木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法
【課題】木製の板状部材を圧縮して曲げて製造する木製の履物用天板を提供するものである。
【解決手段】木製の履物用天板1であって、履物用天板1は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向いているものである。
【解決手段】木製の履物用天板1であって、履物用天板1は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向いているものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法に係り、特に、木製の板状部材を圧縮して曲げて形成する木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、履物としては、たとえば、スライス樹木中敷を用いたスリッパがある(例えば、特許文献1参照)。
これは、スライス樹木、可撓性面材、底部を順次積層したスリッパであり、前記スライス樹木の厚みは、0.1乃至0.5mm程度が好ましいとされ、木地の感触を味合うことができる。
【特許文献1】実用新案登録第3022714号(段落番号[0006][0007][図2])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の履物にあっては、木地の感触は味わえても、木の硬さの感触は味わえず、木の硬さの感触をも味合わせるためには、厚みを厚くしなければならず、例えば、3mm以上にすると、割れ易いという新たな問題点が生じた。
また、割れを防ぐには、厚みのある木を足の形状に合うように削ることにより対応も可能であるが、厚みのある木を削ることは、コスト、手間等がかかるという問題点も生じた。
【0004】
本発明は、上記の問題点を除去するようにした木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の木製の履物用天板は、木製の履物用天板であって、前記履物用天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いているものである。
【0006】
また、請求項2記載の履物は、木製の天板と、この木製の天板の下に設けられたクッション性を有する底部材とを備えた履物であって、前記木製の天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いているものである。
【0007】
また、請求項3記載の履物は、請求項2記載の履物において、天板は、厚みTを有する木製の板状部材を厚みt(t<T)になるように全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、足の踵に対応する前記天板の垂直方向の厚みはtであり、足の踵に対応する前記天板の垂下位置にある底部材の垂直方向の厚みはH(H<t)であり、つま先に対応する天板の垂下の位置にある底部材の部位は、水平な設置面に対して離間しているものである。
【0008】
また、請求項4記載の木製の履物用天板の製造方法は、平面視矩形形状の木製の板状部材を蒸気により加熱する加熱工程と、この加熱工程で加熱された前記板状部材を下型に載せ、この下型に載せた前記板状部材を全体に亘って押圧する昇降自在な上型により押圧して、前記板状部材の足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように曲げる圧縮曲げ工程と、この圧縮曲げ工程の後、前記板状部材の外周をカットして木製の履物用天板の形状にするカット工程とを備えているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の木製の履物用天板によれば、履物用天板は、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように、板状部材を圧縮して曲げられたものであるため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物用天板を得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、履物用天板は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し、曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物用天板を得ることができる。
【0010】
また、請求項2記載の履物によれば、木製の天板は、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように、板状部材を圧縮して曲げられたものであるため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物を得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、木製の天板は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物を得ることができる。
【0011】
また、請求項4記載の木製の履物用天板の製造方法によれば、加熱工程で加熱された板状部材を下型に載せ、この下型に載せた前記板状部材を全体に亘って押圧する昇降自在な上型により押圧して、前記板状部材の足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように曲げる圧縮曲げ工程と、この圧縮曲げ工程の後、前記板状部材の外周をカットして履物用天板の形状にするカット工程により、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように、板状部材を圧縮して曲げられた履物用天板を得ることができる。
