木製ダボパネル
【課題】わが国の木材を原料とした構造用面材の開発や実用化に至っている製品は少ない。前述のごとく、わが国の木材を有効利用していくことが、わが国の林業を盛んにしていく基盤となるものである。そこで、本発明者は、わが国の木材を原料とする床構面や耐力壁に利用できる構造用面材の開発を行ってきた。その結果、中目丸太から製材したスギ厚板と木ダボを用いることにより接着剤を使用することなく構造用面材としての機能を有することが分かり、この構造用面材の利用を発明の主題とするものである。
【解決手段】ダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ木板材の複数を、接着剤を使用することなく、ダボを用いて接合し一定寸法の面材としたことを特徴とするダボパネルであり、耐力壁だけでなく床、屋根等に使用するものである。
【解決手段】ダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ木板材の複数を、接着剤を使用することなく、ダボを用いて接合し一定寸法の面材としたことを特徴とするダボパネルであり、耐力壁だけでなく床、屋根等に使用するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の木板を木製ダボを用いて接合したダボパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本特許出願人が居住する天竜川流域は、金原明善で知られるわが国でも有数の人工美林地帯であり、天竜美林とも呼ばれている。そこでは、良質のヒノキやスギが生産されている。しかし安価で輸入される外国材により、わが国の林業は危機に瀕し、林業従事者も減少している。森林は水源涵養、土壌保全、地球温暖化防止等の公益的機能を有しているが、林業従事者が減少し間伐作業が思わしく行われないため、こうした森林の公益的機能が失われていく恐れがあり、いわゆる線香林となった山も見られるほどである。わが国の林業を盛んにし森林の持つ公益的機能を維持するために、わが国の木材を使用し、人工美林を維持するための費用に還元していくことが課題である。
【0003】
木造住宅では、従来の柱や梁といった軸組で支える木造軸組構法に対し、フレーム状に組まれた木材に構造用合板を打ち付けた壁や床(面材)で支える木造枠組壁構法は、1970年代から建築されるようになった。木造枠組壁構法は枠組壁構法とも呼ばれ、また一般には英語名によって2×4工法(ツーバイフォー工法)と呼びならわされることも多い。しかし、構造用合板等の面材の多くは輸入製品であり、合板を製造時には接着剤を用いている。最近ではVOC等の居住環境問題より製造時に接着剤等の化学物質使用を抑制した建材のニーズが高まっている。
【0004】
一方、わが国の木材を原料とした構造用面材の開発や実用化に至っている例は少ない。前述のごとく、わが国の木材を有効利用していくことが、わが国の林業を盛んにしていく基盤となるものである。そこで、本発明者は、わが国の木材を原料とする床構面や耐力壁に利用できる構造用面材の開発を行ってきた。その結果、中目丸太から製材したスギ厚板と木ダボを用いることにより接着剤を使用することなく構造用面材としての機能を有することが分かり、この構造用面材の利用を発明の主題とするものである。
【0005】
ダボとは、木材どうしをつなぎ合わせる際に使用する棒状のもので、つなぎ合わせる木材にダボと同じ大きさの穴いわゆるダボ穴をあけダボを差し込んで接合するものである。ダボを差し込むとき木工用接着剤を併用するのが一般的である。
【0006】
ダボを使用した先行技術としては以下のようなものがある。木材としての土台と柱の接合面に斜め方向に連通するダボ孔を穿設し木ダボを挿入し接合面を補強するものである。接着剤を併用することもでき、土台や梁または桁等の下部横架材等の補強も可能とするもの(特許文献1)、金物を一切用いることなく木造軸組の耐震性を確保するため、柱頭部に十字状の溝を形成しそこに二方向の頭貫を落とし込んで嵌入し、貫間を力板により塞ぎ、各力板と貫との間に木製のダボを挿入する方法(特許文献2)がある。また対向する複数の主柱間に配設された複数の柱間を挟持した状態で二重落とし込み板を配し、二重落とし込み板の長手端面側を主柱に当接させた状態で使用するとともに、相隣接する落とし込み板間にダボを配設して接続した木造耐力壁(特許文献3)がある。
【0007】
【特許文献1】特願2004-263548
【特許文献2】特願2000-248640
【特許文献3】特願2006-28805
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明と近似している先行技術としては特許文献3に係わる発明(以下特許文献3発明とする。)がある。特許文献3発明では、二重落とし込み板による木造耐力壁が主たる発明であり、この落とし込み板をダボで接合している。しかし、本願発明では、一定寸法のダボパネルを耐力壁だけでなく床や屋根に用いるものである。すなわち、ダボのみを使用し、接着剤を使用することなく、耐力壁、床、屋根に利用できる構造用面材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ木板の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネルである。
