有機EL装置及びその製造方法
【課題】有機EL装置の発光部位への水分等の侵入を防止することができる有機EL装置を開発する
【解決手段】
基板2上に第1電極層3と、有機発光層5と、第2電極層6が積層されて積層体を形成し、前記積層体が封止部材8で封止された有機EL装置1において、封止部材8は絶縁性接着部材9で接着されており、絶縁性接着部材9の外側一部又は全部をバリア層65が覆っている構成とし、有機EL装置の発光部位への水分等の侵入を防止する。
【解決手段】
基板2上に第1電極層3と、有機発光層5と、第2電極層6が積層されて積層体を形成し、前記積層体が封止部材8で封止された有機EL装置1において、封止部材8は絶縁性接着部材9で接着されており、絶縁性接着部材9の外側一部又は全部をバリア層65が覆っている構成とし、有機EL装置の発光部位への水分等の侵入を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminesence)装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、白熱灯や蛍光灯に代わる照明装置として有機EL装置が注目され、多くの研究がなされている。また、テレビに代表されるディスプレイ部材においても液晶方式やプラズマ方式に変わる方式として有機EL方式が注目されている。
【0003】
ここで、有機EL装置は、ガラス基板や透明樹脂フィルム等の基材に、有機EL素子を積層したものである。
また、有機EL素子は、一方又は双方が透光性を有する2つの電極を対向させ、この電極の間に有機化合物からなる発光層を積層したものである。有機EL装置は、電気的に励起された電子と正孔との再結合のエネルギーによって発光する。
有機EL装置は、自発光デバイスであるため、ディスプレイ材料として使用すると高コントラストの画像を得ることができる。また、発光層の材料を適宜選択することにより、種々の波長の光を発光することができる。また、白熱灯や蛍光灯に比べて厚さが極めて薄く、且つ面状に発光するので、設置場所の制約が少ない。
【0004】
ところで、有機EL素子は、一定期間駆動した場合、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が初期の場合に比べて著しく劣化するという問題がある。このような発光特性の劣化の原因としては、有機EL素子内に侵入した酸素による電極の酸化、駆動時の発熱による有機材料の酸化分解、有機EL素子内に侵入した空気中の水分による電極の酸化、有機物の変性等を挙げることができる。さらに、酸素や水分の影響で構造体の界面が剥離したり、駆動時の発熱や駆動時の環境が高温であったこと等が引き金となり、さらに各構成要素の熱膨張率の違いにより構造体の界面で応力が発生し、界面が剥離したりする等の構造体の機械的劣化も発光特性の劣化の原因として挙げることができる。
【0005】
即ち、有機EL装置の劣化防止のためには、有機EL素子への水等の液体や酸素等の気体の侵入を防ぐ必要がある。
【0006】
このような問題を防止するため、有機EL素子を樹脂製の接着剤を用いて封止し、水分や酸素との接触を防止する技術が提案されている。
【0007】
例えば、酸素及び水分による劣化を防止する技術として、有機EL素子の基板上に形成された発光層の上方の位置に封止部材をかぶせ、それを接着剤で封止し、さらに、封止空間内に吸湿作用のある吸着剤等を封入するなどの対策が採られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−235077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の接着剤を使った封止では、有機EL装置を長時間駆動させると接着剤部分から水分等が透過し、所望の封止性能が十分得られなかった。そのため、水分等の侵入による発光特性の低下の懸念が未だ残っている。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決するものであり、有機EL装置の発光部位への水分等の侵入を防止することができる有機EL装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは、接着剤の代わりに、粉末状のガラスフリットを用い、ガラスフリットを溶解させ、第1電極層上に接着させることにより、水分の進入を防止することを考えた。しかし、ガラスフリットを用いると、落下等の外部からの圧力を受けると、ガラスフリットがクラックを起こし、もろく崩れ落ちることがあった。そこで、ガラスフリットの外側をシリカによってコーティングすることによって、水分の進入を防止しつつ、強度の確保を試みた。試行錯誤をして導き出された請求項1に記載の発明は、基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層が積層されて積層体を形成し、前記積層体が封止部材で封止された有機EL装置において、封止部材は接着材料で接着されており、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っていることを特徴とする有機EL装置である。
【0012】
ここで言うバリア層とは、常温常圧下で緻密性を有した層である。緻密性とは、有機EL装置を使用する際に水蒸気や酸素、水分等が透過しない程度に緻密であることを言う。
【0013】
かかる構成によれば、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っているため、有機EL素子への水分や酸素の侵入を防止することができる。即ち、有機EL素子への水分の侵入による漏電や酸素による有機層の酸化が起こりにくい。即ち、発光欠陥が起こりにくい。また、接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っているため、外力を受けても、接着材料がクラックを起こしにくい。
【0014】
請求項1に記載の有機EL装置において、前記バリア層はシリカを素材とすることが好ましい。(請求項2)
【0015】
ここでいうシリカとは、二酸化ケイ素、或いは二酸化ケイ素によって構成される物質を表す。
【0016】
請求項3に記載の発明は、第1電極層と、有機発光層と、第2電極層には溝が形成されていて複数の単位EL素子に分割されており、当該単位EL素子が電気的に直列に接続されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置である。
【0017】
かかる構成によれば、複数の単位EL素子を均一に発光させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、第1電極層は封止部材の内側から外側に伸延しており、前記第1電極層は封止部材の内側では第2電極層と直接接続されており、封止部材の外側では第二電極連通部と電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL装置である。
【0019】
かかる構成によれば、有機EL装置内への電流の供給が容易である。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL装置を製造する製造方法であって、前記バリア層はポリシラザン誘導体を触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化することによって形成することを特徴とする有機EL装置製造方法である。
【0021】
かかる構成によれば、触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化することによって形成するので、より緻密なバリア層を形成することができる。即ち、水蒸気や酸素のガスバリア性が高く、防水性も高い。それ故に長時間利用しても発光欠陥が少ない有機EL装置を製造することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記ポリシラザン誘導体は、毛細管現象によって接着材料の外側一部又は全部に塗布されることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法である。
【0023】
かかる構成によれば、毛細管現象によって接着材料の外側一部又は全部に塗布されるため、接着材料に隙間無く塗布することが可能である。即ち、高い封止性を有した有機EL装置を製造できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る構成を用いれば、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っているため、有機EL素子への水分や酸素の侵入を防止することができる。即ち、有機EL素子への水分の侵入による漏電や酸素による有機層の酸化が起こりにくい。即ち、発光欠陥が起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の有機EL装置を裏面側から観察した斜視図である。
【図2】図1の有機EL装置の分解斜視図である。
【図3】図1の有機EL装置における有機EL素子部の層構成を説明する断面図である。
【図4】図1の有機EL装置における有機EL素子部の層構成を説明する断面斜視図である。
【図5】図1の有機EL装置における単位EL素子の構成を示す断面図である。
【図6】図1の有機EL装置のX−X方向の断面図である。
【図7】図1の有機EL装置のY−Y方向の断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の有機EL装置から封止部材と保護層とを除いた状態を示す平面図である。
【図9】封止部材と保護層とを除き、さらに封止部材を分離した状態における有機EL装置の断面斜視図である。
【図10】図6の有機EL装置のM領域を示す拡大図である。
【図11】図6の有機EL装置のN領域を示す拡大図である。
【図12】図6の有機EL装置の断面図を元に、電源から電流を流した際の電流経路を示した説明図である。なお、簡略化のため、絶縁性の部材には黒ベタを施し、ハッチングを省いている。
【図13】第1実施形態の有機EL装置の製造工程の説明図である。(a)は第1電極層積層工程の開始時における図、(b)は第一レーザスクライブ工程の開始時における図、(c)は機能層積層工程の開始時における図、(d)は第二レーザスクライブ工程の開始時における図、(e)は第2電極層積層工程の開始時における図、(f)は第三レーザスクライブ工程の開始時における図、(g)は保護部材積層工程の開始時における図、(h)は第四レーザスクライブ工程の開始時における図、(i)は封止工程の開始時における図、(j)は封止工程の終了時における図である。
