説明

有限角トルクモータ

【課題】本発明は、回転子の各回転子板間にマグネットを設けることにより、回転子の回転角度を従来構成よりも増加させることができるようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明による有限角トルクモータは、第1、第2回転子板(30,31)とマグネット(40)とによって回転子(9)を形成し、各固定子突部(2〜5)のステータ巻線(2a〜5a)を励磁することにより、回転子(9)が従来よりも大なる有限角範囲で正回転又は正逆回転できる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限角トルクモータに関し、特に、回転子の各回転子板間にマグネットを設けることにより、回転子の回転角度を従来構成よりも増加させることができるようにするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の有限角トルクモータは、例えば、特許文献1のパチンコ発射機構造の槌を回動させる手段として、特許文献2及び3に開示されたロータリーソレノイドを挙げることができる。
すなわち、この特許文献2のロータリーソレノイドの構成は、実際に製作された製品は原理的には図5から図7で示される従来構成の有限角トルクモータと類似構成である。
【0003】
図5において符号1で示されるものは全体形状が四角又は円筒等の枠状をなす固定子であり、この固定子1の内面1aには、90度間隔で内方へ突出する4個の第1〜第4固定子突部2〜5が形成されている。
前記各固定子突部2〜5の外周にはステータ巻線2a,3a,4a,5aが巻回して設けられている。
【0004】
前記各固定子突部2〜5の内側には、前記固定子1を保持するための図示しないケースに設けられた一対の軸受け6,7によって回転自在に軸支された回転軸8が回転自在に設けられている。
前記回転軸8には、円板状の回転子9が設けられ、この回転子9の外周には、各固定子突部2〜5に対応するように、90度間隔で外方に突出する第1〜第4回転子突部10,11,12,13が半径方向に向けて形成されている。
【0005】
次に、前述の構成において、図5に示されるように、各固定子突部2〜5に対し、各回転子突部10〜13が40度の位置に来るように、ストッパ等の図示しない手段によって回転子9を回転前初期位置Pに配置する。
前述の40度は、図5に示されるように、互いに対向する第1、第3回転子突部10,12の幅方向の中心から回転軸8の軸心を結んで形成される第1中心線15と、第2、第4固定子突部3,5の中心と回転軸8の軸心を結んだ形成される第2中心線16との間の角度を示し、各回転子突部10〜13と各固定子突部2〜5との間に前記40度が設定されている。
【0006】
次に回転子9の各回転子突部10〜13と同極に各ステータ巻線2aが励磁されることにより、各回転子突部10〜13が各固定子突部2〜5に吸引されて、回転子9の復帰用のバネがある場合には、このバネのバネ力に抗して、図7に示されるように40度回転して停止する。
その後は、各ステータ巻線2aへの励磁を切ることにより、図示しないバネ等のバネ力によって回転子9は元の位置へ40度逆回転し、前記回転前初期位置P1に復帰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−48873号公報
【特許文献2】特開2007−195277号公報
【特許文献3】特開2007−180162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の有限角トルクモータは、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、従来の回転子はヨークのみで形成されていたため、励磁されることにより発生するステータ巻線と回転子突部による磁気回路における磁束が弱く、ステータ巻線による励磁のみでは、40度の回転角度が限度であり、40度以上の回転角度の回転要求には対応することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による有限角トルクモータは、所定角度間隔で内方へ向けて突出すると共にステータ巻線を有する複数の第1〜第4固定子突部を有する固定子と、前記各固定子突部の内側に位置し回転自在に軸支された回転軸と、前記回転軸に互いに90度位相をずらして設けられ一対の第1、第3と、第2、第4回転子突部を有する第1、第2回転子板と、前記各回転子板間に設けられたマグネットと、を備え、前記第1、第2回転子板とマグネットにより回転子を形成し、前記各固定子突部のステータ巻線を励磁することにより、前記回転子が有限角範囲で正回転又は正逆回転できる構成であり、また、前記第1〜第4固定子突部は90度間隔で4個よりなり、前記第1〜第4回転子突部は前記回転軸の軸方向から見て90度間隔で4個よりなり、前記第1、第2と第3、第4固定子突部に対する前記各回転子突部が回転方向における次の各固定子突部に対して80度の角度位置となる回転前初期位置において、前記第1、第3回転子突部と同極を前記第1、第3固定子突部のステータ巻線に励磁し、80度から45度まで反発力により前記各回転子突部が回転し、前記45度を超えると前記第2、第4固定子突部の吸引力により前記各回転子突部が45度から0度まで回転することにより、前記各回転子突部が各々合計で80度回転する構成であり、また、前記回転子の第1回転子板の第1、第3回転子突部の各幅方向の中心を結ぶ第1中心線と、前記第2回転子板の第2、第4回転子突部の各幅方向の中心を結ぶ第2中心線と、は互いに直交している構成であり、また、前記回転子を回転後、各固定子突部の励磁極を反転させることにより、前記回転子は回転前の前記回転前初期位置に戻る構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による有限角トルクモータは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、所定角度間隔で内方へ向けて突出すると共にステータ巻線を有する複数の第1〜第4固定子突部を有する固定子と、前記各固定子突部の内側に位置し回転自在に軸支された回転軸と、前記回転軸に互いに90度位相をずらして設けられ一対の第1、第3と、第2、第4回転子突部を有する第1、第2回転子板と、前記各回転子板間に設けられたマグネットと、を備え、前記第1、第2回転子板とマグネットにより回転子を形成し、前記各固定子突部のステータ巻線を励磁することにより、前記回転子が有限角範囲で正回転又は正逆回転できることにより、マグネットの磁束を用いて従来よりも大きい角度の有限角度範囲の回転を得ることができる。
前記第1〜第4固定子突部は90度間隔で4個よりなり、前記第1〜第4回転子突部は前記回転軸の軸方向から見て90度間隔で4個よりなり、前記第1、第2と第3、第4固定子突部に対する前記各回転子突部が回転方向における次の各固定子突部に対して80度の角度位置となる回転前初期位置において、前記第1、第3回転子突部と同極を前記第1、第3固定子突部のステータ巻線に励磁し、80度から45度まで反発力により前記各回転子突部が回転し、前記45度を超えると前記第2、第4固定子突部の吸引力により前記各回転子突部が45度から0度まで回転することにより、前記各回転子突部が各々合計で80度回転することにより、80度の正回転を得ることができる。
前記回転子の第1回転子板の第1、第3回転子突部の各幅方向の中心を結ぶ第1中心線と、前記第2回転子板の第2、第4回転子突部の各幅方向の中心を結ぶ第2中心線と、は互いに直交していることにより、四極の回転子による有限角トルクモータを得ることができる。
前記回転子を回転後、各固定子突部の励磁極を反転させることにより、前記回転子は回転前の前記回転前初期位置に戻ることにより励磁極の反転のみで回転子の逆転を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による有限角トルクモータを示す軸方向からの正面図である。
【図2】図1の軸方向断面図である。
【図3】図1の回転子が磁極の反発により80度から45度の位置へ回転した状態を示す正面図である。
【図4】図3の回転子が磁極の吸引により45度から0度の位置へ回転後停止した状態を示す正面図である。
【図5】従来の有限角トルクモータを示す軸方向からの正面図である。
【図6】図5の軸方向断面図である。
