説明

木材保存組成物

1種以上の以下の金属:アルミニウム(Alとして約3.8〜7.0%)、ジルコニウム(ZrOとして約5.25〜9.1%)、銅(CuOとして約0.7〜8.8%)の無機ポリマーと、酢酸または酢酸ナトリウムなどの固定剤とを含有する水性木材保存組成物を開示する。pHは、炭酸銅などの無機塩基を用いて2.0〜4.0に調整する。本発明は、本発明の組成物で処理した木材およびセルロース繊維ならびに本発明の組成物を用いた木材およびセルロース繊維の保存処理法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、環境保護上安全な金属化合物含有木材保存組成物、およびこれらの組成物を用いた木材および他のセルロース繊維処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の先行技術参考文献はそのまま本明細書に文献援用される。金属化合物含有水溶液を含む木材保存組成物は多くの用途に用いられている。木材保存液は、圧力容器での注入、開放容器での浸漬、および木材表面または他のセルロース繊維上へのはけ塗りまたは吹付け塗装を含めた様々な方法を用いて適用される。
【0003】
木材保存液中の有効成分として用いられる化合物としては、酢酸銅を含むがそれには限定されない銅化合物、クロム酸カリウムを含むがそれには限定されないクロム化合物、および亜ヒ酸を含むがそれには限定されないヒ素化合物が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。CCA(銅、クロム、ヒ素)木材保存剤は、木材を腐朽から良好に保護しているが、環境保護上安全ではない。
【0004】
銅やヒ素は抗真菌活性を有し、クロムは銅を木材に固定する働きをする。例えばアルミニウムハロ水和物(aluminum halohydrate)などのアルミニウム化合物は、CCA製剤の成分として用いるとセルロースの撥水度を向上させる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ジルコニウム錯体も、撥水性を与え、銅の抗菌作用を高めることが証明されている。例えば、特許文献3によれば、ジルコニウム錯体は、金属アミンポリマーおよび錯体に、別個の塩として添加するか、組み込むことができる。これらの錯体の浸透は、ポリマーの分子量や形状によって制限される。この製剤中の疎水性成分はこの液剤の有効性を低下させるであろう。
【0006】
ジルコニウムは木材保存組成物中のホウ酸塩の不活性固定剤としても紹介されている(例えば、特許文献4参照)。この方法は効果がないことが証明されている。一部の例では、木材保存剤に酢酸などの固定剤を添加する。これらの製剤を木材に適用すると、保存液の成分(すなわち、固定剤、金属)と木材繊維との間に一連の反応が生じる。これらの反応により、保存剤が木材に固定されて、耐浸出性が向上する。残念なことには、この方法も保存剤の浸透を減少させ、活性を低下させる。
【0007】
特許文献5〔ラフら(Raff et al.)〕は、アルミニウム系木材保存剤が他の金属を有し得ることを開示している。
特許文献6〔アムンゼンら(Amundsen et al.〕は、木造物を、特許請求の範囲に記載されている量のペンタクロロフェノールと石油炭化水素とのブレンドで処理する方法を開示している。第3カラムに開示されている組成物もジルコニウムや銅を含有するが、アルミニウムは含んでいない。
【0008】
特許文献2は、CCA製剤の成分として用いるとセルロースの撥水度を明らかに向上させるアルミニウムハロ水和物などのアルミニウム化合物を開示している。ジルコニウム錯体も撥水性を与え、銅の抗真菌作用を高めることが証明されている。
【0009】
特許文献7〔ヒル(Hill)〕は、銅およびアルミニウムと六価クロムとの混合物、さらには銅・ヒ素混合物も開示している。
特許文献8〔ターナー(Turner)〕は、例えば亜鉛などの二価金属および少なくとも1種のカルボン酸ラジカルを付加的に有し得るアルミニウム系木材保存剤を開示している。
【0010】
特許文献3〔レパブオリ(Leppabuori)〕は、ジルコニウム錯体を金属アミンポリマーおよび錯体に別個の塩として添加するか、組み込み得ると開示している。これらの錯体の浸透は、ポリマーの分子量や形状によって制限される。この製剤中の疎水性成分はこの液剤の有効性を低下させるであろう。
【0011】
特許文献9〔グローブ(Grove)〕は、少なくとも約6個の炭素原子を含み、金属が亜鉛、水銀、アンチモンおよび鉛であり得る少なくとも1種の有機カルボン酸金属塩と、少なくとも1種のイソチアゾロン化合物とを含む有機化合物系木材保存組成物を開示している。
【0012】
