有機EL装置及び電子機器
【課題】電極における電圧降下が抑制され、基板の大型化にも好ましく適用可能な有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】有機EL装置は、対向する電極3,5間に有機機能層6が形成されてなり、一方の電極5を帯状にセパレートするための複数のセパレータ4を有する。その一方の電極5を形成する工程は、複数のセパレータ4同士間に液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、複数のセパレータ4同士間に配置された電極材料を乾燥する工程とを含む。
【解決手段】有機EL装置は、対向する電極3,5間に有機機能層6が形成されてなり、一方の電極5を帯状にセパレートするための複数のセパレータ4を有する。その一方の電極5を形成する工程は、複数のセパレータ4同士間に液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、複数のセパレータ4同士間に配置された電極材料を乾燥する工程とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法及び有機EL装置並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話機、電子手帳等の電子機器において、情報を表示する手段として有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと称す)素子を画素に対応させて備える有機EL装置等といった表示装置が提案されている。
【0003】
このような有機EL装置の1つにパッシブマトリクス型(単純マトリクス型)の有機EL装置がある。一般的に、このパッシブマトリクス型の有機EL装置は、基板上に複数形成された所定方向に帯状に延在する第1電極と、該第1電極に対して直交する方向に帯状に複数配置された第2電極と、第1電極と第2電極との交差領域において第1電極及び第2電極に上下に挟み込まれた有機機能層とを備えている。この有機機能層は、第1電極及び第2電極に電流が流れた場合に発光する発光層を含んでおり、パッシブマトリクス型の有機EL装置は、発光層を含む有機機能層を1画素に対応させて複数備えることによって構成されている。
【0004】
ところで、このようなパッシブマトリクス型の有機EL装置の第2電極は、一般的に真空蒸着法によって形成されている。この真空蒸着法によれば、第2電極が形成される範囲同士の間に所定の厚みでセパレータを設け、基板面に対して垂直方向あるいは斜方から第2電極材料を蒸着させることによって第2電極同士をセパレートしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−87063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
帯状の電極構造を有する表示装置では、電極の延在方向における電圧降下が生じやすく、こうした電圧降下は画質のムラを招く。特に、表示装置の画面が大型化すると、1本の電極に流れる電流量が増大することから、上記傾向が強くなる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電極における電圧降下が抑制され、基板の大型化にも好ましく適用可能な有機EL装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る有機EL装置の製造方法は、対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置の製造方法であって、一方の電極を帯状にセパレートするための複数のセパレータを形成する工程と、前記複数のセパレータ同士間に液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、前記複数のセパレータ同士間に配置された前記電極材料を乾燥する工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記電極材料は、例えば、金属分散系インクである。
【0010】
このような有機EL装置の製造方法によれば、液滴吐出法を用いて電極の形成材料を配置することから帯状電極の厚膜化が容易に図られる。すなわち、液滴吐出法は一度に多量の材料配置が可能であり、しかもこの製造方法ではセパレータを壁として他の領域への材料の流出が抑制されることから、電極の厚膜化が容易である。
電極材料が金属分散系インクであると一度に多量の材料配置が可能となる。
電極の厚膜化により、この製造方法で製造された有機EL装置は、電極における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られる。したがって、この製造方法は、基板の大型化に好ましく適用される。
【0011】
上記の製造方法においては、前記電極材料を配置する工程より前に、セパレータの表面に撥液化を与える工程を有するのが好ましい。
この場合、例えば、電極材料に対するセパレータ表面の接触角が60°以上であるのが好ましい。
セパレータの表面が撥液性を有することにより、電極材料の配置の際に、複数のセパレータ同士間に電極材料が良好に流れ込み、溢れるのが防止される。そのため、電極の厚膜化をより図りやすくなる。
【0012】
また、上記の製造方法において、前記電極材料を配置する工程と、前記電極材料を乾燥する工程とを繰り返すとよい。
これにより、電極がさらに厚膜化される。
【0013】
次に、本発明の有機EL装置は、上記の有機EL装置の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
本発明の有機EL装置は、電極の厚膜化により、電極における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られ、基板の大型化に好ましく適用される。
上記の製造方法を用いて製造される本発明の有機EL装置は、例えば、次のような形態上の特徴を有する。
【0014】
本発明の有機EL装置は、対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置であって、一方の電極が複数のセパレータ同士間に帯状に形成されており、前記複数のセパレータの各頂面には導電膜が非形成状態にあることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記一方の電極は、前記複数のセパレータ同士間において隣り合う2つのセパレータの少なくとも一方に接触して形成されていてもよい。
【0016】
また、前記一方の電極は、液滴吐出法を用いて形成されたものであるのが好ましい。
【0017】
このような有機EL装置によれば、複数のセパレータの各頂面で導電膜が非形成状態であるので、複数のセパレータ同士間に形成される電極がセパレータに接触してもセパレータを介した短絡が生じにくい。そのため、複数のセパレータ同士間において、電極の厚膜化が確実に図られたものとなる。さらに、液滴吐出法を用いて電極が形成されることで、電極の厚膜化が低コストかつ容易に達成される。
【0018】
次に、本発明に係る電子機器は、上述した有機EL装置を表示手段として備えることを特徴とする。本発明の電子機器としては、例えば、ノートパソコン、携帯電話機、電子手帳、時計、ワープロなどの情報処理装置等を例示することができる。このような電子機器の表示部に本発明に係る有機EL装置を採用することにより、電極における電圧降下が抑制される結果、画質の均一化が図られた表示部を備えた電子機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の有機EL装置の平面図。
【図2】本発明の有機EL装置の内部構成図。
【図3】図1におけるI−I’矢視図。
【図4】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図5】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図6】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図7】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図8】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図9】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図10】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図11】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図12】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図13】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図14】本発明の第2実施形態を説明するための説明図。
【図15】本発明の第3実施形態を説明するための説明図。
【図16】本発明の電子機器の実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る有機EL装置及びその製造方法並びに電子機器の一実施形態について説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0021】
(第1実施形態)