【0010】
図1及び図2に板材1、ダボ21、ダボ穴22を示す。ダボ穴22は、木製ダボ21の径及び長さにあわせて、板材1の長手方向断面11の中央部に等間隔で穿孔される。ダボ穴22の長さは、ダボ21の約1/2よりやや長くしている。また、板材1の厚さによりダボ21の径は決められる。板材1の厚さに較べ、ダボ21の径が大きいと、板材1にクラックが生ずるためである。板材のダボ穴にダボを打ち込み、ダボをその長さの半分を長手方向断面11に突出させ、次の板材のダボ穴に挿入して板材を接合していく。この作業を繰り返して所定の大きさの面材としたものをダボパネル2とする。木材を板材に加工し、さらにダボパネル2として工場より出荷するものである。
【0011】
請求項2の発明は、長手方向断面の一方の中央部に凸部を、他の一方の長手方向断面の中央部に凹部を形成させ、この凸部、凹部にダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ板材の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネルである。
【0012】
図1に示すように、接合強度を上げるため、板材1の長手方向断面の一方を凸部13とし、他の一方を凹部14として、凸部13と凹部14を嵌合させて接合させていく方法は一般的に使用されている図1の(2)は、角型の凸凹であり、(3)は半円形の凸凹である。板材の断面の一方を凸状とし、他の一方を凹状として加工することを断面加工とし、断面加工された板材を断面加工板材とする。断面加工された板材の断面にダボ穴22を穿孔し、上記と同様、このダボ穴22にダボ21を打ち込み、ダボ21をその長さの半分を長手方向断面11に突出させ、次の板材1のダボ穴に挿入して板材を接合していき面材としてのダボパネルとする。ダボと凸凹による接合により面材としての強度をより上げることができる。なお、断面加工の有無を問わず、ダボにより接合され面材としたものをダボパネルとする。
【0013】
請求項3の発明は、厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmの板材7枚を接合し面材として、厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネルである。
【0014】
厚さ、幅、長さの各寸法の許容差は構造用集成材の日本農林規格に準ずるものとし、また含水率の変化により、この許容差の基準値を超える場合もある。(以下寸法に付いては同様の許容差があるものとする。)厚板の仕上げ断面寸法は、製材歩留まりや乾燥処理の効率性及び他製品採材の点から幅130mm、厚さ29mmが適当と考えられたためである。厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmの板材7枚を接合し面材とし、厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmのいわゆる3尺×6尺を基本の広さとするものである。
【0015】
請求項4の発明は、厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネルである。
【0016】
板材の材料をスギとしたのは、以下のような実験結果を得たからである。すなわち、スギ厚板の1ヶ月間の天然乾燥後におけるスギ厚板の含水率とヤング係数は、図6のようになった。なお、厚板の仕上げ断面寸法については上記のとおりである。なお、図6のスギ厚板2ロット(各100枚)の全乾燥含水率は、平均値がほぼ本出願人の居所である静岡県の平衡含水率15%〜16%(変動係数9%から12%)と同じであった。こうした結果より厚板材としてスギを採用したものである。またスギはヒノキより価格が安いことも考慮された。
【0017】
木製ダボの寸法を直径9mm、長さ50mmとしたのは、図7に示すように試験結果から採用したものである。試験方法は木製ダボのタイプを変えてせん断試験を行ったものであり、試験方法を図8に示す。
【0018】
請求項5の発明は、長手方向断面の一方の中央部の凸部を高さ10mm、幅11mmとし、他の一方の長手方向断面の中央部の凹部を深さ10.5mm、11.5mmとする断面加工した厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとしたダボパネルである。
【0019】
各寸法の許容差は前述の通りである。長手方向断面に角型の凸凹の断面加工をしたものであり、図3(1)に示す。凸部および凹部の寸法は、製材の歩留まり及び各試験結果より定めたものである。また断面加工した板材3枚を接合したものを図3(2)に示す。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した床部位、壁部位、屋根部位である。