特許文献1は、金属化合物含有水溶液の木材保存組成物を開示している。この木材保存液は、圧力容器での注入、開放容器での浸漬、および木材表面へのはけ塗りまたは吹付け塗装を含めた様々な方法を用いて適用される。木材保存液中の有効成分として用いられる化合物としては、酢酸銅などの銅化合物、クロム酸カリウムなどのクロム化合物、および亜ヒ酸などのヒ素化合物が挙げられる。CCA(銅、クロム、ヒ素)木材保存剤は、木材を腐朽から良好に保護しているが、環境保護上安全ではない。銅やヒ素は抗真菌活性を与え、クロムは銅を木材に固定する働きをする。
【0013】
特許文献4〔シューベルトら(Schubert et al.)〕は、ジルコニウムも、木材保存組成物中のホウ酸塩の不活性固定剤として紹介されたことを開示している。一部の例では、木材保存組成物には酢酸などの固定剤が添加される。これらの製剤を木材に適用すると、保存液の成分(すなわち、固定剤、金属)と木材繊維との間に一連の反応が生じる。これらの反応により、保存剤が木材に固定されて、耐浸出性が向上する。残念なことには、この方法も保存剤の浸透を減少させ、活性を低下させる。
【0014】
特許文献10〔シンコ(Sinko)〕は、液体中にジルコニル化合物を含むコーティングの汚染を減少させる組成物、および紫外線防御を提供するランタニド化合物を開示している。クロム、銅およびアルミニウムなどの追加金属も開示されている。
【0015】
特許文献11〔ゴッツチョークら(Gottschalk et al.)〕は、銅、アルカノールアミン、シプロコナゾールおよび乳化剤を含む木材保存剤を開示している。
特許文献12〔シェルバーガーら(Schelberger et al.)〕は、アルミニウムや銅などの金属を含む木材保存剤を開示しているが、ジルコニウムは列挙されていない。特許請求の範囲では、相乗的に有効な量で存在する式Iのカルバメートと銅含有抗真菌活性化合物とを含む抗真菌組成物を論じている。
【0016】
特許文献13〔タナカら(Tanaka et al.)〕は、ジルコニウム、銅およびアルミニウムを含有する金属イオン系木材保存剤を、難燃剤としても開示している。この製剤は、さらに、金属を木材に固定させるリグニンおよび/またはリグニン誘導体を含有する。
【0017】
特許文献14〔ウエスト(West)〕は、亜鉛基材も、環境上問題を抱えている六価クロムも含まない、銅およびアルミニウムを基材とする木材保存剤を開示している。この組成物は、1:10〜10:1の硝酸アルミニウムと銅の重量比で硝酸アルミニウムを配合した水溶性酸性銅農薬を含む。
【0018】
特許文献15(ウエスト)は、アルミニウムを基材とする木材保護剤を開示しているが、木材を紫外線分解および薬剤から保護する銅またはジルコニウムは含まない。
特許文献16〔ジュエルら(Jewell el al.)〕は、セルロース繊維用の銅系殺生剤を開示しているが、アルミニウムまたはジルコニウムは開示していない。
【0019】
特許文献17〔サバッキーら(Sabacky et al)〕は、金属塩混合物の製造法を開示しているが、木材保存剤は対象としていない。
特許文献18(ジュエルら)は、木材パルプなどのセルロース繊維用の銅系殺生剤を開示しているが、アルミニウムまたはジルコニウムは開示していない。
【0020】
特許文献19(ジュエルら)は、木材パルプなどのセルロース繊維用の銅系殺生剤を開示しているが、アルミニウムまたはジルコニウムは開示していない。
特許文献20〔ホッジら(Hodge et al.)〕は、銅を基材とし、他の金属イオンも有し得る木材保存剤を開示しているが、ジルコニウムおよびアルミニウムは開示していない。
【特許文献1】米国特許第5,207,583号明細書
【特許文献2】米国特許第4,212,249号明細書
【特許文献3】米国特許第4,737,491号明細書
【特許文献4】米国特許第5,612,094号明細書
【特許文献5】米国特許第3,725,544号明細書
【特許文献6】米国特許第3,889,020号明細書
【特許文献7】米国特許第4,218,249号明細書
【特許文献8】米国特許第4,303,726号明細書
【特許文献9】米国特許第4,783,221号明細書
【特許文献10】米国特許第5,733,666号明細書
【特許文献11】米国特許第6,441,016号明細書
【特許文献12】米国特許第6,503,936号明細書
【特許文献13】米国特許第6,541,038号明細書
【特許文献14】米国特許第6,579,354号明細書
【特許文献15】米国特許第6,623,552号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2002/0007926号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2002/0071806号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2003/0041983号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2004/0055719号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2004/0258768号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、環境保護上安全な金属化合物含有木材保存組成物、およびこれらの組成物を用いた木材および他のセルロース繊維処理法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