その結果、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物用天板を得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、履物用天板は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し、曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、強度的にも強く、割れ防止を図った履物用天板を得ることができる。
【0012】
本発明の木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法の一実施例を図面を参照して説明する。
図1乃至図4において、Fは、木製の天板(木製の履物用天板)1と、この天板1の下に設けられたクッション性を有する底部材2とを備えた履物である。3は、足の甲を覆う甲皮である。
なお、甲皮3の代わりに、図5に示すように、鼻緒4を用いるようにしても良い。また、天板1の下に設けられた底部材2は、単層構造となっているが、図示しないが、底部材2を複数の層で形成するようにしても良い。
【0013】
木製の天板1の材質は、例えば、檜、杉等の針葉樹でも良く、また、ブナ等の広葉樹でも良い。木製の天板1は、後述するように、板状板材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向いているようになっている。
【0014】
そのため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物Fを得ることができ 、しかも、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に 、木製の天板1は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く 、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物Fを得ることができる。
【0015】
上述した木製の天板1は、次のようにして作ることができる。
即ち、図6、図7、図10及び図14に示す平面視矩形形状の木製の板状部材1’(例えば、縦240mm、横85mm、厚み10mm)を蒸気により加熱する[例えば、真空蒸煮釜5により加熱する(加熱工程)]。
なお、図6に示す真空蒸煮釜5は、真空にした釜内に100℃以上の過熱蒸気を供給して加熱するもので、本実施例の木製の天板1では、檜の場合、約2〜5分程度加熱して、板状部材1’の形状を変形し易くするようにする。
【0016】
加熱工程で加熱された板状部材1’を図7に示すように、下型7に載せ、この下型7に載せた板状部材1’を全体に亘って押圧する昇降自在な上型8により押圧して、下型7と上型8で形成される間隙形状により、板状部材1’の足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くように、例えば、図7及び図11に示すプレス機Pを使って曲げる(圧縮曲げ工程)。
かかる場合、下型7及び上型8を下型加熱部7’及び上型加熱部8’で加熱して、圧縮曲げ工程中において、圧縮曲げと同時に板状部材1’を乾燥させるようにしている。
下型加熱部7’及び上型加熱部8’は、蒸気を通過するパイプ7a、8aを介して加熱するようにしている。
また、下型7(図8及び図9参照)及び上型8は、図7に示すように、金属板71、81を並設して、金属棒72、82にナット73、83を螺合させて強固に保持して形成している。なお、74は、並設した金属板71の上面形状に沿った薄板(材質は、例えば 、ステンレス)、75は、下型7に置かれた板状部材1’の位置決め部材である。また、84は、並設した金属板81の下面形状に沿った薄板(材質は、例えば、ステンレス)である。圧縮曲げ工程において得られる板状部材1’は、図15に示すものであり、圧縮曲げ工程の後、図15に示す板状部材1’の外周を図示しない、例えば、ルーターによりカットして木製の履物用天板1(図16参照)の形状にする(カット工程)。
その後、木製の履物用天板1の外表面を塗装(例えば、ウレタン塗装)して、木製の履物用天板1が空気中の水分を吸収しないようにしている。
【0017】
なお、天板1は、図12に示す厚みT(例えば、10mm)を有する木製の板状部材1’を図13に示す厚みt(例えば、6.5mm t<T)になるように圧縮して曲げられている。また、足の踵に対応する天板1の垂直方向の厚みはtであり、足の踵に対応する天板1の垂下位置にある底部材2の垂直方向の厚みはH(例えば、15mm H<t)である。
従って、木製の天板1は、足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くように、板状部材1’を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物Fを得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、木製の天板1は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物Fを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施例の履物の概略的斜視図である。
【図2】図2は、図1の2−2線による概略的断面図である。
【図3】図3は、図1の3−3線による概略的断面図である。
【図4】図4は、図1の履物を分解して示す概略的分解斜視図である。
【図5】図5は、図1の履物と異なる他の実施例の履物の概略的斜視図である。
【図6】図6は、図1の履物を製造する一過程である加熱工程の概略的説明図である。
【図7】図7は、圧縮曲げ工程を示す概略的斜視図である。
【図8】図8は、図7の圧縮曲げ工程に使用される下型の組み込み状態を示す概略的斜視図である。
【図9】図9は、図8の下型の組み込みが完了した状態を示す概略的斜視図である。
