説明

木材からパルプを製造する方法

本発明は、以下の工程を有するパルプの製造方法に関する:リグノセルロース原料のotro量に対して、亜硫酸塩(NaSO3として計算)25%未満を含有する薬品溶液を製造する工程、該薬品溶液を規定の浴比で木材と混合する工程、薬品溶液と木材とを、室温を上回る温度に加熱する工程、および引き続き、(第一の変法)自由に流れる薬品溶液を除去し、かつ木材を蒸気相中で蒸解する工程、または(第二の変法)木材を、液相中で蒸解し、かつ自由に流れる薬品溶液と木材とを分離する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、わずかな薬品使用量で、リグノセルロース原料からパルプを製造する方法に関する。本発明は特に、得られたotroパルプに対して、高いリグニン含有率、たとえば針葉樹の場合には15%を上回る、および広葉樹の場合には12%を上回るリグニン含有率を有し、多くの場合に、規定の強度特性を有するパルプを製造する方法に関する。
【0002】
針葉樹に関しては15%を上回り、かつ広葉樹に関しては12%を上回る、比較的高いリグニン含有率を有するパルプを製造する方法は公知である。該方法により、使用された出発材料に対して70%以上の収率がもたらされる。この方法は、木材の化学的および/または機械的分解に基づいている。
【0003】
木材を機械的にフィブリル化する際に、木材は多くの場合、前蒸解後に叩解装置中で繊維の束へと分解される。次いで該繊維束は、その後の叩解により個々の繊維へとフィブリル化される。収率は極めて高いが、しかし適用すべき叩解エネルギーもまた極めて高い。木材繊維の強度は、叩解後も極めて低く、それというのも繊維は大量の天然リグニンを含有しており、従ってわずかな結合力を有するからである。木材繊維はさらに、機械的なフィブリル化により著しく分解され、このことによってそのリサイクル性は損なわれる。
【0004】
木材の化学的な蒸解の場合、薬品はたいてい高めた圧力および高めた温度下で木材に作用する。高収率パルプのための典型的な方法として、NSSC法が挙げられる(Semichemical Pulping for Corrugating Grades、第130頁以降、Pulp and Paper Manufacture、第3版、第4巻、 Sulfite Science and Technologiy ISBN 0-919893-04-X)。この方法の場合、亜硫酸ナトリウム以外に常に、アルカリ性成分、一般には炭酸ナトリウムが蒸解溶液中で使用される。
【0005】
あるいはまたその他の方法、たとえばクラフト法またはソーダ法も、高収率のパルプを製造するように変更することができる("Choosing the best brightening process"、N. LiebergottおよびT. Joachimides, Pulp & Paper Canada、第80巻、第12号、1979年12月を参照のこと)。本来使用される木材の分解を最大で30%に限定すべき場合には、はるかに少ない薬品が必要とされ、かつリグニンが完全に除去されているべきパルプの製造の際に使用される。高収率パルプを製造するために、薬品量は所望の収率に依存して供給される。otro木材使用量に対して約70%の収率を達成するために、従来技術では、出発材料に対して10%までの薬品を使用することが推奨されている。全パルプの場合、薬品使用量は、otro木材に対してしばしば薬品30%か、またはそれ以上である。
【0006】
薬品は製造コストを決定するので、その使用はできる限り節約される。CTMP−パルプは通常、3%〜5%の薬品量で製造される。高収率パルプを製造するための工業的に確立された公知法、たとえばNSSC法では、出発材料に対して10%までの薬品が使用される。このようにして限定された薬品使用量の場合、さらに薬品の回収のためのリカバリーは設置されない。比較的少ない薬品量にも関わらず、この種のパルプの製造は、薬品の導入によってのみならず、特に受け器に放出される有機物に基づいて、著しい環境負荷、特に水資源の負荷につながる。
【0007】
コストの状況に関しては、機械的に製造されるパルプの場合、著しく上昇するエネルギー価格は、製造コストの負担になることに留意すべきである。化学的に製造される高収率パルプの場合、その製造は、失われた薬品に関するコストが負担となる。
【0008】
高収率パルプは、目下の使用目的のために高い叩解度まで叩解される。その場合にのみ、該パルプは、認容可能な強度レベルに達する。ここでは、41°SR(ショッパー・リーグラー、下記を参照のこと)に相応する約300mlCSF(Canadian Standard Freeness)および26°SRに相応する500mlCFSが、高い叩解度とみなすことができ、これらは針葉樹からなる高収率パルプに関して、たとえば"Choosing the best brightening process"、N. LiebergottおよびT. Joachimides, Pulp & Paper Canada、第80巻、第12号、1979年12月に記載されている。高い叩解度は、機械的エネルギーの使用によって達成される。繊維は互いに、または叩解装置もしくは叩解体によって磨砕され、こうしてその表面特性においてより良好な結合特性へと変化する。つまり高い叩解度はそれ自体が目的ではない。これはむしろ、繊維の強度特性に対する要求から生じる。
【0009】
機械的および/または化学的な方法により製造された高収率パルプは特に、必ずしも高い最終白色度および高い白色度安定性が要求されるとは限らないところで使用される。これらは、その強度レベルを高めることができれば、さらに多数のその他の使用分野を開拓することができる。
【0010】
従って本発明の課題は、経済的な方法で、高い強度を有するパルプを製造することができるパルプの製造方法を提供することである。
【0011】
