説明

木製可動ルーバ

【課題】可動翼の交換やメンテナンスを容易に行える木製可動ルーバを提供する。
【解決手段】多数の可動翼4と、縦框1a,1b間で各可動翼を水平軸回転自在に軸支する軸部5とを備えており、少なくともいずれかの縦框は、内周側部Pに間隔をあけて多数の軸受孔10が設けてあるとともに、外周側が開放して内部に軸受孔と連通した凹部9を有するほぼコ字型をなしており、凹部には、縦框の長手方向に沿って伝達ラック6が配置してある。可動翼は、一方側端に軸部が差し込まれる被差込係止部15を有するとともに、他方側端には他方の縦框に差し込む他方軸部16を有しており、軸部は、軸棒5cを縦框の凹部側から軸受孔に挿通したとき、可動翼の被差込係止部に差し込まれる差込係止部5aと、伝達ラックに噛合して軸棒と同軸回転する歯車5bとを有しており、伝達ラックは、凹部内を上下動して歯車の回転することで各可動翼の傾斜角度を同期調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に差し込む日差しや照明による光線の照射を調整するルーバ機能を有する建具、その中でも特に天然木を用いた木製可動ルーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内建具は近年、安価で大量生産が可能なアルミ製が主流となっていたが、温暖化による環境対策やストレスの増加等の各種社会環境の変化によって、学校等の公共施設で鉄筋建造物から木造建造物への建て替えが進んでいる。また、ユーザーの意識も前述の状況から変化しており、天然木を適用した木製建具に回帰する傾向にある。その中でも特に、採光や採風の機能を有するとともに、使用者の好みの状態に調節できる木製可動ルーバが注目を集めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2007−23760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木製可動ルーバが構造的に有する問題点として、木製の可動翼が日よって変形すること、また、傷や破損などの外的な影響を受けやすいことから、一般的なアルミ製の可動ルーバに比べて可動翼のメンテナンスをこまめに行う必要があった。ところが、従来の木製可動ルーバにあっては、可動翼の可動ユニットを框内に内蔵する構造であるから、框の強度を保つために補強材や框間の接合具などが雑多に組み込まれて分解のしにくい構造となっており、可動翼の交換やメンテナンスを行うことが容易ではなく、専門的知識を有する業者などに頼るケースがほとんどであった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、可動翼の交換やメンテナンスを容易に行える木製可動ルーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、上下框と、左右の縦框と、縦框間に略平行に配置する多数の可動翼と、左右の縦框間で各可動翼を水平軸回転自在に軸支する軸部とを備えており、左右の縦框の少なくともいずれかの縦框は、内周側に間隔をあけて多数の軸受孔が設けてあるとともに、外周側が開放して内部に軸受孔と連通した凹部を有するほぼコ字型をなしており、凹部には、縦框の長手方向に沿って伝達ラックが配置してあり、可動翼は、一方側端に軸部が差し込まれる被差込係止部を有するとともに、他方側端には他方の縦框に差し込む他方軸部を有しており、軸部は、軸棒を縦框の凹部側から軸受孔に挿通したとき、可動翼の被差込係止部に差し込まれる差込係止部と、伝達ラックに噛合して軸棒と同軸回転する歯車とを有しており、伝達ラックは、凹部内を上下動して歯車の回転により各可動翼の傾斜角度を同期調節し、縦框の外周側部には、凹部の開放側を開放または閉塞する蓋を有していることを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項2記載の発明は、上下框と、左右の縦框と、上下框間に略平行に配置する多数の可動翼と、上下框間で各可動翼を垂直軸回転自在に軸支する軸部とを備えており、上下框の少なくともいずれかの框は、框内周側に間隔をあけて多数の軸受孔が設けてあるとともに、外周側が開放して内部に軸受孔と連通した凹部を有するほぼコ字型をなしており、凹部には、框の長手方向に沿って伝達ラックが配置してあり、可動翼は、上下