説明

木製防火扉用積層板状体、それを切断したフレーム形成用長尺体及びそれを用いた木製防火扉

【課題】フレーム及びその内部空間に耐熱性断熱材からなる芯材を装填した板状扉基体表面に加熱発泡板を配置することなく、防火性能に優れた木製防火扉、そのフレームに好適に用いることができる積層板状体、及びその板状体を切断したフレーム形成用長尺体の提供。
【解決手段】木製防火扉形成用積層板状体は、木製厚板2と、その表面に結合した加熱発泡板3a,3bと、更にその加熱発泡板表面に結合した木製薄板4a,4bとを有する。また、木製防火扉は、該積層板状体を切断して作製した長尺体から形成してなるフレームと、該空間に装填された耐熱性断熱材の芯材とから形成された板状扉基体表面に化粧板を結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製防火扉用積層板状体、それを切断したフレーム形成用長尺体及びそれを用いた木製防火扉に関する。
より詳しくは、加熱発泡板が積層された特殊な積層構造を持つ木製防火扉用積層板状体、それを切断した木製防火扉フレーム形成用長尺体、及びそれを用いた木製防火扉に関する。
【背景技術】
【0002】
木製防火扉は、フレーム(框、補強枠ということもある)と、フレーム内部に形成される空間に装填される芯材とからなる板状扉基体と、その基体表面の一方又は両方に取り付けられる耐火板又は加熱発泡板と、化粧板等の可燃性板との積層板とから通常形成されている。
その木製防火扉には多くの改良提案がなされており、それに関し以下において示す。
【0003】
それには、例えば、耐火板と化粧板等の可燃性板との積層板を釘等の針状の固定具によりフレームに固定したもの(特許文献1)、火災時に内部から発生したガスを放出させるべく、耐火板にスリット、小孔等の各種形状の空隙を形成したもの(特許文献2)、フレームは有機材料と無機材料とから形成され、その無機材料はセラミックス繊維層と無機微量子及びバインダーからなるものであって、かつ無機材料が扉枠に面する側に位置するように配置されたもの(特許文献3)がある。
【0004】
また、加熱時に発泡する耐火板(以下、加熱発泡板ということもある)を特殊な組成とし、かつフレームを日の字状、目の字状、田の字状、ラダー状、格子状等にすることにより、「ソリ」及び表面化粧板の剥がれを抑制することができるとするもの(特許文献4)、さらにはフレームの扉枠に面する側に加熱発泡材を埋設し、火炎発生時に扉と扉枠との隙間を封止し、火炎を遮断するもの(特許文献5)等の提案がある。
【0005】
これらの防火扉においては、いずれもフレームと、フレーム内部に形成される空間に装填される芯材とからなる板状扉基体の表面の一方又は両方に、耐火板又は加熱発泡板(以下、耐火板等ということもある)と化粧板等の可燃性板との積層板とが取り付けられており、フレーム及び芯材の両者の表面に耐火板が配置されている構造となっている。
その耐火板等と化粧板等の可燃性板との積層構造を形成する際の手順については、本出願人企業が提案した特許文献1ないし3については具体的記載はないものの、通常接着により行われている。
【0006】
そのことは、特許文献4(段落[0057]参照)、特許文献5(段落[0008]参照)に記載されており、接着剤を用いることも特許文献4に記載されている。
また、耐火板等と化粧板等の可燃性板との積層については、当て板等の非化粧性板をまず積層し、さらにその上に化粧板を積層する場合と、非化粧性板を介することなく、直接化粧板を積層する場合の2通りがあるが、それらのことについては特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−315690号公報
【特許文献2】特開平4−315691号公報
【特許文献3】特開平4−315692号公報
【特許文献4】特開2004−332401号公報
【特許文献5】特開平9−256746号公報
【0008】
そのようなことで、本出願人企業においても、防火扉の製造については、特許文献1ないし3に記載の技術に沿って、フレームと、フレームの内部に形成される空間に装填される芯材とからなる板状扉基体の表面に耐火板等を固定して、その上に接着剤を塗布して化粧板等の可燃性板を積層しているが、その場合には特許文献4が開示するところとは異なり、「ソリ」の発生を完全に抑制することは不可能であった。
【0009】
特許文献4によれば、フレームは、単純な矩形状(長方形)ではなく、矩形状のフレーム外枠に一辺から対向する他辺に長尺補強部材を渡した、日の字状、目の字状、田の字状等の形状とすることにより、ソリの発生を抑制することができるとされている。
しかしながら、特許文献1ないし3に記載のとおり、その構造自体は特段新規なものではなく、矩形状の外枠の一辺から対向する他辺に長尺補強部材を渡した構造を持つフレームに、まず耐火板等を積層し、その上に更に接着剤を塗布して化粧板等の可燃性板を積層しても、本発明者の経験によれば「ソリ」の発生を完全に回避することは困難である。
【0010】
すなわち、フレーム中に装填される芯材については完全な均一平面を持つ板状体とすることは製造精度上不可能であり、またそれに積層する耐火板等及びをその上に更に接着剤を介して積層する可燃性板についても同様である。
