説明

望ましい活性をもつトランスアルキル化触媒とそれを用いた反応

【課題】液相条件下のトランスアルキル化反応において、望ましい活性度や良好な変換速度を持つプロセスおよび触媒を提供する。
【解決手段】ポリアルキル化芳香族化合物からモノアルキル化芳香族化合物を製造するためのプロセスおよび触媒が開示されている。モノアルキル化芳香族化合物を含む生成物を製造するために、このプロセスは、0.001wt%〜10.0wt%の範囲でリン量を持つゼオライトベータの存在において、少なくとも部分的な液相条件下で、アルキル化可能な芳香族化合物をポリアルキル化芳香族化合物と接触させる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、芳香族化合物のトランスアルキル化、特にクメンを生成するためにベンゼンを用いたポリイソプロピルベンゼンのトランスアルキル化およびエチルベンゼンを生成するためにベンゼンを用いたポリエチルベンゼンのトランスアルキル化に関する製造方法および触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
エチルベンゼンは、有用な汎用化学製品であり、スチレンモノマーの生産に使用される。クメン(イソプロピルベンゼン)も、有用な汎用化学製品であり、フェノールおよびアセトンの生成に使用される。
【0003】
現在、エチルベンゼンは、ベンゼンから液相アルキル化プロセスによってしばしば生成される。この液相プロセスはその気相対照物より低温で働く。そのため、ポリアルキル化された副産物および他の不純物の生成をより低減できる。ゼオライト触媒を用いる芳香族炭化水素化合物のアルキル化は既知であり技術的に理解されている。US特許5,334,795は、エチルベンゼンを生成するためにMCM-22の存在下でエチレンを用いたベンゼンの液相アルキル化を述べている。US特許4,891,458はゼオライトベータを使用するトランスアルキル化プロセスおよび液相アルキル化を述べている。
【0004】
ゼオライト・ベース触媒系はクメンへのベンゼンプロピル化において使用される。US特許4,992,606は、MCM-22を使う短鎖アルキル芳香族化合物の製造方法を開示し、またクメンを生成するためにMCM-22の存在下でプロピレンを用いたベンゼンの液相アルキル化も含んでいる。
【0005】
エチルベンゼンとクメンの生成に関する商用のアルキル化プロセスは、エチルベンゼンとクメンに加えてある種のポリアルキル化された副産物を生成する。さらにエチルベンゼンとクメンを生成するために、ベンゼンまたは他のアルキル化可能な芳香族化合物を用いてポリアルキル化された副産物をトランスアルキル化することは技術的には周知である。このトランスアルキル化反応はポリアルキル化された副産物を、適切な条件の下トランスアルキル化触媒の存在下で作用されたトランスアルキル化リアクターを通して供給することによって行っても良い。また、ポリアルキル化された副産物はトランスアルキル化反応を行うことができるアルキル化触媒の存在下でアルキル化リアクターへリサイクルしても良い。US特許5,557,024は、MCM-56を使う短鎖アルキル芳香族化合物を生成するプロセスおよび、ポリアルキル化された副産物のトランスアルキル化用の、MCM-22、ゼオライトX、ゼオライトYおよびゼオライトベータのようなゼオライト触媒の使用を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液相条件下でトランスアルキル化反応を行うとトランスアルキル化触媒の使用が増加してしまう。これまで、先行技術のトランスアルキル化触媒は、望ましい活性度を得られなかったし、液相トランスアルキル化反応に関して妥当な変換速度を達成できなかった。
【0007】
US特許5,470,810は、MCM-22のX線構造を持つ多孔質結晶性材料へのリンの添加が、FCCプロセスにおいて経験されたスチーミング(蒸気処理)の繰り返しサイクル後にも活性度を保持するために触媒の熱水安定度を改良することを開示する。
【0008】
US特許3,962,364は、芳香族炭化水素の気相アルキル化において、ZSM-5のようなアルミノケイ酸塩ゼオライトへの0.5wt%以上のリン添加が望ましいアルキル化炭化水素に関する選択性を増大させることを開示する。
【0009】