【図7】図5の回転子が磁極の吸引により40度から0度の位置へ回転後停止した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、回転子の各回転子板間にマグネットを設けることにより、回転子の回転角度を従来構成よりも増加させることができるようにした有限角トルクモータを提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明による有限角トルクモータの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、全体形状が四角又は円筒等の枠状をなす固定子であり、この固定子1の内面1aには、90度間隔で内方へ突出する4個の第1〜第4固定子突部2〜5が形成されている。
前記各固定子突部2〜5の外周には筒状のボビン41を介してステータ巻線2a,3a,4a,5aが巻回して設けられている。
【0014】
前記各固定子突部2〜5の内側には、前記固定子1を保持するための図示しないケースに設けられた一対の軸受け6,7によって回転自在に軸支された回転軸8が回転自在に設けられている。
前記回転軸8には、一対の第1、第2回転子板30,31(図2に示す)からなる回転子9が一体状に取付けられており、各回転子板30,31は、円板の外周の180度対向する位置で互いに異なる方向に突出する一対の第1、第3回転子突部10,12及び第2、第4回転子突部11,13を有している。
【0015】
前記各回転子板30,31は、前記回転軸8上で互いに重合して一体状に設けられており、前記第1回転子板30の第1、第3回転子突部10,12の幅方向の中心を結ぶ第1中心線Mと、前記第2回転子板31の第2、第4回転子突部11,13の幅方向の中心を結ぶ第2中心線Nと、は、互いに直交している。
従って、図2の軸方向Gから見た場合、前記回転子9の第1〜第4回転子突部10〜13は、互いに90度間隔で各固定子突部2〜5と対応するように形成されている。
【0016】
前記各回転子板30,31の間には、予め着磁されたリングマグネット等からなるマグネット40が設けられ、このマグネット40は、図2で示されるように各回転子板30,31によって一体状に挟持されている。
【0017】
次に、前述の構成による有限角トルクモータを有限角回転させる場合について説明する。
まず、図1で示されるように、前記第1、第2と第3、第4固定子突部2,3と4,5に対する各回転子突部10〜13が矢印で示す回転方向Fにおける次の各回転子突部に対して80度の角度位置となる回転前初期位置Pに図示しない保持手段により保持した状態で、前記第1、第3回転子突部10,12と同極を前記第1、第3固定子突部2,4のステータ巻線2a,4aに励磁し、前述の80度から45度まで各磁極の反発力により前記各回転子突部10〜13が回転する。尚、復帰用のバネを用いている場合には、このバネのバネ力に抗して回転子9が回転する。
【0018】
次に、各回転子突部10〜13を有する回転子9が前述の80度から45度まで回転して、この45度を超えると、第2、第4固定子突部3.5は吸引される磁極に励磁されているため、各回転子突部10、12は各固定子突部3.5に吸引されることにより前記各回転子突部10〜13が各々合計で80度回転する。
従って、前述の動作により、前記回転子9は、従来の40度を超えて80度迄回転することが可能であり、大きい回転ストロークにより、図示しないアーム等の従来よりも大なる有限角回転を行うことができる。
【0019】
さらに、前述のように一度有限角回転が完了した後の回転子9の元の位置への逆回転復帰は、図示しないバネ等のバネ力によって戻す構成と、前記各固定子突部2〜5の励磁極を反転させることにより、前記回転子9は回転前の前記動作前初期位置に戻す構成の何れかとすることができる。
【0020】
尚、本発明による有限角トルクモータの構成をまとめると次の通りである。
所定角度間隔で内方へ向けて突出すると共にステータ巻線2a〜5aを有する複数の第1〜第4固定子突部2〜5を有する固定子1と、前記各固定子突部2〜5の内側に位置し回転自在に軸支された回転軸8と、前記回転軸8に互いに90度位相をずらして設けられ一対の第1、第3と、第2、第4回転子突部10〜13を有する第1、第2回転子板30,31と、前記各回転子板30,31間に設けられたマグネット40と、を備え、前記第1、第2回転子板30,31とマグネット40により回転子9を形成し、前記各固定子突部2〜5のステータ巻線2a〜5aを励磁することにより、前記回転子9が有限角範囲で正回転又は正逆回転できる構成であり、また、前記第1〜第4固定子突部2〜5は90度間隔で4個よりなり、前記第1〜第4回転子突部10〜13は前記回転軸8の軸方向Gから見