その結果、耐火板と可燃性板との結合に使用される接着剤が両者間で不均一分布になることは回避できず、その不均一分布のため長時間の経過により「ソリ」が発生することを完全に回避することは難しく、本発明者は実際そのことを確認した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者は、この問題を解決すべく、鋭意検討し、特殊な積層構造のフレームを採用することで、この問題が解決することができることを見出し、その結果開発に成功したのが本発明である。
したがって、本願発明は、板状扉基体表面に耐火板又は加熱発泡板を配置することなく、防火性能に優れた木製防火扉、そのフレームに好適に用いることができる積層板状体及びそれを切断した長尺体を提供することを発明の解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、前記課題を解決するための木製防火扉のフレームに好適に用いることができる積層板状体、それを切断した長尺体及びそれを用いて形成したフレームを具備する木製防火扉を提供するものであり、その積層板状体は、木製厚板、加熱発泡板及び木製薄板を積層した構造からなるものであり、加熱発泡板及び木製薄板は木製厚板表面の一面又は両面のいずれに結合した構造のものでよいが、木製厚板の両面に加熱発泡板及び木製薄板を積層した構造のものが好ましい。
【0013】
その加熱発泡板は、グラファイト等の加熱により発泡する性質を持つ物質を含有する1層からなるものでもよいが、それにセラミック不織布等の無機耐火性繊維層を積層した2層構造のものが好ましい。
その積層板状体からフレームを作製する際には、まず該板状体を細長い所定のサイズに切断して長尺体を形成し、それでまず単純な矩形状の外枠を形成し、その外枠の一辺から対向する他辺に長尺補強部材を渡した構造等の形状を組み立てることによりフレームとする。
【0014】
また、その長尺体は、そのまま使用してフレームを形成することも可能であるが、ホッチキスの針又はそれに類似したU字状の針状体(以下、「ステープル」という)を所定間隔で打ち込むことにより3層の積層構造の強度を向上させることができ、その結果耐火性、耐熱性をも向上させることができるので、そのような構造を採用することが好ましい。なお、ステープルは積層板状体を長尺状に切断した後に打ち込むのが好ましい。
【0015】
その長尺体を用いてフレームを形成する際には、内部に補強部材が存在しない矩形状のままとしてもよいが、その一辺から対向する他辺に長尺補強部材を渡した構造とするのが強度が向上するのでよい。
その長尺体を組み立ててフレームを形成する際には、長尺体同士の結合部はステープルを用いて接合するのがよい。
【0016】
その形成されたフレームの内部にできる空間に耐熱性及び断熱性の芯材(以下、耐熱性断熱材の芯材という)を装填して板状扉基体を形成し、その後該基体表面に化粧板等の可燃性板を配置して木製防火扉は製造される。
したがって、本発明の木製防火扉は、木製厚板、加熱発泡板及び木製薄板を積層した構造の長尺体を組み立てたフレームと、その内部に形成される空間に装填された耐熱性断熱材の芯材とから形成された板状扉基体において、加熱発泡板及び木製薄板が積層された側の面に化粧板等の可燃性板が配置されたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、木製防火扉に用いるフレームは、木製厚板、加熱発泡板及び木製薄板を積層した構造の大きな板状体を切断して作製された長尺体を組み立てて作製されるものである。
前記のとおりであるから、切断するだけで、各種サイズの扉に適合したサイズのフレーム作製用の長尺体を作製することができる。
【0018】
また、このような特殊な積層構造を持つフレームを採用したことと、その内部に形成される空間に耐熱性断熱材の芯材を装填することにより板状扉基体を形成し、その基体全面にグラファイト等を含有する加熱発泡板又は耐火板を配置することなく、建築基準法上の所定の防火性能(耐火性能)を確保することができ、板状扉基体表面に、直接化粧板等の可燃性板を配置することができる。
【0019】
したがって、耐火板等と化粧板等の可燃性板間における、接着剤の均等分布、偏在回避を配慮する必要もなく、製造工程を簡略化することができる。
その結果、本発明では、耐火板等と化粧板等の可燃性板とを積層した場合のように、両板間に接着剤で接着する必要がないので、接着剤の偏在により生ずる木製防火扉の「ソリ」すなわち凹凸、特に化粧板の「ソリ」を回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の木製防火扉に使用するフレームの作製行程図。
【図2】本発明の木製防火扉及び芯材の斜視断面図。
【図3】本発明の実施例に用いたフレーム形成用長尺体の斜視断面図。
【図4】実施例1の木製防火扉の水平断面図。
【符号の説明】
【0021】
1 積層板状体
2 木製厚板
3 加熱発泡板
4 木製薄板
5 長尺体
6 ステープル
7 フレーム
8a 耐熱性断熱材の芯材
9 板状扉基体
11 積層板状体
12 木製厚板
13 加熱発泡板
14 木製薄板
15 長尺体
17 フレーム
18b 耐熱性断熱材の芯材
19 板状扉基体