US特許公開2003-0028060-A1は液相条件下で芳香族化合物のアルキル化において触媒の活性度と選択性を増大させるために、リンを用いた、MCM-22、MCM-49およびMCM-56のようなアルキル化触媒の改良を開示する。
【0010】
しかし、これらの文献のどれも、リンを含浸させたゼオライトベータ触媒を含むトランスアルキル化触媒を意図していない。さらに、アルキル化およびトランスアルキル化プロセスにおいて使用する従来のゼオライト触媒と比べて、予想されるほどの相対的触媒活性度を示していない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要約)
本発明に従って、ポリアルキル化芳香族化合物からモノアルキル化芳香族化合物を製造する方法が提供され、モノアルキル化芳香族化合物を含む生成物を提供するために、この製造方法は、前記触媒の0.001wt%〜10.0wt%の範囲のリン量を持つゼオライトベータ触媒の存在において、少なくとも部分的な液層条件下で、アルキル化可能な芳香族化合物をポリアルキル化芳香族化合物と接触する工程を含む。好適には、前記ゼオライトベータ触媒の触媒活性は、前記の第1および第2のゼオライトベータ触媒を等価条件下で比較するとき、リンフリーである(リンがない)ゼオライトベータ触媒より大きい。
【0012】
好適には、工程(b)のベータゼオライト・トランスアルキル化触媒は、重量比80/20のゼオライトベータおよびAl(アルミナ203)の水素形態である。もっと好適には、ベータゼオライトは、11.4±0.2、7.4±0.2、6.7±0.2、4.25±0.1、3.97±0.1、3.0±0.1、2.2±0.1オングストロームでd間隔最大値を含むX線回折パターンを持つ。ベータゼオライト・トランスアルキル化触媒のリン量は、好適には前記触媒の0.001wt%〜10.0wt%の範囲であり、もっと好適にはリン量は前記触媒の0.005wt%〜3.0wt%の範囲であり、最適には前記触媒の0.01wt%〜0.5wt%の範囲である。
【0013】
好適には、工程(a)のアルキル化剤はプロピレンまたはエチレンであり、アルキル化可能な芳香族化合物はベンゼンである。
【0014】
好適には、上記の工程(b)のポリアルキル化化合物はポリエチルベンゼンであり、アルキル化可能な化合物はモノアルキル化芳香族生成物としてエチルベンゼンを生成するためのベンゼンである。
【0015】
好適には、上記の工程(b)のポリアルキル化化合物はポリイソプロピルベンゼンであり、アルキル化可能な化合物はモノアルキル化芳香族生成物としてクメンを生成するためのベンゼンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、従来のゼオライトベータと比較して予想外に高い相対的触媒活性度を示すリン(P-ベータ)で含浸した、新規のゼオライトベータ触媒に関する。好適には、工程(b)のベータゼオライト・トランスアルキル化触媒は、重量比80/20のゼオライトベータおよびAl(アルミナ203)の水素形態である。もっと好適には、P-ベータ触媒は、11.4±0.2、7.4±0.2、6.7±0.2、4.25±0.1、3.97±0.1、3.0±0.1、2.2±0.1オングストロームでd間隔最大値を含むX線回折パターンを持ち、リンを含む。好適には、P-ベータのリン量は、前記触媒の0.001wt%〜10.0wt%の範囲であり、もっと好適にはこのようなリン量は前記触媒の0.005wt%〜3.0wt%の範囲であり、最適にはこのようなリン量は前記触媒の0.01wt%〜0.5wt%の範囲である。
【0017】
本発明はまた、モノアルキル化芳香族化合物を生成するプロセスに関するもので、アルキル化工程が少なくとも部分的な液相条件下で達成され、アルキル化合物はアルキル化剤と反応し、その結果、ポリアルキル化化合物と同様にモノアルキル化芳香族最終生成物を生成し、それは分離されかつトランスアルキル化プロセス工程へ供給される。トランスアルキル化工程において、それは好適には少なくとも部分的な液相条件下で行われるが、ポリアルキル化最終生成物は、好適にはP-ベータ触媒の存在において、トランスアルキル化リアクター内でアルキル化可能な芳香族化合物と接触し、モノアルキル化化合物を生成する。もっと好適には、P-ベータ触媒は、11.4±0.2、7.4±0.2、6.7±0.2、4.25±0.1、3.97±0.1、3.0±0.1、2.2±0.1オングストロームでd間隔最大値を含むX線回折パターンを持ち、リンを含む。好適には、P-ベータのリン量は、前記触媒の0.001wt%〜10.0wt%の範囲であり、もっと好適にはこのようなリン量は前記触媒の0.005wt%〜3.0wt%の範囲であり、最適にはこのようなリン量は前記触媒の0.01wt%〜0.5wt%の範囲である。
