説明

有機EL装置の製造方法及び有機EL装置

【課題】配線上にスピンコート法によって形成される層の層厚が不均一になることなく、発光特性及び封止特性の高い有機EL装置の製造方法及び有機EL装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも一方の側部に所定の角度以下で傾斜する傾斜部が設けられるように配線を形成し、配線上にスピンコート法によって配線被覆層を形成することとしたので、スピンコート法によって配線上に配線被覆層を形成する際には、当該配線被覆層の構成材料を含む液状組成物が配線を横切るときに当該傾斜部に沿って流れることになり、当該液状組成物の流れが配線によって妨げられるのを防ぐことができる。これにより、配線上にスピンコート法によって形成される配線被覆層の層厚が不均一になることなく、発光特性及び封止特性の高い有機EL装置を製造可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法及び有機EL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンタとして、ラインプリンタ(画像形成装置)が知られている。このラインプリンタは、被露光部となる感光体ドラム(感光体)の周面上に、帯電器、ライン状のプリンタヘッド(ラインヘッド)、現像器、転写器などの装置を近接配置したものである。帯電器によって帯電された感光体ドラムの周面上に、プリンタヘッドに設けられた、発光素子の選択的な発光動作で露光を行なうことにより、静電潜像を形成し、この潜像を現像器から供給されるトナーで現像して、そのトナー像を転写器で用紙に転写するようにしたものである。
【0003】
高精細な印字を得るためには、前記プリンタヘッドから出射された光を感光体ドラム上に効率的に結像させる必要がある。そこで、前記プリンタヘッドと前記感光体との間に複数のレンズ素子からなるレンズアレイを設け、プリンタヘッドの光を前記感光体上に集光して、結像する技術が提案されている。このようなラインプリンタに用いられるレンズアレイとしては、複数のレンズ素子を1列備えたもの、もしくは千鳥状に2列備えたものが知られている。
【0004】
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)をガラス基板上に備えた構成の有機EL装置を発光素子として利用したプリンタヘッドが開発されている。この有機EL装置は、画素ごとに有機EL素子が設けられており、各有機EL素子に接続される例えばデータ線や走査線など配線が設けられている(例えば、特許文献1参照)。また、陰極側は、電源線に接続される配線が設けられている。データ線、走査線などの配線上には通常絶縁膜が形成される。また、陰極上及び陰極に接続される配線上には、陰極保護層が形成される。これら絶縁膜及び陰極保護層を形成する手法としては、例えばスピンコート法が良く知られている。
【特許文献1】特開2002−246293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら配線の延在方向の側部は、一般的にほぼ基板面に60°以上の角度(60°〜90°程度)になっていることが多く、スピンコート法によって絶縁膜や陰極保護層を形成する際、当該絶縁膜又は陰極保護層の構成材料を含む液状組成物が基板上を拡散する際に、その流れが配線の側部によって遮られることになる。例えば配線の延在方向と液状組成物の流動方向とが平行な領域は液状組成物がスムーズに流れるが、配線の延在方向と液状組成物の流動方向とが直交する領域は液状組成物が流れにくくなる。このため、液状組成物の流れやすい領域と流れにくい領域との間で層の層厚が不均一になってしまう。この層厚が不均一になると、当該絶縁層上や陰極保護層上に形成される各層の層厚にも影響を及ぼすことになる。このため、発光特性や封止特性が低下するという問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、配線上にスピンコート法によって形成される層の層厚が不均一になることなく、発光特性及び封止特性の高い有機EL装置の製造方法及び有機EL装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る有機EL装置の製造方法は、発光層を含む有機EL素子と、前記有機EL素子に接続された配線と、前記配線を覆うように形成された配線被覆層とを有する有機EL装置の製造方法であって、少なくとも一方の側部に所定の角度以下で傾斜する傾斜部が設けられるように前記配線を形成し、前記配線上にスピンコート法によって前記配線被覆層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、少なくとも一方の側部に所定の角度以下で傾斜する傾斜部が設けられるように配線を形成し、配線上にスピンコート法によって配線被覆層を形成することとしたので、スピンコート法によって配線上に配線被覆層を形成する際には、当該配線被覆層の構成材料を含む液状組成物が配線を横切るときに当該傾斜部に沿って流れることになり、当該液状組成物の流れが配線によって妨げられるのを防ぐことができる。このように、配線上にスピンコート法によって形成される配線被覆層の層厚が不均一になることなく、発光特性及び封止特性の高い有機EL装置を製造可能となる。
ここで、「所定の角度」については、スピンコート法によって拡散される液状組成物の流動性を確保できる程度の角度である。本発明者は、傾斜部の角度を約30°以下にすることで液状組成物の流動性を十分に確保することができる点を見出した。そこで、この所定の角度は30°程度であることが好ましい。