【0021】
ここで部位とは、建物全体の中で、その部分の占める位置をいい、ダボパネルは床、壁、屋根に使用することができるため、ダボパネルを使用した床部位、壁部位、屋根部位を権利範囲とするものである。屋根部位としては、野地板、下地板等に使用される
【0022】
図4に床部位に使用される例を図5に壁部位に使用される例を示す。ダボパネルは釘またはビスにより大引きや間柱に付けられる。多くの釘やビスを打つことで強度が上がり、板倉工法に比べても耐震性が向上する。
【0023】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した建築物である。
【0024】
ダボパネルは木造住宅に限らず、鉄骨系の住宅等各種の建物に使用されるものである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明は、接着剤を使用することなく木ダボを用いて複数枚の板材を接合し面材とすることにより、接着剤に含まれるホルムアルデヒド等の有機溶剤についての居住環境問題から開放される。さらに木ダボによる接合であっても構造用合板と同程度の床倍率や壁倍率を維持することができ、国内産木材の使用を促進させることになる。
【0026】
請求項2の発明は、断面加工された板材と木ダボを併用することにより、板材の接合強度が向上する。
【0027】
請求項3の発明では、製材歩留まりや乾燥処理の効率性から、板材の寸法を限定したものであり、試験結果より得られた情報を反映させたものである。そして寸法が限定された板材7枚を接合して面材としてのダボパネルとしたものであり、これを基準にダボパネルとして生産される。
【0028】
請求項4の発明は、天然乾燥後の含水率等の試験結果から板材をスギに限定したものである。またせん断試験の結果より、木ダボの寸法を限定したものである。
【0029】
請求項5の発明は、板材の断面加工の寸法を限定したものである。これまでの試行により、強度が維持できかつ板材にクラックが生じない数値としたものである。
【0030】
請求項6及び請求項7の発明は、ダボパネルの用途が広いため、その保護範囲を明確にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施例を挙げる。
【実施例1】
【0032】
スギ板ダボパネルを用いた床組の面内せん断試験結果を以下に示す。
【0033】
試験体を構成する軸組部材の柱、間柱、梁ともに人口乾燥処理したスギ材である。ダボパネルは、請求項5の仕様によるものであり、軸組の柱芯心間の距離は1920mm、上下梁間距離は2800mmとした。軸体接合後にダボパネルを150mm間隔でN75釘打ちした。試験体のサイズは1間でありダボパネルを3枚使用し、試験体の数は3体である。
試験方法は国土交通省住宅局木材住宅振興室編「木造軸組工法住宅の各部要素の試験方法と評価方法に準じて行った。加力方法は、正負交番繰り返し加力とし、繰り返しは、見かけのせん断変形角が、1/600、1/450、1/300、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50の正負変形時に行った。
【0034】
試験結果を図10から図13の表−1、表−2、表−3、表−4に示す。表-1と表−2は、各せん断変形角時の荷重値を示す。表中の見掛けのせん断変形及び真のせん断変形角は次式による。
γ1=(H1−H2)/H γ1:見掛けのせん断変形 H:H1とH2の距離(2800mm) H1:頂部水平方向変位 H2:脚部水平方向変位
γ2=(V4−V3)/B γ2:脚部の回転角(rad) B:V3とV4の距離(910mm) V3:供試体反加力側脚部の上下方向の変位 V4:供試体加力側脚部の上下方向の変位
γ3=γ1−γ2 γ3:真のせん断変形角表-3に面内せん断試験結果を、表4に短期許容せん断耐力とを示す。
【0035】
上記各試験結果よりダボパネルを構造用合板と比較すると図14に示されるようになり、本ダボパネルと構造用合板と同等の性能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
構造用合板を直接打ち付けた耐力壁と筋交いを使った耐力壁を比較すると、前者の方が耐震性を向上させるための剛性、粘り強さ、方向性に優れ、かつ断熱材の収まり、気密性がよい。また、構造用合板を直接打ち付けた耐力床と火打ちを使用した耐力床を比較しても同様なことが言える。構造用合板に較べ、スギ板材を使用した場合には、木の芳香も建屋内にあり、居住環境を向上させてくれる。住宅の耐震性の高度化が必要であり、本発明のダボパネルも構造用合板の代わりとして多くの利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】板材と断面加工図