【0018】
用語「芳香族」は、ここにおいて有用なアルキル化可能な化合物に関連して使われるとき、アルキル置換並びに未置換の単(モノ)核および多(ポリ)核の化合物を含む技術的に認識される範囲と関連して理解されるべきである。ヘテロ原子を有する芳香族の特徴を持つ化合物はまた、それらが選択される反応条件下で触媒毒として作用しないという条件で、有用である。
【0019】
本発明に従ってアルキル化できる置換芳香族化合物、たとえばアルキル化可能な芳香族化合物は、芳香核に直接結合する少なくとも1つの水素原子を有しなければならない。この芳香族環は、1つ以上のアルキル基、アリル基、アルキルアリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキル基、ハロゲン、および/またはアルキル化反応と干渉しない他の基と置換できる。
【0020】
適切な芳香族炭化水素は、好適なベンゼンとともに、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、ペリレン、コロネン、およびフェナントレンを含む。
【0021】
一般に、芳香族化合物上で置換基として存在可能なアルキル基は、1〜約22個の炭素原子、通常は約1〜8個の炭素原子、最適には約1〜4個の炭素原子を含む。
【0022】
アルキル化剤のような適切なアルキル置換芳香族化合物は、トルエン、キシレン、イソプロピルベンゼン、標準プロピルベンゼン(n-プロピルベンゼン)、アルファ−メチルナフタレン、エチルベンゼン、メシチレン、ジュレン、シメン、ブチルベンゼン、プソイドクメン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、イソアミルベンゼン、イソヘキシルベンゼン、ペンタエチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラエチルベンゼン、1,2,3,5−テトラエチルベンゼン、1,2,4−トリエチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、m−ブチルトルエン、p−ブチルトルエン、3,5−ジエチルトルエン、o−エチルトルエン、p−エチルトルエン、m−プロピルトルエン、4−エチル−m−キシレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、2,3−ジメチルアントラセン、9−エチルアントラセン、2−メチルアントラセン、o−メチルアントラセン、9,10−ジメチルフェナントレン、および3−メチル−フェナントレンを含む。もっと高い分子量アルキル化炭化水素はまた、開始材料として使うことができ、オレフィンオリゴマーを有する芳香族炭化水素のアルキル化によって精製される芳香族炭化水素を含む。このような生成物はアルキレートとして技術的に参照されていて、ヘキシルベンゼン、ノニルベンゼン、ドデシルベンゼン、ペンタデシルベンゼン、ヘキシルトルエン、ノニルトルエン、ドデシルトルエン、ペンタデシルベンゼンなどを含む。非常に頻繁に、アルキレートは、芳香核と結合するアルキル基が約C〜約C12のサイズで変化する重質留分として得られる。クメンまたはエチルベンゼンが望ましい生成物であるとき、このプロセスはキシレンのような副生成物を許容できるレベルで殆ど生成しない。このような場合に作られるキシレンは約500ppm未満である。
【0023】
ベンゼン、トルエンおよび/またはキシレンの実質量を含む改良剤は本発明のアルキル化プロセスに特に有用な原料を構成する。
【0024】
本発明のプロセスにおいて有用な可能性があるアルキル化剤は一般に、アルキル化可能な芳香族化合物と反応できる1つ以上の利用可能な脂肪族を有する任意の脂肪族または芳香族有機化合物を含む。
【0025】
