説明

木材保護剤

【課題】本発明の課題は、木材腐朽菌に対して高い効果を有する木材保護剤を提供することである。
【解決手段】次式(1)で表わされる化合物を有効成分とする木材保護剤は、
【化1】


(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のアニリノ基又は炭素数1〜4のモノもしくはジアルキルアミノ基を表し、nは、1〜2の整数を表す。)
木材腐朽菌であるカワラタケ、オオウズラタケに対して高い殺菌効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレングリコール誘導体を有効成分として含有することを特徴とする木材保護剤に関するものである。
【0002】
エチレングリコール誘導体は特許文献1において、農園芸用の有害生物防除活性が、又、特許文献2において、屋内ダニ活性が記述されている。しかしながら、木材保護剤の性能に求められる木材腐朽菌、カワラタケ(Trametes versicolor)やオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)等に対する殺菌活性については記載されていない。
【0003】
木材保護剤としてはフェノール系、有機ヨード系、ベンズイミダゾール系、トリアゾール系、ニトリル系、四級アンモニウム塩系、チオシアネート系などの化合物が知られているが、特にトリアゾール系の化合物が担子菌類である前記木材腐朽菌に対して効力をもつものとして知られている。しかしながら、十分な活性とは言えない。
【特許文献1】特開2001−64238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、木材腐朽菌に対して高い効果を有する木材保護剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するために検討した結果、エチレングリコール誘導体が木材腐朽菌に対して顕著な殺菌活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は、次式(1)で表わされる化合物を有効成分とする木材保護剤に関する。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のアニリノ基又は炭素数1〜4のモノもしくはジアルキルアミノ基を表し、nは、1〜2の整数を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の木材保護殺菌剤は、木材腐朽菌であるカワラタケ、オオウズラタケに対して高い殺菌効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
前記の(1)式で表わされる化合物(1)の置換基Rとしては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のアニリノ基又は炭素数1〜4のモノもしくはジアルキルアミノ基を表わす。
【0011】
ここで、炭素数1〜7のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基(これら置換基は、その異性体を含む。)が挙げられるが、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ヘプチル基が好ましい。
【0012】
炭素数1〜4のハロアルキル基としては、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基、クロロブチル基(これら置換基は、その異性体を含む。)が挙げられるが、クロロメチル基、3−クロロプロピル基が好ましい。
【0013】
置換もしくは非置換のフェニル基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(メチル基など)、アルコキシ基(メトキシ基など)、ハロアルコキシ基(トリフルオロメトキシ基など)で置換されても良いフェニル基が挙げられるが、非置換のフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−メチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基が好ましい。
【0014】
置換もしくは非置換のアニリノ基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)で置換されても良いフェニル基が挙げられるが、非置換のアニリノ基、3−クロロアニリノ基、4−クロロアニリノ基が好ましい。
【0015】
炭素数1〜4のモノもしくはジアルキルアミノ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基(これら置換基は、その異性体を含む。)で置換されたアミノ基が挙げられるが、ジエチルアミノ基、モノ−n−ブチルアミノ基が好ましい。
【0016】
nは1〜2の整数である。
【0017】
化合物(1)としては、前記の各種の置換基を組み合わせたものを挙げることができるが、薬効の面から好ましい組み合わせは、次の通りである。
(1)Rがメチル基、エチル基、i−プロピル基、n−ヘプチル基であり、nが1又は2
である化合物(1)。
(2)Rがクロロメチル基、3−クロロプロピル基であり、nが1又は2である化合物(
1)。
(3)Rが非置換のフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基であり、
nが1又は2である化合物(1)。
(4)Rが、4−メチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基であり、nが2
である化合物(1)。
(5)Rが非置換のアニリノ基、3−クロロアニリノ基、4−クロロアニリノ基であり、
nが1又は2である化合物(1)。
(6)Rがジエチルアミノ基、モノ−n−ブチルアミノ基であり、nが1又は2である化
合物(1)。
【0018】
本発明の化合物(1)の使用は、特定の製剤に限定されるものでない。更に、本発明の化合物は単独で使用することもでき、或いは他の薬剤と混合して使用することもできる。他の薬剤としては、先に例示した木材保護剤を挙げることができ、また、殺虫剤として、合成ピレスロイド、カーバメート系、ネオニコチノイド系などを挙げることができる。これらを適宜配合して用いることで、より高性能の木材保護剤を提供できる。
【0019】
本発明の化合物(1)は特許文献1に記載の方法で合成することができる。
【0020】
第1表に本発明の式(1)で表わされる化合物(1)に含まれる化合物を例示する。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
〔防除効果〕
本発明の化合物(1)で殺菌効果が認められる木材腐朽菌としては、例えば、カワラタケ(Trametes versicola)やオオウズラタケ(Fomitopsis palustris)等の担子菌類を挙げることができる。
【0024】
〔木材保護殺菌剤〕
本発明の木材保護剤は、化合物(1)の1種以上を有効成分として含有するものである。化合物(1)は単独で使用することもできるが、通常は常法によって、担体、界面活性剤、分散剤、補助剤などを配合して使用することが好ましい。
【0025】