水性木材保存組成物は、1種以上の以下の金属:アルミニウム(Alとして約3.8〜7.0%)、ジルコニウム(ZrOとして約5.25〜9.1%)、銅(CuOとして約0.7〜8.8%)の無機ポリマーと、酢酸または酢酸ナトリウムなどの固定剤とを含有する。金属は、種々の形態で供給可能であり、本明細書で特定されているものには限定されない。
【0023】
pHは、炭酸銅などの無機塩基を用いて2.0〜4.0に調整する。銅は、他の金属に結合している酸素に結合することによりアルミニウムおよびジルコニウムポリマーの構造
内に組み込まれると考えられるが、提示されたこの理論は本発明を同理論に限定しようとするものではない。pHはポリマー種の分子量範囲を決定する。
【0024】
本発明の組成物は、アルミニウム/銅ポリマーとして約1000〜2000、ジルコニウム/銅ポリマーとして約6000〜8000の分子量を保持する。低分子量のアルミニウム系ポリマーは、銅を保持しながら木材および/またはセルロース繊維に深く浸透して効果を最大限にする。高分子量のジルコニウムポリマーは、深くは浸透せず、処理木材/繊維の外層に効能および撥水性を与える。酢酸塩系固定剤は、アルミニウムおよびジルコニウムポリマー骨格を木材のセルロース繊維に結合させることにより、耐浸出性を高める働きをする。この新規ポリマー種ブレンドにより従来技術を超える改良が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、浸透度および効果を損なうことなく優れた耐浸出性を有する環境に優しい木材保存組成物を提供する。
水性木材保存組成物は、1種以上の以下の金属:アルミニウム(Alとして約3.8〜7.0%)、ジルコニウム(ZrOとして約5.25〜9.1%)、銅(CuOとして約0.7〜8.8%)の無機ポリマーと、酢酸または酢酸ナトリウムなどの固定剤とを含有する。
【0026】
pHは、炭酸銅などの無機塩基を用いて2.0〜4.0に調整する。銅は、他の金属に結合している酸素に結合することによりアルミニウムおよびジルコニウムポリマーの構造内に組み込まれると考えられる。この理論の証明または反証は、本発明の実用的価値には全く影響を与えない。pHはポリマー種の分子量範囲を決定する。
【0027】
本発明の組成物は、アルミニウム/銅ポリマーとして約1000〜2000、ジルコニウム/銅ポリマーとして約6000〜8000の分子量を有する。低分子量のアルミニウム系ポリマーは、銅を保持しながら木材に深く浸透して効果を最大限にする。高分子量のジルコニウムポリマーは、深くは浸透せず、処理木材の外層に効果および撥水性を与える。酢酸塩系固定剤は、アルミニウムおよびジルコニウムポリマー骨格を木材のセルロース繊維に結合させることにより、耐浸出性を高める働きをする。この新規ポリマー種ブレンドにより従来技術を超える改良が得られる。
【0028】
[方法の要旨]
木材保存組成物は、最終組成物中で約2.0〜6.0%の酢酸と約0.25〜1.75%の酢酸ナトリウムが得られるように酢酸と酢酸ナトリウムの水溶液を調合して調製する。溶液は完全に溶解するまで混合しなければならない。溶液は透明で僅かに黄味がかった色を有するであろう。約6000〜8000の分子量をもたらすであろうオキシ塩化ジルコニウムなどのジルコニウム塩を選択する。この塩を、酢酸塩混合物に、最終組成物中のジルコニウム濃度が酸化ジルコニウムとして約5.25〜9.1%になるように添加する。ジルコニウム塩が完全に溶解するまで溶液を混合する。溶液は透明黄色液になるであろう。次いで、最終組成物中のHCl濃度が約16〜20%になるように、HCl、好ましくはボーメ度20のHClを添加する。溶液は約60〜70℃になるが、次の工程の前に約25℃に冷却しなければならない。約1000〜2000の分子量をもたらすであろうポリ塩化アルミニウムなどのアルミニウム塩を選択する。アルミニウム塩は、最終組成物中のアルミニウム濃度が酸化アルミニウムとして約3.8〜7.0%になるように、約45℃以下の溶液温度を維持するように徐々に加える。温度が約25℃に下がるまで溶液を混ぜ続けなければならない。次いで、最終組成物中の銅濃度が酸化銅として約0.7〜8.8%になるように炭酸銅を添加する。最終溶液のpHは約2.0〜4.0にする。炭酸ガスの放出が終るまでゆっくり混ぜ続ける。溶液は透明暗緑色になるであろう。最終木材保存液は、従来技術では周知の任意の方法、例えば、直接塗布、吹付け、塗装、注入など
