説明

木材保存剤

【要 約】
【課 題】環境にやさしく、優れた防虫又は/及び防腐効力を有する木材保存剤を提供する。
【解決手段】ウンカリア(Uncaria)属に属する植物又はその処理物を含有することを特徴とする木材用防腐剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材保存剤に関し、より詳細には木材が使用された建築物や家具等を侵食するシロアリやヒラタキクイムシ等の木材害虫ならびに褐色腐朽菌であるオオウズラタケなどの木材腐朽菌による腐朽に対して有効な木材保存剤、その製造方法及び保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロアリやヒラタキクイムシ等の木材害虫の防除、及びオオウズラタケやイドタケ等の木材腐朽菌による腐朽を防止するため、種々の木材保存剤が知られている。その有効成分としては、防虫作用、木材防腐作用、殺菌作用、防カビ作用等を有する種々の化合物が知られている。しかし、これら従来より知られている木材防腐剤は、人畜に対する安全性及び環境に及ぼす影響が高く、自然の生態系を破壊する虞がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明による木材保存剤は、害虫に対して、高い防虫効果を示すとともに、木材腐朽菌に対しても高い防腐性を有する木材保存剤を提供することにある。
【0004】
本発明の他の目的は、人畜に対して安全性が高く、環境に対して悪影響を及ぼすことのない木材保存剤を提供することにある。
【0005】
本発明のさらに他の目的は、木材の害虫及び木材腐朽菌を確実かつ効率良く防除できる木材保存剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カスタネア(Castanea)属もしくはコミフォラ(Commiphora)属に属する植物又はその処理物が木材に対して優れた防腐作用と防虫作用を有すること、ウンカリア(Uncaria)属、ソフォラ(Sophora)属もしくはスチラックス(Styrax)属に属する植物又はその処理物が木材に対して優れた防腐作用を有すること、さらにコフェア(Coffea)属に属する植物又はその処理物が木材に対して優れた防虫作用を有すること等の新知見を得、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0007】
本発明者らは、木材害虫や木材腐朽菌を、カスタネア(Castanea)属、ウンカリア(Uncaria)属、コミフォラ(Commiphora)属、ソフォラ(Sophora)属、スチラックス(Styrax)属もしくはコフェア(Coffea)属に属する植物又はその処理物、特にクリ果皮、クリ種皮、コーヒー豆又は特定種類の生薬(例えば没薬、アセンヤク、サンズコン又は安息香)の処理物(例えば生薬の抽出物又は当該生薬が由来する植物から採取した滲出物など)に接触させることにより、害虫又は腐朽菌は成長が妨げられ、又は死滅することを発見し、その新知見を利用して木材保存剤を完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は
(1)カスタネア(Castanea)属もしくはコミフォラ(Commiphora)属に属する植物又はその処理物を含有することを特徴とする木材保存剤、
(2)カスタネア(Castanea)属に属する植物の処理物がクリ果皮もしくはクリ種皮又はその処理物であり、コミフォラ(Commiphora)属に属する植物の処理物が没薬又はその処理物である前記(1)記載の木材保存剤、
(3)ウンカリア(Uncaria)属、ソフォラ(Sophora)属もしくはスチラックス(Styrax)属に属する植物又はその処理物を含有することを特徴とする木材用防腐剤、
(4)ウンカリア(Uncaria)属に属する植物の処理物がアセンヤク又はその処理物であり、ソフォラ(Sophora)属に属する植物の処理物がサンズコン又はその処理物であり、スチラックス(Styrax)属に属する植物の処理物が安息香又はその処理物である前記(3)記載の木材用防腐剤、
(5)コフェア(Coffea)属に属する植物又はその処理物を含有することを特徴とする木材用防虫剤、
(6)コフェア(Coffea)属に属する植物の処理物がコーヒー豆又はその処理物である前記(5)記載の木材用防虫剤、
(7)シロアリの害を防ぐ、前記(1)、(2)、(5)又は(6)記載の木材用防虫剤、及び
(8)前記(1)〜(7)記載の木材保存剤を木材に接触させることを特徴とする木材保存方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、カスタネア(Castanea)属もしくはコミフォラ(Commiphora)属に属する植物又はその処理物を含有する本発明の製剤は、木材に対して優れた防腐作用と防虫作用を有すること、ウンカリア(Uncaria)属、ソフォラ(Sophora)属もしくはスチラックス(Styrax)属に属する植物又はその処理物を含有する本発明の製剤は、木材に対して優れた防腐作用を有すること、さらにコフェア(Coffea)属に属する植物又はその処理物を含有する本発明の製剤は、木材に対して優れた防虫作用を有することを示す。
