説明

未成熟柿果実粉末組成物とその製造方法

【課題】簡便かつ安価に製造できる脂質代謝改善剤、胆汁酸の排泄促進剤、抗肥満剤、及び排便促進剤の提供。
【解決手段】乾燥後、粉砕した、水分を5.5〜10%、タンニン酸を3.3〜15%含有する未成熟柿果実粉末組成物。該未成熟柿果実粉末組成物を含有する脂質代謝改善剤、胆汁酸の排泄促進剤、抗肥満剤、排便促進剤及び健康補助食品。該未成熟柿果実粉末組成物は、未成熟柿果実から蔕部を除去する工程と、前記蔕部の除去された前記未成熟柿果実を、果皮を含んだ状態で小片状にカットするカット工程と、小片状にカットされた未成熟柿果実片を乾燥させ、水分を除去する乾燥工程と、乾燥した未成熟柿果実片を粉砕し、粉末化する粉末化工程とからなる製造方法により製造しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開花から成熟2週間前までの間に摘果された未成熟柿果実を原料として、乾燥、粉砕した未成熟柿果実粉末組成物の製造方法、及び該未成熟柿果実粉末組成物を含有する脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、深夜営業または24時間営業の飲食店やコンビニエンスストア等の増加に伴って、現代人の生活スタイルが大きく変化している。特に、食環境に対する影響は著しく、朝・昼・晩の一日三食を規則正しく摂食することができない人が増加している。また、食に対する嗜好も大きく変化し、幼児期からハンバーガーやピザ等の脂質類を多く含む食品を食べ続けることにより、脂質類を含むこれらの欧米型の食事を好む傾向が強くなり、一方で、日本の古来からの魚や野菜を中心とした和食が、若年層から敬遠されることが多くなっている。
【0003】
そのため、脂質類の多い食事を過剰に摂食し、かつ睡眠不足や運動不足などの不規則な生活を続けることにより、血液中の脂質類(例えば、中性脂肪やコレステロール等)の濃度が上昇し、生活習慣病の一種である「高脂血症」と診断される人々が増加する。この高脂血症は、動脈硬化を引き起こす主たる要因とされ、これに伴って心筋梗塞や脳卒中等の生命を危険にさらす可能性が高く、より重篤な病気を発症させる危険性が極めて高くなるものである。しかしながら、該高脂血症に罹患した患者は、ほとんど自覚症状がないため医療機関での診断を早期に受診することがなく、また、自身の体の状態を客観的に判断することもできないため、余計に症状を悪化させる傾向がある。また、職場等の定期健康診断によって高脂血症と診断された場合であっても自覚症状の乏しさから、危機感を募らせることがないため、係る症状に対してはほとんど何の対応もしない人が多く見受けられる。
【0004】
そこで血液中の脂質の濃度を低下させ、動脈硬化の進行を防ぐ目的で、種々の研究・開発が進められている。通常、動脈硬化を防ぐための、最善の手段は、高脂質の食事を摂らないことにつきる。そのため、日常生活を送る上で最低限の脂質を摂取して、余分な脂質を極力体内に入れないようにするために、カロリー計算等によって食事の内容や量をコントロールする食事療法が最も簡易に行われている。しかしながら、この食事療法を成功させるためには、医師による適切なアドバイスと、患者自身の強い意志を必要とし、ほとんど自覚症状のない高脂血症患者の場合、このような意志を長期間に亘って継続して保ち続けることは非常に難しかった。
【0005】
そこで、食事療法以外の手段が検討されている。例えば、上記の脂質(特に、コレステロール)の血中量を減少させることを目的として、柿由来縮合型ポリフェノールを摂取することによって、血中コレステロール量が著しく減少することを見出している(特許文献1参照)。コレステロール代謝改善物として一定の機能を有する縮合型ポリフェノール化合物は、果実種によって含有量に多少の差異は見られるものの、一般的な果実(果物)にはほとんど全て含まれている。また、カシス果実由来食物繊維を摂取することによって、血中コレステロール上昇抑制効果を見出し特許出願している例もある(特許文献2)。さらには、柑橘類の果実由来の親水性成分又はエリオシトリンのコレステロール低減効果について特許出願している例がある(特許文献3)。その他にもこれら同様果実から抽出することにより得られるポリフェノールなどの成分を利用したものも見られる(特許文献4、5)。
【0006】
しかしながら、果実から有効成分を得るための従来の方法は、アルコール等の溶媒で抽出して、さらに精製するなど煩雑な処理工程が必要であり製造コストが高くなる等の問題があった。例えば、上記の縮合型ポリフェノール化合物(柿タンニン)の抽出は、原料となる柿の果実(成熟果実)を磨砕し(磨り潰し)、その磨砕物にエタノール水溶液を加え、浸漬した状態で数日間、室温で靜置し、上澄を濾過することによって得られた濾液を、吸着剤を充填したカラムに通過させた後、カラムを洗浄して、再び、エタノール水溶液を用いて、吸着成分を溶出させ、得られた溶出液を減圧濃縮した後、凍結乾燥することによって精製していた。すなわち、係る柿タンニンの抽出のためには、1)磨砕、2)アルコール添加、3)室温で靜置、4)濾過、5)カラムに吸着、6)カラムから溶出、7)減圧濃縮、8)凍結乾燥等の複雑な処理工程を経る必要があった。また、上記処理によって得られる縮合型ポリフェノール化合物は、柿の果実10kg(原料)に対し、500g程度の収量しか得ることができなかった。すなわち、エタノール水溶液を利用し、縮合型ポリフェノール化合物を抽出するための処理は、複雑かつ面倒な処理の割には、原料に対して得られる生成物の収量は少なく製造コストを引き上げていた。
