有機LED用燐光性ドーパントとしての式LL’MX、LL’L’’M、LMXX’、及びL3Mの錯体
【課題】優れた特性を有する有機発光層用組成物を提供する。
【解決手段】有機発光ダイオードの改良されたエレクトロルミネッセンス効率が、式L2MX(式中、L及びXは異なる二座配位子である)の遷移金属の有機金属錯体を含有する発光層を用いて得られる。この式の化合物は、従来の方法によるものよりも一層容易に合成することができ、合成の自由な選択により燐光錯体中への蛍光分子の挿入、発光色の微細な調節をするための配位子及びキャリヤーをトラップするための配位子の挿入を行うことができる。
【解決手段】有機発光ダイオードの改良されたエレクトロルミネッセンス効率が、式L2MX(式中、L及びXは異なる二座配位子である)の遷移金属の有機金属錯体を含有する発光層を用いて得られる。この式の化合物は、従来の方法によるものよりも一層容易に合成することができ、合成の自由な選択により燐光錯体中への蛍光分子の挿入、発光色の微細な調節をするための配位子及びキャリヤーをトラップするための配位子の挿入を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.(技術分野)
本発明は、式L2MX(式中、L及びXは異なる二座配位子であり、Mは金属、特にイリジウムである)の有機金属化合物、それらの合成、及び或るホスト中のドーパントとして、有機発光デバイスの発光層を形成するために使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
II.(背景技術)
II.A.一般的背景
有機発光デバイス(OLED)は、幾つかの有機層から構成され、それら層の中の一つは、デバイスを通って電圧を印加することによりエレクトロルミネッセンスを生ずるようにすることができる有機材料から構成されている。C.W.タング(Tang)ら、Appl. Phys. Lett., 51, 913, (1987)。或るOLEDは、LCD系フルカラーパネルディスプレイに代わる実際的技術として用いるのに充分な輝度、色の範囲、及び作動寿命を有することが示されている〔S.R.フォレスト(Forrest)、P.E.バローズ(Burrows)、及びM.E.トンプソン(Thompson)、Laser Focus World, Feb. (1995)〕。そのようなデバイスで用いられている有機薄膜の多くは可視スペクトル範囲で透明なので、それらは、赤(R)、緑(G)、及び青(B)を発光するOLEDを垂直に積み重ねた形態で配置し、簡単な製造方法、小さなR−G−Bピクセルサイズ、及び大きな充填率を与える完全に新規な型の表示ピクセルを実現させることができる。国際特許出願No.PCT/US95/15790。
【0003】
大きな解像力を持ち、独立にアドレスすることができる積層R−G−Bピクセルを実現するための重要な段階を示す透明OLED(TOLED)が、国際特許出願No.PCT/US97/02681に報告されており、この場合TOLEDは、スイッチを切った時、71%より大きな透明度を示し、デバイスのスイッチを入れた時、大きな効率(1%に近い量子効率)で上及び下の両方のデバイス表面から光を出す。そのTOLEDは、ホール注入電極として透明インジウム錫酸化物(ITO)を、電子注入のためにNg−Ag−ITO電極層を用いている。Ng−Ag−ITO層のITO側が、TOLEDの上に積層された第二の別の色の発光OLEDのためのホール注入接点として用いられているデバイスが開示されている。積層OLED(SOLED)の各層は、独立にアドレスすることができ、それ自身の特性色を発光する。この着色発光は、隣接して積層された透明の独立にアドレスすることができる有機層(単数又は複数)、透明接点、及びガラス基板を通って伝達され、赤色及び青色の発光層の相対的出力を変化させることにより生ずることができるどのような色でもデバイスが発光できるようにしている。
【0004】
PCT/US95/15790出願には、色調節可能な表示装置で外部から供給される電力で強度及び色の両方を独立に変化し、調節することができる集積SOLEDが開示されている。このように、PCT/US95/15790出願は、小型のピクセルサイズによって可能にされた大きな解像力を与える集積フルカラーピクセルを達成する原理を例示している。更に、従来の方法と比較して、そのようなデバイスを製造するために比較的低いコストの製造技術を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願PCT/US95/15790号
【特許文献2】国際特許出願PCT/US97/02681号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C. W.Tangら、Appl. Phys. Lett., 51, 913 (1987)
【非特許文献2】S. R. Forrest、P. E. Burrows、及びM. E. Thompson、Laser Focus World, Feb. (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
II.B. 発光の背景
II.B.1.基礎
II.B.1.a.一重項及び三重項励起子
有機材料では分子励起状態又は励起子の崩壊により光が発生するので、それらの性質及び相互作用を理解することは、ディスプレイ、レーザー、及び他の照明用途におけるそれらの潜在的用途のため現在大きな関心が持たれている効率的な発光デバイスの設計にとって重要である。例えば、励起子の対称性が基底状態のものと異なっていると、励起子の放射性緩和は不可能になり、ルミネッセンスは遅く非効率的になる。基底状態は通常励起子を含む電子スピンの交換では反対称なので、対称性励起子の崩壊は対称性を破る。そのような励起子は三重項として知られており、この用語はその状態の縮退を反映している。OLEDでの電気的励起により形成されたどの三つの三重項励起子に対しても、唯一つの対称状態(即ち、一重項)励起子が生ずる。〔M.A.バルド(Baldo)、D.F.オブライエン(O'Brien)、M.E.トンプソン(Thompson)、及びS.R.フォレスト(Forrest)、「電気燐光に基づく非常に高い効率の緑色有機発光デバイス」(Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence)、Applied Physics Letters, 75, 4-6, (1999)〕。対称性不可過程からのルミネッセンスは、燐光として知られている。特徴として、燐光は遷移の確率が低いため、励起後数秒間まで持続することがある。これに対し蛍光は一重項励起の早い崩壊に由来する。この過程は同じ対称性の状態の間で起きるので、それは非常に効率的である。
【0008】
多くの有機材料は一重項励起子からの蛍光を示す。しかし、ほんの僅かなものだけしか三重項による効果的室温燐光を出すことができないことも確認されている。例えば、殆どの蛍光染料では、三重項状態に含まれているエネルギーは浪費される。しかし、三重項励起状態が摂動を起こすと、例えば、スピン軌道結合(典型的には、重金属原子の存在により起きる)により摂動を起こすと、効果的燐光が一層起き易くなる。この場合、三重項励起はいくらか一重項特性をとり、それは基底状態へ放射性崩壊する一層大きな確率を有する。実際、これらの性質を有する燐光染料は、大きな効率のエレクトロルミネッセンスを示している。
【0009】
三重項による効果的室温燐光を示すことが確認されている有機材料はほんの僅かしかない。これとは対照的に、多くの蛍光染料が知られており〔C.H.チェン(Chen)、J.シ(Shi)、及びC.W.タング(Tang)、「分子状有機エレクトロルミネッセンス材料における最近の発展」(Recent developments in molecular organic electroluminescent materials)、Macromolecular Symposia., 125, 1-48, (1997);U.ブラックマン(Brackmann)、「ラムダクロム・レーザー染料」(Lambdachrome Laser Dyes)、ラムダ・フィジーク(Lambda Physik)、ゲッチンゲン、1997〕、溶液中の蛍光効率が100%に近くなることは異常なことではない(C.H.チェン、1997、上記参照)。蛍光は、大きな励起密度で燐光発光を減少させる三重項・三重項消滅によって影響を受けない〔M.A.バルドその他、「有機エレクトロルミネッセンスデバイスからの高効率燐光発光」(High efficiency phosphorescent emission from organic electroluminescent devices)、Nature, 395, 151-154, (1998);M.A.バルド、M.E.トンプソン、及びS.R.フォレスト、「電気燐光デバイスでの三重項・三重項消滅の解析モデル」(An analytic model of triplet-triplet annihilation in electrophosphorescent devices)、1999〕。従って、蛍光材料は多くのエレクトロルミネッセンス用途に適しており、特にパッシブマトリックスディスプレイに適している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
II.B.1.b.本発明の基礎に関する概説
本発明は、式LL’L’’M〔式中、L、L’、及びL’’は異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する40より大きな原子番号の金属であり、好ましくは周期表の遷移シリーズ(series)の第3系列遷移金属の金属である〕の錯体に関する。あるいは、Mは第2系列遷移金属の金属、又は主グループ金属(main group metals)、例えばZr及びSbにすることができる。そのような有機金属錯体のあるものは、エレクトロルミネッセンスを示し、最低エネルギー配位子又はMLCT状態から来た発光を示す。そのようなエレクトロルミネッセンス化合物は、発光ダイオードの発光層のホスト層中のドーパントとして用いることができる。本発明は、更に式LL’L’’M(式中、L、L’及びL’’は同じか又は異なり、L、L’、及びL’’はモノアニオン性二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、好ましくは遷移金属の第3系列の金属、一層好ましくはIr又はPtであり、それら配位子を配位する原子は、sp2混成軌道(hybridized)炭素及びヘテロ原子からなる)の錯体に関する。本発明は、更にL2MX〔式中、L及びXは異なる二座配位子であり、Lはsp2混成軌道炭素及びヘテロ原子を有するLの原子によりMに配位しており、Mは八面体錯体を形成する金属、好ましくはイリジウム(Ir)である〕に関する。これらの化合物は、有機発光ダイオードの発光層として働くホスト層中のドーパントとして働くことができる。
【0011】
本発明の化合物は、式L2M(μ−Cl)2ML2(式中、Lは二座配位子であり、MはIrなどの金属である)の塩化物架橋二量体と、二座配位子Xを導入する働きをする物質XHとの直接反応により製造することができる。XHは、例えば、アセチルアセトン、2−ピコリン酸、又はN−メチルサリチルアニリドにすることができ、Hは水素を表す。得られる生成物は式L2MXを有し、この場合、Mの回りに二座配位子L、L、及びXの八面体配位を得ることができる。
【0012】
式L2MXの得られた化合物は、有機発光デバイスの燐光発光体として用いることができる。例えば、L=(2−フェニルベンゾチアゾール)、X=アセチルアセトネート、及びM=Ir(BTIrとして省略する化合物)である場合の化合物は、OLED中の発光層を形成するために4,4’−N, N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)中のドーパントとして(質量で12%のレベルで)用いた場合、12%の量子効率を示す。参考として、式CBPは、次の通りである:
【0013】
【化1】
【0014】
L2MXを製造するための合成法は、L自身が蛍光体であるが、得られるL2MXが燐光体である場合に有利に用いることができる。この一つの特別な例は、L=クマリン−6の場合である。
【0015】
この合成法は、或る所望の特性を有するLとXの対の結合を容易にする。
【0016】
LとXを適切に選択することにより、L3Mに対する錯体L2MXの色の調節を行うことができる。例えば、Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)の両方共510nmのλmaxを有する強い緑色発光を与える[ppyはフェニルピリジンを表す]。しかし、X配位子がアセチルアセトンからではなく、ピコリン酸から形成されている場合、約15nmの小さな青色シフトがある。
【0017】
更に、Xは、発光品質の劣化を起こすことなく、キャリヤー(ホール又は電子)がX(又はL)にトラップされるように、L3M錯体に対し、或るHOMOレベルを有するように選択することができる。このようにして、他のやり方では燐光体の有害な酸化又は還元を起こす原因になることがあるキャリヤー(ホール又は電子)が阻止されるであろう。遠くでトラップされるキャリヤーは分子間的に反対符合のキャリヤーと、又は隣接分子からのキャリヤーと容易に再結合するであろう。
【0018】
本発明及びその種々の態様を、下の実施例で一層詳細に論ずる。しかし、それらの態様は異なる機構によって作動させることもできる。本発明の種々の態様が作動する種々の機構を論ずるが、それらによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0019】
II.B.1.c.デキスター(Dexter)及びフェルスター(Foerster)機構
根底にあるエネルギー移動機構の理論を論ずる事は、本発明の異なる態様を理解するのに役に立つであろう。受容体分子へのエネルギーの移動については一般に二つの機構が論じられている。デキスター移動〔D.L.デキスター、「固体中の増感ルミネッセンスの理論」(A theory of sensitized luminescence in solids)、J. Chem. Phys., 21, 836-850, (1953)〕の第一の機構では、励起は一つの分子から次の分子へ直接跳び移ることができる。これは、隣り合った分子の分子軌道の重複に依存する短距離過程である。それは供与体と受容体の対の対称性も保持する〔E.ウィグナー(Wigner)及びE.W.ウィトマー(Wittmer)、「量子力学による二原子分子スペクトルの構造」(Uber die Struktur der zweiatomigen Molekelspektren nach der Quantenmechanik)、Zeitshrift fur Physik, 51, 859-886, (1928);M.クレッシンゲル(Klessinger)及びJ.ミッチェル(Michl)、「有機分子の励起状態及び光化学」(Excited states and photochemistry of organic molecules)(VCH出版社、ニューヨーク、1995)。従って、式(1)のエネルギー移動はデキスター機構によっては不可能である。フェルスター移動の第二機構では〔T.フェルスター、「分子間エネルギー移動及び蛍光」(Zwischenmolekulare Energiewanderung and Fluoreszenz)、Annalen der Physik, 2, 55-75 (1948);T.フェルスター、「有機化合物の蛍光」(Fluoreszenz organischer Verbindugen)(Vandenhoek and Ruprecht、ゲッチンゲン、1951)〕、式(1)のエネルギー移動は可能である。フェルスターの移動では、送信機及びアンテナと同様に、供与体及び受容体分子の双極子が結合し、エネルギーは移動することができる。双極子は供与体と受容体の両方の分子中で許容された遷移によって生ずる。このことは、典型的にはフェルスター機構を一重項状態の間の移動に限定させることになる。
【0020】
それにも拘わらず、重金属原子によって導入されるスピン軌道結合によるなどして、状態の或る摂動により燐光体が光を発することができる限り、それはフェルスター移動での供与体としての役割も果たすことができる。この過程の効率は燐光体のルミネッセンス効率により決定され〔F.ウィルキンソン(Wilkinson)、「光化学の進歩」(Advances in Photochemistry)、W.A.ノイズ(Noyes)、G.ハモンド(Hammond)、及びJ.N.ピッツ(Pitts)編集、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1964、pp.241−268〕、即ち、もし非放射性崩壊よりも放射性遷移の方が一層起き易いならば、エネルギー移動は効果的に行われるであろう。そのような三重項・一重項移動は、フェルスターによって予測されており〔T.フェルスター、「電子励起の移動機構」(Transfer mechanisms of electronic exitation)、Discussions of the Faraday Society, 27, 7-17, (1959)〕、エルモラエフ(Ermolaev)及びスベシニコワ(Sveshnikova)によって確認されており〔V.L.エルモラエフ及びE.B.スベシニコワ、「三重項状態の芳香族分子からの誘導共鳴エネルギー移動」(Inductive-resonance transfer of energy from aromatic molecules in the triplet state)、Doklady Akademii Nauk SSSR, 149, 1295-1298, (1963)〕、彼らは77K又は90Kで固体媒体中の或る範囲の燐光供与体及び蛍光受容体を用いてエネルギー移動を検出した。長距離移動が観察されており、例えば、供与体としてトリフェニルアミン、受容体としてクリソイジンを用いて、相互作用範囲は52Åである。
【0021】
フェルスター移動のための残りの条件は、励起及び基底状態の分子対の間のエネルギーレベルが共鳴していると仮定して、吸収スペクトルが供与体の発光スペクトルと重なり合っていることである。本願の例1では、我々は緑燐光体facトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム〔Ir(ppy)3;M.A.バルド(Baldo)、その他、Appl. Phys. Lett., 75, 4-6, (1999)〕、及び赤色蛍光染料、[2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−イリデン]プロパン−ジニトリル]〔「DCM2」;C.W.タング(Tang)、S.A.ファンスライケ(VanSlyke)、及びC.H.チェン(Chen)、「ドープした有機フイルムのエレクトロルミネッセンス」(Electroluminescence of doped organic films)、J. Appl. Phys., 65, 3610-3616, (1989)〕を用いた。DCM2は緑で吸収し、局部的分極場によりそれはλ=570nmとλ=650nmの間の波長で発光する〔V.ブロビック(Bulovic)その他、「分極誘導スペクトル移動に基づく明るい飽和赤〜黄橙色発光デバイス」(Bright, saturated, red-to-yellow organic light-emitting devices based on polarization-induced spectral shifts)、Chem. Phys. Lett., 287, 455-460, (1998)〕。
【0022】
燐光性ホスト材料中に蛍光性ゲストをドーピングすることにより、三重項状態からフェルスターエネルギー移動を行わせることが可能になる。残念ながらそのような系は、全効率を低下させる競合エネルギー移動機構により影響を受ける。特にホスト及びゲストの密接な近接性が、ホストからゲスト三重項へのデキスター移動の可能性を増大する。励起子がゲスト三重項状態に近づくと、それら励起子は効果的に失われる。なぜなら、これら蛍光染料は極めて非効率的な燐光を示すのが典型的だからである。
【0023】
ホスト三重項の蛍光染料一重項への移動を最大にするため、燐光体の三重項状態へのデキスター移動を最大にすると同時に、蛍光染料の三重項状態への移動を最小にすることが望ましい。デキスター機構は隣り合った分子間のエネルギーを移動させるので、蛍光染料の濃度を減少させると、染料への三重項・三重項移動の確率が減少する。一方、一重項状態への長距離フェルスター移動は影響を受けない。これとは対照的に、燐光体の三重項状態への移動はホスト三重項を利用するのに必要であり、燐光体の濃度を増大することにより改善することができる。
【0024】
II.B.2.デバイス構造と発光との相関関係
有機光電子材料の層を用いることに基づく構造を有するデバイスは、一般に光学的発光を与える一般的機構に依存している。この機構は捕捉された電荷の発光性再結合に基づいているのが典型的である。特にOLEDは、デバイスのアノードとカソードを分離する少なくとも二つの薄い有機層を有する。これらの層の一つの材料は、特に材料のホールを輸送する能力に基づいて選択された「ホール輸送層」(HTL)であり、他方の層の材料は特に電子を輸送するその能力に従って選択された「電子輸送層」(ETL)である。そのような構造により、デバイスはダイオードとして見ることができ、アノードに印加された電位がカソードに印加された電位よりも高い時、順方向バイアスとなる。これらのバイアス条件下では、アノードはホール輸送層中へホール(正電荷キャリヤー)を注入し、一方カソードは電子輸送層に電子を注入する。これにより、ルミネッセンス媒体の、アノードに隣接した部分はホール注入及び輸送領域を形成し、一方ルミネッセンス媒体の、カソードに隣接した部分は電子注入及び輸送領域を形成する。注入されたホール及び電子は、夫々反対に帯電した電極の方へ移動する。同じ分子に電子及びホールが局在すると、フレンケル(Frenkel)励起子が形成される。この寿命の短い状態の再結合は、電子がその伝導電位から価電子帯へ落ちた時に可視化され、或る条件下では優先的に発光機構により緩和が起きる。典型的な薄層有機デバイスの作動機構のこの見解によれば、エレクトロルミネッセンス層は易動性電荷キャリヤー(電子及びホール)を各電極から受けるルミネッセンス領域を有する。
【0025】
上で述べたように、OLEDからの発光は、蛍光又は燐光によるのが典型的である。燐光の利用には問題がある。大きな電流密度では燐光効率は急速に低下することが認められている。長い燐光寿命は発光部位の飽和を起こし、三重項・三重項消滅も効率の低下を生ずることになる。蛍光と燐光との別の相違点は、伝導性ホストからルミネッセンスゲスト分子への三重項のエネルギー移動が一重項のものよりも遅いのが典型的であると言うことである。一重項のエネルギー移動を支配する長距離双極子・双極子結合(フェルスター移動)は、(理論的には)スピン対称性保存の原理により三重項に対しては禁止されている。従って、三重項の場合、エネルギー移動は隣り合った分子への励起子の拡散によって起きるのが典型的であり(デキスター移動)、供与体と受容体の励起波動関数のかなりの重複がエネルギー移動には必須である。別の問題は、三重項拡散距離が、約200Åの典型的な一重項拡散距離と比較して長い(例えば、>1400Å)のが典型的なことである。従って、燐光デバイスがそれらの可能性を実現できるものであるためには、デバイス構造は三重項特性に最適なものになっている必要がある。本発明では、外部量子効率を向上させるため長距離三重項拡散の性質を利用している。