20 木製防火扉
21 化粧表面板用
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて以下において説明する。
図1は、前記したとおり本発明の木製防火扉に使用するフレームの作製行程を図示するものであり、そこにはフレームに好適に用いることができる積層板状体について、それを作製する際の各部材の配置関係、接着後の積層体の積層構造及びその積層体を切断して作製される長尺体の構造についても図示されている。
【0023】
その図1において、(A)には接着前の各部材の配置関係、(B)には接着後の積層体の積層構造、(C)にはその積層体を切断して作製される長尺体の構造及び(D)にはその長尺体をステープルにより接合して形成したフレームの構造がそれぞれ図示されている。
それらの図において、木製厚板2の両側に加熱発泡板3a、3bが配置され、その両側に木製薄板4a、4bが配置された構造となっており、このように両側に配置されている構造が好ましいものではあるが、それらは片側のみに存在する構造でもよい。
それら木製厚板2、加熱発泡板3a、3b及び木製薄板4a、4bは、それぞれの中間に接着剤を塗布した後プレスにより加圧接着して積層板状体1が作製される。
【0024】
その形状は特に制限されることはないが、切断してフレーム形成用の長尺体を製造するものであるから、それを効率的に作製することができる形状がよく、板状体表面の形状は矩形がよい。
その積層板状体1は切断して扉のフレーム形成用の長尺体を製造するものであるから、そのサイズは、扉の長辺方向より長いことが必要であり、かつ部屋の扉の高さは最低でも通常180cm以上あるから、180×45cm以上とするのがよい。
【0025】
また、その扉は最近では高さ200cm、更には240cmのものもあり、加えて、その長尺体を効率的に製造するには、一度に大量生産するのが好ましく、これらの点からすると、より大きなサイズのものがよい。
前記のとおりではあるものの、サイズが大き過ぎると搬送性、取扱性等が悪くなるので、これらのことを考慮すると、サイズは200×45cm〜360×45cmがよく、好ましくは200×90cm〜360×90cmがよい。
【0026】
その積層板状体の製造に使用する木製厚板2の厚さは、製造する木製防火扉の厚さからして20〜50mm程度がよく、好ましくは25〜35mmがよい。
また、加熱発泡板3の厚さは、発泡時の厚さからして0.5〜5mm程度がよく、好ましくは1〜2mmがよい。さらに、木製薄板4は、扉、具体的には板状扉基体を均一厚さにするために使用されるものであり、その使用目的からして1〜5mm程度がよく、2〜4mmが好ましい。
【0027】
これらの板材については、いずれもJIS等の規格はあるものの実際に製造販売されている製品では完璧な均一性があるとは言い難い。すなわち、一枚の板の厚さについていえば、全面的な均一性があるとは言い難く、かつ製品ごとの厚さのバラツキもある。
その結果、それらを用いて作製された積層板状体についても、一枚の板状体の位置間における厚さのバラツキ及び板状体ごとの厚さのバラツキの発生を完全に回避することは難しい。
【0028】
そのため、製造・販売されているそれら板材をそのまま使用した場合には、意匠性に優れた木製扉を製造する際には難点となるが、その点を重要視しない場合にはそのままま使用することも可能ではある。
前記の通りではあるものの、でき得ればそれを解消するのがよく、そのためには、積層接着後に木製薄板4表面を研磨等を行うことにより、厚さを均一化するのが好ましい。
その積層板状体の厚さについては30〜70mmが好ましい。
【0029】
フレーム形成用の長尺体5を作製するためには、前記したとおり積層板状体1を図1(B)に示すように点線に沿って切断することになるが、その切断は使用する研磨機の性能に左右されるので、その性能によって研磨前あるいは研磨後のいずれかを選択する。
さらに、この切断後には、図1(C)に示すように積層板状体1の木製薄板4の表面から、ステープル6を内部に向かって、等間隔で打ち込むのが好ましい。
なお、切断する際の幅については、製造する扉のサイズが大きい場合には大きくなるものの、15〜120mmが好ましい。
【0030】
このようにステープル6を打ち込むことによって、積層板状体1を形成する木製厚板2、加熱発泡板3及び木製薄板4における相互の密着性が向上して強度が増大し、火炎に曝された際にも各板が分離し難くなり、ひいては耐熱性能をも向上させることになる。
前記切断により、扉形成の際の矩形外枠及び中間補強部材となるフレーム形成用の長尺体を所定の長さに作製し、その長尺体を図1(D)に図示するように組み立てステープルにより結合してフレームを作製する。
なお、この結合手段については特に限定されることはなく、ステープルに代わり接着によってもよく、勿論両者を併用してもよい。
【0031】
このようにして形成されたフレーム7の内部にできる空間8aに耐熱性断熱材の芯材を装填して板状扉基体9を作製し、その基体表面に化粧板等の可燃性板を結合して木製防火扉とする。
その木製防火扉については、図2(A)に全体図が斜視断面図で図示されており、また同(B)には芯材18bの斜視断面図も合わせて示されている。
【0032】