【0007】
また、生活習慣や食生活などが原因となる肥満や便秘は、多くの人が抱えている悩みであるにもかかわらず他の病気に比べると軽視されている。肥満に対しては生活改善指導や食事療法が行われ、便秘改善には生活改善指導のほかに薬などが使用されている。また、最近では抗肥満、排便促進を目的とした健康食品や特定保健用食品が多く登場している。
【0008】
一方、一般的な柿栽培では、1本の樹木に多くの柿を実らせると、果実が小玉化して商品価値が下がることから、成熟果実を大玉化して商品価値を上げるために、柿の成長過程における各段階において、「摘蕾」や「摘果」作業が行われている。この摘果作業等で取り除かれた大量の未成熟果実は、特に他の用途もなく、廃棄処分されていた。また、成熟果実であっても選果場で、きずついたり、形が整っていない等の理由で大量の規格外果実も廃棄処分されていた。このような規格外果実や前記した摘果果実も丹精込めて育てた果実であり、そのまま廃棄するのではなく、何らかの用途に転用して、これらを有効利用することが望まれていた。
【特許文献1】特開2003−231684号公報
【特許文献2】特開2006−76954号公報
【特許文献3】特開2005−225847号公報
【特許文献4】特開平11−318347号公報
【特許文献5】特開平10−330278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事実に鑑みて、開花から成熟2週間前までの間に摘果された未成熟柿果実を乾燥後、粉砕した未成熟柿果実粉末組成物の製造方法、及び該未成熟柿果実粉末組成物を含有する脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤を提供するものである。
【0010】
さらに、多くの人が抱えている肥満や便秘という悩みを解消するために、該未成熟柿果実粉末組成物を含有することで確実な排便促進効果を発現し、長期にわたる使用にも適した抗肥満、排便促進剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、開花から成熟2週間前までの間に摘果された未成熟果実に優れた脂質代謝改善作用、及び胆汁酸の排泄促進作用、さらには抗肥満作用及び排便促進作用を有することを見出した。係る収穫前の未成熟果実を原料として未成熟果実粉末組成物を得て、該未成熟柿果実粉末組成物を含有する脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤の製造に成功した。
【0012】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物の原料に使用する未成熟柿果実とは、開花から収穫までの間に摘果された未成熟柿果実、及び収穫前に生産調整のために摘果された未成熟柿果実等これまでに食経験の少ない未成熟柿果実をいう。
【0013】
なお、柿果実における成熟柿と未成熟柿との判別については、特に明確な基準はないが、本願発明においては、開花から収穫の2週間以上前に摘果されたものを未成熟果実とする。
【0014】
上記した開花から収穫の2週間以上前に摘果された未成熟柿果実には、柿の開花から成熟果実の収穫までの成長過程における各段階において行われる「摘果」作業によって得られた幼果、あるいは収穫前に収穫量の調整を図るために摘果された未成熟柿果実を含むものである。また、未成熟柿果実の種類は、例えば、富有柿、蜂屋柿、平種なし柿、刀根早生柿等が例示する事ができるが、本発明の未成熟柿果実粉末組成物の原料には、これらの柿の種類に限定されるものではない。
【0015】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物は、未成熟の柿果実を原料として、未成熟柿果実に含まれる水分を所定の水分率以下になるまで乾燥除去し、乾燥させた後、さらに粉砕機等(例えば、ボールミル等)の粉砕手段によって粉末化することにより、未成熟柿果実粉末組成物を得ることができる。
【0016】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物は、従来の特定の成分をエキスとして抽出する方法と比べ、果実及び果皮をそのまま、換言すれば果実を”まるごと”含んだものとすることができ、特に、未成熟柿果実には水分、食物繊維、蛋白質、脂質、NFE(糖、タンニン酸等を含む)、及び灰分等の物質が多量に含まれているため、これらを無駄にすることなく、容易に体内に摂取できる態様の粉末状の組成物を得る事ができる。また、該未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤及び胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤を調製することができる。
【0017】