によって、そのまま木材に適用できる。
【実施例1】
【0029】
2000mlガラス反応器に、700グラムの水と15グラムの酢酸ナトリウムを入れる。40分間または溶液が透明になるまで混合する。50グラムの酢酸を加える。30分間混合する。420グラムのオキシ塩化ジルコニウム結晶を加える。30分間または溶液が透明になるまで混合する。溶液は、ワイアット(Wyatt)のDawn光散乱検出器で試験すると、6,000〜8,000の分子量を有するであろう。375グラムの32%HClを添加し、2時間または温度が25℃に下がるまで混合する。460グラムのポリ塩化アルミニウムを、約45℃以下の温度を維持する速度で加える。2時間混合する。溶液は約25℃に冷めるまで混合しなければならない。この溶液を光散乱分析すると、2つの異なる種を示す。一方は6,000〜8,000、他方は1,000〜2,000である。85グラムの炭酸銅を加え、すべての炭酸ガスの放出が完了するまで良くかき混ぜる。
【0030】
上記組成物を効果および保持力に関して試験した。効果の試験は、キチリメンタケ(G.trabeum)、ポスチア・プラセンタ(P.placenta)、およびカワラタケ(T.versicolor)(標準菌類)に対する12週間の処理/非処理、浸出、非侵出実験で実施した。重量の減少を測定し、産業上の期待に関して許容し得る木材保存を示すことが判明した。さらに、同組成物は、試験した全ての希釈度で優れた保持力を示した。
【0031】
[実験結果]
土壌ブロック試験は、急速な菌類生育を助ける条件下に木質材料の耐久性を評価するための比較的迅速な実験法である。以下に、選択されたアルミニウム系化合物で処理したブロックの土壌ブロック試験を説明する。
【0032】
[材料および方法]
節がなく、欠陥のないサザンパイン(テーダマツ(Pinus taeda L.))材を19mmの角材(cube)に切断した。この角材をオーブン乾燥(40℃)し、次いで、ビーカーに入れ、重みをかけた。ビーカーに試験液を充填し、次いで処理容器に入れ、30分間真空にかけた後、2時間圧力を加えた。ブロックをWT292(実施例1)で処理した。WT292は、3.2%のアルミニウムと6%のジルコニウムを含有する。処理前に、濃縮物を蒸留水で5:1、10:1または20:1希釈した。処理後、ブロックをパンから取り出し、過剰な溶液をふき取って除去し、正味の溶液吸収量を測定するために秤量した。次いで、化学物質/木材反応を促進するためにブロックを48時間不乾条件下に保管してから、40℃でオーブン乾燥し、秤量した。各処理を36個のブロックについて実施した。
【0033】
各処理グループ中半数のブロックを、AWPA(米国木材保存協会)の標準法(Standard)E−10に記載の浸出法に供し、次いで、水ですすいでから、プラスチックバッグに入れ、コバルト60源由来の2.5mradの電離放射線に暴露して滅菌した。
【0034】
腐朽チャンバ(decay chamber)は、454mlのフレンチスクエアボトル(french square)に湿った湿林ローム土を半分まで入れ、この土壌の表面にベイツガ(褐色腐朽菌用)またはレッドアルダー(白色腐朽菌用)の供給ストリップを置いて準備した。次いで、該ボトルにゆるく蓋をし、121℃で45分間オートクレーブ処理した。ボトルを一晩冷まし、次いで、あらゆる芽胞形成性細菌を死滅させるために、再び121℃で15分間オートクレーブ処理した。
【0035】
冷却後、試験菌類培養物の活発に増殖している縁部から直径2〜3mmの麦芽寒天ディスクを切り取ってボトルに接種した。これらの方法で評価した菌類は、ポスチア・プラセンタ(Postia placenta(Fr.)Larsen et Lombard)(分離株 Madison 698)、キチリメンタケ(Gloeophyllum trabeum(Pers.ex.Fr)Murr.)(分離株 Madison 617)、およびカワラタケ(Trametes versicolor(L.ex.Fr.)Pilat)(分離株R−105)であった。最初の2種は褐色腐れを起こし、後者は白腐れを起こす種である。木材の供給ストリップの端に寒天プラグを置き、次いでジャーに(換気のために)ゆるく蓋をかぶせ、供給ストリップが菌類の菌糸体で完全に覆われるまでインキュベートした。次いで、供給ストリップの表面上に、断面を下にして滅菌試験ブロックを置き、ボトルにゆるく蓋をして、褐色腐朽菌および白色腐朽菌をそれぞれ、28℃で12または16週間インキュベートした。
【0036】
インキュベーション後、ブロックを取り出し、付着している菌糸体をきれいにこすり取って、湿潤重量を測定するために秤量した。次いで、ブロックをオーブン乾燥(40℃)し、秤量した。初期および最終のオーブン乾燥重量の差を、菌類暴露効果の測度として用いた。これらの方法を用いて、合計234ブロックを試験した。
【0037】
[結果]