その際の可燃性板については、化粧板単独でもよいが、下地板として合板を用い、それに薄い化粧板を貼り付けたものでもよく、後者が各種ニーズ(例えば、化粧面の耐摩耗性・耐熱性、又は化粧面及び裏面の耐水性・防湿性)に柔軟に対応できるので好ましい。その貼り付けは、化粧板と下地板とが予め接着されたものを用いて板状扉基体9に接着しても良いが、該基体9表面にまず下地板を接着し、その後薄い化粧板を接着することによっても良い。
【0033】
積層板状体1の作製に使用する各種板材の材質等について以下において述べる。
木製厚板2については、木材及びそれを用いて製造された板材であれば特に制限されることなく各種材料の板状体が使用でき、それには木材チップを接着剤で結合して板状体としたもの、極薄板材を接着材で結合積層した合板、木片を接着剤で結合した集成材等が挙げられるが、防水性を有する接着層を扉の厚さ方向と平行、すなわち扉表面に直角に使用することで「ソリ」が抑制できる点で集成材が好ましい。
【0034】
加熱発泡板3については、火炎に曝された際に発泡して、木製防火扉が耐火性能を発揮できる板状体であれば、特に制限されることなく各種素材のものが使用でき、それには、各種結合用樹脂中に熱膨張性層状無機物を含む各種無機充填剤を含有する板状体がある(特許文献4参照)。
なお、熱膨張性層状無機物については、加熱発泡板が120〜300℃で発泡するものがよく、好ましくは150〜250℃で発泡するものがよいので、そのような温度で発泡するものを採用するのがよい。
【0035】
その加熱発泡板について、前記特許文献に記載された組成等を一例として以下において具体的に示す。樹脂としてはエポキシ樹脂、ゴム状物質又は熱可塑性樹脂を用いるものであり、それら樹脂100重量部に対し、無機充填剤を70〜500重量部を含有し、そのうち少なくとも加熱時に膨張する層状無機物を10〜150重量部含有するものである。
前記加熱発泡板は、加熱膨張後に架橋構造をとるため、形状保持性に優れており、材料の厚みを薄くすることができ好適に用いられる。上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基を持つモノマーと硬化剤を反応させて得られるものがよい。
【0036】
エポキシ基を持つモノマーとしては、2官能のグリシジルエーテル型、及び多官能のグリシジルエーテル型とがあり、本願発明においてはどちらも使用可能である。
2官能のグリシジルエーテル型として、例えば、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型等が挙げられ、グリシジルエステル型としてヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等が挙げらる。
【0037】
また、多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾールノボラック型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン・フェノール型等があげられ、これらのものは単独でも、2種類以上混合してもよい。上記硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
それらのエポキシ樹脂に対する硬化剤には、重付加型として、脂肪族ポリアミン又はその変性アミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が、触媒型として、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸錯体等があげられる。これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、既知の方法により行うことができる。
前記エポキシ基をもつモノマーと上記硬化剤は、任意の比で配合してもよいが、熱膨張性材料の力学物性の安定性から、エポキシ基をもつモノマーと硬化剤の当量が一致する配合比が望ましい。
【0039】
そして、前記ゴム物質及び熱可塑性樹脂についても、特に限定されず各種のものが使用でき、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブテン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ニトリルゴム、ブチルゴム、石油樹脂等が挙げられる。前記樹脂は、単独でも2種類以上混合してもよい。
【0040】
前記加熱発泡板に含有される無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム・硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナィト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト等が挙げられる。
【0041】
さらに、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン・炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物等も挙げられ、これらは、単独でも2種以上をさらに混合して用いてもよい。
