説明

木質床材

【課題】 中塗り塗料中にアルミナ、グリーンカーボン等の研磨剤を必要とせずとも、耐磨耗性及び透明性に優れる塗装表面を有する木質系の床材を提供する。
【解決手段】 木質基材(A)、下塗り層(B)、中塗り層(C)及び上塗り層(D)を有する木質床材であって、中塗り層(C)が、多官能アクリレート系モノマー又はアクリレート系プレポリマー、粒径1〜50nmのシリカ及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料の硬化皮膜で形成されたことを特徴とする木質床材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐磨耗性及び透明性に優れる木質系の床材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木質系床材には、表面保護及び意匠性向上のために、下塗り層、中塗り層、上塗り層と、各種の塗料が塗工されている。木質床材に求められる要求物性の一つとして、JASフローリング規格磨耗A試験がある。従来から、下塗、中塗塗料中にアルミナ、グリーンカーボン等の研磨剤を含有する塗料が用いられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、これらの研磨剤含有塗料は、研摩剤の沈降のため、一般に、塗工現場で添加される場合が多い。アルミナ、グリーンカーボン等の研磨剤の現場添加により、木地の照り感減・作業性の悪さ・ロングラン生産中の研磨剤の濃縮等のさまざまな問題を抱えている。その結果、得られる床材の平滑性及び透明性が必ずしも十分ではない。
【0003】
アルミナ、グリーンカーボン等の研磨剤を含有しない、乃至は研磨剤の含有量を極力低減した塗料を用いた耐磨耗性及び透明性に優れる木質系の床材が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−354823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、このような従来技術の抱える課題を解決するものであり、研磨剤を必要とせずとも、耐磨耗性及び透明性に優れる木質系の床材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ナノサイズの微粒子シリカを含有する紫外線硬化型塗料を中塗り層に用いることにより、耐磨耗性及び透明性に優れる木質系の床材を得ることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、木質基材(A)、下塗り層(B)、中塗り層(C)及び上塗り層(D)を有する木質床材であって、中塗り層(C)が、多官能アクリレート系モノマー又はアクリレート系プレポリマー、粒径1〜50nmのシリカ及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料の硬化皮膜で形成されたことを特徴とする木質床材を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、透明性が劣る、平滑性が劣るという問題を有する研磨剤を必要とせずとも、耐磨耗性及び透明性に優れる木質系の床材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の木質床材の層構成は、木質基材(A)、下塗り層(B)、中塗り層(C)及び上塗り層(D)を有する。特に、中塗り層(C)が、多官能アクリレート系モノマー又はアクリレート系プレポリマー、粒径1〜50nmのシリカ及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料の硬化皮膜で形成されたことを特徴としている。
【0010】
本発明に用いる木質基材(A)は特に限定されないが、ラワン等の南洋材を貼り合わせただけの普通合板や、針葉樹を貼り合わせた針葉樹合板でナラ・カバ・メープル・ウォールナット・ビーチ等薄単板、紙・フィルム等を表面に貼り合わせた合板が用いられる。
【0011】
下塗り層(B)を構成する塗料は、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等から選ばれるアクリレート系プレポリマー、アクリロイルモルフォリン、フェノキシアクリレート等から選ばれるモノマー、光重合開始剤、長石、タルク、粒径1〜15μmの艶消しシリカ、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤等を含有する紫外線硬化型塗料が用いられる。塗工は、例えば、ナチュラルロールコート法等で、5〜30μmの膜厚に塗工後、紫外線硬化される。
【0012】
中塗り層(C)を構成する塗料は、多官能アクリレート系モノマー又はアクリレート系プレポリマー、粒径1〜50nmの微粒子シリカ及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型塗料である。微粒子シリカの粒径は、レーザー回折・散乱法で定義される体積平均粒径である。粒径1〜50nmの微粒子シリカを高濃度に分散した多官能アクリレート系モノマー、プレポリマーの形態で塗料中に配合することができる。
【0013】
中塗り層(C)を形成する紫外線硬化型塗料中の粒径1〜50nmのシリカの含有量は、30〜60質量%であることが好ましい。又、中塗り層(C)を形成する紫外線硬化型塗料中の多官能アクリレート系モノマー又はアクリレート系プレポリマーの含有量が40〜60質量%であることが好ましい。
【0014】
多官能アクリレート系モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチトールプロパンテトラアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等に代表されるアクリレートモノマー等が挙げられる。
【0015】
多官能アクリレート系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートのオリゴマー成分等が挙げられる。
【0016】
本発明の木質床材の中塗り層を形成する紫外線硬化型塗料に含有するシリカ粒子は、ラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子が用いられる。ここで、シリカ微粒子としては、粒径1〜50nmのシリカ微粒子を用いることができる。粒径1〜50nm程度のシリカ微粒子表面のシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基を有するラジカル重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子を得ることができる。
【0017】
前記シラノール基と反応し得る官能基を有するラジカル重合性不飽和基含有有機化合物としては、例えば一般式[1]で示される化合物等が好ましく用いられる。
【0018】
【化1】