【0008】
上記の有機EL装置の製造方法は、前記配線を形成する工程では、所定の液体に溶解可能な導電材料からなる第1導電層を形成し、前記所定の液体に溶解可能であると共に前記第1導電層を構成する導電材料よりも溶解速度が大きい導電材料からなる第2導電層を前記第1導電層上に形成し、前記配線の形成領域を覆うように前記第2導電層上にマスクを形成し、前記所定の液体を用いて前記第1導電層及び前記第2導電層をウェットエッチングすることを特徴とする。
本発明によれば、配線を形成する工程では、所定の液体に溶解可能な導電材料からなる第1導電層を形成し、所定の液体に溶解可能であると共に第1導電層を構成する導電材料よりも溶解速度が大きい導電材料からなる第2導電層を第1導電層上に形成し、配線の形成領域を覆うように第2導電層上にマスクを形成し、所定の液体を用いて第1導電層及び第2導電層をウェットエッチングすることとしたので、溶解速度の大きい第2導電層は第1導電層よりも広い領域が侵食される、すなわち、第1導電層と第2導電層との間でエッチングによって侵食差が生じることになる。このように、第1導電層と第2導電層とので侵食差を生じさせることによって、配線の側部に傾斜部を容易に形成することができる。
【0009】
上記の有機EL装置の製造方法は、前記第1導電層がアルミニウム−ネオジウム合金からなり、前記第2導電層がモリブデンからなり、前記所定の液体が硝酸であることを特徴とする。
アルミニウム−ネオジウム合金及びモリブデンは共に導電性の高い材料であり、モリブデンはアルミニウム−ネオジウム合金よりも硝酸に対する溶解速度が大きい。本発明によれば、第1導電層がアルミニウム−ネオジウム合金からなり、第2導電層がモリブデンからなり、所定の液体が硝酸であることとしたので、高い導電性を維持しつつ配線の側部に傾斜を有する配線を容易に形成することができる。
【0010】
本発明に係る有機EL装置は、上記の有機EL装置の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
本発明によれば、配線被覆層の層厚を均一に形成することができ、当該配線被覆層上に形成される各層の層厚も均一に形成することができるので、発光特性及び封止特性の高い有機EL装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の画像形成装置と画像形成方法の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する各図面においては、図面を見易くするために、各構成要素の寸法等を適宜変更して表示している。
【0012】
(画像形成装置)
まず、画像形成装置について説明する。図1は、画像形成装置IMの概略構成を示す図である。
この画像形成装置IMは、露光手段として用いられるヘッド装置100と、感光体ドラム9と、感光体ドラム9の外周面を一様に帯電させるコロナ帯電器42と、ヘッド装置100で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与してトナー像とする現像装置44と、この現像装置44で現像されたトナー像が転写される転写ローラ45と、転写ローラ45との間で記録媒体Pにトナー像を転写させる加圧ローラ66と、記録媒体Pにトナー像を定着させる定着器61と、転写された後に感光体ドラム41の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46と、感光体ドラム9の回転駆動及びヘッド装置100の駆動等を制御する制御装置(図示省略)とが設けられている。
【0013】
感光体ドラム9は、導電性物質からなる基体の外周面に、有機材料や無機材料からなる像担持体としての感光層が設けられた構成を有している。また感光体ドラム9は、図1中、時計回りに回転してヘッド装置100からの光によって露光されて潜像が形成されるものであり、その回転方向の位置はエンコーダ9Aによって検出され、制御装置に出力される。また、感光体ドラム9の回転駆動は、制御装置の制御下で回転駆動装置9B(図7参照)により制御される。
【0014】
現像装置44は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム9に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム9の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0015】
ヘッド装置100は、感光体ドラム9の周面に沿って、コロナ帯電器42と現像装置44との間に間隔をあけて配置されたヘッドモジュール(ラインヘッドモジュール)101、102から構成されている。また、これらヘッドモジュール101、102は、それぞれ感光体ドラム9の母線に沿って配置されている。
【0016】
図2は、本実施形態に係るヘッドモジュールの斜視断面図である。本実施形態のラインヘッドモジュール101、102は、複数の有機EL素子を整列配置したラインヘッド1と、ラインヘッド1からの光を正立等倍結像させるレンズ素子を整列配置したSLアレイ(レンズアレイ)31と、ラインヘッド1およびSLアレイ31の外周部を保持するヘッドケース52と、を備えて構成されたものである。ラインヘッド1とSLアレイ31とは、互いにアライメントされた状態でヘッドケース52に保持されており、これによってSLアレイ31は、ラインヘッド1からの光を後述する感光体ドラムに正立等倍結像させるようになっている。
【0017】