の一方端に軸部が差し込まれる被差込係止部を有するとともに、上下の他方端には他方の框に差し込む他方軸部を有しており、軸部は、軸棒を框の凹部側から軸受孔に挿通したとき、可動翼の被差込係止部に差し込まれる差込係止部と、伝達ラックに噛合して同軸回転する歯車とを有しており、伝達ラックは、凹部内を左右動して歯車を回転することで各可動翼の傾斜角度を同期調節し、軸部を有する側の框の外周側部には、凹部の開放側を開放または閉塞する蓋を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項3記載の発明は、伝達ラックを内部に有する框には、框の見付け面から出没して伝達ラックを歯車側に押す押圧部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1記載の発明によれば、縦框の外周側部から蓋を外せば、各可動翼の可動手段である軸部やラック等が広く露出するので、縦框の開放側から容易に取り外せてメンテナンスや部品交換が簡単になる。さらに、縦枠外側から各可動翼の可動手段の構成部品の組み込みが行えるため、従来に比べて木製可動ルーバの組み立てが飛躍的に容易なものとなる。
【0009】
本発明の請求項2記載の発明によれば、可動翼を上下框間に配置するタイプの木製可動
ルーバにおいても、框外周部側の蓋を外すことで簡単にメンテナンスや可動翼の交換が行えるようになる。
【0010】
本発明の請求項3記載の発明によれば、框の見付け面または外側見込み面から押圧部が出没し、押圧部を押し込んだときにはラックをほぼ水平方向に押し込まれるので、軸部の歯車との噛み合いが強くなる。これにより、経年使用による可動翼の緩みが生じても上述の調整を行えばラックの上下動により確実に軸部が回転し、木製可動ルーバを安定的に長期使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、本実施による木製可動ルーバの縦框のみを縦断面した正面図であり、(b)は、A−A線横断面図である。
【図2】本実施による木製可動ルーバにおける可動翼の作動状態を説明する簡略化した斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、本実施による木製可動ルーバの作動状態を示す側面から見た縦断面図である。
【図4】縦框の外周側から歯車を取り付ける手順と、取り外す手順を示す縦框のみを縦断面した正面図である。
【図5】縦框から蓋を取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】押圧部材の出没の度合いによるラックと軸部の歯車との噛合状態の相違を説明する側面から見た縦断面図である。
【図7】本発明の木製可動ルーバの他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施による木製可動ルーバの実施の形態を図面に基づいて説明する。
木製可動ルーバは、図1(a)のように、木製の上框2と下框3と左右の縦框1a,1bとを框組みし、さらに、上下に等間隔に複数の木製の可動翼4が軸部5により水平軸回転可能に軸支してあり、図1(b)のように、各軸部5の縦框(図中右側の框)1a内に突入する側の端部にはそれぞれに歯車5bを有し、縦框1aの正面側見付け面に設けてある操作部8を上げ下げすることにより、図2のように各可動翼4が同期してそれぞれ水平軸回転するように形成してある。
【0013】
上記のように各可動翼を可動させる具体的な構造について図1(b)のように、まず縦框1aは、外周側を開放するかたちで上下に連続する凹部9が設けてあり、この凹部9の内周側には、間隔をあけて縦框1aの内周側面まで貫通する軸受孔10が複数設けてある。また、凹部9には、凹部9内周側に沿ってコ字型をなす硬質樹脂性の補強部材11が取り付けてあり、この補強部材11についても縦框1aの各軸受孔10と一致する位置に補強軸受孔12が設けてある。そして、補強部材11のコ字の内周側の正面側には、上下方向に延びる伝達ラック6が固定されない状態で配置してある。また、可動翼4の軸部5は、軸棒5cの長手方向一端側が断面ほぼ矩形状をなす差込係止部5aが設けてあり、可動翼4の側端面に差し込んだときに、可動翼4の被差込係止部15と係止することで回転力を伝達できる構造となっている。さらに、軸部5の他端側には水平軸回転する歯車5bが設けてあり、軸部5を上記した軸受孔10及び補強軸受孔12に差し込んだときに、伝達ラック6と噛み合うようになっており、この伝達ラック6が凹部9内を上下動することで、各可動翼4の回転角度を同期調節するものとなっている。