好適には、ここで用いられるアルキル化剤は1〜5個の炭素原子を持つ少なくとも1つのアルキル化芳香族化合物を持つ。このようなアルキル化剤の例は、エチレン、プロピレン、ブテン類、およびペンテン類のようなオレフィン類であり、メタノール、エタノール、プロパノール類、ブタノール類、ペンタノール類のようなアルコール類(一価アルコール類、二価アルコールおよび三価アルコール類を含む)であり、フォルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、およびn-バレルアルデヒドのようなアルデヒド類であり、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル類、塩化ブチル類、および塩化ペンチル類のようなハロゲン化アルキル類である。
【0026】
軽オレフィン類の混合物は、本発明のアルキル化プロセスにおけるアルキル化剤として特に有用である。従って、エチレン、プロピレン、ブテン類、および/またはペンテン類、種々の精製ストリーム(流れ)、たとえば、燃料ガス、エチレンを含むガスプラントのオフガス、プロピレンなど、軽オレフィン類を含むナフサ分解オフガスおよび精製FCCプロパン/プロピレン・ストリームの主要構成成分である、エチレン、プロピレン、ブテン類、および/またはペンテン類は、ここにおいて有用なアルキル化剤として有用である。たとえば、典型的なFCC軽オレフィン流れは次の組成物を有する。
【0027】

wt% モル%
エタン 3.3 5.1
エチレン 0.7 1.2
プロパン 4.5 15.3
プロピレン 42.5 46.8
イソブタン 12.9 10.3
n−ブタン 3.3 2.6
ブテン類 22.1 18.32
ペンテン類 0.7 0.4

本発明のプロセスから得ることができる反応生成物は、エチレンとベンゼンの反応からエチルベンゼン、プロピレンとベンゼンの反応からクメン、エチレンとトルエンの反応からエチルトルエン、プロピレンとトルエンの反応からシメン、およびベンゼンとn−ブテンの反応からsec−ブチルベンゼンを含む。好適には、本発明のプロセスは、エチレンとベンゼンのアルキル化の後で付加的ベンゼンとジエチルベンゼン副生成物のトランスアルキル化によるエチルベンゼンの生成、プロピレンとベンゼンのアルキル化の後で付加的ベンゼンとジイソプロピルベンゼンのトランスアルキル化によるクメンの生成に関する。
【0028】
本発明の一実施形態において、本発明のアルキル化プロセスは、たとえば、触媒組成物の固定床を含むフロー・リアクターのような適切なアルキル化またはトランスアルキル化反応ゾーンにおいて、実効的なアルキル化条件下で、有機反応物、すなわちアルキル化可能な芳香族化合物およびトランスアルキル化剤がアルキル化またはトランスアルキル化触媒と接触するように行われる。このような条件は約32°F〜約932°F(0℃〜500℃)で好適には約122°F〜約452°F(50℃〜250℃)の間の温度、約0.2〜約250気圧(20〜25,000kPa)で好適には約5〜約100気圧(500〜10,000kPa)の圧力、約0.1:1〜約50:1で好適には約0.5:1〜約10:1のアルキル化剤に対するアルキル化可能な芳香族化合物のモル比、および約0.1〜500hr−1で好適には0.5〜100hr−1の原料の重量時間空間速度(WHSV)を含む。
【0029】
反応物は、気相中において、或いは液相中において部分的にまたは完全に、そのどちらかにおいて存在することができ、ニート、すなわち他の材料を用いて意図的な混合物や希釈がない状態であり得る。或いは、それらは、たとえば、水素や窒素のようなキャリアガスまたは希釈ガスの助けを借りて、ゼオライト触媒と接触することができる。
【0030】
本発明の別の実施形態において、ベンゼンはエチレンを用いてアルキル化されるとき、エチルベンゼンを含むアルキル化リアクター廃液を産む。アルキル化反応は、300°F〜600°F(約150℃〜316℃)、もっと好適には400°F〜500°F(約205℃〜260℃)、の温度、約3000psig(20865kPa)までの、もっと好適には400〜800psig(2869〜5600kPa)の圧力、約0.1〜20hr−1でもっと好適には0.5〜6hr−1の重量時間空間速度(WHSV)、約1:1〜約30:1でもっと好適には約1:1〜約10:1のアルキル化リアクター中でエチレンに対するベンゼンのモル比を含む条件下で、液相中において、または少なくとも部分的な液相中において達成されても良い。