説明

有機EL装置及びその製造方法

【課題】生産性を向上することが可能な有機EL装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁基板と、前記絶縁基板の上方に配置されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子の上方に配置され、前記スイッチング素子に到達するコンタクトホールが形成された絶縁膜と、前記絶縁膜の上に配置され、前記コンタクトホール内に延在し前記スイッチング素子に電気的に接続されたコンタクト部を有する画素電極と、前記コンタクト部を含む前記画素電極の上、及び、前記画素電極の周辺の前記絶縁膜の上に延在した有機層と、前記有機層の上に配置された対向電極と、を備えたことを特徴とする有機EL装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型で、高速応答、広視野角、高コントラストの特徴を有し、かつ、更に薄型軽量化が可能な有機エレクトロルミネセンス(EL)素子を用いた表示装置の開発が盛んに行われている。
【0003】
この有機EL素子は、正孔注入電極(陽極)から正孔を注入するとともに、電子注入電極(陰極)から電子を注入し、発光層で正孔と電子とを再結合させて発光を得るものである。フルカラー表示を得るためには、赤(R)、緑(G)、青(B)にそれぞれ発光する画素を構成する必要がある。赤、緑、青の各画素を構成する有機EL素子の発光層には、赤色、緑色、青色といったそれぞれ異なる発光スペクトルで発光する発光材料を塗り分ける必要がある。このような発光材料を塗り分ける方法として、真空蒸着法がある。このような真空蒸着法によって低分子系の有機EL材料を成膜する場合、各色の画素毎に開口した金属性のファインマスクを用いてそれぞれ独立にマスク蒸着する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−157973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生産性を向上することが可能な有機EL装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
絶縁基板と、前記絶縁基板の上方に配置されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子の上方に配置され、前記スイッチング素子に到達するコンタクトホールが形成された絶縁膜と、前記絶縁膜の上に配置され、前記コンタクトホール内に延在し前記スイッチング素子に電気的に接続されたコンタクト部を有する画素電極と、前記コンタクト部を含む前記画素電極の上、及び、前記画素電極の周辺の前記絶縁膜の上に延在した有機層と、前記有機層の上に配置された対向電極と、を備えたことを特徴とする有機EL装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
絶縁膜と、前記絶縁膜の上に配置され、略矩形状のエッジを有する画素電極と、前記絶縁膜に形成されるとともに前記画素電極の前記エッジよりも内側に位置し、前記画素電極によって覆われたコンタクトホールと、前記画素電極の上、及び、前記画素電極の周辺の前記絶縁膜の上に延在した有機層と、前記有機層の上に配置された対向電極と、を備えたことを特徴とする有機EL装置が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
絶縁基板と、前記絶縁基板の上方にそれぞれ配置された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の上方に配置され、前記第1スイッチング素子に到達する第1コンタクトホール及び前記第2スイッチング素子に到達する第2コンタクトホールが形成された絶縁膜と、前記絶縁膜の上に配置され、前記第1コンタクトホール内に延在し前記第1スイッチング素子に電気的に接続された第1コンタクト部を有する第1画素電極と、前記絶縁膜の上において前記第1画素電極から離間して配置され、前記第2コンタクトホール内に延在し前記第2スイッチング素子に電気的に接続された第2コンタクト部を有する第2画素電極と、前記第1コンタクト部を含む前記第1画素電極の上、前記第2コンタクト部を含む前記第2画素電極の上、及び、前記第1画素電極と前記第2画素電極との間の前記絶縁膜の上に延在した有機層と、前記有機層の上に配置された対向電極と、を備えたことを特徴とする有機EL装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
絶縁基板の上方にスイッチング素子を形成し、前記スイッチング素子の上に絶縁膜材料を塗布し、前記絶縁膜材料をパターニングして前記スイッチング素子に到達するコンタクトホールを形成し、前記絶縁膜材料を焼成した後に、冷却して絶縁膜を形成し、前記絶縁膜の上及び前記コンタクトホール内に導電層を形成し、前記導電層をパターニングして前記スイッチング素子に電気的に接続された画素電極を形成し、前記画素電極の上、及び、前記画素電極の周辺の前記絶縁膜の上に有機層を形成し、前記有機層の上に対向電極を形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性を向上することが可能な有機EL装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施態様における有機EL表示装置のスイッチング素子及び第1乃至第3有機EL素子を含む表示パネルの構造を概略的に示す断面図である。
【図2】図2の(a)乃至(e)は、図1に示した第1乃至第3有機EL素子における画素電極とコンタクトホールの位置関係を概略的に示す上面図である。
【図3】図3は、図2に示した第2有機EL素子をIII−III線で切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、本実施形態の他の構成例における有機EL表示装置のスイッチング素子及び第1乃至第3有機EL素子を含むアレイ基板の断面図である。
【図5】図5は、本実施形態の他の構成例における有機EL表示装置のスイッチング素子及び第1乃至第3有機EL素子を含むアレイ基板の断面図である。
【図6】図6の(a)乃至(e)は、図5に示した第1乃至第3有機EL素子における画素電極とコンタクトホールの位置関係を概略的に示す上面図である。
【図7】図7は、本実施形態の他の構成例における有機EL表示装置のスイッチング素子及び第1乃至第3有機EL素子を含むアレイ基板の断面図である。
【図8】図8の(a)乃至(e)は、図7に示した第1乃至第3有機EL素子における画素電極とコンタクトホールの位置関係を概略的に示す上面図である。
【図9】図9は、図1に示したアレイ基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、図5及び図7に示したアレイ基板の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、本実施形態の他の構成例における有機EL表示装置のスイッチング素子及び第1乃至第3有機EL素子を含むアレイ基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
本実施形態では、有機EL装置の一例として、アクティブマトリクス駆動方式を採用した有機EL表示装置について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態における有機EL表示装置のスイッチング素子SW及び第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含む表示パネル1の断面図である。なお、ここに示した第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、対向基板200の側から光を放射するトップエミッションタイプであるが、本実施形態においては、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、アレイ基板100の側から光を放射するボトムエミッションタイプであっても良い。
【0015】
アレイ基板100は、ガラス基板やプラスチック基板などの光透過性を有する絶縁基板101を備えている。スイッチング素子SW、及び、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、絶縁基板101の上方において、画像を表示するアクティブエリア102にそれぞれ配置されている。
【0016】
絶縁基板101の上には、第1絶縁膜111が配置されている。このような第1絶縁膜111は、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在している。この第1絶縁膜111は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機化合物によって形成されている。
【0017】
第1絶縁膜111の上には、スイッチング素子SWの半導体層SCが配置されている。この半導体層SCは、例えばポリシリコンによって形成されている。この半導体層SCには、チャネル領域SCCを挟んでソース領域SCS及びドレイン領域SCDが形成されている。
【0018】
半導体層SCは、第2絶縁膜112によって被覆されている。また、この第2絶縁膜112は、第1絶縁膜111の上にも配置されている。このような第2絶縁膜112は、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在している。この第2絶縁膜112は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機化合物によって形成されている。
【0019】