図1〜図3は、本実施形態に係るパッシブマトリクス型の有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を模式的に表した模式図であり、図1は平面図、図2は有機EL装置1の内部構成図、図3は図1のI−I’の矢視図である。これらの図に示すように、本有機EL装置1は、基板2上に所定方向に短冊状(帯状)に延在する複数の第1電極(陽極)3と、第1電極の延在方向に対して直交する方向に延在する複数のカソードセパレータ(セパレータ)4と、カソードセパレータ4の下方に設置されるバンク層10と、カソードセパレータ4同士の間に形成される第2電極(陰極)5と、第1電極3と第2電極5との交差領域(発光領域)Aに第1電極3及び第2電極5に上下に挟まれた有機機能層6と、第1電極3、カソードセパレータ4、第2電極5及び有機機能層6等を缶封止するための封止部7とを主な構成要素としている。
【0022】
なお、図2において、Bは基板2上におけるカソードセパレータ4が形成される範囲であるカソードセパレータ形成領域を表しており、このカソードセパレータ形成領域Bの一端部Baの近傍には、図示するように、カソードセパレータ4同士に挟まれるように、かつ、カソードセパレータ4の両端部より基板の中心寄りに接続部8aが複数形成されている。なお、接続部8aは接続端子8の一部分をなすものであり、第2電極5と直接接続されている。また、カソードセパレータ形成領域Bは、基板2上の複数のカソードセパレータ4が形成された領域であるが、より詳しくは、カソードセパレータ4及びカソードセパレータ4間が存在する全領域のことである。
【0023】
また、第1電極3及び接続端子8は、第1電極3の一端部3a及び接続端子8の一端部8bが封止部7の外部に位置するように延在しており、第1電極3の一端部3aにはシフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路100が接続され、接続端子8の一端部8bには、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路101が接続されている。
【0024】
図3に示すように、有機機能層6は、互いに対向配置される第1電極3と第2電極5との間に挟まれた状態で配されており、第1電極3及び第2電極5に電流が流れた場合に所定の波長の光を発光する発光層61を含む。有機EL装置1は、このような発光層61を含む有機機能層が形成される発光領域Aをマトリクス状に複数備えることによって表示装置としての機能を有している。なお、本実施形態に係る有機EL装置1において、基板2及び第1電極3は透光性を有しており、発光層61から発光された光は基板2側から出射されるように構成されている。また、有機機能層6は、図示するように、バンク層10、第1電極3、及び第2電極5によって囲まれた空間内に収容されている。このため、外部から進入する水分や空気等によって有機機能層6が劣化することが防止されている。
【0025】
透光性を有する基板2の材料としては、例えばガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特に、安価なソーダガラス基板が好適に用いられる。第1電極3は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の金属酸化物からなる透光性の導電材料によって形成されており、短冊状(帯状)に形状設定され、かつ、各々が所定間隔を空けて複数形成されている。この第1電極3は、有機機能層6に正孔を注入する役割を果たす。接続端子8は、導電性を有した金属材によって形成されており、矩形状に形状設定され、かつ、図示するように、自らの端部8cがカソードセパレータ4同士の間に位置するように配置されている。
【0026】
この第1電極3及び接続端子8が形成された基板2上には、シリコン酸化膜(SiO2)からなる絶縁膜9が形成されている。そして、この絶縁膜9は、発光領域Aの第1電極3、第1電極3の端部3a近傍、接続部8a及び接続端子8の端部8b近傍が露出するようにパターニングされている。なお、絶縁膜9は、接続部8aがカソードセパレータ4の端部4a(カソードセパレータ形成領域Bの一端部Ba)より基板2の中心寄りに位置するようにパターニングされている。
【0027】
バンク層10は、接続部8aが被覆されないように、絶縁膜9上のカソードセパレータ形成領域B内に形成されている。このバンク層10は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れた有機材料からなり、発光領域Aに対応した位置に開口部10aが形成されている。また、バンク層10の厚みは、カソードセパレータ4の厚みよりも薄く、かつ、有機機能層6の厚みより厚く設定されている。
【0028】
バンク層10上に形成されるカソードセパレータ4は、ポリイミド等の感光性樹脂によって形成されており、例えば、6μmの厚みで幅方向の断面が逆テーパ状に形状設定され、かつ、各々が所定間隔を空けて複数形成されている。また、図示するように、カソードセパレータ4は、カソードセパレータ4上部の幅方向の端部4bがバンク層10の開口部10aの縁部(図3における左右方向に対応する端部)よりも発光領域Aの外側寄りに位置するように形成されている。なお、カソードセパレータ4は、例えば、カソードセパレータ4をフォトリソグラフィ技術によって形成する際にバンク層10がエッチングされないようにバンク層10とは異なった材料によって構成されている。
【0029】
有機機能層6は正孔注入/輸送層62、発光層61及び電子注入/輸送層63を積層した積層体であり、バンク層10の開口部10a内に収容されている。正孔注入/輸送層62は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物によって形成されている。この正孔注入/輸送層62は発光層61に正孔を注入すると共に正孔を正孔注入/輸送層62の内部において輸送する機能を有している。
【0030】
発光層61は、赤色(R)に発光する赤色発光層61a、緑色(G)に発光する緑色発光層61b及び青色(B)に発光する青色発光層61cの3種類を有し、各発光層61a〜61cがモザイク配置されている。発光層61の材料としては、例えば、アントラセンやピレン、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、またはこれら低分子材料に、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、DCM、DCJ、ペリノン、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ジアザインダセン誘導体等をドープして用いることができる。
【0031】
電子注入/輸送層63は、電子を発光層61に注入する機能を有すると共に、電子を電子注入/輸送層63内部において輸送する機能を有する。この電子注入/輸送層63としては、例えばリチウムキノリノールやフッ化リチウム或いはバソフェンセシウム等を好適に用いることができる。また、仕事関数が4eV以下の金属、例えばMg、Ca、Ba、Sr、Li、Na、Rb、Cs、Yb、Smなども用いることができる。
【0032】
第2電極5は、例えば、Ag膜やAl膜等の高反射率の金属膜が用いられており、発光層61から第2電極5側に発光された光を基板2側に効率的に出射させるようになっている。また、第2電極5は、複数のカソードセパレータ4同士の間において隣り合う2つのカソードセパレータ4の双方の側面4cに接触し、バンク層10の開口部10aを被覆するように形成されている。本例では、カソードセパレータ4の頂面4dにおいて導電膜が非形成状態であることから、カソードセパレータ4の側面4cあるいは頂面4dに近い位置に第2電極5が接触しても第2電極5同士の短絡が生じる可能性は低い。なお、第2電極5上には必要に応じてSiO,SiO2,SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0033】
封止部7は、基板2に塗布された封止樹脂7aと、封止缶(封止部材)7bとから構成されている。封止樹脂7aは、基板2と封止缶7bを接着する接着剤であり、例えばマイクロディスペンサ等により基板2の周囲に環状に塗布されている。この封止樹脂7aは、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。また、この封止樹脂7aには酸素や水分を通しにくい材料が用いられており、基板2と封止缶7bの間から封止缶7b内部への水又は酸素の侵入を防いで、第2電極5または発光層61の酸化を防止するようになっている。
【0034】
封止缶7bは、その内側に第1電極3、有機機能層6及び第2電極5等を収納する凹部7b1が設けられており、封止樹脂7aを介して基板2に接合されている。なお、封止缶7bの内面側には、必要に応じて、カソードセパレータ形成領域Bの外側に、酸素や水分を吸収又は除去するゲッター材を設けることができる。このゲッター材としては、例えば、Li,Na,Rb,Cs等のアルカリ金属、Be,Mg,Ca,Sr,Ba等のアルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等を好適に用いることができる。アルカリ土類金属の酸化物は、水と反応して水酸化物に変化することにより、脱水材として作用する。アルカリ金属や、アルカリ土類金属は、酸素と反応して水酸化物に変化するとともに水と反応して酸化物に変化するため、脱水材としてだけでなく脱酸素材としても作用する。これにより、有機機能層6等の酸化を防止でき、装置の信頼性を高めることができる。
【0035】