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態において、ベンゼンはプロピレンを用いてアルキル化され、クメンを含むアルキル化リアクター廃液を産む。アルキル化反応は、約482°F(約250℃)までの、たとえば約302°F(約150℃)までの、たとえば約50°F〜約257°F(約10℃〜125℃)、の温度、約250気圧(25,000kPa)以下の、たとえば約1〜約30気圧(100kPa〜3000kPa)の圧力、約5〜250hr−1で好適には5 hr−1〜50hr−1の芳香族炭化水素の重量時間空間速度(WHSV)を含む条件下で、液相中において、または少なくとも部分的な液相中において達成されても良い。
【0032】
固体触媒と接触して反応混合物と関連して使用されるときの用語「少なくとも部分的な液相」は、このような反応混合物はすべての液相成分または混合相成分を含むということを意味する。
【0033】
反応混合物と関連して使用されるときの用語「混合相」は、このような混合物は液相成分および気相成分を含むということを意味する。
【0034】
本発明に有用であり得るアルキル化触媒は、好適にはMCM-22(US特許番号4,954,325に詳細に記載)、MCM-36(US特許番号5,250,277に詳細に記載)、MCM-49(US特許番号5,236,575に詳細に記載)、MCM-56(US特許番号5,362,697に詳細に記載)、およびゼオライトベータ(US特許番号3,308,069に詳細に記載)から選択される、結晶性分子篩である。分子篩は、AlO(アルミナ203)のような、酸化物結合剤を用いて従来の方式で結合することができるし、または最終アルキル化触媒が2〜100wt%篩を含むように自己結合することもできる。
【0035】
アルキル化リアクター廃液は過剰の芳香族原料、モノアルキル化芳香族化合物(エチルベンゼンまたはクメンのような)、ポリアルキル化芳香族化合物(ポリエチルベンゼンまたはポリイソプロピルベンゼンのような)、および種々の不純物を含む。芳香族原料は蒸留によって再生され、アルキル化リアクターへリサイクルされる。通常少量のブリード(bleed)がリサイクル流れから取られ、そのループから非反応性不純物を除去する。残液はベンゼン蒸留からさらに蒸留され、ポリアルキル化生成物および他の重量物からモノアルキル化生成物を分離する。
【0036】
本明細書において有用なポリアルキル化芳香族化合物と関連して用語「ポリエチルベンゼン」(PEB)は、例であってこれに限定されない、ジエチルベンゼン(DEB)およびトリエチルベンゼン(TEB)を含む、技術的に認識される範囲によって理解されるべきことである。
【0037】
本明細書において有用なポリアルキル化芳香族化合物と関連して用語「ポリイソプロピルベンゼン」(PIPB)は、例であってこれに限定されない、ジイソプロピルベンゼン(DIPB)およびトリイソプロピルベンゼン(TIPB)を含む、技術的に認識される範囲によって理解されるべきことである。
【0038】
アルキル化リアクター廃液から分離されるポリアルキル化生成物は、適切なトランスアルキル化触媒により、トランスアルキル化リアクター内で付加的芳香族原料と反応するが、それはアルキル化リアクターから分離しても良いししなくても良い。好適には、トランスアルキル化触媒は、P-ベータである。もっと好適には、P-ベータ触媒は、11.4±0.2、7.4±0.2、6.7±0.2、4.25±0.1、3.97±0.1、3.0±0.1、2.2±0.1オングストロームでd間隔最大値を含むX線回折パターンを持ち、リンを含む。好適にはP-ベータのリン量は、前記触媒の0.001wt%〜10.0wt%の範囲内である。もっと好適には、そのようなリン量は、前記触媒の0.005wt%〜3.0wt%の範囲内である。最適には、そのようなリン量は、前記触媒の0.01wt%〜0.5wt%の範囲内である。
【0039】