【図2】ダボ、ダボ穴及びダボパネル
【図3】角型凸凹部とした断面加工図とその接合
【図4】床部位
【図5】壁部位
【図6】スギ厚板の天乾後の含水率
【図7】木ダボ強度・剛性試験結果
【図8】木ダボ試験装置
【図9】ダボパネルの組立図
【図10】見掛けのせん断変形角時の荷重試験結果
【図11】真のせん断変形角時の荷重結果
【図12】床組パネルの面内せん断試験結果
【図13】短期許容せん断耐力と床倍率の算定
【図14】耐力壁と床組の構造性能
【符号の説明】
【0038】
1 板材 11 長手方向断面 12 幅方向断面 13 凸部 14 凹部
2 ダボパネル 21 ダボ 22 ダボ穴
3 床部位 31 根太 32 大引き 33 柱
4 壁部位 41 主柱 42 間柱 43 梁 45 土台
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の木板を木製ダボを用いて接合したダボパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本特許出願人が居住する天竜川流域は、金原明善で知られるわが国でも有数の人工美林地帯であり、天竜美林とも呼ばれている。そこでは、良質のヒノキやスギが生産されている。しかし安価で輸入される外国材により、わが国の林業は危機に瀕し、林業従事者も減少している。森林は水源涵養、土壌保全、地球温暖化防止等の公益的機能を有しているが、林業従事者が減少し間伐作業が思わしく行われないため、こうした森林の公益的機能が失われていく恐れがあり、いわゆる線香林となった山も見られるほどである。わが国の林業を盛んにし森林の持つ公益的機能を維持するために、わが国の木材を使用し、人工美林を維持するための費用に還元していくことが課題である。
【0003】
木造住宅では、従来の柱や梁といった軸組で支える木造軸組構法に対し、フレーム状に組まれた木材に構造用合板を打ち付けた壁や床(面材)で支える木造枠組壁構法は、1970年代から建築されるようになった。木造枠組壁構法は枠組壁構法とも呼ばれ、また一般には英語名によって2×4工法(ツーバイフォー工法)と呼びならわされることも多い。しかし、構造用合板等の面材の多くは輸入製品であり、合板を製造時には接着剤を用いている。最近ではVOC等の居住環境問題より製造時に接着剤等の化学物質使用を抑制した建材のニーズが高まっている。
【0004】
一方、わが国の木材を原料とした構造用面材の開発や実用化に至っている例は少ない。前述のごとく、わが国の木材を有効利用していくことが、わが国の林業を盛んにしていく基盤となるものである。そこで、本発明者は、わが国の木材を原料とする床構面や耐力壁に利用できる構造用面材の開発を行ってきた。その結果、中目丸太から製材したスギ厚板と木ダボを用いることにより接着剤を使用することなく構造用面材としての機能を有することが分かり、この構造用面材の利用を発明の主題とするものである。
【0005】
ダボとは、木材どうしをつなぎ合わせる際に使用する棒状のもので、つなぎ合わせる木材にダボと同じ大きさの穴いわゆるダボ穴をあけダボを差し込んで接合するものである。ダボを差し込むとき木工用接着剤を併用するのが一般的である。
【0006】
ダボを使用した先行技術としては以下のようなものがある。木材としての土台と柱の接合面に斜め方向に連通するダボ孔を穿設し木ダボを挿入し接合面を補強するものである。接着剤を併用することもでき、土台や梁または桁等の下部横架材等の補強も可能とするもの(特許文献1)、金物を一切用いることなく木造軸組の耐震性を確保するため、柱頭部に十字状の溝を形成しそこに二方向の頭貫を落とし込んで嵌入し、貫間を力板により塞ぎ、各力板と貫との間に木製のダボを挿入する方法(特許文献2)がある。また対向する複数の主柱間に配設された複数の柱間を挟持した状態で二重落とし込み板を配し、二重落とし込み板の長手端面側を主柱に当接させた状態で使用するとともに、相隣接する落とし込み板間にダボを配設して接続した木造耐力壁(特許文献3)がある。
【0007】
【特許文献1】特願2004-263548
【特許文献2】特願2000-248640
【特許文献3】特願2006-28805
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明と近似している先行技術としては特許文献3に係わる発明(以下特許文献3発明とする。)がある。特許文献3発明では、二重落とし込み板による木造耐力壁が主たる発明であり、この落とし込み板をダボで接合している。しかし、本願発明では、一定寸法のダボパネルを耐力壁だけでなく床や屋根に用いるものである。すなわち、ダボのみを使用し、接着剤を使用することなく、耐力壁、床、屋根に利用できる構造用面材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、ダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ木板の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネルである。
