説明

木材乾燥装置及び木材乾燥方法

【課題】 乾燥後の木材の変色を防止することができる木材乾燥装置及び木材乾燥方法を提供する。
【解決手段】
木材乾燥装置1は、乾燥炉11と、乾燥炉11内に熱風を供給するボイラー12とを備え、乾燥炉11内には、乾燥処理対象の木材100の全面を覆うように木粉層22が設けられており、ボイラー12は、熱風が木粉層22中を下方から上方へ通過するように乾燥炉11内に熱風を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の乾燥を行う木材乾燥装置及び木材乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材の乾燥方法としては、大別して自然乾燥と人工乾燥とが挙げられる。このうち、自然乾燥では、乾燥に長期間を要したり、乾燥の結果ねじれ等の変形を起こしたり等の問題が生ずる。そのため、近年では人工乾燥が広く行われている。
【0003】
例えば、バーナー等を用いて乾燥炉内に熱風を送り込み、当該乾燥炉内に収容されている木材をその熱風に曝すことによって、当該木材を強制的に乾燥させる木材乾燥方法が行われている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。これにより、自然乾燥の場合と比べて短時間に木材の乾燥を行うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−2135666号公報
【特許文献2】特開平11−63823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の木材乾燥方法の場合、乾燥する過程で、リグニン及びタンニン等の木材中の成分が木材の表層部に染み出し、その結果木材の表層部が茶褐色に変色してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる木材乾燥装置及び木材乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の木材乾燥装置は、乾燥炉と、前記乾燥炉内に熱風を供給する熱風供給部とを備え、前記乾燥炉内には、乾燥処理対象の木材の全面を覆うように木粉層が設けられており、前記熱風供給部は、熱風が前記木粉層中を下方から上方へ通過するように前記乾燥炉内に熱風を供給するように構成されている。
【0008】
このように構成すると、木粉層の木粉が乾燥対象の木材の水分を吸収することができるため、木材の乾燥が促進される。また、木粉層の木粉は、木材を茶褐色に変色させる木材中の成分をも吸収することができるため、乾燥後の木材が茶褐色に変色するのを防止することができる。
【0009】
上記態様の木材乾燥装置において、前記乾燥炉内に、前記木粉層下に位置し、複数の木材チップを並べてなる木材チップ層が設けられており、前記熱風供給部が、熱風が前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過するように前記乾燥炉内に熱風を供給するように構成されていてもよい。
【0010】
また、上記態様の木材乾燥装置において、前記木材チップ層が、木材チップを通過させず空気を通過させるメッシュ材上に前記木材チップを並べてなり、前記熱風供給部が、熱風が前記メッシュ材、前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過するように前記乾燥炉内に熱風を供給するように構成されていてもよい。
【0011】
また、上記態様の木材乾燥装置において、前記木粉層中にタルクが含まれていてもよい。
【0012】
本発明の一の態様の木材乾燥方法は、乾燥炉内に設けられた木粉層中に乾燥処理対象の木材を配置して当該木材の全面を木粉で覆い、熱風を発生して、前記木粉層中を下方から上方へ通過させることによって前記木材の乾燥を行う。
【0013】
上記態様の木材乾燥方法において、前記乾燥炉内に、前記木粉層下に位置し、複数の木材チップを並べてなる木材チップ層が設けられており、熱風を発生して、前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過させることによって前記木材の乾燥を行うようにしてもよい。
【0014】
また、上記態様の木材乾燥方法において、前記木材チップ層が、木材チップを通過させず空気を通過させるメッシュ材上に前記木材チップを並べてなり、熱風を発生して、前記メッシュ材、前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過させることによって前記木材の乾燥を行うようにしてもよい。
【0015】