第2絶縁膜112の上には、チャネル領域SCCの直上にスイッチング素子SWのゲート電極Gが配置されている。この例では、スイッチング素子SWは、トップゲート型のpチャネル薄膜トランジスタ(TFT)である。ゲート電極Gは、第3絶縁膜113によって被覆されている。また、この第3絶縁膜113は、第2絶縁膜112の上にも配置されている。このような第3絶縁膜113は、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在している。この第3絶縁膜113は、例えば、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機化合物によって形成されている。
【0020】
第3絶縁膜113の上には、スイッチング素子SWのソース電極S及びドレイン電極Dが配置されている。ソース電極Sは、半導体層SCのソース領域SCSにコンタクトしている。ドレイン電極Dは、半導体層SCのドレイン領域SCDにコンタクトしている。スイッチング素子SWのゲート電極G、ソース電極S、及び、ドレイン電極Dは、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの導電材料を用いて形成されている。
【0021】
これらのソース電極S及びドレイン電極Dは、第4絶縁膜114によって被覆されている。また、この第4絶縁膜114は、第3絶縁膜113の上にも配置されている。このような第4絶縁膜114は、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在している。このような第4絶縁膜114は、スイッチング素子SWの上方に配置され、しかも、画素電極PEの下地となる絶縁膜として機能する。つまり、第4絶縁膜114は、スイッチング素子SWと第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3との間に配置されている。
【0022】
この第4絶縁膜114は、例えば、紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などの有機化合物によって形成されている。具体的には、第4絶縁膜114は、例えば、アクリル基含有樹脂、ポリイミド基含有樹脂、シリコーン基含有樹脂、フッ素基含有樹脂、ウレタン基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂の少なくとも1つによって形成されている。また、第4絶縁膜114は、アクリル基含有樹脂、ポリイミド基含有樹脂、シリコーン基含有樹脂、フッ素基含有樹脂、ウレタン基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂の少なくとも1つの母材に、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック、チタンブラック、アニリンブラックや酸化鉄系黒色顔料の少なくとも1つの黒色色材を混合した材料によって形成されても良い。
【0023】
また、この第4絶縁膜114には、スイッチング素子SWに到達する凹所を形成するコンタクトホールCHが形成されている。つまり、スイッチング素子SWのドレイン電極Dの一部は、コンタクトホールCHの底部に位置している。
【0024】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を構成する各々の画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に配置されている。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEは、コンタクトホールCH内に延在し、スイッチング素子SWのドレイン電極Dに電気的に接続されている。これらの画素電極PEは、例えば陽極に相当する。各画素電極PEは互いに離間しており、隣接する画素電極PEの間の第4絶縁膜114は、画素電極PEに覆われていない。
【0025】
このような画素電極PEの構造については、特に制限はないが、ここに示した例では、画素電極PEは、反射層PER及び透過層PETが積層された2層構造である。反射層PERは、第4絶縁膜114の上に配置されている。この反射層PERは、コンタクトホールCH内に延在し、スイッチング素子SWのドレイン電極Dに電気的に接続されている。透過層PETは、第4絶縁膜114の直上及びコンタクトホールCHの直上に位置する反射層PERの上に積層されている。
【0026】
ここに示した例では、反射層PER及び透過層PETは、略同一サイズの略同一パターンで形成されており、反射層PERの上面全体に透過層PETが積層されている。透過層PETは、第4絶縁膜114の上面114Tに接することはなく、また、反射層PERの側面にも接していない。詳細については、後に述べるが、透過層PETの側面の位置は、反射層PERの側面の直上の位置と一致する位置であり、透過層PETの側面と反射層PERの側面とは、連続した平面あるいは連続した曲面を形成している。
【0027】
反射層PERは、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などの光反射性を有する導電材料によって形成されている。透過層PETは、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)、インジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する酸化物導電材料などの導電材料によって形成されている。
【0028】
なお、画素電極PEは、反射層単層、あるいは、透過層単層であっても良いし、さらには、3層以上の積層構造であっても良い。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3が対向基板200の側から光を放射するトップエミッションタイプの場合には、画素電極PEは少なくとも反射層PERを含んでいる。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3が絶縁基板101の側から光を放射するボトムエミッションタイプの場合には、画素電極PEは、反射層PERを含んでいない。
【0029】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を構成する有機層ORGは、各画素電極PEの上に配置されている。この有機層ORGは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在している。つまり、有機層ORGは、各画素電極PEを被覆するとともに、画素電極PEの間の第4絶縁膜114も被覆している。
【0030】
より具体的には、有機層ORGは、第4絶縁膜114の直上及びコンタクトホールCHの直上にそれぞれ位置する各画素電極PEの上面(ここでは特に透過層PETの上面)PTの全体、及び、各画素電極PEの側面(ここでは反射層PER及び透過層PETの側面)PSの全体に接している。また、有機層ORGは、隣接する画素電極PEの間の第4絶縁膜114の上面114Tにも接している。
【0031】
この有機層ORGは、少なくとも図示を省略した発光層を含んでいる。なお、有機層ORGは、さらに、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層などを含んでいても良い。また、有機層ORGを構成する発光層は、蛍光材料によって形成されていても良いし、燐光材料によって形成されていても良い。なお、ここでは、『有機層』と称したが、有機層ORGが含む発光層、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層の一部が無機系材料によって形成されていても良い。
【0032】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を構成する対向電極CEは、有機層ORGの上に配置されている。この例では、対向電極CEは、陰極に相当する。この対向電極CEは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、有機層ORGを被覆している。
【0033】
このような対向電極CEは、例えば半透過層によって形成されている。半透過層は、例えば、マグネシウム(Mg)・銀(Ag)などの導電材料によって形成されている。なお、対向電極CEは、半透過層及び透過層が積層された2層構造であっても良いし、透過層単層構造、または、半透過層単層構造であっても良い。透過層は、例えば、ITOやIZOなどの光透過性を有する導電材料によって形成可能である。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3が絶縁基板101の側から光を放射する下面発光型の場合には、対向電極CEは少なくとも反射層あるいは半透過層を含んでいる。
【0034】
対向基板200は、アレイ基板100に形成された第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の上方に配置されている。この対向基板200は、ガラス基板やプラスチック基板などの光透過性を有する絶縁基板である。
【0035】
図示した例では、アレイ基板100と対向基板200とが離間し、両者の間に空間が形成されているが、アレイ基板100と対向基板200との間には、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を被覆する保護膜や樹脂層が配置されても良い。保護膜は、光透過性を有し且つ水分が浸透しにくい絶縁材料、例えば、シリコン窒化物やシリコン酸窒化物などの無機化合物によって形成され、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を覆い、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3への水分の浸透を防止する水分バリア膜として機能する。樹脂層は、光透過性を有する熱硬化型樹脂あるいは紫外線硬化型樹脂などの有機化合物によって形成され、アレイ基板100と対向基板200との間に充填される充填層あるいはアレイ基板100と対向基板200とを接着する接着層として機能する。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3と樹脂層との間には、上述した保護膜が介在することが望ましい。