【図14】図7の有機EL装置のT領域を示す拡大図である。
【図15】図8の平面図に、絶縁性接着材が配される領域を黒ベタで表示し、バリア層が配される領域をハッチングで表示した正面図である。
【図16】本発明の第1実施形態の有機EL素子部の層構成を示す断面図である。
【図17】第1実施形態のバリア層の形成工程の説明図である。(a)ポリシラザン誘導体の注入時の説明図、(b)ポリシラザン誘導体の注入後の説明図、(c)バリア層の形成時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、有機EL装置に係るものである。図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1を示している。以下、上下左右の位置関係は、特に断りのない限り、図1の姿勢を基準に説明する。
【0027】
本実施形態の有機EL装置1は、従来技術と同様に、基板2(基材)の背面(図面上側)に平板状の封止部材8を設けており、当該封止部材8で有機EL素子部10を保護層11ごと覆い、封止部材8によって有機EL素子部10を外部と遮蔽するものである。(図1、図2)
なお、本実施形態では、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6との3層が積層した部分を有機EL素子部10と称している。また、有機EL素子部10は、発光有機EL素子領域80と非発光有機EL素子領域81を有している。発光有機EL素子領域80は実際に発光する有機EL素子部10であり、非発光有機EL素子領域81は発光有機EL素子領域80以外の実際に発光しない有機EL素子部10である。
また、封止部材8と基板2とを接着する手段として、ガラスフリットを主成分とする絶縁性接着部材9(接続部)を使用している。
【0028】
有機EL装置1の有機EL素子部(保護層11を除く)10の層構成は、図3、図4、図5の通りであり、基板2(基材)上に、第1電極層3と、機能層5(有機発光層)と、第2電極層6と、がこの順番に積層された構造を有している。
そして、本実施形態の有機EL装置1は、図3、図4、図5に示した有機EL素子部10にさらに図6、図7の様に保護層11が積層された構造を有しており、さらにこれらが絶縁性接着部材9を介して封止部材8によって封止されている。また、さらに絶縁性接着部材9の外側側面を緻密性を有したバリア層65が覆っている。
【0029】
説明の都合上、まず初めに本実施形態の特徴的構成について説明する。なお、有機EL素子部10の詳細な説明は後述する。
【0030】
本実施形態の有機EL装置1では、図2に示すように、基板2が長方形であり、その上に有機EL素子部10が設けられている。また、基板2の中央部に実際に発光する発光有機EL素子領域80(保護層11も含む)が設けられている。即ち、基板2上に、前記した第1電極層3と、機能層5(有機発光層)と、第2電極層6が設けられ、基板2の中央部では、さらにこれらの上に保護層11が積層されている。
【0031】
そして、本実施形態の有機EL装置1では、図2の様に有機EL素子部10が基板2の略全面に成膜されており、その一部分が溝状に除去されている。
即ち、本実施形態の有機EL装置1では、基板2の中央部にだけ実際に発光する有機EL素子部10(発光有機EL素子領域80)がある。詳説すると、有機EL装置1の長手方向の両端部には発光有機EL素子領域80からはみ出した非発光のはみ出し部分A、B(非発光有機EL素子領域81)が存在し、長手方向の基板2上には溝を除いて有機EL素子部10が存在している。そのため、レーザスクライブ処理を用いることで、有機EL素子部10を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
そして、当該はみ出し部分A、Bには、少なくとも第1電極層3より上方に位置する層を除去したフリット固定用分離溝18aが設けられている。
従って、フリット固定用分離溝18aを形成した直後は、フリット固定用分離溝18aの底部は第1電極層3が露出した状態となっている。
【0032】
有機EL装置1の短手方向に目を移すと、図2、図8、図9の様に基板2の短手方向の端部近傍に非発光のはみ出し部分C、Dが設けられている。
はみ出し部分C、Dには第1電極層3並びにその他の層が存在している。そのため、レーザスクライブ処理を用いることで、機能層5並びにその他の層を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
また、当該はみ出し部分C、Dには、少なくとも第1電極層3より上方に位置する層を除去したフリット固定用分離溝18bが設けられている。
従って、フリット固定用分離溝18bを形成した直後は、フリット固定用分離溝18bの底部は第1電極層3が露出した状態となっている。
そして、本実施形態では、基板2の長手方向の辺35、36と平行に、はみ出し部分C、Dに第1電極層3並びにその他の層が存在しない侵入防止分離溝21が存在する。この侵入防止分離溝21には、保護層11も無い。
【0033】
即ち、本実施形態の有機EL装置1では、図8、図9の様に、有機EL素子部10の両端部付近に、長手方向の辺35、36と平行に、第1電極層3と第2電極層6と機能層5の3層を除去した侵入防止分離溝21が設けられている。
侵入防止分離溝21は、第2電極層6M(第一電極連通部)を有するはみ出し部分Aから第2電極層6N(第二電極連通部)を有するはみ出し部分Bにかけて積層体である有機EL素子部10を横断する横断溝である。また、侵入防止分離溝21は、フリット固定用分離溝18bの内側に位置している。
【0034】
そして、本実施形態では、図2、図6、図7、図9の様に、前記したフリット固定用分離溝18a、18bに、封止部材8の接着部37、38、39、40が絶縁性接着部材9によって接着されている。
また、封止部材8は、絶縁材料で成形されたものであり、平面視が長方形の本体部41を有している。また、有機EL装置1は、絶縁性接着部材9が上下方向に厚く形成されており、封止部材8と有機EL素子部10との間に間隔維持空間42を形成している。間隔維持空間42は、窒素やアルゴンなどの不活性ガスで満たされている。また、間隔維持空間42には、水分や酸素を吸収する乾燥材を入れることが好ましい。
そして、図8の縦列たるフリット固定用分離溝18aに、図6のように絶縁性接着部材9を介して封止部材8の縦側の接着部37、39が接着されている。さらに、図6、10、11のように絶縁性接着部材9の外側側面の一部又は全部にバリア層65が接着されている。
また、図8の横列たるフリット固定用分離溝18bに、図7のように絶縁性接着部材9(接続部)を介して封止部材8の横側の接着部38、40が接着されている。さらに、図7、14のように絶縁性接着部材9の外側側面の一部又は全部にバリア層66が接着されている。
即ち、絶縁性接着部材9の外側側面の一部又は全部にバリア層65、66が接着されているため、水分や酸素などの発光有機EL素子領域80内への侵入を防止できる。
【0035】
ここで、バリア層65、66について詳説する。
バリア層65、66は、具体的には緻密性を有したシリカを素材としている。また、バリア層65、66はポリシラザン誘導体を原料とするのが好ましい。ポリシラザン誘導体を用いたシリカ転化は、シリカ転化時重量増加を生じ、体積収縮が小さく、シリカ膜転化時に樹脂の耐え得る温度で十分にしかもクラックを生じ難くすることができる。
ここでいうポリシラザン誘導体は、珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO2、Si2N4 、及び両者の中間固溶体SiOx Ny 等のセラミック前駆体ポリマーである。また、このポリシラザン誘導体は、下記一般式(1)のような、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体も含む。
【0036】
【化1】
式(1)において、R1、R2、R3は、アルキル基(水素基も含む)を示し、但し、R1、R2、R3の少なくともいずれか1つは、水素基である。
【0037】
また、本発明のバリア層65、66の素材には、ポリシラザン誘導体の中でも特に側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンや、Siと結合する水素部分が一部メチル基に置換された誘導体が好ましい。
また、本発明で用いるポリシラザン誘導体は、有機溶媒に溶解した溶液状態で用いる。
有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
【0038】
本実施形態の有機EL装置1では、前記した様にフリット固定用分離溝18aに封止部材8の縦側の接着部37、39が接着されているから、図1に示すように、封止部材8の外側に、有機EL素子部10が露出する。即ち、前記した様に、発光有機EL素子領域80からはみ出した非発光のはみ出し部分A、B(非発光有機EL素子領域81)を有し、当該はみ出し部分A、Bの外縁部E、Fは、封止部材8の外側に露出している(図2)。
そして、一方の外縁部Eの積層構成は、図6、図10のように有機EL素子部10の積層構成であり、フリット固定用分離溝18aの外側に第1機能層分離溝16Mが配されている。
またその対辺に位置する外縁部Fの積層構成は、図6、図11のように有機EL素子部10の積層構成であり、フリット固定用分離溝18aの外側に第1機能層分離溝16Nが配されている。
外縁部Eの第2電極層6Mは発光有機EL素子領域80内の第1電極層3aと電気的に接続されている(図10)。また、外縁部Fの第1電極層3dは発光有機EL素子領域80内の第2電極層6Nと電気的に接続されている(図11)。
そのため、露出した外縁部E、Fの第2電極層6M、6Nに電源に接続される端子60、61を接続し通電することにより、電流を有機EL素子部10に給電することができ、有機EL素子部10内の発光有機EL素子領域80を発光させることができる。
【0039】
以上が本実施形態の特徴的構成の説明である。次に有機EL素子部10の層構成について説明する。
【0040】
本実施形態で採用する有機EL素子部10は、集積型の有機EL素子である。ここで集積型の有機EL素子とは、短冊状に形成された有機EL素子(以下、「単位EL素子」と称する)を電気的に直列に接続したものである。
【0041】
有機EL素子部10の基本的な層構成は図3、図4の通りであり、複数の溝が設けられていて一つの平面状の有機EL素子部10が短冊状の単位EL素子20a、20b・・・に分割されている。
即ち、有機EL素子部10は、基板2に第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6が順次積層されたものである。ここで機能層5は、複数の有機化合物層を含む積層体層であり、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び導電層が積層されたものである。
