説明

有機EL装置の製造方法

【課題】ダークスポット等の不具合の発生や輝度、寿命低下を抑え信頼性がより高い有機EL装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】有機EL装置の製造方法は、基体20と、基体20上に配列された画素2と、基体20上に画素2に対応して配置された陽極24と、陽極24上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層30と、有機機能層30上に配置された陰極32と、陰極32を覆うように配置された第1の保護層34と、を備えた有機EL装置1の製造方法であって、陰極32が形成された基体20の表面に、イオンプレーティング法を用いて第1の保護層34を形成する工程を有し、第1の保護層34を形成する工程では、基体20の表面に正の電荷を印加して第1の保護層34を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス装置(以下有機EL装置と呼ぶ)は、陽極と、少なくとも発光層を含む有機機能層と、陰極とが積層された有機エレクトロルミネセンス素子(以下有機EL素子と呼ぶ)を有している。有機EL装置では、発光層で発生した光が陽極側または陰極側へ射出される。
【0003】
有機EL素子は酸素や水分等で特性が劣化し易いため、有機EL装置内部に酸素や水分等が浸入するのを防止する目的で、例えば無機材料からなる絶縁層等が有機EL素子上に設けられる。このような絶縁層を、イオンプレーティング法を用いて形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−123123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、イオンプレーティング法を用いて絶縁層を形成する際に、装置内に存在する異物等が基板の表面に付着すると、その異物の周囲で形成される絶縁層の膜にピンホール等の欠陥が生じる場合がある。そこから水分等が侵入すると有機EL素子が劣化するため、有機EL装置の輝度や寿命が低下してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、基体と、前記基体上に配列された画素と、前記基体上に、前記画素に対応して配置された第1の電極と、前記第1の電極上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層と、前記有機機能層上に配置された第2の電極と、前記第2の電極を覆うように配置された絶縁層と、を備えた有機EL装置の製造方法であって、前記第2の電極が形成された前記基体の表面に、イオンプレーティング法を用いて前記絶縁層を形成する工程を有し、前記絶縁層を形成する工程では、前記基体の表面に正の電荷を印加して前記絶縁層を形成することを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、イオンプレーティング法を用いて絶縁層を形成する際に、基体の表面に正の電荷を印加する。このため、絶縁層の材料の粒子が負の電荷を有していれば、絶縁層の材料の粒子は基体の表面に引き寄せられる。ここで、基体の表面に異物が付着している場合、この異物により基体の表面に絶縁層の材料の粒子が堆積しない部分ができても、正の電荷によって絶縁層の材料の粒子がこの部分に引き寄せられるので、異物の周囲においても基体の表面に絶縁層が形成される。したがって、基体の表面に異物が付着している場合でも、ピンホール等の欠陥の発生を抑えて基体の表面に絶縁層を形成できる。これにより、水分等が侵入することによる有機機能層や第2の電極の劣化が抑えられる。この結果、輝度や寿命の低下が少ない有機EL装置を製造することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記絶縁層を形成する工程では、前記絶縁層をシリコン酸窒化物、シリコン酸化物、またはシリコン窒化物で形成してもよい。
【0010】
この方法によれば、絶縁層はシリコン酸窒化物、シリコン酸化物、またはシリコン窒化物を材料として形成される。イオンプレーティング法を用いて絶縁層を形成する際、昇華したこれらの絶縁層の材料の粒子は負の電荷を有している。これにより、正の電荷が印加された基体の表面に絶縁層の材料の粒子を引き寄せることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記絶縁層を形成する工程では、前記第2の電極に正の電荷を印加してもよい。
【0012】
この方法によれば、第2の電極に正の電荷を印加するので、昇華した絶縁層の材料の粒子を第2の電極の表面に引き寄せることができる。これにより、ピンホール等の欠陥の発生を抑えて第2の電極の表面に絶縁層を形成できる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記基体上に配置され、前記第2の電極に導電接続された配線部をさらに備え、前記絶縁層を形成する工程では、前記配線部を介して前記第2の電極に正の電荷を印加してもよい。
【0014】