【0036】
本実施形態においては、発光層を含む有機層ORGが第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在した連続膜でありながら、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の発光色は、互いに異なるように構成されている。ここに示した例では、第1有機EL素子OLED1の発光色は赤色であり、第2有機EL素子OLED2の発光色は緑色であり、第3有機EL素子OLED3の発光色は青色である。
【0037】
ここでは、主波長が595nm乃至800nmの範囲を第1波長範囲と定義し、この第1波長範囲内にある色を赤色とする。また、主波長が490nmより長く且つ595nmよりも短い範囲を第2波長範囲と定義し、この第2波長範囲内にある色を緑色とする。さらに、主波長が400nm乃至490nmの範囲を第3波長範囲と定義し、この第3波長範囲内にある色を青色とする。
【0038】
このような構成は、例えば、以下のような構成で実現可能である。すなわち、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の有機層ORGは、例えば、発光色が赤色の第1ドーパント材料、発光色が緑色の第2ドーパント材料、及び、発光色が青色の第3ドーパント材料を含でいる。第1有機EL素子OLED1については、第1ドーパント材料が発光し、赤色を呈する。第2有機EL素子OLED2については、第1ドーパント材料が消光しており、第2ドーパント材料が発光し、緑色を呈する。第3有機EL素子OLED3については、第1ドーパント材料及び第2ドーパント材料が消光しており、第3ドーパント材料が発光し、青色を呈する。
【0039】
なお、有機層ORGの形態は、特に制限はなく、第1ドーパント材料を含む第1発光層、第2ドーパント材料を含む第2発光層、及び、第3ドーパント材料を含む第3発光層を積層した3層構造であっても良いし、第1発光層及び第2発光層を積層した2層構造であっても良いし、第1発光層のみからなる単層構造であっても良い。2層構造の場合、第1発光層は、第1ドーパント材料のみならず、第2ドーパント材料や第3ドーパント材料を含んでいても良いし、第2発光層は、第2ドーパント材料のみならず、第1ドーパント材料や第3ドーパント材料を含んでいても良い。単層構造の場合、第1発光層は、第1ドーパント材料、第2ドーパント材料、及び、第3ドーパント材料を含んでいても良い。
【0040】
また、第1乃至第3ドーパント材料としては、光照射によって発光性能が変化する材料として、消光する材料を適用した場合について説明したが、消光に限らず、紫外線などの光照射によって発光色が変化するなどの発光性能が変化する材料が適用可能である。
【0041】
例えば、光照射によって分子の立体構造が変化して発光色が変化するあるいは消光する材料が適用可能である。例えば、一方のドーパント材料が他方のドーパント材料の異性体である場合がこの例に相当する。異性体の一種として、シス体及びトランス体の例について簡単説明する。シス体とは、主骨格に対して2つの側鎖(あるいは原子団)が同じ側にある分子の立体構造を示し、トランス体とは、主骨格に対して2つの側鎖(あるいは原子団)が互いに反対側にある分子の立体構造を示している。このようなドーパント材料は、紫外光などの光照射により、シス体からトランス体に変化する、あるいは、トランス体からシス体に変化する材料から選択され、このような材料として、例えば、フォトクロミック材料が挙げられる。
【0042】
また、他の異性体の例としては、光変換型タンパク質あるいは蛍光タンパク質などと称される材料も挙げられる。例えば、蛍光タンパク質の中には、紫外光の照射により、消光状態から活性化されて発光するようになる材料や、ある発光波長から別の発光波長に変換される材料などがあり、これらも本実施形態のドーパント材料として適用可能である。
【0043】
また、光照射によって発光層に含まれるドーパント材料と添加剤あるいはホスト材料とが化学結合して発光色が変化するあるいは消光する材料も適用可能である。
【0044】
本実施形態における表示パネル1は、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を区画するための隔壁を省略した構成を採用している。
【0045】
次に、図1に示した本実施形態における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各画素電極PEとコンタクトホールCHとの位置関係について説明する。
【0046】
図2は、図1に示した第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の上面図である。なお、この図においては、有機層ORG及び対向電極CEについては第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の共通層であるため図示を省略し、画素電極PE及びコンタクトホールCHのみを図示している。
【0047】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、基本的には同一構造であり、X方向に並んでいる。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEは、互いに離間して配置されている。また、各画素電極PEは、Y方向に延びた略長方形状に形成され、略矩形状のエッジEDを有している。図示した例では、画素電極PEを構成する反射層PER及び透過層PETは、上述した通り、略同一サイズの略同一パターンであって、互いにXY平面内でずれることなく重なっている。
【0048】
コンタクトホールCHは、図示しないスイッチング素子SWまで貫通している。このコンタクトホールCHは、画素電極PEのエッジEDよりも内側に位置しており、画素電極PEによって覆われている。なお、図示した例では、コンタクトホールCHは、四角形状であるが、コンタクトホールCHの形状はこの例に限らない。
【0049】
図中の(a)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向端部付近であってX方向の略中央付近に位置している。図中の(b)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向端部付近であってX方向端部付近、つまり、画素電極PEの角部付近に位置している。図中の(c)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向の略中央付近であってX方向の略中央付近、つまり、画素電極PEの略中央付近に位置している。これらの(a)、(b)、及び、(c)に示した例では、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEは同一サイズであり、X方向及びY方向に沿ったそれぞれの長さは同一である。
【0050】
図中の(d)に示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEの角部付近に位置しているが、(b)に示した例と比較して、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEが同一サイズであり、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより大きい点で相違している。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEのY方向に沿った長さは同一であり、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEのX方向に沿った長さは第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより長い。
【0051】
なお、(d)に示した例のように、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより大きい場合であっても、(a)及び(c)に示した例と同様の位置にコンタクトホールCHを形成しても良い。
【0052】
図中の(e)に示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEの角部付近に位置しているが、(b)に示した例と比較して、第2有機EL素子OLED2の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより大きく、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより大きい点で相違している。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEのY方向に沿った長さは同一である。第2有機EL素子OLED2の画素電極PEのX方向に沿った長さは第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより長く、また、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEのX方向に沿った長さは第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより長い。
【0053】
なお、(e)に示した例のように、第2有機EL素子OLED2の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより大きく、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより大きい場合であっても、(a)及び(c)に示した例と同様の位置にコンタクトホールCHを形成しても良い。
【0054】
次に、本実施形態におけるコンタクトホールCHのテーパー角θについて説明する。
【0055】