そして、有機EL素子部10では、図3のように、各層に第1電極層分離溝15、第1機能層分離溝16、第2機能層分離溝23、第2電極層分離溝24が形成されている。
【0042】
具体的に説明すると、第1電極層3に第1電極層分離溝15が形成され、第1電極層3が複数に分割されている。また、機能層5には第1機能層分離溝16が形成され、機能層5が複数に分割されている。さらに、当該第1機能層分離溝16の中に第2電極層6の一部が侵入して溝底部で第1電極層3と接している。即ち第1機能層分離溝16は機能層5に設けられた導通用開口であり、この導通用開口の中に第2電極層6の一部が侵入して溝底部で第1電極層3と接している。
さらに、機能層5の第2機能層分離溝23と第2電極層6に設けられた第2電極層分離溝24が連通し、全体として深い共通溝たる単位EL素子分離溝17が形成されている。
従って、単位EL素子分離溝17は、少なくとも第2電極層6に至る深さを有し、好ましくは機能層5に至る。
【0043】
有機EL装置1は、図4のように、第1電極層3に設けられた第1電極層分離溝15と、機能層5及び第2電極層6に設けられた単位EL素子分離溝17によって各薄層が区画され、独立した単位EL素子20a、20b、20c・・・が形成されている。
即ち、図3の様に、第1電極層分離溝15によって区画された複数の第1電極層3の内の一つと、この区画された第1電極層3に積層された機能層5の区画と、第2電極層6の区画とによって単位EL素子20が構成されている。
【0044】
そして図3、図4、図5の様に、第1機能層分離溝16の中に第2電極層6の一部が侵入し、第2電極層6の一部が第1電極層3bと接しており、一つの単位EL素子20aは隣接する単位EL素子20bと電気的に直列に接続されている。
即ち、第1電極層分離溝15と第1機能層分離溝16とが異なる位置にあるために一つの単位EL素子20aに属する機能層5と、第2電極層6が第1電極層3aからはみ出し、隣接する単位EL素子20bに跨がっている。そして第2電極層6の第1機能層分離溝16内に侵入した侵入部13aが、隣接する単位EL素子20bの第1電極層3bに接している。
その結果、基板2上の単位EL素子20aが、第2電極層6の侵入部13aを介して単位EL素子20bと直列に接続されている。
【0045】
また、図6、図10のように、外部電源と接続される端子60がはみ出し部分A(非発光有機EL素子領域81)の外縁部Eに位置する第2電極層6Mに接続される。図6、図11のように、外部電源と接続される端子61がはみ出し部分B(非発光有機EL素子領域81)の外縁部Fに位置する第2電極層6Nに接続されている。
図6、図10のように、外縁部Eでは、第1機能層分離溝16Mの中に第2電極層6Mの一部が侵入し、第2電極層6Mの一部が第1電極層3aと接しており、隣接する単位EL素子20aと電気的に直列に接続されている。
即ち、第1機能層分離溝16Mが存在するために外縁部Eに属する第2電極層6Mが第1機能層分離溝16M内に侵入した侵入部13Mが、第1電極層3aに接している。
その結果、外部電源と接続される端子60が第2電極層6Mと接続され、第2電極層6Mの侵入部13Mと、第1電極層3aを介して単位EL素子20aと直列に接続されている。
【0046】
また、図6、図11のように、外縁部Fでは、第1機能層分離溝16Nの中に第2電極層6Nの一部が侵入し、第1電極層3dが第2電極層6Nの一部と接している。
その結果、発光有機EL素子領域80から伸延する第1電極層3dが外縁部Fの第2電極層6Nの侵入部13Nを介して端子61と直列に接続されている。
【0047】
実際の電流の流れについて、図12を元に説明する。図12は実際の電流の流れを矢印で表している。
外部電源から供給される電流は、外部電源と接続される端子60から外縁部Eに属する第2電極層6Mに流れ、その後、第2電極層6Mから発光有機EL素子領域80内の第1電極層3aに向かって流れる。即ち、第2電極層6Mの一部が第1機能層分離溝16M内の侵入部13Mを介して隣の第1電極層3aと接しており、侵入部13Mを経て発光有機EL素子領域80内の第1電極層3aに電流が流れる。
【0048】
また、発光有機EL素子領域80内では、第1電極層3aから機能層5を経て第2電極層6に向かって流れるが、第2電極層6の一部が第1機能層分離溝16内の侵入部13aを介して隣の第1電極層3bと接しており、最初の単位EL素子20aを経て隣の単位EL素子20bの第1電極層3bに電流が流れる。その後、前記と同様に単位EL素子20間を電流が流れていき、第1電極層3dに達する。そして、発光有機EL素子領域80から伸延する第1電極層3dから外縁部Fの侵入部13Nを介して、第2電極層6Nに向かって流れ、外部電源と接続される端子61に達する。
この様に集積型の有機EL素子部10では、各単位EL素子20が全て直列に電気接続され、全ての単位EL素子20が発光する。
【0049】
以上が、有機EL素子部10の層構成について説明である。続いて、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法について説明する。
有機EL装置1は、図示しない真空蒸着装置と、図示しないレーザスクライブ装置を使用して製造される。
【0050】
有機EL装置1は、最初の工程として、基板2に第1電極層3を積層する工程(第1電極層積層工程)を実施する。(図13(a)から図13(b))
【0051】
第1電極層3は、スパッタ法やCVD法によって成膜する。第1電極層3は、スパッタ法又はイオンプレーティング法によるITO又はCVD法の中でも特に低圧熱CVD法による酸化亜鉛が好ましい。
【0052】
第1電極層3の平均厚さは30nm〜500nmであることが好ましい。
【0053】
そして続いて、第一レーザスクライブ工程を行い、第1電極層3に対して第1電極層分離溝15を形成する。(図13(b)から図13(c))
この時、第1電極層分離溝15はそれぞれ図面上下方向に向かって形成されており、互いに平行である。
【0054】
なお、レーザスクライブ装置は、X・Yテーブルと、レーザー発生装置及び光学係部材を有するものである。第一レーザスクライブ工程は、基板2をX・Yテーブル上に設置し、レーザー光線を照射しつつ、基板2を縦方向に一定の速度で直線移動させることによって行う。そしてX・Yテーブルを横方向に移動してレーザー光線の照射位置をずらし、レーザー光線を照射しつつ基板2を再度縦方向に直線移動させることによって行う。
【0055】
第一レーザスクライブ工程を終えた基板は、飛散した皮膜を除去するために、場合によっては、表面を洗浄する。
【0056】
次に、真空蒸着により、この基板に、正孔注入層28、正孔輸送層27、発光層26、電子輸送層25等を順次堆積し、機能層5を全面に形成する。(機能層積層工程)(図13(c)から図13(d)、図16)
【0057】
そして、基板に対して第二レーザスクライブ工程を行い、機能層5に第1機能層分離溝16を形成する。(図13(d)から図13(e))
【0058】
この時、第1機能層分離溝16はそれぞれ図面上下方向に向かって形成されており、互いに平行である。また、第1機能層分離溝16は。第1電極層分離溝15に対して所定の間隔だけずれている。
【0059】
続いて、真空蒸着装置に前記基板を挿入し、機能層5の上に、第2電極層6を全面に形成する。(第2電極層積層工程)(図13(e)から図13(f))
【0060】
さらに続いて第三レーザスクライブ工程を行い、機能層5と第2電極層6との双方に亘った単位EL素子分離溝17を形成する。また、その前後に第1電極層3と機能層5と第2電極層6との3層にわたった侵入防止分離溝21(内側横断溝)を形成する。(図13(f)から図13(g))
なお、単位EL素子分離溝17はそれぞれ図面上下方向に向かって形成されており、それぞれが平行である。また、侵入防止分離溝21は単位EL素子分離溝17と直交する方向(図面左右方向)に形成されている。侵入防止分離溝21は、図7、図14のように、第1電極層3と機能層5と第2電極層6との3層にわたって作製されている。この侵入防止分離溝21の存在により、機能層5への水等の侵入を防止することができる。即ち、長期間有機EL装置1を稼働することにより、絶縁性接着部材9が劣化して、有機EL素子部10内に水分が侵入し、侵入した水分がさらに有機EL素子部10の各層の界面に侵入しても、侵入防止分離溝21が第1電極層3と機能層5と第2電極層6との3層にわたって形成されているため、発光部への水分の侵入を防止できる。
【0061】
続いて、第2電極層6の上に、保護層11を形成する。保護層11は全面に形成しても良いが、電極取り出しのために、図面の左右両端には保護層11を形成しないことが好ましい。(保護部材積層工程)(図13(g)から図13(h))
【0062】
さらに続いて第四レーザスクライブ工程を行い、非発光部分に少なくとも機能層5より上の層を除去したフリット固定用分離溝18a、18bを形成する。(図13(h)から図13(i))
フリット固定用分離溝18aは上下方向、フリット固定用分離溝18bは左右方向に向かって形成されており、フリット固定用分離溝18a、18bはそれぞれ分離溝が平行である。
【0063】
そして、フリット固定用分離溝18a、18bに絶縁性のガラスフリット14を配置する。即ち、図15で黒ベタ表示した部位に、絶縁性のガラスフリット14を配置する。
【0064】
そして、絶縁性のガラスフリット14に順次レーザビームを照射し、ガラスフリット14を溶融させる。即ち、ガラスフリット14だけを部分的に加熱し、フリット固定用分離溝18a、18b内の絶縁性のガラスフリット14を溶融して第1電極層3と、封止部材8を接着する。なお、この時、フリット固定用分離溝18a、18b内に、絶縁性接着部材9が形成される。
このようにして封止部材8を接着して、封止の作業を行う。(図13(i)から図13(j))(封止工程)
【0065】
そして、図17のように、フリット固定用分離溝18a、18b内に形成された絶縁性接着部材9の外側側面に液状のポリシラザン誘導体67を塗布する。即ち、図15でハッチング表示した部位に液状のポリシラザン誘導体67を注入する。この時、ポリシラザン誘導体67は液状であるため、ポリシラザン誘導体67はフリット固定用分離溝18a、18b内に形成された絶縁性接着部材9の外側側面の隙間に毛細管現象によって進入する。即ち、図17(a)の矢印に示されるようにポリシラザン誘導体67が進入していき、図17(b)に示されるように絶縁性接着部材9の外側側面の隙間にポリシラザン誘導体67が満たされる。
【0066】