図3は、ラインヘッドを模式的に示した図である。このラインヘッド1は、本発明の発光装置の一実施形態となるもので、長細い矩形の素子基板2上に、本発明における発光素子としての有機EL(エレクトロルミネセンス)素子3を複数配列してなる発光素子列3Aと、有機EL素子3を駆動させる駆動素子4からなる駆動素子群と、発光制御装置としての制御装置の制御下でこれら駆動素子4の駆動を制御する制御回路群5とを一体形成した有機EL装置である。図3では発光素子列3Aを1列の有機EL素子3で表示されているが、実際には有機EL素子3を2列にしてこれらが千鳥状に配列されている(図4(b)参照)。
【0018】
有機EL素子3は、一対の電極間に少なくとも有機発光層を備えたもので、その一対の電極から発光層に電流を供給することにより、発光する構成となっている。有機EL素子3における一方の電極には電源線8が接続され、他方の電極には駆動素子4を介して電源線7が接続されている。この駆動素子4は、薄膜トランジスタ(TFT)や薄膜ダイオード(TFD)等のスイッチング素子で構成されている。駆動素子4にTFTを採用した場合には、そのソース領域に電源線8が接続され、ゲート電極に制御回路群5が接続される。そして、制御回路群5により駆動素子4の動作が制御され、駆動素子4により有機EL素子3への通電が制御されるようになっている。
【0019】
このような有機EL素子3、駆動素子4等の構成について、図4(a)、(b)を参照してさらに詳述する。
図4(a)に示すように、発光層60で発光した光を画素電極23側から出射する、いわゆるボトムエミッション型である場合には、素子基板2側から発光光を取り出す構成であるので、素子基板2としては透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。
【0020】
また、発光層60で発光した光を陰極(対向電極)50側から出射する、いわゆるトップエミッション型である場合には、この素子基板2の対向側である封止基板側から発光光を取り出す構成となるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
本実施形態では、ボトムエミッション型が採用され、したがって素子基板2には透明なガラスが用いられるものとする。
【0021】
素子基板2上には、画素電極23に接続する駆動用TFT123(駆動素子4)などを含む回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。電源線7は駆動素子4のソース/ドレイン電極に接続されており、電源線8は有機EL素子3の陰極50に接続されている。
【0022】
このような構成のもとに有機EL素子3は、図4(a)に示すように、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが発光層60で結合することにより、発光をなすようになっている。
【0023】
陽極として機能する画素電極23は、ボトムエミッション型である本実施形態では、透明導電材料によって形成され、具体的にはITOが好適に用いられている。
【0024】
正孔輸送層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の水分散液が好適に用いられる。
なお、正孔輸送層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0025】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。なお、本実施形態では、例えば発光波長帯域が赤色に対応した発光層が採用されるが、もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層を採用するようにしてもよい。この場合、用いる感光体は、その発光領域に感度を持つものを採用する。
発光層60の形成材料として具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0026】
陰極50は、前記発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。
この陰極50上には、後述するように該陰極50を囲んでシール層(接着層)を介して、封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0027】
このような有機EL素子3の下方には、前述したように回路部11が設けられている。この回路部11は素子基板2上に形成されたものである。すなわち、素子基板2の表面にはSiO2を主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0028】
前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0029】
シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0030】
ソース電極243は、図4(b)に示すように、断面視で第1導電層247と第2導電層248との2層構造になっている。第1導電層247は、例えばアルミニウム−ネオジウム合金によって形成されている。アルミニウム−ネオジウム合金は、硝酸などの酸溶液に対して溶解する材料である。第2導電層248は、例えばモリブデンによって形成されている。モリブデンは、硝酸などの酸溶液に対して溶解する材料であり、溶解速度がアルミニウム−ネオジウム合金よりも高い材料である。
【0031】