【0026】
燐光の利用に成功することは、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの膨大な前途を約束するものである。例えば、燐光の利点は、(一つには)燐光デバイスの三重項に基づく全ての励起子(EL中でのホールと電子との再結合により形成される)が、或るエレクトロルミネッセンス材料でエネルギー移動及びルミネッセンスに関与することができることである。これに対し一重項に基づく蛍光デバイスでは、僅かな割合の励起子しか蛍光ルミネッセンスを与える結果にならない。
【0027】
別の方法は、蛍光過程の効率を向上させるため燐光過程を利用することである。蛍光は原理的には、対称励起状態の3倍大きな数により75%低い効率になる。
【0028】
II.C.材料の背景
II.C.1.基本的ヘテロ構造
典型的には、少なくとも一つの電子輸送層及び少なくとも一つのホール輸送層が存在するので、ヘテロ構造を形成する異なる材料の層が存在する。エレクトロルミネッセンス発光を生ずる材料は、電子輸送層又はホール輸送層として働く材料と同じ材料である。電子輸送層又はホール輸送層が発光層としても働くそのようなデバイスは、単一ヘテロ構造を有するとして言及されている。あるいは、エレクトロルミネッセンス材料は、ホール輸送層と電子輸送層との間の別の発光層中に存在していてもよく、それは二重ヘテロ構造と呼ばれている。その別の発光層はホスト中へドープした発光分子を含んでいてもよく、または発光層は発光分子のみから本質的になっていてもよい。
【0029】
即ち、電荷キャリヤー層、即ち、ホール輸送層又は電子輸送層中の主たる成分として存在し、電荷キャリヤー材料及び発光材料の両方として機能を果たす発光材料の外に、電荷キャリヤー層中のドーパントとして比較的低い濃度で発光材料が存在していてもよい。ドーパントが存在する場合には、電荷キャリヤー層中の主たる材料はホスト化合物又は受容性化合物と呼ぶことができる。ホスト及びドーパントとして存在する材料は、ホストからドーパント材料へ高レベルのエネルギー遷移を与えるように選択する。更に、これらの材料はOLEDのための許容可能な電気的性質を生ずることができる必要がある。更に、そのようなホスト及びドーパント材料は、便利な製造技術を用いて、特に真空蒸着法を用いてOLED中に容易に配合することができる材料を用いてOLED中へ導入することができることが好ましい。
【0030】
II.C.2.励起子ブロッキング層
励起子の拡散を実質的に妨げ、それによって励起子を実質的に発光層内に留め、デバイスの効率を増大させるため、OLCDデバイス内に励起子ブロッキング層(exciton blocking layer)を入れることができる。ブロッキング層の材料は、その最低空軌道(LUMO)及びその最高被占軌道(HOMO)との間のエネルギー差(禁止帯幅)を特徴とする。この禁止帯幅はブロッキング層を通る励起子の拡散を実質的に防ぐが、完成したエレクトロルミネッセンスデバイスのスイッチを入れた時の電圧で最小の効果しか持たない。従って、その禁止帯幅は発光層中で生じた励起子のエネルギーレベルよりも大きく、そのような励起子がブロッキング層中に存在することができないようにするのが好ましい。特に、ブロッキング層の禁止帯幅は、ホストの三重項状態と基底状態とのエネルギー差と少なくとも同じ位の大きさである。
【0031】
ホール伝導性ホストと電子輸送層との間にブロッキング層が存在する状態では、相対的重要性の順序で列挙する次の特性が求められる。
【0032】
1. ブロッキング層のLUMOとHOMOとの間のエネルギー差が、ホスト材料の三重項と基底状態一重項とのエネルギー差よりも大きい。
2. ホスト材料中の三重項はブロッキング層によりクエンチされない。
3. ブロッキング層のイオン化ポテンシャル(IP)は、ホストのイオン化ポテンシャルよりも大きい(ホールはホスト中に保持されることを意味する)。
4. ブロッキング層のLUMOのエネルギーレベルと、ホストのLUMOのエネルギーレベルとが、デバイスの全伝導度の変化が50%より少なくなるようにエネルギーが充分近接している。
5. ブロッキング層は、発光層から隣接層への励起子の移動を効果的に遮断するのに充分な層の厚さを有することを条件として、できるだけ薄くする。
【0033】
即ち、励起子及びホールを遮断するため、ブロッキング層のイオン化ポテンシャルはHTLのそれよりも大きくすべきであり、同時にブロッキング層の電子親和力は、電子を輸送し易くできるようにETLのそれとほぼ等しくなっているべきである。 [ホール輸送ホストを用いずに放射性(発光)分子を用いた場合には、ブロッキング層を選択するための上記規則は、「ホスト」と言う言葉を「発光分子」によって置き換えることにより修正する。]
【0034】
電子伝導性ホストとホール輸送層との間にブロッキング層を用いた補助的状態について、それらの特性を求める(重要性の順序で列挙した):
【0035】
1. ブロッキング層のLUMOとHOMOとの間のエネルギー差が、ホスト材料の三重項と基底状態一重項とのエネルギー差よりも大きい。
2. ホスト材料中の三重項はブロッキング層によりクエンチされない。
3. ブロッキング層のLUMOのエネルギーは、(電子輸送)ホストのLUMOのエネルギーよりも大きい。(電子がホストに保持されることを意味する)。
4. ブロッキング層のイオン化ポテンシャル及びホストのイオン化ポテンシャルは、ホールが障壁からホストへ容易に注入され、デバイスの全伝導度の変化が50%より小さくなるようなものである。
5. ブロッキング層は、発光層から隣接層への励起子の移動を効果的に遮断するのに充分な層の厚さを有することを条件として、できるだけ薄くする。
【0036】
[電子輸送ホストを用いずに放射性(発光)分子を用いた場合には、ブロッキング層を選択するための上記規則は、「ホスト」と言う言葉を「発光分子」によって置き換えることにより修正する。]
【0037】
II.D.色
色に関し、三つの主要な色、赤、緑及び青の一つに相当する選択されたスペクトル領域に近い所に中心を有する比較的狭い帯域でエレクトロルミネッセンス発光を与える材料を用いてOLEDを製造し、それらがOLED又はSOLED中の着色層として用いることができるようにすることが望ましい。そのような化合物は、真空蒸着法を用いて薄層として容易に蒸着することができ、真空蒸着有機材料から全て製造されるOLED中に容易にそれらを組み込むことができるようにすることも望ましい。
【0038】
1996年12月23日に出願された米国特許出願Serial No.08/774,333(許可された)は、飽和赤色発光を生ずる発光化合物含有OLEDに関する。
【0039】
III. (発明の開示)
一般的なレベルとして、本発明は、40より大きな原子番号を有する金属Mの錯体に関し、ここでMは三つの二座配位子を有する八面体錯体を形成する。金属には、Sbなどの主グループ金属、「周期表の遷移シリーズの第2系列の遷移金属」、好ましくは「周期表の遷移シリーズの第3系列の遷移金属」、最も好ましくはIr及びPtが含まれる。有機金属錯体は、有機発光ダイオードの発光層中に用いることができる。錯体はLL’L’’M(式中、L、L’、及びL’’は二座配位子を表し、Mは金属を表す)として描くことができる。全ての配位子が異なっている例を図40に示す。
【0040】
本発明は、更に金属種Mとモノアニオン性二座配位子との有機金属錯体に関し、この場合Mには配位子のsp2混成軌道炭素及びヘテロ原子が配位している。錯体は、L3M(この場合各配位子L物質は同じである)、LL’L’’M(この場合、各配位子物質L、L’、L’’は異なっている)、又はL2MX(この場合、Xはモノアニオン性二座配位子である)の形をしていてもよい。配位子Lは、Xよりも一層発光過程に関与するものと一般に予想されている。好ましくは、Mは第3系列の遷移金属であり、最も好ましくは、MはIr又はPtである。本発明は、L3Mのメリジアナル(meridianal)異性体にも関し、この場合二つの配位子Lのヘテロ原子(例えば、窒素)はトランス型になっている。Mに配位子のsp2混成軌道炭素及びヘテロ原子が配位した態様では、金属M、sp2混成軌道炭素及びヘテロ原子を有する環は5又は6個の原子を有するのが好ましい。
【0041】
更に、本発明は、二座配位子LとMを有する遷移金属物質Mの錯体を、有機発光ダイオードの発光層中に式L2MXの化合物として使用することに関する。好ましい態様は、有機発光ダイオード中の発光層として機能を果たすように構成されたホスト層中のドーパントとしての式L2IrX(式中、L及びXは異なる二座配位子である)の化合物である。
【0042】
本発明は、発光デバイスの発光体としての機能を果たす有機金属分子の改良された合成にも関する。本発明の化合物は、次の反応: L2M(μ−Cl)2ML2+XH→L2MX+HCl〔式中、L2M(μ−Cl)2ML2は、Lを二座配位子とし、MをIrなどの金属とした塩化物架橋二量体であり;XHは、架橋塩化物と反応し、二座配位子Xを導入する働きをするブレンステッド酸であり、この場合XHは、例えばアセチルアセトン、2−ピコリン酸、又はN−メチルサリチルアニリドにすることができる。〕に従って製造することができる。この方法は、L2M(μ−Cl)2ML2塩化物架橋二量体と、XH物質とを結合することを含んでいる。L2MXは、Mの周りの二座配位子L、L、及びXのほぼ八面体の配置を有する。
【0043】
本発明は、更に有機発光デバイス中の燐光発光体として、式L2MXの化合物を使用することに関する。例えば、L=(2−フェニルベンゾチアゾール)、X=アセチルアセトネート、及びM=Irである場合の化合物(BTIrとして省略する)を、OLED中の発光層を形成するためにCBP中のドーパントとして(質量で12%のレベルで)用いた場合、12%の量子効率を示す。参考として、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)の式は、次の通りである:
【0044】
【化2】
【0045】
本発明は、更に有機金属錯体L2MXに関し、この場合L自身は蛍光体であるが、得られたL2MXは燐光体である。この一つの特別な例は、L=クマリン−6の場合である。
【0046】
本発明は、更にL3Mに対し、錯体L2MXの色の調節を行うためにL及びXを適切に選択することにも関する。例えば、Ir(ppy)3及び(ppy)3Ir(acac)の両方共510nmのλmaxを有する強い緑色発光を与える[ppyはフェニルピリジンを表す]。しかし、X配位子がアセチルアセトンからではなく、ピコリン酸から形成されている場合、約15nmの小さな青色シフトがある。
【0047】
更に、発光品質の劣化を起こすことなく、キャリヤー(ホール又は電子)がX(又はL)にトラップされるように、L3M錯体に対し、或るHOMOレベルを有するようにXを選択することに関する。このようにして、他のやり方では燐光体の有害な酸化(又は還元)を起こす原因になることがあるキャリヤー(ホール又は電子)が阻止されるであろう。遠くでトラップされるキャリヤーは分子間的に反対符合のキャリヤーと、又は隣接分子からのキャリヤーと容易に再結合するであろう。
【0048】
IV.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】PPIrについて予想される構造と共にL2IrX錯体の予想される構造を示す図であり、これら錯体のために用いられるX配位子の四つの例も示されている。示した構造はacac誘導体のためのものであり、他のX型配位子についてはO−O配位子をN−O配位子で置き換える。
【図2】L3Mのフェイシャル及びメリジアナル異性体の比較を示す図である。
【図3】ここに開示したmer異性体の分子式:mer−Ir(ppy)3及びmer−Ir(bq)3を示す図である。PPY(又はppy)は、フェニルピリジルを表し、BQ(又はbq)は7,8−ベンゾキノリンを表す。
【図4】mer−Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)のモデルを示す図である。
【図5A】図5AはCBP中に質量で12%の「BTIr」を入れた場合のエレクトロルミネッセンスデバイスのデータ(量子効率対電流密度)を示す図である。BTIrは、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムアセチルアセトネートを表す。
【図5B】図5Bは、図5Aのデバイスからの発光スペクトルを示す図である。
【図6】ホールをトラップするための代表的分子の図である。
【図7】Ir(3−MeOppy)3の発光スペクトルを示す図である。
【図8】tpyIrsdの発光スペクトルを示す図である。
【図9】tpyIrsd(=typIrsd)のプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図10】thpyIrsdの発光スペクトルを示す図である。
【図11】thpyrIrsdのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図12】btIrsdの発光スペクトルを示す図である。
【図13】btIrsdのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図14】BQIrの発光スペクトルを示す図である。
【図15】BQIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図16】BQIrFAの発光スペクトルを示す図である。
【図17】THIr(=thpy;THPIr)の発光スペクトルを示す図である。
【図18】THPIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図19】PPIrの発光スペクトルを示す図である。
【図20】PPIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図21】BTHPIr(=BTPIr)の発光スペクトルを示す図である。
【図22】tpyIrの発光スペクトルを示す図である。
【図23】窒素のトランス型配置を示すtpyIrの結晶構造を示す図である。
【図24】C6の発光スペクトルを示す図である。
【図25】C6Irの発光スペクトルを示す図である。
【図26】PZIrPの発光スペクトルを示す図である。
【図27】BONIrの発光スペクトルを示す図である。
【図28】BONIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図29】BTIrの発光スペクトルを示す図である。
【図30】BTIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図31】BOIrの発光スペクトルを示す図である。
【図32】BOIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図33】BTIrQの発光スペクトルを示す図である。
【図34】BTIrQのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図35】BTIrPの発光スペクトルを示す図である。
【図36】BOIrPの発光スペクトルを示す図である。
【図37】異なる配位子を有するbtIr型錯体の発光スペクトルを示す図である。
【図38】mer−IrbqのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図39】L2MX化合物のための他の適当なL及びX配位子を示す図である。
【図40】LL’L’’M化合物の例を示す図である。
【0050】
V.(本発明の詳細な記述)
V.A.化学
本発明は、有機発光ダイオードの発光層のホスト層内にドープすることができる式L2MXの或る有機金属分子の合成及びその使用に関する。場合により、式L2MXの分子は、増大した濃度で、又はそのままで、発光層に用いることができる。本発明は、式L2MX(式中、L及びXは、異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する、好ましくは周期表の遷移元素の第三列から選択された金属で、最も好ましくはIr又はPtである)の分子を含有する発光層を有し、然も、前記発光層が或る波長λmaxで最大値を有する発光を生ずる有機発光デバイスに関する。
【0051】
V.A.1.ドーパント
ホスト相中にドープされる分子についての一般的化学式はL2MX(式中、Mは八面体錯体を形成する遷移金属であり、Lは二座配位子であり、Xは異なる二座配位子である)である。
【0052】
Lの例は、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(2−フェニルベンゾオキサゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(7,8−ベンゾキノリン)、クマリン、(チエニルピリジン)、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、及びトリルピリジンである。
【0053】
Xの例は、アセチルアセトネート(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、ピコリネート、及び8−ヒドロキシキノリネートである。
【0054】
L及びXの更に別な例は図39に与えられており、L及びXの更に別な例は「総合配位化学」(Comprehensive Coordination Chemistry)(編集主任G. Wilkinson、Pergamon Press)第2巻、特にM.カリガリス(Calligaris)及びL.ランダチオ(Randaccio)による第20.1章(第715頁以降)及びR.S.バグ(Vagg)による第20.4章(第793頁以降)に見出すことができる。
【0055】
V.A.2.式L2MXの分子の合成
V.A.2.a.反応スキーム
式L2MXの化合物は、次の式に従って製造することができる:
L2M(μ−Cl)2ML2+XH→L2MX+HCl〔式中、L2M(μ−Cl)2ML2は、Lを二座配位子とした塩化物架橋二量体であり、MはIrなどの金属であり;XHは、架橋塩化物と反応し、二座配位子Xを導入する働きをするブレンステッド酸であり、この場合XHは、例えばアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、2−ピコリン酸、又はN−メチルサリチルアニリドにすることができる。〕L2MXは、Mの周りの二座配位子L、L、及びXのほぼ八面体の配置を有する。
【0056】
V.A.2.b.実施例
L2Ir(μ−Cl)2IrL2錯体は、IrCl3・nH2O及び適当な配位子から文献の方法により製造した〔S.スプラウズ(Sprouse)、K.A.キング(King)、P.J.スペラン(Spellane)、R.J.ワッツ(Watts)、J. Am. Chem. Soc., 106, 6647-6653, (1984);一般的参考文献:G.A.カールソンその他、Inorg. Chem., 32, 4483, (1993);B.シュミット(Schmid)その他、Inorg. Chem., 33, 9, (1993);F.グラシス(Garces)その他、Inorg. Chem., 27, 3464, (1988);M.G.コロンボ(Colombo)その他、Inorg. Chem., 32, 3088, (1993);A.マモ(Mamo)その他、Inorg. Chem., 36, 5947, (1997);S.セロニ(Serroni)その他、J. Am. Chem. Soc., 116, 9086, (1994);A.P.ワイルド(Wilde)その他、J. Phys. Chem., 95, 629, (1991);J.H.ヴァン・ジーメン(van Diemen)その他、Inorg. Chem., 31, 3518, (1992);M.G.コロンボその他、Inorg. Chem., 33, 545, (1994)〕。
【0057】
Ir(3−MeOppy)3。 Ir(acac)3(0.57g、1.17mM)及び3−メトキシ−2−フェニルピリジン(1.3g、7.02mM)を、30mlのグリセロール中で混合し、N2中で24時間200℃に加熱した。得られた混合物を100mlの1MのHClへ添加した。沈澱物を濾過により収集し、溶離剤としてCH2Cl2を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、明るい黄色固体として生成物を得た(0.35g、40%)。MS(EI):m/z(相対的強度)745(M-、100)、561(30)、372(35)。発光スペクトルは図7に示してある。
【0058】
tpyIrsd。 塩化物架橋二量体(tpyIrCl)2(0.07g、0.06mM)、サリチリデン(0.022g、0.16mM)及びNa2CO3(0.02g、0.09mM)を、10mlの1,2−ジクロロエタン及び2mlのエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、6時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、溶媒を蒸発させた。真空中で穏やかに加熱することにより、過剰のサリチリデンを除去した。残留固体をCH2Cl2中に再溶解し、不溶性無機物質を濾過により除去した。濾液を濃縮し、溶離剤としてCH2Cl2を用いてカラムクロマトグラフィーにかけ、明るい黄色固体として生成物を得た(0.07g、85%)。MS(EI):m/z(相対的強度)663(M+、75)、529(100)、332(35)。発光スペクトルは図8に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図9に示してある。
【0059】
thpyIrsd。 塩化物架橋二量体(thpyIrCl)2(0.21g、0.19mM)を、(thpyIrCl)2と同じやり方で処理した。収率:0.21g、84%。MS(EI):m/z(相対的強度)647(M+、100)、513(30)、486(15)、434(20)、324(25)。発光スペクトルは図10に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図11に示してある。
【0060】
btIrsd。 塩化物架橋二量体(btIrCl)2(0.05g、0.039mM)を、(tpyIrCl)2と同じやり方で処理した。収率:0.05g、86%。MS(EI):m/z(相対的強度)747(M+、100)、613(100)、476(30)、374(25)、286(32)。発光スペクトルは図12に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図13に示してある。
【0061】
