説明

木造建築物

【課題】我が国の現在の森林資源を有効に活用し得る木造建築物を提供する。
【解決手段】垂直に立てられた複数本の柱4と、その柱4間に掛け渡された梁、桁、胴差し等の横架材5と、を有する木造建築物において、前記柱4,40は、断面略正方形で1辺が約90mmの構成材15a〜15cを少なくとも3本使用すると共に各構成材15a〜15cを当接状態に纏めて構成し、前記横架材5は、断面略正方形で1辺が約90mmの構成材16a〜16cを少なくとも3本使用すると共に各構成材16a〜16cを上下方向に積み重ねて一体に接合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の住宅は、コンクリート製の基礎の上に木製の土台を設置し、その土台上に複数本の柱を立て、その柱間に梁、桁、胴差し等の横架材を掛け渡して骨組みを形成し、その骨組みに外パネルや内パネルを接合するようにした、いわゆる木造軸組工法によるものが多い。
このような木造軸組工法では、柱や横架材の強度が重要になるため、例えば強度が要求されるコーナー部分の柱(隅柱)では105mm×105mmや120mm×120mm程度の木材が使われる。なお、このような柱を鉄骨に置き換えるようにした技術も存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−147977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、我が国では林業の衰退が問題になっている。林業が衰退すると山が荒れ、その影響は、雨水を介して河川に及び最終的には海の環境をも悪化させる。衰退した林業を立て直すには国産材の需要を高めればよいのであるが、現在の我が国の森林資源構成では120mm×120mmの木材になり得る木の割合が少なく(例えば岐阜県で約10%)、それ故高価である。そのため特許文献1のように木材を鉄骨に置き換えたり、輸入材を使用する、という方向に流れやすく、結果として国産材の需要が減り、我が国の林業がさらに衰退する、という悪循環に陥っている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、その目的は、我が国の現在の森林資源を有効に活用し得る木造建築物を提供し、ひいては林業の活性化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明は、
垂直に立てられた複数本の柱と、その柱間に掛け渡された梁、桁、胴差し等の横架材と、を有する木造建築物において、
前記柱は、断面略正方形で1辺が約90mmの構成材を少なくとも3本使用すると共に各構成材を当接状態に纏めて構成し、
前記横架材は、断面略正方形で1辺が約90mmの構成材を少なくとも3本使用すると共に各構成材を上下方向に積み重ねて一体に接合してなる木造建築物を提供する。
【0007】
また、請求項2に記載したように、コーナー部分に位置する前記柱は、1本の構成材の隣り合う2面に他の2本の構成材を当接させて少なくとも3本を平面視L字形に組み合わせて構成し、
非コーナー部分に位置する前記柱は、少なくとも3本を平面視I字形に組み合わせて構成したものである請求項1記載の木造建築物を提供する。
【0008】
また、請求項3に記載したように、前記構成材は、間伐材を原料とする請求項1又は2に記載の木造建築物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
90mm角の細い構成材を少なくとも3本の組にして柱や横架材にすれば、大口径の柱や横架材に劣らない強度と耐久性が実現できる。したがって本発明の木造建築物は、大口径の柱や横架材を使わずに従来の木造建築物に劣らない強度と耐久性を発揮する。しかも、柱の幅が90mmであるため壁厚が薄くなり、その分室内空間を広くすることができる。
例えば岐阜県の森林資源構成は、120mm×120mmの木材に対応できなくとも100mm×100mmや110mm×110mmの木材に対応可能な木が約45%を占めるから、本発明を実施することにより、この森林資源が有効に活用できる。もちろん、山の手入れで必然的に発生する間伐材をも有効に活用することができる。したがって、国産材の需要を喚起して林業の活性化に貢献し、ひいては山の健全化を通じて環境改善にも貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】土台と柱と横架材の接合状態を示す斜視図である。
【図2】(a),(b)は柱の分解斜視図である。
【図3】横架材の分解斜視図である。
【図4】木造建築物を示す概略の横断平面図である。
【図5】木造建築物を示す要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