次に、本実施形態の有機EL装置1の製造方法を図面を参照して説明する。本実施形態の有機EL装置1の製造方法は、例えば、(1)第1電極形成工程、(2)絶縁膜形成工程、(3)バンク層形成工程、(4)カソードセパレータ形成工程、(5)プラズマ処理工程、(6)正孔注入/輸送層形成工程、(7)発光層形成工程、(8)電子注入/輸送層形成工程、(9)第2電極形成工程、及び(10)封止工程とを具備して構成されている。なお、製造方法はこれに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0036】
(1)第1電極形成工程
第1電極形成工程は、所定方向に短冊状(帯状)に延在する第1電極3を基板2上に複数形成する工程である。この第1電極形成工程では、図4(a),(b)に示すように、ITOやIZO等の金属酸化物からなる第1電極3をスパッタリングによって基板2上に複数形成する。これによって、短冊状の第1電極3が所定の間隔を有して複数形成され、その一方の端部3a(図4(a)における上側)は、基板2の端部2aに届くように形成される。なお、第1電極形成工程において、接続端子8も形成される。この接続端子8は、図示するように、一端部8bが基板2の端部2bに届き、他端部8cがバンク形成領域Bの端部Baよりも基板2の中心寄りに位置するように形成される。
【0037】
(2)絶縁膜形成工程
絶縁膜形成工程は、図5(a),(b)に示すように、発光領域Aの第1電極3、第1電極3の端部3a近傍、接続部8a及び接続端子8の端部8b近傍が露出するようにパターニングされた絶縁膜9を基板2、第1電極3及び接続端子8上に形成する工程である。
この絶縁膜形成工程では、テトラエトキシシランや酸素ガス等を原料としてプラズマCVD法によって絶縁膜9が形成される。なお、絶縁膜9は、接続部8aがカソードセパレータ形成領域Bの端部Baより基板2の中心寄りに位置するようにパターニングされる。
【0038】
(3)バンク層形成工程
バンク層形成工程は、図6(a),(b)に示すように、接続部8aを被覆せず、かつ、発光領域Aに対応した位置に開口部10aが形成されたバンク層10をカソードセパレータ形成領域Bに形成する工程である。このバンク層形成工程では、上述した第1電極3及び絶縁膜9が形成された基板上にアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する感光性材料(有機材料)を有機機能層6の厚み以上、かつ、カソードセパレータ4の厚み以下で塗布し、フォトリソグラフィ技術によって発光領域Aに対応した位置に開口部10aを形成する。
【0039】
(4)カソードセパレータ形成工程
カソードセパレータ形成工程は、図7(a),(b)に示すように、第1電極3の延在方向に対して直交した方向に帯状に延在する複数のカソードセパレータ4を所定の間隔で形成する工程である。このカソードセパレータ形成工程では、まず、基板2上にポリイミド等の感光性樹脂をスピンコート等によって所定の厚みで塗布する。そして、この所定の厚みで塗布されたポリイミド等の感光性樹脂をフォトリソグラフィ技術によってエッチングすることで、幅方向の断面が逆テーパ状に形状設定されたカソードセパレータ4をカソードセパレータ形成領域Bに複数形成する。なお、このようなカソードセパレータ4は、カソードセパレータ4間に接続部8aが位置するように、また、カソードセパレータ4の幅方向の端部4bがバンク層10の端部10c(縁部)よりも発光領域Aの外側寄りに位置するように形成される。なお、カソードセパレータ4の形状は逆テーパ状に限らず他の形状でもよい。
【0040】
(5)プラズマ処理工程
プラズマ処理工程では、第1電極3の表面を活性化すること、更にバンク層10及びカソードセパレータ4の表面を表面処理する事を目的として行われる。具体的には、まずO2プラズマ処理を行うことによって、露出した第1電極3(ITO)上の洗浄、更に仕事関数の調整を行うと共に、バンク層10の表面、露出した第1電極3の表面及びカソードセパレータ4の表面が親液化する。続いて、CF4プラズマ処理を行うことによってバンク層10及びカソードセパレータ4の表面を撥液化する。撥液化においては、後述する第2電極5の形成材料に対してカソードセパレータ4の表面の接触角が60°以上であるのが好ましい。
【0041】
(6)正孔注入/輸送層形成工程
正孔注入/輸送層形成工程は、露出した第1電極3上、すなわちバンク層10の開口部10a内に正孔注入/輸送層62を液滴吐出法を用いて形成する工程である。この正孔注入/輸送層形成工程では、例えば、インクジェット装置を用いることによって、正孔注入/輸送層材料を第1電極3上に吐出する。その後、乾燥処理及び熱処理を行うことによって第1電極3上に、図8(a),(b)に示すような正孔注入/輸送層62を形成する。
【0042】
このインクジェット装置は、インクジェットヘッドに備えられる吐出ノズルから1滴あたりの液量が制御された材料を吐出すると共に、吐出ノズルを基板2に対向させ、さらに吐出ノズルと基板2とを相対移動させることによって、基板2上に材料を配置するものである。この際、バンク層10の表面は上述したプラズマ処理工程によって撥液化されているので、仮に吐出ノズルから吐出された材料がバンク層の上面等に付着しても、材料は確実にバンク層10の開口部10a内に入り込む。
【0043】
(7)発光層形成工程
発光層形成工程は、図9(a),(b)、図10(a),(b)に示すように、第1電極3上に形成された正孔注入/輸送層62上に低分子材料からなる発光層61を形成する工程である。この発光層形成工程では、まず、青色発光領域Acに対応したバンク層10の開口部10a内に、例えば、インクジェット装置を用いた液滴吐出法によって青色発光層材料を吐出させることによって、図9(a),(b)に示すような青色発光層61cを形成する。続いて、赤色発光領域Aaに対応したバンク層10の開口部10a内に赤色発光層材料を吐出させることによって赤色発光層61aを形成し、緑色発光領域Abに対応したバンク層10の開口部10aに緑色発光層材料を吐出させることによって、緑色発光層61bを形成する(図10(a),(b)参照)。
【0044】
(8)電子注入/輸送層形成工程
電子注入/輸送層形成工程は、図11(a),(b)に示すように、発光層61上に電子注入/輸送層63を形成する工程である。この電子注入/輸送層形成工程では、例えば、インクジェット装置を用いた液滴吐出法によって電子注入/輸送層材料を発光層61上に吐出することによって、電子注入/輸送層63を形成する。なお、正孔注入/輸送層形成工程、発光層形成工程及び電子注入/輸送層形成工程を合わせた工程が、有機機能層形成工程である。
【0045】
このように、正孔注入/輸送層62、発光層61及び電子注入/輸送層63の積層体である有機機能層6は、その材料が液滴吐出法によってバンク層10に形成された開口部10a内に吐出されることによって形成される。このため、有機機能層6がカソードセパレータ4の側面部に沿って盛り上がることを防止することが可能となる。
【0046】
(9)第2電極形成工程
第2電極形成工程は、図12及び図13(a),(b)に示すように、隣り合うカソードセパレータ4同士の間に第2電極5を形成する工程であり、電極材料を配置する工程と、配置された電極材料を乾燥する工程とを含む。電極材料を配置する工程では、インクジェット装置を用いた液滴吐出法によって第2電極5の形成材料を電子注入/輸送層63上に配置する。
【0047】
インクジェット装置は、図12に示すように、インクジェットヘッドに備えられる吐出ノズルから1滴あたりの液量が制御された電極材料5aを吐出すると共に、吐出ノズルを基板2に対向させ、さらに吐出ノズルと基板2とを相対移動させることによって、基板2上に電極材料を配置するものである。この際、カソードセパレータ4の表面は上述したプラズマ処理工程によって撥液化されているので、仮に吐出ノズルから吐出された材料がカソードセパレータ4の頂面4d等に付着しても、材料は確実に隣り合うカソードセパレータ4同士の間に入り込む。なお、隣り合うカソードセパレータ4の間に配置される材料の図13(a)の左右方向への流れをせき止めるための壁を基板2上に予め設けておいてもよい。
【0048】
液滴出方式としては、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式、液体材料を加熱し発生した泡(バブル)により液体材料を吐出させるバブル方式等、公知の種々の技術を適用できる。このうち、ピエゾ方式は、液体材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。なお、本例では、上記ピエゾ方式を用いる。
【0049】
第2電極5の形成材料としては、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液(金属分散系インク、本例ではAg分散インク)を用いる。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えばキシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。導電性微粒子を含有する液体の分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物、極性化合物、水などを挙げることができる。これらの分散媒は、室温での蒸気圧、粘度、分散質濃度、表面張力などが管理され、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。なお、表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を不当に低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。また、上記分散液は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでいてもよい。