【図10】図10は、圧縮曲げ工程の圧縮前の状態を示す概略的断面図である。
【図11】図11は、圧縮曲げ工程の圧縮状態を示す概略的断面図である。
【図12】図12は、圧縮曲げ工程の圧縮前の状態を示す概略的側面図である。
【図13】図13は、圧縮曲げ工程の圧縮後の状態を示す概略的側面図である。
【図14】図14は、圧縮曲げ工程の圧縮前の状態の板状部材の概略的斜視図である。
【図15】図15は、圧縮曲げ工程の圧縮後の状態の板状部材の概略的斜視図である。
【図16】図16は、圧縮曲げ工程の後、カット工程により板状部材の外周をカットした状態の木製の履物用天板の概略的斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 履物用天板
1a 足の土踏まずに対応する部位
1b 足のつま先に対応する部位
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法に係り、特に、木製の板状部材を圧縮して曲げて形成する木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、履物としては、たとえば、スライス樹木中敷を用いたスリッパがある(例えば、特許文献1参照)。
これは、スライス樹木、可撓性面材、底部を順次積層したスリッパであり、前記スライス樹木の厚みは、0.1乃至0.5mm程度が好ましいとされ、木地の感触を味合うことができる。
【特許文献1】実用新案登録第3022714号(段落番号[0006][0007][図2])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の履物にあっては、木地の感触は味わえても、木の硬さの感触は味わえず、木の硬さの感触をも味合わせるためには、厚みを厚くしなければならず、例えば、3mm以上にすると、割れ易いという新たな問題点が生じた。
また、割れを防ぐには、厚みのある木を足の形状に合うように削ることにより対応も可能であるが、厚みのある木を削ることは、コスト、手間等がかかるという問題点も生じた。
【0004】
本発明は、上記の問題点を除去するようにした木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の木製の履物用天板は、木製の履物用天板であって、前記履物用天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いているものである。
【0006】
また、請求項2記載の履物は、木製の天板と、この木製の天板の下に設けられたクッション性を有する底部材とを備えた履物であって、前記木製の天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いているものである。
【0007】
また、請求項3記載の履物は、請求項2記載の履物において、天板は、厚みTを有する木製の板状部材を厚みt(t<T)になるように全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、足の踵に対応する前記天板の垂直方向の厚みはtであり、足の踵に対応する前記天板の垂下位置にある底部材の垂直方向の厚みはH(H<t)であり、つま先に対応する天板の垂下の位置にある底部材の部位は、水平な設置面に対して離間しているものである。
【0008】
また、請求項4記載の木製の履物用天板の製造方法は、平面視矩形形状の木製の板状部材を蒸気により加熱する加熱工程と、この加熱工程で加熱された前記板状部材を下型に載せ、この下型に載せた前記板状部材を全体に亘って押圧する昇降自在な上型により押圧して、前記板状部材の足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように曲げる圧縮曲げ工程と、この圧縮曲げ工程の後、前記板状部材の外周をカットして木製の履物用天板の形状にするカット工程とを備えているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の木製の履物用天板によれば、履物用天板は、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように、板状部材を圧縮して曲げられたものであるため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物用天板を得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、履物用天板は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し、曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物用天板を得ることができる。
【0010】
また、請求項2記載の履物によれば、木製の天板は、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように、板状部材を圧縮して曲げられたものであるため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物を得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、木製の天板は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物を得ることができる。
【0011】
また、請求項4記載の木製の履物用天板の製造方法によれば、加熱工程で加熱された板状部材を下型に載せ、この下型に載せた前記板状部材を全体に亘って押圧する昇降自在な上型により押圧して、前記板状部材の足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように曲げる圧縮曲げ工程と、この圧縮曲げ工程の後、前記板状部材の外周をカットして履物用天板の形状にするカット工程により、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように、板状部材を圧縮して曲げられた履物用天板を得ることができる。
