、残留した正孔注入/
輸送層形成材料を発光層に溶出させる構成としたが、これに限られず、例えば隣接する有
機層のうち下層に位置する有機層に対して不溶化処理を施し、残留した有機層形成材料を
上層に位置する有機層に溶出させることにより、キャリア輸送性を調整することが可能で
ある。例えば、有機層が正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を有す構成の場合
、隣り合う層のうち、下層の有機層に不溶化処理を施し、この有機層形成材料を上層の有
機層に溶出させればよい。
このような構成では、正孔輸送性のみならず電子輸送性も制御することが可能になり、
キャリアバランスを容易に保つことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る有機EL装置の要部断面図である。
【図2】有機EL素子の一製造工程を示す説明図である。
【図3】有機EL素子の一製造工程を示す説明図である。
【図4】架橋反応温度と不溶化率との関係を示す図である。
【図5】架橋反応温度と電流密度との関係を示す図である。
【図6】有機EL装置における表示領域の断面構造を拡大した図である。
【図7】電子機器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
100…有機EL素子(有機EL装置)、 103、151、151R、151G、1
51B…正孔注入/輸送層(第1有機層)、 104…発光層(第2有機層)、 110
…有機層、 150、150R、150G、150B…発光層、 300…パーソナルコ
ンピュータ(電子機器)、 303、404…表示部(表示装置)、 400…携帯電話
機(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機層を介して輸送されたキャリアにより発光層が発光する有機EL装置の製造方法で
あって、
液相法により第1有機層を成膜する工程と、
前記第1有機層に対して不溶化処理を施す工程と、
前記不溶化処理を施された前記第1有機層上に液相法により第2有機層を成膜する工程
とを有し、
前記第2有機層における前記キャリアの輸送特性に基づいて、前記第1有機層の不溶化
処理条件を調整することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の有機EL装置の製造方法において、
発光特性の異なる複数の前記発光層の間で前記不溶化処理条件を互いに異ならせること
を特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の有機EL装置の製造方法において、
第1発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層を成膜して前記不溶化処理
を施した後に、第2発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層を成膜して前
記不溶化処理を施すことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の有機EL装置の製造方法において、
前記不溶化処理は、加熱処理を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の有機EL装置の製造方法において、
前記第1有機層を液滴吐出方式により成膜することを特徴とする有機EL装置の製造方
法。
【請求項6】
請求項2記載の有機EL装置の製造方法において、
第1発光特性を有する前記発光層に対応する前記第1有機層、及び第2発光特性を有す
る前記発光層に対応する前記第1有機層を一括的に成膜した後に、前記異なる不溶化処理
条件で前記第1有機層にそれぞれ前記不溶化処理を施すことを特徴とする有機EL装置の
製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の有機EL装置の製造方法において、
前記不溶化処理は、エネルギ光の照射処理を含むことを特徴とする有機EL装置の製造
方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法において、
前記不溶化処理は、前記第1有機層を構成する材料の分子について、当該分子間に架橋
を生じさせる処理を含むことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法において、
前記第1有機層または前記第2有機層のいずれか一方は、前記発光層であることを特徴
とする有機EL装置の製造方法。
【請求項10】
有機層を介して輸送されたキャリアにより発光層が発光する有機EL装置であって、
液相法により成膜された第1有機層と、
前記液相法により前記第1有機層上に成膜された第2有機層とを有し、
前記第2有機層は、当該第2有機層における前記キャリアの輸送特性に基づいて、第1
有機層形成材料と第2有機層形成材料とが混合された混合有機層を有することを特徴とす
る有機EL装置。
【請求項11】
請求項10記載の有機EL装置において、
前記混合有機層は、前記第1有機層の前記第2有機層に対する不溶化状態が調整されて
、第1有機層形成材料と第2有機層形成材料とが混合されることを特徴とする有機EL装
置。
【請求項12】
請求項11記載の有機EL装置において、
発光特性の異なる複数の前記発光層の間で前記不溶化状態が互いに異なることを特徴と
する有機EL装置。
【請求項13】
請求項10から12のいずれかに記載の有機EL装置において、
前記第1有機層または前記第2有機層のいずれか一方は、前記発光層であることを特徴
とする有機EL装置。
【請求項14】
請求項10から13のいずれかに記載の有機EL装置を備えることを特徴とする表示装
置。
【請求項15】
請求項14記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−220394(P2007−220394A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37580(P2006−37580)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】