【0050】
また、電極材料の塗布膜を乾燥(あるいは焼成)させる技術としては、加熱炉(ベーク炉)内に基板を配置して塗布膜を加熱乾燥させる炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に基板を搭載しそのプレートを介して塗布膜を加熱乾燥させるホットプレート方式、密閉可能なチャンバ内に基板を配置してチャンバ内を減圧し、塗布膜を減圧乾燥させる減圧方式などが用いられる。
【0051】
これらにより、図13(a),(b)に示すように、第2電極5が、隣り合う2つのカソードセパレータ4の双方の側面4cに接触し、有機機能層6及びバンク層10の開口部10aを被覆するように形成される。この第2電極5は、液滴吐出法を用いて形成材料が配置されたものであり厚膜化が図られたものとなる。また、有機機能層6は、バンク層10の開口部10aの側面部10b、第1電極3及び第2電極5に囲まれた空間内に収容される。よって、外部から侵入してきた水分や空気等から有機機能層6を保護できるので、有機機能層6の劣化を防止でき、結果、良好な発光寿命を得ることが可能となる。
【0052】
(10)封止工程
最後に、上述した工程によって第1電極3、有機機能層6及び第2電極5等が形成された基板2と封止缶7bとを封止樹脂7aを介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂7aを基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止缶7bを配置する(図3参照)。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、第2電極5にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が第2電極5に侵入して第2電極5が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0053】
この後、基板2上あるいは外部に設けられるデータ側駆動回路100基板2と第1電極3とを接続すると共に、基板2上あるいは外部に設けられる走査側駆動回路101と第2電極5とを接続することによって、本実施形態の有機EL装置1が完成する。
【0054】
このような有機EL装置1によれば、液滴吐出法を用いて第2電極5の形成材料が配置されることから、第2電極5の厚膜化が図られる。すなわち、本例では、カソードセパレータ4を壁として液滴吐出法により一度に多量の電極材料が配置され、その結果、第2電極5が厚膜化される。第2電極5の厚膜化により、この有機EL装置1では、第2電極5における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られたものとなる。
なお、電極材料の配置は、液滴吐出法に限らず、スクリーン印刷法や、オフセット印刷法を用いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、発光層61として低分子系の材料を用いたが、高分子系の材料を用いても良い。なお、高分子系の発光層材料としては、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン係色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本有機EL装置の第2実施形態について図14を用いて説明する。
本実施形態においては、図14に示すように、第2電極5が複数の膜(第1膜5a、第2膜5a)による積層構造からなる。このような有機EL装置1を製造する場合には、第2電極5の形成工程において、液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、配置された電極材料を乾燥する工程とを繰り返す(本例では2度繰り返す)。このように構成された有機EL装置1においては、第1実施形態に比べてさらに第2電極5の厚膜化がなされることから、第2電極5における電圧降下がより確実に抑制される。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本有機EL装置の第3実施形態について図15を用いて説明する。
図15に示すように、本例の有機EL装置11は、配線基板20と、有機EL基板(発光素子基板)30とをSUFTLA(Surface Free Technology by Laser Ablation)(登録商標)と呼ばれる転写技術を用いて接合した構成となっている。なお、上記転写技術については、例えば、特開平10−125929号公報、特開平10−125930号公報、特開平10−125931号公報等に記載されている。
【0058】
配線基板20は、多層基板21と、多層基板21に形成された所定形状の配線パターン22と、配線パターン22に接続された回路部(IC)23と、有機EL素子31を駆動させるTFT(スイッチング素子)24と、TFT24と配線パターン22とを接合するTFT接続部25と、有機EL素子31と配線パターン22とを接合する有機EL接続部26とによって構成されている。
ここで、TFT接続部25は、TFT24の端子パターンに応じて形成されるものであり、例えば、無電解メッキ処理等によって形成されたバンプ(導電性突起部)25aと、バンプ25a上に配置される接合材25bとから構成される。
有機EL基板30は、発光光が透過する透明基板32と、ITO等の透明金属からなる第1電極(陽極)33と、有機機能層(正孔注入/輸送層34、発光層35)と、第2電極(陰極)36と、カソードセパレータ37とを含んで構成されている。発光層35と第2電極36との間に電子注入/輸送層を形成してもよい。
さらに、配線基板20と有機EL基板30との間には、封止ペースト38が充填されているとともに、有機EL接続部26及び陰極36間を電気的に導通させる導電性ペースト39が設けられている。
【0059】
本実施形態では、液滴吐出法を用いて第2電極36の形成材料が配置され、第2電極5の厚膜化が図られている。すなわち、本例では、カソードセパレータ37を壁として液滴吐出法により一度に多量の電極材料が配置され、その結果、第2電極36が厚膜化されている。第2電極5の厚膜化により、この有機EL装置11においても、第2電極36における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られたものとなる。
【0060】
(第4実施形態)
図16は、本発明の電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、先の図1から図3に示した有機EL装置1を表示手段として搭載している。図16は、携帯電話の一例を示した斜視図で、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。このように本発明に係る電子機器は、電極における電圧降下が抑制される結果、画質の均一化が図られた表示部を備えた電子機器を提供することが可能となる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
1…有機EL装置、2…基板、3…第1電極、4…カソードセパレータ(セパレータ)、5…第2電極、6…有機機能層、7…封止部、8…接続端子、9…絶縁膜、10…バンク層、10a…開口部、A…発光領域、B……カソードセパレータ形成領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置の製造方法及び有機EL装置並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話機、電子手帳等の電子機器において、情報を表示する手段として有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと称す)素子を画素に対応させて備える有機EL装置等といった表示装置が提案されている。
【0003】
このような有機EL装置の1つにパッシブマトリクス型(単純マトリクス型)の有機EL装置がある。一般的に、このパッシブマトリクス型の有機EL装置は、基板上に複数形成された所定方向に帯状に延在する第1電極と、該第1電極に対して直交する方向に帯状に複数配置された第2電極と、第1電極と第2電極との交差領域において第1電極及び第2電極に上下に挟み込まれた有機機能層とを備えている。この有機機能層は、第1電極及び第2電極に電流が流れた場合に発光する発光層を含んでおり、パッシブマトリクス型の有機EL装置は、発光層を含む有機機能層を1画素に対応させて複数備えることによって構成されている。
【0004】
ところで、このようなパッシブマトリクス型の有機EL装置の第2電極は、一般的に真空蒸着法によって形成されている。この真空蒸着法によれば、第2電極が形成される範囲同士の間に所定の厚みでセパレータを設け、基板面に対して垂直方向あるいは斜方から第2電極材料を蒸着させることによって第2電極同士をセパレートしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−87063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