その結果、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物用天板を得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、履物用天板は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し、曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、強度的にも強く、割れ防止を図った履物用天板を得ることができる。
【0012】
本発明の木製の履物用天板、履物及び木製の履物用天板の製造方法の一実施例を図面を参照して説明する。
図1乃至図4において、Fは、木製の天板(木製の履物用天板)1と、この天板1の下に設けられたクッション性を有する底部材2とを備えた履物である。3は、足の甲を覆う甲皮である。
なお、甲皮3の代わりに、図5に示すように、鼻緒4を用いるようにしても良い。また、天板1の下に設けられた底部材2は、単層構造となっているが、図示しないが、底部材2を複数の層で形成するようにしても良い。
【0013】
木製の天板1の材質は、例えば、檜、杉等の針葉樹でも良く、また、ブナ等の広葉樹でも良い。木製の天板1は、後述するように、板状板材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、該曲げは、足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向いているようになっている。
【0014】
そのため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物Fを得ることができ 、しかも、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に 、木製の天板1は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く 、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物Fを得ることができる。
【0015】
上述した木製の天板1は、次のようにして作ることができる。
即ち、図6、図7、図10及び図14に示す平面視矩形形状の木製の板状部材1’(例えば、縦240mm、横85mm、厚み10mm)を蒸気により加熱する[例えば、真空蒸煮釜5により加熱する(加熱工程)]。
なお、図6に示す真空蒸煮釜5は、真空にした釜内に100℃以上の過熱蒸気を供給して加熱するもので、本実施例の木製の天板1では、檜の場合、約2〜5分程度加熱して、板状部材1’の形状を変形し易くするようにする。
【0016】
加熱工程で加熱された板状部材1’を図7に示すように、下型7に載せ、この下型7に載せた板状部材1’を全体に亘って押圧する昇降自在な上型8により押圧して、下型7と上型8で形成される間隙形状により、板状部材1’の足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くように、例えば、図7及び図11に示すプレス機Pを使って曲げる(圧縮曲げ工程)。
かかる場合、下型7及び上型8を下型加熱部7’及び上型加熱部8’で加熱して、圧縮曲げ工程中において、圧縮曲げと同時に板状部材1’を乾燥させるようにしている。
下型加熱部7’及び上型加熱部8’は、蒸気を通過するパイプ7a、8aを介して加熱するようにしている。
また、下型7(図8及び図9参照)及び上型8は、図7に示すように、金属板71、81を並設して、金属棒72、82にナット73、83を螺合させて強固に保持して形成している。なお、74は、並設した金属板71の上面形状に沿った薄板(材質は、例えば 、ステンレス)、75は、下型7に置かれた板状部材1’の位置決め部材である。また、84は、並設した金属板81の下面形状に沿った薄板(材質は、例えば、ステンレス)である。圧縮曲げ工程において得られる板状部材1’は、図15に示すものであり、圧縮曲げ工程の後、図15に示す板状部材1’の外周を図示しない、例えば、ルーターによりカットして木製の履物用天板1(図16参照)の形状にする(カット工程)。
その後、木製の履物用天板1の外表面を塗装(例えば、ウレタン塗装)して、木製の履物用天板1が空気中の水分を吸収しないようにしている。
【0017】
なお、天板1は、図12に示す厚みT(例えば、10mm)を有する木製の板状部材1’を図13に示す厚みt(例えば、6.5mm t<T)になるように圧縮して曲げられている。また、足の踵に対応する天板1の垂直方向の厚みはtであり、足の踵に対応する天板1の垂下位置にある底部材2の垂直方向の厚みはH(例えば、15mm H<t)である。
従って、木製の天板1は、足の土踏まずに対応する部位1aからつま先に対応する部位1bにかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くように、板状部材1’を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、従来のように、木を削らないで足にフィットする履物Fを得ることができ、しかも、足のつま先に対応する部位1bが斜め上方を向くようになって、歩き易く、更に、木製の天板1は、厚みが薄い板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであるため、厚みが厚い板状部材に比較し曲げ易いと共に圧縮している分、強度的にも強く、木の硬さの感触を味合うことができる共に、割れ防止を図った履物Fを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施例の履物の概略的斜視図である。
【図2】図2は、図1の2−2線による概略的断面図である。
【図3】図3は、図1の3−3線による概略的断面図である。
