説明

有限角ロータリーダンパー

【課題】 チェック弁13,14の固定部13b,14bを区画室9a,9b,10a,10bの外に設けて、デッドストロークを小さくする。
【解決手段】 チェック弁13,14は流体通路11,12内の圧力作用で流体通路を開く板状弁部13a,14aと、この板状弁部を固定する固定部13b,14bとを備えている。そして、固定部を区画室9a,9b,10a,10b外に位置させて、固定部13b,14bを軸部材2に固定するとともに、板状弁部に区画室9a,10aから区画室9b,10bへの流れによって発生する圧力が作用したとき、板状弁部13a,14aが撓んで開弁する。一方、減衰力が発揮されるとき高圧となる区画室9b,10bの高圧が板状弁部13a,14aに作用したとき、当該板状弁部が区画室9b,10bから区画室9a,10aへの流れを遮断するか、あるいはその流れを制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一定角度の範囲で回転する有限角ロータリーダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
有限角ロータリーダンパーとして、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されたものが従来から知られている。
上記特許文献1に開示された有限角ロータリーダンパーは、円筒状のケーシングに軸部材を挿入するとともに、この軸部材の外周には羽根部を突出させている。また、上記ケーシングの内周には区画壁を設け、これら羽根部と区画壁との間に一対の区画室が形成される構成にしている。
【0003】
そして、上記羽根部の先端部分には、上記一対の区画室を連通させる切り欠きを設けるとともに、この切り欠きを覆う凹部を形成した弁部材を設けている。
上記弁部材は、その凹部の溝幅を羽根部の厚さよりも大きくし、区画室の圧力作用で、凹部の一方の壁面が羽根部に圧接したときには他方の壁面が羽根部から離れる構成にしている。また、この弁部材の一方の壁面には上記羽根部の切り欠きと相まって流体の自由流れを許容する自由流路を形成し、他方の壁面には絞り流路を形成している。
【0004】
上記のようにした有限角ロータリーダンパーは、それを一方に回転したときに上記弁部材が機能して自由回転を維持し、他方に回転したときに減衰力を発揮する。つまり、当該ダンパーが一方に回転したときには、上記弁部材の一方の壁面が羽根部と密着して自由流路を開放し、他方に回転したときには、上記弁部材の他方の壁面が羽根部と密着して、自由流路を閉じるとともに、絞り流路を開いて減衰力を発揮させる。
【0005】
また、上記のように弁部材を羽根部にまたがせるようにしたタイプの有限角ロータリーダンパーとは別に、特許文献2に開示されたものも従来から知られている。
この有限角ロータリーダンパーは、円筒状のケーシングに軸部材を挿入するとともに、この軸部材の外周には一対の羽根部を突出させている。また、上記ケーシングの内周にも一対の区画壁を設け、これら羽根部と区画壁との間に2組の区画室が形成される構成にしている。
【0006】
そして、上記羽根部の厚さを厚くし、この厚くした羽根部に弁部材をはめ込むためのはめ込み溝を形成するとともに、このはめ込み溝を構成する両壁面には流体の流れを許容する流路を形成している。
【0007】
上記のようにした有限角ロータリーダンパーは、それを一方に回転したときに上記弁部材が機能して自由回転を維持し、他方に回転したときに減衰力を発揮する。つまり、当該ダンパーが一方に回転したときには、上記弁部材が上記流路を開放して自由流れを許容する。また、他方に回転したときには、上記弁部材が上記流路を閉じるが、このときには弁部材の先端とケーシングの円弧面との間のわずかなすき間を通って流体が流れるようにしている。したがって、このわずかなすき間を通って流れる流体の流動抵抗によって減衰力が発揮されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−282039号公報