帯状の電極構造を有する表示装置では、電極の延在方向における電圧降下が生じやすく、こうした電圧降下は画質のムラを招く。特に、表示装置の画面が大型化すると、1本の電極に流れる電流量が増大することから、上記傾向が強くなる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、電極における電圧降下が抑制され、基板の大型化にも好ましく適用可能な有機EL装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る有機EL装置の製造方法は、対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置の製造方法であって、一方の電極を帯状にセパレートするための複数のセパレータを形成する工程と、前記複数のセパレータ同士間に液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、前記複数のセパレータ同士間に配置された前記電極材料を乾燥する工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、前記電極材料は、例えば、金属分散系インクである。
【0010】
このような有機EL装置の製造方法によれば、液滴吐出法を用いて電極の形成材料を配置することから帯状電極の厚膜化が容易に図られる。すなわち、液滴吐出法は一度に多量の材料配置が可能であり、しかもこの製造方法ではセパレータを壁として他の領域への材料の流出が抑制されることから、電極の厚膜化が容易である。
電極材料が金属分散系インクであると一度に多量の材料配置が可能となる。
電極の厚膜化により、この製造方法で製造された有機EL装置は、電極における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られる。したがって、この製造方法は、基板の大型化に好ましく適用される。
【0011】
上記の製造方法においては、前記電極材料を配置する工程より前に、セパレータの表面に撥液化を与える工程を有するのが好ましい。
この場合、例えば、電極材料に対するセパレータ表面の接触角が60°以上であるのが好ましい。
セパレータの表面が撥液性を有することにより、電極材料の配置の際に、複数のセパレータ同士間に電極材料が良好に流れ込み、溢れるのが防止される。そのため、電極の厚膜化をより図りやすくなる。
【0012】
また、上記の製造方法において、前記電極材料を配置する工程と、前記電極材料を乾燥する工程とを繰り返すとよい。
これにより、電極がさらに厚膜化される。
【0013】
次に、本発明の有機EL装置は、上記の有機EL装置の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
本発明の有機EL装置は、電極の厚膜化により、電極における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られ、基板の大型化に好ましく適用される。
上記の製造方法を用いて製造される本発明の有機EL装置は、例えば、次のような形態上の特徴を有する。
【0014】
本発明の有機EL装置は、対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置であって、一方の電極が複数のセパレータ同士間に帯状に形成されており、前記複数のセパレータの各頂面には導電膜が非形成状態にあることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記一方の電極は、前記複数のセパレータ同士間において隣り合う2つのセパレータの少なくとも一方に接触して形成されていてもよい。
【0016】
また、前記一方の電極は、液滴吐出法を用いて形成されたものであるのが好ましい。
【0017】
このような有機EL装置によれば、複数のセパレータの各頂面で導電膜が非形成状態であるので、複数のセパレータ同士間に形成される電極がセパレータに接触してもセパレータを介した短絡が生じにくい。そのため、複数のセパレータ同士間において、電極の厚膜化が確実に図られたものとなる。さらに、液滴吐出法を用いて電極が形成されることで、電極の厚膜化が低コストかつ容易に達成される。
【0018】
次に、本発明に係る電子機器は、上述した有機EL装置を表示手段として備えることを特徴とする。本発明の電子機器としては、例えば、ノートパソコン、携帯電話機、電子手帳、時計、ワープロなどの情報処理装置等を例示することができる。このような電子機器の表示部に本発明に係る有機EL装置を採用することにより、電極における電圧降下が抑制される結果、画質の均一化が図られた表示部を備えた電子機器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の有機EL装置の平面図。
【図2】本発明の有機EL装置の内部構成図。
【図3】図1におけるI−I’矢視図。
【図4】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図5】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図6】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図7】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図8】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図9】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図10】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図11】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図12】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図13】有機EL装置の製造方法を説明するための説明図。
【図14】本発明の第2実施形態を説明するための説明図。
【図15】本発明の第3実施形態を説明するための説明図。
【図16】本発明の電子機器の実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る有機EL装置及びその製造方法並びに電子機器の一実施形態について説明する。なお、参照する各図において、図面上で認識可能な大きさとするために縮尺は各層や各部材ごとに異なる場合がある。
【0021】
(第1実施形態)
図1〜図3は、本実施形態に係るパッシブマトリクス型の有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を模式的に表した模式図であり、図1は平面図、図2は有機EL装置1の内部構成図、図3は図1のI−I’の矢視図である。これらの図に示すように、本有機EL装置1は、基板2上に所定方向に短冊状(帯状)に延在する複数の第1電極(陽極)3と、第1電極の延在方向に対して直交する方向に延在する複数のカソードセパレータ(セパレータ)4と、カソードセパレータ4の下方に設置されるバンク層10と、カソードセパレータ4同士の間に形成される第2電極(陰極)5と、第1電極3と第2電極5との交差領域(発光領域)Aに第1電極3及び第2電極5に上下に挟まれた有機機能層6と、第1電極3、カソードセパレータ4、第2電極5及び有機機能層6等を缶封止するための封止部7とを主な構成要素としている。
【0022】
なお、図2において、Bは基板2上におけるカソードセパレータ4が形成される範囲であるカソードセパレータ形成領域を表しており、このカソードセパレータ形成領域Bの一端部Baの近傍には、図示するように、カソードセパレータ4同士に挟まれるように、かつ、カソードセパレータ4の両端部より基板の中心寄りに接続部8aが複数形成されている。なお、接続部8aは接続端子8の一部分をなすものであり、第2電極5と直接接続されている。また、カソードセパレータ形成領域Bは、基板2上の複数のカソードセパレータ4が形成された領域であるが、より詳しくは、カソードセパレータ4及びカソードセパレータ4間が存在する全領域のことである。
【0023】
また、第1電極3及び接続端子8は、第1電極3の一端部3a及び接続端子8の一端部8bが封止部7の外部に位置するように延在しており、第1電極3の一端部3aにはシフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路100が接続され、接続端子8の一端部8bには、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路101が接続されている。
【0024】
図3に示すように、有機機能層6は、互いに対向配置される第1電極3と第2電極5との間に挟まれた状態で配されており、第1電極3及び第2電極5に電流が流れた場合に所定の波長の光を発光する発光層61を含む。有機EL装置1は、このような発光層61を含む有機機能層が形成される発光領域Aをマトリクス状に複数備えることによって表示装置としての機能を有している。なお、本実施形態に係る有機EL装置1において、基板2及び第1電極3は透光性を有しており、発光層61から発光された光は基板2側から出射されるように構成されている。また、有機機能層6は、図示するように、バンク層10、第1電極3、及び第2電極5によって囲まれた空間内に収容されている。このため、外部から進入する水分や空気等によって有機機能層6が劣化することが防止されている。
【0025】