Ir(bq)2(acac)、BQIr。 塩化物架橋二量体(Ir(bq)2 Cl)2(0.091g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.021g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:明るい黄色固体(収率91%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.93(d、2H)、8.47(d、2H)、7.78(m、4H)、7.25(d、2H)、7.15(d、2H)、6.87(d、2H)、6.21(d、2H)、5.70(s、1H)、1.63(s、6H)。MS、e/z:648(M+、80%)、549(100%)。発光スペクトルは図14に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図15に示してある。
【0062】
Ir(bq)2(Facac)、BQIrFA。 塩化物架橋二量体(Ir(bq)2Cl)2(0.091g、0.078mM)、ヘキサフルオロアセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄色固体(収率69%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.99(d、2H)、8.55(d、2H)、7.86(m、4H)、7.30(d、2H)、7.14(d、2H)、6.97(d、2H)、6.13(d、2H)、5.75(s、1H)。MS、e/z:684(M+、59%)、549(100%)。発光スペクトルは図16に示してある。
【0063】
Ir(thpy)2(acac)、THPIr。 塩化物架橋二量体(Ir(thpy)2Cl)2(0.082g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄橙色固体(収率80%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.34(d、2H)、7.79(m、2H)、7.58(d、2H)、7.21(d、2H)、7.15(d、2H)、6.07(d、2H)、5.28(s、1H)、1.70(s、6H)。MS、e/z:612(M+、89%)、513(100%)。発光スペクトルは図17に示してあり(「THIr」として記してある)、プロトンNMRスペクトルは図18に示してある。
【0064】
Ir(ppy)2(acac)、PPIr。 塩化物架橋二量体(Ir(ppy)2Cl)2(0.080g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄色固体(収率87%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.54(d、2H)、8.06(d、2H)、7.92(m、2H)、7.81(d、2H)、7.35(d、2H)、6.78(m、2H)、6.69(m、2H)、6.20(d、2H)、5.12(s、1H)、1.62(s、6H)。MS、e/z:600(M+、75%)、501(100%)。発光スペクトルは図19に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図20に示してある。
【0065】
Ir(bthpy)2(acac)、BTPIr。 塩化物架橋二量体(Ir(bthpy)2Cl)2(0.103g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄色固体(収率49%)。MS、e/z:712(M+、66%)、613(100%)。発光スペクトルは図21に示してある。
【0066】
[Ir(ptpy)2Cl]2: IrCl2・xH2O(1.506g、5.030mM)及び2−(p−トリル)ピリジン(3.509g、20.74mM)を2−エトキシエタノール(30ml)中に入れた溶液を、25時間還流した。黄緑色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄し、次に乾燥した。黄色粉末として生成物が得られた(1.850g、65%)。
【0067】
[Ir(ppz)2Cl]2: IrCl2・xH2O(0.904g、3.027mM)及び1−フェニルピラゾール(1.725g、11.96mM)を2−エトキシエタノール(30ml)中に入れた溶液を、21時間還流した。灰緑色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄し、次に乾燥した。明灰色の粉末として生成物が得られた(1.133g、73%)。
【0068】
[Ir(C6)2Cl]2: IrCl3・xH2O(0.075g、0.251mM)及びクマリンC6[3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチル)クマリン]〔アルドリッチ(Aldrich)〕(0.350g、1.00mM)を2−エトキシエタノール(15ml)中に入れた溶液を、22時間還流した。暗赤色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄した。生成物をメタノール中に溶解し、沈澱させた。固体を濾過し、濾液中に緑の発光が観察されなくなるまでメタノールで洗浄した。橙色の粉末として生成物が得られた(0.0657g、28%)。
【0069】
Ir(ptpy)2acac(tpyIr): [Ir(ptpy)2Cl]2(1.705g、1.511mM)、2,4−ペンタンジオール(3.013g、30.08mM)、及び(1.802g、17.04mM)を1,2−ジクロロエタン(60ml)中に入れた溶液を、40時間還流した。黄緑色の混合物を室温へ冷却し、溶媒を減圧下で除去した。生成物を50mlのCH2Cl2中に取り、セライトを通して濾液した。減圧下で溶媒を除去し、橙色結晶の生成物を得た(1.696g、89%)。発光スペクトルを図22に示す。構造のX線回折研究の結果を図23に示す。tpy(トリルピリジル)基の窒素原子はトランス型になっていることが分かった。X線研究から、反射数は4663であり、R因子(R factor)は5.4%であった。
【0070】
Ir(C6)2acac(C6Ir): [Ir(C6)2Cl]2をCDCl3中に入れた溶液に2滴の2,4−ペンタンジオン及び過剰のNa2CO3を添加した。管を50℃で48時間加熱し、次にパスツールピペットの中の短いセライト充填物に通して濾過した。溶媒及び過剰の2,4−ペンタンジオンを減圧下で除去し、橙色固体として生成物を得た。C6の発光を図24に示し、C6Irの発光を図25に示す。
【0071】
Ir(ppz)2ピコリネート(PZIrp): [Ir(ppz)2Cl]2(0.0545g、0.0530mM)、及びピコリン酸(0.0525g、0.426mM)をCH2Cl2(15ml)中に入れた溶液を、16時間還流した。明緑色の混合物を室温へ冷却し、溶媒を減圧下で除去した。得られた固体を10mlのメタノール中にとり、明緑色の固体を溶液から沈澱させた。上澄み液を傾瀉により除去し、固体をCH2Cl2中に溶解し、短いシリカ充填物を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去し、明緑色結晶の生成物を得た(0.0075g、12%)。発光を図26に示す。
【0072】
2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(BZO−Naph)。11.06g、101mMの2−アミノフェノールを、15.867g、92.2mMの1−ナフトエ酸と、ポリ燐酸の存在下で混合した。混合物を加熱し、N2中で8時間240℃で撹拌した。混合物を100℃に冷却し、これに水を添加した。不溶性残留物を濾過により収集し、水で洗浄し、次に過剰の10%Na2CO3中で再びスラリーにした。アルカリ性スラリーを濾過し、生成物を水で完全に洗浄し、真空中で乾燥した。生成物を真空蒸留により精製した。BP 140℃/0.3mmHg。収量4.8g(21%)。
【0073】
テトラキス[2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾールC2,N](μ−ジクロロ)ジイリジウム、[(Ir2(BZO−Naph)4Cl)2]。三塩化イリジウム水和物(0.388g)を、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール(1.2g、4.88mM)と一緒にした。混合物を2−エトキシエタノール(30ml)中に溶解し、次に24時間還流した。溶液を室温へ冷却し、得られた橙色固体生成物を遠心分離管中で収集した。二量体をメタノールで洗浄し、次にクロロホルムにより洗浄する遠心分離/再分散サイクルを4サイクル行なった。収量0.66g。
【0074】
ビス[2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール]アセチルアセトネート、Ir(BZO−Naph)2(acac)、(BONIr)。塩化物架橋二量体[Ir2(BZO−Naph)4Cl]2(0.66g、0.46mM)、アセチルアセトン(0.185g)、及び炭酸ナトリウム(0.2g)を、20mlのジクロロエタン中で混合した。混合物を、N2中で60時間還流した。次に反応を冷却し、橙/赤色の沈澱物を遠心分離管中で収集した。生成物を、水/メタノール(1:1)混合物で洗浄し、次にメタノールで洗浄する遠心分離/再分散サイクルを4サイクル行なった。橙/赤色固体生成物を昇華により生成した。SP 250℃/2×10−5トール。収量0.57g(80%)。発光スペクトルは図27に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図28に示してある。
【0075】
ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムアセチルアセトネート(BTIr): 2.1mMの2−フェニルベンゾチアゾールイリジウム塩化物二量体(2.7g)を、120mlの2−エトキシエタノール中に入れた室温の溶液に、9.8mM(0.98g、1.0ml)の2,4−ペンタンジオンを添加した。約1gの炭酸ナトリウムを添加し、混合物を油浴中で数時間窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、橙色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により75%の収率が得られた。発光スペクトルを図29に示し、プロトンNMRスペクトルを図30に示す。
【0076】
ビス(2−フェニルベンゾオキサゾール)イリジウムacac(BOIr):2.4mMの2−フェニルベンゾオキサゾールイリジウム塩化物二量体(3.0g)を、120mlの2−エトキシエタノール中に入れた室温の溶液に、9.8mM(0.98g、1.0ml)の2,4−ペンタンジオンを添加した。約1gの炭酸ナトリウムを添加し、混合物を油浴中で一晩(〜16時間)窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、黄色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により60%の収率が得られた。発光スペクトルを図31に示し、プロトンNMRスペクトルを図32に示す。
【0077】
ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウム(8−ヒドロキシキノレート)(BTIrQ): 0.14mMの2−フェニルベンゾチアゾールイリジウム塩化物二量体(0.19g)を、20mlの2−エトキシエタノール中に入れた室温の溶液に、4.7mM(0.68g)の8−ヒドロキシキノリンを添加した。約700mgの炭酸ナトリウムを添加し、混合物を油浴中で一晩(23時間)窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、赤色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により57%の収率が得られた。発光スペクトルを図33に示し、プロトンNMRスペクトルを図34に示す。
【0078】
ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムピコリネート(BTIrP): 0.80mMの2−フェニルベンゾチアゾールイリジウム塩化物二量体(1.0g)を、60mlのジクロロメタン中に入れた室温の溶液に、2.14mM(0.26g)のピコリン酸を添加した。混合物を油浴中で8.5時間窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、黄色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により約900mgの不純生成物を生じた。発光スペクトルを図35に示す。
【0079】
ビス(2−フェニルベンゾオキサゾール)イリジウムピコリネート(BOIrP): 0.14mMの2−フェニルベンゾオキサゾールイリジウム塩化物二量体(0.18g)を、20mlのジクロロメタン中に入れた室温の溶液に、0.52mM(0.064g)のピコリン酸を添加した。混合物を油浴中で一晩(17.5時間)窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、黄色沈澱物を真空濾過により除去した。沈澱物をジクロロメタンに溶解し、ガラス瓶へ移し、溶媒を除去した。発光スペクトルを図36に示す。
【0080】
btIr錯体中の異なるL’についての比較発光スペクトルを図37に示す。
【0081】
V.A.2.c.従来法に勝る長所
この合成法は従来法に勝る或る長所を有する。式PtL3の化合物は、分解せずに昇華させることはできない。式IrL3の化合物を得ることには問題がある。或る配位子はIr(acac)3ときれいに反応してトリス錯体を与えるが、しかし、我々が研究した配位子の半分以上は次の反応できれいに反応しない: 3L+Ir(acac)3→L3Ir+acacH(式中、L=2−フェニルピリジン、ベンゾキノリン、2−チエニルピリジンである)収率は典型的には30%である。
Ir錯体への好ましい経路は、次の反応により塩化物架橋二量体L2M(μ−Cl)2ML2によるものにすることができる: 4L+IrCl3・nH2O→L2M(μ−Cl)2ML2+4HCl
我々が研究したリガンドの10%未満は高い収率でIr二量体をきれいに与えることはできなかったが、二量体のトリス錯体IrL3への転化により問題になる働きをうける配位子はほんの僅かしかない: L2M(μ−Cl)2ML2+2Ag-+2L→L3Ir+2AgCl
【0082】
燐光性錯体を製造するはるかに効果的な方法は、塩化物架橋二量体を用いて発光体を形成することであることを我々は発見した。二量体それ自身は、恐らく隣接金属(例えば、イリジウム)原子により強くクエンチされるため、強く発光することはない。塩化物配位子は次の化学変化によりキレート配位子により置換されて安定な八面体金属錯体を与えることができることが見出された: L2M(μ−Cl)2ML2+XH→L2MX+HCl
【0083】
我々はM=イリジウムの場合の系について広範に研究した。得られたイリジウム錯体は強く発光し、殆どの場合1〜3マイクロ秒(μsec)の寿命を持っている。そのような寿命は燐光であることを示している〔チャールス・キッテル(Charles Kittel)、「固体物理入門」(Introduction to Solid State Physics)参照〕。これらの材料中の遷移は金属配位子電荷移動(MLCT)である。
【0084】
下の詳細な説明では、数多くの異なる錯体の発光スペクトル及び寿命のデーターを分析しており、それら錯体は全てL2MX(M=Ir)〔式中、Lはシクロ金属化(二座)配位子であり、Xは二座配位子である〕として特徴付けることができる。ほとんどのどの場合でも、これら錯体の発光はIrとL配位子との間のMLCT遷移に基づくものであるか、又はその遷移と配位子間遷移との混合に基づくものである。特別な例を下に記述する。理論的及び分光学的研究により、錯体は金属の周りに八面体の配位を有する(例えば、L配位子の窒素複素環の場合、Ir八面体にトランス型配置が存在する)。
【0085】
特に図1には、L=2−フェニルピリジン、X=acac、ピコリネート(ピコリン酸から)、サリチルアニリド、又は8−ヒドロキシキノリネートの場合のL2IrXについての構造が与えられている。
【0086】
V.A.2.d.フェイシャル(facial)異性体対メリジアナル異性体
L2IrXを製造する合成経路の僅かな変化により、式L3Irのメリジアナル異性体を形成することができる。前に開示したL3Ir錯体は、全てキレート配位子のフェイシャル配置を有する。OLED中の燐光体としてのメリジアナルL3Ir錯体の形成及び使用をここに開示する。二つの構造を図2に示す。
【0087】
フェイシャルL3Ir異性体は、式1(下記)に記載したように、還流するグリセロール中でLとIr(acac)3との反応により製造されている。L3Ir錯体への好ましい経路は、式2+3(下記)による塩化物架橋二量体〔L2Ir(μ−Cl)2IrL2〕によるものである。式3の生成物は、Ir(acac)3から形成されたものと同じフェイシャル異性体である。後者の製造法の利点は、フェイシャル−L3Irの収率が一層よいことである。もし塩基及びアセチルアセトネートの存在下で(Ag+無し)第3配位子を二量体に付加するならば、メリジアナル異性体の良好な収率が得られる。メリジアナル異性体は、再結晶化、配位溶媒中での還流、又は昇華によってもフェイシャル異性体に転化しない。これらメリジアナル錯体の二つの例、mer−Irppy及びmer−Irbq(図3)が形成されているが、我々は安定なフェイシャル−L3Irを与える配位子は同様にメリジアナル形態にすることができると考えている。
【0088】
(1) 3L+Ir(acac)3→フェイシャル・L3Ir+acacH(式中、L=2−フェニルピリジン、ベンゾキノリン、2−チエニルピリジン)典型的には収率30%。
(2) 4L+IrCl3・nH2O→L2Ir(μ−Cl)2IrL2+4HCl典型的には90%より大きい収率。Lの例についての添付スペクトル参照。(1)で有効な全ての配位子についても充分成り立つ。
(3) L2Ir(μ−Cl)2IrL2+2Ag++2L→2フェイシャル・L3Ir+2AgCl典型的には収率30%。(1)について充分有効な同じ配位子についてだけ充分成り立つ。
(4) L2Ir(μ−Cl)2IrL2+XH+Na2CO3+L→メリジアナル・L3Ir典型的には80%より大きい収率。XH=アセチルアセトン。
【0089】
思いがけないことに、メリジアナル異性体の光物理性は、フェイシャル型のものとは異なっている。このことは下で論ずるスペクトルの詳細から知ることができるが、それらスペクトルは著しい赤色シフトを示し、そのフェイシャル対応物に対しメリジアナル異性体では広くなっている。発光線は、あたかもフェイシャル・L3Irの特性に赤色帯が付加されたかのように見える。メリジアナル異性体の構造は、例えば、Irの周りの配位子のN原子の配列に関して、L2IrX錯体のものと同様である。特にL=ppy配位子である場合、L配位子の窒素はmer−Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)の両方でトランス型になっている。更にmer−L3Ir錯体のL配位子の一つは、L2IrX錯体のX配位子と同じ配位を有する。この点を例示するため、図4の(ppy)2Ir(acac)の次にmer−Ir(ppy)3のモデルが示されている。mer−Ir(ppy)3のppy配位子の一つは、(ppy)2Ir(acac)のacac配位子と同じ幾何学状態でIr中心に配位している。
【0090】
L3Ir分子のHOMO及びLUMOエネルギーは、異性体の選択により明らかに影響を受ける。これらのエネルギーは、これらの燐光体を用いて製造されるOLEDの電流電圧特性及び寿命をコントロールし、非常に重要である。
【0091】
図3に描いた二つの異性体のための合成は、次の通りである。
【0092】
〔メリジアナル異性体の合成〕:
mer−Irbq: 91mg(0.078mM)の[Ir(bq)2Cl]2 二量体、35.8mg(0.2mM)の7,8−ベンゾキノリン、0.02mgのアセチルアセトン(約0.2mM)、及び83mg(0.78mM)の炭酸ナトリウムを、12mlの2−エトキシエタノール(入手したまま用いた)中で不活性雰囲気中14時間沸騰させた。冷却すると黄橙色沈澱物が形成され、濾過及びフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)により分離した(収率72%)。1H NMR(360MHz、ジクロロメタン−d2)、ppm:8.31(q、1H)、8.18(q、1H)、8.12(q、1H)、8.03(m、2H)、7.82(m、3H)、7.59(m、2H)、7.47(m、2H)、7.40(d、1H)、7.17(m、9H)、6.81(d、1H)、6.57(d、1H)。MS、e/z:727(100%、M+)。NMRスペクトルは図38に示してある。
【0093】
mer−Ir(tpy)3:IrCl3・xH2O(0.301g、1.01mM)、2−(p−トリル)ピリジン(1.027g、6.069mM)、2,4−ペンタンジオン(0.208g、2.08mM)、及びNa2CO3(0.350g、3.30mM)を2−エトキシエタノール(30ml)中に入れた溶液を、65時間還流した。黄緑色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄し、次に乾燥し、固体をCH2Cl2中に溶解し、シリカの短い充填物に通して濾過した。溶媒を減圧除去し、黄橙色粉末として生成物を得た(0.265g、38%)。
【0094】
V.A.3.可能なホスト分子
本発明は、ホスト相中に上記ドーパントを使用することに関する。このホスト相はカルバゾール部分を有する分子からなっていてもよい。本発明の範囲内に入る分子は次のものの中に含まれる:
【0095】
【化3】
【0096】
[線分は、環によって示されている利用可能な炭素原子(単数又は複数)の所での、アルキル又はアリール基による可能な置換を示す。]
【0097】
カルバゾール官能性を有する更に別の好ましい分子は4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)であり、それは次の式を有する:
【0098】
【化4】
【0099】
V.B.1.デバイス中の利用
使用するために選択されるデバイス構造は、標準的真空蒸着されたものと非常に類似している。概観として、ホール輸送層(HTL)を、ITO(インジウム錫酸化物)被覆ガラス基体上に先ず蒸着する。12%の量子効率を与えるデバイスの場合、HTLは30nm(300Å)のNPDからなる。そのNPDの上に、ホストマトリックス中へドープした有機金属の薄膜を蒸着して発光層を形成する。例として、発光層は12重量%のビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムアセチルアセトネート(BTIrと呼ぶ)を含有するCBPであり、その層の厚さは30nm(300Å)であった。発光層の上にブロッキング層を蒸着する。ブロッキング層はバソキュプロイン(BCP)からなり、厚さは20nm(200Å)であった。ブロッキング層の上に電子輸送層を蒸着する。電子輸送層は、厚さ20nmのAlq3からなっていた。電子輸送層の上にMg−Ag電極を蒸着することによりデバイスが完成する。これは100nmの厚さを有する。全ての蒸着は5×10−5トールより低い真空度で行なった。デバイスは包装することなく、空気中で試験した。