非処理対照の重量減少は、試験菌類に応じて20〜51%の範囲であった(表1)。白色腐朽菌で重量減少が少ないのは、この菌類が針葉木材種には攻撃性が低いので当然だが、このような重量減少でも処理の差の評価には十分であった。
【0038】
WT292で処理したブロックの重量減少は、試験菌類の処理レベルに関わらず一貫して5%未満であり、これは、ジルコニウムとアルミニウムの組み合せが有効な殺生剤であることを示唆している。ブロックからの浸出によって、重量減少にわずかな増加が生じたが、浸出があっても重量減少は7%未満であった。これらの結果は、この製剤がかなりの耐浸出性を有することを示している。
【0039】
この結果は、製剤WT−292が木材保存剤として相当な可能性を有することを明らかに示唆している。この製剤は、実験室条件下に、3種の一般的な木材腐朽菌に対して有効かつ耐浸出性であった。
【0040】
【表1】

[引用文献]
米国木材保存協会〔American Wood Preservers’Association(AWPA)〕、1999年、Standard E10−91。実験室土壌ブロック培養物による木材保存剤の標準試験法。
【0041】
[さらなる実験結果]
金属系保存剤(metal preservative)は、木材保護用として長い歴史を有するが、これらの系のうち、ある種の金属、特にヒ素やクロムの使用には問題が生じている。代替物として有機保存剤が提案されたが、これらの系のほとんどは土壌との直接の接触において十分に機能しない。1つの代替法は、他の金属の系の使用を検討することである。これまでの試験で、本発明者らは、土壌ブロック試験でジルコニウム系の有効性を評価し、いくつかの製剤が十分な保護を提供するように思われることを見出した。これらの試験で曝露されたブロック分析の結果を以下に説明する。
【0042】
[材料および方法]
以下に説明するように、木材サンプルを乾燥させ、粉砕して20メッシュスクリーンに通し、抽出した。
【0043】
木材サンプルを、以前に報告されている手順〔ガビアックら(Gaviak et al.)、1994年〕に従って、マイクロ波で蒸解し、分析した。簡単に述べれば、500mgの材料を120mlテフロン(登録商標)の蒸解容器に入れた。次いで、0.5mlの微量金属用のグレードの濃硝酸と2mlの30%過酸化水素を加えた。次いで、サンプルを30分間予備蒸解し、ふたを締め、マイクロ波を296ワットで4分間、次いで565ワットの出力で8分間照射した。蒸解サンプルを遠心分離管に移し、脱イオン水を加えて容量を15mlに調整してから、ICP分析した。
【0044】
[結果]
最初の土壌ブロック試験の重量減少は表1に示されている。これらの試験は、WT−292が3種すべての試験菌類に対して十分な活性を有することを示した。
【0045】
WT−292で処理したブロックの金属分析から、金属負荷が希釈度にほぼ比例すること、および金属が浸出処置に曝露したすべての処理においてかなり良く保持されることが示された(表2)。銅もアルミニウムも比較的耐浸出性であると思われるジルコニウムより移動しやすかった。金属の損失の割合は、溶液希釈度によって変化するようであった。銅とアルミニウムの比例的損失は、溶液濃度を低下させるにつれて減少した。この減少は、限られた数の結合部位の可用性を反映していると思われる。これらの部位が占拠されると残りの金属は浸出により損失しやすく、初期溶液濃度を低下させると、この非固定のリザーバーが減少する。例えば、5:1、10:1および20:1に希釈したWT−292で処理したブロックの全体的な銅損失は、それぞれ、非浸出レベルの39%、33%および17%であった。アルミニウムのレベルは、同じ希釈度で、それぞれ25%、31%および13%低下した。ジルコニウムは、浸出による損失に対して極めて耐性が高いようであり、希釈レベルによる損失の変化はなかった。
【0046】
WT−292処理ブロックには金属移動が認められたが、この系は良好な活性を示した。
【0047】
【表2】

上記説明は、さらに詳述しなくても本発明を十分に説明しているので、本発明者以外の人も、現在および将来の知識を用いることにより、本発明を種々の使用条件下での使用に適合させ得るであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、ジルコニウム、銅を含む無機ポリマーおよび固定剤の水溶液を含んでなり、水溶液が約2.0〜4.0の範囲のpHを有する木材保存組成物。
【請求項2】
アルミニウムが、組成物中にAlとして約3.8〜7.0%存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ジルコニウムが、組成物中にZrOとして約5.25〜9.1%存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
銅が、組成物中にCuOとして約0.7〜8.8%存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