担体としては、例えば、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土,ホワイトカーボン、バーミキュライト、消石灰、ケイ砂、硫安、尿素などの固体担体や、炭化水素(ケロシン、鉱油など)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、塩素化炭化水素(クロロホルム、四塩化炭素など)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ケトン類(アセトン、シクロヘキサノン、イソホロンなど)、エステル類(酢酸エチル、エチレングリコールアセテート、マレイン酸ジブチルなど)、アルコール類(メタノール、n−ヘキサノール、エチレングリコールなど)、極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなど)、水などの液体担体や、空気、窒素、炭酸ガス、フレオンなどの気体担体などを挙げることができる。
【0026】
本発明の木材保護剤の木材への付着、吸収の向上、分散、乳化、展着などの性能を向上させるために使用できる界面活性剤及び分散剤としては、例えば、アルコール硫 酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレングリコールエーテルなどを挙げることができる。
更に、その製剤の性状を改善するために、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、アラビアゴムなどを補助剤として用いることができる。
【0027】
本発明の木材保護剤の製造では、前記の担体,界面活性剤,分散剤及び補助剤をそれぞれの目的に応じて、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明の木材保護剤中の有効成分である化合物(1)の濃度は、乳剤では通常1〜50重量%、粉剤では通常0.3〜25重量%、水和剤では通常1〜90重量%、粒剤では通常0.5〜5重量%、油剤では通常0.5〜5重量%、エアゾールでは通常0.001〜5重量%である。
【0029】
これらの製剤はそれぞれの目的に応じて適切な濃度に希釈して、例えば噴霧、コーティング、燻煙、吹付け、或いは含浸法(例えば浸漬、浸透、加圧、真空および二重真空法)によって施用することができる。
【0030】
更に、本発明の木材保護剤は、他の有害生物防除剤と混合して使用することもできる。
有害生物防除剤としては、フェノール系、有機ヨード系、ベンズイミダゾール系、トリアゾール系、ニトリル系、四級アンモニウム塩系、チオシアネート系などの木材保護剤や、合成ピレスロイド、カーバメート系、ネオニコチノイド系などの殺虫剤などを挙げることができる。
【0031】
フェノール系木材保護剤としては、トリブロモフェノール、p−ブロム−2,5−ジクロロフェノール、p−(2−フェニル−イソプロピル)フェノール(p−クミルフェノール)などが挙げられる。
【0032】
有機ヨード系木材保護剤としては、4−クロロフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール(IF−1000)、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボネート(「サンプラス」)、3−ヨード−2−プロペニルブチルカルバメート(IPBC、「トロイサン」)などが挙げられる。
【0033】
ベンズイミダゾール系木材保護剤としては、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール(「TBZ」)などが挙げられる。
【0034】
トリアゾール系木材保護剤としては、2−(4−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−1−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−ジオール(「シプロコナゾール」)、1−(p−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−3−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)メチルペンタン−3−オール(「テブコナゾール」)などが挙げられる。
【0035】
ニトリル系木材保護剤としては、テトラクロロイソフタロニトリルなどが挙げられる。
四級アンモニウム塩系としては、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられる。
【0036】
チオシアネート系木材保護剤としては、メチレンビスチオシアネート(「MBT」)で代表されるアルキレンビス(チオシアネート)類が挙げられる。
【0037】
合成ピレスロイドとしては、2−(p−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3−フェノキシベンジルエーテル(「エトフェンプロックス」)などが挙げられる。
【0038】
カーバメート系殺虫剤としては、カルバリル、メソミル、カーボフラン、カルボスルファンなどが挙げられる。
【0039】
ネオニコチノイド系殺虫剤としては、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリドなどが挙げられる。
【0040】
なお、これらの木材保護剤又は殺虫剤の本発明の木材保護剤に対する混合比は、特に限定されない。
【0041】
本発明の木材保護剤が適用される木材は樹種などを問わず。形態、形状、大きさ、長さ、厚さも限定されない。例えば、外壁、玄関回り、ベランダ、板塀などの屋外用木材、浴室、洗面所回りなどの屋内水回り用木材などに適用される。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を参考例及び実施例によって具体的に説明する。なお、これらの参考例及び実施例は、本発明を限定するものではない。
【0043】
実施例1〔効力試験〕
表1に示した化合物の各々のジメチルスルホキサイド溶液(0.05ml)を濃度20 ppmになるようポテトデキストローズ寒天培地(以下、PDA培地と略す)(10ml)に混入させ平板培地を作成した。
【0044】
予めPDA培地に生育させたカワラタケ(Trametes versicola、農業生物資源研究所MAFF420002)とオオウズラタケ(Tryomyces palustris、NBRC30339)の菌叢をメスで約1mm四方に切り取り、上記の薬剤入り平板培地へ接種した。25℃、暗黒下で培養した。
5日後、菌叢の直径を測定して、無処理区の菌叢直径と比較して阻害率を算出した。
【0045】
〔効果の判定〕
算出した阻害率から以下の基準で効果を判定した。
100% A
80〜99% B
60〜79% C
40〜59% D
40%未満 E
【0046】
カワラタケとオオウズラタケに対する効力試験、及び効力評価は、上記の効力試験、及び効力評価に準じて行った。結果を第3表に示す。
【0047】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表わされる化合物を有効成分とする木材保護剤。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のアニリノ基又は炭素数1〜4のモノもしくはジアルキルアミノ基を表し、nは、1〜2の整数を表す。)

【公開番号】特開2006−89404(P2006−89404A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276512(P2004−276512)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】