その後、触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化を行い、緻密性を有したバリア層65、66が形成し、有機EL装置1が完成する。(図6、図7、図17(b)から図17(c))
なお、この時用いる触媒としては、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルなどの金属触媒及びそれらのカルボン酸錯体が採用される。また、触媒をポリシラザン誘導体67に添加しておくのではなく、触媒溶液、具体的にはアミン水溶液等に直接被覆成型物を接触させる、またはその蒸気に一定時間曝す、などの方法を採用することも好ましい。
【0067】
本構成によれば、絶縁性接着部材9の外側側面の隙間にバリア層65、66が形成されるので、水などの有機EL装置の発光部分への侵入を防ぐことができる。
【0068】
上記した実施形態では、有機EL装置1の間隔維持空間42内を不活性ガスで満たしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、樹脂と、水分や酸素を吸収する乾燥材とを混合し、間隔維持空間42内を充填してもよい。
【0069】
最後に有機EL装置1の構成部材の素材について説明する。バリア層65、66については、前述したので省略する。
【0070】
基板2(基材)の材質は、特に限定されるものではなく、透明性を備えた基板が採用される。例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され採用される。ガラス基板やフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から特に好ましい。
【0071】
上記フィルム基板としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂があげられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂やポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられる。また、熱硬化製性樹脂としてはポリウレタンが挙げられる。特に優れた光学等方性と水蒸気遮断性の両方を有するシクロオレフィンポリマー(COP)を主成分とする基板が好ましい。
【0072】
COPとしては、ノルボルネンの重合体やノルボルネンとオレフィンとの共重合体、シクロペンタジエンなどの不飽和脂環式炭化水素の重合体などが挙げられる。水蒸気遮断性の観点から、構成分子の主鎖及び側鎖には大きな極性を示す官能基、例えばカルボニル基やヒドロキシル基、を含まないことが好ましい。
【0073】
上記フィルム基板の厚みとしては0.03mm〜3.0mm程度が好ましい。この膜厚範囲が基板の取り扱いやすさやデバイス作製時の重量の観点に加えて、基板の曲げや引っかきに対する強度の観点から好ましい。その他耐熱性に優れるという観点から、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエーテルスルホン(PES)なども使用できる。
【0074】
第1電極層3の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO2 )、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物や、銀(Ag)、クロム(Cr)等のような金属などが採用される。機能層5内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOを特に好ましく使用することができる。
【0075】
機能層5の構成は、図16に示すように、第2電極層6側から順に、電子輸送層25、発光層26、正孔輸送層27、正孔注入層28がこの順番に積層された構造を有している。
【0076】
電子輸送層25の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができるが、本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0077】
発光層26の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に低分子材料の分散または共重合した材料等を用いることができるが、本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0078】
正孔輸送層27の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送層の材料、ポリチオフェンオリゴマー材料等を用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0079】
正孔注入層28の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、1, 3, 5−トリカルバゾリルベンゼン、4, 4’−ビスカルバゾリルビフェニル、ポリビニルカルバゾール、m−ビスカルバゾリルフェニル、4, 4’−ビスカルバゾリル−2, 2’−ジメチルビフェニル、4, 4’, 4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1, 3, 5−トリ(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1, 3, 5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−カルバゾリルフェニル)シラン、N, N’−ビス(3−メチルフェニル)−N, N’−ジフェニル−[1, 1−ビフェニル]−4, 4’−ジアミン(TPD)、N, N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N, N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)、N, N’−ジフェニル−N, N’−ビス(1−ナフチル)−(1, 1’−ビフェニル)−4, 4’−ジアミン(NPB)、ポリ(9, 9−ジオクチルフルオレン−co−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)またはポリ(9, 9−ジオクチルフルオレン−co−ビス−N, N−フェニル−1, 4−フェニレンジアミン(PFB)等を用いることができるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0080】
これらの機能層5の構成層は真空蒸着法やスパッタ法、CVD法、ディッピング法、ロールコート法(印刷法)、スピンコート法、バーコード法、スプレー法、ダイコート法、フローコート法など適宜公知の方法によって成膜できる。
【0081】
第2電極層6に目を移すと、第2電極層6の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば銀やアルミニウムなどが挙げられる。また、これらの材料はスパッタ法又は真空蒸着法によって堆積されることが好ましい。
【0082】
保護層11の材料としては公知の物質が使用できる。例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物や、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどの金属フッ化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化クロムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスシリコン膜などの無機材料や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、シクロオレフィン系樹脂などの樹脂材料が用いられる。
【0083】
保護層11はガスバリア性を有する材料であることが好ましい。また、保護層11は吸湿性を有する材料であることが好ましい。保護層11の形成方法としては、材料に応じて抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD法などの成膜法を用いることができる。
【0084】
封止部材8の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、シクロオレフィン系樹脂、アルミニウムやステンレスなどの金属箔や樹脂フィルムにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させたフィルムを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0085】
1 有機EL装置
2 基板(基材)
3 第1電極層
5 機能層(有機発光層)
6 第2電極層
6M 第2電極層(第一電極連通部)
6N 第2電極層(第二電極連通部)
8 封止部材
9 絶縁性接着部材(接着材料)
10 有機EL素子部(積層体)
14 絶縁性のフリット(接着材料)
18b フリット固定用分離溝(外側横断溝)
20 単位EL素子
65、66 バリア層
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminesence)装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、白熱灯や蛍光灯に代わる照明装置として有機EL装置が注目され、多くの研究がなされている。また、テレビに代表されるディスプレイ部材においても液晶方式やプラズマ方式に変わる方式として有機EL方式が注目されている。
【0003】
ここで、有機EL装置は、ガラス基板や透明樹脂フィルム等の基材に、有機EL素子を積層したものである。
また、有機EL素子は、一方又は双方が透光性を有する2つの電極を対向させ、この電極の間に有機化合物からなる発光層を積層したものである。有機EL装置は、電気的に励起された電子と正孔との再結合のエネルギーによって発光する。
有機EL装置は、自発光デバイスであるため、ディスプレイ材料として使用すると高コントラストの画像を得ることができる。また、発光層の材料を適宜選択することにより、種々の波長の光を発光することができる。また、白熱灯や蛍光灯に比べて厚さが極めて薄く、且つ面状に発光するので、設置場所の制約が少ない。
【0004】