また、未成熟果実を乾燥させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、天日に長時間晒すことによって自然乾燥を行うもの、或いは乾燥機等(例えば、電熱器等)を利用し、強制的に乾燥させる方法等、周知の機器及び手段を用いることもできる。また、果皮や種子を含んだ果実を粉末化する方法も粉砕機等(例えば、ボールミル等)を利用するもの、或いは乾燥後の果実を押し潰すなど、強い力(圧力)を加えて粉末化する等の方法も利用することができる。 なお、前述したように、本発明の未成熟柿果実粉末組成物は水分、食物繊維、蛋白質、脂質、NFE(糖、タンニン酸等を含む)、及び灰分よりなる。このような果実は、未成熟柿果実に限られるものではなく、含有量の差はあるもののリンゴ、ナシ、瓜、及びキウイ等の一般的な果実(果物)中にほとんど含まれていることが知られている。そのため、上述した未成熟柿果実以外の未成熟果実を原料として得た組成物を未成熟柿果実粉末組成物と同様に、脂質代謝改善剤または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤を調製のために単独で用いても、或いは未成熟柿果実粉末組成物に混合して用いてもよい。
【0018】
したがって、本発明の未成熟柿果実粉末組成物によれば、従来は廃棄処分等がされていた摘果された幼果、及び収穫の2週間以上前に摘果された未成熟柿果実を有効に利用して、水分、食物繊維、蛋白質、脂質、NFE(糖、タンニン酸等を含む)、及び灰分などを含有した未成熟柿果実粉末組成物を得る事ができる。さらに、該未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善作用を奏する脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄を促進する胆汁酸の排泄促進剤、さらには肥満を予防する抗肥満剤、及び便の排泄を促進する排便促進剤を調製することができる。この結果、原料となる未成熟果実の確保が比較的容易であって、原料が安定に供給される未成熟柿果実粉末組成物の製造方法を提供するのみならず、利用されることなく廃棄されていた摘果、或いは収穫2週間前に摘果された未成熟果実を有効に利用できるようになり、果実栽培農家の経営に貢献できる。
【0019】
さらに、本発明は、「少なくとも、水分、食物繊維、蛋白質、脂質、NFE(糖、タンニン酸等を含む)、及び灰分を含む成熟果実または未成熟果実の粉末組成物よりなることを特徴とする胆汁酸の排泄促進剤」を提供する。胆汁酸は脂質や脂溶性ビタミンの腸管での吸収に必須の物質として知られており、本発明の水分、食物繊維、蛋白質、脂質、NFE(糖、タンニン酸等を含む)、及び灰分を含む未成熟果実粉末組成物を摂取することによって、腸管からの胆汁酸排泄が促進される結果、体内で胆汁酸の合成が促進される。胆汁酸の合成促進は、血清コレステロールを低減させることから動脈硬化の予防または治療剤、肥満の予防または治療剤、及び胆石形成の予防または治療剤として有用である。ここでNFEは可溶性無窒素物であり、例えば、糖質、ポリフェノール等を含むものである。
【0020】
一方、本発明の未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤の製造方法は、未成熟柿果実から蔕部を除去する除去工程と、前記蔕部の除去された前記未成熟柿果実の果皮を含んだ状態で小片状にカットするカット工程と、小片状にカットされた柿果実片を乾燥させ、前記柿果実に含有する水分を除去する乾燥工程と、乾燥した乾燥柿果実片を粉砕し、粉末化する粉末工程とから構成されている。ここで、原料として用いる未成熟柿果実は、蔕部を予め除去しておくことが望ましいが、果皮及び種子はそのまま乾燥後、粉砕して未成熟柿果実粉末組成物の一部として利用することができる。
【0021】
したがって、本発明の未成熟柿果実粉末組成物の製造方法によれば、乾燥及び粉末化の工程で障害となる蔕部を予め取り除く前処理を行い、果皮を剥かずに柿果実を小片状にカットする。柿果実のカットの形状はサイコロ状、短冊状等表面積を増大させて、乾燥しやすい形状であればよい。カットした柿果実の乾燥は、天日に晒して時間を掛けてゆっくりと乾燥させてもよく、或いは温風乾燥機を用いて乾燥してもよい。また、乾燥工程において、「減圧乾燥機」、または「真空乾燥機」を用いることも可能である。減圧乾燥機は、密閉された容器に被乾燥物を収容し、係る容器内を大気よりも低い気圧にすることで、被乾燥物中に含まれる水分を除去し、乾燥させることができる。乾燥方法は特に限定されるものでないが、加熱温度が高すぎると有効成分が分解することも考えられるので、適度な温度で乾燥することが望ましい。
【0022】
乾燥した未成熟柿果実は、ボールミル式の粉砕機、押出・剪断式粉砕機、石臼式粉砕機等が例示できるが、熱を発して有効成分等を分解しない粉砕機を使用することが望ましい。さらに、本願発明の未成熟柿果実粉末組成物を医薬用途、健康補助食品用途等の目的に応じた粒径に粉砕できる粉砕機を利用することが望ましい。なお、粉砕機等による粉砕後の脂質改善剤の粒径を整えるために、所定のメッシュ粗さの篩を用いて、篩にかけたものであっても構わない。
【0023】
上記のようにして得られた未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤は治療的有効量に、1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体(添加剤)および/または希釈剤とともに処方することができる。以下で詳細に説明するように、本発明の未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤組成物、及び胆汁酸の排泄促進剤組成物、さらには抗肥満剤及び排便促進剤は、以下のことに適応したものを含めて、固体での投与のために例えば、錠剤、巨丸剤、粉末薬、顆粒剤等が例示できる。
【0024】