【0100】
カソードとアノードの間に電圧を印加すると、ホールがITOからNPDへ注入され、NPD層により輸送され、一方電子はMgAgからAlqへ注入され、Alq及びBCPを通って輸送される。次にホールと電子はEMLへ注入され、キャリヤー再結合がCBPで起き、励起状態が形成され、BTIrへのエネルギー移動が起き、最終的にBTIr分子が励起され、放射崩壊する。
【0101】
図5に例示したように、このデバイスの量子効率は約0.01mA/cm2の電流密度で12%である。
【0102】
関連する用語は以下のとおりである: ITOは、アノードとしての機能を果たすインジウム錫酸化物の透明伝導性相である。 ITOは、広帯域半導体をドープすることにより形成された縮退型半導体である。ITOのキャリヤー濃度は1019/cm3を超えている。 BCPは励起子をブロックし、電子を輸送する層である。 Alq3は、電子注入層である。 他のホール輸送層材料を用いてもよい。例えば、TPDホール輸送層を用いることができる。
【0103】
BCPは電子輸送層及び励起子ブロッキング層としての機能を果たし、その層は約10nm(100Å)の厚さを有する。BCPは2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソキュプロインとも呼ばれている)であり、次の式を有する:
【0104】
【化5】
【0105】
電子注入/電子輸送層としての機能を果たすAlq3は、次の式を有する:
【0106】
【化6】
【0107】
一般に、ドーピング量は最適ドーピング量を達成するように変化させる。
【0108】
V.B.2.燐光性錯体への蛍光性配位子の配合
上で述べたように、蛍光材料はデバイス中の発光体として或る利点を有する。L2MX(例えば、M=Ir)錯体を製造するのに用いられるL配位子が大きな蛍光量子効率を有するならば、配位子の三重項状態を出入りする項間交差を効率的に行わせるため、Ir金属の強いスピン軌道結合を用いることができる。この概念は、IrがL配位子を効果的な燐光中心にすると言うことにある。この方法を用いて、どのような蛍光染料を用いても、それから効果的な燐光分子を作ることができる(即ち、Lは蛍光を発するが、L2MX(M=Ir)は燐光を発する)。
【0109】
一例として、L=クマリン及びX=acacである場合のL2IrXを製造した。これをクマリン−6(C6Ir)として言及する。この錯体は強い橙色の発光を与えるのに対し、クマリン自身は緑色に発光する。クマリンとC6Irの両方のスペクトルが図に与えられている。
【0110】
他の蛍光染料も同様なスペクトルの移行を示すと予想されるであろう。色素レーザー及び他の用途のために開発された蛍光染料の数は極めて多いので、この方法は極めて広範な燐光材料をもたらすものと予想される。
【0111】
5又は6員環メタロサイクルを形成させるためには、金属(例えば、イリジウム)によりメタレート化することができるように、適当な官能基を有する蛍光染料を必要とする。今日まで我々が研究したL配位子は、全て配位子にsp2混成軌道炭素及び複素環N原子を有し、従って、Irと反応させて5員環を形成することができる。
【0112】
V.B.3.X又はL配位子でのキャリヤートラップ
ホール又は電子を含めた潜在的な劣化反応が発光層で起きることがある。得られる酸化又は還元は発光体を変え、性能を劣化させる。
【0113】
燐光体ドープOLEDの最大効率を得るためには、望ましくない酸化又は還元反応を生ずるホール又は電子を制御することが重要である。これを行う一つの方法は、燐光性ドーパントの所でキャリヤー(ホール又は電子)をトラップすることである。燐光に関係する原子又は配位子から遠い位置にあるキャリヤーをトラップすることが有利である。このように遠くでトラップされるキャリヤーは、分子間的に反対キャリヤーと、又は隣接する分子からのキャリヤーと容易に再結合するであろう。
【0114】
ホールをトラップするように設計した燐光体の例を図6に示す。サリチルアニリド基のジアリールアミン基は、Ir錯体のものよりも200〜300mV高いHOMOレベル(電気化学的測定に基づく)を有すると予想され、排他的にアミン基の所でホールがトラップされるようになる。ホールはアミンの所で容易にトラップされるが、この分子からの発光はMLCTから来て、Ir(フェニルピリジン)系からの配位子間遷移から来るであろう。この分子にトラップされた電子はピリジル配位子の一つの中にある場合が最も多いと思われる。分子間再結合は殆どIr(フェニルピリジン)系中での励起子の形成をもたらすであろう。トラップ部位は、ルミネッセンス過程では広範には含まれていないのが典型的なX配位子の上にあるので、トラップ部位の存在は錯体の発光エネルギーに大きな影響を与えることはないであろう。L2Ir系に対し遠い所で電子キャリヤーがトラップされる関連分子を設計することができる。
【0115】
V.B.4.色の調節
IrL3系で見られるように、発光色はL配位子により大きな影響を受ける。このことは、MLCT又は配位子間遷移を含めた発光と一致している。我々がトリス錯体(即ち、IrL3)及びL2IrX錯体の両方を製造することができた場合の全てにおいて、発光スペクトルは非常に似ていた。例えば、Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)〔アクロニム(acronym)=PPIr〕は、510nmのλmaxを有する強い緑色発光を与える。同様な傾向は、Ir(BQ)3 及びIr(thpy)3を、それらのL2Ir(acac)誘導体と比較した時にも見られ、即ち、或る場合には二つの錯体の間で発光の大きなずれはない。
【0116】
しかし、別の場合には、X配位子の選択が発光のエネルギー及び効率の両方に影響を与える。acac及びサリチルアニリドL2IrX錯体は非常に類似したスペクトルを与える。今までの所我々が製造したピコリン酸誘導体は、同じ配位子のacac及びサリチルアニリド錯体に対し、それらの発光スペクトルで僅かな青色シフト(15nm)を示している。このことはBTIr、BTIrsd、及びBTIrpicのスペクトルで見ることができる。これら三つの錯体の全てにおいて、我々は発光がMLCT及び相互L遷移から主に生じ、ピコリン酸配位子は金属軌道のエネルギーを変え、それによりMLCT帯に影響を与えるものと予想している。
【0117】
もし三重項レベルが「L2Ir」骨格よりもエネルギーが低く落ちたX配位子を用いるならば、そのX配位子からの発光を観察することができる。これは、BTIrQ錯体の場合である。この錯体では、発光強度は非常に弱く、650nmの所に中心がある。このことは全く思いがけないことである。なぜなら、BT配位子に基づく系の発光は全てほぼ550nmの所にあるからである。この場合の発光は殆ど完全にQ系遷移からのものである。重金属キノレート(例えば、IrQ3又はPtQ2)についての蛍光スペクトルは650nmの所に中心がある。錯体自身は非常に低い効率、<0.01で発光する。L2IrQ材料のエネルギー及び効率の両方は、「X」に基づく発光と一致している。もしX配位子又は「IrX」系からの発光が効率的であるならば、これは良好な赤色発光体になったであろう。ここに列挙した例の全てが強い「L」発光体であるが、これは「X」に基づく発光から形成されている良好な燐光体を除外するものではないことに注意することは重要である。
【0118】
X配位子の選択が悪くても、L2IrX錯体からの発光をひどくクエンチすることがある。ヘキサフルオロ−acac及びジフェニル−acacの両方の錯体は、L2IrX錯体のX配位子として用いた場合、非常に弱い発光を与えるか、又は発光を全く示さない。これらの配位子が発光をそのように強くクエンチする理由は完全には明らかになっていないが、これらの配位子の一つはacacよりも一層電子を引き付け、他のものは一層電子を与える。BQIrFAのスペクトルを図に示している。この錯体の発光スペクトルは、ヘキサフルオロacac配位子の遥かに強い電子吸引性から予測されるように、BQIrから僅かにシフトしている。BQIrFAからの発光強度は、BQIrよりも少なくとも2桁弱い。このひどいクエンチ問題のため、これらの配位子の錯体は研究しなかった。
【0119】
V.C.他の分子についての記述
ここに記載したデバイスではCBPを用いた。本発明は、OLEDのホール輸送層として働かせるための、当業者に既知の他のホール輸送分子を用いても有効である。
【0120】
特に本発明は、カルバゾール官能基、又は同様なアリールアミン官能基を有する他の分子を用いても有効である。
【0121】
V.D.デバイスの使用
本発明のOLEDは、OLEDを有する実質的にどのような型の装置にでも用いることができ、例えば、大画面ディスプレイ、乗り物、コンピュータ、テレビ、プリンター、大面積壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、掲示板、又は標識に組み込まれるOLEDに用いることができる。
【0122】
ここに記載した本発明は、次の係属中の出願と共に用いてもよい:「高信頼性、高効率、集積可能有機発光デバイス及びその製造方法」(High Reliability, High Efficiency, Integratable Organic Light Emitting Devices and Methods of Producing Same)、米国特許出願Serial No.08/774,119(1996年12月23日出願);「多色発光ダイオードのための新規な材料」(Movel Materials for Multicolor Light Emitting Devices)、Serial No.08/850,264(1997年5月2日出願);「有機遊離ラジカルに基づく電子移動及び発光層」(Electron Transporting and Light Emitting Layers Based on Organic Free Raicals)、Serial No.08/774,120(1996年12月23日出願)(1998年9月22日、米国特許第5,811,833号として公告された);「多色表示デバイス」(Multicolor Display Devices)、Serial No.08/772,333(1996年12月23日出願);「赤色発光有機発光デバイス(OLED)」(Red-Emitting Organic Light Emitting Devices (OLED's))、Serial No.08/774,087(1996年12月23日出願)(認可された);「積層有機発光デバイスのための駆動回路」(Driving Circuit For Stacked Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/792,050(1997年2月3日出願)(1998年5月26日、米国特許第5,757,139号として公告された);「高効率有機発光デバイス構造体」(High Efficiency Organic Light Emitting Device Structures)、Serial No.08/772,332(1996年12月23日出願)(1998年11月10日、米国特許第5,834,893号として公告された);「真空蒸着非重合体可撓性有機発光デバイス」(Vacuum Deposited, Non-Polymeric Flexible Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/789,319(1997年1月23日出願)(1998年12月1日、米国特許第5,844,363号として公告された);「メサピクセル構造を有する表示器」(Displays Having Mesa Pixel Configuration)、Serial No.08/794,595(1997年2月3日出願);「積層有機発光デバイス」(Stacked Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/792,046(1997年2月3日出願)(1999年6月29日、米国特許第5,917,280号として公告された);「高コントラスト透明有機発光デバイス」(High Contrast Transparent Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/792,046(1997年2月3日出願);「高コントラスト透明有機発光デバイスディスプレイ」(High Contrast Transparent Organic Light Emitting Device Display)、Serial No.08/821,380(1997年3月20日出願);「ホスト材料として5−ヒドロキシ−キノキサリンの金属錯体を含有する有機発光デバイス」(Organic Light Emitting Devices Containing A Metal Complex of 5-Hydroxy-Quinoxaline as A Host Material)、Serial No.08/838,099(1997年4月15日出願)(1999年1月19日、米国特許第5,861,219号として公告された);「高輝度を有する発光デバイス」(Light Emitting Devices Having High Brightness)、Serial No.08/844,353(1997年4月18日出願);「有機半導体レーザー」(Organic Semiconductor Laser)、Serial No.08/859,468(1997年5月19日出願);「飽和天然色積層有機発光デバイス」(Saturated Full Color Stacked Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/858,994(1997年5月20日出願)(1999年8月3日、米国特許第5,932,895号として公告された);「伝導性層のプラズマ処理」(Plasma Treatment of Conductive Layers)、PCT/US97/10252(1997年6月12日出願);「多色発光ダイオードのための新規な材料」(Novel Materials for Multicolor Light Emitting Diodes)、Serial No.08/814,976(1997年3月11日出願);「多色発光ダイオードのための新規な材料」(Novel Materials for Multicolor Light Emitting Diodes)、Serial No.08/771,815(1996年12月23日出願);「有機多色表示デバイスを製造するための薄膜パターン化」(Patterning of Thin Films for the Fabrication of Organic Multi-color Displays)、PCT/US97/10289(1997年6月12日出願);及び「二重ヘテロ構造赤外及び垂直空洞表面発光有機レーザー」(Double Heterostructure Infrared and Vertical Cavity Surface Emitting Organic Lasers)、1998年5月8日出願、PCT/US98/09480;1998年3月23日公告、米国特許第5,874,803;1998年1月13日公告、米国特許第5,707,745;1997年12月30日公告、米国特許第5,703,436;及び1998年5月26日公告、米国特許第5,757,026。各係属中の出願は、参考のため全体を本明細書に援用する。
【技術分野】
【0001】
I.(技術分野)
本発明は、式L2MX(式中、L及びXは異なる二座配位子であり、Mは金属、特にイリジウムである)の有機金属化合物、それらの合成、及び或るホスト中のドーパントとして、有機発光デバイスの発光層を形成するために使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
II.(背景技術)
II.A.一般的背景
有機発光デバイス(OLED)は、幾つかの有機層から構成され、それら層の中の一つは、デバイスを通って電圧を印加することによりエレクトロルミネッセンスを生ずるようにすることができる有機材料から構成されている。C.W.タング(Tang)ら、Appl. Phys. Lett., 51, 913, (1987)。或るOLEDは、LCD系フルカラーパネルディスプレイに代わる実際的技術として用いるのに充分な輝度、色の範囲、及び作動寿命を有することが示されている〔S.R.フォレスト(Forrest)、P.E.バローズ(Burrows)、及びM.E.トンプソン(Thompson)、Laser Focus World, Feb. (1995)〕。そのようなデバイスで用いられている有機薄膜の多くは可視スペクトル範囲で透明なので、それらは、赤(R)、緑(G)、及び青(B)を発光するOLEDを垂直に積み重ねた形態で配置し、簡単な製造方法、小さなR−G−Bピクセルサイズ、及び大きな充填率を与える完全に新規な型の表示ピクセルを実現させることができる。国際特許出願No.PCT/US95/15790。
【0003】
大きな解像力を持ち、独立にアドレスすることができる積層R−G−Bピクセルを実現するための重要な段階を示す透明OLED(TOLED)が、国際特許出願No.PCT/US97/02681に報告されており、この場合TOLEDは、スイッチを切った時、71%より大きな透明度を示し、デバイスのスイッチを入れた時、大きな効率(1%に近い量子効率)で上及び下の両方のデバイス表面から光を出す。そのTOLEDは、ホール注入電極として透明インジウム錫酸化物(ITO)を、電子注入のためにNg−Ag−ITO電極層を用いている。Ng−Ag−ITO層のITO側が、TOLEDの上に積層された第二の別の色の発光OLEDのためのホール注入接点として用いられているデバイスが開示されている。積層OLED(SOLED)の各層は、独立にアドレスすることができ、それ自身の特性色を発光する。この着色発光は、隣接して積層された透明の独立にアドレスすることができる有機層(単数又は複数)、透明接点、及びガラス基板を通って伝達され、赤色及び青色の発光層の相対的出力を変化させることにより生ずることができるどのような色でもデバイスが発光できるようにしている。
【0004】
PCT/US95/15790出願には、色調節可能な表示装置で外部から供給される電力で強度及び色の両方を独立に変化し、調節することができる集積SOLEDが開示されている。このように、PCT/US95/15790出願は、小型のピクセルサイズによって可能にされた大きな解像力を与える集積フルカラーピクセルを達成する原理を例示している。更に、従来の方法と比較して、そのようなデバイスを製造するために比較的低いコストの製造技術を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願PCT/US95/15790号
【特許文献2】国際特許出願PCT/US97/02681号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C. W.Tangら、Appl. Phys. Lett., 51, 913 (1987)
【非特許文献2】S. R. Forrest、P. E. Burrows、及びM. E. Thompson、Laser Focus World, Feb. (1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
II.B. 発光の背景
II.B.1.基礎
II.B.1.a.一重項及び三重項励起子
有機材料では分子励起状態又は励起子の崩壊により光が発生するので、それらの性質及び相互作用を理解することは、ディスプレイ、レーザー、及び他の照明用途におけるそれらの潜在的用途のため現在大きな関心が持たれている効率的な発光デバイスの設計にとって重要である。例えば、励起子の対称性が基底状態のものと異なっていると、励起子の放射性緩和は不可能になり、ルミネッセンスは遅く非効率的になる。基底状態は通常励起子を含む電子スピンの交換では反対称なので、対称性励起子の崩壊は対称性を破る。そのような励起子は三重項として知られており、この用語はその状態の縮退を反映している。OLEDでの電気的励起により形成されたどの三つの三重項励起子に対しても、唯一つの対称状態(即ち、一重項)励起子が生ずる。〔M.A.バルド(Baldo)、D.F.オブライエン(O'Brien)、M.E.トンプソン(Thompson)、及びS.R.フォレスト(Forrest)、「電気燐光に基づく非常に高い効率の緑色有機発光デバイス」(Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence)、Applied Physics Letters, 75, 4-6, (1999)〕。対称性不可過程からのルミネッセンスは、燐光として知られている。特徴として、燐光は遷移の確率が低いため、励起後数秒間まで持続することがある。これに対し蛍光は一重項励起の早い崩壊に由来する。この過程は同じ対称性の状態の間で起きるので、それは非常に効率的である。
【0008】
多くの有機材料は一重項励起子からの蛍光を示す。しかし、ほんの僅かなものだけしか三重項による効果的室温燐光を出すことができないことも確認されている。例えば、殆どの蛍光染料では、三重項状態に含まれているエネルギーは浪費される。しかし、三重項励起状態が摂動を起こすと、例えば、スピン軌道結合(典型的には、重金属原子の存在により起きる)により摂動を起こすと、効果的燐光が一層起き易くなる。この場合、三重項励起はいくらか一重項特性をとり、それは基底状態へ放射性崩壊する一層大きな確率を有する。実際、これらの性質を有する燐光染料は、大きな効率のエレクトロルミネッセンスを示している。
【0009】
三重項による効果的室温燐光を示すことが確認されている有機材料はほんの僅かしかない。これとは対照的に、多くの蛍光染料が知られており〔C.H.チェン(Chen)、J.シ(Shi)、及びC.W.タング(Tang)、「分子状有機エレクトロルミネッセンス材料における最近の発展」(Recent developments in molecular organic electroluminescent materials)、Macromolecular Symposia., 125, 1-48, (1997);U.ブラックマン(Brackmann)、「ラムダクロム・レーザー染料」(Lambdachrome Laser Dyes)、ラムダ・フィジーク(Lambda Physik)、ゲッチンゲン、1997〕、溶液中の蛍光効率が100%に近くなることは異常なことではない(C.H.チェン、1997、上記参照)。蛍光は、大きな励起密度で燐光発光を減少させる三重項・三重項消滅によって影響を受けない〔M.A.バルドその他、「有機エレクトロルミネッセンスデバイスからの高効率燐光発光」(High efficiency phosphorescent emission from organic electroluminescent devices)、Nature, 395, 151-154, (1998);M.A.バルド、M.E.トンプソン、及びS.R.フォレスト、「電気燐光デバイスでの三重項・三重項消滅の解析モデル」(An analytic model of triplet-triplet annihilation in electrophosphorescent devices)、1999〕。従って、蛍光材料は多くのエレクトロルミネッセンス用途に適しており、特にパッシブマトリックスディスプレイに適している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
