説明

木質バイオマス暖房装置

【課題】この発明は、燃料を追加投入でき、連続運転が可能で、しかも、煙を排出しない木質バイオマス燃料暖房装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記の目的を解決するために、本発明の木質バイオマス燃料暖房装置1は、木質バイオマス燃料を燃焼させる燃焼室2と、燃焼室2の上部に設けられた通気性の灰保持部材3と、燃焼室2から灰保持部材3へ空気を送る送風装置10,12と、燃焼室2にバイオマス燃焼を投入する投入口4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薪や木材チップなど木質バイオマスを熱分解・燃焼させる暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より、暖炉で薪を燃やして屋内を加温することは行われてきた。しかし、灯油など化石燃料を使用する暖房装置の普及とともに、薪など木質バイオマスを燃料とする暖房は使用されなくなった。
【0003】
特許文献1には、下部炉体に薪を収容することが記載されている。下部炉体を加熱することにより発生する可燃性ガスなどは暖房に使用されるが、薪の大部分は木炭として残る。また、特許文献2および特許文献3には、木質バイオマスを無煙で燃焼させる熱発生装置が記載されている。非特許文献1には一酸化炭素の発生を防止するための触媒を設けることが記載されており、非特許文献2および非特許文献3には、ファンを設けて空気を導入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−185003号公開特許公報
【特許文献2】特開2004−245563号公開特許公報
【特許文献2】特開2004−245563号公開特許公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】尾上清利・杉浦銀治・鶴見武道・小林修、(2005)、第3回木質炭化学会研究発表会講演要旨集、p11−14
【非特許文献2】尾上清利・杉浦銀治・鶴見武道・小林修、(2006)、第4回木質炭化学会研究発表会講演要旨集、p11−12
【非特許文献3】尾上清利・杉浦銀治・鶴見武道・小林修、(2007)、木質炭化学会第5回研究発表会in2007講演要旨、p65−68
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された発明においては、薪から発生する可燃性ガスなどが暖房に使用されるが、それ以外の薪の成分のほとんどは木炭として残り、この木炭は次回の暖房時に加熱燃料として使用される。したがって、特許文献1に記載された暖房装置は木炭を加熱燃料として使用するものである。また、下部炉体より上昇する可燃性木ガスを完全に無煙で燃焼させることはできない。また、加熱燃料より大量の一酸化炭素が発生する。
【0007】
一方、特許文献2および特許文献3に記載された熱発生装置は、木質バイオマスの上部に着火材および点火材を設け、木質バイオマスを上から下に向けてゆっくりと燃焼させることによって、無煙で発熱させることができる。しかし、一旦使用を開始したら途中で燃料を追加できない。燃料が尽きたら燃焼が停止し、熱発生装置が十分冷めるのを待って、次回分の燃料を再充填する。そのため連続的に運転することができない。また、装置を大型化させた場合、このような燃料の充填作業は大きな労力を有する。
【0008】
非特許文献1から非特許文献3に記載されている熱発生装置も、最初に充填した燃料が燃え尽きたら燃焼が終了し、冷却を待って燃料を再充填するものである。この発明は、燃料を追加投入でき、連続運転が可能で、しかも、煙を排出しない木質バイオマス燃料暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を解決するために、本発明の木質バイオマス燃料暖房装置は、木質バイオマス燃料を燃焼させる燃焼室と、燃焼室の上部に設けられた通気性の灰保持部材と、燃焼室から灰保持部材へ空気を送る送風装置と、燃焼室にバイオマス燃焼を投入する投入口を有する。灰保持部材は、複数段に分けて所定の間隔で設けることが好ましい。また、燃焼室の上流に設けられ燃焼室へ空気を送り込む空気取込みファンと、通気性の灰保持部材の下流に設けられた排気ファンにより送風装置を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の木質バイオマス暖房装置は、燃焼室の上部に通気性の灰保持部材を設けることによって、燃焼室にバイオマス燃焼を投入する投入口を配置することができ、バイオマス燃焼を投入しながら連続運転することができる。燃焼室の上部に設けられた灰保持部材の灰は高温になるので、燃焼室から上る空気がこの高温の灰を通過することによって、空気中の煙成分が再燃焼し、無煙化されて排出される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】木質バイオマス暖房装置の例を示す断面図である。
【図2】灰保持部材の底部の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。図1はこの発明を適用した木質バイオマス暖房装置の例を示す断面図である。
【0013】
この木質バイオマス暖房装置1は、木質バイオマス燃料を燃焼させる燃焼室2と、燃焼室2の上部に設けられた通気性の灰保持部材3と、燃焼室2から灰保持部材3へ空気を送る送風装置と、燃焼室2にバイオマス燃焼を投入する投入口4を有する。