「治療的有効量」とは、本明細書で使用される場合、いずれの医療にも適用可能な妥当な便益/リスク比で、何らかの所望の治療効果を生じるために有効な作用物質または組成物の量を意味する。本発明の未成熟柿果実粉末組成物の場合、成人の1日当たりの摂取量は0.1g〜50g、好ましくは1g〜30gである。
【0025】
「薬学的に許容し得る」とは、本明細書では、正しい医学的判断の範囲内で、妥当な便益/リスク比に見合って、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応等の問題や合併症なしに、人間および動物の組織に接触しての使用に好適な、化合物、材料、組成物、および/または投薬形態を指すために使用される。
【0026】
「薬学的に許容し得る担体」とは、本明細書で使用される場合、体の一器官または一部から体の別の器官または一部へ本発明の脂質代謝改善剤を輸送することに関与する固体の充填剤、希釈剤、補形薬、溶剤またはカプセル化材料のような、薬学的に許容し得る材料、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、剤形の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で「許容し得る」ものでなければならない。薬学的に許容し得る担体として働き得る材料のいくつかの例には以下のものがある:(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースのような糖;(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンのようなデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび補形薬;(9)落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油のような油;(10)プロピレングリコールのようなグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのようなポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩液;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;ならびに(21)薬物処方で使用される他の非毒性の適合物質である。
【0027】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味料、香味剤および香料、保存料および酸化防止剤もまた脂質代謝改善剤組成物、及び胆汁酸の排泄促進剤さらには抗肥満剤、及び排便促進剤組成物中に存在してもよい。
【0028】
薬学的に許容し得る酸化防止剤の例には以下のものがある:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性酸化防止剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロール等のような油溶性酸化防止剤;ならびに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤。
【0029】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤の剤形は、経口投与を含む剤形は、単位投薬形態でもよく、薬学分野で周知のいかなる方法によって調製されてもよい。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる未成熟柿果実粉末組成物の量は、脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤として効果を発揮する量、特定の投与方式に応じて変更することができる。担体材料と組み合わせて単一投薬形態を作製することができる未成熟柿果実粉末組成物の量は一般に、治療効果を生じる未成熟柿果実粉末組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1%から約99%まで、好ましくは約5%から約70%まで、最も好ましくは約10%から約30%までの範囲の本発明の未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤である。
【0030】
これらの剤形または組成物を調製する方法は、本発明の未成熟柿果実粉末組成物を担体と、および随意に1つまたは複数の副成分と混合するステップを含む。一般に、剤形は本発明の未成熟柿果実粉末組成物を微粉化した固体担体と均一かつ緊密に結びつけ、必要であれば製品を整形することによって調製することができる。
【0031】
経口投与に好適な本発明の剤形は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、ロゼンジ(味付けされた主薬、通常はスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカント、を用いる)、粉末、顆粒、の形態でもよく、それぞれ活性成分として所定量の本発明の未成熟柿果実粉末組成物を含む。本発明の未成熟柿果実粉末組成物は、巨丸剤、舐剤、またはペーストとして投与されてもよい。
【0032】