II.B.1.b.本発明の基礎に関する概説
本発明は、式LL’L’’M〔式中、L、L’、及びL’’は異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する40より大きな原子番号の金属であり、好ましくは周期表の遷移シリーズ(series)の第3系列遷移金属の金属である〕の錯体に関する。あるいは、Mは第2系列遷移金属の金属、又は主グループ金属(main group metals)、例えばZr及びSbにすることができる。そのような有機金属錯体のあるものは、エレクトロルミネッセンスを示し、最低エネルギー配位子又はMLCT状態から来た発光を示す。そのようなエレクトロルミネッセンス化合物は、発光ダイオードの発光層のホスト層中のドーパントとして用いることができる。本発明は、更に式LL’L’’M(式中、L、L’及びL’’は同じか又は異なり、L、L’、及びL’’はモノアニオン性二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、好ましくは遷移金属の第3系列の金属、一層好ましくはIr又はPtであり、それら配位子を配位する原子は、sp2混成軌道(hybridized)炭素及びヘテロ原子からなる)の錯体に関する。本発明は、更にL2MX〔式中、L及びXは異なる二座配位子であり、Lはsp2混成軌道炭素及びヘテロ原子を有するLの原子によりMに配位しており、Mは八面体錯体を形成する金属、好ましくはイリジウム(Ir)である〕に関する。これらの化合物は、有機発光ダイオードの発光層として働くホスト層中のドーパントとして働くことができる。
【0011】
本発明の化合物は、式L2M(μ−Cl)2ML2(式中、Lは二座配位子であり、MはIrなどの金属である)の塩化物架橋二量体と、二座配位子Xを導入する働きをする物質XHとの直接反応により製造することができる。XHは、例えば、アセチルアセトン、2−ピコリン酸、又はN−メチルサリチルアニリドにすることができ、Hは水素を表す。得られる生成物は式L2MXを有し、この場合、Mの回りに二座配位子L、L、及びXの八面体配位を得ることができる。
【0012】
式L2MXの得られた化合物は、有機発光デバイスの燐光発光体として用いることができる。例えば、L=(2−フェニルベンゾチアゾール)、X=アセチルアセトネート、及びM=Ir(BTIrとして省略する化合物)である場合の化合物は、OLED中の発光層を形成するために4,4’−N, N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)中のドーパントとして(質量で12%のレベルで)用いた場合、12%の量子効率を示す。参考として、式CBPは、次の通りである:
【0013】
【化1】
【0014】
L2MXを製造するための合成法は、L自身が蛍光体であるが、得られるL2MXが燐光体である場合に有利に用いることができる。この一つの特別な例は、L=クマリン−6の場合である。
【0015】
この合成法は、或る所望の特性を有するLとXの対の結合を容易にする。
【0016】
LとXを適切に選択することにより、L3Mに対する錯体L2MXの色の調節を行うことができる。例えば、Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)の両方共510nmのλmaxを有する強い緑色発光を与える[ppyはフェニルピリジンを表す]。しかし、X配位子がアセチルアセトンからではなく、ピコリン酸から形成されている場合、約15nmの小さな青色シフトがある。
【0017】
更に、Xは、発光品質の劣化を起こすことなく、キャリヤー(ホール又は電子)がX(又はL)にトラップされるように、L3M錯体に対し、或るHOMOレベルを有するように選択することができる。このようにして、他のやり方では燐光体の有害な酸化又は還元を起こす原因になることがあるキャリヤー(ホール又は電子)が阻止されるであろう。遠くでトラップされるキャリヤーは分子間的に反対符合のキャリヤーと、又は隣接分子からのキャリヤーと容易に再結合するであろう。
【0018】
本発明及びその種々の態様を、下の実施例で一層詳細に論ずる。しかし、それらの態様は異なる機構によって作動させることもできる。本発明の種々の態様が作動する種々の機構を論ずるが、それらによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0019】
II.B.1.c.デキスター(Dexter)及びフェルスター(Foerster)機構
根底にあるエネルギー移動機構の理論を論ずる事は、本発明の異なる態様を理解するのに役に立つであろう。受容体分子へのエネルギーの移動については一般に二つの機構が論じられている。デキスター移動〔D.L.デキスター、「固体中の増感ルミネッセンスの理論」(A theory of sensitized luminescence in solids)、J. Chem. Phys., 21, 836-850, (1953)〕の第一の機構では、励起は一つの分子から次の分子へ直接跳び移ることができる。これは、隣り合った分子の分子軌道の重複に依存する短距離過程である。それは供与体と受容体の対の対称性も保持する〔E.ウィグナー(Wigner)及びE.W.ウィトマー(Wittmer)、「量子力学による二原子分子スペクトルの構造」(Uber die Struktur der zweiatomigen Molekelspektren nach der Quantenmechanik)、Zeitshrift fur Physik, 51, 859-886, (1928);M.クレッシンゲル(Klessinger)及びJ.ミッチェル(Michl)、「有機分子の励起状態及び光化学」(Excited states and photochemistry of organic molecules)(VCH出版社、ニューヨーク、1995)。従って、式(1)のエネルギー移動はデキスター機構によっては不可能である。フェルスター移動の第二機構では〔T.フェルスター、「分子間エネルギー移動及び蛍光」(Zwischenmolekulare Energiewanderung and Fluoreszenz)、Annalen der Physik, 2, 55-75 (1948);T.フェルスター、「有機化合物の蛍光」(Fluoreszenz organischer Verbindugen)(Vandenhoek and Ruprecht、ゲッチンゲン、1951)〕、式(1)のエネルギー移動は可能である。フェルスターの移動では、送信機及びアンテナと同様に、供与体及び受容体分子の双極子が結合し、エネルギーは移動することができる。双極子は供与体と受容体の両方の分子中で許容された遷移によって生ずる。このことは、典型的にはフェルスター機構を一重項状態の間の移動に限定させることになる。
【0020】
それにも拘わらず、重金属原子によって導入されるスピン軌道結合によるなどして、状態の或る摂動により燐光体が光を発することができる限り、それはフェルスター移動での供与体としての役割も果たすことができる。この過程の効率は燐光体のルミネッセンス効率により決定され〔F.ウィルキンソン(Wilkinson)、「光化学の進歩」(Advances in Photochemistry)、W.A.ノイズ(Noyes)、G.ハモンド(Hammond)、及びJ.N.ピッツ(Pitts)編集、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1964、pp.241−268〕、即ち、もし非放射性崩壊よりも放射性遷移の方が一層起き易いならば、エネルギー移動は効果的に行われるであろう。そのような三重項・一重項移動は、フェルスターによって予測されており〔T.フェルスター、「電子励起の移動機構」(Transfer mechanisms of electronic exitation)、Discussions of the Faraday Society, 27, 7-17, (1959)〕、エルモラエフ(Ermolaev)及びスベシニコワ(Sveshnikova)によって確認されており〔V.L.エルモラエフ及びE.B.スベシニコワ、「三重項状態の芳香族分子からの誘導共鳴エネルギー移動」(Inductive-resonance transfer of energy from aromatic molecules in the triplet state)、Doklady Akademii Nauk SSSR, 149, 1295-1298, (1963)〕、彼らは77K又は90Kで固体媒体中の或る範囲の燐光供与体及び蛍光受容体を用いてエネルギー移動を検出した。長距離移動が観察されており、例えば、供与体としてトリフェニルアミン、受容体としてクリソイジンを用いて、相互作用範囲は52Åである。
【0021】
フェルスター移動のための残りの条件は、励起及び基底状態の分子対の間のエネルギーレベルが共鳴していると仮定して、吸収スペクトルが供与体の発光スペクトルと重なり合っていることである。本願の例1では、我々は緑燐光体facトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム〔Ir(ppy)3;M.A.バルド(Baldo)、その他、Appl. Phys. Lett., 75, 4-6, (1999)〕、及び赤色蛍光染料、[2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−イリデン]プロパン−ジニトリル]〔「DCM2」;C.W.タング(Tang)、S.A.ファンスライケ(VanSlyke)、及びC.H.チェン(Chen)、「ドープした有機フイルムのエレクトロルミネッセンス」(Electroluminescence of doped organic films)、J. Appl. Phys., 65, 3610-3616, (1989)〕を用いた。DCM2は緑で吸収し、局部的分極場によりそれはλ=570nmとλ=650nmの間の波長で発光する〔V.ブロビック(Bulovic)その他、「分極誘導スペクトル移動に基づく明るい飽和赤〜黄橙色発光デバイス」(Bright, saturated, red-to-yellow organic light-emitting devices based on polarization-induced spectral shifts)、Chem. Phys. Lett., 287, 455-460, (1998)〕。
【0022】
燐光性ホスト材料中に蛍光性ゲストをドーピングすることにより、三重項状態からフェルスターエネルギー移動を行わせることが可能になる。残念ながらそのような系は、全効率を低下させる競合エネルギー移動機構により影響を受ける。特にホスト及びゲストの密接な近接性が、ホストからゲスト三重項へのデキスター移動の可能性を増大する。励起子がゲスト三重項状態に近づくと、それら励起子は効果的に失われる。なぜなら、これら蛍光染料は極めて非効率的な燐光を示すのが典型的だからである。
【0023】
ホスト三重項の蛍光染料一重項への移動を最大にするため、燐光体の三重項状態へのデキスター移動を最大にすると同時に、蛍光染料の三重項状態への移動を最小にすることが望ましい。デキスター機構は隣り合った分子間のエネルギーを移動させるので、蛍光染料の濃度を減少させると、染料への三重項・三重項移動の確率が減少する。一方、一重項状態への長距離フェルスター移動は影響を受けない。これとは対照的に、燐光体の三重項状態への移動はホスト三重項を利用するのに必要であり、燐光体の濃度を増大することにより改善することができる。
【0024】
II.B.2.デバイス構造と発光との相関関係
有機光電子材料の層を用いることに基づく構造を有するデバイスは、一般に光学的発光を与える一般的機構に依存している。この機構は捕捉された電荷の発光性再結合に基づいているのが典型的である。特にOLEDは、デバイスのアノードとカソードを分離する少なくとも二つの薄い有機層を有する。これらの層の一つの材料は、特に材料のホールを輸送する能力に基づいて選択された「ホール輸送層」(HTL)であり、他方の層の材料は特に電子を輸送するその能力に従って選択された「電子輸送層」(ETL)である。そのような構造により、デバイスはダイオードとして見ることができ、アノードに印加された電位がカソードに印加された電位よりも高い時、順方向バイアスとなる。これらのバイアス条件下では、アノードはホール輸送層中へホール(正電荷キャリヤー)を注入し、一方カソードは電子輸送層に電子を注入する。これにより、ルミネッセンス媒体の、アノードに隣接した部分はホール注入及び輸送領域を形成し、一方ルミネッセンス媒体の、カソードに隣接した部分は電子注入及び輸送領域を形成する。注入されたホール及び電子は、夫々反対に帯電した電極の方へ移動する。同じ分子に電子及びホールが局在すると、フレンケル(Frenkel)励起子が形成される。この寿命の短い状態の再結合は、電子がその伝導電位から価電子帯へ落ちた時に可視化され、或る条件下では優先的に発光機構により緩和が起きる。典型的な薄層有機デバイスの作動機構のこの見解によれば、エレクトロルミネッセンス層は易動性電荷キャリヤー(電子及びホール)を各電極から受けるルミネッセンス領域を有する。
【0025】
上で述べたように、OLEDからの発光は、蛍光又は燐光によるのが典型的である。燐光の利用には問題がある。大きな電流密度では燐光効率は急速に低下することが認められている。長い燐光寿命は発光部位の飽和を起こし、三重項・三重項消滅も効率の低下を生ずることになる。蛍光と燐光との別の相違点は、伝導性ホストからルミネッセンスゲスト分子への三重項のエネルギー移動が一重項のものよりも遅いのが典型的であると言うことである。一重項のエネルギー移動を支配する長距離双極子・双極子結合(フェルスター移動)は、(理論的には)スピン対称性保存の原理により三重項に対しては禁止されている。従って、三重項の場合、エネルギー移動は隣り合った分子への励起子の拡散によって起きるのが典型的であり(デキスター移動)、供与体と受容体の励起波動関数のかなりの重複がエネルギー移動には必須である。別の問題は、三重項拡散距離が、約200Åの典型的な一重項拡散距離と比較して長い(例えば、>1400Å)のが典型的なことである。従って、燐光デバイスがそれらの可能性を実現できるものであるためには、デバイス構造は三重項特性に最適なものになっている必要がある。本発明では、外部量子効率を向上させるため長距離三重項拡散の性質を利用している。
【0026】
燐光の利用に成功することは、有機エレクトロルミネッセンスデバイスの膨大な前途を約束するものである。例えば、燐光の利点は、(一つには)燐光デバイスの三重項に基づく全ての励起子(EL中でのホールと電子との再結合により形成される)が、或るエレクトロルミネッセンス材料でエネルギー移動及びルミネッセンスに関与することができることである。これに対し一重項に基づく蛍光デバイスでは、僅かな割合の励起子しか蛍光ルミネッセンスを与える結果にならない。
【0027】
別の方法は、蛍光過程の効率を向上させるため燐光過程を利用することである。蛍光は原理的には、対称励起状態の3倍大きな数により75%低い効率になる。
【0028】
II.C.材料の背景
II.C.1.基本的ヘテロ構造
典型的には、少なくとも一つの電子輸送層及び少なくとも一つのホール輸送層が存在するので、ヘテロ構造を形成する異なる材料の層が存在する。エレクトロルミネッセンス発光を生ずる材料は、電子輸送層又はホール輸送層として働く材料と同じ材料である。電子輸送層又はホール輸送層が発光層としても働くそのようなデバイスは、単一ヘテロ構造を有するとして言及されている。あるいは、エレクトロルミネッセンス材料は、ホール輸送層と電子輸送層との間の別の発光層中に存在していてもよく、それは二重ヘテロ構造と呼ばれている。その別の発光層はホスト中へドープした発光分子を含んでいてもよく、または発光層は発光分子のみから本質的になっていてもよい。
【0029】
即ち、電荷キャリヤー層、即ち、ホール輸送層又は電子輸送層中の主たる成分として存在し、電荷キャリヤー材料及び発光材料の両方として機能を果たす発光材料の外に、電荷キャリヤー層中のドーパントとして比較的低い濃度で発光材料が存在していてもよい。ドーパントが存在する場合には、電荷キャリヤー層中の主たる材料はホスト化合物又は受容性化合物と呼ぶことができる。ホスト及びドーパントとして存在する材料は、ホストからドーパント材料へ高レベルのエネルギー遷移を与えるように選択する。更に、これらの材料はOLEDのための許容可能な電気的性質を生ずることができる必要がある。更に、そのようなホスト及びドーパント材料は、便利な製造技術を用いて、特に真空蒸着法を用いてOLED中に容易に配合することができる材料を用いてOLED中へ導入することができることが好ましい。
【0030】
II.C.2.励起子ブロッキング層
励起子の拡散を実質的に妨げ、それによって励起子を実質的に発光層内に留め、デバイスの効率を増大させるため、OLCDデバイス内に励起子ブロッキング層(exciton blocking layer)を入れることができる。ブロッキング層の材料は、その最低空軌道(LUMO)及びその最高被占軌道(HOMO)との間のエネルギー差(禁止帯幅)を特徴とする。この禁止帯幅はブロッキング層を通る励起子の拡散を実質的に防ぐが、完成したエレクトロルミネッセンスデバイスのスイッチを入れた時の電圧で最小の効果しか持たない。従って、その禁止帯幅は発光層中で生じた励起子のエネルギーレベルよりも大きく、そのような励起子がブロッキング層中に存在することができないようにするのが好ましい。特に、ブロッキング層の禁止帯幅は、ホストの三重項状態と基底状態とのエネルギー差と少なくとも同じ位の大きさである。
【0031】
ホール伝導性ホストと電子輸送層との間にブロッキング層が存在する状態では、相対的重要性の順序で列挙する次の特性が求められる。
【0032】
1. ブロッキング層のLUMOとHOMOとの間のエネルギー差が、ホスト材料の三重項と基底状態一重項とのエネルギー差よりも大きい。
2. ホスト材料中の三重項はブロッキング層によりクエンチされない。
3. ブロッキング層のイオン化ポテンシャル(IP)は、ホストのイオン化ポテンシャルよりも大きい(ホールはホスト中に保持されることを意味する)。
4. ブロッキング層のLUMOのエネルギーレベルと、ホストのLUMOのエネルギーレベルとが、デバイスの全伝導度の変化が50%より少なくなるようにエネルギーが充分近接している。
5. ブロッキング層は、発光層から隣接層への励起子の移動を効果的に遮断するのに充分な層の厚さを有することを条件として、できるだけ薄くする。
【0033】
即ち、励起子及びホールを遮断するため、ブロッキング層のイオン化ポテンシャルはHTLのそれよりも大きくすべきであり、同時にブロッキング層の電子親和力は、電子を輸送し易くできるようにETLのそれとほぼ等しくなっているべきである。 [ホール輸送ホストを用いずに放射性(発光)分子を用いた場合には、ブロッキング層を選択するための上記規則は、「ホスト」と言う言葉を「発光分子」によって置き換えることにより修正する。]
【0034】
電子伝導性ホストとホール輸送層との間にブロッキング層を用いた補助的状態について、それらの特性を求める(重要性の順序で列挙した):
【0035】
1. ブロッキング層のLUMOとHOMOとの間のエネルギー差が、ホスト材料の三重項と基底状態一重項とのエネルギー差よりも大きい。
2. ホスト材料中の三重項はブロッキング層によりクエンチされない。
3. ブロッキング層のLUMOのエネルギーは、(電子輸送)ホストのLUMOのエネルギーよりも大きい。(電子がホストに保持されることを意味する)。
4. ブロッキング層のイオン化ポテンシャル及びホストのイオン化ポテンシャルは、ホールが障壁からホストへ容易に注入され、デバイスの全伝導度の変化が50%より小さくなるようなものである。
5. ブロッキング層は、発光層から隣接層への励起子の移動を効果的に遮断するのに充分な層の厚さを有することを条件として、できるだけ薄くする。
【0036】
[電子輸送ホストを用いずに放射性(発光)分子を用いた場合には、ブロッキング層を選択するための上記規則は、「ホスト」と言う言葉を「発光分子」によって置き換えることにより修正する。]
【0037】
II.D.色
色に関し、三つの主要な色、赤、緑及び青の一つに相当する選択されたスペクトル領域に近い所に中心を有する比較的狭い帯域でエレクトロルミネッセンス発光を与える材料を用いてOLEDを製造し、それらがOLED又はSOLED中の着色層として用いることができるようにすることが望ましい。そのような化合物は、真空蒸着法を用いて薄層として容易に蒸着することができ、真空蒸着有機材料から全て製造されるOLED中に容易にそれらを組み込むことができるようにすることも望ましい。
【0038】
1996年12月23日に出願された米国特許出願Serial No.08/774,333(許可された)は、飽和赤色発光を生ずる発光化合物含有OLEDに関する。
【0039】
III. (発明の開示)
一般的なレベルとして、本発明は、40より大きな原子番号を有する金属Mの錯体に関し、ここでMは三つの二座配位子を有する八面体錯体を形成する。金属には、Sbなどの主グループ金属、「周期表の遷移シリーズの第2系列の遷移金属」、好ましくは「周期表の遷移シリーズの第3系列の遷移金属」、最も好ましくはIr及びPtが含まれる。有機金属錯体は、有機発光ダイオードの発光層中に用いることができる。錯体はLL’L’’M(式中、L、L’、及びL’’は二座配位子を表し、Mは金属を表す)として描くことができる。全ての配位子が異なっている例を図40に示す。
【0040】
本発明は、更に金属種Mとモノアニオン性二座配位子との有機金属錯体に関し、この場合Mには配位子のsp2混成軌道炭素及びヘテロ原子が配位している。錯体は、L3M(この場合各配位子L物質は同じである)、LL’L’’M(この場合、各配位子物質L、L’、L’’は異なっている)、又はL2MX(この場合、Xはモノアニオン性二座配位子である)の形をしていてもよい。配位子Lは、Xよりも一層発光過程に関与するものと一般に予想されている。好ましくは、Mは第3系列の遷移金属であり、最も好ましくは、MはIr又はPtである。本発明は、L3Mのメリジアナル(meridianal)異性体にも関し、この場合二つの配位子Lのヘテロ原子(例えば、窒素)はトランス型になっている。Mに配位子のsp2混成軌道炭素及びヘテロ原子が配位した態様では、金属M、sp2混成軌道炭素及びヘテロ原子を有する環は5又は6個の原子を有するのが好ましい。