【0010】
図1及び図2に板材1、ダボ21、ダボ穴22を示す。ダボ穴22は、木製ダボ21の径及び長さにあわせて、板材1の長手方向断面11の中央部に等間隔で穿孔される。ダボ穴22の長さは、ダボ21の約1/2よりやや長くしている。また、板材1の厚さによりダボ21の径は決められる。板材1の厚さに較べ、ダボ21の径が大きいと、板材1にクラックが生ずるためである。板材のダボ穴にダボを打ち込み、ダボをその長さの半分を長手方向断面11に突出させ、次の板材のダボ穴に挿入して板材を接合していく。この作業を繰り返して所定の大きさの面材としたものをダボパネル2とする。木材を板材に加工し、さらにダボパネル2として工場より出荷するものである。
【0011】
請求項2の発明は、長手方向断面の一方の中央部に凸部を、他の一方の長手方向断面の中央部に凹部を形成させ、この凸部、凹部にダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ板材の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネルである。
【0012】
図1に示すように、接合強度を上げるため、板材1の長手方向断面の一方を凸部13とし、他の一方を凹部14として、凸部13と凹部14を嵌合させて接合させていく方法は一般的に使用されている図1の(2)は、角型の凸凹であり、(3)は半円形の凸凹である。板材の断面の一方を凸状とし、他の一方を凹状として加工することを断面加工とし、断面加工された板材を断面加工板材とする。断面加工された板材の断面にダボ穴22を穿孔し、上記と同様、このダボ穴22にダボ21を打ち込み、ダボ21をその長さの半分を長手方向断面11に突出させ、次の板材1のダボ穴に挿入して板材を接合していき面材としてのダボパネルとする。ダボと凸凹による接合により面材としての強度をより上げることができる。なお、断面加工の有無を問わず、ダボにより接合され面材としたものをダボパネルとする。
【0013】
請求項3の発明は、厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmの板材7枚を接合し面材として、厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネルである。
【0014】
厚さ、幅、長さの各寸法の許容差は構造用集成材の日本農林規格に準ずるものとし、また含水率の変化により、この許容差の基準値を超える場合もある。(以下寸法に付いては同様の許容差があるものとする。)厚板の仕上げ断面寸法は、製材歩留まりや乾燥処理の効率性及び他製品採材の点から幅130mm、厚さ29mmが適当と考えられたためである。厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmの板材7枚を接合し面材とし、厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmのいわゆる3尺×6尺を基本の広さとするものである。
【0015】
請求項4の発明は、厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネルである。
【0016】
板材の材料をスギとしたのは、以下のような実験結果を得たからである。すなわち、スギ厚板の1ヶ月間の天然乾燥後におけるスギ厚板の含水率とヤング係数は、図6のようになった。なお、厚板の仕上げ断面寸法については上記のとおりである。なお、図6のスギ厚板2ロット(各100枚)の全乾燥含水率は、平均値がほぼ本出願人の居所である静岡県の平衡含水率15%〜16%(変動係数9%から12%)と同じであった。こうした結果より厚板材としてスギを採用したものである。またスギはヒノキより価格が安いことも考慮された。
【0017】
木製ダボの寸法を直径9mm、長さ50mmとしたのは、図7に示すように試験結果から採用したものである。試験方法は木製ダボのタイプを変えてせん断試験を行ったものであり、試験方法を図8に示す。
【0018】
請求項5の発明は、長手方向断面の一方の中央部の凸部を高さ10mm、幅11mmとし、他の一方の長手方向断面の中央部の凹部を深さ10.5mm、11.5mmとする断面加工した厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとしたダボパネルである。
【0019】
各寸法の許容差は前述の通りである。長手方向断面に角型の凸凹の断面加工をしたものであり、図3(1)に示す。凸部および凹部の寸法は、製材の歩留まり及び各試験結果より定めたものである。また断面加工した板材3枚を接合したものを図3(2)に示す。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した床部位、壁部位、屋根部位である。
【0021】