経口投与のための本発明の脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤の固体投薬形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末薬、顆粒剤等)では、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような1つまたは複数の薬学的に許容し得る担体、および/または以下のもののいずれかと混合される:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸のような充填剤または増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムのような粘結剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶解遅延剤;(6)4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物のような潤滑剤;ならびに(10)着色剤。カプセル、錠剤および丸薬の場合、薬物組成物は緩衝剤を含んでもよい。同様の種類の固体組成物が、ラクトースまたは乳糖のような補形薬と、高分子量ポリエチレングリコール等とを用いたソフトおよびハード充填ゼラチンカプセル内の充填剤としても使用可能である。
【0033】
錠剤は、圧縮または成形によって、随意に1つまたは複数の副成分とともに、作製され得る。圧縮された錠剤は、粘結剤(例えば、ゼラチンもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムデンプンもしくは架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製され得る。成形タブレットは、不活性液体希釈剤で湿潤化された粉末化合物の混合物を好適な機械で成形することによって作製され得る。
【0034】
糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤のような、本発明の脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤を錠剤等の固体投薬形態とするには、随意に、刻み目を付けられ、または薬物調剤分野において周知の腸溶性被膜等の被膜および殻を用いて調製されてもよい。それらは、例えば、所望の放出プロファイルを提供するための種々の比率でのヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて、内部の活性成分の緩徐なまたは制御された放出を提供するように調剤されてもよい。また、胃腸管のある特定の部分のみで、またはそこで優先的に、随意に遅延したやり方で、脂質代謝改善剤を放出する組成であってもよい。使用可能な埋込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスがある。
【0035】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤の経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に許容し得る乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルがある。液体投薬形態は、本発明の未成熟柿果実粉末組成物に加えて、例えば水や他の溶媒のような当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブタジエングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルのような可溶化剤および乳化剤、およびそれらの混合物を含んでもよい。
【0036】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味剤、着色剤、香料および保存剤のような補助薬を含んでもよい。
【0037】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにそれらの混合物のような懸濁剤を含んでもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤は原料として廃棄されていた摘果された幼果、収穫2週間以上前に摘果された未成熟柿果実を原料として利用することができる。有効成分を精製して利用する方法に比べて安価に製造することができ、他の成分との相乗効果も期待される。さらに、本発明の未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤を摂取することにより、動脈硬化、心筋梗塞、肥満等の発症を抑えることができる。さらに、肥満による心筋梗塞や動脈硬化等の発生や便秘による腸内異常発酵によるニキビ、吹き出物、肌荒れ、肩こりや大腸がんの発生を抑えうることができる。さらに本発明は、未成熟柿果実粉末組成物を含み、脂質代謝改善作用、又は胆汁酸排泄促進作用、さらには抗肥満作用、又は排便促進作用を有する健康補助食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物と、該未成熟柿果実粉末組成物を含有する脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤とその製造方法について、以下に実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
(1)柿果実粉末の製造
柿果実は次の6種類を用いて、脂質代謝改善剤、及び胆汁酸の排泄促進剤の原料となる未成熟柿果実粉末組成物の製造を試みた。