ソース電極243は、延在方向に対する両側面に傾斜部246を有している。傾斜部246は、第1導電層247及び第2導電層248の両層に亘って形成されている。傾斜部246の傾斜角度は、ソース電極243の形成面に対して所定の角度α以下となるように(αは30°程度)形成されている。ここでは、例えば20°程度に設けられている。傾斜部246の傾斜角度は、第1導電層247及び第2導電層248の両層で同一の角度になっている。勿論、同一の角度に限られることは無く、第1導電層247と第2導電層248との間で傾斜角度に差を設けるようにしても構わない。例えば、第1導電層247の傾斜角度を第2導電層248の傾斜角度よりも大きくする(ただし、30°以下になるようにする)構成も可能であるし、第1導電層247から第2導電層248にかけて傾斜角度が徐々に小さくなるような構成も可能である。
【0032】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化層284が形成されている。この平坦化層284は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、駆動用TFT123(駆動素子4)やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0033】
そして、ITO等からなる画素電極23が、この平坦化層284の表面上に形成されるとともに、該平坦化層284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0034】
画素電極23が形成された平坦化層284の表面には、画素電極23と、無機隔壁25とが形成されており、さらに無機隔壁25上には、有機隔壁221が形成されている。そして、画素電極23上には、無機隔壁25に形成された前記開口25aと、有機隔壁221に形成された開口221aとの内部、すなわち画素領域に、前記の正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層され、これによって機能層が形成されている。
【0035】
図5は、SLアレイの斜視図である。このSLアレイ31は、日本板硝子株式会社製のセルフォック(登録商標)レンズ素子と同様の構成からなるSL素子31aを、千鳥状に2列配列(配置)したものである。このように千鳥状に配置された各SL素子31aの隙間には、黒色のシリコーン樹脂32が充填されており、さらにその周囲には、フレーム34が配置されている。
【0036】
前記SL素子31aは、その中心から周辺にかけて放物線上の屈折率分布を有している。そのため、SL素子31aに入射した光は、その内部を一定周期で蛇行しながら進む。
よって、このSL素子31aの長さを調整すれば、画像を正立等倍結像させることができる。そして、このように正立等倍結像するSL素子31aにあっては、隣接するSL素子31aどうしが作る像を重ね合わせることが可能になり、広範囲の画像を得ることができる。したがって、図4に示したSLアレイ31は、ラインヘッド1全体からの光を精度よく結像させることができるようになっている。
【0037】
(製造方法)
次に、上記のように構成されたラインヘッド1の製造方法を説明する。ここでは、ソース電極243の製造過程を中心に説明する。
まず、基板2上にシリコン層241を形成し、第1層間絶縁層283を形成する。次に、第1層間絶縁層283上にソース電極243を形成する。図6及び図7を参照して、ソース電極243の形成工程を説明する。
【0038】
第1層間絶縁層283上のほぼ全面にアルミニウム−ネオジウム合金からなる第1導電層247を形成する。第1導電層247を形成したら、当該第1導電層247上のほぼ全面にモリブデンからなる第2導電層248を形成する。
【0039】
第2導電層248を形成したら、当該第2導電層248上にレジスト層249を形成する。レジスト層249は、ソース電極243の形成領域を覆うと共に当該ソース電極243の形成領域以外の領域を露出するように、第2導電層248上に形成する。
【0040】
レジスト層249を形成したら、当該レジスト層249の上から露出部分を硝酸溶液に浸す。硝酸溶液により第2導電層248の露出部分がまず除去され(図6中、破線(1)で示した部分)、第1導電層247の一部が露出する。この第1導電層247の露出部分と、第2導電層248のうち除去された断面とが硝酸溶液に浸される。
【0041】
モリブデンの硝酸に対する溶解速度がアルミニウム−ネオジウム合金の溶解速度よりも大きいため、当該モリブデンによって構成されている第2導電層248の断面が第1導電層247よりも大きく侵食されることになる。この結果、図6中破線(2)及び破線(3)で示すように、第1導電層247と第2導電層248との間に徐々に侵食差が形成される。この後、レジスト層249を除去することにより、図7に示すように所定の角度の傾斜部246を有するソース電極243が形成されることになる。
【0042】
ソース電極243を形成したら、スピンコート法によって平坦化層284を形成する。上述したアクリル系やポリイミド系の耐熱性絶縁性樹脂を液状にしておき、基板2を回転させて当該基板2上に液状組成物を滴下する。滴下された液状組成物は基板2上に拡散する。
【0043】
このとき、図8に示すように、ソース電極243の延在方向に沿った方向に拡散する液状組成物は、当該ソース電極243に沿ってスムーズに流れる。また、ソース電極243の延在方向に交差する方向に拡散する液状組成物は、ソース電極243の傾斜部246に沿ってソース電極243を越えて拡散するので、やはりスムーズに流れることになる。この結果、図9に示すように、膜厚が均一な平坦化層284が形成されることになる。その後、平坦化層284上に有機EL素子3を形成し、当該有機EL素子3を封止することにより、ラインヘッド1が完成する。