透光性を有する基板2の材料としては、例えばガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特に、安価なソーダガラス基板が好適に用いられる。第1電極3は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の金属酸化物からなる透光性の導電材料によって形成されており、短冊状(帯状)に形状設定され、かつ、各々が所定間隔を空けて複数形成されている。この第1電極3は、有機機能層6に正孔を注入する役割を果たす。接続端子8は、導電性を有した金属材によって形成されており、矩形状に形状設定され、かつ、図示するように、自らの端部8cがカソードセパレータ4同士の間に位置するように配置されている。
【0026】
この第1電極3及び接続端子8が形成された基板2上には、シリコン酸化膜(SiO2)からなる絶縁膜9が形成されている。そして、この絶縁膜9は、発光領域Aの第1電極3、第1電極3の端部3a近傍、接続部8a及び接続端子8の端部8b近傍が露出するようにパターニングされている。なお、絶縁膜9は、接続部8aがカソードセパレータ4の端部4a(カソードセパレータ形成領域Bの一端部Ba)より基板2の中心寄りに位置するようにパターニングされている。
【0027】
バンク層10は、接続部8aが被覆されないように、絶縁膜9上のカソードセパレータ形成領域B内に形成されている。このバンク層10は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れた有機材料からなり、発光領域Aに対応した位置に開口部10aが形成されている。また、バンク層10の厚みは、カソードセパレータ4の厚みよりも薄く、かつ、有機機能層6の厚みより厚く設定されている。
【0028】
バンク層10上に形成されるカソードセパレータ4は、ポリイミド等の感光性樹脂によって形成されており、例えば、6μmの厚みで幅方向の断面が逆テーパ状に形状設定され、かつ、各々が所定間隔を空けて複数形成されている。また、図示するように、カソードセパレータ4は、カソードセパレータ4上部の幅方向の端部4bがバンク層10の開口部10aの縁部(図3における左右方向に対応する端部)よりも発光領域Aの外側寄りに位置するように形成されている。なお、カソードセパレータ4は、例えば、カソードセパレータ4をフォトリソグラフィ技術によって形成する際にバンク層10がエッチングされないようにバンク層10とは異なった材料によって構成されている。
【0029】
有機機能層6は正孔注入/輸送層62、発光層61及び電子注入/輸送層63を積層した積層体であり、バンク層10の開口部10a内に収容されている。正孔注入/輸送層62は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物によって形成されている。この正孔注入/輸送層62は発光層61に正孔を注入すると共に正孔を正孔注入/輸送層62の内部において輸送する機能を有している。
【0030】
発光層61は、赤色(R)に発光する赤色発光層61a、緑色(G)に発光する緑色発光層61b及び青色(B)に発光する青色発光層61cの3種類を有し、各発光層61a〜61cがモザイク配置されている。発光層61の材料としては、例えば、アントラセンやピレン、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、またはこれら低分子材料に、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、DCM、DCJ、ペリノン、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ジアザインダセン誘導体等をドープして用いることができる。
【0031】
電子注入/輸送層63は、電子を発光層61に注入する機能を有すると共に、電子を電子注入/輸送層63内部において輸送する機能を有する。この電子注入/輸送層63としては、例えばリチウムキノリノールやフッ化リチウム或いはバソフェンセシウム等を好適に用いることができる。また、仕事関数が4eV以下の金属、例えばMg、Ca、Ba、Sr、Li、Na、Rb、Cs、Yb、Smなども用いることができる。
【0032】
第2電極5は、例えば、Ag膜やAl膜等の高反射率の金属膜が用いられており、発光層61から第2電極5側に発光された光を基板2側に効率的に出射させるようになっている。また、第2電極5は、複数のカソードセパレータ4同士の間において隣り合う2つのカソードセパレータ4の双方の側面4cに接触し、バンク層10の開口部10aを被覆するように形成されている。本例では、カソードセパレータ4の頂面4dにおいて導電膜が非形成状態であることから、カソードセパレータ4の側面4cあるいは頂面4dに近い位置に第2電極5が接触しても第2電極5同士の短絡が生じる可能性は低い。なお、第2電極5上には必要に応じてSiO,SiO2,SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0033】
封止部7は、基板2に塗布された封止樹脂7aと、封止缶(封止部材)7bとから構成されている。封止樹脂7aは、基板2と封止缶7bを接着する接着剤であり、例えばマイクロディスペンサ等により基板2の周囲に環状に塗布されている。この封止樹脂7aは、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。また、この封止樹脂7aには酸素や水分を通しにくい材料が用いられており、基板2と封止缶7bの間から封止缶7b内部への水又は酸素の侵入を防いで、第2電極5または発光層61の酸化を防止するようになっている。
【0034】
封止缶7bは、その内側に第1電極3、有機機能層6及び第2電極5等を収納する凹部7b1が設けられており、封止樹脂7aを介して基板2に接合されている。なお、封止缶7bの内面側には、必要に応じて、カソードセパレータ形成領域Bの外側に、酸素や水分を吸収又は除去するゲッター材を設けることができる。このゲッター材としては、例えば、Li,Na,Rb,Cs等のアルカリ金属、Be,Mg,Ca,Sr,Ba等のアルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等を好適に用いることができる。アルカリ土類金属の酸化物は、水と反応して水酸化物に変化することにより、脱水材として作用する。アルカリ金属や、アルカリ土類金属は、酸素と反応して水酸化物に変化するとともに水と反応して酸化物に変化するため、脱水材としてだけでなく脱酸素材としても作用する。これにより、有機機能層6等の酸化を防止でき、装置の信頼性を高めることができる。
【0035】
次に、本実施形態の有機EL装置1の製造方法を図面を参照して説明する。本実施形態の有機EL装置1の製造方法は、例えば、(1)第1電極形成工程、(2)絶縁膜形成工程、(3)バンク層形成工程、(4)カソードセパレータ形成工程、(5)プラズマ処理工程、(6)正孔注入/輸送層形成工程、(7)発光層形成工程、(8)電子注入/輸送層形成工程、(9)第2電極形成工程、及び(10)封止工程とを具備して構成されている。なお、製造方法はこれに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0036】
(1)第1電極形成工程
第1電極形成工程は、所定方向に短冊状(帯状)に延在する第1電極3を基板2上に複数形成する工程である。この第1電極形成工程では、図4(a),(b)に示すように、ITOやIZO等の金属酸化物からなる第1電極3をスパッタリングによって基板2上に複数形成する。これによって、短冊状の第1電極3が所定の間隔を有して複数形成され、その一方の端部3a(図4(a)における上側)は、基板2の端部2aに届くように形成される。なお、第1電極形成工程において、接続端子8も形成される。この接続端子8は、図示するように、一端部8bが基板2の端部2bに届き、他端部8cがバンク形成領域Bの端部Baよりも基板2の中心寄りに位置するように形成される。
【0037】
(2)絶縁膜形成工程
絶縁膜形成工程は、図5(a),(b)に示すように、発光領域Aの第1電極3、第1電極3の端部3a近傍、接続部8a及び接続端子8の端部8b近傍が露出するようにパターニングされた絶縁膜9を基板2、第1電極3及び接続端子8上に形成する工程である。
この絶縁膜形成工程では、テトラエトキシシランや酸素ガス等を原料としてプラズマCVD法によって絶縁膜9が形成される。なお、絶縁膜9は、接続部8aがカソードセパレータ形成領域Bの端部Baより基板2の中心寄りに位置するようにパターニングされる。
【0038】
(3)バンク層形成工程
バンク層形成工程は、図6(a),(b)に示すように、接続部8aを被覆せず、かつ、発光領域Aに対応した位置に開口部10aが形成されたバンク層10をカソードセパレータ形成領域Bに形成する工程である。このバンク層形成工程では、上述した第1電極3及び絶縁膜9が形成された基板上にアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する感光性材料(有機材料)を有機機能層6の厚み以上、かつ、カソードセパレータ4の厚み以下で塗布し、フォトリソグラフィ技術によって発光領域Aに対応した位置に開口部10aを形成する。
【0039】
(4)カソードセパレータ形成工程
カソードセパレータ形成工程は、図7(a),(b)に示すように、第1電極3の延在方向に対して直交した方向に帯状に延在する複数のカソードセパレータ4を所定の間隔で形成する工程である。このカソードセパレータ形成工程では、まず、基板2上にポリイミド等の感光性樹脂をスピンコート等によって所定の厚みで塗布する。そして、この所定の厚みで塗布されたポリイミド等の感光性樹脂をフォトリソグラフィ技術によってエッチングすることで、幅方向の断面が逆テーパ状に形状設定されたカソードセパレータ4をカソードセパレータ形成領域Bに複数形成する。なお、このようなカソードセパレータ4は、カソードセパレータ4間に接続部8aが位置するように、また、カソードセパレータ4の幅方向の端部4bがバンク層10の端部10c(縁部)よりも発光領域Aの外側寄りに位置するように形成される。なお、カソードセパレータ4の形状は逆テーパ状に限らず他の形状でもよい。