【特許文献2】特開2002−364693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された有限角ロータリーダンパーでは、羽根部を弁部材で覆う構成にしているので、羽根部が区画壁方向にフルストロークしたときには、羽根部と区画壁との間に、弁部材の凹部を構成する壁面が必ず介在することになる。そのために当該凹部の壁面の厚さ分だけ、有限角ロータリーダンパーの有効回転ストロークが小さくなる。特に、上記弁部材は凹部を構成する壁面が両側にあるので、当該ダンパーの回転方向両側における回転ストロークを考えれば、上記凹部を構成する一対の壁面の厚さ分だけ有効回転ストロークが小さくなってしまう。
【0010】
そして、上記特許文献1の有限角ロータリーダンパーは、羽根部がひとつしかないが、羽根部を複数設けてそれぞれの羽根部に弁部材を設けた場合には、弁部材の数分だけ有効回転ストロークが小さくなり、用途によっては、そのストロークの減少を当該ダンパーの大型化で解決せざるをえないという問題があった。
しかも、弁部材の上記凹部は、その溝幅を羽根部の厚さよりも大きくしなければならないので、弁部材と羽根部との間に遊びが形成されてしまうが、その遊び分がバックラッシュとなって、ストロークし始めの段階で所期の制御ができなくなるという問題もあった。
【0011】
特許文献2に開示された有限角ロータリーダンパーでは、羽根部の中央にはめ込み溝を形成しなければならないので、羽根部の厚さを厚くせざるをえない。このように羽根部の厚さを厚くすればするほど、当該有限角ロータリーダンパーの有効回転ストロークが小さくなるという問題があった。
【0012】
この発明の目的は、有効回転ストロークを大きく取れるとともに、バックラッシュ等による制御不能領域などがない有限角ロータリーダンパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、ケーシングと、ケーシング内に形成した円弧面と、この円弧面からケーシングの中心方向に向かって設けた区画壁と、上記円弧面の中心を回転中心としてケーシング内に回転自在に保持された軸部材と、この軸部材の外周から突出するとともに上記ケーシングの上記円弧面に沿って回動する羽根部と、上記ケーシングの上記円弧面と軸部材の外周面との間であって、上記区画壁と羽根部とで区画される少なくとも2以上の区画室と、上記羽根部あるいは区画壁のいずれか一方を貫通し、両端開口を上記区画室に臨ませた流体通路と、上記羽根部及び区画壁で区画された一方の区画室に臨ませた上記開口を開閉するともに、この流体通路を通過する粘性流体の流れに対して、当該羽根部及び区画壁で区画された他方の区画室から上記一方の区画室への流れのみを許容するチェック弁とを備えた有限角ロータリーダンパーに関する。
【0014】
そして、第1の発明は、上記チェック弁が、上記流体通路内の圧力作用で上記流体通路を開く板状弁部と、この板状弁部を固定する固定部とを備えている。さらに、この固定部を、ケーシング、上記軸部材、区画壁あるいは羽根部のいずれかに固定するとともに当該固定部を上記区画室外に位置させている。
そして、上記板状弁部に上記他方の区画室から一方の区画室への流れによって発生する圧力が作用したとき、上記板状弁部もしくは固定部のいずれか一方またはそれら両者が撓んで開弁する構成にしている。
また、減衰力が発揮されるとき高圧となる上記一方の区画室の高圧が板状弁部に作用したとき、当該板状弁部が一方の区画室から他方の区画室への流れを遮断するか、あるいはその流れを制限する構成にしている。
【0015】
第2の発明は、上記ケーシング、軸部材、区画壁あるいは羽根部のいずれかに、埋め込み溝を設け、この埋め込み溝に上記固定部を埋め込んでいる。
なお、この発明における軸部材の外周面とは、軸部材の外周に外接する外接円に沿った周面のことで、上記埋め込み溝が軸部材の外周に開口していても、この埋め込み溝の内面に沿った面は軸部材の外周に含まれない。また、同様に、ケーシングの内周とは、ケーシングの内周に内接する内接円に沿った周面のことである。
【0016】
第3の発明は、上記チェック弁の構成を、開弁方向の圧力が作用していないノーマル状態で、上記流体通路の開口部分に圧接する弾性力を発揮するようにしている。
【0017】