前記課題は、以下の工程を有する、リグノセルロース原料からパルプを製造する方法によって解決される:
そのつど使用される木材のotro量に対して、亜硫酸塩(NaSO3として計算)25%未満を含有する薬品溶液を製造する工程、
該薬品溶液を規定の浴比で木材と混合する工程、
薬品溶液と木材とを、室温を上回る温度に加熱する工程、および引き続き、
(第一の変法)
自由に流れる薬品溶液を除去し、かつ木材を蒸気相中で蒸解する工程、
または
(第二の変法)
木材を、液相中で薬品溶液の存在下に蒸解し、かつ自由に流れる薬品溶液と木材とを分離する工程。
【0012】
本発明による方法は、高収率パルプを製造するために、最小量の薬品を使用することに基づいている。わずかな薬品使用量にもかかわらず、本発明による方法によれば、良好な収率および優れた強度特性を有するパルプが得られる。たとえば本発明による方法の有利な実施態様により製造される針葉樹のパルプに関しては、わずか12°SR〜15°SRの叩解度で、8kmを超える裂断長、あるいはまた9kmを超える裂断長、および10kmを超える裂断長が測定される。本発明による方法の有利な実施態様により製造される広葉樹のパルプに関しては、わずか20°SRの値で、5kmを超える、あるいはまた6kmを超える、および7kmを超える裂断長が測定される。これにより、所望の高い強度レベルが達成される。
【0013】
DE102006027006に記載されている方法は、ここでは最も近い従来技術であるとみなされるが、この場合まず、ここで製造される高収率パルプは、針葉樹に関しては10%を超える(NaOHとして計算)、および広葉樹に関しては7%を超える(NaOHとして計算)高い薬品使用量に起因すると解釈していた。しかし試験によれば、はるかに少ない量の亜硫酸塩を使用した場合に、およびアルカリ、たとえばNaOHまたはNa2CO3の使用を断念する場合に同様の品質を有するパルプを製造することができることが判明した。亜硫酸塩の需要量は、本発明による方法によれば、DE102006027006による方法に対して、10%〜50%、多くの場合、20%〜40%、通常は25%〜35%低減される。このことにより、方法コストにおける著しい進展が達成される。他方、本発明による方法は、はるかに環境に優しい方法で実施される。というのは、特に高価な、かつ多方面で使用可能なパルプを製造するために、合計して最小量の薬品を使用するからである。さらに、この方法を循環運転するために、わずかな、ひいては特に経済的で環境に優しい薬品の再処理が必要とされるにすぎない。
【0014】
本発明による方法は、高収率パルプを製造するための有利な実施態様で使用される。このような高い強度値はこれまで、針葉樹のパルプに関しては15%を超えるリグニン含有率を、および広葉樹のパルプに関しては12%を超えるリグニン含有率を有するパルプに関して知られていなかった。あるいはまたこの高い強度レベルを、さらに高いリグニン含有率を有するパルプに関しても維持することができる。本発明による方法は、otroパルプに対して、17%より高い、有利には19%より高い、好ましくは21%より高いリグニン含有率を有する針葉樹のパルプを製造するためにも適切である。14%を超える、有利には16%を超える、特に有利には18%を超えるリグニン含有率を有する広葉樹のパルプは同様に、本発明による方法により製造され、かつ高い強度レベルを示す。
【0015】
前記の利点は、このような高収率パルプに関して限定されることなく該当する。従来は高い強度値との関連において得ることができなかった上記の強度値が、すでに極めて低い叩解度で達成されることは本発明による方法の優れた利点であるとみなすことができる。従来技術によるパルプは、針葉樹に関して12°SR〜15°SRの叩解度で、または広葉樹に関して20°SRの叩解度では認容可能な強度レベルを示さない。公知のパルプは、この低い叩解度の場合、従来は十分な結合力を有しておらず、かつ相応して、このようなパルプの経済的な使用に関して十分な強度特性を提供するような繊維は得られなかった。
【0016】
これに対して本発明による方法により製造されたパルプは、すでに12°SR〜15°SRの範囲の叩解度で、100g/m2の坪量を基準にして、8kmから11kmの裂断長および70cNから110cNを超える引裂強さを有する。このような低い叩解度はさらに、低い叩解エネルギーに対する特殊な要求によって達成されるが、これは針葉樹のパルプに関して350kWt/tパルプであり、広葉樹のパルプの場合、叩解エネルギーに対する要求はそれどころか250kWt/tパルプよりも小さい。高い強度レベルがすでに、針葉樹に関しては12°SR〜15°SRの低い叩解度で、および広葉樹に関しては20°SR以下の叩解度で達成されるという認識は、本発明の重要な部分である。
【0017】
蒸解のために使用される薬品溶液の組成は、蒸解すべき木材および所望のパルプ特性に合わせて確定することができる。通常、亜硫酸塩成分のみが使用される。代替的に、または補足的に硫化物成分も用いられる。亜硫酸成分を用いた蒸解は、硫化物成分の存在によって妨げられることはない。技術的には多くの場合、亜硫酸ナトリウムが使用されるが、しかし亜硫酸アンモニウムまたは亜硫酸カリウムまたは重亜硫酸マグネシウムの使用も可能である。
【0018】
キノン成分を本発明による高収率蒸解のために使用する利点を認識したことは、本願発明による固有の成果であるとみなすことができる。キノン成分、特にアントラキノンは従来、蒸解の終了時に、炭水化物に対する不所望の攻撃を防止するために、最小のリグニン含有率を有するパルプを製造する際に使用されている。キノン成分の添加により、木材の蒸解をさらに、リグニンがほぼ完全に分解されるまで継続することが可能である。高収率パルプを製造する際にリグニンスルホン化の速度を著しく高めることは、キノン成分のこれまで知られていなかった予想外の特性であることが判明した。蒸解の継続時間はたとえば針葉樹のパルプを製造する場合には、半分以上、蒸解条件に応じては四分の三以上短縮することができる。この著しい作用は、キノンの最小の使用量で達成される。0.005%〜0.5%の、たとえばアントラキノンの使用が最適である。1%までのアントラキノンの使用もまた所望の作用をもたらす。3%以上のアントラキノンの使用は多くの場合、非経済的である。