【0041】
更に、本発明は、二座配位子LとMを有する遷移金属物質Mの錯体を、有機発光ダイオードの発光層中に式L2MXの化合物として使用することに関する。好ましい態様は、有機発光ダイオード中の発光層として機能を果たすように構成されたホスト層中のドーパントとしての式L2IrX(式中、L及びXは異なる二座配位子である)の化合物である。
【0042】
本発明は、発光デバイスの発光体としての機能を果たす有機金属分子の改良された合成にも関する。本発明の化合物は、次の反応: L2M(μ−Cl)2ML2+XH→L2MX+HCl〔式中、L2M(μ−Cl)2ML2は、Lを二座配位子とし、MをIrなどの金属とした塩化物架橋二量体であり;XHは、架橋塩化物と反応し、二座配位子Xを導入する働きをするブレンステッド酸であり、この場合XHは、例えばアセチルアセトン、2−ピコリン酸、又はN−メチルサリチルアニリドにすることができる。〕に従って製造することができる。この方法は、L2M(μ−Cl)2ML2塩化物架橋二量体と、XH物質とを結合することを含んでいる。L2MXは、Mの周りの二座配位子L、L、及びXのほぼ八面体の配置を有する。
【0043】
本発明は、更に有機発光デバイス中の燐光発光体として、式L2MXの化合物を使用することに関する。例えば、L=(2−フェニルベンゾチアゾール)、X=アセチルアセトネート、及びM=Irである場合の化合物(BTIrとして省略する)を、OLED中の発光層を形成するためにCBP中のドーパントとして(質量で12%のレベルで)用いた場合、12%の量子効率を示す。参考として、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)の式は、次の通りである:
【0044】
【化2】
【0045】
本発明は、更に有機金属錯体L2MXに関し、この場合L自身は蛍光体であるが、得られたL2MXは燐光体である。この一つの特別な例は、L=クマリン−6の場合である。
【0046】
本発明は、更にL3Mに対し、錯体L2MXの色の調節を行うためにL及びXを適切に選択することにも関する。例えば、Ir(ppy)3及び(ppy)3Ir(acac)の両方共510nmのλmaxを有する強い緑色発光を与える[ppyはフェニルピリジンを表す]。しかし、X配位子がアセチルアセトンからではなく、ピコリン酸から形成されている場合、約15nmの小さな青色シフトがある。
【0047】
更に、発光品質の劣化を起こすことなく、キャリヤー(ホール又は電子)がX(又はL)にトラップされるように、L3M錯体に対し、或るHOMOレベルを有するようにXを選択することに関する。このようにして、他のやり方では燐光体の有害な酸化(又は還元)を起こす原因になることがあるキャリヤー(ホール又は電子)が阻止されるであろう。遠くでトラップされるキャリヤーは分子間的に反対符合のキャリヤーと、又は隣接分子からのキャリヤーと容易に再結合するであろう。
【0048】
IV.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】PPIrについて予想される構造と共にL2IrX錯体の予想される構造を示す図であり、これら錯体のために用いられるX配位子の四つの例も示されている。示した構造はacac誘導体のためのものであり、他のX型配位子についてはO−O配位子をN−O配位子で置き換える。
【図2】L3Mのフェイシャル及びメリジアナル異性体の比較を示す図である。
【図3】ここに開示したmer異性体の分子式:mer−Ir(ppy)3及びmer−Ir(bq)3を示す図である。PPY(又はppy)は、フェニルピリジルを表し、BQ(又はbq)は7,8−ベンゾキノリンを表す。
【図4】mer−Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)のモデルを示す図である。
【図5A】図5AはCBP中に質量で12%の「BTIr」を入れた場合のエレクトロルミネッセンスデバイスのデータ(量子効率対電流密度)を示す図である。BTIrは、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムアセチルアセトネートを表す。
【図5B】図5Bは、図5Aのデバイスからの発光スペクトルを示す図である。
【図6】ホールをトラップするための代表的分子の図である。
【図7】Ir(3−MeOppy)3の発光スペクトルを示す図である。
【図8】tpyIrsdの発光スペクトルを示す図である。
【図9】tpyIrsd(=typIrsd)のプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図10】thpyIrsdの発光スペクトルを示す図である。
【図11】thpyrIrsdのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図12】btIrsdの発光スペクトルを示す図である。
【図13】btIrsdのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図14】BQIrの発光スペクトルを示す図である。
【図15】BQIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図16】BQIrFAの発光スペクトルを示す図である。
【図17】THIr(=thpy;THPIr)の発光スペクトルを示す図である。
【図18】THPIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図19】PPIrの発光スペクトルを示す図である。
【図20】PPIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図21】BTHPIr(=BTPIr)の発光スペクトルを示す図である。
【図22】tpyIrの発光スペクトルを示す図である。
【図23】窒素のトランス型配置を示すtpyIrの結晶構造を示す図である。
【図24】C6の発光スペクトルを示す図である。
【図25】C6Irの発光スペクトルを示す図である。
【図26】PZIrPの発光スペクトルを示す図である。
【図27】BONIrの発光スペクトルを示す図である。
【図28】BONIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図29】BTIrの発光スペクトルを示す図である。
【図30】BTIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図31】BOIrの発光スペクトルを示す図である。
【図32】BOIrのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図33】BTIrQの発光スペクトルを示す図である。
【図34】BTIrQのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図35】BTIrPの発光スペクトルを示す図である。
【図36】BOIrPの発光スペクトルを示す図である。
【図37】異なる配位子を有するbtIr型錯体の発光スペクトルを示す図である。
【図38】mer−IrbqのプロトンNMRスペクトルを示す図である。
【図39】L2MX化合物のための他の適当なL及びX配位子を示す図である。
【図40】LL’L’’M化合物の例を示す図である。
【0050】
V.(本発明の詳細な記述)
V.A.化学
本発明は、有機発光ダイオードの発光層のホスト層内にドープすることができる式L2MXの或る有機金属分子の合成及びその使用に関する。場合により、式L2MXの分子は、増大した濃度で、又はそのままで、発光層に用いることができる。本発明は、式L2MX(式中、L及びXは、異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する、好ましくは周期表の遷移元素の第三列から選択された金属で、最も好ましくはIr又はPtである)の分子を含有する発光層を有し、然も、前記発光層が或る波長λmaxで最大値を有する発光を生ずる有機発光デバイスに関する。
【0051】
V.A.1.ドーパント
ホスト相中にドープされる分子についての一般的化学式はL2MX(式中、Mは八面体錯体を形成する遷移金属であり、Lは二座配位子であり、Xは異なる二座配位子である)である。
【0052】
Lの例は、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(2−フェニルベンゾオキサゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(7,8−ベンゾキノリン)、クマリン、(チエニルピリジン)、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、及びトリルピリジンである。
【0053】
Xの例は、アセチルアセトネート(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、ピコリネート、及び8−ヒドロキシキノリネートである。
【0054】
L及びXの更に別な例は図39に与えられており、L及びXの更に別な例は「総合配位化学」(Comprehensive Coordination Chemistry)(編集主任G. Wilkinson、Pergamon Press)第2巻、特にM.カリガリス(Calligaris)及びL.ランダチオ(Randaccio)による第20.1章(第715頁以降)及びR.S.バグ(Vagg)による第20.4章(第793頁以降)に見出すことができる。
【0055】
V.A.2.式L2MXの分子の合成
V.A.2.a.反応スキーム
式L2MXの化合物は、次の式に従って製造することができる:
L2M(μ−Cl)2ML2+XH→L2MX+HCl〔式中、L2M(μ−Cl)2ML2は、Lを二座配位子とした塩化物架橋二量体であり、MはIrなどの金属であり;XHは、架橋塩化物と反応し、二座配位子Xを導入する働きをするブレンステッド酸であり、この場合XHは、例えばアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、2−ピコリン酸、又はN−メチルサリチルアニリドにすることができる。〕L2MXは、Mの周りの二座配位子L、L、及びXのほぼ八面体の配置を有する。
【0056】
V.A.2.b.実施例
L2Ir(μ−Cl)2IrL2錯体は、IrCl3・nH2O及び適当な配位子から文献の方法により製造した〔S.スプラウズ(Sprouse)、K.A.キング(King)、P.J.スペラン(Spellane)、R.J.ワッツ(Watts)、J. Am. Chem. Soc., 106, 6647-6653, (1984);一般的参考文献:G.A.カールソンその他、Inorg. Chem., 32, 4483, (1993);B.シュミット(Schmid)その他、Inorg. Chem., 33, 9, (1993);F.グラシス(Garces)その他、Inorg. Chem., 27, 3464, (1988);M.G.コロンボ(Colombo)その他、Inorg. Chem., 32, 3088, (1993);A.マモ(Mamo)その他、Inorg. Chem., 36, 5947, (1997);S.セロニ(Serroni)その他、J. Am. Chem. Soc., 116, 9086, (1994);A.P.ワイルド(Wilde)その他、J. Phys. Chem., 95, 629, (1991);J.H.ヴァン・ジーメン(van Diemen)その他、Inorg. Chem., 31, 3518, (1992);M.G.コロンボその他、Inorg. Chem., 33, 545, (1994)〕。
【0057】
Ir(3−MeOppy)3。 Ir(acac)3(0.57g、1.17mM)及び3−メトキシ−2−フェニルピリジン(1.3g、7.02mM)を、30mlのグリセロール中で混合し、N2中で24時間200℃に加熱した。得られた混合物を100mlの1MのHClへ添加した。沈澱物を濾過により収集し、溶離剤としてCH2Cl2を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、明るい黄色固体として生成物を得た(0.35g、40%)。MS(EI):m/z(相対的強度)745(M-、100)、561(30)、372(35)。発光スペクトルは図7に示してある。
【0058】
tpyIrsd。 塩化物架橋二量体(tpyIrCl)2(0.07g、0.06mM)、サリチリデン(0.022g、0.16mM)及びNa2CO3(0.02g、0.09mM)を、10mlの1,2−ジクロロエタン及び2mlのエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、6時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、溶媒を蒸発させた。真空中で穏やかに加熱することにより、過剰のサリチリデンを除去した。残留固体をCH2Cl2中に再溶解し、不溶性無機物質を濾過により除去した。濾液を濃縮し、溶離剤としてCH2Cl2を用いてカラムクロマトグラフィーにかけ、明るい黄色固体として生成物を得た(0.07g、85%)。MS(EI):m/z(相対的強度)663(M+、75)、529(100)、332(35)。発光スペクトルは図8に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図9に示してある。
【0059】
thpyIrsd。 塩化物架橋二量体(thpyIrCl)2(0.21g、0.19mM)を、(thpyIrCl)2と同じやり方で処理した。収率:0.21g、84%。MS(EI):m/z(相対的強度)647(M+、100)、513(30)、486(15)、434(20)、324(25)。発光スペクトルは図10に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図11に示してある。
【0060】
btIrsd。 塩化物架橋二量体(btIrCl)2(0.05g、0.039mM)を、(tpyIrCl)2と同じやり方で処理した。収率:0.05g、86%。MS(EI):m/z(相対的強度)747(M+、100)、613(100)、476(30)、374(25)、286(32)。発光スペクトルは図12に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図13に示してある。
【0061】
Ir(bq)2(acac)、BQIr。 塩化物架橋二量体(Ir(bq)2 Cl)2(0.091g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.021g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:明るい黄色固体(収率91%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.93(d、2H)、8.47(d、2H)、7.78(m、4H)、7.25(d、2H)、7.15(d、2H)、6.87(d、2H)、6.21(d、2H)、5.70(s、1H)、1.63(s、6H)。MS、e/z:648(M+、80%)、549(100%)。発光スペクトルは図14に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図15に示してある。
【0062】
Ir(bq)2(Facac)、BQIrFA。 塩化物架橋二量体(Ir(bq)2Cl)2(0.091g、0.078mM)、ヘキサフルオロアセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄色固体(収率69%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.99(d、2H)、8.55(d、2H)、7.86(m、4H)、7.30(d、2H)、7.14(d、2H)、6.97(d、2H)、6.13(d、2H)、5.75(s、1H)。MS、e/z:684(M+、59%)、549(100%)。発光スペクトルは図16に示してある。
【0063】
Ir(thpy)2(acac)、THPIr。 塩化物架橋二量体(Ir(thpy)2Cl)2(0.082g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄橙色固体(収率80%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.34(d、2H)、7.79(m、2H)、7.58(d、2H)、7.21(d、2H)、7.15(d、2H)、6.07(d、2H)、5.28(s、1H)、1.70(s、6H)。MS、e/z:612(M+、89%)、513(100%)。発光スペクトルは図17に示してあり(「THIr」として記してある)、プロトンNMRスペクトルは図18に示してある。
【0064】
Ir(ppy)2(acac)、PPIr。 塩化物架橋二量体(Ir(ppy)2Cl)2(0.080g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄色固体(収率87%)。1H NMR(360MHz、アセトン−d6)、ppm:8.54(d、2H)、8.06(d、2H)、7.92(m、2H)、7.81(d、2H)、7.35(d、2H)、6.78(m、2H)、6.69(m、2H)、6.20(d、2H)、5.12(s、1H)、1.62(s、6H)。MS、e/z:600(M+、75%)、501(100%)。発光スペクトルは図19に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図20に示してある。
【0065】
Ir(bthpy)2(acac)、BTPIr。 塩化物架橋二量体(Ir(bthpy)2Cl)2(0.103g、0.078mM)、アセチルアセトン(0.025g)、及び炭酸ナトリウム(0.083g)を、10mlの2−エトキシエタノール中で混合した。混合物を、TLCにより二量体が検出されなくなるまで、10時間N2中で還流した。次に反応を冷却し、黄色の沈澱物を濾過した。生成物を、ジクロロメタンを用いてフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物:黄色固体(収率49%)。MS、e/z:712(M+、66%)、613(100%)。発光スペクトルは図21に示してある。
【0066】
[Ir(ptpy)2Cl]2: IrCl2・xH2O(1.506g、5.030mM)及び2−(p−トリル)ピリジン(3.509g、20.74mM)を2−エトキシエタノール(30ml)中に入れた溶液を、25時間還流した。黄緑色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄し、次に乾燥した。黄色粉末として生成物が得られた(1.850g、65%)。
【0067】
[Ir(ppz)2Cl]2: IrCl2・xH2O(0.904g、3.027mM)及び1−フェニルピラゾール(1.725g、11.96mM)を2−エトキシエタノール(30ml)中に入れた溶液を、21時間還流した。灰緑色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄し、次に乾燥した。明灰色の粉末として生成物が得られた(1.133g、73%)。
【0068】
[Ir(C6)2Cl]2: IrCl3・xH2O(0.075g、0.251mM)及びクマリンC6[3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチル)クマリン]〔アルドリッチ(Aldrich)〕(0.350g、1.00mM)を2−エトキシエタノール(15ml)中に入れた溶液を、22時間還流した。暗赤色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄した。生成物をメタノール中に溶解し、沈澱させた。固体を濾過し、濾液中に緑の発光が観察されなくなるまでメタノールで洗浄した。橙色の粉末として生成物が得られた(0.0657g、28%)。
【0069】
Ir(ptpy)2acac(tpyIr): [Ir(ptpy)2Cl]2(1.705g、1.511mM)、2,4−ペンタンジオール(3.013g、30.08mM)、及び(1.802g、17.04mM)を1,2−ジクロロエタン(60ml)中に入れた溶液を、40時間還流した。黄緑色の混合物を室温へ冷却し、溶媒を減圧下で除去した。生成物を50mlのCH2Cl2中に取り、セライトを通して濾液した。減圧下で溶媒を除去し、橙色結晶の生成物を得た(1.696g、89%)。発光スペクトルを図22に示す。構造のX線回折研究の結果を図23に示す。tpy(トリルピリジル)基の窒素原子はトランス型になっていることが分かった。X線研究から、反射数は4663であり、R因子(R factor)は5.4%であった。
【0070】
Ir(C6)2acac(C6Ir): [Ir(C6)2Cl]2をCDCl3中に入れた溶液に2滴の2,4−ペンタンジオン及び過剰のNa2CO3を添加した。管を50℃で48時間加熱し、次にパスツールピペットの中の短いセライト充填物に通して濾過した。溶媒及び過剰の2,4−ペンタンジオンを減圧下で除去し、橙色固体として生成物を得た。C6の発光を図24に示し、C6Irの発光を図25に示す。
【0071】
Ir(ppz)2ピコリネート(PZIrp): [Ir(ppz)2Cl]2(0.0545g、0.0530mM)、及びピコリン酸(0.0525g、0.426mM)をCH2Cl2(15ml)中に入れた溶液を、16時間還流した。明緑色の混合物を室温へ冷却し、溶媒を減圧下で除去した。得られた固体を10mlのメタノール中にとり、明緑色の固体を溶液から沈澱させた。上澄み液を傾瀉により除去し、固体をCH2Cl2中に溶解し、短いシリカ充填物を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去し、明緑色結晶の生成物を得た(0.0075g、12%)。発光を図26に示す。
【0072】
2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(BZO−Naph)。11.06g、101mMの2−アミノフェノールを、15.867g、92.2mMの1−ナフトエ酸と、ポリ燐酸の存在下で混合した。混合物を加熱し、N2中で8時間240℃で撹拌した。混合物を100℃に冷却し、これに水を添加した。不溶性残留物を濾過により収集し、水で洗浄し、次に過剰の10%Na2CO3中で再びスラリーにした。アルカリ性スラリーを濾過し、生成物を水で完全に洗浄し、真空中で乾燥した。生成物を真空蒸留により精製した。BP 140℃/0.3mmHg。収量4.8g(21%)。
【0073】