本発明のP-ベータトランスアルキル化触媒の一実施形態を生成するために、80wt%の水素形態(H-形態)のベータゼオライト結晶および20wt%アルミナ(AlO)の1/20インチ(1.27mm)4つ葉形状(quadrulobe)押出し品を含むゼオライトベータ50グラムは、リン酸アンモニウム水和物0.43グラムを30ccの蒸留水中で溶解したリン酸水素アンモニウムの水溶液を用いて初期の湿り度まで含浸された。P-ベータ触媒はそれから、1000°F(538℃)において完全空気で10時間保持され焼成された。P-ベータ触媒はそれから、200℃において、100cc/minのNを用いて2時間大気圧で乾燥された。P-ベータ2グラム(1/16インチ(1.59mm)の長さに切られた1/20インチ(1.27mm)直径の4つ葉形状(quadrulobe)押出し品)が使われた。P-ベータトランスアルキル触媒のリン量は0.2wt%だった。最終触媒のリン量は、含浸で使われた初期の水溶液中のリン濃度を増加させたり減少させたりすることにより、イオン交換によりリンを吸着することによって、およびプロセスの温度や時間を変えることによって、或いは、当業者に知られた他の方法によって、変化させることができる。
【0040】
本発明のトランスアルキル化反応は、ポリアルキル化芳香族類が付加的アルキル化可能な芳香族化合物と反応し、付加的モノアルキル化生成物を生成するように、少なくとも部分的液相条件下で行われる。適切なトランスアルキル化条件は212°F〜500°F(100℃〜260℃)の温度、10〜50barg(1100〜5100kPa)の圧力、全原料に基づいてWHSV1hr−1〜10hr−1、およびベンゼン/ポリアルキル化ベンゼン重量比1:1〜6:1を含む。
【0041】
ポリアルキル化芳香族類は、ポリイソプロピルベンゼン類で、トランスアルキル化リアクター中でクメンを生成するためにベンゼンと接触するとき、トランスアルキル化条件は好適には、50°F〜100°F(100℃〜200℃)の温度、20〜30barg(2100〜3100kPa)の圧力、全原料に基づいて重量時間空間速度10〜72、およびベンゼン/PIPB重量比1:1〜6:1を含む。
【0042】
ポリアルキル化芳香族類は、ポリエチルベンゼン類で、トランスアルキル化リアクター中でエチルベンゼンを生成するためにベンゼンと接触するとき、トランスアルキル化条件は好適には、428°F〜500°F(220℃〜260℃)の温度、20〜30barg(2100〜3100kPa)の圧力、全原料に基づいて重量時間空間速度2〜6、およびベンゼン/PEB重量比2:1〜6:1を含む。
【0043】
トランスアルキル化リアクターからの廃液はアルキル化リアクター廃液および蒸留された結合ストリームと混合され、望ましいモノアルキル化生成物を分離する。
【実施例】
【0044】
本発明の実施形態は次の実施例に記載される。
【0045】
後に続く実施例1および2において使われるトランスアルキル化原料は、次のように製造された。化学グレードのベンゼンおよびパラ-とメタ-ジイソプロピルベンゼンは、活性化されたアルミナによりろ過により精製された。精製されたジイソプロピルベンゼン類は重量比2:1(パラ:メタ)で混合された。精製されたベンゼンおよびポリイソプロピルベンゼン類は、重量比2:1で混合され、窒素下で保管された。原料のガスクロマトグラフ(GC)分析は表1で示される重量による組成物を提供した。
【表1】

【0046】
実施例1:ゼオライトベータ触媒によるベンゼン/PIPBトランスアルキル化を経たクメン合成。
【0047】
80wt%の水素形態(H-形態)のベータゼオライト結晶および20wt%アルミナ(AlO)の円筒形状の押出し品(1/16インチ(1.59mm)の長さに切られた)を含むゼオライトベータ触媒2グラムが、表1に記載された原料のトランスアルキル化のために使われた。ゼオライトベータ触媒は、392°F(200℃)において大気圧(100kPa)で100cc/min流速のNを用いて2時間オフラインで乾燥した。ゼオライトベータ触媒は、触媒グラム当たり大体2.6グラムの砂を用いて希釈され、等温でダウンフローの3/8インチ(9.5mm)外形固定床リアクターへ搭載された。リアクターはNフロー下で356°F(180℃)まで加熱された。表1に記載された原料はリアクターへ導入され、リアクター圧力はグローブローダー(grove loader)によって300psig(2170kPa)へ設定された。重量時間空間速度(WHSV)は全DIPBのおよそ50%変換を達成するように設定された。ベータゼオライトは、16WHSVでおよそ50%DIPB変換に達した。重量時間空間速度を行った後で、全生成物は気化され、オンラインHP5890GPCへ送られた。1次反応速度定数に基づく相対活性度、クメン選択性および触媒用不純物生成は決定されて、表2に示されている。