【0019】
単独の、または複数の前記の薬品から薬品溶液を製造する。多くの場合、水性の溶液を製造する。任意の選択肢として、有機溶剤の使用または添加も考えられる。アルコール、特にメタノールおよびエタノールは、水を含有する混合物中で、高品質の高収率パルプを製造するために、特に有効な薬品溶液である。水とアルコールとの混合比は、そのつどの原料に関して、いくつかの試験で最適化することができる。
【0020】
本発明による方法は、広いpH値範囲で実施することができる。使用される亜硫酸塩の量、または薬品溶液の組成に応じて、方法の開始時にpH値を6〜11、有利には7〜11、特に有利には7.5〜10に調整することができる。8〜11の、むしろアルカリ性のpH値は、本発明による方法にとって有利であるが、キノン成分の作用も促進する。本発明による方法はpH値に関して許容性があり、pH値の調整のために必要とされる薬品はわずかである。このことは、薬品のコストに関しても有利に作用する。
【0021】
酸またはアルカリ性成分をそれ以上添加することなく、たとえば針葉樹に関しては蒸解の終了時に5.5〜10、多くの場合7.5〜8.5のpH値が、自由に流れる薬品溶液中で、ならびに蒸解により液状化された、該溶液中に溶解している有機成分中で調整される。溶解した有機成分には、特にリグノスルホネートが挙げられる。
【0022】
浴比、つまりotro木材対薬品溶液の量の比率は、1:1.5〜1:6の間で調整される。有利には浴比は1:3〜1:5である。この範囲で、蒸解すべき材料の良好かつ簡単な混合および含浸が保証される。針葉樹に関しては、1:4の浴比が有利である。大きな表面積を有する木材チップに関して、浴比は、迅速な湿潤および含浸を可能にするために、これより明らかに高くてもよい。同時に、薬品溶液の濃度は、転動される液体量が大きくなりすぎないような高さに維持することができる。
【0023】
木材チップの混合または含浸は、有利には高めた温度で行う。チップおよび薬品溶液の110℃までの、有利には120℃までの、特に有利には130℃までの加熱は、木材の迅速かつ均一な蒸解につながる。木材チップの混合または含浸のために、30分までの時間、有利には60分まで、特に有利には90分までの時間が有利である。そのつど最適な継続時間は特に、薬品の量と浴比、ならびに蒸解の種類(液状であるか、気相であるか)に依存する。
【0024】
薬品溶液と混合される、または該溶液によって含浸されるリグノセルロース材料の蒸解は、有利には120℃〜190℃、好ましくは150℃〜180℃の温度で行われる。多くの木材に関して、蒸解温度は、155℃〜170℃に調整される。これより高いか、または低い温度を調整することができるが、しかしこの温度範囲で、加熱および蒸解の促進に関してエネルギー消費は、相互に経済的な比率にある。さらに、これより高い温度はパルプの強度、収率および白色度に否定的な影響を与えうる。高い温度によって生じる圧力は、相応してボイラを敷設することによって容易に吸収することができる。加熱時間は、ボイラーの充てん量に依存し、かつ材料の導入量が少ない場合、つまり浴比が小さい場合にはわずか数分であり、多くの場合30分まで、有利には10分まで、特に蒸気により加熱する場合には、10分までである。加熱の時間は、たとえば液相中で蒸解すべき場合、および薬品溶液をチップと共に加熱する場合には、90分まで、有利には60分まで続いてもよい。
【0025】
蒸解の継続時間は特に所望の繊維特性に依存して選択される。蒸解の継続時間は、たとえば低いリグニン含有率を有する広葉樹の蒸気相蒸解の場合には、2分まで短縮することができる。あるいはまたこの時間は、たとえば蒸解温度が低く、かつ蒸解すべき木材の天然のリグニン含有率が高い場合には、180分までであってもよい。蒸解の開始時のpH値が中性の範囲に存在する場合にも、長い蒸解時間が必要とされる場合がある。有利には蒸解時間は、特に針葉樹の場合には90分までである。特に有利には、蒸解時間は60分まで、有利には30分までである。60分までの蒸解時間が特に広葉樹の場合には考慮される。キノン成分、特にアントラキノンの使用により、アントラキノンを添加しない場合に必要とされる時間の25%までの蒸解時間の短縮が可能となる。キノン成分の使用を断念する場合、比較可能な蒸解結果に関して、蒸解時間は、1時間以上、たとえば45分から180分へと延長される。
【0026】
本発明による方法の有利な実施態様によれば、蒸解時間は、選択される浴比に依存して調整される。浴比が小さいほど、プロセス時間は短く調整することができる。
【0027】
少なくとも70%の収率でパルプを製造するために本発明により使用される薬品量は、そのつど蒸解されるotro木材材料に対して、針葉樹に関しては亜硫酸塩25%まで、および広葉樹に関しては亜硫酸塩18%までである。製造されるパルプの品質は、針葉樹および広葉樹に関して亜硫酸塩15%までの薬品使用量で最も良好な結果を示す。有利には、使用されるotro針葉樹に対して、亜硫酸塩20%まで、特に有利には亜硫酸塩15%までを添加する。広葉樹に関して、薬品の使用量はむしろこれより低く、有利には亜硫酸塩12%まで、特に有利には亜硫酸塩10%までである。本発明により高い強度特性を有するパルプを得るためには、蒸解すべきotro木材材料に対して、少なくとも7%の亜硫酸塩使用量が必要とされる。
【0028】
更なる試験によれば、薬品、ここでは特に亜硫酸塩の一部がリグノセルロース原料の部分的な蒸解の間に消費されるにすぎないことが判明した。薬品の主要部は、蒸解前に(蒸気相蒸解)または蒸解後(液相での蒸解)に、消費されずに排出される。薬品の消費量は、蒸解溶液中で使用される量を下回る。