【0014】
木質バイオマス暖房装置1の底面より所定の間隔をおいて、ロストルが設けてある。このロストル5は、木質バイオマス燃料を保持することができ、かつ燃焼のための十分な通気性を有するもので、たとえば金属格子や金網、パンチングメタルなどが使用できる。ロストル5の上部に燃焼室2が形成される。燃焼室2は、木質バイオマス燃料を十分に入れてもなお上部に空間ができる程度の高さを有する。
【0015】
燃焼室2の側面上部には、投入口4が設けられている。この投入口4には開閉可能な扉を設けることが好ましく、燃料投入時以外は閉めておく。
【0016】
灰保持部材3は、底面に通気性の板材を有するものである。十分な深さを有する灰保持部材を1基だけ設け、すべての灰を入れるようにしてもよい。ここでは、複数の灰保持部材3a,3b,3cを設け、高さ方向に所定の間隔をあけて多段に配置している。このように多段式にすることによって、燃焼室2から上る空気が灰の中を通過しやすくなり、特に図1に示すように3段程度にすることが好ましい。
【0017】
灰保持部材の一例についてさらに詳細に説明する。図2は、灰保持部材の底部の拡大断面図である。この例において、底部部材6は3mm程度の穴7を多数有するパンチングメタルであり、その上に1層の通気性セラミック粒8を敷いている。ここでは、粒の大きさが4〜6mmの多孔性アルミナ(エヌ・イー ケムキャット社DASH−00)を使用した。このように底部部材の穴7よりも若干大きい粒材を敷くことによって、灰が落下するのを防止できるとともに、十分な通気性を保持することができる。また、燃焼開始直後で発生する水分によって灰が固まって通気を妨げることを防止することができることも判明した。
【0018】
木質バイオマス暖房装置1の側部で燃焼室の下に空気取入口9が設けられており、外部の空気を燃焼室2に取り入れる。この空気取入口9には空気取込みファン10が設けられている。
【0019】
灰保持部材の上部には第1排気管11が設けられていて、灰保持部材を通過した空気が木質バイオマス暖房装置1の外に排出される。この第1排気管11には排気ファン12が設けられている。
【0020】
木質バイオマス暖房装置1は、燃焼室2から灰保持部材3へ空気を送る送風装置を有する。図1の例では、燃焼室2の上流に設けられた空気取込みファン10と、灰保持部材の下流に設けられた排気ファン12により送風装置が構成されている。また、空気取込みファン10と排気ファン12は制御装置(図示省略)に接続されており、風量を調整することができる。
【0021】
上記の構成により、空気取入口9より空気が燃焼室2に送られ、さらに灰保持部材3を通過し、第1排気管11より排出される。この空気の通路を第1の通気路とする。ここで、第1排気管11の入口または途中に白金やゼオライトなどの触媒を設け、排気中に含まれる一酸化炭素を除去することができる。しかし、この例では、空気取入口9の近くに空気の分岐点Pを設け、燃焼室2や灰保持部材3の外側を通って第2排気管へ続く第2の通気路を形成している。
【0022】
木質バイオマス暖房装置1は円筒状の第1円筒容器13と、その外部の第2円筒容器14を有する。第1円筒容器13の内部には燃焼室2と灰保持部材3が設けられている。第1円筒容器13と第2円筒容器14の間には所定の空間があり、これが第2の通気路になる。第2の通気路は燃焼室2を通る第1の空気路とは遮断されており、燃焼室2を通った空気は第2の通気路に流入することはできない。
【0023】
第1円筒容器13と第2円筒容器14の間には、セラミックウールが詰められている。このセラミックウールは断熱材として作用し、側壁からの熱の流出を低減する。また、外壁が高温にならないので、安全性も向上する。さらに、セラミックウールはある程度の隙間を有するので、空気はゆっくりと上昇することができ、第1円筒容器13から熱を受取ることができる。ここでは、第1円筒容器13の外壁に沿って複数の中空管(図示省略)を設け、通気性を上げている。
【0024】
木質バイオマス暖房装置1の上部には、略円錐状の外形を要する上部容器15が置かれる。この上部容器15と第1円筒容器13は仕切り板16で区切られている。一方、外周付近には仕切り板はなく、上部容器内の空間は第2の通路とつながっている。この上部容器15および仕切り板16は第1円筒容器13と第2円筒容器14に対して着脱可能になっていて、取り外したときは木質バイオマス暖房装置1の上部は開放状態になり、灰保持部材3を着脱することができる。
【0025】
仕切り板16の上面には多数のフィン17が設けられていて、空気との接触面積が大きくなっている。仕切り板16の中心部は穴になっており、この穴を通して第1排気管11が上部容器15を突き抜けるように設けられている。この第1排気管11を取り巻くように第2排気管18が設けられている。第2排気管18の空気は第1排気管11の外壁に接して加熱される。第2排気管18の外周には保温材19が設けられており、熱の流出を軽減している。第2排気管18より排出される空気は燃焼室2や灰を通過しておらず、清浄な空気であり、そのままビニールハウスや家屋に送って暖房に利用できる。第2排気管18にも吸引ファンを設けてもよい。
【0026】
第1排気管11を通過する空気も煙成分が除去されており、そのまま外部へ排出することができる。また、触媒中を通過させて一酸化炭素を除去することにより、この空気も温室などの暖房に使用することができる。第1排気管11の空気は多くの二酸化炭素を含んでいるので、温室内の植物の光合成を促進することができる。ただし、二酸化炭素量が多すぎると植物の育成に支障が出るので、その場合、たとえば第1排気管11を分岐して適正量を暖房に使用し、それ以外を環境中に排出することができる。