図3は、図2に示した第2有機EL素子OLED2をIII−III線で切断した構造を示す断面図である。なお、この図においては、説明に必要な主要部のみを図示している。
【0056】
スイッチング素子のドレイン電極Dと画素電極PEとの間の第4絶縁膜114は、略平坦な上面114Tを有している。この上面114Tには、各画素電極PEが配置される第1上面114T1と、画素電極PEの周辺に位置する第4絶縁膜114の上面、つまり、隣接する画素電極PEの間に位置する第4絶縁膜114の第2上面114T2とが含まれる。この第4絶縁膜114には、ドレイン電極Dまで貫通したコンタクトホールCHが形成されている。第4絶縁膜114の側面114Sは、緩やかに傾斜した平面となる場合もあり得るし、曲面となる場合もあり得る。
【0057】
第4絶縁膜114の第1上面114T1に配置された反射層PERは、コンタクトホールCH内に延在し、第4絶縁膜114の側面114Sを覆うとともに、コンタクトホールCHの底部に位置するドレイン電極Dにコンタクトしている。反射層PERのうち、ドレイン電極Dにコンタクトしている部分が画素電極PEのコンタクト部PECに相当する。反射層PERは、上面PRT及び側面PRSを有している。
【0058】
透過層PETは、反射層PERの上面PRTに積層されている。この透過層PETは、反射層PERの側面PRSを覆うことはなく、第4絶縁膜114にも接していない。この透過層PETは、上面PTT及び側面PTSを有している。反射層PERの側面PRS及び透過層PETの側面PTSは、ほとんど段差のない連続面であり、平面である場合もあり得るし、曲面である場合もあり得る。
【0059】
このような2層積層構造の画素電極PEは、詳細には後述するが、例えば、第4絶縁膜114の上に反射導電層を形成し、反射導電層の上に透過導電層を積層し、これらの反射導電層及び透過導電層を一括してエッチングすることにより形成可能である。このとき、反射導電層及び透過導電層の一部を除去するためのエッチングとしてドライエッチングを適用した場合には、反射導電層及び透過導電層を除去した際に、反射導電層の下地である第4絶縁膜114の表面も除去される場合がある。なお、エッチングとしてウエットエッチングを適用した場合には、第4絶縁膜114の表面はほとんど除去されない。
【0060】
このため、第4絶縁膜114の上面114Tにおいて、画素電極PEが配置される第1上面114T1は、いずれも略同一の位置であって同一平面を形成する一方で、画素電極PEの間に位置する第2上面114T2は、第1上面114T1よりも窪んでいる場合がある。
【0061】
有機層ORGは、画素電極PEの上面PTである透過層PETの上面PTTに配置され、画素電極PEの側面PSである反射層PERの側面PRS及び透過層PETの側面PTSを覆うとともに、画素電極PEの間の第4絶縁膜114の上面114Tの一部である第2上面114T2を覆っている。
【0062】
このような有機層ORGの膜厚T1は、画素電極PEの膜厚T2より厚いことが望ましい。有機層ORGの膜厚T1とは、画素電極PEと対向電極CEとの間に介在する有機層ORGの総厚である。画素電極PEの膜厚T2とは、反射層PERの膜厚と透過層PETの膜厚との総和である。これにより、画素電極PEの上面PTと第4絶縁膜114の上面114Tとの段差によって有機層ORGの一部が途切れる不良を抑制することができ、画素電極PEと対向電極CEとのショートを抑制することが可能となる。一例として、反射層PERの膜厚が100nmであり、透過層PETの膜厚が25nmである場合、画素電極PEの膜厚T1は125nmである一方、有機層ORGの膜厚T2が200nmである。
【0063】
対向電極CEは、画素電極PEの直上及び画素電極PEの間の第4絶縁膜114の直上に位置する有機層ORGの上に配置されている。
【0064】
本実施形態において、コンタクトホールCHのテーパー角θは、以下のように定義する。すなわち、コンタクトホールCHは、第4絶縁膜114の一部を除去することによって形成されるが、ドレイン電極Dの表面DSに到達する側面114Sの形状が安定しにくいことから、図示した断面において、側面114Sとドレイン電極Dとの交点から水平方向に0.5μm離れた側面114Sの位置Pにおける接線Tと、ドレイン電極Dの表面DSとのなす角度をテーパー角θと定義する。
【0065】
本実施形態においては、テーパー角θは、40度以下であることが望ましい。テーパー角θが40度を越える急峻な側面114Sによって形成されたコンタクトホールCHでは、有機層ORGを形成した際に、膜の一部が途切れるおそれがある。その後、有機層ORGの上に対向電極CEを形成した際には、有機層ORGが途切れた部分で対向電極CEと画素電極PEとがショートして、有機EL素子が正常に発光しない不具合を招くおそれがある。このため、テーパー角θを40度以下にすることにより、側面114Sの傾斜が緩やかになり、有機層ORGが途切れることを抑制することができる。これにより、対向電極CEと画素電極PEとのショートが抑制され、有機EL素子を正常に発光させることが可能となる。
【0066】
このようなテーパー角θのコンタクトホールCHが形成された第4絶縁膜114は、詳細には後述するが、例えば、第4絶縁膜114を形成するための絶縁膜材料を塗布した後に、コンタクトホールCHを形成する箇所の絶縁膜材料を除去するパターニングを行い、焼成し、冷却することによって形成可能である。特に、絶縁膜材料を焼成する際の温度は、絶縁膜材料が溶融状態となる温度とする。
【0067】
これにより、絶縁膜材料は水滴のようにその表面張力によって収縮し、徐々に温度を低下させて冷却した後には、収縮した状態が保持され、緩やかなテーパー角θのコンタクトホールCHが形成される。
【0068】
このような本実施形態によれば、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を区画するための隔壁を省略したため、樹脂材料によって格子状に隔壁を形成した構成と比較して、隔壁を形成する工程が不要となり、生産性を向上することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、画素電極PEの周縁やコンタクトホールCHの直上を含む画素電極PEの全体に有機層ORGが重なり、さらにこの有機層ORGの上に対向電極CEが配置されているため、画素電極PEの略全体が発光に寄与する領域となる。このため、画素電極PEの周縁の一部に重なるように配置された隔壁を形成した構成と比較して、発光に寄与する領域の面積(あるいは開口率)を向上することができる。
【0070】
図2に示した例では、画素電極PEのX方向に沿った長さとY方向に沿った長さとの積が発光に寄与する領域の面積となる。このような発光に寄与する領域の画素電極PEについて、第4絶縁膜114の略平坦な第1上面114T1の直上に位置する面積の割合が、コンタクトホールCHの直上に位置する面積の割合よりも十分に大きくすることにより、正面方向つまり表示パネル1の法線方向から観察したときの色度のズレを緩和することができる。発明者の実験によれば、発光に寄与する領域の面積に対して、コンタクトホールCHの直上に位置する面積の割合が15%程度である場合(つまり、第1上面114T1の直上に位置する面積の割合が約85%である場合)には、色度のずれはほとんどないことが確認された。
【0071】
また、本実施形態によれば、有機層ORGが第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在した連続膜でありながら、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の発光色は、互いに異なるように構成されている。このような構成によれば、発光層を塗り分けるための金属性のファインマスクが不要であり、このようなファインマスクを支持するための受けとしての隔壁、あるいは、発光層を塗り分ける際の混色を防止するための隔壁が不要となる。また、ファインマスクが接触することに起因したアレイ基板100の表面の損傷の発生を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態において、図2に示した構成によれば、画素電極PEを構成する反射層PER及び透過層PETは、一括してエッチングすることによって形成されている。このため、反射層PER及び透過層PETを別々にエッチングすることによって形成した場合と比較して、アレイ基板100を形成する工程数を削減することができ、さらに生産性を向上することが可能となる。
【0073】
なお、図2に示した例においては、スイッチング素子SWと画素電極PEとの間に第4絶縁膜114のみを配置したが、第4絶縁膜114とスイッチング素子SWとの間にパッシベーション膜として機能する無機化合物によって形成された絶縁膜を追加しても良い。
【0074】
本実施形態では、画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に積層した反射層PERと、反射層PERの上に積層した透過層PETとの2層積層構造である場合について説明した。この場合、反射層PERは、アルミニウムや銀などによって形成可能であるが、樹脂製の第4絶縁膜114に対する付着性が銀よりも高く、しかも、銀よりもその上面PRTの平滑化が可能なアルミニウムによって形成することが望ましい。
【0075】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
【0076】
図4は、他の構成例における有機EL表示装置のスイッチング素子SW及び第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含むアレイ基板100の断面図である。図4に示した構成例は、図1に示した例と比較して、画素電極PEが3層積層構造である点で相違している。なお、図1に示した例と同一の構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。また、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、基本的に同一構造であるため、ここでは、第2有機EL素子OLED2を参照しながら具体的な構造について説明する。