て90度間隔で4個よりなり、前記第1、第2と第3、第4固定子突部2〜5に対する前記各回転子突部10〜13が回転方向Fにおける次の各固定子突部2〜5に対して80度の角度位置となる回転前初期位置において、前記第1、第3回転子突部10〜12と同極を前記第1、第3固定子突部2,4のステータ巻線2a、4aに励磁し、80度から45度まで反発力により前記各回転子突部10〜13が回転し、前記45度を超えると前記第2、第4固定子突部3,5の吸引力により前記各回転子9が45度から0度まで回転することにより、前記各回転子突部10〜13が各々合計で80度回転する構成であり、また、前記回転子9の第1回転子板30の第1、第3回転子突部10、13の各幅方向の中心を結ぶ第1中心線Mと、前記第2回転子板31の第2、第4回転子突部11,13の各幅方向の中心を結ぶ第2中心線Nと、は互いに直交している構成であり、また、前記回転子9を回転後、各固定子突部2〜5の励磁極を反転させることにより、前記回転子9は回転前の前記回転前初期位置Pに戻る構成である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明による有限角トルクモータは、パチンコ発射機等の遊技機のみに限ることなく、例えば、工作機、ロボット等におけるアクチュエータとして適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 固定子
2 第1固定子突部
2a〜5a ステータ巻線
3 第2固定子突部
4 第3固定子突部
5 第4固定子突部
6、7 軸受
8 回転軸
9 回転子
10〜13 第1〜第4回転子突部
30 第1回転子板
31 第2回転子板
40 マグネット
回転前初期位置
M 第1中心線
N 第2中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定角度間隔で内方へ向けて突出すると共にステータ巻線(2a〜5a)を有する複数の第1〜第4固定子突部(2〜5)を有する固定子(1)と、前記各固定子突部(2〜5)の内側に位置し回転自在に軸支された回転軸(8)と、前記回転軸(8)に互いに90度位相をずらして設けられ一対の第1、第3と、第2、第4回転子突部(10〜13)を有する第1、第2回転子板(30,31)と、前記各回転子板(30,31)間に設けられたマグネット(40)と、を備え、
前記第1、第2回転子板(30,31)とマグネット(40)により回転子(9)を形成し、前記各固定子突部(2〜5)のステータ巻線(2a〜5a)を励磁することにより、前記回転子(9)が有限角範囲で正回転又は正逆回転できることを特徴とする有限角トルクモータ。
【請求項2】
前記第1〜第4固定子突部(2〜5)は90度間隔で4個よりなり、前記第1〜第4回転子突部(10〜13)は前記回転軸(8)の軸方向(G)から見て90度間隔で4個よりなり、前記第1、第2と第3、第4固定子突部(2〜5)に対する前記各回転子突部(10〜13)が回転方向(F)における次の各固定子突部(2〜5)に対して80度の角度位置となる回転前初期位置において、前記第1、第3回転子突部(10,12)と同極を前記第1、第3固定子突部(2,4)のステータ巻線(2a,4a)に励磁し、80度から45度まで反発力により前記各回転子突部(10〜13)が回転し、前記45度を超えると前記第2、第4固定子突部(3,5)の吸引力により前記回転子(9)が45度から0度まで回転することにより、前記各回転子突部(10〜13)が各々合計で80度回転することを特徴とする請求項1記載の有限角トルクモータ。
【請求項3】
前記回転子(9)の第1回転子板(30)の第1、第3回転子突部(10,13)の各幅方向の中心を結ぶ第1中心線(M)と、前記第2回転子板(31)の第2、第4回転子突部(11,13)の各幅方向の中心を結ぶ第2中心線(N)と、は互いに直交していることを特徴とする請求項1又は2記載の有限角トルクモータ。
【請求項4】
前記回転子(9)を回転後、各固定子突部(2〜5)の励磁極を反転させることにより、前記回転子(9)は回転前の前記回転前初期位置(P1)に戻ることを特徴とする請求項2又は3記載の有限角トルクモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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