【0010】
本発明の木材保存剤は、害虫及び木材腐朽菌に対して優れた防除効果を発現する。また、有効成分が天然の植物由来であるため、人畜に対して安全性が高く、環境に対して悪影響を及ぼすことが少ない。
【0011】
本発明の製造方法によれば、前記のような優れた特性を有する木材保存剤をたとえば抽出又は滲出という簡単な操作で得ることができる。
【0012】
本発明の防除方法によれば、安全性を確保しつつ、害虫、腐朽菌を極めて効率よく防除できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、1)カスタネア(Castanea)属、コミフォラ(Commiphora)属もしくはスチラックス(Styrax)属に属する植物又はその処理物を含有する木材用防腐剤又は防虫剤、2)ウンカリア(Uncaria)属もしくはソフォラ(Sophora)属に属する植物又はその処理物を含有する木材用防腐剤及び3)コフェア(Coffea)属に属する植物又はその処理物を含有することを特徴とする木材用防虫剤を提供する。
【0014】
スチラックス(Styrax)属に属する植物には、例えば、スチラックス・ベンゾイデス(Styrax benzoides)、スチラックス・トンキネンシス(Styrax tonkinensis)、スチラックス・ベンゾイン(Styrax benzoin)、スチラックス・スマトラヌス(Styrax sumatranus )などが含まれる。これらの植物の樹幹から滲出する樹脂「安息香」は、去痰作用を有する生薬以外に、香料、化粧品などに用いられている。
【0015】
ウンカリア(Uncaria)属に属する植物には、例えばウンカリア・ガンビイ(Uncaria gambir)、アセンヤクなどが含まれる。アセンヤクは、インドに広く分布し、マレー、スマトラなどが主産地である。収斂、止瀉などの作用を有する成分を含むことが知られている。
【0016】
ソフォラ(Sophora)属に属する植物には、例えばソフォラ・トンキネンシス(Sophora tonkinensis)などが含まれる。ソフォラ・トンキネンシスは中国に生育する植物であり、その根は、解熱、止痛作用を有する生薬「山豆根」の原料に用いられている。
【0017】
本発明で使用される植物、及び生薬として次のものを挙げることができる。
【0018】
【表1】

【0019】
本発明では、前記の植物、生薬から選ばれた少なくとも一種の植物の処理物(例えば、抽出物、滲出物)が使用されうる。処理物とはこれら植物を処理したもの、例えば、乾燥裁断、抽出、滲出物採取、粉砕など、人為的手段をこれら植物に加えたものが本発明で使用されうる。生薬はこれら植物の処理物であるから、そのまま本発明の有効成分原料としてもよい。さらに抽出などの処理をして本発明の有効成分原料としてもよい。又さらに、植物の抽出の場合、抽出液のみならず抽出残渣も本発明の原料である処理物として使用しうる。
【0020】
なお、本明細書において、「滲出物」とは、植物の樹幹等から採取した滲出物だけでなく、広くこれら植物から滲出する物質を意味する。また、菌類に対する「防腐」とは、殺菌のみならず、成長抑制を含む意味に用いる。また、害虫に対する「防除」とは、殺虫又は忌避を含む意味に用いる。
【0021】
本発明の木材保存剤は、以下に説明するように、前記特定の植物又は、生薬に由来する成分を含有するので、安全性が高く、自然の生態系を破壊することがなく、防腐及び防除が高いという特色がある。
【0022】
前記抽出物は慣用の方法により得ることができる。例えば、前記植物又は生薬を、必要に応じて裁断、乾燥、粉砕などの処理を施した後、適当な抽出溶媒を用いて、常圧又は加圧下、室温又は加熱下で抽出し、必要に応じて濾過した後、濃縮することにより、前記抽出物を得ることができる。植物は一種又は二種以上混合して抽出に供することができる。
【0023】
抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−オクタノール、シクロヘキサノールなど一価アルコールのみならず例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのニ乃至多価アルコールなどのアルコール類;エチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、環状エーテル(例えば、ジオキサン、テロラヒドロフランなど)、モノ又はジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルなど)などのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン炭化水素類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタンなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類;ギ酸、酢酸などのカルボニル酸類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジンなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる.これらの溶媒は一種又は二種以上混合して用いることができる。