【0077】
アレイ基板100の絶縁基板101と第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3との間には、第1絶縁膜111、第2絶縁膜112、第3絶縁膜113、第4絶縁膜114、スイッチング素子SWなどが配置されている。この第4絶縁膜114には、スイッチング素子SWに到達するコンタクトホールCHが形成されている。
【0078】
画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に配置されている。この画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に積層された第1透過層PET1、第1透過層PET1の上に積層された反射層PER、反射層PERの上に積層された第2透過層PET2を有している。これらの第1透過層PET1及び第2透過層PET2は、ITOやIZOなどの導電材料によって形成されている。例えば、ITOは、樹脂製の第4絶縁膜114に対する付着性が銀(Ag)よりも高く、比較的平滑な第1透過層PET1を形成可能である。
【0079】
このような3層積層構造の画素電極PEにおいては、反射層PERは、第1透過層PET1の上に配置され、第4絶縁膜114への付着性を考慮する必要がないため、銀(Ag)によって形成可能である。第1透過層PET1の上に形成した銀製の反射層PERは、第4絶縁膜114の上に形成した銀製の反射層PERと比較して、その表面が平滑である。勿論、このような3層構造の画素電極PEであっても、反射層PERの材料としてアルミニウム(Al)を適用しても良い。
【0080】
第1透過層PET1は、コンタクトホールCH内に延在し、スイッチング素子SWに電気的に接続されている。反射層PERは、コンタクトホールCHの直上を含む第1透過層PET1の上面の略全体に積層されている。第2透過層PET2は、コンタクトホールCHの直上を含む反射層PERの上面の略全体に積層されている。
【0081】
有機層ORGは、各画素電極PEの上に配置されている。この有機層ORGは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在している。つまり、有機層ORGは、各画素電極PEの上面PT及び側面PSを被覆するとともに、画素電極PEの間の第4絶縁膜114も被覆している。
【0082】
対向電極CEは、有機層ORGの上に配置されている。この対向電極CEは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、有機層ORGを被覆している。
【0083】
このような構成例においても、上述した例と同様の効果が得られる。
【0084】
なお、このような構成例においても、有機層ORGの膜厚は、画素電極PEの膜厚より厚いことが望ましい。一例として、3層積層構造の画素電極PEの膜厚T1は175nmである一方、有機層ORGの膜厚T2が200nmである。
【0085】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
【0086】
図5は、他の構成例における有機EL表示装置のスイッチング素子SW及び第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含むアレイ基板100の断面図である。図5に示した構成例は、図1に示した例と比較して、コンタクトホールCHの直上及びその周辺において画素電極PEを構成する反射層PERが欠落している点で相違している。なお、図1に示した例と同一の構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。また、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、基本的に同一構造であるため、ここでは、第2有機EL素子OLED2を参照しながら具体的な構造について説明する。
【0087】
アレイ基板100の絶縁基板101と第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3との間には、第1絶縁膜111、第2絶縁膜112、第3絶縁膜113、第4絶縁膜114、スイッチング素子SWなどが配置されている。この第4絶縁膜114には、スイッチング素子SWに到達するコンタクトホールCHが形成されている。
【0088】
画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に配置されている。この画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に積層された反射層PER、反射層PERの上面PRTに積層された透過層PETを有している。反射層PERは、第4絶縁膜114の略平坦な第1上面114T1に配置され、コンタクトホールCHには延在していない。透過層PETは、反射層PERの上からコンタクトホールCH内に延在し、スイッチング素子SWに電気的に接続されている。
【0089】
有機層ORGは、各画素電極PEの上に配置されている。この有機層ORGは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在している。つまり、有機層ORGは、各画素電極PEの上面(ここでは透過層PETの上面)PT及び側面(ここでは、反射層PER及び透過層PETの側面)を被覆するとともに、画素電極PEの間の第4絶縁膜114も被覆している。
【0090】
対向電極CEは、有機層ORGの上に配置されている。この対向電極CEは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、有機層ORGを被覆している。
【0091】
次に、図5に示した構成例における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各画素電極PEとコンタクトホールCHとの位置関係について説明する。
【0092】
図6は、図5に示した第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の上面図である。なお、この図においては、有機層ORG及び対向電極CEについては第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の共通層であるため図示を省略し、画素電極PE及びコンタクトホールCHのみを図示している。
【0093】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、基本的には同一構造であり、X方向に並んでいる。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEは、互いに離間して配置されている。また、各画素電極PEは、Y方向に延びた略長方形状に形成され、略矩形状のエッジEDを有している。ここに示した例の画素電極PEは、図2などに示したような一括エッチングによって形成された画素電極PEとは異なる。すなわち、図6に示した画素電極PEを構成する反射層PER及び透過層PETのサイズ及びパターンは、互いに異なっている。エッジEDは、反射層PERの側面によって形成されるエッジEDRと、透過層PETの側面によって形成されるエッジEDTとを含んでいる。
【0094】
コンタクトホールCHは、図示しないスイッチング素子SWまで貫通している。このコンタクトホールCHは、画素電極PEのエッジED(ここでは透過層PETのエッジEDT)よりも内側に位置しており、画素電極PEによって覆われている。なお、図示した例では、コンタクトホールCHは、四角形状であるが、コンタクトホールCHの形状はこの例に限らない。
【0095】
反射層PERは、コンタクトホールCH及びその周辺で欠落している。透過層PETは、反射層PER及びコンタクトホールCHを覆っている。これらの反射層PER及び透過層PETは別々のパターニング工程を経て形成される。図示した例では、コンタクトホールCH及びその周辺部分を除いては、反射層PERのエッジEDRと透過層PETのエッジEDTとが重なっている。
【0096】
図中の(a)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向端部付近であってX方向の略中央付近に位置している。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略U字型となっている。図中の(b)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向端部付近であってX方向端部付近、つまり、画素電極PEの角部付近に位置している。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略L字型となっている。図中の(c)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向の略中央付近であってX方向の略中央付近、つまり、画素電極PEの略中央付近に位置している。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略四角形となっている。これらの(a)、(b)、及び、(c)に示した例では、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEは同一サイズであり、X方向及びY方向に沿ったそれぞれの長さは同一である。
【0097】
図中の(d)に示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEの角部付近に位置しているが、(b)に示した例と比較して、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEが同一サイズであり、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより大きい点で相違している。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEのY方向に沿った長さは同一であり、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEのX方向に沿った長さは第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより長い。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略L字型となっており、透過層PETによって覆われている。