【0014】
また、上記した伝達ラック6の上下動については、縦框1aの正面側に備える操作部8との連動により行われる。具体的には図3に示すように、操作部8は、縦長矩形状をなすスライド板8aの正面側中間部にほぼ水平に突出する凸状のツマミ8bを有するものである(図1(b)参照)。また、スライド板8aの縦框1aの凹部9と面する側には、上下に長い伝達ラック6が離脱不能に接着固定してあり、この伝達ラック6は、各軸部5に亘って上下に延びて配置してあり、それぞれの軸部5の歯車5bと噛み合っている(図1(a)参照)。これにより、例えば図3(b)のように、操作部8のツマミ8bを図3(a)の中間位置に位置する状態から上側にスライドすれば、この操作部8のスライド板8aと連動する伝達ラック6と噛合している各軸部5の歯車5bを時計回りに水平軸回転し、結果、全ての可動翼4が同期して水平軸回転する。
【0015】
また、図4のように、縦框1aの框外周側は開放しているが、蓋7により着脱自在に閉塞される。具体的には、縦框1の外周側部Qには、開放口13を挟んだ両側にそれぞれ縦框1aの長手方向に沿って上下に連続する段部14が設けてあり、この両段部14,14に沿って蓋7を嵌合して縦框1aの凹部9を塞ぐようになっている。そして、上記のように形成した本実施による木製可動ルーバにおいて、可動翼4を交換するときは、図5のように、まず、第1の手順として、縦框1aの外周側部Qから蓋7を外し、縦框1aの凹部9を開放する。次に、第2の手順として、縦框1aの凹部9から軸受孔10及び補強軸受孔12に差し込まれた軸部5を抜き出し、交換やメンテナンスを目的とする可動翼4の軸支状態が解除されたことを確認したら開放口13から取り外す。この手順を経ることにより、縦框1aを取り外すことなく、縦框1aの内周側部Pから個々の可動翼4を取り外せるようになる。また、可動翼4を取り付けるときは、可動翼4を他方の縦框1aの軸受孔10と補強軸受孔12に差し込むとともに、図1(b)をあわせて参照すれば、可動翼4の被差込係止部15に軸部5の差込係止部5aを差し込む側の縦框1aの軸受孔10を位置合わせし、そこに縦框1aの外周側から軸部5を差し込むことにより、縦框1aの内周側部Pから可動翼4を再び取り付けることができる。
尚、本実施では、蓋7と縦框1aとの嵌合箇所に接着剤を塗ってあるが、この場合でも蓋7を取り外すときに、軽くカッター等で接着箇所をなぞれば簡単に外すことができる。
【0016】
また、本実施形態の操作部は図6(a)のように、縦框1aの背面側にボールスクリュー(押圧部材)16がドライバー等の工具により出没自在に取り付けてある。このボールスクリュー16の先端は、図6(b)のように、伝達ラック6に到達しており、ボールスクリュー16を工具17などで回して縦框1a内にねじ込んだときに伝達ラック6を押圧し、ここでボールスクリュー16に押された伝達ラック6と各軸部5の歯車5bとの噛み合いが強くなることで、各可動翼4の回転時の負荷が大きくなる。このことから、可動翼4が操作部8(図3(a)〜(c)参照)における調節により回転を止めた位置で確実に止めることができるようになる。尚、ボールスクリュー16を設ける位置については、木製可動ルーバの外観意匠性を考慮し、室外側に設けることが望ましいが、室内側に設けた場合には調整が容易となるため、特に限定するものではない。
【0017】
本実施による木製可動ルーバは、可動翼4や操作部8が縦框1aの一方側と他方側の見付け面から突出しないように形成してある。これにより、引違戸や、戸袋に障子を収める開口部に適用することができ、従来、開き戸や嵌め殺しタイプに限定されていた木製可動ルーバを様々な開口部に展開できる(図3(a)参照)。
【0018】