【0042】
その中でも特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましい。
無機系リン化合物は難燃性を向上させるために好適に用いられる。前記無機系リン化合物としては特に限定されず、例えば、赤リン;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ボリリン酸アンモニウム類等が挙げられる。なかでも、ポリリン酸アンモニウム類が好ましい。
【0043】
本願発明においては、前記したとおり加熱発泡板は火炎に曝された際に発泡することが必要である。その加熱発泡板は、120〜300℃で発泡するのがよく、好ましくは150〜250℃のものがよい。
そのためには加熱発泡板中に熱膨張性層状無機物が存在することが必要であり、その含有量は、前記したとおりエポキシ樹脂、ゴム状物質又は熱可塑性樹脂である樹脂100重量部に対し、10〜150重量部である。
その熱膨張性層状無機物には、例えばバーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等が挙げられる。
【0044】
これらの熱膨張性層状無機物の中でも、発泡開始温度が低いことから熱膨張性黒鉛が好ましい。
その熱膨張性黒鉛の粒度は20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると黒鉛の膨張度が小さく、十分な耐火断熱層が得られず、粒度が20メッシュより大きくなると黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、樹脂と混練する際に分散性が悪くなる。
【0045】
また、熱膨張性黒鉛は、勿論既知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤で処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0046】
前記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、さらにアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。上記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
前記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物・酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
このように中和処理した熱膨張性黒鉛の具体例としては、例えば、UCAR CARBON社製「GRAFGUARD」、東ソー社製「GREP−EG」等が挙げられる。
【0047】
加熱発泡板において結合用として用いる樹脂としては前記したとおり各種のものがあるが、エポキシ樹脂あるいはブチルゴムが好ましい。
そこでエポキシ樹脂組成物を用いた場合の組成についてみるに、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛10〜150重量部、無機充填剤30〜500重量部がよく、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は、40〜500重量部がよい。
さらに、より好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は30〜120重量部、無機充填剤は50〜300重量部がよく、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は80〜400重量部がよい。
【0048】
また、難燃性を向上させるためにリン化合物を添加させる場合については、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は10〜150重量部、無機充填剤は30〜300重量部、リン化合物は30〜300重量部がよく、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤とリン化合物の合計量は70〜500重量部がよい。さらに、より好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して、中和処理された熱膨張性黒鉛は30〜120重量部、無機充填剤は50〜300重量部、リン化合物は50〜300重量部がよく、中和処理された熱膨張性黒鉛と無機充填剤とリン化合物の合計量は80〜400重量部がよい。
【0049】
加熱発泡板は、前記した通り木製厚板に直接接着するが、必要に応じて両者の中間に耐熱性繊維板を介在させても良く、このようにすることより、より防火性能が向上する。
そのような繊維板の素材としては、ロックウール、ガラス繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、シリカ−アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、金属繊維等が例示できる。