【図4】図4は、図1の履物を分解して示す概略的分解斜視図である。
【図5】図5は、図1の履物と異なる他の実施例の履物の概略的斜視図である。
【図6】図6は、図1の履物を製造する一過程である加熱工程の概略的説明図である。
【図7】図7は、圧縮曲げ工程を示す概略的斜視図である。
【図8】図8は、図7の圧縮曲げ工程に使用される下型の組み込み状態を示す概略的斜視図である。
【図9】図9は、図8の下型の組み込みが完了した状態を示す概略的斜視図である。
【図10】図10は、圧縮曲げ工程の圧縮前の状態を示す概略的断面図である。
【図11】図11は、圧縮曲げ工程の圧縮状態を示す概略的断面図である。
【図12】図12は、圧縮曲げ工程の圧縮前の状態を示す概略的側面図である。
【図13】図13は、圧縮曲げ工程の圧縮後の状態を示す概略的側面図である。
【図14】図14は、圧縮曲げ工程の圧縮前の状態の板状部材の概略的斜視図である。
【図15】図15は、圧縮曲げ工程の圧縮後の状態の板状部材の概略的斜視図である。
【図16】図16は、圧縮曲げ工程の後、カット工程により板状部材の外周をカットした状態の木製の履物用天板の概略的斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 履物用天板
1a 足の土踏まずに対応する部位
1b 足のつま先に対応する部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の履物用天板であって、
前記履物用天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、
該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いている
ことを特徴とする木製の履物用天板。
【請求項2】
木製の天板と、この木製の天板の下に設けられたクッション性を有する底部材とを備えた履物であって、
前記木製の天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、
該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いている
ことを特徴とする履物。
【請求項3】
天板は、厚みTを有する木製の板状部材を厚みt(t<T)になるように全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、
足の踵に対応する前記天板の垂直方向の厚みはtであり、足の踵に対応する前記天板の垂下位置にある底部材の垂直方向の厚みはH(H<t)であり、
つま先に対応する天板の垂下の位置にある底部材の部位は、水平な設置面に対して離間していることを特徴とする請求項2記載の履物。
【請求項4】
平面視矩形形状の木製の板状部材を蒸気により加熱する加熱工程と、
この加熱工程で加熱された前記板状部材を下型に載せ、この下型に載せた前記板状部材を全体に亘って押圧する昇降自在な上型により押圧して、前記板状部材の足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように曲げる圧縮曲げ工程と、
この圧縮曲げ工程の後、前記板状部材の外周をカットして木製の履物用天板の形状にするカット工程と、
を備えていることを特徴とする木製の履物用天板の製造方法。
【請求項1】
木製の履物用天板であって、
前記履物用天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、
該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いている
ことを特徴とする木製の履物用天板。
【請求項2】
木製の天板と、この木製の天板の下に設けられたクッション性を有する底部材とを備えた履物であって、
前記木製の天板は、板状部材を全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、
該曲げは、足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向いている
ことを特徴とする履物。
【請求項3】
天板は、厚みTを有する木製の板状部材を厚みt(t<T)になるように全体に亘って圧縮して曲げられたものであり、
足の踵に対応する前記天板の垂直方向の厚みはtであり、足の踵に対応する前記天板の垂下位置にある底部材の垂直方向の厚みはH(H<t)であり、
つま先に対応する天板の垂下の位置にある底部材の部位は、水平な設置面に対して離間していることを特徴とする請求項2記載の履物。
【請求項4】
平面視矩形形状の木製の板状部材を蒸気により加熱する加熱工程と、
この加熱工程で加熱された前記板状部材を下型に載せ、この下型に載せた前記板状部材を全体に亘って押圧する昇降自在な上型により押圧して、前記板状部材の足の土踏まずに対応する部位からつま先に対応する部位にかけて下方に凸となるように湾曲し、足のつま先に対応する部位が斜め上方を向くように曲げる圧縮曲げ工程と、
この圧縮曲げ工程の後、前記板状部材の外周をカットして木製の履物用天板の形状にするカット工程と、
を備えていることを特徴とする木製の履物用天板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−195661(P2007−195661A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16132(P2006−16132)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(593010095)株式会社水鳥工業 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(593010095)株式会社水鳥工業 (1)
【Fターム(参考)】
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