説明

木材の乾燥方法

【課題】木材に含有される香り成分などの有効な成分を変質や揮発させることなく木材の内部まで均一に腐敗なく良好に乾燥させることができる木材の乾燥方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、木材の乾燥方法において、伐採した木材の枝を切り落とすとともに所定の長さに切断し、樹皮を着けたままの状態で地面と間隔をあけて載置し、その状態で所定期間にわたって太陽光の下で自然乾燥を行い、その後、所定の形状に製材し、所定期間にわたって日陰で養生を行うことにした。特に、前記自然乾燥は、地面に左右に間隔をあけて設置した前後一対の基台の上部に木材を格子状に積み上げた状態で行うことにし、前記自然乾燥を行う期間は、前記養生を行う期間よりも長い期間とし、木材の含水率が50%以下となる期間とし、1年以上とすることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の乾燥方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材は、その香りや色合いや調湿作用に注目され、古くから住宅用の建材などに広く利用されてきている。
【0003】
この木材は、伐採した状態では含水率が200%以上と非常に高いので、そのまま所定の形状に製材して建材として使用すると、その後の乾燥によって反りや捩れなどの変形が生じてしまうため、所定の濃度以下(日本農林規格では、25%以下)の含水率にまで乾燥処理を施す必要がある。
【0004】
そのため、従来は、製材した木材を室内に載置し強制的に木材を加熱して乾燥を行う木材の熱処理乾燥方法や、伐採した木材を枝葉を着けたままの状態で地面に直接載置して木材の乾燥を行ういわゆる葉枯し乾燥と呼ばれる木材の自然乾燥方法などが行われている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−263409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の木材の熱処理乾燥方法では、強制的に加熱して木材を乾燥させるために、木材に含有される香り成分などの有効な成分が変質や揮発してしまい、木材本来の利点が損なわれてしまうといった欠点があった。
【0007】
また、上記従来の葉枯し乾燥による木材の自然乾燥方法では、伐採した木材を枝葉を着けたままの状態で地面に直接載置して乾燥を行っていたために、木材の枝葉から水分が蒸散し、木材の外周部のほうが中心部よりも良好に乾燥が進み、断面で見ると含水率が不均一になってしまい、木材の内部を均一に乾燥させることができず、また、地面上の湿気や害虫によって木材が腐敗してしまうといった欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、木材の乾燥方法において、伐採した木材の枝を切り落とすとともに所定の長さに切断し、樹皮を着けたままの状態で地面と間隔をあけて載置し、その状態で所定期間にわたって太陽光の下で自然乾燥を行い、その後、所定の形状に製材し、所定期間にわたって日陰で養生を行うことにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記自然乾燥は、地面に左右に間隔をあけて設置した前後一対の基台の上部に木材を格子状に積み上げた状態で行うことにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記自然乾燥を行う期間は、前記養生を行う期間よりも長い期間とすることにした。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記自然乾燥を行う期間は、木材の含水率が50%以下となる期間とすることにした。
【0012】
また、請求項5に係る本発明では、前記請求項1〜請求項4のいずれかに係る本発明において、前記自然乾燥を行う期間は、1年以上とすることにした。
【発明の効果】
【0013】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0014】
すなわち、本発明では、伐採した木材の枝を切り落とすとともに樹皮を着けたままの状態で太陽光の下で自然乾燥を行うために、木材に含有される有効な成分の変質や揮発を防止しつつ、木材の枝からの水分の蒸散を防止することができるとともに、樹皮により木材の外周部に直射日光が照射するのを防止することができ、これにより、木材の外周部が中心部よりも乾燥が進行して木材が不均一に乾燥してしまうのを防止することができ、木材の内部を均一に乾燥させることができる。
【0015】
また、本発明では、地面と間隔をあけて載置した状態で自然乾燥を行うために、地面上での湿気や害虫による木材の腐敗を防止することができる。
【0016】
さらに、本発明では、自然乾燥後に製材して日陰で養生するために、製材後の木材に生じるひびを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る木材の乾燥方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
本発明に係る木材の乾燥方法は、図1に示すように、伐採、玉切り、搬送、自然乾燥、搬送、製材、養生、仕上げ、出荷の各工程を順に行うことによって構成している。
【0019】
まず、山林において林立する木材のうちから適した木材(たとえば、樹齢60年〜80年の杉など)を選択して間伐する(伐採工程)。
【0020】
次に、伐採された木材の枝の基端部を幹から切り落とし、予め設定した所定の長さ(たとえば、5m)に切断する(玉切り工程)。
【0021】
次に、玉切りされた木材を搬送用のトラックの荷台に積込み、山林から乾燥処理場へ搬送する(搬送工程)。
【0022】
次に、乾燥処理場において、搬送された木材を樹皮を着けたままの状態で地面と間隔をあけて載置し、その状態で所定期間(たとえば、1年間)にわたって太陽光の下で自然乾燥を行う(自然乾燥工程)。
【0023】