テトラキス[2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾールC2,N](μ−ジクロロ)ジイリジウム、[(Ir2(BZO−Naph)4Cl)2]。三塩化イリジウム水和物(0.388g)を、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール(1.2g、4.88mM)と一緒にした。混合物を2−エトキシエタノール(30ml)中に溶解し、次に24時間還流した。溶液を室温へ冷却し、得られた橙色固体生成物を遠心分離管中で収集した。二量体をメタノールで洗浄し、次にクロロホルムにより洗浄する遠心分離/再分散サイクルを4サイクル行なった。収量0.66g。
【0074】
ビス[2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール]アセチルアセトネート、Ir(BZO−Naph)2(acac)、(BONIr)。塩化物架橋二量体[Ir2(BZO−Naph)4Cl]2(0.66g、0.46mM)、アセチルアセトン(0.185g)、及び炭酸ナトリウム(0.2g)を、20mlのジクロロエタン中で混合した。混合物を、N2中で60時間還流した。次に反応を冷却し、橙/赤色の沈澱物を遠心分離管中で収集した。生成物を、水/メタノール(1:1)混合物で洗浄し、次にメタノールで洗浄する遠心分離/再分散サイクルを4サイクル行なった。橙/赤色固体生成物を昇華により生成した。SP 250℃/2×10−5トール。収量0.57g(80%)。発光スペクトルは図27に示してあり、プロトンNMRスペクトルは図28に示してある。
【0075】
ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムアセチルアセトネート(BTIr): 2.1mMの2−フェニルベンゾチアゾールイリジウム塩化物二量体(2.7g)を、120mlの2−エトキシエタノール中に入れた室温の溶液に、9.8mM(0.98g、1.0ml)の2,4−ペンタンジオンを添加した。約1gの炭酸ナトリウムを添加し、混合物を油浴中で数時間窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、橙色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により75%の収率が得られた。発光スペクトルを図29に示し、プロトンNMRスペクトルを図30に示す。
【0076】
ビス(2−フェニルベンゾオキサゾール)イリジウムacac(BOIr):2.4mMの2−フェニルベンゾオキサゾールイリジウム塩化物二量体(3.0g)を、120mlの2−エトキシエタノール中に入れた室温の溶液に、9.8mM(0.98g、1.0ml)の2,4−ペンタンジオンを添加した。約1gの炭酸ナトリウムを添加し、混合物を油浴中で一晩(〜16時間)窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、黄色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により60%の収率が得られた。発光スペクトルを図31に示し、プロトンNMRスペクトルを図32に示す。
【0077】
ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウム(8−ヒドロキシキノレート)(BTIrQ): 0.14mMの2−フェニルベンゾチアゾールイリジウム塩化物二量体(0.19g)を、20mlの2−エトキシエタノール中に入れた室温の溶液に、4.7mM(0.68g)の8−ヒドロキシキノリンを添加した。約700mgの炭酸ナトリウムを添加し、混合物を油浴中で一晩(23時間)窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、赤色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により57%の収率が得られた。発光スペクトルを図33に示し、プロトンNMRスペクトルを図34に示す。
【0078】
ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムピコリネート(BTIrP): 0.80mMの2−フェニルベンゾチアゾールイリジウム塩化物二量体(1.0g)を、60mlのジクロロメタン中に入れた室温の溶液に、2.14mM(0.26g)のピコリン酸を添加した。混合物を油浴中で8.5時間窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、黄色沈澱物を真空濾過により除去した。濾液を濃縮し、メタノールを添加して更に生成物を沈澱させた。連続的濾過及び沈澱により約900mgの不純生成物を生じた。発光スペクトルを図35に示す。
【0079】
ビス(2−フェニルベンゾオキサゾール)イリジウムピコリネート(BOIrP): 0.14mMの2−フェニルベンゾオキサゾールイリジウム塩化物二量体(0.18g)を、20mlのジクロロメタン中に入れた室温の溶液に、0.52mM(0.064g)のピコリン酸を添加した。混合物を油浴中で一晩(17.5時間)窒素中で加熱し、還流させた。反応混合物を室温へ冷却し、黄色沈澱物を真空濾過により除去した。沈澱物をジクロロメタンに溶解し、ガラス瓶へ移し、溶媒を除去した。発光スペクトルを図36に示す。
【0080】
btIr錯体中の異なるL’についての比較発光スペクトルを図37に示す。
【0081】
V.A.2.c.従来法に勝る長所
この合成法は従来法に勝る或る長所を有する。式PtL3の化合物は、分解せずに昇華させることはできない。式IrL3の化合物を得ることには問題がある。或る配位子はIr(acac)3ときれいに反応してトリス錯体を与えるが、しかし、我々が研究した配位子の半分以上は次の反応できれいに反応しない: 3L+Ir(acac)3→L3Ir+acacH(式中、L=2−フェニルピリジン、ベンゾキノリン、2−チエニルピリジンである)収率は典型的には30%である。
Ir錯体への好ましい経路は、次の反応により塩化物架橋二量体L2M(μ−Cl)2ML2によるものにすることができる: 4L+IrCl3・nH2O→L2M(μ−Cl)2ML2+4HCl
我々が研究したリガンドの10%未満は高い収率でIr二量体をきれいに与えることはできなかったが、二量体のトリス錯体IrL3への転化により問題になる働きをうける配位子はほんの僅かしかない: L2M(μ−Cl)2ML2+2Ag-+2L→L3Ir+2AgCl
【0082】
燐光性錯体を製造するはるかに効果的な方法は、塩化物架橋二量体を用いて発光体を形成することであることを我々は発見した。二量体それ自身は、恐らく隣接金属(例えば、イリジウム)原子により強くクエンチされるため、強く発光することはない。塩化物配位子は次の化学変化によりキレート配位子により置換されて安定な八面体金属錯体を与えることができることが見出された: L2M(μ−Cl)2ML2+XH→L2MX+HCl
【0083】
我々はM=イリジウムの場合の系について広範に研究した。得られたイリジウム錯体は強く発光し、殆どの場合1〜3マイクロ秒(μsec)の寿命を持っている。そのような寿命は燐光であることを示している〔チャールス・キッテル(Charles Kittel)、「固体物理入門」(Introduction to Solid State Physics)参照〕。これらの材料中の遷移は金属配位子電荷移動(MLCT)である。
【0084】
下の詳細な説明では、数多くの異なる錯体の発光スペクトル及び寿命のデーターを分析しており、それら錯体は全てL2MX(M=Ir)〔式中、Lはシクロ金属化(二座)配位子であり、Xは二座配位子である〕として特徴付けることができる。ほとんどのどの場合でも、これら錯体の発光はIrとL配位子との間のMLCT遷移に基づくものであるか、又はその遷移と配位子間遷移との混合に基づくものである。特別な例を下に記述する。理論的及び分光学的研究により、錯体は金属の周りに八面体の配位を有する(例えば、L配位子の窒素複素環の場合、Ir八面体にトランス型配置が存在する)。
【0085】
特に図1には、L=2−フェニルピリジン、X=acac、ピコリネート(ピコリン酸から)、サリチルアニリド、又は8−ヒドロキシキノリネートの場合のL2IrXについての構造が与えられている。
【0086】
V.A.2.d.フェイシャル(facial)異性体対メリジアナル異性体
L2IrXを製造する合成経路の僅かな変化により、式L3Irのメリジアナル異性体を形成することができる。前に開示したL3Ir錯体は、全てキレート配位子のフェイシャル配置を有する。OLED中の燐光体としてのメリジアナルL3Ir錯体の形成及び使用をここに開示する。二つの構造を図2に示す。
【0087】
フェイシャルL3Ir異性体は、式1(下記)に記載したように、還流するグリセロール中でLとIr(acac)3との反応により製造されている。L3Ir錯体への好ましい経路は、式2+3(下記)による塩化物架橋二量体〔L2Ir(μ−Cl)2IrL2〕によるものである。式3の生成物は、Ir(acac)3から形成されたものと同じフェイシャル異性体である。後者の製造法の利点は、フェイシャル−L3Irの収率が一層よいことである。もし塩基及びアセチルアセトネートの存在下で(Ag+無し)第3配位子を二量体に付加するならば、メリジアナル異性体の良好な収率が得られる。メリジアナル異性体は、再結晶化、配位溶媒中での還流、又は昇華によってもフェイシャル異性体に転化しない。これらメリジアナル錯体の二つの例、mer−Irppy及びmer−Irbq(図3)が形成されているが、我々は安定なフェイシャル−L3Irを与える配位子は同様にメリジアナル形態にすることができると考えている。
【0088】
(1) 3L+Ir(acac)3→フェイシャル・L3Ir+acacH(式中、L=2−フェニルピリジン、ベンゾキノリン、2−チエニルピリジン)典型的には収率30%。
(2) 4L+IrCl3・nH2O→L2Ir(μ−Cl)2IrL2+4HCl典型的には90%より大きい収率。Lの例についての添付スペクトル参照。(1)で有効な全ての配位子についても充分成り立つ。
(3) L2Ir(μ−Cl)2IrL2+2Ag++2L→2フェイシャル・L3Ir+2AgCl典型的には収率30%。(1)について充分有効な同じ配位子についてだけ充分成り立つ。
(4) L2Ir(μ−Cl)2IrL2+XH+Na2CO3+L→メリジアナル・L3Ir典型的には80%より大きい収率。XH=アセチルアセトン。
【0089】
思いがけないことに、メリジアナル異性体の光物理性は、フェイシャル型のものとは異なっている。このことは下で論ずるスペクトルの詳細から知ることができるが、それらスペクトルは著しい赤色シフトを示し、そのフェイシャル対応物に対しメリジアナル異性体では広くなっている。発光線は、あたかもフェイシャル・L3Irの特性に赤色帯が付加されたかのように見える。メリジアナル異性体の構造は、例えば、Irの周りの配位子のN原子の配列に関して、L2IrX錯体のものと同様である。特にL=ppy配位子である場合、L配位子の窒素はmer−Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)の両方でトランス型になっている。更にmer−L3Ir錯体のL配位子の一つは、L2IrX錯体のX配位子と同じ配位を有する。この点を例示するため、図4の(ppy)2Ir(acac)の次にmer−Ir(ppy)3のモデルが示されている。mer−Ir(ppy)3のppy配位子の一つは、(ppy)2Ir(acac)のacac配位子と同じ幾何学状態でIr中心に配位している。
【0090】
L3Ir分子のHOMO及びLUMOエネルギーは、異性体の選択により明らかに影響を受ける。これらのエネルギーは、これらの燐光体を用いて製造されるOLEDの電流電圧特性及び寿命をコントロールし、非常に重要である。
【0091】
図3に描いた二つの異性体のための合成は、次の通りである。
【0092】
〔メリジアナル異性体の合成〕:
mer−Irbq: 91mg(0.078mM)の[Ir(bq)2Cl]2 二量体、35.8mg(0.2mM)の7,8−ベンゾキノリン、0.02mgのアセチルアセトン(約0.2mM)、及び83mg(0.78mM)の炭酸ナトリウムを、12mlの2−エトキシエタノール(入手したまま用いた)中で不活性雰囲気中14時間沸騰させた。冷却すると黄橙色沈澱物が形成され、濾過及びフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、CH2Cl2)により分離した(収率72%)。1H NMR(360MHz、ジクロロメタン−d2)、ppm:8.31(q、1H)、8.18(q、1H)、8.12(q、1H)、8.03(m、2H)、7.82(m、3H)、7.59(m、2H)、7.47(m、2H)、7.40(d、1H)、7.17(m、9H)、6.81(d、1H)、6.57(d、1H)。MS、e/z:727(100%、M+)。NMRスペクトルは図38に示してある。
【0093】
mer−Ir(tpy)3:IrCl3・xH2O(0.301g、1.01mM)、2−(p−トリル)ピリジン(1.027g、6.069mM)、2,4−ペンタンジオン(0.208g、2.08mM)、及びNa2CO3(0.350g、3.30mM)を2−エトキシエタノール(30ml)中に入れた溶液を、65時間還流した。黄緑色の混合物を室温へ冷却し、20mlの1.0MのHClを添加し、生成物を沈澱させた。混合物を濾過し、100mlの1.0MのHClで洗浄し、次に50mlのメタノールで洗浄し、次に乾燥し、固体をCH2Cl2中に溶解し、シリカの短い充填物に通して濾過した。溶媒を減圧除去し、黄橙色粉末として生成物を得た(0.265g、38%)。
【0094】
V.A.3.可能なホスト分子
本発明は、ホスト相中に上記ドーパントを使用することに関する。このホスト相はカルバゾール部分を有する分子からなっていてもよい。本発明の範囲内に入る分子は次のものの中に含まれる:
【0095】
【化3】
【0096】
[線分は、環によって示されている利用可能な炭素原子(単数又は複数)の所での、アルキル又はアリール基による可能な置換を示す。]
【0097】
カルバゾール官能性を有する更に別の好ましい分子は4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)であり、それは次の式を有する:
【0098】
【化4】
【0099】
V.B.1.デバイス中の利用
使用するために選択されるデバイス構造は、標準的真空蒸着されたものと非常に類似している。概観として、ホール輸送層(HTL)を、ITO(インジウム錫酸化物)被覆ガラス基体上に先ず蒸着する。12%の量子効率を与えるデバイスの場合、HTLは30nm(300Å)のNPDからなる。そのNPDの上に、ホストマトリックス中へドープした有機金属の薄膜を蒸着して発光層を形成する。例として、発光層は12重量%のビス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウムアセチルアセトネート(BTIrと呼ぶ)を含有するCBPであり、その層の厚さは30nm(300Å)であった。発光層の上にブロッキング層を蒸着する。ブロッキング層はバソキュプロイン(BCP)からなり、厚さは20nm(200Å)であった。ブロッキング層の上に電子輸送層を蒸着する。電子輸送層は、厚さ20nmのAlq3からなっていた。電子輸送層の上にMg−Ag電極を蒸着することによりデバイスが完成する。これは100nmの厚さを有する。全ての蒸着は5×10−5トールより低い真空度で行なった。デバイスは包装することなく、空気中で試験した。
【0100】
カソードとアノードの間に電圧を印加すると、ホールがITOからNPDへ注入され、NPD層により輸送され、一方電子はMgAgからAlqへ注入され、Alq及びBCPを通って輸送される。次にホールと電子はEMLへ注入され、キャリヤー再結合がCBPで起き、励起状態が形成され、BTIrへのエネルギー移動が起き、最終的にBTIr分子が励起され、放射崩壊する。
【0101】
図5に例示したように、このデバイスの量子効率は約0.01mA/cm2の電流密度で12%である。
【0102】
関連する用語は以下のとおりである: ITOは、アノードとしての機能を果たすインジウム錫酸化物の透明伝導性相である。 ITOは、広帯域半導体をドープすることにより形成された縮退型半導体である。ITOのキャリヤー濃度は1019/cm3を超えている。 BCPは励起子をブロックし、電子を輸送する層である。 Alq3は、電子注入層である。 他のホール輸送層材料を用いてもよい。例えば、TPDホール輸送層を用いることができる。
【0103】
BCPは電子輸送層及び励起子ブロッキング層としての機能を果たし、その層は約10nm(100Å)の厚さを有する。BCPは2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソキュプロインとも呼ばれている)であり、次の式を有する:
【0104】
【化5】
【0105】
電子注入/電子輸送層としての機能を果たすAlq3は、次の式を有する:
【0106】
【化6】
【0107】
一般に、ドーピング量は最適ドーピング量を達成するように変化させる。
【0108】
V.B.2.燐光性錯体への蛍光性配位子の配合
上で述べたように、蛍光材料はデバイス中の発光体として或る利点を有する。L2MX(例えば、M=Ir)錯体を製造するのに用いられるL配位子が大きな蛍光量子効率を有するならば、配位子の三重項状態を出入りする項間交差を効率的に行わせるため、Ir金属の強いスピン軌道結合を用いることができる。この概念は、IrがL配位子を効果的な燐光中心にすると言うことにある。この方法を用いて、どのような蛍光染料を用いても、それから効果的な燐光分子を作ることができる(即ち、Lは蛍光を発するが、L2MX(M=Ir)は燐光を発する)。
【0109】
一例として、L=クマリン及びX=acacである場合のL2IrXを製造した。これをクマリン−6(C6Ir)として言及する。この錯体は強い橙色の発光を与えるのに対し、クマリン自身は緑色に発光する。クマリンとC6Irの両方のスペクトルが図に与えられている。
【0110】
他の蛍光染料も同様なスペクトルの移行を示すと予想されるであろう。色素レーザー及び他の用途のために開発された蛍光染料の数は極めて多いので、この方法は極めて広範な燐光材料をもたらすものと予想される。
【0111】
5又は6員環メタロサイクルを形成させるためには、金属(例えば、イリジウム)によりメタレート化することができるように、適当な官能基を有する蛍光染料を必要とする。今日まで我々が研究したL配位子は、全て配位子にsp2混成軌道炭素及び複素環N原子を有し、従って、Irと反応させて5員環を形成することができる。
【0112】
V.B.3.X又はL配位子でのキャリヤートラップ
ホール又は電子を含めた潜在的な劣化反応が発光層で起きることがある。得られる酸化又は還元は発光体を変え、性能を劣化させる。
【0113】
燐光体ドープOLEDの最大効率を得るためには、望ましくない酸化又は還元反応を生ずるホール又は電子を制御することが重要である。これを行う一つの方法は、燐光性ドーパントの所でキャリヤー(ホール又は電子)をトラップすることである。燐光に関係する原子又は配位子から遠い位置にあるキャリヤーをトラップすることが有利である。このように遠くでトラップされるキャリヤーは、分子間的に反対キャリヤーと、又は隣接する分子からのキャリヤーと容易に再結合するであろう。
【0114】
ホールをトラップするように設計した燐光体の例を図6に示す。サリチルアニリド基のジアリールアミン基は、Ir錯体のものよりも200〜300mV高いHOMOレベル(電気化学的測定に基づく)を有すると予想され、排他的にアミン基の所でホールがトラップされるようになる。ホールはアミンの所で容易にトラップされるが、この分子からの発光はMLCTから来て、Ir(フェニルピリジン)系からの配位子間遷移から来るであろう。この分子にトラップされた電子はピリジル配位子の一つの中にある場合が最も多いと思われる。分子間再結合は殆どIr(フェニルピリジン)系中での励起子の形成をもたらすであろう。トラップ部位は、ルミネッセンス過程では広範には含まれていないのが典型的なX配位子の上にあるので、トラップ部位の存在は錯体の発光エネルギーに大きな影響を与えることはないであろう。L2Ir系に対し遠い所で電子キャリヤーがトラップされる関連分子を設計することができる。
【0115】
V.B.4.色の調節
IrL3系で見られるように、発光色はL配位子により大きな影響を受ける。このことは、MLCT又は配位子間遷移を含めた発光と一致している。我々がトリス錯体(即ち、IrL3)及びL2IrX錯体の両方を製造することができた場合の全てにおいて、発光スペクトルは非常に似ていた。例えば、Ir(ppy)3及び(ppy)2Ir(acac)〔アクロニム(acronym)=PPIr〕は、510nmのλmaxを有する強い緑色発光を与える。同様な傾向は、Ir(BQ)3 及びIr(thpy)3を、それらのL2Ir(acac)誘導体と比較した時にも見られ、即ち、或る場合には二つの錯体の間で発光の大きなずれはない。
【0116】
しかし、別の場合には、X配位子の選択が発光のエネルギー及び効率の両方に影響を与える。acac及びサリチルアニリドL2IrX錯体は非常に類似したスペクトルを与える。今までの所我々が製造したピコリン酸誘導体は、同じ配位子のacac及びサリチルアニリド錯体に対し、それらの発光スペクトルで僅かな青色シフト(15nm)を示している。このことはBTIr、BTIrsd、及びBTIrpicのスペクトルで見ることができる。これら三つの錯体の全てにおいて、我々は発光がMLCT及び相互L遷移から主に生じ、ピコリン酸配位子は金属軌道のエネルギーを変え、それによりMLCT帯に影響を与えるものと予想している。
【0117】
もし三重項レベルが「L2Ir」骨格よりもエネルギーが低く落ちたX配位子を用いるならば、そのX配位子からの発光を観察することができる。これは、BTIrQ錯体の場合である。この錯体では、発光強度は非常に弱く、650nmの所に中心がある。このことは全く思いがけないことである。なぜなら、BT配位子に基づく系の発光は全てほぼ550nmの所にあるからである。この場合の発光は殆ど完全にQ系遷移からのものである。重金属キノレート(例えば、IrQ3又はPtQ2)についての蛍光スペクトルは650nmの所に中心がある。錯体自身は非常に低い効率、<0.01で発光する。L2IrQ材料のエネルギー及び効率の両方は、「X」に基づく発光と一致している。もしX配位子又は「IrX」系からの発光が効率的であるならば、これは良好な赤色発光体になったであろう。ここに列挙した例の全てが強い「L」発光体であるが、これは「X」に基づく発光から形成されている良好な燐光体を除外するものではないことに注意することは重要である。
【0118】
X配位子の選択が悪くても、L2IrX錯体からの発光をひどくクエンチすることがある。ヘキサフルオロ−acac及びジフェニル−acacの両方の錯体は、L2IrX錯体のX配位子として用いた場合、非常に弱い発光を与えるか、又は発光を全く示さない。これらの配位子が発光をそのように強くクエンチする理由は完全には明らかになっていないが、これらの配位子の一つはacacよりも一層電子を引き付け、他のものは一層電子を与える。BQIrFAのスペクトルを図に示している。この錯体の発光スペクトルは、ヘキサフルオロacac配位子の遥かに強い電子吸引性から予測されるように、BQIrから僅かにシフトしている。BQIrFAからの発光強度は、BQIrよりも少なくとも2桁弱い。このひどいクエンチ問題のため、これらの配位子の錯体は研究しなかった。