この方法によれば、第2の電極に導電接続された配線部に外部端子等を接触させることにより、第2の電極に正の電荷を印加する。このため、第2の電極に外部端子等が接触することにより、第2の電極が損傷を受けるリスクを回避できる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法であって、前記絶縁層を形成する工程では、蒸着マスクとしてメタルマスクを用い、前記メタルマスクを介して前記基体の表面に正の電荷を印加してもよい。
【0016】
この方法によれば、メタルマスクを介して第2の電極に正の電荷を印加するので、第2の電極に正の電荷を印加するための外部端子等を新たに設けなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】有機EL装置の一例の電気的構成を示すブロック図。
【図2】有機EL装置の一例の概略構成を示す平面図。
【図3】有機EL装置の一例の発光領域の要部を示す平面図。
【図4】有機EL装置の一例の概略構成を示す断面図。
【図5】本実施の形態に係る有機EL装置の製造方法を説明するフローチャート。
【図6】本実施の形態に係る有機EL装置の製造プロセスを示す図。
【図7】本実施の形態に係る有機EL装置の製造プロセスを示す図。
【図8】第1の保護層の形成に用いるイオンプレーティング装置の一例の構成を説明する図。
【図9】第1の保護層の形成方法を説明する模式図。
【図10】従来の保護層の形成方法を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本実施の形態について図面を参照して説明する。なお、参照する図面において、構成をわかりやすく示すため、構成要素の層厚や寸法の比率等は適宜異ならせてある。また、それぞれの図面において、説明する構成要素を誇張して示す場合や、説明に必要な構成要素以外は図示を省略する場合がある。
【0019】
<有機EL装置>
まず、本実施の形態に係る有機EL装置の製造方法を用いて製造する有機EL装置の一例の構成について図を参照して説明する。図1は、有機EL装置の一例の電気的構成を示すブロック図である。図2は、有機EL装置の一例の概略構成を示す平面図である。図3は、有機EL装置の一例の発光領域の要部を示す平面図である。図4は、有機EL装置の一例の概略構成を示す断面図である。詳しくは、図3のA−A’線に沿った部分断面図である。なお、本明細書では、有機EL装置の光が射出される側表面の法線方向から見ることを「平面視」とも呼ぶ。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係る有機EL装置1は、スイッチング素子として薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと呼ぶ)を用いたアクティブマトリクス型の有機EL装置である。有機EL装置1は、基板10と、基板10上に設けられた走査線16と、走査線16に対して交差する方向に延在する信号線17と、信号線17に並列に延在する電源線18とを備えている。有機EL装置1において、これら走査線16と信号線17とに囲まれた領域に画素2が配置されている。画素2は、例えば、走査線16の延在方向と信号線17の延在方向とに沿ってマトリクス状に配列されている。
【0021】
画素2には、スイッチング用TFT11と、駆動用TFT12と、保持容量13と、第1の電極としての陽極24と、有機機能層30と、第2の電極としての陰極32と、を備えている。有機機能層30は、発光層を含んでいる。陽極24と、有機機能層30と、陰極32とによって有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)8が構成される。有機EL素子8では、陽極24から注入される正孔と、陰極32から注入される電子とが、発光層で再結合することにより発光が得られる。
【0022】
信号線17には、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン、およびアナログスイッチを備えたデータ線駆動回路14が接続されている。また、走査線16には、シフトレジスターおよびレベルシフターを備えた走査線駆動回路15が接続されている。
【0023】
有機EL装置1では、走査線16が駆動されてスイッチング用TFT11がオン状態になると、信号線17を介して供給される画像信号が保持容量13に保持され、保持容量13の状態に応じて駆動用TFT12のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT12を介して電源線18に導電接続したとき、電源線18から陽極24に駆動電流が流れ、さらに有機機能層30を通じて陰極32に電流が流れる。有機機能層30の発光層は、陽極24と陰極32との間に流れる電流量に応じた輝度で発光する。
【0024】
次に、有機EL装置1の概略構成を説明する。図2に示すように、有機EL装置1は、基板10上に、略矩形の平面形状を有する発光領域4を備えている。発光領域4は、有機EL装置1において、実質的に発光に寄与する領域である。有機EL装置1は、発光領域4の周囲に、実質的に発光に寄与しないダミー領域を備えていてもよい。
【0025】
発光領域4には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの光を射出する画素2が配列されている。発光領域4の周囲には、2つの走査線駆動回路15と検査回路19とが配置されている。検査回路19は、有機EL装置1の作動状況を検査するための回路である。基板10の外周部には、配線部としての陰極用配線33が配置されている。