ところで、有機EL素子は、一定期間駆動した場合、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が初期の場合に比べて著しく劣化するという問題がある。このような発光特性の劣化の原因としては、有機EL素子内に侵入した酸素による電極の酸化、駆動時の発熱による有機材料の酸化分解、有機EL素子内に侵入した空気中の水分による電極の酸化、有機物の変性等を挙げることができる。さらに、酸素や水分の影響で構造体の界面が剥離したり、駆動時の発熱や駆動時の環境が高温であったこと等が引き金となり、さらに各構成要素の熱膨張率の違いにより構造体の界面で応力が発生し、界面が剥離したりする等の構造体の機械的劣化も発光特性の劣化の原因として挙げることができる。
【0005】
即ち、有機EL装置の劣化防止のためには、有機EL素子への水等の液体や酸素等の気体の侵入を防ぐ必要がある。
【0006】
このような問題を防止するため、有機EL素子を樹脂製の接着剤を用いて封止し、水分や酸素との接触を防止する技術が提案されている。
【0007】
例えば、酸素及び水分による劣化を防止する技術として、有機EL素子の基板上に形成された発光層の上方の位置に封止部材をかぶせ、それを接着剤で封止し、さらに、封止空間内に吸湿作用のある吸着剤等を封入するなどの対策が採られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−235077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の接着剤を使った封止では、有機EL装置を長時間駆動させると接着剤部分から水分等が透過し、所望の封止性能が十分得られなかった。そのため、水分等の侵入による発光特性の低下の懸念が未だ残っている。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決するものであり、有機EL装置の発光部位への水分等の侵入を防止することができる有機EL装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは、接着剤の代わりに、粉末状のガラスフリットを用い、ガラスフリットを溶解させ、第1電極層上に接着させることにより、水分の進入を防止することを考えた。しかし、ガラスフリットを用いると、落下等の外部からの圧力を受けると、ガラスフリットがクラックを起こし、もろく崩れ落ちることがあった。そこで、ガラスフリットの外側をシリカによってコーティングすることによって、水分の進入を防止しつつ、強度の確保を試みた。試行錯誤をして導き出された請求項1に記載の発明は、基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層が積層されて積層体を形成し、前記積層体が封止部材で封止された有機EL装置において、封止部材は接着材料で接着されており、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っていることを特徴とする有機EL装置である。
【0012】
ここで言うバリア層とは、常温常圧下で緻密性を有した層である。緻密性とは、有機EL装置を使用する際に水蒸気や酸素、水分等が透過しない程度に緻密であることを言う。
【0013】
かかる構成によれば、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っているため、有機EL素子への水分や酸素の侵入を防止することができる。即ち、有機EL素子への水分の侵入による漏電や酸素による有機層の酸化が起こりにくい。即ち、発光欠陥が起こりにくい。また、接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っているため、外力を受けても、接着材料がクラックを起こしにくい。
【0014】
請求項1に記載の有機EL装置において、前記バリア層はシリカを素材とすることが好ましい。(請求項2)
【0015】
ここでいうシリカとは、二酸化ケイ素、或いは二酸化ケイ素によって構成される物質を表す。
【0016】
請求項3に記載の発明は、第1電極層と、有機発光層と、第2電極層には溝が形成されていて複数の単位EL素子に分割されており、当該単位EL素子が電気的に直列に接続されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置である。
【0017】
かかる構成によれば、複数の単位EL素子を均一に発光させることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、第1電極層は封止部材の内側から外側に伸延しており、前記第1電極層は封止部材の内側では第2電極層と直接接続されており、封止部材の外側では第二電極連通部と電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL装置である。
【0019】
かかる構成によれば、有機EL装置内への電流の供給が容易である。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL装置を製造する製造方法であって、前記バリア層はポリシラザン誘導体を触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化することによって形成することを特徴とする有機EL装置製造方法である。
【0021】
かかる構成によれば、触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化することによって形成するので、より緻密なバリア層を形成することができる。即ち、水蒸気や酸素のガスバリア性が高く、防水性も高い。それ故に長時間利用しても発光欠陥が少ない有機EL装置を製造することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記ポリシラザン誘導体は、毛細管現象によって接着材料の外側一部又は全部に塗布されることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法である。
【0023】
かかる構成によれば、毛細管現象によって接着材料の外側一部又は全部に塗布されるため、接着材料に隙間無く塗布することが可能である。即ち、高い封止性を有した有機EL装置を製造できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る構成を用いれば、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っているため、有機EL素子への水分や酸素の侵入を防止することができる。即ち、有機EL素子への水分の侵入による漏電や酸素による有機層の酸化が起こりにくい。即ち、発光欠陥が起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の有機EL装置を裏面側から観察した斜視図である。
【図2】図1の有機EL装置の分解斜視図である。
【図3】図1の有機EL装置における有機EL素子部の層構成を説明する断面図である。
【図4】図1の有機EL装置における有機EL素子部の層構成を説明する断面斜視図である。
【図5】図1の有機EL装置における単位EL素子の構成を示す断面図である。
【図6】図1の有機EL装置のX−X方向の断面図である。
【図7】図1の有機EL装置のY−Y方向の断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の有機EL装置から封止部材と保護層とを除いた状態を示す平面図である。
【図9】封止部材と保護層とを除き、さらに封止部材を分離した状態における有機EL装置の断面斜視図である。
【図10】図6の有機EL装置のM領域を示す拡大図である。
【図11】図6の有機EL装置のN領域を示す拡大図である。
【図12】図6の有機EL装置の断面図を元に、電源から電流を流した際の電流経路を示した説明図である。なお、簡略化のため、絶縁性の部材には黒ベタを施し、ハッチングを省いている。
【図13】第1実施形態の有機EL装置の製造工程の説明図である。(a)は第1電極層積層工程の開始時における図、(b)は第一レーザスクライブ工程の開始時における図、(c)は機能層積層工程の開始時における図、(d)は第二レーザスクライブ工程の開始時における図、(e)は第2電極層積層工程の開始時における図、(f)は第三レーザスクライブ工程の開始時における図、(g)は保護部材積層工程の開始時における図、(h)は第四レーザスクライブ工程の開始時における図、(i)は封止工程の開始時における図、(j)は封止工程の終了時における図である。
【図14】図7の有機EL装置のT領域を示す拡大図である。
【図15】図8の平面図に、絶縁性接着材が配される領域を黒ベタで表示し、バリア層が配される領域をハッチングで表示した正面図である。
【図16】本発明の第1実施形態の有機EL素子部の層構成を示す断面図である。
【図17】第1実施形態のバリア層の形成工程の説明図である。(a)ポリシラザン誘導体の注入時の説明図、(b)ポリシラザン誘導体の注入後の説明図、(c)バリア層の形成時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、有機EL装置に係るものである。図1は、本発明の第1実施形態に係る有機EL装置1を示している。以下、上下左右の位置関係は、特に断りのない限り、図1の姿勢を基準に説明する。
【0027】
本実施形態の有機EL装置1は、従来技術と同様に、基板2(基材)の背面(図面上側)に平板状の封止部材8を設けており、当該封止部材8で有機EL素子部10を保護層11ごと覆い、封止部材8によって有機EL素子部10を外部と遮蔽するものである。(図1、図2)
なお、本実施形態では、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6との3層が積層した部分を有機EL素子部10と称している。また、有機EL素子部10は、発光有機EL素子領域80と非発光有機EL素子領域81を有している。発光有機EL素子領域80は実際に発光する有機EL素子部10であり、非発光有機EL素子領域81は発光有機EL素子領域80以外の実際に発光しない有機EL素子部10である。
また、封止部材8と基板2とを接着する手段として、ガラスフリットを主成分とする絶縁性接着部材9(接続部)を使用している。
【0028】
有機EL装置1の有機EL素子部(保護層11を除く)10の層構成は、図3、図4、図5の通りであり、基板2(基材)上に、第1電極層3と、機能層5(有機発光層)と、第2電極層6と、がこの順番に積層された構造を有している。
そして、本実施形態の有機EL装置1は、図3、図4、図5に示した有機EL素子部10にさらに図6、図7の様に保護層11が積層された構造を有しており、さらにこれらが絶縁性接着部材9を介して封止部材8によって封止されている。また、さらに絶縁性接着部材9の外側側面を緻密性を有したバリア層65が覆っている。