[式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはハロゲン原子又は下記に示す基である。]
【0019】
【化2】

【0020】
このような化合物としては、例えばアクリル酸、アクリル酸クロリド、アクリル酸2−イソシアナ−トエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2,3−イミノプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等、及び、これらのアクリル酸誘導体に対応するメタクリル酸誘導体を用いることができる。これらのアクリル酸誘導体やメタクリル酸誘導体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
このようにして得られたラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子は、光硬化成分として、紫外線の照射により架橋、硬化する
【0022】
本発明の木質床材の中塗り層を形成する粒径1〜50nmの微粒子シリカを含有する紫外線硬化型塗料は、研磨剤の添加無しでも、木質床材に十分な耐摩耗性を与えるが、用途により、透明性、平滑性が許される範囲で、アルミナ・グリーンカーボン等の研磨剤を任意に添加することができる。
【0023】
粒径1〜50nmの微粒子シリカを高濃度に分散した多官能アクリレート系モノマー、プレポリマーの市販品としては、ナノクリルC150(ハンズケミー社製)等が挙げられる。耐摩耗性を発現する中塗り塗料中の微粒子シリカが高濃度でアクリルモノマー又はプレポリマー中に均一に分散することで、シリカ本来の硬度が発現され、また、シリカ微粒子に結合した不飽和基が、分散媒体であるアクリルモノマー又はプレポリマーと反応することで、微粒子シリカが塗膜中に強固に定着可能となる。
【0024】
中塗り層(C)を構成する塗料には必要に応じて、各種の機能を付与するため着色剤、体質顔料、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、1〜15μmの艶消しシリカ等の添加剤を添加してもよい。
【0025】
中塗り層(C)の塗工方法は、ナチュラルロールコート法、カーテンフローコート法等で塗工後、紫外線硬化される。膜厚は5〜80μm程度が好ましい。より好ましくは10〜40μm程度である。
【0026】
上塗り層(D)を構成する塗料は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等から選ばれるアクリレート系プレポリマー、アクリロイルモルフォリン、フェノキシアクリレート、エポキシアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ジトリメチトールプロパンテトラアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等から選ばれるモノマー、光重合開始剤、長石、タルク、1〜15μmの艶消しシリカ、ポリエチレンワックス、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤等を含有する紫外線硬化型塗料で、ナチュラルロールコート法にて、5〜15μmの膜厚で塗工後、紫外線硬化される。ウェット・オン・ウェット方式で塗工を行うことがより好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明する。
【0028】
(下塗り塗料の調製)
下塗り塗料として、ポリメディックSKS−573SN(組成ウレタンアクリレート、アクリロイルモルフォリン、イルガキュア184、長石、二酸化ケイ素等含有のDIC社製紫外線硬化型塗料)を使用した。
【0029】
(実施例中塗り塗料の調製)
ナノクリルC150(トリメチロールプロパントリアクリレート/シリカ=50/50である微粒子シリカ含有プレポリマー:ハンズケミー社製)97部にダロキュア1173(光重合開始剤:チバスペシャリティ社製)3部を配合して、実施例中塗り塗料(1)を調製した。
【0030】
(比較例中塗り塗料の調製)