【0026】
図3に示すように、基板10上には、格子状の形状を有する隔壁28が設けられている。隔壁28は、開口部28aを有しており、画素2の領域を区画している。画素2は、例えば、略矩形の平面形状を有している。画素2の矩形形状の4つの角は、丸く形成されていてもよい。画素2は、長辺と短辺とを有している。画素2の短辺に沿った方向が、走査線16の延在方向である。また、画素2の長辺に沿った方向が、信号線17の延在方向である。
【0027】
画素2は、有機EL装置1の表示の最小単位であり、赤色(R)光を射出する画素2Rと、緑色(G)光を射出する画素2Gと、青色(B)光を射出する画素2Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単に画素2とも呼ぶ)。有機EL装置1では、画素2R,2G,2Bから一つの画素群6が構成され、それぞれの画素群6において画素2R,2G,2Bのそれぞれの輝度を適宜変えることで、種々の色の表示を行うことができる。
【0028】
図4に示すように、有機EL装置1は、基板10上に、駆動用TFT12と、層間絶縁層22と、平坦化層26と、陽極24と、隔壁28と、有機機能層30と、陰極32と、絶縁層としての第1の保護層34と、中間層35と、第2の保護層36と、カラーフィルター38と、封止部40とを備えている。有機EL装置1は、有機機能層30から発した光が封止部40側に射出されるトップエミッション型である。
【0029】
基板10は、有機EL装置1がトップエミッション型であることから、透光性材料および不透光性材料のいずれを用いてもよい。透光性材料としては、例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等があげられる。不透光性材料としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化等の絶縁処理を施したもの、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、およびそのフィルム(プラスチックフィルム)等があげられる。基板10は、例えばシリコン酸化物(SiO2)等からなる保護層に覆われていてもよい。
【0030】
駆動用TFT12は、基板10上に、画素2に対応して設けられている。駆動用TFT12は、半導体膜12aと、ゲート絶縁層21と、ゲート電極12gと、ドレイン電極12dと、ソース電極12sとを備えている。半導体膜12aには、ソース領域と、ドレイン領域と、チャネル領域とが形成されている。半導体膜12aは、ゲート絶縁層21に覆われている。ゲート電極12gは、ゲート絶縁層21を間に挟んで平面視で半導体膜12aのチャネル領域に重なるように位置している。
【0031】
層間絶縁層22は、ゲート電極12gとゲート絶縁層21とを覆っている。ドレイン電極12dは、層間絶縁層22に設けられたコンタクトホールを介して、半導体膜12aのドレイン領域に導電接続されている。ソース電極12sは、同様にコンタクトホールを介して、半導体膜12aのソース領域に導電接続されている。なお、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆って、例えばシリコン窒化物(SiN)等からなる保護層が設けられていてもよい。
【0032】
平坦化層26は、層間絶縁層22とドレイン電極12dとソース電極12sとを覆うように形成されている。平坦化層26は、ドレイン電極12dおよびソース電極12sやその他の配線部による凹凸を反映しないほぼ平坦な表面を有している。平坦化層26は、例えばアクリル樹脂等からなる。なお、以降の説明では、基板10と、基板10上に形成された駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層26とを含めて基体20と呼ぶ。
【0033】
陽極24は、基体20上に画素2毎に設けられている。陽極24は、透光性導電材料からなり、例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる。なお、反射性をより高めるために、例えば反射層上に無機絶縁層を間に介して陽極24が積層された構成であってもよい。陽極24は、平坦化層26に設けられたコンタクトホールを介して駆動用TFT12に導電接続されている。
【0034】
隔壁28は、基体20上に形成されている。隔壁28は開口部28aを有しており、画素2の領域を区画している。隔壁28は、開口部28aの周囲に沿って陽極24の周縁部に所定幅で乗り上げるように形成されている。隔壁28の厚さは、例えば2μm程度である。なお、基体20と隔壁28との間に、開口部28aよりも一回り小さい開口部を有する無機絶縁層が設けられていてもよい。
【0035】
有機機能層30は、隔壁28と陽極24との上に配置されている。図示を省略するが、有機機能層30は、例えば、順に積層された正孔輸送層と発光層と電子輸送層とで構成されている。正孔輸送層は、例えば、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等によって形成されている。発光層は、例えば、アルミノウムキノリノール錯体(Alq3)等をホスト材料とし、ルブレン等をドーパントとして形成されている。電子輸送層は、例えば、Alq3等によって形成されている。