さらに、耐熱性の有機樹脂繊維でもよく、それには芳香族系ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリアミドイミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素繊維、芳香族ポリエーテルアミド繊維、ポリベンズイミダール繊維、フェノール繊維あるいはセルロース繊維等が例示できるが、有機樹脂繊維の場合には300℃以上で形状が維持できることが必要となる。
【0050】
加熱発泡板3上に積層される木製薄板4については、加熱発泡板に好適に接着することができる木製の板であれば各種のものが特に制限されることなく使用でき、それには天然木の挽単板、合板、パーチクルボードあるいは繊維板等が例示できる。
なお、その木製薄板4は、前記したとおり加熱発泡板3上に直接接着される。
【0051】
本願発明では、前記した素材の各種板材を積層して積層板状体を作製し、その板状体を切断して長尺体とし、それを組み立ててフレームを作製する。
そのフレームの内部にできる空間に耐熱性断熱材の芯材を装填して板状扉基体を作製することは前記したとおりであるが、その芯材は耐熱性及び断熱性を有する素材の板状体であれば特に制限されることなく各種のものが使用できる。
【0052】
その耐熱性については、20分遮炎性能が必要な木製防火扉を作製する場合(建築基準法第2条第9の二項第ロ号)には、781℃において不燃で、変形が少ないものがよい。さらに、60分遮炎性能が必要な木製防火扉を作製する場合(建築基準法施行令第112条第1項)には、945℃において不燃で、変形が少ないものがよい。
また、それらは好ましくは1000℃において不燃で、収縮率2%以内のものがよい。
【0053】
その断熱性については、20分遮炎性能が必要な木製防火扉の場合には、作製した木製防火扉に対して建築基準法上の遮炎性能試験を行った際に加熱面が781℃において、非加熱面の化粧面板が20分間で炭化温度を下回るものがよく、60分遮炎性能が必要な木製防火扉の場合には、作製した木製防火扉に対して建築基準法上の遮炎性能試験を行った際に加熱面が945℃において、非加熱面の化粧面板が60分間で炭化温度を下回るものがよい。なお、好ましくは、加熱面が1000℃において、非加熱面が60分間で260℃以下であるものがよい。
【0054】
また、その芯材は、木製防火扉の容積の多くの部分を占めるので、その密度の大小は作製された木製防火扉の総重量に大きく影響するものの、芯材の密度については耐熱性及び断熱性を有する素材であれば特段制限されることなく使用可能であり、低い方は100kg/m3程度から高い方は1000kg/m3を超える1500kg/m3程度のものまで使用可能である。
【0055】
特に芯材の密度が100kg/m3〜250kg/m3(0.1g/cm3〜0.25g/cm3)の範囲にある低いものは、防火扉の総重量が軽量化できるので、製造工程及び施工行程が簡便化できるので好ましい。
そのような耐熱性及び断熱性を有する素材の板状体としては、JISA9510に規定されている無機多孔質保温材が例示できる。
そのJISでは、無機多孔質保温材について、具体的にはけい酸カルシウム保温材及びはっ水性パーライト保温材が規定されている。
【0056】
そのけい酸カルシウム保温材は、補強材として繊維を混合した珪酸カルシウム水和物からなる成形物及びこれに撥水材を添加して撥水性をもたせた成形物があり、密度については155kg/m3以下の極端に低密度のものから、220kg/m3以下の低密度のものまで数種のものが存在する。
また、それらの耐熱性については、使用温度1000℃以下と、650℃以下との2種があり、例えば密度155kg/m3以下で、使用温度1000℃以下の保温板については等級が「保温板1号−15」とされている。
【0057】
そのはっ水性パーライト保温材は、パーライト、バインダ、補強繊維及びはっ水剤からなる成形物であり、密度については250kg/m3以下及び185kg/m3以下の2種類が存在する。
また、それらの耐熱性については、使用温度900℃以下と、650℃以下との2種があり、例えば密度250kg/m3以下で、使用温度900℃以下の保温板については等級が「保温板3号−25」とされている。
【0058】
逆に、密度の高い耐熱性及び断熱性を有する素材の板状体は、遮音性及び重厚性に優れた木製防火扉を作製するのに好適に用いることができ、例えば高級ホテルのドアのように特に遮音性を求められる木製防火ドアには、好適に用いることができる。
そのような耐熱性及び断熱性を有する素材の板状体としては、JISA5430に規定されている繊維強化セメント板が例示できる。
【0059】
その繊維強化セメント板には、石綿以外の繊維で強化成形した、けい酸カルシウム板及びスラグせっこう板があり、けい酸カルシウム板には、見掛け密度0.6g/cm3以上0.9g/cm3未満の「0.8けい酸カルシウム板」、掛け密度0.9g/cm3以上1.2g/cm3未満の「1.0けい酸カルシウム板」等があり、またスラグせっこう板にも同様のものがあり、それらは遮音性、重厚性の木製防火ドアには好適に用いることができる。
【0060】