【0098】
なお、(d)に示した例のように、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより大きい場合であっても、(a)及び(c)に示した例と同様の位置にコンタクトホールCHを形成しても良い。
【0099】
図中の(e)に示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEの角部付近に位置しているが、(b)に示した例と比較して、第2有機EL素子OLED2の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより大きく、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより大きい点で相違している。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEのY方向に沿った長さは同一である。第2有機EL素子OLED2の画素電極PEのX方向に沿った長さは第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより長く、また、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEのX方向に沿った長さは第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより長い。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略L字型あるいは直線状となっており、透過層PETによって覆われている。
【0100】
なお、(e)に示した例のように、第2有機EL素子OLED2の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより大きく、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより大きい場合であっても、(a)及び(c)に示した例と同様の位置にコンタクトホールCHを形成しても良い。
【0101】
このような構成例においても、上述した例と同様の効果が得られる。
【0102】
また、図1に示した例と比較して、画素電極PEの反射層PERがコンタクトホールCH付近で欠落しているため、発光に寄与する面積が僅かに低減するが、コンタクトホールCHの傾斜した側面114Sでの反射光の影響を受けないため、色度を向上することができる。
【0103】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。
【0104】
図7は、他の構成例における有機EL表示装置のスイッチング素子SW及び第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含むアレイ基板100の断面図である。図7に示した構成例は、図1に示した例と比較して、コンタクトホールCHの直上及びその周辺において画素電極PEを構成する反射層PERが欠落し、しかも、反射層PERの上面に積層された透過層PETの側面の一部が反射層PERの側面の位置よりも内側に位置している点で相違している。なお、図1に示した例と同一の構成については同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。また、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、基本的に同一構造であるため、ここでは、第2有機EL素子OLED2を参照しながら具体的な構造について説明する。
【0105】
アレイ基板100の絶縁基板101と第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3との間には、第1絶縁膜111、第2絶縁膜112、第3絶縁膜113、第4絶縁膜114、スイッチング素子SWなどが配置されている。この第4絶縁膜114には、スイッチング素子SWに到達するコンタクトホールCHが形成されている。
【0106】
画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に配置されている。この画素電極PEは、第4絶縁膜114の上に積層された反射層PER、反射層PERの上面PRTに積層された透過層PETを有している。反射層PERは、第4絶縁膜114の略平坦な第1上面114T1に配置され、コンタクトホールCHには延在していない。透過層PETは、反射層PERの上面PRTからコンタクトホールCH内に延在し、スイッチング素子SWに電気的に接続されている。透過層PETの側面PTSの一部は、反射層PERの側面PRSの直上の位置よりも内側に位置している。
【0107】
有機層ORGは、各画素電極PEの上に配置されている。この有機層ORGは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在している。つまり、有機層ORGは、各画素電極PEの上面(ここでは透過層PETの上面及び反射層PERの一部の上面)PT及び側面(ここでは、反射層PER及び透過層PETの側面)PSを被覆するとともに、画素電極PEの間の第4絶縁膜114も被覆している。
【0108】
対向電極CEは、有機層ORGの上に配置されている。この対向電極CEは、アクティブエリア102の概ね全体に亘って延在した連続膜であり、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、有機層ORGを被覆している。
【0109】
次に、図7に示した構成例における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各画素電極PEとコンタクトホールCHとの位置関係について説明する。
【0110】
図8は、図7に示した第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の上面図である。なお、この図においては、有機層ORG及び対向電極CEについては第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の共通層であるため図示を省略し、画素電極PE及びコンタクトホールCHのみを図示している。
【0111】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、基本的には同一構造であり、X方向に並んでいる。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEは、互いに離間して配置されている。また、各画素電極PEは、Y方向に延びた略長方形状に形成され、略矩形状のエッジEDを有している。ここに示した例の画素電極PEは、図2などに示したような一括エッチングによって形成された画素電極PEとは異なる。すなわち、図8に示した画素電極PEを構成する反射層PER及び透過層PETのサイズ及びパターンは、互いに異なっている。エッジEDは、反射層PERの側面によって形成されるエッジEDRと、透過層PETの側面によって形成されるエッジEDTとを含んでいる。
【0112】
コンタクトホールCHは、図示しないスイッチング素子SWまで貫通している。このコンタクトホールCHは、画素電極PEのエッジED(ここでは透過層PETのエッジEDT)よりも内側に位置しており、画素電極PEによって覆われている。なお、図示した例では、コンタクトホールCHは、四角形状であるが、コンタクトホールCHの形状はこの例に限らない。
【0113】
反射層PERは、コンタクトホールCH及びその周辺で欠落している。透過層PETは、反射層PER及びコンタクトホールCHを覆っている。これらの反射層PER及び透過層PETは別々のパターニング工程を経て形成される。図示した例では、コンタクトホールCH及びその周辺部分を除いて、透過層PETのエッジEDTは、反射層PERのエッジEDRよりも内側に位置している。
【0114】
図中の(a)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向端部付近であってX方向の略中央付近に位置している。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略U字型となっている。このようなエッジEDRのうちの略U字型の部分は、透過層PETによって覆われている。
【0115】
図中の(b)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向端部付近であってX方向端部付近、つまり、画素電極PEの角部付近に位置している。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略L字型となっている。このようなエッジEDRのうちの略L字型の部分は、透過層PETによって覆われている。
【0116】
図中の(c)で示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEのY方向の略中央付近であってX方向の略中央付近、つまり、画素電極PEの略中央付近に位置している。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略四角形となっている。このような略四角のエッジEDRは、透過層PETによって覆われている。
【0117】
これらの(a)、(b)、及び、(c)に示した例では、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEは同一サイズであり、X方向及びY方向に沿ったそれぞれの長さは同一である。