【0024】
これらのうち、好ましい抽出溶媒には、水、親水性溶媒及びこれらの混合物が含まれる。前記好ましい親水性溶媒には、炭素数1〜4程度の直鎖又は分岐鎖アルコール類;ジメトキシエタン、環状エーテル、モノ又はジアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどのエーテル類;アセトンなどのケトン類;ニトリル類;有機カルボン酸類;非プロトン性極性溶媒などが含まれる。
【0025】
さらに好ましい溶媒には、水;炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖アルコール、アセトンなどのケトン類等の水溶性溶媒;及びこれらの混合物が含まれる。なかでも、水、メタノール、エタノール、又はプロピレングリコールが特に好ましい。
【0026】
前記抽出溶媒の使用量は、抽出効率及び抽出操作を損なわない範囲であればよく、例えば、被抽出物100重量部に対して、50〜10000重量部、好ましくは100〜2000重量部程度である。抽出温度は、例えば0〜150℃、好ましくは10〜120℃程度である。
【0027】
本発明における前記滲出物も慣用の方法により得ることができる。例えば、クリ果皮の一部に傷を付け、樹脂などの滲出物を採取したり、植物体又はその一部を、必要に応じて熱水処理などを施した後、圧搾した採取することにより前記滲出物を得ることができる。なお、本発明においては、このように植物から分離した滲出物のみならず、植物体又はその一部から滲出する滲出物をも利用できる。例えば、破砕、乾燥などの処理を施した植物から、滲出物が滲出する場合がある。このような滲出物も、本発明における「滲出物」に含まれ、本発明の有効成分原料として使用できる。
本発明の有効成分原料としては、上記した滲出物を溶媒を用いて抽出して得られた抽出物が好ましい。特に、水抽出物、メタノール抽出物、エタノール抽出物、プロピレングリコール抽出物が好ましい。
【0028】
本発明においては、二種以上の植物同士及びその抽出物同士、あるいは滲出物同士を混合してもよく、また、処理物、抽出物及び滲出物から選択された二種以上を組み合わせて混合してもよい。前記抽出物及び滲出物は、液状であってもよく、粉末状、粒状などの固形状やペースト状などの半固形状であってもよい。前記処理物、抽出物及び滲出物には、木材害虫及び木材腐食菌に対して高い防虫、防腐作用を示す成分が含まれている。しかも、木材防虫、防腐成分は、天然物であり且つ食用、生薬などとして用いられている植物に由来するため、一般に人畜に対して安全性が高く、環境に対しても悪影響を及ぼすことが少ない。
【0029】
本発明の木材保存剤は、上記有効成分原料を含んでいる限り、その製剤の形態は特に制限されず、前記植物の処理物及びその抽出物又は滲出物そのものであってもよい。また、木材保存剤は、製剤化されていてもよい。前記製剤形態として、例えば、溶液剤、水和剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、油剤、ローションなどの液剤;粉剤、粒剤、マイクロカプセル剤、マイクロスフェア、フロアブル剤、発泡剤などの固形剤;ペースト剤、クリームなどの半固形剤;噴霧剤、エアゾール剤;塗料などが挙げられ、これらは使用目的や適用部位に応じて適宜選択できる。これらの製剤は、慣用の方法で製造できる。
【0030】
前記液体希釈剤又は担体としては、例えば、前記抽出物又は滲出物を適当な液体希釈剤又は担体を用いて希釈することにより製造できる。なお、水和剤の場合には、さらに固体希釈剤又は担体を用いてもよい。
【0031】
前記液体希釈剤又は担体としては、例えば、前記例示の抽出溶媒以外に、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;可塑剤(例えば、ジ−2−エチルヘキシルアジペートなどのエステル系可塑剤など);ケロセンなどの石油系溶剤;エチルナフタレン、フェニルキシリルエタンなどの芳香族炭化水素;2−エチルヘキシルフェニルホスフェートなどのリン酸エステルなども使用できる。これらの液体希釈剤や担体は、一種又は二種以上混合して使用できる。前記固体希釈剤又は担体としては、例えば、ケイソウ土、雲母、粘土、カオリン、タルク、石英粉末、ベントナイトなどが挙げられる。これらの固体希釈剤又は担体も、単独又は二種以上の混合物として用いることができる。