ここで部位とは、建物全体の中で、その部分の占める位置をいい、ダボパネルは床、壁、屋根に使用することができるため、ダボパネルを使用した床部位、壁部位、屋根部位を権利範囲とするものである。屋根部位としては、野地板、下地板等に使用される
【0022】
図4に床部位に使用される例を図5に壁部位に使用される例を示す。ダボパネルは釘またはビスにより大引きや間柱に付けられる。多くの釘やビスを打つことで強度が上がり、板倉工法に比べても耐震性が向上する。
【0023】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した建築物である。
【0024】
ダボパネルは木造住宅に限らず、鉄骨系の住宅等各種の建物に使用されるものである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明は、接着剤を使用することなく木ダボを用いて複数枚の板材を接合し面材とすることにより、接着剤に含まれるホルムアルデヒド等の有機溶剤についての居住環境問題から開放される。さらに木ダボによる接合であっても構造用合板と同程度の床倍率や壁倍率を維持することができ、国内産木材の使用を促進させることになる。
【0026】
請求項2の発明は、断面加工された板材と木ダボを併用することにより、板材の接合強度が向上する。
【0027】
請求項3の発明では、製材歩留まりや乾燥処理の効率性から、板材の寸法を限定したものであり、試験結果より得られた情報を反映させたものである。そして寸法が限定された板材7枚を接合して面材としてのダボパネルとしたものであり、これを基準にダボパネルとして生産される。
【0028】
請求項4の発明は、天然乾燥後の含水率等の試験結果から板材をスギに限定したものである。またせん断試験の結果より、木ダボの寸法を限定したものである。
【0029】
請求項5の発明は、板材の断面加工の寸法を限定したものである。これまでの試行により、強度が維持できかつ板材にクラックが生じない数値としたものである。
【0030】
請求項6及び請求項7の発明は、ダボパネルの用途が広いため、その保護範囲を明確にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施例を挙げる。
【実施例1】
【0032】
スギ板ダボパネルを用いた床組の面内せん断試験結果を以下に示す。
【0033】
試験体を構成する軸組部材の柱、間柱、梁ともに人口乾燥処理したスギ材である。ダボパネルは、請求項5の仕様によるものであり、軸組の柱芯心間の距離は1920mm、上下梁間距離は2800mmとした。軸体接合後にダボパネルを150mm間隔でN75釘打ちした。試験体のサイズは1間でありダボパネルを3枚使用し、試験体の数は3体である。
試験方法は国土交通省住宅局木材住宅振興室編「木造軸組工法住宅の各部要素の試験方法と評価方法に準じて行った。加力方法は、正負交番繰り返し加力とし、繰り返しは、見かけのせん断変形角が、1/600、1/450、1/300、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50の正負変形時に行った。
【0034】
試験結果を図10から図13の表−1、表−2、表−3、表−4に示す。表-1と表−2は、各せん断変形角時の荷重値を示す。表中の見掛けのせん断変形及び真のせん断変形角は次式による。
γ1=(H1−H2)/H γ1:見掛けのせん断変形 H:H1とH2の距離(2800mm) H1:頂部水平方向変位 H2:脚部水平方向変位
γ2=(V4−V3)/B γ2:脚部の回転角(rad) B:V3とV4の距離(910mm) V3:供試体反加力側脚部の上下方向の変位 V4:供試体加力側脚部の上下方向の変位
γ3=γ1−γ2 γ3:真のせん断変形角表-3に面内せん断試験結果を、表4に短期許容せん断耐力とを示す。
【0035】
上記各試験結果よりダボパネルを構造用合板と比較すると図14に示されるようになり、本ダボパネルと構造用合板と同等の性能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
構造用合板を直接打ち付けた耐力壁と筋交いを使った耐力壁を比較すると、前者の方が耐震性を向上させるための剛性、粘り強さ、方向性に優れ、かつ断熱材の収まり、気密性がよい。また、構造用合板を直接打ち付けた耐力床と火打ちを使用した耐力床を比較しても同様なことが言える。構造用合板に較べ、スギ板材を使用した場合には、木の芳香も建屋内にあり、居住環境を向上させてくれる。住宅の耐震性の高度化が必要であり、本発明のダボパネルも構造用合板の代わりとして多くの利用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】板材と断面加工図
【図2】ダボ、ダボ穴及びダボパネル
【図3】角型凸凹部とした断面加工図とその接合
【図4】床部位
【図5】壁部位
【図6】スギ厚板の天乾後の含水率
【図7】木ダボ強度・剛性試験結果
【図8】木ダボ試験装置
【図9】ダボパネルの組立図