【0119】
V.C.他の分子についての記述
ここに記載したデバイスではCBPを用いた。本発明は、OLEDのホール輸送層として働かせるための、当業者に既知の他のホール輸送分子を用いても有効である。
【0120】
特に本発明は、カルバゾール官能基、又は同様なアリールアミン官能基を有する他の分子を用いても有効である。
【0121】
V.D.デバイスの使用
本発明のOLEDは、OLEDを有する実質的にどのような型の装置にでも用いることができ、例えば、大画面ディスプレイ、乗り物、コンピュータ、テレビ、プリンター、大面積壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、掲示板、又は標識に組み込まれるOLEDに用いることができる。
【0122】
ここに記載した本発明は、次の係属中の出願と共に用いてもよい:「高信頼性、高効率、集積可能有機発光デバイス及びその製造方法」(High Reliability, High Efficiency, Integratable Organic Light Emitting Devices and Methods of Producing Same)、米国特許出願Serial No.08/774,119(1996年12月23日出願);「多色発光ダイオードのための新規な材料」(Movel Materials for Multicolor Light Emitting Devices)、Serial No.08/850,264(1997年5月2日出願);「有機遊離ラジカルに基づく電子移動及び発光層」(Electron Transporting and Light Emitting Layers Based on Organic Free Raicals)、Serial No.08/774,120(1996年12月23日出願)(1998年9月22日、米国特許第5,811,833号として公告された);「多色表示デバイス」(Multicolor Display Devices)、Serial No.08/772,333(1996年12月23日出願);「赤色発光有機発光デバイス(OLED)」(Red-Emitting Organic Light Emitting Devices (OLED's))、Serial No.08/774,087(1996年12月23日出願)(認可された);「積層有機発光デバイスのための駆動回路」(Driving Circuit For Stacked Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/792,050(1997年2月3日出願)(1998年5月26日、米国特許第5,757,139号として公告された);「高効率有機発光デバイス構造体」(High Efficiency Organic Light Emitting Device Structures)、Serial No.08/772,332(1996年12月23日出願)(1998年11月10日、米国特許第5,834,893号として公告された);「真空蒸着非重合体可撓性有機発光デバイス」(Vacuum Deposited, Non-Polymeric Flexible Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/789,319(1997年1月23日出願)(1998年12月1日、米国特許第5,844,363号として公告された);「メサピクセル構造を有する表示器」(Displays Having Mesa Pixel Configuration)、Serial No.08/794,595(1997年2月3日出願);「積層有機発光デバイス」(Stacked Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/792,046(1997年2月3日出願)(1999年6月29日、米国特許第5,917,280号として公告された);「高コントラスト透明有機発光デバイス」(High Contrast Transparent Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/792,046(1997年2月3日出願);「高コントラスト透明有機発光デバイスディスプレイ」(High Contrast Transparent Organic Light Emitting Device Display)、Serial No.08/821,380(1997年3月20日出願);「ホスト材料として5−ヒドロキシ−キノキサリンの金属錯体を含有する有機発光デバイス」(Organic Light Emitting Devices Containing A Metal Complex of 5-Hydroxy-Quinoxaline as A Host Material)、Serial No.08/838,099(1997年4月15日出願)(1999年1月19日、米国特許第5,861,219号として公告された);「高輝度を有する発光デバイス」(Light Emitting Devices Having High Brightness)、Serial No.08/844,353(1997年4月18日出願);「有機半導体レーザー」(Organic Semiconductor Laser)、Serial No.08/859,468(1997年5月19日出願);「飽和天然色積層有機発光デバイス」(Saturated Full Color Stacked Organic Light Emitting Devices)、Serial No.08/858,994(1997年5月20日出願)(1999年8月3日、米国特許第5,932,895号として公告された);「伝導性層のプラズマ処理」(Plasma Treatment of Conductive Layers)、PCT/US97/10252(1997年6月12日出願);「多色発光ダイオードのための新規な材料」(Novel Materials for Multicolor Light Emitting Diodes)、Serial No.08/814,976(1997年3月11日出願);「多色発光ダイオードのための新規な材料」(Novel Materials for Multicolor Light Emitting Diodes)、Serial No.08/771,815(1996年12月23日出願);「有機多色表示デバイスを製造するための薄膜パターン化」(Patterning of Thin Films for the Fabrication of Organic Multi-color Displays)、PCT/US97/10289(1997年6月12日出願);及び「二重ヘテロ構造赤外及び垂直空洞表面発光有機レーザー」(Double Heterostructure Infrared and Vertical Cavity Surface Emitting Organic Lasers)、1998年5月8日出願、PCT/US98/09480;1998年3月23日公告、米国特許第5,874,803;1998年1月13日公告、米国特許第5,707,745;1997年12月30日公告、米国特許第5,703,436;及び1998年5月26日公告、米国特許第5,757,026。各係属中の出願は、参考のため全体を本明細書に援用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式L2MX(式中、L及びXは、異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属である)の分子を含有する発光層を有し、かつ、前記発光層が或る波長λmaxで最大値を有する発光を生ずる、有機発光デバイス。
【請求項2】
ホスト及びドーパントを含む発光層で、然も、前記ドーパントが、式L2MX(式中、L及びXは、異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属である)の分子を含有する発光層を有する有機発光デバイス。
【請求項3】
Lが、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(2−フェニルベンゾオキサゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(7,8−ベンゾキノリン)、クマリン、(チエニルピリジン)、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、及びトリルピリジンからなる群から選択されており、Xが、アセチルアセトネート(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、ピコリネート、及び8−ヒドロキシキノリネートからなる群から選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
Mがイリジウムである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
Mがイリジウムであり、Lが、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(2−フェニルベンゾオキサゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(7,8−ベンゾキノリン)、クマリン、(チエニルピリジン)、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、及びトリルピリジンからなる群から選択されており、Xが、アセチルアセトネート(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、ピコリネート、及び8−ヒドロキシキノリネートからなる群から選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
Lが蛍光体であり、L2MXが燐光体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
ホストの有機分子が、
【化1】
(式中、芳香族環を通って引いた線分の記号は、前記環中のどの炭素の所でも、場合により、アルキル又はアリールにより置換されていてもよいことを意味する)
からなる群から選択されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
部分L2M(式中、Lはsp2炭素及びヘテロ原子によりMに配位されたモノアニオン性二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、二つのL配位子のヘテロ原子がトランス型になっている)を有する分子を含有する発光層を有する、請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
金属が、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群から選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
Xが、電子又はホールをトラップする機能を果たす、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
L2MXとL3Mとの間のλmaxに少なくとも15nmの差が存在するようにXが選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
L2MXが、L2M(μ−Cl)2ML2から作られる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
大型ディスプレイ、乗り物、コンピュータ、テレビ、プリンター、大画面壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、掲示板、又は標識に組み込まれた、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
式LL’L’’M(式中、L、L’、及びL’’は異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、LL’L’’Mは燐光体である)の分子を含有する発光層を有する有機発光デバイス。
【請求項15】
部分L2M(式中、LはMに配位した窒素を有する二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、二つのL−M結合の窒素が、互いにトランス配置になっている)を有する分子を含有する発光層を有する、有機発光デバイス。
【請求項16】
式LL’L’’M(式中、L、L’、及びL’’は、Mに配位した二座配位子であり、Mは、L、L’及びL’’を有する八面体錯体を形成する周期表遷移金属族の第三系列から選択された金属である)の組成物。
【請求項17】
請求項15に記載のLL’L’’M(LL’L’’Mは燐光機構によりエレクトロルミネッセンスを生ずる)の組成物。
【請求項18】
L、L’、及びL’’の各々が、Mに配位した一つの窒素を有し、それら窒素がメリジアナル配列をしている、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
L及びL’が、Mに配位した窒素を有するモノアニオン性二座配位子であり、L’’がモノアニオン性二座配位子である、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
L及びL’が同じであり、sp2混成軌道炭素及びヘテロ原子によりMに配位したモノアニオン性二座配位子であり、L’’はモノアニオン性二座配位子である、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
Ir(3−MeOppy)3、tpyIrsd、thpyIrsd、btIrsd、BQIr、BQIrFA、THPIr、PPIr、BTPIr、tpyIr、C6Ir、PZIrp、BONIr、BTIr、BOIr、BTIrQ、BTIrP、及びBOIrPからなる群から選択された、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
部分L2M(式中、Lはsp2炭素及びヘテロ原子によりMに配位したモノアニオン性二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、二つのL配位子のヘテロ原子がトランス型になっている)を有する分子を含有する発光層を有する、有機発光デバイス。
【請求項23】
式L2M(μ−Cl)2ML2の架橋二量体と、ブレンステッド酸XHとを一緒にして式L2MX(L及びXはモノアニオン性二座配位子である)の有機金属錯体を形成する工程を有する、請求項19に記載の組成物を製造する方法。
【請求項1】
式L2MX(式中、L及びXは、異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属である)の分子を含有する発光層を有し、かつ、前記発光層が或る波長λmaxで最大値を有する発光を生ずる、有機発光デバイス。
【請求項2】
ホスト及びドーパントを含む発光層で、然も、前記ドーパントが、式L2MX(式中、L及びXは、異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属である)の分子を含有する発光層を有する有機発光デバイス。
【請求項3】
Lが、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(2−フェニルベンゾオキサゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(7,8−ベンゾキノリン)、クマリン、(チエニルピリジン)、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、及びトリルピリジンからなる群から選択されており、Xが、アセチルアセトネート(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、ピコリネート、及び8−ヒドロキシキノリネートからなる群から選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
Mがイリジウムである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
Mがイリジウムであり、Lが、2−(1−ナフチル)ベンゾオキサゾール、(2−フェニルベンゾオキサゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(2−フェニルベンゾチアゾール)、(7,8−ベンゾキノリン)、クマリン、(チエニルピリジン)、フェニルピリジン、ベンゾチエニルピリジン、3−メトキシ−2−フェニルピリジン、チエニルピリジン、及びトリルピリジンからなる群から選択されており、Xが、アセチルアセトネート(acac)、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、サリチリデン、ピコリネート、及び8−ヒドロキシキノリネートからなる群から選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
Lが蛍光体であり、L2MXが燐光体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
ホストの有機分子が、
【化1】
(式中、芳香族環を通って引いた線分の記号は、前記環中のどの炭素の所でも、場合により、アルキル又はアリールにより置換されていてもよいことを意味する)
からなる群から選択されている、請求項2に記載のデバイス。
【請求項8】
部分L2M(式中、Lはsp2炭素及びヘテロ原子によりMに配位されたモノアニオン性二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、二つのL配位子のヘテロ原子がトランス型になっている)を有する分子を含有する発光層を有する、請求項2に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
金属が、オスミウム、イリジウム、及び白金からなる群から選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
Xが、電子又はホールをトラップする機能を果たす、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
L2MXとL3Mとの間のλmaxに少なくとも15nmの差が存在するようにXが選択されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
L2MXが、L2M(μ−Cl)2ML2から作られる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
大型ディスプレイ、乗り物、コンピュータ、テレビ、プリンター、大画面壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、掲示板、又は標識に組み込まれた、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
式LL’L’’M(式中、L、L’、及びL’’は異なる二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、LL’L’’Mは燐光体である)の分子を含有する発光層を有する有機発光デバイス。
【請求項15】
部分L2M(式中、LはMに配位した窒素を有する二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、二つのL−M結合の窒素が、互いにトランス配置になっている)を有する分子を含有する発光層を有する、有機発光デバイス。
【請求項16】
式LL’L’’M(式中、L、L’、及びL’’は、Mに配位した二座配位子であり、Mは、L、L’及びL’’を有する八面体錯体を形成する周期表遷移金属族の第三系列から選択された金属である)の組成物。
【請求項17】
請求項15に記載のLL’L’’M(LL’L’’Mは燐光機構によりエレクトロルミネッセンスを生ずる)の組成物。
【請求項18】
L、L’、及びL’’の各々が、Mに配位した一つの窒素を有し、それら窒素がメリジアナル配列をしている、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
L及びL’が、Mに配位した窒素を有するモノアニオン性二座配位子であり、L’’がモノアニオン性二座配位子である、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
L及びL’が同じであり、sp2混成軌道炭素及びヘテロ原子によりMに配位したモノアニオン性二座配位子であり、L’’はモノアニオン性二座配位子である、請求項15に記載の組成物。
【請求項21】
Ir(3−MeOppy)3、tpyIrsd、thpyIrsd、btIrsd、BQIr、BQIrFA、THPIr、PPIr、BTPIr、tpyIr、C6Ir、PZIrp、BONIr、BTIr、BOIr、BTIrQ、BTIrP、及びBOIrPからなる群から選択された、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
部分L2M(式中、Lはsp2炭素及びヘテロ原子によりMに配位したモノアニオン性二座配位子であり、Mは八面体錯体を形成する金属であり、二つのL配位子のヘテロ原子がトランス型になっている)を有する分子を含有する発光層を有する、有機発光デバイス。
【請求項23】
式L2M(μ−Cl)2ML2の架橋二量体と、ブレンステッド酸XHとを一緒にして式L2MX(L及びXはモノアニオン性二座配位子である)の有機金属錯体を形成する工程を有する、請求項19に記載の組成物を製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2010−70764(P2010−70764A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−252135(P2009−252135)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2009−140434(P2009−140434)の分割
【原出願日】平成12年11月29日(2000.11.29)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252135(P2009−252135)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2009−140434(P2009−140434)の分割
【原出願日】平成12年11月29日(2000.11.29)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]