第4の発明は、上記軸部材あるいはケーシングに、直径方向に深さを有する上記埋め込み溝を形成し、この埋め込み溝に上記固定部を埋め込んでいる。
【0018】
第5の発明は、上記埋め込み溝には抜止め用突部を形成し、上記固定部には、上記抜止め用突部に当たる当接部を設け、上記板状弁部に抜け方向の力が作用したとき、上記当接部が上記抜止め用突部に当たる構成にしている。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、弁部材を板状弁部と固定部とで構成するとともに、弁部材を固定したときには、上記固定部が区画室外に位置する構成にしたので、この有限角ロータリーダンパーがフルストロークしたとき、羽根部と区画壁との間には、厚さを薄くできる板状弁部のみが介在するので、有効回転ストロークを大きくとれる。
【0020】
第2の発明によれば、ケーシング、軸部材、区画壁あるいは羽根部のいずれかに、埋め込み溝を設け、この埋め込み溝に上記固定部を埋め込んだので、ビスなどを用いなくても固定部を固定することができ、その分、チェック弁の組み付け作業が簡単になるとともに、部品点数を少なくできる。
【0021】
第3の発明によれば、ノーマル状態でチェック弁が流体通路の開口部分に圧接しているので、バックラッシュがほとんど発生しない。したがって、バックラッシュが原因になっていた制御不能領域をなくすことができる。
【0022】
第4の発明によれば、固定部から板状弁部の先端までの長さを長くできるので、板状弁部が撓みやくなり、自由流れに対する抵抗を少なくできる。
【0023】
第5の発明によれば、埋め込み溝に抜止め用突部を設けたので、チェック弁に抜け方向の力が作用したとしても、それが埋め込み溝から抜け出ることがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のA部の拡大部分断面図である。
【図4】第1実施形態の軸部材にチェック弁を組み込んだ状態の拡大斜視図である。
【図5】第1実施形態の埋め込み溝からチェック弁を分離した状態の拡大斜視図で、上記図4よりも縮尺率を大きくしたものである。
【図6】第1実施形態の図2に相当する第2実施形態の断面図である。
【図7】図6のA部の拡大部分断面図である。
【図8】第1実施形態の図2に相当する第3実施形態の断面図である。
【図9】図8のA部の拡大部分断面図である。
【図10】第1実施形態の図2に相当する第4実施形態の断面図である。
【図11】図10のA部の拡大部分断面図である。
【図12】第1実施形態の図2に相当する第5実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜5に示した第1実施形態は、円筒状のケーシング1に軸部材2の軸部2aを回転自在に組み込むが、このケーシング1内に組み込んだ軸部2aには、その軸部2aの半径方向に突出する一対の羽根部3,4を設けている。そして、軸部2aを上記のようにケーシング1に組み込んだ状態では、図2に示すように、上記羽根部3,4の先端が、ケーシング1内に形成した円弧面1a,1bに接触するかあるいはわずかなすき間を保って回動する寸法を保っている。
【0026】
上記のようにした軸部材2は、図4に示すように、軸部2aの基端側にフランジ部5を設け、軸部2aはこのフランジ部5から突出する構成にしている。さらに軸部2aの突出端には、軸部2aよりも小径な支持突部2bを設け、この支持突部2bがケーシング1に設けた図示していない軸受に回転自在に支持される構成にしている。そして、上記軸部2aと支持突部2bとの境界には段差を設けて段差部2cとしている。
【0027】
さらに、上記軸部材2は、それをケーシング1の一方に設けた開口から挿入し、上記支持突部2bをケーシング1に設けた軸受に支持させるとともに、上記開口を図1に示したキャップ6でふさぐ。このキャップ6には図示していない軸受部を設け、この軸受部で、上記フランジ部5の外側における軸部材2を回転自在に支持する。
【0028】
一方、上記ケーシング1の内周には、図2に示すように、半径方向に突出する一対の区画壁7,8を設けているが、この区画壁7,8の先端が軸部2aの外周に接触するかあるいはわずかなすき間を保って回動する。したがって、上記区画壁7,8は、ケーシング1の内周に接触するかあるいはわずかなすき間を保って回動する羽根部4と相まって一対の区画室9a,9b及び10a,10bを形成する。