【0036】
有機EL装置1では、正孔輸送層から注入される正孔と、電子輸送層から注入される電子とが発光層で再結合することにより、画素2R,2G,2Bにおいて同一色の発光が得られる。有機機能層30の発光色は、例えば白色である。有機機能層30は、画素2R,2G,2Bにおいて同一の膜で形成され、隔壁28と陽極24とを覆うように配置されている。
【0037】
陰極32は、隔壁28と有機機能層30とを覆うように形成されている。陰極32は、発光領域4(図2参照)よりも広い領域を有しており、基体20の外周部で陰極用配線33に導電接続されている。陰極32は、例えばマグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)からなる。陰極32の材料は、カルシウム、ナトリウム、リチウム、またはこれらの金属化合物等であってもよい。有機EL装置1がトップエミッション方式であることから、陰極32は、透光性が得られる層厚に形成されている。陰極32の層厚は、例えば100nm〜200nm程度である。
【0038】
なお、陰極32の表面に接して補助陰極が設けられていてもよい。補助陰極を設けることで、陰極32の延在方向に沿って電流が流れる際の電圧降下を小さくできるので、有機EL装置1において、発光の輝度や効率が高められるとともにより均一な発光が得られるようになる。
【0039】
第1の保護層34は、陰極32を覆うように形成されている。第1の保護層34は、製造工程において、上層に位置する中間層35の残留水分等により陰極32が損傷を受けるのを防止するためのものである。したがって、第1の保護層34は、中間層35より広い範囲に形成されていることが望ましい。また、第1の保護層34は、透光性、緻密性、耐水性、絶縁性、ガスバリア性を有していることが望ましい。第1の保護層34の材料としては、シリコン酸窒化物(SiON)が好適に用いられる。第1の保護層34の材料として、シリコン酸化物(SiO2)やシリコン窒化物(SiN)を用いてもよい。第1の保護層34の層厚は、例えば400nm程度である。
【0040】
中間層35は、第1の保護層34上に設けられ、陰極32よりも広い範囲に形成されている。中間層35は、隔壁28の形状が反映された陰極32表面の凹凸形状等を緩和するように配置されている。また、中間層35は、基体20の反りや体積膨張により発生する応力を緩和し、陰極32の剥離等を防止する機能を有している。中間層35は、例えばエポキシモノマー/オリゴマー等の高分子材料からなる。中間層35の層厚は、例えば2μm程度である。
【0041】
第2の保護層36は、中間層35を覆うように形成されている。第2の保護層36は、酸素や水分が浸入することによる陰極32や有機機能層30の劣化を防止するためのものである。第2の保護層36は、透光性、緻密性、耐水性、絶縁性、ガスバリア性を有していることが望ましい。第2の保護層36の材料としては、SiONが好適に用いられる。第2の保護層36の材料として、SiO2やSiNを用いてもよい。第2の保護層36の層厚は、例えば400nm程度である。
【0042】
一般に、有機EL素子は大気中の酸素や水分等により劣化することが知られている。このような劣化は、有機EL素子の電極や有機機能層の材料が酸素や水分等と反応して酸化あるいは変質することにより生じる。有機EL素子が劣化すると、例えば暗点やダークスポット等の不具合の発生や輝度低下、寿命低下の原因となる。
【0043】
ここで、暗点とは、例えば電極間ショート等の電気的な不具合により画素の領域が発光しなくなる状態を指す。また、ダークスポットとは、有機機能層の劣化や剥がれ等により、画素内の一部または複数の画素に跨った部分で発光しなくなる状態を指す。有機EL装置1では、大気中の酸素や水分の侵入による有機EL素子8の劣化を防止するため、第1の保護層34および第2の保護層36によって有機EL素子8を保護している。
【0044】
したがって、第1の保護層34および第2の保護層36は、水蒸気等のガスを遮断するため、緻密で欠陥のない膜であることが望ましい。このような第1の保護層34および第2の保護層36の成膜法としては、緻密な膜を形成できるイオンプレーティング法等の電子ビーム成膜法が好適である。
【0045】
第2の保護層36上には、封止部40が配置されている。封止部40は、封止基板42と接着層44とを含む。封止基板42および接着層44は、外部からの衝撃等から有機EL素子8を保護する機能を有している。接着層44は、第2の保護層36を覆うように形成されており、第2の保護層36上に封止基板42を固定させている。接着層44は、例えば、透光性を有するウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等からなる。封止基板42は、透光性を有するガラス、またはアクリル系樹脂やスチレン系樹脂等の樹脂類からなる。
【0046】
カラーフィルター38は、封止基板42の有機EL素子8側に設けられている。カラーフィルター38は、赤色のカラーフィルター38Rと、緑色のカラーフィルター38Gと、青色のカラーフィルター38Bとを有している(以下では、対応する色を区別しない場合には単にカラーフィルター38とも呼ぶ)。カラーフィルター38R,38G,38Bは、画素2R,2G,2Bに対応して配置され、平面視で有機EL素子8に重なるように設けられている。
【0047】