また、上記態様の木材乾燥方法において、前記木粉層中にタルクが含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る木材乾燥装置及び木材乾燥方法によれば、乾燥後の木材の変色を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1の木材乾燥装置の構成を示す側断面図。
【図2】本発明の実施の形態1の木材乾燥装置の構成を示す正断面図。
【図3】本発明の実施の形態2の木材乾燥装置の構成を示す正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1の木材乾燥装置の構成を示す側断面図である。また、図2は、同じく木材乾燥装置の構成を示す正断面図である。
図1及び図2に示すとおり、本実施の形態の木材乾燥装置1は、乾燥対象となる木材100が収容できる長さを有した箱体状の乾燥炉11と、乾燥炉11内に熱風を供給するボイラー12と、乾燥炉11内の空気を外部へ排出するための排気筒13とを備えている。
【0020】
乾燥炉11の内部には、乾燥炉11の内壁に取り付けられて固定されたメッシュシート21と、そのメッシュシート21上に設けられた木粉層22とが設けられている。ここで、木粉層22は、平均粒径が1mm〜3mm程度の木粉からなる層である。
【0021】
メッシュシート21は、木粉層22を構成する木粉を通過させない程度の大きさの複数の開口を有している。このメッシュシート21上に木粉を供給して堆積させることにより、木粉層22が形成される。
【0022】
なお、木粉層22の木粉の平均粒径は上記に限られるわけではなく、それより小さくても(例えば、1mmより小さく300μm以上等)、それより大きくても(例えば、3mmより大きく5mm以下等)よい。また、この木粉は、市販されているものでもよく、製材所及び木工所等から発生するものであってもよい。
【0023】
木粉層22の厚みは、乾燥対象となる木材100の厚みよりも大きければよい。木材100は、その全面が木粉層22の木粉に覆われるように、木粉層22中に埋設される。
【0024】
なお、木粉層22中に埋設される木材100は1本でも複数本でも構わない。複数本の木材100を埋設する場合は、図1及び図2に示すように、上下方向及び左右方向で所定の距離を隔てて配することにより、すべての木材100の全面が木粉に覆われるようにすることが望ましい。
【0025】
本実施の形態の場合、木粉層22中の木粉によって木材100の配置が固定されるため、木材100を上下方向に並べる場合であっても、桟木等は不要である。桟木等を用いる場合は、乾燥対象の木材において桟木と接触する箇所が変色する等の不都合が生じるときがあるが、本実施の形態では桟木等を用いる必要がないため、そのような不都合は生じない。
【0026】
なお、乾燥炉11には、所定のサイズの扉(図示せず)が開閉自在に取り付けられており、この扉を介して乾燥対象となる木材100の搬入及び搬出が行われる。
【0027】
ボイラー12は、熱風を通流させるための配管16と接続されており、この配管16は、乾燥炉11の正面側の下部と連通している。ボイラー12によって発生した熱風は、配管16を介して、メッシュシート21と乾燥炉11の底壁との間に形成される空気層14内に送り込まれる。このようにして空気層14に送り込まれた熱風は、空気層14内を上昇し、メッシュシート21及び木粉層22を通過して、木粉層22と乾燥炉11の天井壁との間に形成される空気層15へ流れる。
【0028】
本実施の形態では、配管16が乾燥炉11の正面側の下部と連通しているが、この態様に限定されるわけではなく、上述のとおり空気層14に対して熱風を送り込むことができれば他の態様であってもよい。
【0029】
排気筒13は、乾燥炉11の上面に設けられており、乾燥炉11内と連通している。上述したようにして、空気層14、メッシュシート21及び木粉層22内を通過して空気層15に流れてきた熱風は、排気筒13を介して乾燥炉11外へ排出される。
【0030】
なお、このように排気筒13を設けるのではなく、例えば乾燥炉11の天井面が開放されており、これにより熱風が乾燥炉11外へ排出されるような構成であってもよい。
【0031】
以上のように構成された木材乾燥装置1によって木材の乾燥を行う場合、空気層14内の雰囲気が150℃乃至180℃程度となるようにボイラー12から熱風が供給される。なお、乾燥対象となる木材100の種類によって適切な温度は異なるため、例えば乾燥しやすい種類の木材の場合は上記よりも低い温度で足りる。また、乾燥時間を長くすればより低い温度でもよく、他方、乾燥時間を短くする場合はより高い温度に設定する必要が生じる。上記の150℃乃至180℃程度の温度の場合、乾燥時間を2日間程度とすることが望ましい。