【0044】
ここで、ソース電極243に傾斜部246を設けない構成とした場合、すなわち、図10に示すように、ソース電極243の側面の傾斜角度をβ(βは60°〜90°程度)とした場合について述べる。この構成では、ソース電極243上にスピンコート法によって平坦化層を形成する際に、ソース電極243の延在方向に沿った方向に拡散する液状組成物についてはスムーズに流れる。一方で、ソース電極243の延在方向に交差する方向に拡散する液状組成物については、ソース電極243によって流れが妨げられてしまう。この結果、図11に示すように、当該ソース電極243の延在方向に交差する領域では、平坦化層の層厚が不均一になってしまう。
【0045】
このように、本実施形態によれば、両側の側部に30°以下で傾斜する傾斜部246が設けられるようにソース電極243を形成し、当該ソース電極243上にスピンコート法によって平坦化層284を形成することとしたので、スピンコート法によってソース電極243上に平坦化層284を形成する際には、当該平坦化層284の構成材料を含む液状組成物がソース電極243を横切るときに当該傾斜部246に沿って流れることになり、当該液状組成物の流れがソース電極243によって妨げられるのを防ぐことができる。これにより、ソース電極243上にスピンコート法によって形成される平坦化層284の層厚が不均一になることなく、発光特性及び封止特性の高い有機EL装置を製造可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、ソース電極243を形成する工程では、硝酸に溶解可能なアルミニウム−ネオジウム合金からなる第1導電層247を形成し、当該硝酸に溶解可能であると共に第1導電層247を構成するアルミニウム−ネオジウム合金よりも溶解速度が大きいモリブデンからなる第2導電層248を第1導電層247上に形成し、ソース電極243の形成領域を覆うように第2導電層248上にレジスト249を形成し、硝酸を用いて第1導電層247及び第2導電層248をウェットエッチングすることとしたので、第1導電層247と第2導電層248と間で、エッチングによって侵食差が生じることになる。この侵食差により、溶解速度の大きい第2導電層248は第1導電層247よりも広い領域が侵食され、この結果、ソース電極243の側部に傾斜部246を形成することができる。これにより、ソース電極243の側部に傾斜部246を容易に形成することができる。
【0047】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態ではソース電極243に傾斜部246を設ける構成としたが、これに限られることは無く、例えばゲート電極242やドレイン電極244に傾斜部を設ける構成、陰極50に接続される配線に傾斜部を設ける構成としても、勿論構わない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態に係るヘッドモジュールの斜視断面図
【図3】ラインヘッドの構成を示す平面図。
【図4】ラインヘッドの構成を示す図。
【図5】レンズアレイの構成を示す図。
【図6】本実施形態に係るラインヘッドの製造過程を示す工程図。
【図7】同、工程図。
【図8】同、工程図。
【図9】本実施形態によって形成された平坦化層の膜厚を示すグラフ。
【図10】基板上にスピンコート法によって成膜する様子を示す図。
【図11】基板上に成膜された薄膜の膜厚を示すグラフ。
【符号の説明】
【0049】
1…ラインヘッド 2…基板 3…EL素子 50…陰極 243…ソース電極 246…傾斜部 247…導電層 248…導電層 249…レジスト層 283…層間絶縁層 284…平坦化層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層を含む有機EL素子と、前記有機EL素子に接続された配線と、前記配線を覆うように形成された配線被覆層とを有する有機EL装置の製造方法であって、
少なくとも一方の側部に所定の角度以下で傾斜する傾斜部が設けられるように前記配線を形成し、
前記配線上にスピンコート法によって前記配線被覆層を形成する
ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
前記配線を形成する工程では、
所定の液体に溶解可能な導電材料からなる第1導電層を形成し、
前記所定の液体に溶解可能であると共に前記第1導電層を構成する導電材料よりも溶解速度が大きい導電材料からなる第2導電層を前記第1導電層上に形成し、
前記配線の形成領域を覆うように前記第2導電層上にマスクを形成し、
前記所定の液体を用いて前記第1導電層及び前記第2導電層をウェットエッチングする
ことを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1導電層がアルミニウム−ネオジウム合金からなり、
前記第2導電層がモリブデンからなり、
前記所定の液体が硝酸である
ことを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項の有機EL装置の製造方法によって製造されたことを特徴とする有機EL装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−130353(P2008−130353A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313897(P2006−313897)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】