【0029】
薬品の消費量は、本来使用される薬品の量に対する、薬品溶液の除去または分離後の、ならびにフィブリル化するか、または薬品溶液の把握との関連で測定された後の薬品溶液を把握した後の薬品の量として捉えられる。薬品消費量は、蒸解すべきotro木材材料に対して、蒸解のために使用される薬品の絶対量に依存する。蒸解薬品の使用量が高い程、薬品の直接的な反応率が低くなる。otro木材材料に対して25%の亜硫酸塩の使用量の場合、たとえば使用される薬品の約40%が消費される。しかし、otro木材に対して16%の亜硫酸塩の使用量の場合、使用される薬品の約45〜50%が消費され、このことは実験室での試験において証明することができた。
【0030】
蒸解の間の亜硫酸塩の使用量は、出発原料のリグニン含有率に依存する。リグニンの分解およびその他の化学反応により条件付けられる、パルプ1トンを製造するための薬品消費量は、
otro原料(一般に針葉樹、多数の広葉樹)に対して25%を超えるリグニン含有率を有する原料に関しては亜硫酸塩13%まで、
otro原料(一般的には低いリグニン含有率を有する一年草または広葉樹、たとえばポプラまたはブナ)に対して、20%〜25%のリグニン含有率を有するリグノセルロース原料に関して亜硫酸10%までである。
【0031】
otro原料に対して明らかに20%を下回るリグニン含有率を有するリグノセルロース原料の場合、一般に一年草、たとえば草または芭蕉の場合、当初に蒸解のために使用される亜硫酸塩の消費量もまた、10%を下回り、ただし少なくとも7%である。
【0032】
均一なプロセス結果を保証するため、および場合により特に、所望のパルプ特性を得るためには、本発明によればこのような、比較的低い亜硫酸塩量が消費されるにすぎない。蒸解の間に実際に消費される、この7%〜13%の亜硫酸塩は、蒸解のために合計して使用される亜硫酸塩の部分量であるにすぎない。蒸解すべきリグノセルロース原料に対して25%までの亜硫酸塩を含有する薬品溶液は、本発明によればそれにもかかわらず、たとえば反応速度に肯定的な影響を与えるために、または望ましくない副反応を抑制するために、経済的であり、かつ有意義である。蒸解において実際に消費される量の化学薬品、特に亜硫酸塩は、次の蒸解のための薬品溶液を製造する際に改めて添加することができる。過剰の、すでに使用された薬品溶液中に含有されている、消費されていない亜硫酸塩は、本発明による方法の有利な実施態様によれば循環され、かつリグノセルロース原料をその後に蒸解するために改めて使用される。
【0033】
以上から、次の蒸解のための薬品溶液を調製もしくは製造するために、著量の消費されていない亜硫酸塩を含有する、先行する蒸解の蒸解溶液を利用することが明らかである。あるいはまた、その他に、新鮮な、または再び調製された薬品を使用することも必要である。本発明による方法の有利な実施態様によれば、すでに使用された薬品溶液または蒸解溶液から、部分流を取り出すことが有利であることが判明した。すでに使用された薬品溶液の、この取り出された部分流は、蒸解薬品、特に亜硫酸塩の再処理のために案内される。薬品溶液の部分流を、蒸解後に再処理に供給すれば十分である。従って、蒸解の間に消費される薬品、特に亜硫酸塩の割合は再処理によって、薬品溶液の部分流のみを新鮮な亜硫酸として回収することができる。特別な後処理を行わない薬品溶液または蒸解溶液の別の部分流は、消費された薬品溶液の循環運転から直接に循環させ、かつ消費されていない亜硫酸塩を含有する部分流は、蒸解溶液の更なる実質的な成分として、通常は、改めて計量供給されるか、または再び後処理される亜硫酸塩の上記の割合と一緒に、前記のとおりに使用される。消費されていない、後処理を行わずに循環される亜硫酸塩は、蒸解のために必要とされる亜硫酸塩のために合計して75%までの全量で使用される。最後に、薬品の再処理において新鮮な亜硫酸塩を補足的に計量供給するか、または製造するか、あるいは新鮮な亜硫酸塩を、薬品溶液の製造の際に直接に計量供給することができる。
【0034】
本発明による方法の有利な変法によれば、薬品溶液の製造の際に、すでに蒸解のために使用された薬品溶液の返送流からの亜硫酸塩の30質量%まで、有利には50質量%まで、特に有利には75質量%までを使用し、他方、新鮮な、または再処理からの、新鮮とみなすことができる亜硫酸を、70質量%まで、有利には50質量%まで、特に有利には25質量%まで使用する。
【0035】
蒸解の開始時におけるこの薬品量の使用は有利な作用を示す。というのも、このようにして得られたパルプは、これまで得られなかった特性、特に高い強度特性および高い白色度を有しているからである。特に従来、中性からアルカリ性の範囲の広いpH値範囲にわたって高い強度を有するパルプを製造する蒸解法は存在していなかった。本発明により製造されるパルプは、公知のパルプよりもはるかに低いエネルギー需要で、規定の強度に叩解されていることが、経済的に特に魅力的であることが判明した。さらに、高い強度はすでに、針葉樹に関しては12°SR〜15°SRの、および広葉樹に関しては20°SRの極めて低い叩解度で生じる。
【0036】
薬品の過剰量は、木材と薬品溶液とを混合し、かつ含浸した後に、もしくは自由に流れる液体中で蒸解した後に存在している。この過剰量は、蒸解の前に(第一の変法)または蒸解後に(第二の変法)除去される。方法の有利な実施態様によれば、除去される薬品溶液の組成を把握し、かつ引き続き改めて繊維の製造のために使用するために、規定の組成に調整する。木材の蒸解の前または後に除去される薬品溶液は、当初に調整された組成をもはや有していない。蒸解のために使用される薬品の少なくとも一部は、前記のとおり、蒸解すべき材料中に浸透し、かつ/または蒸解の際に消費される。消費されなかった薬品は、次の蒸解のために容易に再使用することができる。しかし本発明によれば、除去された薬品溶液の組成をまず決定し、かつ次いで消費された割合の、たとえば亜硫酸塩、アルカリ性成分、キノン成分または水もしくはアルコールも補充して、再度、次の蒸解のために規定された組成を作る。この補充工程は、強化(Aufstaerken)とも呼ばれる。