有機EL素子8により発せられる光が、カラーフィルター38R,38G,38Bを透過することで、画素2R,2G,2BにおいてR、G、Bの3つの異なる色の光が射出される。なお、隣り合うカラーフィルター38R,38G,38B同士の間に、遮光層が設けられていてもよい。また、カラーフィルター38R,38G,38Bの有機EL素子8側の表面を覆うとともにその表面の凹凸を緩和する平坦化層が設けられていてもよい。
【0048】
なお、有機EL装置1では、有機機能層30から陰極32側に発せられた光は、封止部40側に射出される。また、有機機能層30から陽極24側に発せられた光は、例えば陽極24により反射されて、封止部40側に射出される。
【0049】
<有機EL装置の製造方法>
次に、本実施の形態に係る有機EL装置の製造方法について図を参照して説明する。図5は、本実施の形態に係る有機EL装置の製造方法を説明するフローチャートである。図6および図7は、本実施の形態に係る有機EL装置の製造プロセスを示す図である。図8は、第1の保護層の形成に用いるイオンプレーティング装置の一例の構成を説明する図である。図9は、第1の保護層の形成方法を説明する模式図である。図10は、従来の保護層の形成方法を説明する模式図である。なお、図8、図9、および図10では、主要な構成要素以外は図示を省略している。
【0050】
図5に示すように、有機EL装置の製造方法は、基体準備工程S10と、陽極形成工程S20と、隔壁形成工程S30と、有機機能層形成工程S40と、陰極形成工程S50と、第1の保護層形成工程S60と、中間層形成工程S70と、第2の保護層形成工程S61と、カラーフィルター形成工程S80と、封止部形成工程S90と、を含んでいる。
【0051】
基体準備工程S10では、基板10上に駆動用TFT12と層間絶縁層22と平坦化層26とを公知の方法で形成し、基体20を準備する。
【0052】
次に、陽極形成工程S20では、図6(a)に示すように、基体20上に画素2毎に陽極24を形成する。まず、平坦化層26を貫通しドレイン電極12dに到達するコンタクトホールを形成する。続いて、スパッタリング法等によりITOからなる導電性膜を成膜し、フォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより陽極24が形成される。陽極24は、コンタクトホールを介してドレイン電極12dに導電接続される。
【0053】
次に、隔壁形成工程S30では、図6(b)に示すように、基体20上に隔壁28を形成する。例えば、スピンコート法等により、基体20と陽極24とを覆うようにアクリル樹脂等からなる隔壁層を形成する。そして、隔壁層をパターニングすることにより画素2の領域を区画する開口部28aを形成する。これにより、隔壁28が形成され、開口部28aにおいて陽極24が露出する。開口部28aは、陽極24の領域よりも一回り小さく形成される。
【0054】
次に、有機機能層形成工程S40では、図6(c)に示すように、陽極24と隔壁28とを覆うように有機機能層30を形成する。例えば真空蒸着法により、白色の発光が得られる材料を用いて、少なくとも発光領域4内に正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを順に積層して成膜する。なお、有機EL装置1が発光領域4の周囲にダミー領域を備えている場合は、有機機能層30を発光領域4とダミー領域とに亘って形成してもよい。
【0055】
次に、陰極形成工程S50では、図7(a)に示すように、例えば真空蒸着法により、有機機能層30を覆うように、Mg−Ag合金等からなる陰極32を形成する。これにより、陽極24と有機機能層30と陰極32とで有機EL素子8が形成される。
【0056】
次に、第1の保護層形成工程S60では、図7(b)に示すように、陰極32を覆うように第1の保護層34を形成する。第1の保護層34は、イオンプレーティング法により、SiON等の材料を用いて陰極32よりも広い領域に成膜する。
【0057】
ここで、第1の保護層形成工程S60で用いるイオンプレーティング装置の概略構成を説明する。図8に示すように、イオンプレーティング装置100は、成膜室110と、保持部120と、蒸発源130と、プラズマ導入部140とを備えている。イオンプレーティング装置100によれば、緻密な薄膜を形成することができる。
【0058】
成膜室110は、真空チャンバである。蒸発源130は、成膜室110内の底部側に配置されている。蒸発源130は、底部に設けられた支持台132により支持されている。蒸発源130には、第1の保護層34を形成する材料134が収容される。第1の保護層34を形成する材料134としては、例えば固体のSiOが用いられる。蒸発源130の外周には、環状の陽極146が配置されている。
【0059】
成膜室110内の上部側には、保持部120が蒸発源130に対向して配置されている。保持部120は、基体20の表面が蒸発源130に対向するように基体20を保持する。
【0060】
成膜室110の側部には、ガス導入口112が設けられている。ガス導入口112から成膜室110内にプロセスガス149が導入される。ガス導入口112には、成膜室110内に導入されるプロセスガス149の導入量を制御するマスフローコントローラー(図示しない)が接続されている。プロセスガス149として、例えば窒素ガスが用いられる。
【0061】