【0032】
ボイラー12から乾燥炉11内の空気層14に送り込まれた熱風は、空気層14内を上昇し、メッシュシート21及び木粉層22内を通過する。これにより、木粉層22に埋設された木材100に熱が加わり、その結果、木材100の乾燥が進行する。このとき、木粉層22中の木粉が木材100内から抜け出た水分を吸収するため、木材100の乾燥が促進される。また、木粉は、水分と併せて、リグニン及びタンニン等の木材100中の成分も吸収するため、乾燥後の木材100の表層部にリグニン及びタンニン等が溜まることを防止することができる。したがって、乾燥後の木材100の表層部は、茶褐色に変色することなく、乾燥前の白色の状態を保つことができる。
【0033】
なお、熱伝導性を高めるために、木粉層22にタルクを混ぜてもよい。このようにタルクを混ぜることにより、木粉層22中に埋設された木材100に熱が伝わりやすくなるため、乾燥時間の短縮化を図ることができる。木粉層22中に混入させるタルクは、例えば日本タルク株式会社製のものを使用することが可能である。
【0034】
木粉層22中のタルクの量が多すぎると、木粉によるリグニン及びタンニン等の成分の吸収が十分でなくなる。他方、木粉層22中のタルクの量が少なすぎると、熱伝導性を高めるという効果が奏されなくなる。そのため、タルクは1乃至10重量パーセント程度の範囲で木粉層22に混入させることが望ましい。
【0035】
なお、タルクの代わりに、例えば炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、砂、及びセラミック粒等を用いた場合でも、熱伝導性を高めることが可能である。したがって、これらの炭酸カルシウム等を、タルクに代えてまたはタルクと共に、木粉層22に混ぜるようにしてもよい。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る木材乾燥装置は、木材チップからなる木材チップ層を備え、その上に木粉層を設ける。
図3は、本発明の実施の形態2に係る木材乾燥装置の構成を示す正断面図である。図3に示すとおり、本実施の形態の木材乾燥装置2が備える乾燥炉11の内部には、乾燥炉11の内壁に取り付けられて固定されたメッシュシート31と、そのメッシュシート31上に設けられた木材チップ層32と、その木材チップ層32上に設けられた木粉層22とが設けられている。
【0037】
木材チップ層32は、メッシュシート31上に複数の木材チップ33を並べて載置することにより形成されている。この木材チップ33としては、幅または径が20mm乃至70mm程度で、厚みが5mm乃至20mm程度の市販の木材チップを利用することが可能である。また、木材チップ33のサイズにばらつきがあっても問題はないため、製材所及び木工所等で発生した木材の粉砕片をそのまま利用することもできる。
【0038】
上記の木材チップ層32上に木粉を供給して堆積させることにより、木粉層22を形成する。なお、木材チップ層32上に木粉を供給した場合、木材チップ層32中の木材チップ33間の間隙に木粉が充填される。そして、そのように木粉が充填された木材チップ層32上に木粉が堆積し、その結果、木粉層22が形成される。
【0039】
メッシュシート31は、木材チップ層32の木材チップ33を通過させない程度の大きさの複数の開口を有している。そのため、メッシュシート31の開口は、実施の形態1におけるメッシュシート21の開口よりも大きくすることができる。したがって、メッシュシート31は、メッシュシート21と比べて、下方から上昇してくる熱風をより迅速に通過させることができる。
【0040】
ボイラー12によって発生した熱風は、配管16を介して、メッシュシート31と乾燥炉11の底壁との間に形成される空気層34内に送り込まれる。このようにして空気層34に送り込まれた熱風は、空気層34内を上昇し、メッシュシート31、木材チップ層32及び木粉層22を通過して、木粉層22と乾燥炉11の天井壁との間に形成される空気層15へ流れる。
【0041】
なお、本実施の形態の木材乾燥装置2のその他の構成については、実施の形態1の場合と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
以上のように構成された木材乾燥装置2によって木材の乾燥を行う場合、実施の形態1の場合と同様に、空気層34内の雰囲気が150℃乃至180℃程度となるようにボイラー12から熱風が供給される。
【0043】
ボイラー12から乾燥炉11内の空気層34に送り込まれた熱風は、空気層34内を上昇し、メッシュシート31、木材チップ層32及び木粉層22内を通過する。これにより、木粉層22に埋設された木材100に熱が加わり、木材100の乾燥が進行する。