この自然乾燥工程では、図2に示すように、屋外の乾燥処理場の地面1に前後左右に所定の間隔(たとえば、4m)をあけてコンクリート製の基台2,3を設置しておき、前後一対の基台2,3の上部に樹皮を着けたままの状態の木材4を載置し、さらにその木材4の上部に別の木材4を間隔をあけて直交する方向に向けて数段(たとえば、4段)に載置して、木材4を格子状に積み上げ、この木材4を格子状に積み上げた状態で所定期間放置することによって、自然乾燥を行うようにする。
【0024】
この自然乾燥工程で自然乾燥を行う期間は、後述する養生を行う期間よりも2倍以上好ましくは3倍以上も長くしており、約200%以上あった木材4の含水率が50%以下となる期間とし、目安として1年間以上の期間としている。
【0025】
このように、地面に左右に間隔をあけて設置した前後一対の基台2,3の上部に木材4を格子状に積み上げた状態で自然乾燥を行うことによって、風通しの良好な状態で木材4を自然乾燥させることができるので、大量の木材4を均一に自然乾燥させることができ、しかも、少ない設置スペースで大量の木材4を同時に自然乾燥させることができるので、乾燥処理を施した建材の大量生産を行うことができる。
【0026】
また、養生を行う期間よりも自然乾燥を行う期間を長くしたり、自然乾燥を行う期間を木材4の含水率が50%以下となる期間としたり、自然乾燥を行う期間を1年以上とすることで、自然乾燥後の木材4の色を個体差なく赤みが帯びた良好な色にすることができ、歩留まり良く商品価値を向上させることができる。
【0027】
次に、自然乾燥させた木材を搬送用のトラックの荷台に積込み、乾燥処理場から製材所へ搬送する(搬送工程)。
【0028】
次に、製材所において、搬送された木材を所定の形状(たとえば、角柱状や矩形板状など)に製材する(製材工程)。
【0029】
次に、製材所において、所定期間(たとえば、3ヶ月間)にわたって日陰で養生を行う(養生工程)。
【0030】
この養生工程では、屋内の製材所の床に木材を直交する桟木を挟んで多段に積み上げた状態(桟積状態)で直射日光の照射を避けて所定期間放置することによって、養生を行うようにする。
【0031】
この養生工程で養生を行う期間は、木材の含水率が各種の規定(たとえば、日本農林規格の場合は25%以下)を満たすようになるまでの期間とし、目安として3ヶ月以上の期間としている。
【0032】
最後に、養生させた木材の表面を研磨して所定形状の建材に仕上げ(仕上げ工程)、その後、出荷する(出荷工程)。
【0033】
以上に説明したように、上記木材の乾燥方法では、伐採した木材の枝を切り落とすとともに樹皮を着けたままの状態で太陽光の下で自然乾燥を行うようにしている。
【0034】
そのため、上記木材の乾燥方法では、木材を強制的に加熱しておらず、木材に含有される香り成分などの有効な成分が変質や揮発してしまうことがなく、木材本来の利点を損なうことがない。
【0035】
しかも、上記木材の乾燥方法では、木材の枝からの水分の蒸散を防止することができ、枝からの水分の蒸散によって木材の外周部が中心部よりも乾燥が進行してしまうのを防止することができる。また、上記木材の乾燥方法では、樹皮により木材の外周部に直射日光が照射するのを防止することができ、木材の外周部に直射日光が照射されることによって木材の外周部が中心部よりも乾燥が進行してしまうのを防止することができる。これにより、上記木材の乾燥方法では、木材の外周部が中心部よりも乾燥が進行して木材が不均一に乾燥してしまうのを防止することができるので、木材の内部を均一に乾燥させることができ、建材としての商品価値を向上させることができる。
【0036】
また、上記木材の乾燥方法では、地面と間隔をあけて載置した状態で自然乾燥を行うようにしている。
【0037】
そのため、上記木材の乾燥方法では、地面上での湿気や害虫による木材の腐敗を防止することができ、これにより、歩留まりを向上させることができるとともに建材としての商品価値を向上させることができる。
【0038】
さらに、上記木材の乾燥方法では、自然乾燥後に製材して日陰で養生するようにしている。
【0039】
そのため、上記木材の乾燥方法では、製材後の木材に生じるひびを小さくすることができ、これによっても、歩留まりを向上させることができるとともに建材としての商品価値を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る木材の乾燥方法を示す説明図。
【図2】自然乾燥工程を示す説明図。
【符号の説明】
【0041】
1 地面
2,3 基台
4 木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伐採した木材の枝を切り落とすとともに所定の長さに切断し、樹皮を着けたままの状態で地面と間隔をあけて載置し、その状態で所定期間にわたって太陽光の下で自然乾燥を行い、その後、所定の形状に製材し、所定期間にわたって日陰で養生を行うことを特徴とする木材の乾燥方法。
【請求項2】
前記自然乾燥は、地面に左右に間隔をあけて設置した前後一対の基台の上部に木材を格子状に積み上げた状態で行うことを特徴とする請求項1に記載の木材の乾燥方法。
【請求項3】
前記自然乾燥を行う期間は、前記養生を行う期間よりも長い期間としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木材の乾燥方法。
【請求項4】
前記自然乾燥を行う期間は、木材の含水率が50%以下となる期間としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の木材の乾燥方法。
【請求項5】
前記自然乾燥を行う期間は、1年以上としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の木材の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−184228(P2009−184228A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26643(P2008−26643)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(399092563)株式会社トライ・ウッド (3)
【Fターム(参考)】