【0041】
試料1:富有柿幼果 試料4:蜂屋柿幼果
試料2:富有柿未成熟果 試料5:蜂屋柿未成熟果
試料3:富有柿成熟果 試料6:蜂屋柿成熟果
の6種類の柿果実を用いた。ここで、幼果は開花後、比較的初期に摘果された未成熟柿果実であり、また未成熟果は収穫の2週間以上前に摘果された未成熟柿果実である。成熟果は通常食べ頃とされる成熟した柿果実を用いた。
【0042】
上記6種類の柿をそれぞれ1kgづつ用いて、サイコロ状に裁断して、減圧乾燥機により乾燥させた。減圧乾燥機の乾燥条件は、柿果実中に含まれる脂質代謝改善作用、及び胆汁酸の合成促進作用などの作用を発揮する有効成分が破壊しないように、減圧乾燥機の温度を30℃ー30分、35℃ー2時間、37℃ー2時間、38℃ー2時間、39℃ー2時間、40℃ー4〜6時間掛けて徐々に上げた。約14時間30分掛けて水分が約5.5〜10%の乾燥物が150g〜200gづつ得られた。
【0043】
乾燥した柿果実は、それぞれミキサーで粉砕し、粒径を整えるために、粉砕工程において、100〜120メッシュの篩を利用して125〜149μmの粒径になるように調整を行って組成物の分析をした。また、摂食による影響を見るために動物用の飼料に混合して摂取試験に用いた。
(2)柿果実粉末の分析
上記で得られた柿果実粉末組成物の成分分析を行った結果を表1に示す。表中の試料番号は上記(1)の試料番号と同一の物を示す。表中の各成分含量は%である。ただし、NFEは100−(蛋白質+脂質+食物繊維+水分+灰分)で算出し、この中に糖質、ポリフェノール等が含まれている。また、タンニン酸は別途測定した柿果実粉末組成物100グラム中に含まれる割合(%)である。この結果から、本発明の未成熟柿果実を原料とする柿果実を乾燥及び粉末化すると、少なくとも水分5.5〜10%、食物繊維35〜52%、蛋白質3.0〜8.0%、脂質0.6〜1.2%、NFE53.4〜23.8%、及び灰分2.5〜5.0%を含有することが判明した。なお、タンニン酸は右欄に示すように、成熟果実では1.6〜3.2%の間であったが、幼果、未成熟果実では3.3〜15%含まれていた。
【0044】
【表1】


NFE=100−(水分+蛋白質+脂質+食物繊維+灰分)を示す。
【0045】
*:タンニン酸は別途測定した柿果実粉末100グラム中に含まれる割合(%)である。
【0046】
(3)製剤例
実施例1(1)で得られた柿果実粉末組成物を以下で示す割合で配合して、脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤のための錠剤を調製した。
【0047】
D−マンニトール…………………………300重量部
乳糖 ………………………………………300重量部
結晶セルロース …………………………60重量部
ヒドロキシプロピルセルロース ………30重量部
柿果実粉末 ………………………………310重量部
上記の製剤例における未成熟柿果実粉末組成物の配合割合、及び薬学的に許容し得る添加剤は適用する対象疾患、重傷度等、適用する患者に対応できるように適宜変更し、未成熟柿果実粉末組成物の含有量の異なる脂質代謝改善剤、または胆汁酸の排泄促進剤、さらには抗肥満剤及び排便促進剤を調整することができる。
【実施例2】
【0048】
実施例2において未成熟柿果実粉末組成物よりなる脂質代謝改善作用、または胆汁酸の排泄促進作用等の薬理効果試験に用いた試料は、実施例1と同様の操作によって得られた以下の4種類の柿果実粉末を用いた。それぞれの試料を肥満誘導用飼料に10%添加した飼料をテスト飼料とし、コントロール群には無添加の肥満誘導用飼料のみをそれぞれ自由摂取させた。
【0049】
試料1:富有柿未成熟果実
試料2:蜂屋柿未成熟果実
試料3:富有柿成熟果実
試料4:蜂屋柿成熟果実
(1)未成熟柿果実粉末組成物の摂取による影響
マウス(C57B/6J、雄、6週齢)を1群4匹にテスト飼料(柿果実粉末)、及びコントロール飼料を与えて、飼料の消費量、及び体重を毎週測定した。図1は周毎のマウスの体重変化をグラフで示す。図2(a)は各飼料14週後のマウスの体重増加量、図2(b)はマウスが摂取した飼料の平均摂取量を示すグラフである。
【0050】
図1に示すように、マウスの体重は各週毎に増加する傾向が見られた。未成熟蜂屋柿を使用した試料2を除いて、コントロール群との間に大差は認められなかった。試料2は実験開始から僅かにコントロール群との間に差が認められ、実験開始から10週目以降はコントロール群との間の差が徐々に広がった。最終的には図2(a)に示すように体重増加が約10%抑制されることが認められた。試料の摂取量は図2(b)に示すように、一日当たりの摂取量に差が認められなかった。この結果から、試料2(蜂屋柿未成熟果実)は体重増加を抑制する効果を有することが確認された。
(2)柿果実粉末の脂質代謝改善作用
上記(1)の実験開始後14週間後に、マウスを炭酸ガス容器中で屠殺し、血液を採取後、マウスを解剖して、精巣上体周囲内臓脂肪、肝臓、及び腎臓を採取して各臓器重量を測定した。採取した血液から血漿を分離して、各種測定キット(血糖値;グルコース;IIテスト;総コレステロール;コレステロールEテスト;LDL;LタイプLDL−C;遊離脂肪酸;NEFA C−テスト)を利用して、脂肪代謝マーカーの測定を行った。
【0051】
図3(a)は精巣上体周囲内臓脂肪重量、図3(b)は肝臓重量、図3(c)は腎臓重量を示すグラフである。図4は血漿中の(a)グルコース濃度、(b)総コレステロール量、及び(c)トリグリセリドの測定結果を示すグラフである。図5は(a)LDL、及び(b)遊離脂肪酸を測定した結果を示す。