【0040】
(5)プラズマ処理工程
プラズマ処理工程では、第1電極3の表面を活性化すること、更にバンク層10及びカソードセパレータ4の表面を表面処理する事を目的として行われる。具体的には、まずO2プラズマ処理を行うことによって、露出した第1電極3(ITO)上の洗浄、更に仕事関数の調整を行うと共に、バンク層10の表面、露出した第1電極3の表面及びカソードセパレータ4の表面が親液化する。続いて、CF4プラズマ処理を行うことによってバンク層10及びカソードセパレータ4の表面を撥液化する。撥液化においては、後述する第2電極5の形成材料に対してカソードセパレータ4の表面の接触角が60°以上であるのが好ましい。
【0041】
(6)正孔注入/輸送層形成工程
正孔注入/輸送層形成工程は、露出した第1電極3上、すなわちバンク層10の開口部10a内に正孔注入/輸送層62を液滴吐出法を用いて形成する工程である。この正孔注入/輸送層形成工程では、例えば、インクジェット装置を用いることによって、正孔注入/輸送層材料を第1電極3上に吐出する。その後、乾燥処理及び熱処理を行うことによって第1電極3上に、図8(a),(b)に示すような正孔注入/輸送層62を形成する。
【0042】
このインクジェット装置は、インクジェットヘッドに備えられる吐出ノズルから1滴あたりの液量が制御された材料を吐出すると共に、吐出ノズルを基板2に対向させ、さらに吐出ノズルと基板2とを相対移動させることによって、基板2上に材料を配置するものである。この際、バンク層10の表面は上述したプラズマ処理工程によって撥液化されているので、仮に吐出ノズルから吐出された材料がバンク層の上面等に付着しても、材料は確実にバンク層10の開口部10a内に入り込む。
【0043】
(7)発光層形成工程
発光層形成工程は、図9(a),(b)、図10(a),(b)に示すように、第1電極3上に形成された正孔注入/輸送層62上に低分子材料からなる発光層61を形成する工程である。この発光層形成工程では、まず、青色発光領域Acに対応したバンク層10の開口部10a内に、例えば、インクジェット装置を用いた液滴吐出法によって青色発光層材料を吐出させることによって、図9(a),(b)に示すような青色発光層61cを形成する。続いて、赤色発光領域Aaに対応したバンク層10の開口部10a内に赤色発光層材料を吐出させることによって赤色発光層61aを形成し、緑色発光領域Abに対応したバンク層10の開口部10aに緑色発光層材料を吐出させることによって、緑色発光層61bを形成する(図10(a),(b)参照)。
【0044】
(8)電子注入/輸送層形成工程
電子注入/輸送層形成工程は、図11(a),(b)に示すように、発光層61上に電子注入/輸送層63を形成する工程である。この電子注入/輸送層形成工程では、例えば、インクジェット装置を用いた液滴吐出法によって電子注入/輸送層材料を発光層61上に吐出することによって、電子注入/輸送層63を形成する。なお、正孔注入/輸送層形成工程、発光層形成工程及び電子注入/輸送層形成工程を合わせた工程が、有機機能層形成工程である。
【0045】
このように、正孔注入/輸送層62、発光層61及び電子注入/輸送層63の積層体である有機機能層6は、その材料が液滴吐出法によってバンク層10に形成された開口部10a内に吐出されることによって形成される。このため、有機機能層6がカソードセパレータ4の側面部に沿って盛り上がることを防止することが可能となる。
【0046】
(9)第2電極形成工程
第2電極形成工程は、図12及び図13(a),(b)に示すように、隣り合うカソードセパレータ4同士の間に第2電極5を形成する工程であり、電極材料を配置する工程と、配置された電極材料を乾燥する工程とを含む。電極材料を配置する工程では、インクジェット装置を用いた液滴吐出法によって第2電極5の形成材料を電子注入/輸送層63上に配置する。
【0047】
インクジェット装置は、図12に示すように、インクジェットヘッドに備えられる吐出ノズルから1滴あたりの液量が制御された電極材料5aを吐出すると共に、吐出ノズルを基板2に対向させ、さらに吐出ノズルと基板2とを相対移動させることによって、基板2上に電極材料を配置するものである。この際、カソードセパレータ4の表面は上述したプラズマ処理工程によって撥液化されているので、仮に吐出ノズルから吐出された材料がカソードセパレータ4の頂面4d等に付着しても、材料は確実に隣り合うカソードセパレータ4同士の間に入り込む。なお、隣り合うカソードセパレータ4の間に配置される材料の図13(a)の左右方向への流れをせき止めるための壁を基板2上に予め設けておいてもよい。
【0048】
液滴出方式としては、圧電体素子としてのピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式、液体材料を加熱し発生した泡(バブル)により液体材料を吐出させるバブル方式等、公知の種々の技術を適用できる。このうち、ピエゾ方式は、液体材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。なお、本例では、上記ピエゾ方式を用いる。
【0049】
第2電極5の形成材料としては、導電性微粒子を分散媒に分散させた分散液(金属分散系インク、本例ではAg分散インク)を用いる。ここで用いられる導電性微粒子は、金、銀、銅、パラジウム、及びニッケルのうちのいずれかを含有する金属微粒子の他、導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は、分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の表面にコーティングするコーティング材としては、例えばキシレン、トルエン等の有機溶剤やクエン酸等が挙げられる。導電性微粒子を含有する液体の分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されないが、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物、極性化合物、水などを挙げることができる。これらの分散媒は、室温での蒸気圧、粘度、分散質濃度、表面張力などが管理され、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。なお、表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を不当に低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。また、上記分散液は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでいてもよい。
【0050】
また、電極材料の塗布膜を乾燥(あるいは焼成)させる技術としては、加熱炉(ベーク炉)内に基板を配置して塗布膜を加熱乾燥させる炉内ベーク方式、プレート(ホットプレート)上に基板を搭載しそのプレートを介して塗布膜を加熱乾燥させるホットプレート方式、密閉可能なチャンバ内に基板を配置してチャンバ内を減圧し、塗布膜を減圧乾燥させる減圧方式などが用いられる。
【0051】
これらにより、図13(a),(b)に示すように、第2電極5が、隣り合う2つのカソードセパレータ4の双方の側面4cに接触し、有機機能層6及びバンク層10の開口部10aを被覆するように形成される。この第2電極5は、液滴吐出法を用いて形成材料が配置されたものであり厚膜化が図られたものとなる。また、有機機能層6は、バンク層10の開口部10aの側面部10b、第1電極3及び第2電極5に囲まれた空間内に収容される。よって、外部から侵入してきた水分や空気等から有機機能層6を保護できるので、有機機能層6の劣化を防止でき、結果、良好な発光寿命を得ることが可能となる。
【0052】
(10)封止工程
最後に、上述した工程によって第1電極3、有機機能層6及び第2電極5等が形成された基板2と封止缶7bとを封止樹脂7aを介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂7aを基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止缶7bを配置する(図3参照)。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、第2電極5にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が第2電極5に侵入して第2電極5が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0053】
この後、基板2上あるいは外部に設けられるデータ側駆動回路100基板2と第1電極3とを接続すると共に、基板2上あるいは外部に設けられる走査側駆動回路101と第2電極5とを接続することによって、本実施形態の有機EL装置1が完成する。
【0054】
このような有機EL装置1によれば、液滴吐出法を用いて第2電極5の形成材料が配置されることから、第2電極5の厚膜化が図られる。すなわち、本例では、カソードセパレータ4を壁として液滴吐出法により一度に多量の電極材料が配置され、その結果、第2電極5が厚膜化される。第2電極5の厚膜化により、この有機EL装置1では、第2電極5における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られたものとなる。