【0048】
実施例2:P-ベータ触媒によるベンゼン/PIPBトランスアルキル化を経たクメン合成。
【0049】
P-ベータ触媒を生成するために、80wt%の水素形態(H-形態)のベータゼオライト結晶および20wt%アルミナ(AlO)の1/20インチ(1.27mm)4つ葉形状(quadrulobe)押出し品を含む50グラムのサンプルは、リン酸アンモニウム水和物0.43グラムを30ccの蒸留水中で溶解することにより生成したリン酸水素アンモニウムの水溶液を用いて初期の湿り度まで含浸された。このP-ベータはそれから、1000°F(530℃)において完全空気に10時間保持され焼成された。このP-ベータはそれから、392°F(200℃)において大気圧(100kPa)で100cc/min流速のNを用いて2時間オフラインで乾燥した。触媒の全リン量は触媒の全重量に基づいて0.02wt%であった。P-ベータ2グラムの押出し品(1/16インチ(1.59mm)の長さに切られた)が、表1に記載された原料のトランスアルキル化のために使われた。
【0050】
P-ベータは、触媒グラム当たり大体2.6グラムの砂を用いて希釈され、等温でダウンフローの外径3/8インチ(9.5mm)固定床リアクターへ搭載された。リアクターはNフロー下で356°F(180℃)まで加熱された。表1に記載された原料はリアクターへ導入され(全触媒重量に基づいて)、リアクター圧力はグローブローダー(grove loader)によって300psig(2170kPa)へ設定された。重量時間空間速度(WHSV)は全DIPBのおよそ50%変換を達成するように設定された。P-ベータは、72WHSVでおよそ50%DIPB変換に達した。WHSVを行った後で、全生成物は気化され、オンラインHP5890GPCへ送られた。1次反応速度定数に基づく相対活性度、クメン選択性および触媒用不純物生成は決定されて、表2に示されている。
【表2】

【0051】
実施例3において使われるトランスアルキル化原料は以下のように生成された。化学グレードのベンゼンは、活性化されたアルミナを通してろ過された。90%ジエチルベンゼン(DEB)を含むポリエチルベンゼン(PEB)混合物は、商用のエチルベンゼン・ユニットのPEBコラムのオーバーヘッドから得られ、、活性化されたアルミナを通してろ過された。ろ過されたベンゼンおよびPEBは3:1重量比で混合された。この原料のGC分析は表3で示される重量による組成物を提供した。
【表3】

【0052】
実施例3:ゼオライトベータ触媒によるベンゼン/PEB−トランスアルキル化を経たエチルベンゼン合成。
【0053】
トランスアルキル化プロセスは、触媒床が1/8インチ(3.19mm)外径の中心熱壁を持つ3/8インチ(9.59mm)外形リアクターおよび3ゾーン加熱炉からなる、ダウンフロー固定床リアクターを用いて行われた。
【0054】
65wt%水素形態のゼオライトベータ触媒および35wt%アルミナ(AlO)結合剤、1/16インチ(1.59mm)柱状押出し品(1/16インチ(1.59mm)長さに切られた)を含む、0.5グラムゼオライトベータ触媒の実施例は、砂を用いて3ccまで希釈され、257°F(125℃)において大気圧(100kPa)で100cc/min流速のNを用いて2時間乾燥した。このNは切られて、グローブローダーが500psig(3616kPa)へ設定された。表3に記載されたトランスアルキル化原料は、257°F(125℃)において60cc/hr1時間、それから10の全WHSVで、イスコ(Isco)ポンプによって導入された。リアクターは、41°F/分(5℃/分)で464°F(240℃)まで、それから37°F/分(3℃/分)で500°F(260℃)まで上げられた。この生成物は、冷却トラップで収集され、DB-1キャピラリコラムを備えたHP5890GCでオフラインで分析された。触媒は、全流速を変数として、500°F(260℃)において500psig(3616kPa)、3:1ベンゼン/PEB重量比でテストされた。1次反応速度定数に基づいて相対活性度、エチルベンゼン選択性および触媒用不純物生成は決定されて、表4に示されている。
【表4】

【0055】