【0037】
薬品溶液をまず、蒸解前に除去する際に、あるいはまた蒸解後に除去する際にも、次の蒸解のために強化された薬品を改めて使用する際に妨げとなることが判明している物質を全く含まないか、またはわずかに含むにすぎないことは、この措置の著しい利点であるとみなされる。従って、含浸の際に、蒸解薬品の供給過剰が提供されることを回避することを目的とした本発明による方法は、まず非経済的に思われる、高い薬品使用量の方法であるにもかかわらず、極めて経済的に作業されうる。というのも、薬品溶液の除去もしくは分離および強化は、簡単かつ安価に実施することができるからである。
【0038】
この措置のもう一つの利点は、消費された蒸解溶液の固体含有率が、部分的な返送後に高まることでもある。複数回のリサイクル後に、たとえば9%から22%への上昇が可能である。消費された蒸解溶液の発熱量は20%まで上昇する。その際、特に有機固体の含有率が高まる。無機物質(亜硫酸塩等)の含有率は、蒸解溶液を複数回リサイクルした後、最初の蒸解後に56%の絶対固体含有率から、44%の絶対固体含有率まで低下する。
【0039】
本発明による方法は、使用されるリグノセルロース出発材料ができる限りわずかに分解または溶解されるように適切に制御される。otroパルプに対して、針葉樹に関しては少なくとも15%のリグニン含有率、有利には少なくとも18%、特に有利には21%、とりわけ少なくとも24%のリグニン含有率を有するパルプを製造することが所望される。広葉樹に関しては、otroパルプに対して、少なくとも12%、有利には少なくとも14%、特に有利には少なくとも16%、とりわけ少なくとも18%のリグニン含有率が所望される。
【0040】
本発明による方法の収率は、そのつど使用されるリグノセルロース原料に対して少なくとも70%、有利には75%以上、好ましくは80%以上である。この収率は、前記のパルプのリグニン含有率と相関する。リグノセルロース原料の当初のリグニン含有率は、その種類に関して特異的である。本発明による方法の場合、収率の損失は主としてリグニンおよび容易に加水分解可能なヘミセルロースの損失である。非特異的な蒸解法の場合、たとえば蒸解薬品自体が望ましくない方法で、セルロースまたはヘミセルロースも溶解するために、炭水化物の割合は明らかに高まる。
【0041】
別の有利な措置は、フィブリル化および場合によりリグノセルロース材料を叩解した後にも、なお残留する薬品溶液を除去し、かつ更なる使用に供給することである。この更なる使用は、有利な実施態様では2つの側面を含んでいる。一方では、部分的な蒸解の間に分解されるか、または溶解される有機材料、主としてリグニンをさらに利用する。これはたとえばプロセスエネルギーを得るために燃焼される。あるいはその他の方法で利用するために後処理される。他方、消費された、および消費されなかった薬品は、リグノセルロース材料を改めて部分的に蒸解するために使用することができるように後処理される。これには消費された薬品の後処理が属する。
【0042】
本発明による方法の特に有利な変法によれば、使用される薬品溶液は極めて効率的に利用される。フィブリル化および場合により叩解の後で、パルプを洗浄して薬品溶液を水によりできる限り排除する。洗浄もしくは排除工程の際に生じる濾液は、著量の薬品溶液および有機材料を含有している。本発明によれば、この濾液を、除去または分離された薬品溶液に供給し、次いで該薬品溶液を強化し、かつ次の蒸解に供給する。濾液中に含有されている薬品および有機成分は蒸解を妨げない。次の蒸解の間の脱リグニン化のためにまだ貢献する限り、薬品溶液中のその含有率を把握し、かつこの蒸解のために必要とされる薬品量の測定の際に考慮する。さらに濾液中に含まれる薬品は、次の蒸解の間、不活性である。これらが妨げとなることはない。濾液中に含有されている有機成分は、同様に不活性である。該成分は次の蒸解の後に、プロセスエネルギーを生じるか、またはその他の方法で、薬品溶液の後処理の際にさらに使用される。
【0043】
濾液をこのように案内することによって、蒸解のために使用される新鮮水および薬品が少なくなることが、特別な利点であるとみなされる。
【0044】
同時に溶解した有機材料の最大量を把握する。溶解した有機材料のこの改善された利用は、本発明による方法の経済性を改善する。
【0045】
本発明による方法および装置の詳細を、実施例に基づいて以下に詳細に記載する。
【0046】
以下の試験は、以下の規定により評価した:
収率は、使用される原料および蒸解後に得られたパルプを、そのつど105℃で、質量が一定になるまで乾燥させて秤量することによって計算した。
【0047】
リグニン含有率は、TAPPT T222 om−98によりクラーソン・リグニンとして測定した。酸可溶性のリグニンは、TAPPI UM 250により測定した。
【0048】
製紙技術上の特性は、Zellchemingの説明書V/8/76により製造した試験紙を用いて測定した。
【0049】
叩解度は、Zellchemingの説明書V/3/62により把握した。かさ密度は、Zellchemingの規定のV/11/57により測定した。
【0050】
裂断長は、Zellchemingの規定のV/12/57により測定した。
【0051】
引裂強さは、DIN53128のElmendorfにより確認した。
【0052】
比引張強さ、比引裂強さおよび比破裂強さの測定は、TAPPI 220 sp96により行った。
【0053】
白色度は、Zellchemingの説明書V/19/63による試験紙の製造により確認し、Datacolor elrepho 450×Photometerを用いてSCAN C11:75により測定し、白さはISO基準2470によりパーセントで記載した。