本発明の木製可動ルーバは、上記実施形態では左右の縦框間に可動翼を軸支するものについて挙げたが、図7のように、上下框22,23間に可動翼24を軸支することもできる。この場合、上記した可動翼24を左右の縦框21a,21b間で軸支するタイプの木製可動ルーバと同一の構成をなす部分については説明を省略するが、本実施のものは上框22に設けてある操作部28を左右にスライド操作することにより、下框23の凹部29内に設けてある伝達ラック26が操作部28と連動して左右にスライドし、これに伴い伝達ラック26が軸部25を回転することで、各可動翼24が同期して軸回転することになる。尚、本実施のものでは、各可動翼24の可動手段となる伝達ラックや軸部25と蓋27を上框22に設けているが、木製可動ルーバの設置箇所に対応して下框23に設けてもよく、さらに、図示は省略するが、各可動翼24の操作部についても上下框22,23のいずれにあってもよい。
【0019】
また、蓋7と縦框1aとの着脱については、上記実施形態のように縦框1bの段部に嵌合させる他、縦框1aの段部14の設けてある箇所にスライド溝を形成し、そこに蓋7,27をスライドして取り付けるものでもよく、特に限定するものではない。また、左右の縦框1a,1bおよび上下框2,3は、凹部9内に可動翼4を軸回転するための伝達ラック6や軸部5の歯車5bなどを格納できる最低限のスペース、および各可動翼4の重量に耐え得る耐久性を有していれば、材質については特に限定するものではない。またツマミ8bの形状や大きさについては、本実施形態で示した方形以外に使用者が指で掴みやすいものであれば、例えば円形のものや多角形のものでもよい。
【符号の説明】
【0020】
1a,1b,21a,21b 縦框
2,22 上框
3,23 下框
4,24 可動翼
5,25 軸部
5a 差込係止部
5b 歯車
5c 軸棒
6,26 伝達ラック
7,27 蓋
9,29 凹部
10 軸受孔
15 被差込係止部
16 他方軸部
P 框の内周側部
Q 框の外周側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下框と、左右の縦框と、縦框間に略平行に配置する多数の可動翼と、左右の縦框間で各可動翼を水平軸回転自在に軸支する軸部とを備えており、
左右の縦框の少なくともいずれかの縦框は、内周側に間隔をあけて多数の軸受孔が設けてあるとともに、外周側が開放して内部に軸受孔と連通した凹部を有するほぼコ字型をなしており、凹部には、縦框の長手方向に沿って伝達ラックが配置してあり、
可動翼は、一方側端に軸部が差し込まれる被差込係止部を有するとともに、他方側端には他方の縦框に差し込む他方軸部を有しており、
軸部は、軸棒を縦框の凹部側から軸受孔に挿通したとき、可動翼の被差込係止部に差し込まれる差込係止部と、伝達ラックに噛合して軸棒と同軸回転する歯車とを有しており、
伝達ラックは、凹部内を上下動して歯車を回転することで各可動翼の傾斜角度を同期調節し、
縦框の外周側部には、凹部の開放側を開放または閉塞する蓋を有していることを特徴とする可動ルーバ。
【請求項2】
上下框と、左右の縦框と、上下框間に略平行に配置する多数の可動翼と、上下框間で各可動翼を垂直軸回転自在に軸支する軸部とを備えており、
上下框の少なくともいずれかの框は、框内周側に間隔をあけて多数の軸受孔が設けてあるとともに、外周側が開放して内部に軸受孔と連通した凹部を有するほぼコ字型をなしており、凹部には、框の長手方向に沿って伝達ラックが配置してあり、
可動翼は、上下の一方端に軸部が差し込まれる被差込係止部を有するとともに、上下の他方端には他方の框に差し込む他方軸部を有しており、
軸部は、軸棒を框の凹部側から軸受孔に挿通したとき、可動翼の被差込係止部に差し込まれる差込係止部と、伝達ラックに噛合して同軸回転する歯車とを有しており、
伝達ラックは、凹部内を左右動して歯車を回転することで各可動翼の傾斜角度を同期調節し、
軸部を有する側の框の外周側部には、凹部の開放側を開放または閉塞する蓋を有していることを特徴とする可動ルーバ。
【請求項3】
伝達ラックを内部に有する框には、框の見付け面から出没して伝達ラックを歯車側に押す押圧部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の可動ルーバ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102458(P2012−102458A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248876(P2010−248876)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(501400367)有限会社ライル (4)
【Fターム(参考)】