なお、けい酸カルシウム板には、見掛け密度0.15g/cm3以上0.35g/cm3未満のもの、スラグせっこう板には、見掛け密度1.2g/cm3以上のものがあるが、それらも勿論芯材として利用可能である。
それら密度の耐熱性及び断熱性を有する素材の板状体を用いる場合には、木製防火扉に求められる用途、性能に適したものを選択するのがよい。
【0061】
耐熱性及び断熱性を有する素材の板状体は、前記において具体的に示したものに限定されるものではなく、それ以外でも勿論使用可能であり、それには、蝋石、長石、マグネシア、珪藻土、シリカ、シリカ−アルミナ、ムライトアルミナ、水酸化アルミニウム、炭化珪素、ジルコン、ジルコニア、酸化チタン、酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、シラス、シラスバルーン、ガラス、ガラスバルーン、パーライト、ドロマイト、カオリン、シャモット、雲母、コージエライト、窒化珪素、窒化ホウ素、セピオライト、アタパルジャイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成フッ素雲母、モンモリナイト、各種ウイスカー、炭素粉末、金属粉末等から選択される無機物質あるいは金属物質等を素材とする板状体が例示できる。
【0062】
それら素材の板状体を作製するに当たっては、各種無機繊維等をそれら素材の支持体として用いることができ、その場合には、前記素材は支持体に含浸又は塗布して付着して保持させるのがよい。
かかる支持体用繊維としては、各種無機、金属繊維が利用でき、それには、例えばロックウール、ガラス繊維、炭化珪素繊維、炭素繊維、シリカ−アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、金属繊維等が挙げられる。
【0063】
また、耐熱性の有機樹脂繊維も使用でき、それには芳香族系ポリアミド繊維(アラミド繊維)、ポリアミドイミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素繊維、芳香族ポリエーテルアミド繊維、ポリベンズイミダール繊維、フェノール繊維あるいはセルロース繊維等が例示できるが、有機樹脂繊維の場合には300℃以上で形状が維持できることが必要となる。
【0064】
前記多孔質保温板の素材である無機物質あるいは金属物質を支持体に保持させる際には、結合材を用いるのがよく、その際には前記素材と結合材と混合した含浸又は塗布液を使用するか、あるいは前記素材を含浸又は塗布後にバインダー液を塗布するよい。
その結合材としては、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾル、ケイ酸塩、リン酸塩、又はシリカセメント、アルミナセメント、マグネシアセメント、ジルコニアセメント等の各種耐熱セメント等が例示できる。
【0065】
それら素材からなる耐熱・断熱性の芯材をフレーム内部の空間に装填して形成した板状扉基体表面に化粧板等の可燃性板を配置したのが本発明の木製防火扉であり、その可燃性板は、板状扉基体の両表面に配置して接着結合するのが好ましい。
なお、フレームを形成する長尺体の片面だけに加熱発泡板3及び木製薄板4が積層されている場合にも板状扉基体の両表面に可燃性板は配置して接着結合するのが好ましいが、その場合には少なくとも耐火性板3等が積層されている側には可燃性板を接着等により結合することが必要である。
【0066】
板状扉基体表面に接着等により結合する化粧板等の可燃性板については、扉の最外表面になり、居住者等の利用者の目に曝されるところなので、意匠性に優れた化粧板が好ましい。
それには表面に天然木の一枚板の突き板を全面に接着した合板、天然木の突き板を小型のサイズに切断し、その一枚板の突き板を小サイズに切断し、その小サイズの突き板をモザイク状に接着した合板、又は木目等の各種図案を印刷したフィルム、普通紙、樹脂含浸紙もしくはそれらの積層シートを接着した合板等が例示できる。
【0067】
化粧板を接着結合した本発明の木製防火扉に意匠性を持たせるには化粧板を板状扉基体表面に直接接着するのではなく、下地材として合板を用い、それに接着して厚みのある板とするのがよい。その際には、まず下地材の合板を板状扉基体表面に接着し、その後表面を研磨して平坦化した後に化粧板を加圧接着するのがよい。
このようにすることにより、木製防火扉は、表面に凹凸のない全体が平坦なものが得られ、意匠性に優れたものとなる。
特に豪華で高級感のあるものとするには、小サイズの突き板をモザイク状に接着した合板を化粧板とするのがよい。
【実施例1】
【0068】
以下において、本発明について、木製防火扉の実施例に基づいて更に詳述する。なお、本発明は、この実施例によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
その木製防火扉の全体構造は、図2において斜視断面図で図示した木製防火扉及び芯材の構造と基本的には共通するところが多いので、共通するものについては、説明の便宜上同一番号を付した。
【0069】
その木製防火扉について、図4の水平断面図に基づいて、その構造をまず説明するが、必要に応じて図2の斜視断面図を参酌されるとわかりやすい。