【0118】
図中の(d)に示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEの角部付近に位置しているが、(b)に示した例と比較して、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEが同一サイズであり、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより大きい点で相違している。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEのY方向に沿った長さは同一であり、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEのX方向に沿った長さは第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより長い。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略L字型あるいは直線状となっており、透過層PETによって覆われている。
【0119】
なお、(d)に示した例のように、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の各画素電極PEより大きい場合であっても、(a)及び(c)に示した例と同様の位置にコンタクトホールCHを形成しても良い。
【0120】
図中の(e)に示した例では、コンタクトホールCHは、画素電極PEの角部付近に位置しているが、(b)に示した例と比較して、第2有機EL素子OLED2の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより大きく、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより大きい点で相違している。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEのY方向に沿った長さは同一である。第2有機EL素子OLED2の画素電極PEのX方向に沿った長さは第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより長く、また、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEのX方向に沿った長さは第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより長い。この場合、反射層PERのコンタクトホールCH付近のエッジEDRは、略L字型あるいは直線状となっており、透過層PETによって覆われている。
【0121】
なお、(e)に示した例のように、第2有機EL素子OLED2の画素電極PEが第1有機EL素子OLED1の画素電極PEより大きく、第3有機EL素子OLED3の画素電極PEが第2有機EL素子OLED2の画素電極PEより大きい場合であっても、(a)及び(c)に示した例と同様の位置にコンタクトホールCHを形成しても良い。
【0122】
このような構成例においても、上述した例と同様の効果が得られる。
【0123】
また、図5に示した例と比較して、画素電極PEの透過層PETが、コンタクトホールCH付近を除いて、反射層PERよりも外側にはみ出すことがないため、所望の色度とは異なる発光色を低減することができ、さらに色度を向上することができる。
【0124】
以上説明した本実施形態の有機EL装置において、各構成例の代表的なレイアウトにおける開口率を比較した。ここでは、アクティブエリアにおける精細度、画素間ピッチ、コンタクトホールCHのサイズなどの条件は同一とし、画素電極PEの周縁の一部に重なるように配置された隔壁を形成した構成の開口率を100%とした。
【0125】
本実施形態の各構成例の代表的なコンタクトホールと画素電極とのレイアウトにおいて、開口率は以下の通りである。すなわち、図2の(a)に示した例では、開口率は178%となった。図6の(a)に示した例では、開口率は173%となった。図8の(a)に示した例では、開口率は135%となった。このように、本実施形態によれば、隔壁を有する構成と比較して、隔壁を省略したことによって隔壁によって覆われていた画素電極の上に有機層及び対向電極が配置され、発光に寄与するため、開口率を向上できることが確認された。
【0126】
次に、本実施形態における有機EL装置の製造方法について説明する。
【0127】
図9は、図1に示した構成の有機EL装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0128】
まず、絶縁基板101の上方にスイッチング素子SWなどを形成する(ST11)。この工程では、スイッチング素子SWの他に、第1絶縁膜111、第2絶縁膜112、第3絶縁膜113なども形成する。このような工程をアレイ形成工程と称する。
【0129】
続いて、スイッチング素子SWの上に第4絶縁膜114を形成するための絶縁膜材料を塗布し、この絶縁膜材料をパターニングしてスイッチング素子SWに到達するコンタクトホールCHを形成する(ST12)。このような工程を絶縁膜パターニング工程と称する。
【0130】
続いて、パターニングした絶縁膜材料を焼成する(ST13)。このとき、絶縁膜材料を焼成する温度は、絶縁膜材料が溶融状態となる温度(絶縁膜材料の融点付近の温度)とする。このような焼成により、絶縁膜材料の表面付近がその表面張力によって滑らかに変形し、しかも、パターニングによって形成されたコンタクトホールCHのテーパー角が40度以下と小さくなる。その後、徐々に温度を低下させて冷却することにより、絶縁膜材料の表面形状が保持される。このようにして、コンタクトホールCHが形成された第4絶縁膜114が形成される。このような工程を焼成工程と称する。
【0131】
続いて、第4絶縁膜114の上及びコンタクトホールCH内に反射導電層を形成する(ST14)。ここでは、反射導電層は、アルミニウム(Al)によって形成した。このような工程を反射導電層形成工程と称する。
【0132】
続いて、反射導電層の上に透過導電層を積層する(ST15)。ここでは、透過導電層は、ITOによって形成した。このような工程を透過導電層形成工程と称する。
【0133】
続いて、反射導電層及び透過導電層をパターニングする(ST16)。このようなパターニング工程では、例えば、透過導電層の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィプロセスを経て画素電極PEを形成する領域のレジストを除去する。その後、レジストから露出した透過導電層をエッチングにより除去するとともに除去した透過導電層の下の反射導電層もエッチングにより除去する。このように、反射導電層及び透過導電層を一括してエッチングする。反射導電層が除去された領域では、第4絶縁膜114が露出する。その後、残ったレジストを剥離し、所望の形状の反射層PER及び透過層PETを有する画素電極PEが形成される。このような工程を導電層パターニング工程と称する。
【0134】
続いて、画素電極PEの上及び第4絶縁膜114の上に有機層ORGを形成する(ST17)。このような工程を有機層形成工程と称する。
【0135】
続いて、有機層ORGの上に対向電極CEを形成する(ST18)。このような工程を対向電極形成工程と称する。
【0136】
以上説明した工程を経て図1に示したような表示パネル1のアレイ基板100が形成される。
【0137】
なお、図4に示したような3層積層構造の画素電極PEを形成する場合には、例えば、上述したステップST14に代えて、第4絶縁膜114の上に第1透過層PET1を形成するための透過導電層を形成したのに続いて、透過導電層の上に反射層PERを形成するために銀(Ag)を用いて反射導電層を形成する。この場合、図9に示したステップST16においては、レジストから露出した透過導電層をエッチングにより除去した後に、除去した透過導電層の下の反射導電層をエッチングにより除去し、さらに、除去した反射導電層の下の透過導電層をエッチングにより除去する。このようにして、第1透過層PET1を形成するための透過導電層、反射層PERを形成するための反射導電層、及び、第2透過層PET2を形成するための透過導電層を一括してエッチングする。
【0138】
このように、画素電極の周縁に重なる隔壁を形成する工程を省略し、反射層PER及び透過層PETを積層した構造の画素電極PEを一括エッチングによって形成したため、製造工程数を削減することができ、生産性を向上することが可能となる。
【0139】
図10は、図5及び図7に示した構成の有機EL装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0140】
アレイ基板形成工程(ST21)は図9に示したアレイ基板形成工程と同一であり、以下同様に、絶縁膜パターニング工程(ST22)は図9の絶縁膜パターニング工程と同一であり、焼成工程(ST23)は図9の焼成工程と同一であり、及び、反射導電層形成工程(ST24)は図9の反射導電層形成工程と同一であり、それぞれの工程の説明を省略する。
【0141】
続いて、反射導電層をパターニングする(ST25)。このようなパターニング工程では、例えば、反射導電層の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィプロセスを経て画素電極PEを形成する領域のレジストを除去する。その後、レジストから露出した反射導電層をエッチングにより除去する。反射導電層が除去された領域では、第4絶縁膜114が露出する。その後、残ったレジストを剥離し、所望の形状の反射層PERが形成される。このような工程を反射導電層パターニング工程と称する。
【0142】
続いて、反射導電層の上及び第4絶縁膜114の上に透過導電層を積層する(ST26)。ここでは、透過導電層は、ITOによって形成した。このような工程を透過導電層形成工程と称する。
【0143】