【0029】
さらに、上記羽根部3,4には、図4,5に示すように、軸部2aの軸線方向に長辺を有する長方形の貫通孔を形成し、この貫通孔を流体通路11,12としている。
そして、一対の羽根部3,4であって、互いに点対称となる側面にはチェック弁13,14を設け、このチェック弁13,14の作用で、上記流体通路11,12には一方向の流れのみを許容する構成にしているが、このチェック弁13,14の具体的な構成は次のとおりである。
【0030】
上記チェック弁13,14は、板状弁部13a,14aと固定部13b,14bとからなり、この固定部13b,14bは、板状弁部13a,14aの基端に連続させるとともに上記基端部分をU字状に折り返してなるが、これら板状弁部13a,14a及び固定部13b,14bは弾性を有する材料で構成している。なお、チェック弁13,14の強度が求められる場合には、チェック弁13,14を金属製とすることが好ましい。
そして、上記固定部13b,14bは、埋め込み溝15,16に埋め込むが、この埋め込み溝15,16は上記軸部2aの軸方向に対応する方向の長さと、上記固定部13b,14bの軸方向長さとをほぼ等しくし、固定部13b,14bが埋め込み溝15,16にほぼぴったりとはまる構成にしている。
【0031】
また、埋め込み溝15,16の一方の側面は羽根部3,4の側面と連続し、この一方の側面と対向する他方の側面は、上記一方の側面との間で、上記固定部13b,14bがはめ込まれるだけの対向間隔を保つとともに、この他方の側面における埋め込み溝15,16の開口には、軸方向に伸びる抜止め用突部17,18を形成している。
この抜止め用突部17,18は、埋め込み溝15,16に埋め込まれた固定部13b,14bの先端である当接部13c、14cが当たって、固定部13b、14bが埋め込み溝15,16から抜けるのを防止するためのものである。
【0032】
また、上記支持突部2bの表面には、その軸方向に伸びる挿入溝19,20を形成し、この挿入溝19,20の一端を支持突部2bの先端に開放するとともに、他端を上記段差部2cに開口する埋め込み溝15,16に連続させている。
なお、上記のように埋め込み溝15,16に連続する挿入溝19,20を形成したのは、成形時の型抜きをやりやすくするためである。
【0033】
つまり、羽根部3,4は軸部2aに向かって図2の断面幅を狭くするが、羽根部3,4をこのような形状にすると、埋め込み溝15,16を形成する型を図2の直径方向には抜き難くなる。そこで、上記のように埋め込み溝15,16に挿入溝19,20を連続させることによって、これら埋め込み溝15,16及び挿入溝19,20を形成する型を軸方向に抜くことができるようになる。また、このようにすることによって、抜止め用突部17,18も型成形できる。
なお、埋め込み溝15,16の部分に別のコマを用いて成形することにより、軸部材2を径方向に二つ割りにした型を用いて成形することもできる。したがって、このような成形方向を用いた場合には、必ずしも挿入溝19,20がなくてもよいことになる。ただし、この場合には、抜け止め用突起17,18を別部材で構成し、それをねじ等で軸部材2に取り付けなければならない。
【0034】
そして、チェック弁13,14を軸部材2に組み付けるときには、U字状にした固定部13b、14bをやや撓ませながら挿入溝19,20に沿ってスライドさせ、当接部13c、14cが抜止め用突部17,18の内側に入るようにして埋め込み溝15,16に押し込む。
このようにすれば、U字状にした固定部13b,14bが埋め込み溝15,16内で弾性的に開こうとする力が発生し、その力の作用で板状弁部13a,14aが羽根部3,4に密着する。
【0035】