【0027】
ロストル5の下には、ロート状の集灰部材20と灰受け部材21が設けられている。灰受け部材21は、木質バイオマス暖房装置1の側部より着脱することができる。
【0028】
第2通路に沿って風速センサ設置穴22が設けられており、第2通路の風速を計測できるようになっている。また、燃焼室2、灰保持部材3、第1排気管11などには磁石温度センサ23が設けられ、各所の温度が測定できる。これらの測定値に基いて空気取込みファン10および排気ファン12の回転数を調整し、発熱量や第2排気管18の排出量を制御することができる。
【0029】
つぎに、この木質バイオマス暖房装置による暖房方法について説明する。上部容器15を外し、灰保持部材3に灰を入れる。灰は木材など有機バイオマスを燃焼させて発生させたものが好ましい。灰の層の厚さは装置の大きさや発熱量、風量などに合わせて選択するが、たとえば、木質バイオマス暖房装置によって発生した灰なども使用できる。直径800〜1000mmの灰保持部材を3段で使用する場合、各段の灰保持部材に3mm程度の厚さで入れたところ、通気性が良く、しかも十分な無煙化処理能力を有した。この灰は、ほとんど減少しないので、一度設置すれば長期間使用できる。
【0030】
燃焼室2に木質バイオマス燃料を入れる。木質バイオマス燃料としては、薪や木材チップ、乾燥させた雑草など、さまざまな植物性の燃料が使用できる。この木質バイオマス燃料の上に若干の炭と着火剤を置くことによって、点火が容易になる。
【0031】
木質バイオマス燃料に点火し、上部容器15を取り付ける。木質バイオマス燃料が燃え始めると空気取込みファン10および排気ファン12を作動させる。空気取入口9より導入される空気は途中で分岐し、空気の一部は第1通路である燃焼室2に下から流入し、他方は第1円筒容器13と第2円筒容器14の間の第2通路へ送られる。
【0032】
燃焼室2の下より流入した空気は木質バイオマス燃料を燃焼させ、この熱で加熱されて上昇する。燃焼室2内の空気は、タール分など煙成分を含んでいる。燃焼室2を出た空気は、通気性の灰保持部材3へ入いる。燃焼室2のすぐ上に設けられた灰保持部材3中の灰は高温になっている。空気中の煙成分はこの灰に吸着され、すぐに再燃焼される。こうして、灰保持部材3を通過した時には、空気は無煙状態になり、第1排気管11を通って木質バイオマス暖房装置1の外へ排出される。
【0033】
一方、第2通路へ流入した空気は第1円筒容器13と第2円筒容器14の間を上昇する。燃焼室2での燃焼により第1円筒容器13は高温になっており、この熱を受取って第2通路の空気は加熱される。次いで、通気は上部容器15内を通る。この上部容器も高温になっている。特に仕切り板のフィンにより広い接触面積があり、ここでも燃焼によって発生した熱が第2通路の空気に伝達される。
【0034】
第2通路の空気は、上部容器15の頂点部においても第1排気管11の外壁より熱を受取り、加熱される。こうして、加熱された第2通路の空気は第2排気管12を通って温室などに供給され、暖房に利用される。
【0035】
発生する熱量と空気の量は、送風装置によって調整することができる。空気取込みファン10や排気ファン12の回転数を上げることにより、より多くの酸素を燃料室2に供給し、熱発生量を増大できる。また、回転数を下げることによって、燃焼が緩やかになり、燃料の消費が遅くなる。
【0036】
木質バイオマス燃料が減少したときは、投入口4より木質バイオマス燃料を簡単に追加投入することができる。したがって、暖房を停止することなく、長期間連続運転することができる。
【符号の説明】
【0037】
1.木質バイオマス暖房装置
2.燃焼室
3.灰保持部材
4.投入口
5.ロストル
6.パンチングメタル
7.穴
8.多孔性セラミック粒
9.空気取入口
10.空気取込みファン
11.第1排気管
12.排気ファン
13.第1円筒容器
14.第2円筒容器
15.上部容器
16.仕切り板
17.フィン
18.第2排気管
19.保温材
20.集灰部材
21.灰受け部材
22.風速センサ設置穴
23.磁石温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質バイオマス燃料を燃焼させる燃焼室と、燃焼室の上部に設けられた通気性の灰保持部材と、燃焼室から灰保持部材へ空気を送る送風装置と、燃焼室にバイオマス燃焼を投入する投入口を有する木質バイオマス暖房装置。
【請求項2】
複数段の灰保持部材を所定の間隔で設けた請求項1に記載の木質バイオマス暖房装置。
【請求項3】
燃焼室の上流に設けられ燃焼室へ空気を送り込む空気取込みファンと、通気性の灰保持部材の下流に設けられた排気ファンを有する請求項1または請求項2に記載の木質バイオマス暖房装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−21756(P2012−21756A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162351(P2010−162351)
【出願日】平成22年7月17日(2010.7.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第8回木質炭化学会研究発表会、木質炭化学会、平成22年5月28日
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【Fターム(参考)】