【0044】
上述したとおり、メッシュシート31は、実施の形態1におけるメッシュシート21と比べて、熱風をより迅速に通過させることができる。そのため、本実施の形態の木材乾燥装置2では、実施の形態1の場合と比べてより速く木粉層22中の木材100に熱を伝えることができるため、木材100の乾燥をより一層促進することができる。
【0045】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態においては、ボイラーによって乾燥炉内に熱風が供給されているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、乾燥炉にバーナーが付設されており、当該バーナーが放出する火炎により熱風を発生させ、これを乾燥炉内に送り込むような構成であってもよい。
【0046】
また、実施の形態1においては木粉層22を形成するためにメッシュシート21を、実施の形態2においては木材チップ層32を形成するためにメッシュシート31をそれぞれ用いているが、木粉または木材チップを通過させずに熱風を通過させる部材であればよく、他のメッシュ材等であってもよい。
【0047】
なお、上記の各実施の形態は、適宜組み合わせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の木材乾燥装置及び木材乾燥方法はそれぞれ、角材等の木材を乾燥する木材乾燥装置及び木材乾燥方法等として有用である。
【符号の説明】
【0049】
1,2 木材乾燥装置
11 乾燥炉
12 ボイラー
13 排気筒
14,15 空気層
16 配管
21 メッシュシート
22 木粉層
31 メッシュシート
32 木材チップ層
33 木材チップ
34 空気層
100 木材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥炉と、
前記乾燥炉内に熱風を供給する熱風供給部とを備え、
前記乾燥炉内には、乾燥処理対象の木材の全面を覆うように木粉層が設けられており、
前記熱風供給部は、熱風が前記木粉層中を下方から上方へ通過するように前記乾燥炉内に熱風を供給するように構成されている、木材乾燥装置。
【請求項2】
前記乾燥炉内には、前記木粉層下に位置し、複数の木材チップを並べてなる木材チップ層が設けられており、
前記熱風供給部は、熱風が前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過するように前記乾燥炉内に熱風を供給するように構成されている、請求項1に記載の木材乾燥装置。
【請求項3】
前記木材チップ層は、木材チップを通過させず空気を通過させるメッシュ材上に前記木材チップを並べてなり、
前記熱風供給部は、熱風が前記メッシュ材、前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過するように前記乾燥炉内に熱風を供給するように構成されている、請求項2に記載の木材乾燥装置。
【請求項4】
前記木粉層中にはタルクが含まれている、請求項1乃至3の何れかに記載の木材乾燥装置。
【請求項5】
乾燥炉内に設けられた木粉層中に乾燥処理対象の木材を配置して当該木材の全面を木粉で覆い、
熱風を発生して、前記木粉層中を下方から上方へ通過させることによって前記木材の乾燥を行う、木材乾燥方法。
【請求項6】
前記乾燥炉内には、前記木粉層下に位置し、複数の木材チップを並べてなる木材チップ層が設けられており、
熱風を発生して、前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過させることによって前記木材の乾燥を行う、請求項5に記載の木材乾燥方法。
【請求項7】
前記木材チップ層は、木材チップを通過させず空気を通過させるメッシュ材上に前記木材チップを並べてなり、
熱風を発生して、前記メッシュ材、前記木材チップ層及び前記木粉層中を下方から上方へ通過させることによって前記木材の乾燥を行う、請求項6に記載の木材乾燥装置。
【請求項8】
前記木粉層中にはタルクが含まれている、請求項5乃至7の何れかに記載の木材乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−159897(P2010−159897A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1122(P2009−1122)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(509007768)株式会社コバヤシ産業 (1)
【Fターム(参考)】