【0032】
前記固形剤は、例えば、前記抽出物又は滲出物を適当な固体希釈剤又は担体で希釈したり造粒することにより製造できる。固体希釈剤又は担体としては、前記例示の固体希釈剤以外に、滑石粉、ロウ意思粉などのタルク塁、微粉末クレイなどのクレイ類や炭酸カルシウムなどの鉱物性粉末;硫黄粉末;尿素粉末;木粉、澱粉などの植物性粉末;農薬、園芸用製剤などに繁用される各種担体が挙げられる。これらの固形希釈剤や担体は、増量剤として使用される場合も多い。固形希釈剤や担体も、一種又は二種以上混合して使用できる。
【0033】
前記エアゾール剤は、例えば、前記抽出物又は滲出物を必要に応じて適当な溶剤で希釈し、噴射剤と共に陽気に充填することにより製造できる。溶剤としては、例えば、前記例示の溶媒などが挙げられる。噴射剤としては、フロン、液化天然ガスなどが挙げられる。
【0034】
なお、木材保存剤は、製剤の種類に応じて、必要により種々の添加剤、例えば、防腐防カビ剤;酸化防止剤や紫外線吸収剤などの安定化剤;結合剤;皮膜形成能を有する樹脂;乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤;増粘剤;流動助剤;固結防止剤;凝集剤;紫外線散乱剤;水分除去剤;着色剤などを含んでいてもよい。
【0035】
前記防腐剤防カビ剤としては、例えば、3−ブロモー2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネート、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、2,3,3−トリヨードアリルアルコール、パラクロロフェニル―3−ヨードプロパルギルホルマールなどの有機ヨード系化合物;2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−チオシアノメチルチオベンゾチアゾールなどのベンズイミダゾール、2−チオシアノメチルチオベンゾチアゾールなどのベンズイミダゾール及びベンゾチアゾール系化合物;1−(2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)−1H−1,2,4−トリアゾール、1−(2−(2’,4’−ジクロロフェニル)−プロピル−1,3−ジオキソランー2−イルメチル)−1H−1,2,4−トリアゾール、α−(2−(4−クロロフェニル)エチル)−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノールなどのトリアゾール系化合物;ジンク−ビス−(2−ピリジン−チオール−1−オキシド)フタル酸亜鉛などの有機亜鉛等;4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)、ホウ砂などの天然化合物などが挙げられる。
【0036】
酸化防止剤としては、例えば、4,4’−チオビス−6−t−ブチル−3−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール(2−t−ブチル−4−メトキシフェノールと3−t−ブチル−4−メトキシフェノールの混合物)、p−オクチルフェンノール、モノ(又はジ又はトリ)−(α−メチルベンジル)フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、ペンタエリスリチル テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤;N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどのアミン系酸化防止剤;2,5−ジ(t−アミル)ヒドロキノリンなどのヒドロキノリン系酸化防止剤;ジラウリルチオジウロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが例示できる。
【0037】
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物;2−ヒドロキシー4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;サリチル酸フェニル、p−t−ブチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系化合物;2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などが挙げられる。
【0038】
皮膜形成能を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、塩素化ポリオレフィン、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂などが例示できる。
【0039】
乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、浸透剤としては、アニオン系海面活性剤、ノニオン系界面活性剤などの慣用の界面活性剤が使用できる。アニオン系界面活性剤には、例えば、金属石鹸類、硫酸アルキルナトリウムなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム[例えば、竹本油脂(株)製、商品名ニューカルゲンBX−C]などのアルキルナフタレンスルホン酸、2−スルホコハク酸ジアルキルナトリウム[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ネオコールSW−C]などの2−スルホコハク酸ジアルキル塩、ポリカルボン酸型界面活性剤[例えば、三洋化成(株)製、商品名トキサノンGR−30]、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名ディクスゾール60A]、リグニンスルゴン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムなどが例示できる。ノニオン系界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル[例えば、第一工業製薬(株)製、商品名イノゲン・イーエーー142(EA−142)]ポリオキシエチレンアリールエーテル、脂肪酸多可価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコーポリオキシエチレン、ショ糖脂肪酸エステル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体[例えば、三洋化成(株)製、商品名ニューポールPE−64]などが例示できる。
【0040】
増粘剤には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸とその塩などが例示でき、流動助剤として、PAP助剤(例えば、イソプロピルリン酸)、ワックス、ポリエチレン、脂肪酸金属塩、パラフィン、シリコーンオイルなどの有機滑剤、タルクなどの無機滑剤が例示できる。固結防止剤として、例えば、ホワイトカーボン、珪藻土、ステアリン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化チタンなどが挙げられる。凝集剤としては、例えば、流動パラフィンエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、イソブチレン重合体[例えば、出光石油化学(株)製、商品名IPソルベントー2835]などが挙げられる。紫外線散乱剤としては、二酸化チタンなどが例示できる。水分除去剤としては、無水石膏、シリカゲル粉末などの乾燥剤が挙げられる。着色剤には、例えば、有機又は無機顔料や染料が含まれる。
【0041】
本発明の木材保存剤は、他の防虫剤や害虫忌避剤、効力増強剤を含んでいてもよい。前記他の防虫剤としては、例えば、ホキシム、クロルピリホス、フェニトロチオン、ピリダフェンチオン、イソフェンホスなどの有機リン系化合物;バッサ、プロポキサーなどのカルバメート系化合物;サイフルスリン、パーメスリン、トラロメスリン、フェンパレレート、エトフェンプロックス、Hoe−498などのピレスロイド系化合物、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリドなどのネオニコチノイド系化合物、フィプロニールなどのフェニルピラゾール系化合物、ベンスルタップなどのネライストキシン系化合物、ヒバ油、ヒバ中性油、デカン酸、オクタン酸などの脂肪酸やホウ酸などの他、ニーム(特開平3−41011号公報)、モリンガ属、マラー属をはじめとした植物(特開平6−329514号公報)などが挙げられる。また、昆虫成長制御剤(IGR)として知られているルフェヌロン、ヘキサフルムロン、ジフルベンズロン、フルフェノクスロンなどのキチン合成阻害剤やメトプレン、ハイドロプレンなどの幼若ホルモン様化合物を含んでいてもよい。
【0042】
前記有効成分原料すなわち植物、生薬の処理物(例えば抽出物、当該植物の滲出物)の含有量は、木材保存剤の剤型や適用方法に応じて適宜選択することができる。液剤、半固形剤又は固形剤の場合、前記成分の濃度は木材保存剤中、前記植物、生薬の抽出物又は滲出物として、例えば0.1〜80重量%、好ましくは、0.5〜50重量%程度である。前記木材保存剤がエアゾール剤の場合、容器に充填される充填物中の前記成分の濃度は、前記植物の抽出物又は滲出物として、例えば、0.01〜25重量%、好ましくは0.05〜15%程度である。
【0043】