【0052】
本発明の脂質代謝改善剤を摂取することによって、図3(a)に示すように精巣上体周囲内臓脂肪の重量が、試料1(富有柿未成熟果実)及び試料2(蜂屋柿未成熟果実)においてコントロール群よりも顕著に低下した。また、図3(b)に示すように肝臓重量は、試料1乃至試料4の何れの群においてもコントロール群よりも低下していた。図3(c)に示すように腎臓の重量は、4種類の試料群とコントロール群との間に差は認められなかった。
【0053】
マウスの血漿中の血糖値及び脂質代謝マーカーは、図4(a)に示すように、血糖値(血中グルコース濃度)はコントロール群との間に差が認められないことから、血糖に対して影響を及ぼさないものと考えられる。図4(b)に示すように、総コレステロール、図4(c)トリグリセリド、及び図5(a)LDLについては、未成熟柿果実を原料とした試料1(富有柿未成熟果実)、及び試料2(蜂屋柿未成熟果実)において顕著な抑制効果が認められた。図4(c)のトリグリセリドの測定値は、コントロール群及び成熟柿果実を原料とした試料3,試料4摂取群に比較して、未成熟柿果実を原料とした試料1,試料2群は20%以上も低い結果が得られた。また、図5(b)遊離脂肪酸は、コントロール群に比して、試料1乃至試料4摂取群はいずれにおいても10〜20%程度低い値を示した。
【0054】
上記のように、未成熟果実を原料とする脂質代謝改善剤(試料1、及び試料2)を摂取することにより、総コレステロール、トリグリセリド、LDL、及び遊離脂肪酸において、コントロール群よりも顕著に低いことが示され、優れた脂質代謝改善効果を有することが確認された。
(3)柿果実粉末の胆汁酸の合成系に及ぼす影響
体内コレステロールは、肝臓に存在する律速酵素CYP7A1(コレステロール7α-ヒドロキシラーゼ)により胆汁酸に異化され、十二指腸に排泄される。柿果実粉末を含む飼料を摂食後の肝臓におけるCYP7A1の発現割合を図6に示す。図6に示すように、未成熟果実を原料とする試料1,試料2摂食群はコントロール群に比較して、肝臓における胆汁酸合成系律速酵素CYP7A1の発現が上昇していた。
【0055】
CYP7A1(コレステロール7α-ヒドロキシラーゼ)遺伝子の発現を促進する物質は、それぞれコレステロールの代謝を促進し、動脈硬化、肥満、又は胆石形成などの予防又は治療に有用である。また、未成熟柿果実粉末組成物は、コレステロール代謝促進等のために使用することができる。
(4)胆汁酸の排泄促進作用
マウス(DBA/2、雄、6週齢)を1群5匹にテスト飼料(蜂屋柿未成熟果実粉末2%、5%、10%添加群)、及び無添加のコントロール飼料を与えて、9週間後の糞中胆汁酸量を測定した。対象薬として用いたコレスチラミンは、胆汁酸の便中排泄を促進する作用を有する高脂血症改善剤である。コレスチラミンの作用は便中への胆汁酸排泄促進→肝臓での胆汁酸合成促進→血中コレステロールの低下をもたらすことが知られている。
【0056】
図7に示すように、蜂屋柿未成熟果実粉末を2%、5%、10%混合した飼料を摂取したマウスの糞便中への胆汁酸の排泄量が用量依存的に増加した。飼料に5%の蜂屋柿未成熟果実粉末を混合した群の胆汁酸の排泄促進効果は、公知の胆汁酸排泄促進作用を有するコレスチラミンの0.5%を混合した群と略同等の効果を有していた。この結果、蜂屋柿未成熟果実粉末は胆汁酸の排泄促進効果を有する事が判明した。
(5)柿果実粉末の抗肥満作用
具体的には、蜂屋柿の幼果、未成熟果及び成熟果からそれぞれ調整した乾燥粉末を肥満誘導用飼料に10%添加し、マウス(ICR系統、オス、6週令、1群7匹)に自由摂取させ7週間飼育した。7週後の体重を測定し、その間に摂取した餌の量から摂取エネルギー量を算出し、摂取エネルギー当たりの体重増加量を算出し図8に示した。
【0057】
柿粉末を添加しないコントロール群に比べ幼果乾燥粉末(試料1)及び未成熟果乾燥粉末(試料2)を添加することで明らかに体重増加を抑制する効果が確認された。成熟果乾燥粉末(試料3)を添加した群でも体重増加が抑制される傾向がみられたがコントロール群との間に有意な差は認められなかった。
【0058】
(6)柿果実粉末の排便促進作用
具体的には、蜂屋柿の幼果、未成熟果及び成熟果からそれぞれ調整した乾燥粉末を肥満誘導用飼料に10%添加し、マウス(ICR系統、オス、6週令、1群7匹)に自由摂取させ6週間飼育した。飼育期間中一週間一度の割で排泄された糞を2日分集め、乾燥し重量を測定した結果を図9に示す。
【0059】
柿粉末を添加しないコントロール群に比べ幼果乾燥粉末(試料1)及び未成熟果乾燥粉末(試料2)を添加することで明らかに糞の排泄量が増加し、摂取後2週以降はコントロール群に比べ幼果乾燥粉末(試料1)で2倍以上、未成熟果乾燥粉末(試料2)で約2倍、成熟果乾燥粉末(試料3)で約1.3倍に達した。
【0060】
上述のように、本実施形態の抗肥満、排便促進剤の製造方法、及びその製造方法により製造された抗肥満、排便促進剤によれば、未成熟柿果実粉末を配合した飼料をマウスに摂食させた結果、体重増加を抑制し、糞排泄量を著しく増加させることが認められた。この結果から、未成熟柿果実粉末組成物は抗肥満、排便促進効果を有することが明らかとなった。
【実施例3】
【0061】
健康補助食品の製造
・ ビスケット