なお、電極材料の配置は、液滴吐出法に限らず、スクリーン印刷法や、オフセット印刷法を用いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態において、発光層61として低分子系の材料を用いたが、高分子系の材料を用いても良い。なお、高分子系の発光層材料としては、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン係色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本有機EL装置の第2実施形態について図14を用いて説明する。
本実施形態においては、図14に示すように、第2電極5が複数の膜(第1膜5a、第2膜5a)による積層構造からなる。このような有機EL装置1を製造する場合には、第2電極5の形成工程において、液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、配置された電極材料を乾燥する工程とを繰り返す(本例では2度繰り返す)。このように構成された有機EL装置1においては、第1実施形態に比べてさらに第2電極5の厚膜化がなされることから、第2電極5における電圧降下がより確実に抑制される。
【0057】
(第3実施形態)
次に、本有機EL装置の第3実施形態について図15を用いて説明する。
図15に示すように、本例の有機EL装置11は、配線基板20と、有機EL基板(発光素子基板)30とをSUFTLA(Surface Free Technology by Laser Ablation)(登録商標)と呼ばれる転写技術を用いて接合した構成となっている。なお、上記転写技術については、例えば、特開平10−125929号公報、特開平10−125930号公報、特開平10−125931号公報等に記載されている。
【0058】
配線基板20は、多層基板21と、多層基板21に形成された所定形状の配線パターン22と、配線パターン22に接続された回路部(IC)23と、有機EL素子31を駆動させるTFT(スイッチング素子)24と、TFT24と配線パターン22とを接合するTFT接続部25と、有機EL素子31と配線パターン22とを接合する有機EL接続部26とによって構成されている。
ここで、TFT接続部25は、TFT24の端子パターンに応じて形成されるものであり、例えば、無電解メッキ処理等によって形成されたバンプ(導電性突起部)25aと、バンプ25a上に配置される接合材25bとから構成される。
有機EL基板30は、発光光が透過する透明基板32と、ITO等の透明金属からなる第1電極(陽極)33と、有機機能層(正孔注入/輸送層34、発光層35)と、第2電極(陰極)36と、カソードセパレータ37とを含んで構成されている。発光層35と第2電極36との間に電子注入/輸送層を形成してもよい。
さらに、配線基板20と有機EL基板30との間には、封止ペースト38が充填されているとともに、有機EL接続部26及び陰極36間を電気的に導通させる導電性ペースト39が設けられている。
【0059】
本実施形態では、液滴吐出法を用いて第2電極36の形成材料が配置され、第2電極5の厚膜化が図られている。すなわち、本例では、カソードセパレータ37を壁として液滴吐出法により一度に多量の電極材料が配置され、その結果、第2電極36が厚膜化されている。第2電極5の厚膜化により、この有機EL装置11においても、第2電極36における電圧降下が抑制され、画質の均一化が図られたものとなる。
【0060】
(第4実施形態)
図16は、本発明の電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、先の図1から図3に示した有機EL装置1を表示手段として搭載している。図16は、携帯電話の一例を示した斜視図で、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記の有機EL装置1を用いた表示部を示している。このように本発明に係る電子機器は、電極における電圧降下が抑制される結果、画質の均一化が図られた表示部を備えた電子機器を提供することが可能となる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
1…有機EL装置、2…基板、3…第1電極、4…カソードセパレータ(セパレータ)、5…第2電極、6…有機機能層、7…封止部、8…接続端子、9…絶縁膜、10…バンク層、10a…開口部、A…発光領域、B……カソードセパレータ形成領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置の製造方法であって、
一方の電極を帯状にセパレートするための複数のセパレータを形成する工程と、
前記複数のセパレータ同士間に液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、
前記複数のセパレータ同士間に配置された前記電極材料を乾燥する工程と、を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
前記電極材料は、金属分散系インクであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
前記電極材料を配置する工程より前に、セパレータの表面に撥液化を与える工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
前記電極材料を配置する工程と、前記電極材料を乾燥する工程とを繰り返すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする有機EL装置。
【請求項6】
対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置であって、
一方の電極が複数のセパレータ同士間に帯状に形成されており、
前記複数のセパレータの各頂面には導電膜が非形成状態にあることを特徴とする有機EL装置。
【請求項7】
前記一方の電極は、前記複数のセパレータ同士間において隣り合う2つのセパレータの少なくとも一方に接触して形成されていることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記一方の電極は、液滴吐出法を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の有機EL装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8のうちのいずれかに記載の有機EL装置を表示装置として備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置の製造方法であって、
一方の電極を帯状にセパレートするための複数のセパレータを形成する工程と、
前記複数のセパレータ同士間に液滴吐出法により電極材料を配置する工程と、
前記複数のセパレータ同士間に配置された前記電極材料を乾燥する工程と、を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項2】
前記電極材料は、金属分散系インクであることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
前記電極材料を配置する工程より前に、セパレータの表面に撥液化を与える工程を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
前記電極材料を配置する工程と、前記電極材料を乾燥する工程とを繰り返すことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の有機EL装置の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする有機EL装置。
【請求項6】
対向する電極間に有機機能層が形成されてなる有機EL装置であって、
一方の電極が複数のセパレータ同士間に帯状に形成されており、
前記複数のセパレータの各頂面には導電膜が非形成状態にあることを特徴とする有機EL装置。
【請求項7】
前記一方の電極は、前記複数のセパレータ同士間において隣り合う2つのセパレータの少なくとも一方に接触して形成されていることを特徴とする請求項6に記載の有機EL装置。
【請求項8】
前記一方の電極は、液滴吐出法を用いて形成されたものであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の有機EL装置。
【請求項9】
請求項5から請求項8のうちのいずれかに記載の有機EL装置を表示装置として備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−62161(P2010−62161A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283196(P2009−283196)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【分割の表示】特願2004−125400(P2004−125400)の分割
【原出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【分割の表示】特願2004−125400(P2004−125400)の分割
【原出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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