実施形態の木造建築物1は、図4,図5に示したようにコンクリート製の基礎2の上に木製の土台3を設置し、その土台3上に適宜な金具(図示せず)を介して複数本の柱(管柱)4,4…,40,40…を立て、その柱4,40間に梁、桁、胴差し等の横架材5を掛け渡して骨組みを形成し、さらにその骨組みの外側に外パネル6を設置すると共に内側に内パネル7を設置し、その外パネル6と内パネル7の間に断熱材8を介装してなる。
【0012】
実施形態の木造建築物1は2階建てであって、図5に示したように、前記横架材5(胴差し)の上に1階と同様の柱4,40が建てられており、その柱4,40の上に屋根(図示せず)が設けられている。なお、図5は木造建築物1の開口部を断面にして示したものであり、アルミ製の縁枠9に引き違い構造のガラス戸10,10が嵌め込まれている。その他、図5において、11は大引き、12は根太、13は床板、14は床下断熱材である。
【0013】
[柱]
柱4,40は、図2(a),(b)に示したように、小径材又は間伐材から加工した断面略正方形で1辺が約90mmの構成材15a〜15cを、例えば3本当接状態に纏めて形成したものである。具体的には、コーナー部分に位置する柱4(隅柱)は、図2(a)に示したように1本の構成材15aの隣り合う2面に他の2本の構成材15b,15cを当接させて平面視L字形に組み合わせて形成され、残りの柱40は、図2(b)に示したように3本の構成材15a〜15cを平面視I字形に組み合わせて形成されている。なお、実施形態の各構成材15a〜15c同士は、非接合状態になっているが、より強度を高めるために接着剤等で一体に接合してももちろんよい。
【0014】
[横架材]
横架材5は、図3に示したように小径材又は間伐材から加工した断面略正方形で1辺が約90mmの構成材16a〜16cを、例えば3本当接状態に纏めて形成したものである。具体的に横架材5は、3本の構成材16a〜16cを上下方向に積み重ね、重ね上げた構成材16a〜16cにボルト17を通してナット18で接合してなる。
【0015】
前記柱4,40と横架材5は、周知の建築用の連結金具19で接合されるが、実施形態では柱40が3本であることを利用し、構成材15a〜15cの中心に位置する構成材15bを高くして柱40の頂部を正面視凸形に形成すると共に図1の破線で示したように両横の構成材15a,15cの頂部に横架材5の端部を載せるようにしてある。
【0016】
なお、図示しないが、実施形態の木造建築物1の骨組みには、上記柱4,40の間に間柱や筋交い等が適宜設けられている。
【0017】
以上、本発明を実施の形態について説明したが、もちろん本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では構成材15a〜15c,16a〜16cの本数を3本にしたが、それ以上の本数にしてもよい。
また、実施形態では横架材5の構成材16a〜16cを一体に接合する手段としてボルト17とナット18を使用したが、構成材16a〜16c同士を接着剤で接着したり、或は構成材16a〜16cの側面に金具を宛がい、その金具を介して構成材16a〜16c同士を一体に接合してもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 …木造建築物
4,40 …柱
15a〜15c …構成材
16a〜16c …構成材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に立てられた複数本の柱と、その柱間に掛け渡された梁、桁、胴差し等の横架材と、を有する木造建築物において、
前記柱は、断面略正方形で1辺が約90mmの構成材を少なくとも3本使用すると共に各構成材を当接状態に纏めて構成し、
前記横架材は、断面略正方形で1辺が約90mmの構成材を少なくとも3本使用すると共に各構成材を上下方向に積み重ねて一体に接合してなることを特徴とする木造建築物。
【請求項2】
コーナー部分に位置する前記柱は、1本の構成材の隣り合う2面に他の2本の構成材を当接させて少なくとも3本を平面視L字形に組み合わせて構成し、
非コーナー部分に位置する前記柱は、少なくとも3本を平面視I字形に組み合わせて構成したものであることを特徴とする請求項1記載の木造建築物。
【請求項3】
前記構成材は、間伐材を原料とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の木造建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−82609(P2012−82609A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228991(P2010−228991)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(501338613)株式会社あったか森の国から (3)
【Fターム(参考)】