そして、固定部13b、14bを埋め込み溝15,16に埋め込むことによって、当該固定部13b、14bを上記区画室9a,9b及び10a,10b外に位置させることができる。なお、この区画室9a,9b及び10a,10bは、上記ケーシング1の円弧面1a,1bと軸部材2の外周面との間であって、上記区画壁7,8と羽根部3,4とで区画されるが、上記ケーシング1の円弧面1a,1bとは、ケーシング1の内周に内接する内接円上の弧面のことであり、軸部材2の外周面とは、軸部材の外周に外接する外接円上の弧面のことで、この発明においては、上記埋め込み溝15,16が軸部材2の外周に開口していても、この埋め込み溝15,16の内面に沿った部分は軸部材2の外周に含まれない。
【0036】
なお、上記軸部材2の軸方向に対応する方向における板状弁部13a,14aの中心を基準に、流体通路11,12を、支持突部2b側すなわちケーシング1側に偏らせて、板状弁部13a,14aの上記中心よりも支持突部2b側すなわちケーシング1側における流体通路11,12の開口面積を、上記板状弁部13a,14aの中心を境にして反対側の開口面積よりも相対的に大きくしている。
【0037】
このように支持突部2b側すなわちケーシング1側において流体通路11,12の開口面積を相対的に大きくしたのは、チェック弁13,14が、流体通路11,12からの圧力を受けて、ケーシング1側にずれないようにし、チェック弁13,14でケーシング1を損傷させないようにするためである。
【0038】
例えば、上記流体通路11,12の上記軸方向における中心を、板状弁部13a,14aの上記軸方向における中心と一致させれば、言い換えれば、上記中心を境に流体通路11,12の開口面積を等しくしておけば、圧力バランスが少しでもくずれたとき、チェック弁13,14が上記軸方向いずれかに移動してしまう。もし、金属製のチェック弁13,14が、ケーシング1側に移動すると、チェック弁13,14とケーシング1や支持突部2bを支持する図示していない軸受とがこすれ合ってケーシング1や軸受を損傷させることがある。
【0039】
しかし、上記のようにケーシング1側における流体通路11,12の開口面積を相対的に大きくしておけば、チェック弁13,14には、ケーシング1から離れる方向の力を多く受け、チェック弁13,14は、ケーシング1側に移動しにくくなる。したがって、チェック弁13,14によってケーシング1を損傷することがほとんどなくなる。
【0040】
上記第1実施形態の有限角ロータリーダンパーは、図2において、軸部材2がケーシング1に対して相対的に反時計方向に回転すると、区画室9a、10aの容積が縮小して、区画室9b,10bの容積が拡大し、区画室9a,10a内の粘性流体の圧力が上昇する。
したがって、区画室9a,10a内の粘性流体の圧力が、流体通路11,12を介してチェック弁13,14の板状弁部13a、14aに作用する。このように板状弁部13a,14aに高圧が作用すれば、板状弁部13a、14aがたわんで流体通路11,12を開き、区画室9a,10aの粘性流体が区画室9b,10bに流れ、軸部材2の自由回転を許容する。
【0041】
軸部材2が上記とは反対方向である時計方向に回転すると、区画室9b、10bの容積が縮小して、区画室9a,10aの容積が拡大し、区画室9b,10b内の粘性流体の圧力が上昇する。したがって、区画室9b,10b内の粘性流体の圧力がチェック弁13,14の板状弁部13a、14aに作用するが、このときには板状弁部13a,14aが羽根部3,4に密着するだけで、流体通路11,12を閉じた状態に保つ。
【0042】
流体通路11,12が上記のように閉じられた状態では、高圧になった粘性流体は、ケーシング1の円弧面1a,1bと羽根部3,4との接触部分のすき間や軸部2aの外周部と区画壁7,8との接触部分のすき間を通って、反対側の区画室9a,10aに流れるが、このときの流動抵抗で減衰力が発揮される。
【0043】
そして、軸部材2が上記のように時計方向にフルストロークすると、羽根部3,4と区画壁7,8との間に板状弁部13a,14aが介在するが、上記のように固定部13b,14bが埋め込み溝15,16に埋め込まれて区画室9a,9b及び10a,10bの外に位置するので、従来のようなデッドストロークがほとんどない。
また、板状弁部13a,14aは、それに圧力が作用していないノーマル状態で、固定部13b,14bの弾性力と相まって羽根部3,4に密接しているので、いわゆるバックラッシュもほとんどなくなる。したがって、バックラッシュが原因になっていた制御不能領域をなくすことができる。