ここで、プロセスガスとは、成膜等の反応に使用されるガスのことを指す。また、成膜中に、成膜室内の雰囲気を不活性な状態に保つため、あるいは基板等を冷却するため等の目的で他のガスが使用される場合、これらのガスもプロセスガスに含めるものとする。
【0062】
底部側には、排気口114が設けられている。排気口114は、排気ポンプ(図示しない)に接続されている。排気ポンプにより、成膜室110内の雰囲気が、排気口114を介してイオンプレーティング装置100外に排気される。これにより、成膜室110内を真空に近い減圧状態に保つことができる。
【0063】
プラズマ導入部140は、プラズマ生成器141と、直流電源142と、磁場発生コイル144と、前述の陽極146とを備えている。プラズマ生成器141は、成膜室110の側部に設けられた開口部を介して、成膜室110に接続されている。プラズマ導入部140は、プラズマ生成器141に導入されるプロセスガス147をプラズマ化してプラズマ148を発生させ、そのプラズマ148を蒸発源130に収容された材料134に導入する機能を有している。プロセスガス147として、例えばアルゴンガスが用いられる。
【0064】
イオンプレーティング装置100では、プラズマ148が蒸発源130に収容された材料134に導入されることにより、SiOからなる材料134が昇華する。昇華した材料134は、プラズマ148によりイオン化され活性度の高い状態となって、保持部120に保持された基体20の表面に堆積する。これにより、基体20の表面に、材料134からなる薄膜が成膜される。
【0065】
イオンプレーティング装置100によれば、緻密な膜を形成することができる。なお、イオンプレーティング装置100では、基体20がプラズマ148に直接曝されないように、プラズマ148が発生する領域の外部に基体20が配置される。したがって、基体20に先に形成されている有機機能層30等の膜がプラズマ148により損傷を受けるのを回避できる。
【0066】
なお、イオンプレーティング装置100は、成膜室110の上部に回転機構を備え、保持部120が基体20を保持した状態で回転機構によって回転駆動される構成を有していてもよい。あるいは、成膜室110が他の成膜室や処理室等に接続されており、搬送機構等により、保持部120が基体20を保持した状態で蒸発源130に対して所定の方向に相対移動する構成を有していてもよい。
【0067】
次に、イオンプレーティング装置100を用いて、第1の保護層34を形成する方法を説明する。
【0068】
イオンプレーティング装置100において、まず、排気口114を介して接続された排気ポンプで吸引することにより、成膜室110内を減圧する。蒸発源130には、第1の保護層34を形成する材料として、SiOからなる材料134が収容される。
【0069】
保持部120には、基体20が保持される。このとき、基体20の表面には、陰極32までが形成されている。また、基体20の外周には、陰極32に導電接続された陰極用配線33が位置している。基体20は、保持部120により、陰極32が蒸発源130に対向するように保持される。基体20の蒸発源130に対向する側には、第1の保護層34を形成する蒸着マスクとしてメタルマスク122が配置されている。
【0070】
メタルマスク122は、陰極用配線33に接触しており、陰極用配線33に導電接続されている。また、メタルマスク122には、バイアス電源124が接続されている。バイアス電源124により、メタルマスク122には、イオンプレーティング装置100のグラウンド電位に対して、例えば+0.5V〜+15V程度の直流電圧が印加される。したがって、陰極32には、メタルマスク122と陰極用配線33とを介して、イオンプレーティング装置100のグラウンド電位に対して正の電荷が印加される。
【0071】
本実施形態では、メタルマスク122を介して陰極32に正の電荷を印加するので、陰極32に正の電荷を印加するための外部端子等を新たに設けなくてもよい。また、メタルマスク122を陰極用配線33に接触させることにより陰極32に正の電荷を印加するので、陰極32が損傷を受けるリスクを回避できる。なお、陰極32上に補助陰極が形成されている場合は、補助陰極にメタルマスク122を接触させてもよい。
【0072】
次に、成膜室110内に、プロセスガス149として、窒素ガスをガス導入口112から導入する。これにより、少なくとも基体20と蒸発源130との間の空間は、プロセスガス149(窒素ガス)で満たされるので、外部からの酸素が遮断された雰囲気となる。このため、この成膜工程の前に基体20に形成されている膜等の酸化が防止される。
【0073】
そして、プラズマ生成器141に、プロセスガス147として、アルゴンガスを導入する。プラズマ生成器141に導入されたプロセスガス147(アルゴンガス)は、直流電源142によりプラズマ化されて、プラズマ148(アルゴンプラズマ)となる。プラズマ148は、磁場発生コイル144および陽極146により蒸発源130に導かれ、蒸発源130に収容された材料134に導入される。
【0074】
材料134(SiO)はプラズマ148により昇華する。昇華した材料134(SiO)の粒子は、プラズマ148によりイオン化され活性度の高い状態となって、基体20(陰極32)の表面に向かう。このSiOの粒子は、プロセスガス149(窒素ガス)と結合してSiONの粒子136(図(9)参照)となる。このとき、SiONの粒子136は、イオンプレーティング装置100のグラウンド電位に対して負の電荷を有している。このSiONの粒子136が堆積することにより、基体20(陰極32)の表面に、SiONからなる第1の保護層34が成膜される。