【0054】
粘度はZellstoff und Papier−Chemiker und−Ingenieure(パルプおよび紙の科学者および技術者)(Zellcheming)協会の説明書のV/36/61により測定した。
【0055】
この書類中の全ての%の記載は、個別的にその他の指示がない限り、質量%として読むべきである。
【0056】
この刊行物における「otro」の記載は、105℃で質量が一定になるまで「炉中で乾燥した」材料に関するものである。
【0057】
蒸解のための薬品は、その他の記載がない限り、そのつど使用される薬品として記載されている。
【0058】
例1:液相での蒸解
トウヒのチップに、スチーミング(105℃の飽和蒸気で30分)後、亜硫酸ナトリウム蒸解溶液を、木材:蒸解溶液の浴比1:3で添加した。薬品の全使用量は、亜硫酸ナトリウムとして計算して、otroトウヒチップに対して、23.6%であった。薬品溶液に含浸したトウヒチップを、170℃で90分の時間にわたり加熱し、かつこの最大温度で180分間蒸解した。当初のpH値は、pH8.0〜9.5の範囲であった。
【0059】
引き続き、自由に流れる液体を遠心分離により除去し、容器に収容し、かつ返送のための装置中で、消費されなかった液体を分析し、強化し、かつこうして次の蒸解のために準備した。強化とは、新鮮な亜硫酸塩または再処理される亜硫酸塩の添加によって、規定の亜硫酸濃度を改めて次の蒸解のために調整することを意味する。薬品の消費量は、この第一の蒸解の際に82%である。
【0060】
蒸解したトウヒチップをフィブリル化した。こうして製造されたパルプの部分量を、異なった叩解度における強度を測定するために、異なった時間、叩解した。部分的に蒸解されたトウヒチップをフィブリル化するためのエネルギーコストは、300kWt/tパルプ未満であった。
【0061】
収率は、otroパルプに対して78.6%であった。裂断長は、14°SRで8kmが測定され、比引裂強さは、8.5mN*m2/gであった。白色度は、蒸解後にISO41%で測定された。
【0062】
蒸解溶液の固体含有率は、第一の蒸解の後に10.2%で測定された。同一の蒸解溶液を、そのつど再び前記の亜硫酸塩の出発含有率に対して強化し、そのつど同一の条件下で更なる蒸解を実施した。5回目の蒸解の後で、蒸解溶液の固体含有率は改めて20.4%で測定された。
【0063】
1回目の蒸解後の蒸解溶液の発熱量は9.507J/gで測定された。そのつど再使用された、強化された蒸解溶液を用いた5回目の蒸解後に11.313J/gの発熱量が確認された。
【0064】
例1の条件下での5回の蒸解後に、亜硫酸塩の消費量を把握した。これは平均して46%であった。蒸解溶液を製造するためにそのつど先行する蒸解の廃液を容器に受けた5回目の蒸解のために、亜硫酸塩含有率を測定し、かつ新鮮な亜硫酸塩の添加により規定の亜硫酸塩含有率をふたたび調整し、先行する蒸解からの蒸解溶液の消費されなかった亜硫酸塩からの亜硫酸塩30%および新鮮な亜硫酸塩70%を添加した。
【0065】
例2
例2に記載のパルプを、例1の条件下でトウヒチップから製造したが、ただし以下の点を変更した:亜硫酸塩23.6%に加えて、使用される木材量に対して0.1%のアントラキノンを薬品溶液に添加した。蒸解時間は45分に短縮された。
【0066】
15°SRで、例2のトウヒパルプに関して、10.9kmの裂断長および82cN/100g/m2坪量の引裂強さが確認された。白色度は、ISOにより53.1%で測定され、かつ収率は76.7%であった。
【0067】
例3および4による以下に説明する蒸解は、蒸気相での蒸解に関する。
【0068】
例3
亜硫酸塩23.6%、木材:薬品溶液の浴比=1:5で120℃において、蒸気相で120分間、トウヒチップを含浸した。薬品として、亜硫酸および0.1%のアントラキノンを使用する。含浸の開始時に、pH値を9.4に調整する。含浸後に、薬品溶液を除去する。
【0069】
薬品溶液で含浸されたチップを、蒸気で約5分間、170℃に加熱する。この170℃の蒸気相を、60分にわたって維持する。次いで蒸気を読み取り、かつ30秒以内に、ボイラーを100℃に冷却し、かつ周囲圧力が調整される。チップをボイラーから取り出し、かつフィブリル化する。こうして製造されたトウヒパルプの部分量を叩解し、かつ粉砕された部分量に関して叩解度およびパルプ特性を測定した。
【0070】
14°SRで、9.3kmの裂断長および102cN/100g/m2の坪量が測定された。白色度は、ISOにより42.6%で測定され、かつ収率は78.9%であった。
【0071】
以下の広葉樹の蒸解に関する例に関して、第1表は、試験結果をまとめて示している。
【0072】
例4、例5
シラカバのチップに、スチーミング(105℃の飽和蒸気で90分)後、0.1%のアントラキノンを添加した亜硫酸ナトリウムの蒸解溶液を、木材:蒸解溶液の浴比1:3で添加する。薬品の全使用量は、亜硫酸ナトリウムとして計算して、otroシラカバチップに対して、16.5%であった。薬品溶液により含浸されたシラカバチップを、170℃に加熱し、かつ60分にわたって(例4)もしくは80分にわたって(例5)この最大温度で蒸解した。
【0073】
使用された亜硫酸塩26.32%(例4)もしくは使用された亜硫酸塩32.52%(例5)が、蒸解の過程で消費された。
【0074】
例4に関して、85.34%の収率およびISOにより68.81%の白色度が、蒸解後に把握された。20°SRで、シラカバに関して、8.4kmの裂断長および6.9mN*m2/gの比引裂強さが測定された。例5に関して、83.99%の収率およびISOにより69.82%の白色度が、蒸解後に把握された。
【0075】
例6、例7、例8