【0044】
さらに、上記埋め込み溝15,16には抜止め用突部17,18を設け、この抜止め用突部17,18にチェック弁13,14の当接部13c,14cが当たるようにしたので、チェック弁13,14にそれが埋め込み溝15,16から抜ける方向の力が作用したとしてもチェック弁13,14がその埋め込み溝15,16から抜けてしまうことがない。
【0045】
また、軸部材2aに埋め込み溝15,16を設け、この埋め込み溝15,16に固定部13b,14bを埋め込んだので、ビスなどを用いなくても固定部を固定することができ、その分、チェック弁13,14の組み付け作業が簡単になるとともに、部品点数を少なくできる。
しかも、固定部13b,14bから板状弁部13a,14aの先端までの長さを長くできるので、板状弁部13a,14aが撓みやくなり、自由流れに対する抵抗を少なくできる。
【0046】
図6,7に示した第2実施形態は、第1実施形態の流体通路11,12及び埋め込み溝15,16に代えて、区画壁7,8に流体通路21,22を形成するとともに、ケーシング1の円弧面1a,1bに第1実施形態と同様の埋め込み溝23,24を形成し、その埋め込み溝には抜止め用突部25,26を設けたもので、その他の構成要素及びチェック弁13,14及び流体通路11,12との相対関係は第1実施形態と同じである。
したがって、第1実施形態と同じ構成要素については、その詳細な説明を省略するとともに、それら同一の構成要素については、第1実施形態と同一符号を用いる。
【0047】
なお、この第2実施形態においても、区画室9a,9b及び10a,10bは、上記ケーシング1の円弧面1a,1bと軸部材2の外周面との間であって、上記区画壁7,8と羽根部3,4とで区画されるが、軸部材2の外周面とは、軸部材の外周に外接する外接円上の周面のことであり、上記ケーシング1の円弧面1a,1bとは、ケーシング1の円弧面1a,1bに内接する内接円上の周面のことで、上記埋め込み溝23,24がケーシング1の円弧面1a,1bに開口していても、この発明において埋め込み溝23,24の内面に沿った部分はケーシング1の内周に含まれない。
【0048】
上記したように第2実施形態においても、軸部材2がフルストロークすると、羽根部3,4と区画壁7,8との間に板状弁部13a,14aが介在するが、固定部13b,14bが埋め込み溝23,24に埋め込まれて区画室9a,9b及び10a,10bの外に位置するので、デッドストロークがほとんどない。
また、板状弁部13a,14aは、それに圧力が作用していないノーマル状態で、固定部13b,14bの弾性力と相まって区画壁7,8に密接しているので、いわゆるバックラッシュもなくなる。
【0049】
さらに、上記埋め込み溝23,24には抜止め用突部25,26を設け、この抜止め用突部25,26にチェック弁13,14の当接部13c,14cが当たるようにしたので、チェック弁13,14にそれが埋め込み溝25,26から抜ける方向の力が作用したとしてもチェック弁13,14がその埋め込み溝25,26から抜けてしまうことがない。
【0050】
また、ケーシング1に埋め込み溝23,24を設け、この埋め込み溝23,24に固定部13b,14bを埋め込んだので、ビスなどを用いなくても固定部を固定することができ、その分、チェック弁13,14の組み付け作業が簡単になるとともに、部品点数を少なくできる。
しかも、固定部13b,14bから板状弁部13a,14aの先端までの長さを長くできるので、板状弁部13a,14aが撓みやくなり、自由流れに対する抵抗を少なくできる。
【0051】
図8,9に示した第3実施形態は、チェック弁27,28の構成を第1,2実施形態と相違させたものである。すなわち、この第3実施形態のチェック弁27,28は、図示のように板状弁部27a,28aの基部に設けた固定部27b,28bを鉤型に形成し、それを羽根部3,4の基部に直接埋め込んだものである。つまり、この第3実施形態では、第1,2実施形態のように埋め込み溝を形成することなく、固定部27b,28bを羽根部3,4の基部に直接埋め込んだものである。
【0052】