【0075】
ところで、成膜室110内には、成膜の際に昇華した材料134のうち、上部や側部に付着したものや底部に堆積したものが存在する。これらの膜材料が、成膜の際に剥がれたり舞い上がったりして、成膜室110内に異物として浮遊することがある。また、蒸発源130の周囲で、材料134の突沸等により異物が発生することもある。このような異物が基体20の表面に付着すると、異物が付着した部分で膜にピンホール等の欠陥が生じてしまう。
【0076】
図10に、基体20(陰極32)の表面に異物138が付着している場合を模式的に示す。この状態で、第1の保護層34の成膜を行うと、SiONの粒子136が異物138によって遮られて、異物138の周囲で基体20(陰極32)の表面に第1の保護層34で被覆されない部分や、形成された第1の保護層34にピンホール等の欠陥が生じることとなる。
【0077】
なお、従来の方法においては、メタルマスク122(図8参照)は、例えば成膜室110と同じ電位、すなわちイオンプレーティング装置100のグラウンド電位に保持される。
【0078】
次に、本実施の形態に係る第1の保護層34の形成方法を、図9を参照して説明する。図9(a)に示すように、基体20の表面に位置する陰極32には、メタルマスク122(図8参照)と陰極用配線33(図8参照)とを介し、イオンプレーティング装置100のグラウンド電位に対して、例えば+0.5V〜+15V程度の直流電圧が印加されている。したがって、陰極32はイオンプレーティング装置100のグラウンド電位に対して正の電荷を有している。このとき、陰極32には、イオンプレーティング装置100のグラウンドとの間で、第1の保護層34が成膜される領域において、例えば0.2mA/cm2程度の電流が流れている。
【0079】
一方、基体20(陰極32)の表面に向かうSiONの粒子136は、イオンプレーティング装置100のグラウンド電位に対して負の電荷を有している。したがって、SiONの粒子136は基体20(陰極32)の表面に引き寄せられる。基体20(陰極32)の表面には異物138が付着しているが、この異物138により基体20(陰極32)の表面に第1の保護層34が成膜されない部分ができても、陰極32が有する正の電荷によってSiONの粒子136がこの部分に引き寄せられる。
【0080】
これにより、図9(b)に示すように、異物138の周囲においても基体20(陰極32)の表面に第1の保護層34が成膜される。このように、基体20(陰極32)の表面に異物138が付着している場合でも、ピンホール等の欠陥の発生を抑えて基体20(陰極32)の表面に第1の保護層34を成膜できる。この結果、図7(b)に示すように、陰極32の表面を被覆して第1の保護層34が形成される。
【0081】
次に、中間層形成工程S70では、図7(c)に示すように、第1の保護層34上に中間層35を形成する。中間層35の形成は、例えばスクリーン印刷法により行う。第1の保護層34までが形成された基体20上に、スクリーンメッシュに非塗布領域をパターン形成したマスクを接触させてスキージで押し付けることで、中間層35の材料を基体20(第1の保護層34)の表面に転写する。これにより、第1の保護層34上に中間層35が形成される。
【0082】
次に、第2の保護層形成工程S61では、図7(c)に示すように、中間層35上に第2の保護層36を形成する。第2の保護層36は、イオンプレーティング装置100を用いて、第1の保護層形成工程S60と同様の方法で行う。
【0083】
次に、カラーフィルター形成工程S80では、図4に示すように、封止基板42上にカラーフィルター38R,38G,38Bを形成する。図4では、有機EL装置1が完成した状態を示している。カラーフィルター38R,38G,38Bは、例えばR、G、Bの異なる色の光を透過させるような顔料を含む感光性樹脂を塗布してパターン加工することにより形成する。
【0084】
なお、互いに隣り合うカラーフィルター38R,38G,38B同士の間に、例えばクロム(Cr)等からなる遮光層を形成してもよい。また、カラーフィルター38R,38G,38Bの表面を覆うとともにその表面の凹凸を緩和する平坦化層をさらに形成してもよい。
【0085】
次に、封止部形成工程S90では、図4に示すように、第2の保護層36上に接着層44を介して封止基板42を配置し、封止部40を形成する。封止基板42は、カラーフィルター38R,38G,38Bが有機EL素子8に対向するように配置される。以上により、有機EL装置1が完成する。
【0086】
上記の実施形態に係る有機EL装置の製造方法によれば、以下の効果が得られる。
【0087】