ブナのチップに、スチーミング(105℃の飽和蒸気で90分)後、0.1%のアントラキノンを添加した亜硫酸ナトリウムの蒸解溶液を、木材:蒸解溶液の浴比1:3で添加する。薬品の全使用量は、亜硫酸ナトリウムとして計算して、otroブナチップに対して16.5%であった。薬品溶液により含浸したブナチップを、170℃(例6、7)もしくは160℃(例8)に加熱し、かつ60分にわたって(例6)もしくは48分にわたって(例7)、および55分にわたって(例8)蒸解した。
【0076】
亜硫酸塩の消費量は、例6では当初使用された亜硫酸塩の54.3%、例7では48.5%の消費量が確認され、かつ例8では、亜硫酸塩の消費量は、当初使用された亜硫酸塩に対して35.4%であった。
【0077】
収率は、例6に関して74.1%が確認され、例7に関しては、75.2%の収率が確認され、かつ例8に関して収率は82.4%であった。白色度は、例6に関してはISOにより66.3%であり、例7に関してはISOにより62.9%であり、かつ例8に関しては、ISOにより69.9%が確認された。
【0078】
こうして製造されたブナのパルプは、20°SRで、5.5kmの裂断長が確認された。比引裂強さは、4.8mN*m2/gが確認された。
【0079】
例9、例10
ポプラのチップに、スチーミング(105℃の飽和蒸気で90分)後、0.1%のアントラキノンを添加した亜硫酸ナトリウムの蒸解溶液を、木材:蒸解溶液の浴比1:4で添加する。薬品の全使用量は、そのつどotroポプラのチップに対して亜硫酸ナトリウムとして計算して、例9では19.7%であり、例10では16.5%であった。薬品溶液により含浸されたポプラのチップを、170℃に加熱し、かつ60分にわたって蒸解した。
【0080】
亜硫酸塩の消費量は、そのつど当初使用された亜硫酸塩に対して、例9では、47.5%であり、例10では、55.8%の消費量が把握された。
【0081】
収率は、例9では、76.5%が把握され、例10に関しては、77.2%の収率が確認された。白色度は、例9に関しては、ISOにより67.1%であり、例10に関しては、ISOにより63.5%が確認された。
【0082】
こうして製造されたポプラのパルプは、20°SRで、9.9kmの裂断長が確認された。比引裂強さは、6.9mN*m2/gが確認された。
【0083】
例11、例12
ポプラのチップに、スチーミング(105℃の飽和蒸気で90分)後、0.1%のアントラキノンを添加した亜硫酸ナトリウムの蒸解溶液を、木材:蒸解溶液の浴比1:3で添加する。薬品の全使用量は、亜硫酸ナトリウムとして計算して、otroポプラチップに対して、16.5%であった。薬品溶液により含浸したポプラチップを、170℃(例11)もしくは160℃(例12)に加熱し、かつ45分にわたって(例11)もしくは90分にわたって(例7)蒸解した。
【0084】
亜硫酸塩の消費量は、例11では、当初使用した亜硫酸塩の51.4%であった。例12に関する亜硫酸塩消費量は確認されなかった。
【0085】
収率は、例11では、80.2%が把握され、例12に関しては、80.7%の収率が確認された。白色度は、例11に関しては、ISOにより64.1%であり、例12に関しては、ISOにより69.3%が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース原料からパルプを製造する方法であって、以下の工程:
リグノセルロース原料のotro量に対して、25%より少ない亜硫酸塩(NaSO3として計算)を含有する薬品溶液を製造する工程、
薬品溶液と木材とを規定の浴比で混合する工程、
薬品溶液と木材とを室温より高い温度に加熱する工程、および引き続き、
(第一の変法)
自由に流れる薬品溶液を除去し、かつ木材を蒸気相で蒸解する工程、
または(第二の変法)
液相で木材を蒸解し、かつ自由に流れる薬品溶液および木材を分離する工程、
を有する、リグノセルロース原料からパルプを製造する方法。
【請求項2】
針葉樹に関しては、otroパルプに対してリグニンを少なくとも15%、有利にはリグニンを少なくとも17%、好ましくはリグニンを少なくとも19%、特に有利には少なくとも21%含有するか、または広葉樹に関しては、otroパルプに対してリグニンを少なくとも14%、有利にはリグニンを少なくとも16%、特に有利にはリグニンを少なくとも18%含有するパルプを製造することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
針葉樹に関して、otroパルプに対して、リグニンを少なくとも15%の含有率を有し、15°SRまでの叩解度において8km以上の裂断長、有利には9km以上の裂断長、好ましくは10km以上の裂断長を有するパルプを製造することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
広葉樹に関して、otroパルプに対して、リグニン少なくとも12%の含有率をし、20°SRまでの叩解度において5km以上の裂断長、有利には6km以上の裂断長、特に有利には7km以上の裂断長を有するパルプを製造することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
薬品溶液を製造するために、亜硫酸塩および硫化物を、単独で、または混合物として使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
薬品溶液を製造するために、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウムおよび/または亜硫酸アンモニウムを使用することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
薬品溶液を製造するために、キノン成分を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
方法を、5.5〜11、有利には5.5〜10、特に有利には7.5〜8.5のpH値で実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