実施例4に使われたトランスアルキル化原料は以下のように生成された。化学グレードのベンゼンは、活性化されたアルミナを通してろ過された。69.4wt%DEBおよび28.6wt%TEBを含む混合物は、商用のエチルベンゼン・ユニットのPEBコラムのオーバーヘッドから得られ、、活性化されたアルミナ・コラムを通してろ過された。ろ過されたベンゼンおよびPEBは2:1重量比で混合された。この原料のGC分析は表5で示される重量による組成物を提供した。
【表5】

【0056】
実施例4:P-ベータ触媒によるベンゼン/PEBトランスアルキル化を経たエチルベンゼン合成。
【0057】
トランスアルキル化プロセスは、触媒床が1/8インチ(3.19mm)外径の中心熱壁を持つ3/8インチ外径(9.59mm)外形リアクターおよび3ゾーン加熱炉からなる、ダウンフロー固定床リアクターを用いて行われた。
【0058】
0.2wt%リン酸および20wt%アルミナ(AlO)結合剤を含む1/20インチ(1.27mm)4つ葉形状(quadrulobe)押出し品(1/16インチ(1.59mm)長さに切られた)、0.5グラムのP-ベータは、砂を用いて3ccまで希釈され、257°F(125℃)において大気圧(100kPa)で100cc/min流速のNを用いて2時間乾燥した。このNは切られて、グローブローダーが500psig(3616kPa)へ設定された。表5に記載された原料は、257°F(125℃)において60cc/hr1時間、それから10の全WHSVで、イスコ(Isco)ポンプによって導入された。リアクターは、5℃/分で240℃まで上げられた。この生成物は、冷却トラップで収集され、DB-1キャピラリコラムを備えたHP5890GCでオフライン分析された。触媒は、全流速を変数として、464°F(240℃)において500psig(3616kPa)、2:1ベンゼン/PEB重量比でテストされた。1次反応速度定数に基づいて相対活性度、エチルベンゼン選択性および触媒用不純物生成は決定されて、表6に示されている。
【表6】

【0059】
触媒用相対活性度の値を比較するとき、P-ベータは、WHSVの等価条件下で、クメンのトランスアルキル化においてリンを含まない従来のゼオライトベータよりも5.1倍大きく、また、温度、圧力およびDEB変換の等価条件下で、リンを含まないエチルベンゼンのトランスアルキル化において従来のゼオライトベータよりも3.2倍である。
【0060】
本発明は好適な実施形態を参照することによって記載され説明されてきたが、当業者は、本発明はそれ自体がここに必ずしも説明されていない代替の実施形態に役立つということを、理解するだろう。この理由のために、レファレンスは、本発明の真の範囲を決定するために、添付の請求項に単に参照されているにすぎない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の触媒活性を持つ第1のトランスアルキル化触媒の存在において少なくとも部分的な液相条件下で、アルキル化可能な芳香族化合物をポリアルキル化芳香族化合物と接触させる工程を含む、ポリアルキル化芳香族化合物からモノアルキル化芳香族化合物を製造する方法であって、モノアルキル化芳香族化合物を含む生成物を製造するために、前記第1のトランスアルキル化触媒はゼオライトベータおよびリンを含み、前記トランスアルキル化触媒のリン量は前記第1のトランスアルキル化触媒の0.001wt%〜10.0wt%の範囲にあり、1次反応速度定数に基く前記第1の触媒活性は、ゼオライトベータを含みリンがない第2のトランスアルキル化触媒の1次反応速度定数に基く第2の触媒活性より大きいことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
請求項1の第1のトランスアルキル化触媒。

【公開番号】特開2011−105767(P2011−105767A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40121(P2011−40121)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【分割の表示】特願2008−504059(P2008−504059)の分割
【原出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】