本発明の木材保存剤は、木材害虫、及び木材腐朽菌、特に褐色腐朽菌に適用できる。本発明に係る木材保存剤の対象となる木材害虫としては以下のようなものが挙げられる。例えばシロアリ目、コウチュウ目、ハチ目に属する昆虫が挙げられる。前記シロアリ目に属する昆虫の具体例としては、例えばヤマトシロアリ、イエシロアリ等のミゾガシラシロアリ科に属するもの、ダイコクシロアリ等のレイビシロアリ科に属するものが挙げられる。前記コウチュウ目に属する昆虫の具体例としては、ヒラタキクイムシ、ナラヒラタキクイムシ、ケヤキヒラタキクイムシ、アラゲヒラタキクイムシ等のヒラタキクイムシ科に属するもの、ケブカシバンムシ、マツザイシバンムシ、クシヒゲシバンムシ、クロノコヒゲシバンムシ、チビキノコシバンムシ等のシバンムシ料に属するもの、チビタケナガシンクイムシ、ニホンタケナガシンクイムシ、コナナガシンクイムシ、オオナガシンクイムシ等のナガシンクイムシ科に属するもの、イエカミキリ等の力ミキリムシ科に属するもの、オサゾウムシ等のオサゾウムシ科に属するもの、サクセスキクイムシ等のキクイムシ科に属するものが挙げられ、その他にタマムシ科やゾウムシ科に属するものが挙げられる。前記ハチ目に属する昆虫の具体例としては、例えばクマバチ等のコシブトハナバチ科に属するもの、ムネアカオオアリ等のアリ科に属するものが挙げられる。本発明に係る木材保存剤の対象となる木材腐朽菌としては種々の菌類、例えば、褐色腐食菌(例えば、オオウズラタケ、イドタケ、キカイガラタケ、キチリメンタケ、ナミダタケ)や白色腐朽菌(例えば力ワラタケ)などが挙げられる。本発明の木材保存剤を、害虫、特にシロアリなどの家屋害虫の防除及び、木材腐朽菌、特にオオウズラタケなどに使用すると、少量にて高い効率で防除できる。
【0044】
なお、このような効果は、前記抽出物又は滲出物を含む植物体又は生薬そのものを用いても同様に得られる.
【0045】
本発明の木材保存方法においては、害虫や木材腐朽菌の侵入源や発生源、例えば、台所、浴室、居間、床のコーナー部、床下、天井、土台、柱、壁、土壌などに前記木材害虫防除剤を適用すればよい。木材保存剤の適用方法には、害虫や木材腐朽菌の侵入源や発生源に応じた種々の態様、例えば、塗布、散布、浸漬、注入、混和、噴霧などの方法が含まれる。なお、土壌に適用する場合、土壌表面への散布、土壌に形成した溝への散布、土壌との混和などにより保存剤を適用できる。また、木材保存剤は、合成樹脂シート、紙、布などのシート状基材に、塗布、含浸、混練などにより保持させてシート剤を調整し、これを前記害虫の侵入個所や発生個所などに載置したり貼りつけたりすることによっても、有効に作用させることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
〔実施例1〕:防腐試験
クリ果皮、クリ種皮、及び市販の下記生薬100gを70%メタノール800mlで60℃で還流抽出した。抽出液を減圧下に濃縮し、乾固してエキスを得た。エキスをメタノールに溶解してエキスの10%(重量)溶液を得た。木口をエポキシ樹脂でシールした杉試験片(20×40×5mm、2方正目)に上記メタノール溶液を200mgの割合で塗布した。これを60℃で2日間乾燥して、エチレンオキシドガスで滅菌した後、培地上にオオウズラタケを接種したシャーレにこの試験片を設置した。8週間放置した後、取り出し、60℃で2日間乾燥した後、重量を測定し、重量減少率を求めた。
【0048】
〔実施例2〕:防蟻試験
クリ果皮、コーヒー豆の乾燥物、各100gを800mlのアセトンで60℃で還流抽出した。抽出液を減圧下に濃縮乾固して、エキスを得た。エキスをメタノールに溶解して20%(重量)のエキスのメタノール溶液を得た。これを12gのケイ砂に加えて撹拌し、エキスをケイ砂1%(重量)担持させ、ついで水を加えて、水分を10%(重量)含有する木材保存剤を得た。木材保存剤を全量シャーレにとり、イエシロアリ職蟻10頭を放虫して観察した。
【0049】
上記の方法で行った接触試験結果を表2、表3に示す
〔試験結果〕
【表2】

【0050】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウンカリア(Uncaria)属に属する植物又はその処理物を含有することを特徴とする木材用防腐剤。
【請求項2】
ウンカリア(Uncaria)属に属する植物の処理物がアセンヤク又はその処理物である請求項1記載の木材用防腐剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の木材用防腐剤を木材に接触させることを特徴とする木材保存方法。

【公開番号】特開2008−297306(P2008−297306A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173473(P2008−173473)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【分割の表示】特願平11−357368の分割
【原出願日】平成11年12月16日(1999.12.16)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】