木材:薬品溶液の浴比を、1:1.5〜1:6、有利には1:3〜1:5に調整することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
薬品溶液および木材を、130℃まで、有利には120℃まで、好ましくは110℃まで加熱することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項11】
木材および場合により薬品溶液の加熱を、90分まで、有利には60分まで、好ましくは30分まで、特に有利には10分まで継続することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
木材の蒸解を、120℃〜190℃の温度で、有利には150℃〜180℃の温度で、特に有利には160℃〜170℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項13】
木材の蒸解を、180分まで、有利には90分まで、特に有利には60分まで、好ましくは30分まで、特に有利には2分まで継続することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項14】
蒸解の時間を浴比に依存して選択することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
otro原料に対して25%以上のリグニン含有率を有するリグノセルロース原料を蒸解するために、otroリグノセルロース原料に対して13%までの亜硫酸塩を消費し、otro原料に対して、20%〜25%のリグニン含有率を有するリグノセルロース原料を蒸解するために、亜硫酸塩10%までを消費し、かつotro原料に対して、20%までのリグニン含有率を有するリグノセルロース原料を蒸解するために、10%未満の亜硫酸塩を消費するが、ただし少なくとも7%の亜硫酸塩を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項16】
針葉樹を蒸解するために、亜硫酸塩を25%まで、有利には亜硫酸塩を20%まで、好ましくは亜硫酸塩を15%まで、ただし少なくとも7%の亜硫酸塩を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項17】
広葉樹を蒸解するために、亜硫酸塩を15%まで、有利には亜硫酸塩を12%まで、特に有利には10%まで、ただし少なくとも7%の亜硫酸塩を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項18】
蒸解の間の亜硫酸塩の消費量が、蒸解の開始時の亜硫酸塩の使用量の80%まで、有利には60%まで、特に有利には40%までであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項19】
薬品溶液を製造するために、すでに蒸解のために使用された薬品溶液の返送流からの亜硫酸塩の75質量%までを使用し、かつ亜硫酸塩の少なくとも25質量%を改めて添加することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
薬品溶液を製造するために、すでに蒸解のために使用された薬品溶液の返送流からの亜硫酸塩の50質量%までを使用し、かつ亜硫酸塩の少なくとも50質量%を改めて添加することを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
薬品溶液を製造する際に、新鮮な亜硫酸塩を、そのつどotroリグノセルロース原料に対してNaSO3として計算して、次の量で、つまりotro原料に対して、リグニン含有率が25%以上のリグノセルロース原料の場合、13%まで、otro原料に対して、リグニン含有率が20%〜25%のリグノセルロース原料の場合、10%まで、および20%未満のリグニン含有率を有するリグノセルロース原料の場合、10%未満の量で添加することを特徴とする、請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
除去または分離された薬品溶液の組成を把握し、かつ引き続き改めて繊維の製造のために規定の組成に調整することを塔頂とする、請求項1記載の方法。
【請求項23】
フィブリル化および蒸解したリグノセルロース材料を場合により叩解した後で、放出された薬品溶液を除去し、かつ更なる使用のために供給することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項24】
蒸解溶液の循環運転により、この循環される蒸解溶液の固体含有率が、5%まで、有利には10%まで、特に有利には15%まで上昇することを特徴とする、請求項1または23記載の方法。
【請求項25】
循環される蒸解溶液が、あらたに調製される蒸解溶液よりも1.5MJ/kgまで高い発熱量を有することを特徴とする、請求項1、23または24記載の方法。

【公表番号】特表2009−540134(P2009−540134A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513556(P2009−513556)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003014
【国際公開番号】WO2007/140839
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(506408818)フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (52)
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D−89522 Heidenheim, Germany
【Fターム(参考)】