続いて、透過導電層をパターニングする(ST27)。このようなパターニング工程では、例えば、透過導電層の上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィプロセスを経て画素電極PEを形成する領域のレジストを除去する。その後、レジストから露出した透過導電層をエッチングにより除去する。透過導電層が除去された領域では、第4絶縁膜114が露出する。その後、残ったレジストを剥離し、所望の形状の反射層PER及び透過層PETを有する画素電極PEが形成される。このような工程を透過導電層パターニング工程と称する。
【0144】
続いて、画素電極PEの上及び第4絶縁膜114の上に有機層ORGを形成する(ST28)。このような工程を有機層形成工程と称する。
【0145】
続いて、有機層ORGの上に対向電極CEを形成する(ST29)。このような工程を対向電極形成工程と称する。
【0146】
以上説明した工程を経て図5及び図7に示したようなアレイ基板100が形成される。
【0147】
なお、図4に示したような3層積層構造の画素電極PEを形成する場合には、例えば、上述したステップST24に代えて、第4絶縁膜114の上に第1透過層PET1を形成するための透過導電層を形成したのに続いて、透過導電層の上に反射層PERを形成するために銀(Ag)を用いて反射導電層を形成する。この場合、図10に示したステップST25においては、レジストから露出した反射導電層をエッチングにより除去した後に、除去した反射導電層の下の透過導電層をエッチングにより除去する。このようにして、第1透過層PET1を形成するための透過導電層、及び、反射層PERを形成するための反射導電層を形成するための透過導電層を一括してエッチングする。
【0148】
このように、画素電極の周縁に重なる隔壁を形成する工程を省略したため、製造工程数を削減することができ、生産性を向上することが可能となる。
【0149】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0150】
本実施形態は、有機EL装置として、有機EL表示装置について説明したが、有機EL照明や有機ELプリンターヘッドなどにも利用可能である。
【0151】
また、本実施形態では、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3が反射層PERを含むトップエミッションタイプである場合について説明したが、図11に示したように、反射層を含まない画素電極PEを備えたボトムエミッションタイプの有機EL素子OLEDを適用しても良い。詳細については省略するが、有機EL素子OLEDは、ITOやIZOなどの透過層によって形成された画素電極PEと、画素電極PEの上に配置された有機層ORGと、有機層ORGの上に配置された対向電極CEとによって構成されている。このようなボトムエミッションタイプの有機EL素子OLEDについても、上記したトップエミッションタイプと同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0152】
1…表示パネル
OLED1…第1有機EL素子
OLED2…第2有機EL素子
OLED3…第3有機EL素子
101…絶縁基板
111…第1絶縁膜 112…第2絶縁膜 113…第3絶縁膜
114…第4絶縁膜 CH…コンタクトホール
SW…スイッチング素子
PE…画素電極 PEC…コンタクト部 PER…反射層 PET…透過層
ORG…有機層 CE…対向電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上方に配置されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の上方に配置され、前記スイッチング素子に到達するコンタクトホールが形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に配置され、前記コンタクトホール内に延在し前記スイッチング素子に電気的に接続されたコンタクト部を有する画素電極と、
前記コンタクト部を含む前記画素電極の上、及び、前記画素電極の周辺の前記絶縁膜の上に延在した有機層と、
前記有機層の上に配置された対向電極と、
を備えたことを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に配置され、略矩形状のエッジを有する画素電極と、
前記絶縁膜に形成されるとともに前記画素電極の前記エッジよりも内側に位置し、前記画素電極によって覆われたコンタクトホールと、
前記画素電極の上、及び、前記画素電極の周辺の前記絶縁膜の上に延在した有機層と、
前記有機層の上に配置された対向電極と、
を備えたことを特徴とする有機EL装置。
【請求項3】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の上方にそれぞれ配置された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の上方に配置され、前記第1スイッチング素子に到達する第1コンタクトホール及び前記第2スイッチング素子に到達する第2コンタクトホールが形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上に配置され、前記第1コンタクトホール内に延在し前記第1スイッチング素子に電気的に接続された第1コンタクト部を有する第1画素電極と、
前記絶縁膜の上において前記第1画素電極から離間して配置され、前記第2コンタクトホール内に延在し前記第2スイッチング素子に電気的に接続された第2コンタクト部を有する第2画素電極と、
前記第1コンタクト部を含む前記第1画素電極の上、前記第2コンタクト部を含む前記第2画素電極の上、及び、前記第1画素電極と前記第2画素電極との間の前記絶縁膜の上に延在した有機層と、
前記有機層の上に配置された対向電極と、
を備えたことを特徴とする有機EL装置。
【請求項4】
前記画素電極は、a)上面及び第1側面を有し前記絶縁膜の上に配置されるとともに前記コンタクトホール内に延在した反射層及び前記反射層の前記上面に積層されるとともに前記第1側面の直上の位置と一致する位置に第2側面を有する透過層を有する、あるいは、b)上面を有し前記絶縁膜の上に配置された反射層及び前記反射層の前記上面に積層されるとともに前記コンタクトホール内に延在した透過層を有する、あるいは、c)上面及び第1側面を有し前記絶縁膜の上に配置された反射層及び前記反射層の前記上面に積層されるとともに前記第1側面の直上の位置よりも内側の位置の一部に第2側面を有し前記コンタクトホール内に延在した透過層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL装置。
【請求項5】
前記第1画素電極及び前記第2画素電極のそれぞれは、a)上面及び第1側面を有し前記絶縁膜の上に配置されるとともに前記コンタクトホール内に延在した反射層及び前記反射層の前記上面に積層されるとともに前記第1側面の直上の位置と一致する位置に第2側面を有する透過層を有する、あるいは、b)上面を有し前記絶縁膜の上に配置された反射層及び前記反射層の前記上面に積層されるとともに前記コンタクトホール内に延在した透過層を有する、あるいは、c)上面及び第1側面を有し前記絶縁膜の上に配置された反射層及び前記反射層の前記上面に積層されるとともに前記第1側面の直上の位置よりも内側の位置の一部に第2側面を有し前記コンタクトホール内に延在した透過層を有することを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項6】
前記絶縁膜は、前記画素電極が配置される第1上面、及び、前記画素電極の周辺に位置し前記第1上面よりも窪んだ第2上面を有することを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL装置。
【請求項7】
前記絶縁膜は、前記第1画素電極及び前記第2画素電極が配置される第1上面、及び、前記第1画素電極と前記第2画素電極との間に位置し前記第1上面よりも窪んだ第2上面を有することを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記絶縁膜に形成された前記コンタクトホールのテーパー角は、40度以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機EL装置。
【請求項9】
前記有機層の膜厚は、前記画素電極の膜厚より厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL装置。
【請求項10】
前記有機層の膜厚は、前記第1画素電極及び前記第2画素電極の膜厚より厚いことを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置。
【請求項11】
絶縁基板の上方にスイッチング素子を形成し、
前記スイッチング素子の上に絶縁膜材料を塗布し、前記絶縁膜材料をパターニングして前記スイッチング素子に到達するコンタクトホールを形成し、
前記絶縁膜材料を焼成した後に、冷却して絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜の上及び前記コンタクトホール内に導電層を形成し、前記導電層をパターニングして前記スイッチング素子に電気的に接続された画素電極を形成し、
前記画素電極の上、及び、前記画素電極の周辺の前記絶縁膜の上に有機層を形成し、
前記有機層の上に対向電極を形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁膜材料を焼成する温度は、前記絶縁膜材料が溶融状態となる温度であることを特徴とする請求項11に記載の有機EL装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−113736(P2011−113736A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267759(P2009−267759)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】