【図10】見掛けのせん断変形角時の荷重試験結果
【図11】真のせん断変形角時の荷重結果
【図12】床組パネルの面内せん断試験結果
【図13】短期許容せん断耐力と床倍率の算定
【図14】耐力壁と床組の構造性能
【符号の説明】
【0038】
1 板材 11 長手方向断面 12 幅方向断面 13 凸部 14 凹部
2 ダボパネル 21 ダボ 22 ダボ穴
3 床部位 31 根太 32 大引き 33 柱
4 壁部位 41 主柱 42 間柱 43 梁 45 土台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ板材の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネル。
【請求項2】
長手方向断面の一方の中央部に凸部を、他の一方の長手方向断面の中央部に凹部を形成させ、この凸部、凹部にダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ板材の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネル。
【請求項3】
厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmの板材7枚を接合し面材として、厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネル。
【請求項4】
厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネル。
【請求項5】
長手方向断面の一方の中央部の凸部を高さ10mm、幅11mmとし、他の一方の長手方向断面の中央部の凹部を深さ10.5mm、11.5mmとする断面加工した厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとしたダボパネル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した床部位、壁部位、屋根部位。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した建築物。
【請求項1】
ダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ板材の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネル。
【請求項2】
長手方向断面の一方の中央部に凸部を、他の一方の長手方向断面の中央部に凹部を形成させ、この凸部、凹部にダボ穴加工した厚さ、幅、長さが同じ板材の複数を、接着剤を使用することなく、木製ダボを用いて接合し面材とすることを特徴とするダボパネル。
【請求項3】
厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmの板材7枚を接合し面材として、厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネル。
【請求項4】
厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとした請求項1または請求項2のダボパネル。
【請求項5】
長手方向断面の一方の中央部の凸部を高さ10mm、幅11mmとし、他の一方の長手方向断面の中央部の凹部を深さ10.5mm、11.5mmとする断面加工した厚さ29mm、幅130mm、長さ1820mmのスギ板材7枚の各長手方向断面に150mmの間隔でダボ穴加工し、これに直径9mm長さ50mmの木製ダボを用いて接合し、面材とした厚さ29mm、幅910mm、長さ1820mmとしたダボパネル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した床部位、壁部位、屋根部位。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のダボパネルを使用した建築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図6】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−234171(P2009−234171A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85966(P2008−85966)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(507413594)株式會社 フジイチ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(507413594)株式會社 フジイチ (1)
【Fターム(参考)】
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