ポリメディックSKS−330(組成エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、タルク、1〜15μmの艶消しシリカ、消泡剤、レベリング剤、光重合開始剤等含有のDIC社製紫外線硬化型塗料)100部に、研磨剤WA−500(平均粒径35μmのアルミナ粒子:キイライト社製)20部を配合して、比較例中塗り塗料(1)を調製した。
【0031】
(上塗り塗料の調製)
上塗り塗料として、ポリメディックSK−152全艶(組成エポキシアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、光重合開始剤等含有のDIC社製紫外線硬化型塗料)を使用した。
【0032】
(実施例木質床材の作製)
(1)木質基材として、フロア合板突板カバ材を用い、ゴムナチュラルロールコーター塗工機で、下塗り塗料であるポリメディックSKS−573SNを30g/m塗布し、200mJ/cmの紫外線を照射した。
(2)下塗り塗料の硬化塗膜上に、ゴムナチュラルロールコーターで、実施例中塗り塗料(1)を30g/m塗布し、200mJ/cmの紫外線を照射した。
(3)中塗り塗料の硬化塗膜上に、ゴムナチュラルロールコーターで、上塗り塗料であるポリメディックSK−152全艶を10g/m塗布し、200mJ/cmの紫外線を照射して、実施例木質床材を得た。
【0033】
(比較例木質床材の作製)
中塗り塗料として、比較例中塗り塗料(1)を用いた他は、前記した実施例木質床材の製造と同様の手順で比較例木質床材を得た。
【0034】
(実施例塗工紙、比較例塗工紙の作製)
塗布する基材として隠蔽率試験紙(JIS K 5600規定 日本テストパネル株式会社製)を用いた他は、(実施例木質床材の作製)(比較例木質床材の作製)に前期した同様の方法で、塗工紙を得た。
【0035】
(評価方法1:JASフローリング摩耗A試験)
木質床材をテーバー摩耗試験機の回転板に水平に固定し、研摩紙(JIS A 1453に規定するもの)を巻きつけたゴム製円盤(JIS A 1453に規定するもの)2個を取り付け、500回転後、試験片の表面材料が残っており、基材が現れることなく、かつ、100回転あたりの摩耗減量が0.15g以下で合格基準を満たす。この場合、試験片面上に加わる総荷重量に相当する質量は、ゴム製円盤の質量を含め1000gとする。結果を表1に示す。
【0036】
(評価方法2:隠蔽率試験)
JIS 5600−4−1に規定の方法による。(実施例塗工紙、比較例塗工紙の作製)で作成した隠蔽率試験紙を使用し、色彩色差計CR−300 (ミノルタ製) XYZ表色表示にて測定した。
隠蔽率は以下に定義される。
隠蔽率=黒地部の可視光反射率(黒字部のY値)/白地部の可視光反射(白地部のY値)
結果を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により、透明性が劣る、平滑性が劣るという問題を有する研磨剤を必要とせずに、研磨剤を含有する木質床材と同等の耐磨耗性を有し、且つ、透明性にも優れる木質系の床材を提供することができ、住宅産業に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材(A)、下塗り層(B)、中塗り層(C)及び上塗り層(D)を有する木質床材であって、中塗り層(C)が、多官能アクリレート系モノマー又はアクリレート系プレポリマー、粒径1〜50nmのシリカ及び光重合開始剤を含有する紫外線硬化型塗料の硬化皮膜で形成されたことを特徴とする木質床材。
【請求項2】
前記した中塗り層(C)を形成する紫外線硬化型塗料中の粒径1〜50nmのシリカの含有量が30〜60質量%である請求項1に記載の木質床材。
【請求項3】
前記した中塗り層(C)を形成する紫外線硬化型塗料中の多官能アクリレート系モノマー又はアクリレート系プレポリマーの含有量が40〜60質量%である請求項1又は2に記載の木質床材。
【請求項4】
前記した中塗り層(C)の膜厚が5〜80μmである請求項1〜3の何れかに記載の木質床材。

【公開番号】特開2010−274572(P2010−274572A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130416(P2009−130416)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】