そして、この第3実施形態においても、軸部材2がフルストロークすると、羽根部3,4と区画壁7,8との間に板状弁部27a,28aが介在するが、固定27b,28bが羽根部3,4の基部に直接埋め込まれて区画室9a,9b及び10a,10bの外に位置するので、デッドストロークがほとんどない。
【0053】
また、板状弁部27a,28aは、それに圧力が作用していないノーマル状態で、固定部27b,28bの弾性力と相まって区画壁7,8に密接しているので、いわゆるバックラッシュもほとんどなくなる。
さらに、上記固定部27b,28bの基部に直接埋め込んだので、チェック弁27,28に抜ける方向の力が作用したとしてもチェック弁27,28が抜けてしまうことがない。
【0054】
図10,11に示した第4実施形態は、第3実施形態の流体通路11,12に代えて、区画壁7,8に流体通路21,22を形成したもので、チェック弁27,28及び流体通路21,22との関係を含めた他の構成は第1実施形態と同じである。
したがって、第3実施形態と同じ構成要素については、その詳細な説明を省略するとともに、それら同一の構成要素については、第3実施形態と同一符号を用いる。
【0055】
この第4実施形態のチェック弁27,28は、図示のように板状弁部27a,28aの基部に設けた固定部27b,28bを鉤型に形成し、それを区画壁7,8の基部に直接埋め込んだものである。
【0056】
そして、この第4実施形態においても、軸部材2がフルストロークすると、羽根部3,4と区画壁7,8との間に板状弁部27a,28aが介在するが、固定27b,28bが羽根部3,4の基部に直接埋め込まれて区画室9a,9b及び10a,10bの外に位置するので、デッドストロークがほとんどない。
【0057】
また、板状弁部27a,28aは、それに圧力が作用していないノーマル状態で、固定部27b,28bの弾性力と相まって区画壁7,8に密接しているので、いわゆるバックラッシュもほとんどなくなる。
さらに、上記固定部27b,28bを区画壁7,8の基部に直接埋め込んだので、チェック弁27,28に抜ける方向の力が作用したとしてもそれが抜けたりしない。
【0058】
図12に示した第5実施形態は、軸線に直交する方向のケーシング28の断面形状を扇形にしたものである。すなわち、この第5実施形態は、ケーシング28の内周に円弧面aを形成するとともに、この円弧面aの両端に、円弧面aからその中心方向に向かう壁面を形成し、この壁面を区画壁29、30としている。
【0059】
また、上記ケーシング28の中心部分には、軸部材31の軸部31aを回転自在に保持させるとともに、この軸部31aには第1実施形態と同様の羽根部32を形成している。さらに、軸部31aを図12に示すようにケーシング28に組み込んだ状態で、上記羽根部32は、その先端がケーシング28の円弧面aに接触するかあるいはわずかなすき間を保って回動する寸法を保っている。そして、上記円弧面aは、その円弧の中心と、上記軸部材2の回転中心とを一致させとともに、上記羽根部32と区画壁29,30とが相まって、ケーシング28内に区画室33,34を区画している。
【0060】
さらに、この第5実施形態においてもチェック弁35を組み付けるが、このチェック弁35には板状弁部35aと固定部35bとを備えるとともに、このチェック弁35の固定部35bを、軸部31aの軸線に沿って形成した埋め込み溝36に埋め込んでいる。そして、このチェック弁35の機能は第1実施形態と全く同じである。
なお、図中符号37は抜け止め用突起で、第1実施形態と全く同じ機能を発揮するものである。
【0061】
そして、上記羽根部32には、流体通路38を形成しているが、この流体通路38は第1実施形態と同様の位置関係を保っている。すなわち、上記軸部材31に組み込まれたチェック弁35に対して、軸部31aの軸方向に対応する方向における板状弁部35aの中心を基準にして、流体通路38を、図示していない支持突部側すなわちケーシング28側に偏らせている。言い換えると、上記板状弁部35aの上記軸方向に対応する方向における中心を基準にして、上記流体通路38を支持突部2b側に偏らせている。
【0062】