室温で柔らかくした無塩バター100gに塩をひとつまみ加えて、クリーム状にし、砂糖70gを2回に分けて、混ぜ合わせた。ここに卵黄を1個ずつ混ぜ合わせながら2個加え、そこに薄力粉120gと未成熟柿果実粉末を30グラム加えて、全体を馴染むようによくまぜて生地を作成した。この生地を適当な型で打ち抜き、180℃のオーブンで、約13分間焼いて健康補助食品となるビスケットを調製した。ビスケット1枚当たり1グラムの未成熟柿果実粉末組成物を含有するビスケット30枚が得られた。
【0062】
・ パン
強力粉250gにバター15g、砂糖大さじ2杯、塩小さじ1杯、未成熟柿果実粉末15g、スキムミルク大さじ1杯、水180ccを加えよく練った後、ドライイースト小さじ1杯を加え再び練り、約1時間発酵させた後170〜190℃で35分焼き上げることによって未成熟柿果実粉末を含むパンを調製できた。
このようにしてビスケット、パンなどの食品に未成熟柿果実粉末組成物を添加する事によって、未成熟柿果実粉末組成物に含まれる種々の有用な成分が抵抗無く摂取することができる。その効果として脂質代謝改善効果、および胆汁酸排泄促進効果、さらには抗肥満効果及び排便促進効果が期待されると共に安全性の高い健康補助食品素材を提供する事が出来る。
【0063】
本発明の未成熟柿果実粉末組成物は、脂質代謝改善作用、及び胆汁酸排泄促進作用、さらには抗肥満作用及び排便促進作用を有することから脂質代謝の改善、及び胆汁酸の排泄促進さらに肥満の抑制や予防、又は便秘の予防や解消に用いることができる。上記のビスケット、パン以外にも、例えば、未成熟柿果実粉末組成物を練り物状、液状等として種々の食品に混合可能な形状として、未成熟柿果実粉末組成物を混合した様々な健康補助食品を調製することによって、健康に寄与する健康補助食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】マウスの週毎の体重変化を示すグラフである。
【図2】(a)マウス体重の増加量、及び(b)マウスの飼料消費量を示すグラフである。
【図3】(a)精巣上体周囲内臓脂肪重量、(b)肝臓重量、及び(c)腎臓重量のそれぞれの比較を示すグラフである。
【図4】血漿中の(a)グルコース濃度、(b)総コレステロール量、及び(c)トリグリセリドのそれぞれの測定値の比較を示すグラフである。
【図5】(a)LDL、及び(b)遊離脂肪酸のそれぞれの測定値の比較を示すグラフである。
【図6】肝臓における胆汁酸合成系律速酵素CYP7A1の発現割合を示すグラフである。
【図7】蜂屋柿未成熟果実粉末を摂取したマウスの便中の胆汁酸排泄量を示すグラフである。
【図8】蜂屋柿未成熟果実粉末を摂取したマウスのエネルギー摂取量に対する体重増加量を示すグラフである。
【図9】蜂屋柿未成熟果実粉末を摂取したマウスの排便量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未成熟柿果実(開花から成熟2週間前までの間に摘果された柿果実を言う)を原料とし、前記柿果実を乾燥及び粉末化した組成物の水分が5.5〜10%、タンニン酸が3.3〜15%含有してなることを特徴とする未成熟柿果実粉末組成物。
【請求項2】
未成熟柿果実を原料とし、前記柿果実を乾燥及び粉末化して、水分5.5〜10%、食物繊維35〜52%、蛋白質3.0〜8.0%、脂質0.6〜1.2%、NFE53.4〜23.8%(糖質、タンニン酸等を含む)、及び灰分2.5〜5.0%を含有することを特徴とする請求項1記載の未成熟柿果実粉末組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の未成熟柿果実粉末組成物を含有することを特徴とする脂質代謝改善剤。
【請求項4】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の未成熟柿果実粉末組成物を含有することを特徴とする胆汁酸の排泄促進剤。
【請求項5】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の未成熟柿果実粉末組成物を含有することを特徴とする抗肥満剤。
【請求項6】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の未成熟柿果実粉末組成物を含有することを特徴とする排便促進剤。
【請求項7】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の未成熟柿果実粉末組成物を含有することを特徴とする健康補助食品。
【請求項8】
未成熟柿果実から蔕部を除去する工程と、
前記蔕部の除去された前記未成熟柿果実を、果皮を含んだ状態で小片状にカットするカット工程と、
小片状にカットされた未成熟柿果実片を乾燥させ、前記未成熟柿果実片に含有される水分を除去する乾燥工程と、
乾燥した未成熟柿果実片を粉砕し、粉末化する粉末化工程とからなり、
該粉末組成物の水分が5.5〜10%、タンニン酸が3.3〜15%を含有してなることを特徴とする未成熟柿果実粉末組成物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−63332(P2008−63332A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207543(P2007−207543)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(391016842)岐阜県 (70)
【出願人】(399084720)八尋産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】