【0029】
説明の都合上、まず初めに本実施形態の特徴的構成について説明する。なお、有機EL素子部10の詳細な説明は後述する。
【0030】
本実施形態の有機EL装置1では、図2に示すように、基板2が長方形であり、その上に有機EL素子部10が設けられている。また、基板2の中央部に実際に発光する発光有機EL素子領域80(保護層11も含む)が設けられている。即ち、基板2上に、前記した第1電極層3と、機能層5(有機発光層)と、第2電極層6が設けられ、基板2の中央部では、さらにこれらの上に保護層11が積層されている。
【0031】
そして、本実施形態の有機EL装置1では、図2の様に有機EL素子部10が基板2の略全面に成膜されており、その一部分が溝状に除去されている。
即ち、本実施形態の有機EL装置1では、基板2の中央部にだけ実際に発光する有機EL素子部10(発光有機EL素子領域80)がある。詳説すると、有機EL装置1の長手方向の両端部には発光有機EL素子領域80からはみ出した非発光のはみ出し部分A、B(非発光有機EL素子領域81)が存在し、長手方向の基板2上には溝を除いて有機EL素子部10が存在している。そのため、レーザスクライブ処理を用いることで、有機EL素子部10を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
そして、当該はみ出し部分A、Bには、少なくとも第1電極層3より上方に位置する層を除去したフリット固定用分離溝18aが設けられている。
従って、フリット固定用分離溝18aを形成した直後は、フリット固定用分離溝18aの底部は第1電極層3が露出した状態となっている。
【0032】
有機EL装置1の短手方向に目を移すと、図2、図8、図9の様に基板2の短手方向の端部近傍に非発光のはみ出し部分C、Dが設けられている。
はみ出し部分C、Dには第1電極層3並びにその他の層が存在している。そのため、レーザスクライブ処理を用いることで、機能層5並びにその他の層を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
また、当該はみ出し部分C、Dには、少なくとも第1電極層3より上方に位置する層を除去したフリット固定用分離溝18bが設けられている。
従って、フリット固定用分離溝18bを形成した直後は、フリット固定用分離溝18bの底部は第1電極層3が露出した状態となっている。
そして、本実施形態では、基板2の長手方向の辺35、36と平行に、はみ出し部分C、Dに第1電極層3並びにその他の層が存在しない侵入防止分離溝21が存在する。この侵入防止分離溝21には、保護層11も無い。
【0033】
即ち、本実施形態の有機EL装置1では、図8、図9の様に、有機EL素子部10の両端部付近に、長手方向の辺35、36と平行に、第1電極層3と第2電極層6と機能層5の3層を除去した侵入防止分離溝21が設けられている。
侵入防止分離溝21は、第2電極層6M(第一電極連通部)を有するはみ出し部分Aから第2電極層6N(第二電極連通部)を有するはみ出し部分Bにかけて積層体である有機EL素子部10を横断する横断溝である。また、侵入防止分離溝21は、フリット固定用分離溝18bの内側に位置している。
【0034】
そして、本実施形態では、図2、図6、図7、図9の様に、前記したフリット固定用分離溝18a、18bに、封止部材8の接着部37、38、39、40が絶縁性接着部材9によって接着されている。
また、封止部材8は、絶縁材料で成形されたものであり、平面視が長方形の本体部41を有している。また、有機EL装置1は、絶縁性接着部材9が上下方向に厚く形成されており、封止部材8と有機EL素子部10との間に間隔維持空間42を形成している。間隔維持空間42は、窒素やアルゴンなどの不活性ガスで満たされている。また、間隔維持空間42には、水分や酸素を吸収する乾燥材を入れることが好ましい。
そして、図8の縦列たるフリット固定用分離溝18aに、図6のように絶縁性接着部材9を介して封止部材8の縦側の接着部37、39が接着されている。さらに、図6、10、11のように絶縁性接着部材9の外側側面の一部又は全部にバリア層65が接着されている。
また、図8の横列たるフリット固定用分離溝18bに、図7のように絶縁性接着部材9(接続部)を介して封止部材8の横側の接着部38、40が接着されている。さらに、図7、14のように絶縁性接着部材9の外側側面の一部又は全部にバリア層66が接着されている。
即ち、絶縁性接着部材9の外側側面の一部又は全部にバリア層65、66が接着されているため、水分や酸素などの発光有機EL素子領域80内への侵入を防止できる。
【0035】
ここで、バリア層65、66について詳説する。
バリア層65、66は、具体的には緻密性を有したシリカを素材としている。また、バリア層65、66はポリシラザン誘導体を原料とするのが好ましい。ポリシラザン誘導体を用いたシリカ転化は、シリカ転化時重量増加を生じ、体積収縮が小さく、シリカ膜転化時に樹脂の耐え得る温度で十分にしかもクラックを生じ難くすることができる。
ここでいうポリシラザン誘導体は、珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO2、Si2N4 、及び両者の中間固溶体SiOx Ny 等のセラミック前駆体ポリマーである。また、このポリシラザン誘導体は、下記一般式(1)のような、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体も含む。
【0036】
【化1】
式(1)において、R1、R2、R3は、アルキル基(水素基も含む)を示し、但し、R1、R2、R3の少なくともいずれか1つは、水素基である。
【0037】
また、本発明のバリア層65、66の素材には、ポリシラザン誘導体の中でも特に側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンや、Siと結合する水素部分が一部メチル基に置換された誘導体が好ましい。
また、本発明で用いるポリシラザン誘導体は、有機溶媒に溶解した溶液状態で用いる。
有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
【0038】
本実施形態の有機EL装置1では、前記した様にフリット固定用分離溝18aに封止部材8の縦側の接着部37、39が接着されているから、図1に示すように、封止部材8の外側に、有機EL素子部10が露出する。即ち、前記した様に、発光有機EL素子領域80からはみ出した非発光のはみ出し部分A、B(非発光有機EL素子領域81)を有し、当該はみ出し部分A、Bの外縁部E、Fは、封止部材8の外側に露出している(図2)。
そして、一方の外縁部Eの積層構成は、図6、図10のように有機EL素子部10の積層構成であり、フリット固定用分離溝18aの外側に第1機能層分離溝16Mが配されている。
またその対辺に位置する外縁部Fの積層構成は、図6、図11のように有機EL素子部10の積層構成であり、フリット固定用分離溝18aの外側に第1機能層分離溝16Nが配されている。
外縁部Eの第2電極層6Mは発光有機EL素子領域80内の第1電極層3aと電気的に接続されている(図10)。また、外縁部Fの第1電極層3dは発光有機EL素子領域80内の第2電極層6Nと電気的に接続されている(図11)。
そのため、露出した外縁部E、Fの第2電極層6M、6Nに電源に接続される端子60、61を接続し通電することにより、電流を有機EL素子部10に給電することができ、有機EL素子部10内の発光有機EL素子領域80を発光させることができる。
【0039】
以上が本実施形態の特徴的構成の説明である。次に有機EL素子部10の層構成について説明する。
【0040】
本実施形態で採用する有機EL素子部10は、集積型の有機EL素子である。ここで集積型の有機EL素子とは、短冊状に形成された有機EL素子(以下、「単位EL素子」と称する)を電気的に直列に接続したものである。
【0041】
有機EL素子部10の基本的な層構成は図3、図4の通りであり、複数の溝が設けられていて一つの平面状の有機EL素子部10が短冊状の単位EL素子20a、20b・・・に分割されている。
即ち、有機EL素子部10は、基板2に第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6が順次積層されたものである。ここで機能層5は、複数の有機化合物層を含む積層体層であり、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び導電層が積層されたものである。
そして、有機EL素子部10では、図3のように、各層に第1電極層分離溝15、第1機能層分離溝16、第2機能層分離溝23、第2電極層分離溝24が形成されている。
【0042】
具体的に説明すると、第1電極層3に第1電極層分離溝15が形成され、第1電極層3が複数に分割されている。また、機能層5には第1機能層分離溝16が形成され、機能層5が複数に分割されている。さらに、当該第1機能層分離溝16の中に第2電極層6の一部が侵入して溝底部で第1電極層3と接している。即ち第1機能層分離溝16は機能層5に設けられた導通用開口であり、この導通用開口の中に第2電極層6の一部が侵入して溝底部で第1電極層3と接している。
さらに、機能層5の第2機能層分離溝23と第2電極層6に設けられた第2電極層分離溝24が連通し、全体として深い共通溝たる単位EL素子分離溝17が形成されている。
従って、単位EL素子分離溝17は、少なくとも第2電極層6に至る深さを有し、好ましくは機能層5に至る。
【0043】
有機EL装置1は、図4のように、第1電極層3に設けられた第1電極層分離溝15と、機能層5及び第2電極層6に設けられた単位EL素子分離溝17によって各薄層が区画され、独立した単位EL素子20a、20b、20c・・・が形成されている。
即ち、図3の様に、第1電極層分離溝15によって区画された複数の第1電極層3の内の一つと、この区画された第1電極層3に積層された機能層5の区画と、第2電極層6の区画とによって単位EL素子20が構成されている。
【0044】
そして図3、図4、図5の様に、第1機能層分離溝16の中に第2電極層6の一部が侵入し、第2電極層6の一部が第1電極層3bと接しており、一つの単位EL素子20aは隣接する単位EL素子20bと電気的に直列に接続されている。
即ち、第1電極層分離溝15と第1機能層分離溝16とが異なる位置にあるために一つの単位EL素子20aに属する機能層5と、第2電極層6が第1電極層3aからはみ出し、隣接する単位EL素子20bに跨がっている。そして第2電極層6の第1機能層分離溝16内に侵入した侵入部13aが、隣接する単位EL素子20bの第1電極層3bに接している。