上記のように板状弁部35aの中心を基準に流体通路38を偏らせたので、上記中心よりもケーシング28側における流体通路38の開口面積が、上記板状弁部35aの中心を境にして反対側の開口面積よりも相対的に大きくなる。
このようにケーシング28側において流体通路38の開口面積を相対的に大きくしたのは、チェック弁35が、流体通路38からの圧力を受けて、ケーシング28側にずれないようにし、チェック弁35でケーシング28を損傷させないようにするためで、これらの点は第1実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
便器の蓋の開閉を制御する有限角ロータリーダンパーとして有効である。
【符号の説明】
【0064】
1 ケーシング
1a,1b 円弧面
2 軸部材
3,4 羽根部
7,8 区画壁
9a,9b 区画室
10a,10b 区画室
11,12 流体通路
13,14 チェック弁
13a,14a 板状弁部
13b,14b 固定部
15,16 埋め込み溝
17,18 抜止め用突部
21,22 流体通路
23,24 埋め込み溝
25,26 抜止め用突部
27,28 チェック弁
27a,28a 板状弁部
27b,28b 固定部
28 ケーシング
a 円弧面
29,30 区画壁
31 軸部材
31a 軸部
32 羽根部
33,34 区画室
35 チェック弁
35a 板状弁部
35b 固定部
36 埋め込み溝
38 流体通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、ケーシング内に形成した円弧面と、この円弧面からケーシングの中心方向に向かって設けた区画壁と、上記円弧面の中心を回転中心としてケーシング内に回転自在に保持された軸部材と、この軸部材の外周から突出するとともに上記ケーシングの上記円弧面に沿って回動する羽根部と、上記ケーシングの上記円弧面と軸部材の外周面との間であって、上記区画壁と羽根部とで区画される少なくとも2以上の区画室と、上記羽根部あるいは区画壁のいずれか一方を貫通し、両端開口を上記区画室に臨ませた流体通路と、上記羽根部及び区画壁で区画された一方の区画室に臨ませた上記開口を開閉するともに、この流体通路を通過する粘性流体の流れに対して、当該羽根部及び区画壁で区画された他方の区画室から上記一方の区画室への流れのみを許容するチェック弁とを備えた有限角ロータリーダンパーにおいて、上記チェック弁は、上記流体通路内の圧力作用で上記流体通路を開く板状弁部と、この板状弁部を固定する固定部とを備え、この固定部を上記区画室外に位置させて、当該固定部をケーシング、上記軸部材、区画壁あるいは羽根部のいずれかに固定するとともに、上記板状弁部に上記他方の区画室から一方の区画室への流れによって発生する圧力が作用したとき、上記板状弁部もしくは固定部のいずれか一方またはそれら両者が撓んで開弁する一方、減衰力が発揮されるとき高圧となる上記一方の区画室の高圧が板状弁部に作用したとき、当該板状弁部が一方の区画室から他方の区画室への流れを遮断するか、あるいはその流れを制限する構成にした有限角ロータリーダンパー。
【請求項2】
ケーシング、上記軸部材、区画壁あるいは羽根部のいずれかに、埋め込み溝を設け、この埋め込み溝に上記固定部を埋め込んだ請求項1に記載の有限角ロータリーダンパー。
【請求項3】
上記チェック弁は、開弁方向の圧力が作用していないノーマル状態で、上記流体通路の開口部分に圧接する弾性力を発揮する構成にした請求項1または2に記載の有限角ロータリーダンパー。
【請求項4】
上記軸部材あるいはケーシングに、直径方向に深さを有する上記埋め込み溝を形成し、この埋め込み溝に上記固定部を埋め込んだ請求項1〜3のいずれか1に記載の有限角ロータリーダンパー。
【請求項5】
上記埋め込み溝には抜止め用突部を形成し、上記固定部には、上記抜止め用突部に当たる当接部を設け、上記板状弁部に抜け方向の力が作用したとき、上記当接部が上記抜止め用突部に当たる構成にした1〜4のいずれかに記載した有限角ロータリーダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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