(1)イオンプレーティング法を用いて第1の保護層34を形成する際に、基体20の表面に形成された陰極32に正の電荷を印加する。第1の保護層34の成膜材料であるSiONの粒子136は負の電荷を有しているので、基体20の表面(陰極32)に異物138が付着している場合、この異物138により基体20の表面(陰極32)に第1の保護層34が成膜されない部分ができても、陰極32が有する正の電荷によってSiONの粒子136がこの部分に引き寄せられる。このため、異物138の周囲においても基体20(陰極32)の表面に第1の保護層34が成膜される。したがって、基体20(陰極32)の表面に異物138が付着している場合でも、ピンホール等の欠陥の発生を抑え基体20(陰極32)の表面を被覆して第1の保護層34を形成できる。第2の保護層36も、第1の保護層34と同様にして、ピンホール等の欠陥の発生を抑えて形成できる。これにより、水分等が侵入することによる有機機能層30や陰極32の劣化が抑えられる。この結果、ダークスポット等の不具合の発生や輝度や寿命の低下が少なく、信頼性の高い有機EL装置1を製造することができる。
【0088】
(2)メタルマスク122を介して陰極32に正の電荷を印加するので、陰極32に正の電荷を印加するための外部端子等を新たに設けなくてもよい。また、メタルマスク122を陰極用配線33に接触させることにより陰極32に正の電荷を印加するので、陰極32が損傷を受けるリスクを回避できる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0090】
(変形例1)
上記実施形態の有機EL装置の製造方法では、第1の保護層34および第2の保護層36の材料としてSiONを用いたが、上記の形態に限定されない。第1の保護層34および第2の保護層36の材料として、SiO2やSiNを用いてもよい。第1の保護層34および第2の保護層36の材料にSiO2やSiNを用いた場合でも、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0091】
(変形例2)
上記実施形態の有機EL装置の製造方法では、第1の保護層34および第2の保護層36の形成にイオンプレーティング装置を用いたが、上記の形態に限定されない。第1の保護層34および第2の保護層36の形成に、イオンプレーティング装置以外の電子ビーム成膜装置を用いてもよい。イオンプレーティング装置以外の電子ビーム成膜装置を用いた場合でも、基体20の表面に正の電荷を印加することにより、上記実施形態と同様の効果が得られる。ただし、成膜の際に基体20の表面にバイアス電位を印加することを前提とする成膜装置は除くものとする。
【0092】
(変形例3)
上記実施形態の有機EL装置の製造方法では、有機機能層30を白色の発光が得られる材料を用いて真空蒸着法により形成したが、上記の形態に限定されない。有機機能層30を、画素2R,2G,2Bに対応して、R、G、Bの3色の異なる発光が得られる材料を用いて形成してもよい。また、有機機能層30を、インクジェット法やスピンコート法等により塗布する方法を適用して形成してもよい。
【0093】
(変形例4)
上記実施形態の有機EL装置の製造方法では、画素2を、略矩形の平面形状に形成したが、上記の形態に限定されない。画素2を、円形や楕円形等の他の平面形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1…有機EL装置、2…画素、20…基体、24…第1の電極としての陽極、30…有機機能層、32…第2の電極としての陰極、33…配線部としての陰極用配線、34…絶縁層としての第1の保護層、36…第2の保護層、100…イオンプレーティング装置、122…メタルマスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体上に配列された画素と、
前記基体上に、前記画素に対応して配置された第1の電極と、
前記第1の電極上に配置された少なくとも発光層を含む有機機能層と、
前記有機機能層上に配置された第2の電極と、
前記第2の電極を覆うように配置された絶縁層と、を備えた有機EL装置の製造方法であって、
前記第2の電極が形成された前記基体の表面に、イオンプレーティング法を用いて前記絶縁層を形成する工程を有し、
前記絶縁層を形成する工程では、前記基体の表面に正の電荷を印加して前記絶縁層を形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記絶縁層を形成する工程では、前記絶縁層をシリコン酸窒化物、シリコン酸化物、またはシリコン窒化物で形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記絶縁層を形成する工程では、前記第2の電極に正の電荷を印加することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記基体上に配置され、前記第2の電極に導電接続された配線部をさらに備え、
前記絶縁層を形成する工程では、前記配線部を介して前記第2の電極に正の電荷を印加することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の有機EL装置の製造方法であって、
前記絶縁層を形成する工程では、蒸着マスクとしてメタルマスクを用い、
前記メタルマスクを介して前記基体の表面に正の電荷を印加することを特徴とする有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−225417(P2010−225417A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71467(P2009−71467)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】