その結果、基板2上の単位EL素子20aが、第2電極層6の侵入部13aを介して単位EL素子20bと直列に接続されている。
【0045】
また、図6、図10のように、外部電源と接続される端子60がはみ出し部分A(非発光有機EL素子領域81)の外縁部Eに位置する第2電極層6Mに接続される。図6、図11のように、外部電源と接続される端子61がはみ出し部分B(非発光有機EL素子領域81)の外縁部Fに位置する第2電極層6Nに接続されている。
図6、図10のように、外縁部Eでは、第1機能層分離溝16Mの中に第2電極層6Mの一部が侵入し、第2電極層6Mの一部が第1電極層3aと接しており、隣接する単位EL素子20aと電気的に直列に接続されている。
即ち、第1機能層分離溝16Mが存在するために外縁部Eに属する第2電極層6Mが第1機能層分離溝16M内に侵入した侵入部13Mが、第1電極層3aに接している。
その結果、外部電源と接続される端子60が第2電極層6Mと接続され、第2電極層6Mの侵入部13Mと、第1電極層3aを介して単位EL素子20aと直列に接続されている。
【0046】
また、図6、図11のように、外縁部Fでは、第1機能層分離溝16Nの中に第2電極層6Nの一部が侵入し、第1電極層3dが第2電極層6Nの一部と接している。
その結果、発光有機EL素子領域80から伸延する第1電極層3dが外縁部Fの第2電極層6Nの侵入部13Nを介して端子61と直列に接続されている。
【0047】
実際の電流の流れについて、図12を元に説明する。図12は実際の電流の流れを矢印で表している。
外部電源から供給される電流は、外部電源と接続される端子60から外縁部Eに属する第2電極層6Mに流れ、その後、第2電極層6Mから発光有機EL素子領域80内の第1電極層3aに向かって流れる。即ち、第2電極層6Mの一部が第1機能層分離溝16M内の侵入部13Mを介して隣の第1電極層3aと接しており、侵入部13Mを経て発光有機EL素子領域80内の第1電極層3aに電流が流れる。
【0048】
また、発光有機EL素子領域80内では、第1電極層3aから機能層5を経て第2電極層6に向かって流れるが、第2電極層6の一部が第1機能層分離溝16内の侵入部13aを介して隣の第1電極層3bと接しており、最初の単位EL素子20aを経て隣の単位EL素子20bの第1電極層3bに電流が流れる。その後、前記と同様に単位EL素子20間を電流が流れていき、第1電極層3dに達する。そして、発光有機EL素子領域80から伸延する第1電極層3dから外縁部Fの侵入部13Nを介して、第2電極層6Nに向かって流れ、外部電源と接続される端子61に達する。
この様に集積型の有機EL素子部10では、各単位EL素子20が全て直列に電気接続され、全ての単位EL素子20が発光する。
【0049】
以上が、有機EL素子部10の層構成について説明である。続いて、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法について説明する。
有機EL装置1は、図示しない真空蒸着装置と、図示しないレーザスクライブ装置を使用して製造される。
【0050】
有機EL装置1は、最初の工程として、基板2に第1電極層3を積層する工程(第1電極層積層工程)を実施する。(図13(a)から図13(b))
【0051】
第1電極層3は、スパッタ法やCVD法によって成膜する。第1電極層3は、スパッタ法又はイオンプレーティング法によるITO又はCVD法の中でも特に低圧熱CVD法による酸化亜鉛が好ましい。
【0052】
第1電極層3の平均厚さは30nm〜500nmであることが好ましい。
【0053】
そして続いて、第一レーザスクライブ工程を行い、第1電極層3に対して第1電極層分離溝15を形成する。(図13(b)から図13(c))
この時、第1電極層分離溝15はそれぞれ図面上下方向に向かって形成されており、互いに平行である。
【0054】
なお、レーザスクライブ装置は、X・Yテーブルと、レーザー発生装置及び光学係部材を有するものである。第一レーザスクライブ工程は、基板2をX・Yテーブル上に設置し、レーザー光線を照射しつつ、基板2を縦方向に一定の速度で直線移動させることによって行う。そしてX・Yテーブルを横方向に移動してレーザー光線の照射位置をずらし、レーザー光線を照射しつつ基板2を再度縦方向に直線移動させることによって行う。
【0055】
第一レーザスクライブ工程を終えた基板は、飛散した皮膜を除去するために、場合によっては、表面を洗浄する。
【0056】
次に、真空蒸着により、この基板に、正孔注入層28、正孔輸送層27、発光層26、電子輸送層25等を順次堆積し、機能層5を全面に形成する。(機能層積層工程)(図13(c)から図13(d)、図16)
【0057】
そして、基板に対して第二レーザスクライブ工程を行い、機能層5に第1機能層分離溝16を形成する。(図13(d)から図13(e))
【0058】
この時、第1機能層分離溝16はそれぞれ図面上下方向に向かって形成されており、互いに平行である。また、第1機能層分離溝16は。第1電極層分離溝15に対して所定の間隔だけずれている。
【0059】
続いて、真空蒸着装置に前記基板を挿入し、機能層5の上に、第2電極層6を全面に形成する。(第2電極層積層工程)(図13(e)から図13(f))
【0060】
さらに続いて第三レーザスクライブ工程を行い、機能層5と第2電極層6との双方に亘った単位EL素子分離溝17を形成する。また、その前後に第1電極層3と機能層5と第2電極層6との3層にわたった侵入防止分離溝21(内側横断溝)を形成する。(図13(f)から図13(g))
なお、単位EL素子分離溝17はそれぞれ図面上下方向に向かって形成されており、それぞれが平行である。また、侵入防止分離溝21は単位EL素子分離溝17と直交する方向(図面左右方向)に形成されている。侵入防止分離溝21は、図7、図14のように、第1電極層3と機能層5と第2電極層6との3層にわたって作製されている。この侵入防止分離溝21の存在により、機能層5への水等の侵入を防止することができる。即ち、長期間有機EL装置1を稼働することにより、絶縁性接着部材9が劣化して、有機EL素子部10内に水分が侵入し、侵入した水分がさらに有機EL素子部10の各層の界面に侵入しても、侵入防止分離溝21が第1電極層3と機能層5と第2電極層6との3層にわたって形成されているため、発光部への水分の侵入を防止できる。
【0061】
続いて、第2電極層6の上に、保護層11を形成する。保護層11は全面に形成しても良いが、電極取り出しのために、図面の左右両端には保護層11を形成しないことが好ましい。(保護部材積層工程)(図13(g)から図13(h))
【0062】
さらに続いて第四レーザスクライブ工程を行い、非発光部分に少なくとも機能層5より上の層を除去したフリット固定用分離溝18a、18bを形成する。(図13(h)から図13(i))
フリット固定用分離溝18aは上下方向、フリット固定用分離溝18bは左右方向に向かって形成されており、フリット固定用分離溝18a、18bはそれぞれ分離溝が平行である。
【0063】
そして、フリット固定用分離溝18a、18bに絶縁性のガラスフリット14を配置する。即ち、図15で黒ベタ表示した部位に、絶縁性のガラスフリット14を配置する。
【0064】
そして、絶縁性のガラスフリット14に順次レーザビームを照射し、ガラスフリット14を溶融させる。即ち、ガラスフリット14だけを部分的に加熱し、フリット固定用分離溝18a、18b内の絶縁性のガラスフリット14を溶融して第1電極層3と、封止部材8を接着する。なお、この時、フリット固定用分離溝18a、18b内に、絶縁性接着部材9が形成される。
このようにして封止部材8を接着して、封止の作業を行う。(図13(i)から図13(j))(封止工程)
【0065】
そして、図17のように、フリット固定用分離溝18a、18b内に形成された絶縁性接着部材9の外側側面に液状のポリシラザン誘導体67を塗布する。即ち、図15でハッチング表示した部位に液状のポリシラザン誘導体67を注入する。この時、ポリシラザン誘導体67は液状であるため、ポリシラザン誘導体67はフリット固定用分離溝18a、18b内に形成された絶縁性接着部材9の外側側面の隙間に毛細管現象によって進入する。即ち、図17(a)の矢印に示されるようにポリシラザン誘導体67が進入していき、図17(b)に示されるように絶縁性接着部材9の外側側面の隙間にポリシラザン誘導体67が満たされる。
【0066】
その後、触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化を行い、緻密性を有したバリア層65、66が形成し、有機EL装置1が完成する。(図6、図7、図17(b)から図17(c))
なお、この時用いる触媒としては、金、銀、パラジウム、白金、ニッケルなどの金属触媒及びそれらのカルボン酸錯体が採用される。また、触媒をポリシラザン誘導体67に添加しておくのではなく、触媒溶液、具体的にはアミン水溶液等に直接被覆成型物を接触させる、またはその蒸気に一定時間曝す、などの方法を採用することも好ましい。
【0067】
本構成によれば、絶縁性接着部材9の外側側面の隙間にバリア層65、66が形成されるので、水などの有機EL装置の発光部分への侵入を防ぐことができる。
【0068】
上記した実施形態では、有機EL装置1の間隔維持空間42内を不活性ガスで満たしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、樹脂と、水分や酸素を吸収する乾燥材とを混合し、間隔維持空間42内を充填してもよい。
【0069】
最後に有機EL装置1の構成部材の素材について説明する。バリア層65、66については、前述したので省略する。
【0070】
基板2(基材)の材質は、特に限定されるものではなく、透明性を備えた基板が採用される。例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され採用される。ガラス基板やフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から特に好ましい。
【0071】
上記フィルム基板としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂があげられる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂やポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられる。また、熱硬化製性樹脂としてはポリウレタンが挙げられる。特に優れた光学等方性と水蒸気遮断性の両方を有するシクロオレフィンポリマー(COP)を主成分とする基板が好ましい。
【0072】