アルミニウムが組成物中にAlとして約3.8〜7.0%存在し、ジルコニウムが組成物中にZrOとして約5.25〜9.1%存在し、銅が組成物中にCuOとして約0.7〜8.8%存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約1000〜2000の分子量のアルミニウム/銅ポリマーを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約6000〜8000の分子量のジルコニウム/銅ポリマーを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約1000〜2000の分子量のアルミニウム/銅ポリマーと、約6000〜8000の分子量のジルコニウム/銅ポリマーとを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
固定剤が、酢酸、酢酸ナトリウムまたはそれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
固定剤が、酢酸、酢酸ナトリウムまたはそれらの混合物である、請求項5に記載の組成物。
【請求項11】
固定剤が、酢酸、酢酸ナトリウムまたはそれらの混合物である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
pHが無機塩基を用いて調整される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
無機塩基が炭酸銅である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の木材保存組成物の製造法であって、
(a) 固定剤水溶液を調製する工程、
(b) ジルコニウム塩を該溶液に溶解させる工程、
(c) 該溶液のpHを約2.0〜約4.0に調整する工程、
(d) 必要であれば、該溶液を冷却する工程、
(e) アルミニウム塩を該溶液に溶解させる工程、
(f) 銅塩を該溶液に溶解させる工程、および
(g) 必要であれば、さらに該溶液のpHを約2.0〜約4.0に調整する工程
を含んでなる方法。
【請求項15】
木材を保存処理する方法であって、
(a) 請求項1に記載の木材保存剤の水性懸濁液を調製する工程、
(b) 少なくともいくつかの開放気孔領域を有する木材を用意する工程、および
(c) 木材に懸濁液を適用する工程
を含んでなる方法。
【請求項16】
木材に懸濁液を適用する工程が、懸濁液を木材に注入することにより達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
木材に懸濁液を適用する工程が、懸濁液に木材を浸漬することにより達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
木材に懸濁液を適用する工程が、木材上に懸濁液をはけ塗りすることにより達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
木材に懸濁液を適用する工程が、木材上に懸濁液を吹き付けることにより達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を含浸させた木材。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を含浸させた木材。
【請求項22】
有効量の請求項1に記載の組成物で処理したセルロース繊維を含んでなる耐分解性繊維状セルロース製品。
【請求項23】
請求項1に記載の木材保存剤の水性懸濁液を調製する工程と、懸濁液を木材に適用する工程とを含んでなる耐分解性セルロース繊維の製造法。
【請求項24】
適用する工程が、懸濁液を木材に、吹付け、注入、はけ塗り、または浸漬することにより達成される、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2008−506554(P2008−506554A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521457(P2007−521457)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/014686
【国際公開番号】WO2006/019442
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507012191)サマービル アクィジションズ カンパニー インコーポレイテッド ディ.ビー.エイ.サミット リサーチ ラブス (1)
【氏名又は名称原語表記】SOMERVILLE ACQUISITIONS COMPANY,INC. D.B.A. SUMMIT RESEARCH LABS
【Fターム(参考)】