その木製防火扉は、板状扉基体19の両表面に2層構造の化粧表面板21が接着された構造となっており、その板状扉基体19は長尺体15を組み立てて作製したフレーム17内部にできる空間18aに耐熱性断熱材の芯材18bを装填した構造となっている。
【0070】
なお、この実施例では、化粧表面板は二層構造となっているものの、一層構造とすることもできるが、二層構造とした方が意匠性に優れたものを簡便に作製することができる。 すなわち、木目の揃った突き板を合板に接着して模様付き化粧原板を作製し、それを所定のサイズに切断し、切断された小サイズの化粧原板を下地板にモザイク状等に配置して接着することにより、豪華で高級感のある意匠性に優れた化粧表面板を簡便に作製することができる。
【0071】
なお、図2に図示された木製防火扉表面には、外周に額縁と通称される飾板25が配置されている。
また、この実施例では、フレーム17の両表面及び耐熱性断熱材からなる芯材18bの両表面には、化粧表面板21との間にそれぞれ厚さ調製用の薄板22及び23が挿入されているが、フレーム17の厚さと、耐熱性断熱材からなる芯材18bの厚さとを同一にした場合には、これらを配置する必要はない。
【0072】
そのフレーム17は、木製厚板12と、その両表面に接着結合した加熱発泡板13と、更にその加熱発泡板表面に接着結合した木製薄板14とを有する積層板状体を切断して作製した長尺体を枠状に組み立てステープルで結合した構造となっている。
なお、それらの接着結合には、それぞれアモルファスシリカ系接着剤及び酢酸ビニルエマルジョン系接着剤が用いられている。
【0073】
この実施例におけるフレームの木製厚板12は、ゴムの木を素材とする厚さ35mmの集成材であり、加熱発泡板13は炭酸カルシウム及びポリリン酸アンモニウムからなる無機充填材50.0wt%、熱膨張性黒鉛25.0wt%、並びにエポキシ樹脂25.0wt%を均一に含有する厚さ1mmエポキシ樹脂シートであり、木製薄板14は厚さ2.5mmの普通合板である。
なお、この実施例における木製防火扉20のフレーム17では、木製厚板12と加熱発泡板13とは直接接着されているが、両者の中間にセラミック不織布を介在させてもよく、そのようにすることにより、より防火性能を向上させることができる。
【0074】
この実施例においては、フレーム内部に形成される空間に装填される耐熱性断熱材からなる芯材18bについては、密度0.35g/cm2、厚さ30mmの珪酸カルシウム保温板24を用いた。
なお、この多孔質保温板24の両表面には厚さ調整用の5.5mmの厚さの普通合板23が接着剤で結合されている。
【0075】
この実施例の木製防火扉については、建築基準法上の遮炎性能試験を実施し、58分の遮炎性能を有することを確認しており、20分防火設備基準を満たすものである。
また、フレームに用いる長尺体において、木製厚板と加熱発泡板との間にセラミック不織布を介在させたものを用いた場合も、建築基準法上の遮炎性能試験により60分の遮炎性能を有することを確認しており、これは特定防火設備基準を満たすものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
木製防火扉形成用積層板状体は、切断して長尺体を作製し、それを組み立てて木製防火扉作製に用いることができるフレームを製造することができる。
また、そのフレームは内部にできる空間に耐熱・断熱性芯材を装填することにより、板状扉基体を製造でき、その基体に化粧板を接着結合することにより木製防火扉を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製厚板と、その表面に結合した加熱発泡板と、更にその加熱発泡板表面に結合した木製薄板とを有する木製防火扉形成用積層板状体。
【請求項2】
木製厚板の両表面に、加熱発泡板及び木製薄板とを順に結合した請求項1に記載の木製防火扉形成用積層板状体。
【請求項3】
木製厚板と加熱発泡板との間にセラミック不織布を介在させた請求項1又は2に記載の木製防火扉形成用積層板状体。
【請求項4】
木製厚板と、その表面に結合した加熱発泡板と、更にその加熱発泡板表面に結合した木製薄板とを有する木製防火扉形成用積層板状体を細長く分割した木製防火扉形成フレーム用長尺体。
【請求項5】
木製防火扉形成用積層板状体表面に直交する方向にステープルが等間隔で打ち込まれた請求項4に記載の木製防火扉形成フレーム用長尺体。
【請求項6】
木製厚板と、該表面に結合した加熱発泡板と、該加熱発泡板表面に結合した木製薄板とを有する木製防火扉形成用積層板状体の長尺体からなるフレーム、及びその空間に装填した耐火性断熱材を有する板状扉基体、及び該板状扉基体表面に可燃性板を結合した木製防火扉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−190570(P2011−190570A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55234(P2010−55234)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000116541)阿部興業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】