COPとしては、ノルボルネンの重合体やノルボルネンとオレフィンとの共重合体、シクロペンタジエンなどの不飽和脂環式炭化水素の重合体などが挙げられる。水蒸気遮断性の観点から、構成分子の主鎖及び側鎖には大きな極性を示す官能基、例えばカルボニル基やヒドロキシル基、を含まないことが好ましい。
【0073】
上記フィルム基板の厚みとしては0.03mm〜3.0mm程度が好ましい。この膜厚範囲が基板の取り扱いやすさやデバイス作製時の重量の観点に加えて、基板の曲げや引っかきに対する強度の観点から好ましい。その他耐熱性に優れるという観点から、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエーテルスルホン(PES)なども使用できる。
【0074】
第1電極層3の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO2 )、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物や、銀(Ag)、クロム(Cr)等のような金属などが採用される。機能層5内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOを特に好ましく使用することができる。
【0075】
機能層5の構成は、図16に示すように、第2電極層6側から順に、電子輸送層25、発光層26、正孔輸送層27、正孔注入層28がこの順番に積層された構造を有している。
【0076】
電子輸送層25の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができるが、本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0077】
発光層26の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子材料や、これら高分子材料に低分子材料の分散または共重合した材料等を用いることができるが、本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0078】
正孔輸送層27の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送層の材料、ポリチオフェンオリゴマー材料等を用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0079】
正孔注入層28の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、1, 3, 5−トリカルバゾリルベンゼン、4, 4’−ビスカルバゾリルビフェニル、ポリビニルカルバゾール、m−ビスカルバゾリルフェニル、4, 4’−ビスカルバゾリル−2, 2’−ジメチルビフェニル、4, 4’, 4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1, 3, 5−トリ(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1, 3, 5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−カルバゾリルフェニル)シラン、N, N’−ビス(3−メチルフェニル)−N, N’−ジフェニル−[1, 1−ビフェニル]−4, 4’−ジアミン(TPD)、N, N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N, N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)、N, N’−ジフェニル−N, N’−ビス(1−ナフチル)−(1, 1’−ビフェニル)−4, 4’−ジアミン(NPB)、ポリ(9, 9−ジオクチルフルオレン−co−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)またはポリ(9, 9−ジオクチルフルオレン−co−ビス−N, N−フェニル−1, 4−フェニレンジアミン(PFB)等を用いることができるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0080】
これらの機能層5の構成層は真空蒸着法やスパッタ法、CVD法、ディッピング法、ロールコート法(印刷法)、スピンコート法、バーコード法、スプレー法、ダイコート法、フローコート法など適宜公知の方法によって成膜できる。
【0081】
第2電極層6に目を移すと、第2電極層6の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば銀やアルミニウムなどが挙げられる。また、これらの材料はスパッタ法又は真空蒸着法によって堆積されることが好ましい。
【0082】
保護層11の材料としては公知の物質が使用できる。例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物や、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどの金属フッ化物、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化クロムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスシリコン膜などの無機材料や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、シクロオレフィン系樹脂などの樹脂材料が用いられる。
【0083】
保護層11はガスバリア性を有する材料であることが好ましい。また、保護層11は吸湿性を有する材料であることが好ましい。保護層11の形成方法としては、材料に応じて抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD法などの成膜法を用いることができる。
【0084】
封止部材8の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、シクロオレフィン系樹脂、アルミニウムやステンレスなどの金属箔や樹脂フィルムにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させたフィルムを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【符号の説明】
【0085】
1 有機EL装置
2 基板(基材)
3 第1電極層
5 機能層(有機発光層)
6 第2電極層
6M 第2電極層(第一電極連通部)
6N 第2電極層(第二電極連通部)
8 封止部材
9 絶縁性接着部材(接着材料)
10 有機EL素子部(積層体)
14 絶縁性のフリット(接着材料)
18b フリット固定用分離溝(外側横断溝)
20 単位EL素子
65、66 バリア層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層が積層されて積層体を形成し、前記積層体が封止部材で封止された有機EL装置において、封止部材は接着材料で接着されており、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記バリア層はシリカを素材とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
第1電極層と、有機発光層と、第2電極層には溝が形成されていて複数の単位EL素子に分割されており、当該単位EL素子が電気的に直列に接続されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
第1電極層は封止部材の内側から外側に伸延しており、前記第1電極層は封止部材の内側では第2電極層と直接接続されており、封止部材の外側では第二電極連通部と電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL装置を製造する製造方法であって、前記バリア層はポリシラザン誘導体を触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化することによって形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記ポリシラザン誘導体は、毛細管現象によって接着材料の外側一部又は全部に塗布されることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項1】
基材上に第1電極層と、有機発光層と、第2電極層が積層されて積層体を形成し、前記積層体が封止部材で封止された有機EL装置において、封止部材は接着材料で接着されており、前記接着材料の外側一部又は全部をバリア層が覆っていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記バリア層はシリカを素材とすることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置。
【請求項3】
第1電極層と、有機発光層と、第2電極層には溝が形成されていて複数の単位EL素子に分割されており、当該単位EL素子が電気的に直列に接続されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL装置。
【請求項4】
第1電極層は封止部材の内側から外側に伸延しており、前記第1電極層は封止部材の内側では第2電極層と直接接続されており、封止部材の外側では第二電極連通部と電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機EL装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の有機EL装置を製造する製造方法であって、前記バリア層はポリシラザン誘導体を触媒存在下で水蒸気酸化、及び/又は空気雰囲気下で加熱酸化することによって形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記ポリシラザン誘導体は、毛細管現象によって接着材料の外側一部又は全部に塗布されることを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−164543(P2012−164543A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24602(P2011−24602)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】
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