説明

末梢側および近位側回収口を有するカテーテルシステム

【課題】密閉部材(18)および血管から血流を回収するための複数の吸収口(50、51)をもつ回収用部材(10)から成るカテーテルシステム(100)を提供する。少なくとも1つの血流回収用の吸入口(50)は、回収する血流を閉塞する密閉部材(18)の抹消側に配置し、および、少なくとも1つの血流回収用の吸入口(51)は、前記密閉部材(18)の近位側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はPCT国際出願として2010年12月8日に出願したものであり、米国特許仮出願番号第61/283,958号(出願日:2009年12月9日)に基づいて優先権を主張し、前記出願の全ての記載をここに引用するものである。
【0002】
この明細書に開示する本発明は、患者の血管内から液体を回収するカテーテルシステム、および前記システムを用いる様々な方法に係わる。具体的には、本発明は血管から液体を回収する2つ以上の回収口を有するカテーテルシステム、および前記システムを用いる様々な方法に係わる。
【背景技術】
【0003】
回収用カテーテルシステムは、患者の血管内から血液やその他の液体を回収する器具として周知であり、例えば、灌流過程において、冠状静脈洞または冠状静脈から血液を採取する器具としてよく知られている。また、灌流過程での採血に加えて、血管造影法で冠状静脈から採血するために用いてもよい。上記手法は冠状動脈の開通性を検査するのにも利用される。こうした手法の1例として、造影剤を冠状動脈内に注射して冠状血管障害物の存在が疑われる部位を映像化することなどが挙げられる。
なお、造影剤には、仮に患者の全臓器にわたり全身的に還流してしまう場合、大きな健康上の危険性が生じることがある。例えば、腎機能障害または腎不全が、造影剤を全身投与することで発症する可能性がある。このような機能不全は、「造影剤腎障害」つまりCIN(contrast−induced nephropathy)と呼ばれている。こうしたことから、患者は全身投与した造影剤を除去するために、何度も造影剤除去治療を受けることになる。
【0004】
造影剤除去治療で採血した血液は、患者に再投与することもある。しかし、こうして採血した血液は廃棄するのが、より一般的である。限られた容量の血液(例えば、150から200mL)は、患者から安全に除去して廃棄するのが一般的な認識となっている。
また、採決技術には血管内の血流を単離する方法および器具の使用が含まれる。このことによって、確実に、主に順方向の血流(例えば、血管内の正常方向の血流)を、回収作業の対象である造影剤または灌流液全てを実質的に回収するのに要する時間範囲内で回収する。
ここで重要なのは、上記単離手段では、明らかに逆方向に流れる血流の回収を防止することである。例えば、吸引下、冠状静脈洞からカテーテルで血液を抜き取る場合、逆方向に流れる血流(つまり、血管内で正常な血流とは逆向き方向に向かう血流)が発生する。吸引操作により、完璧である右心房血流が逆流し、カテーテルから抜き取られることがある。その結果、造影剤または灌流液と一緒には採取されない血液を回収して、たぶんそのまま廃棄することになる。どれだけの容量の血液を廃棄できるのかについては限度があるため、造影剤または灌流液と一緒に採取されない血液を回収して廃棄することを最小限にすることが望ましい。単離手段、または部分的単離手段は、バルーンカテーテルを用いることで、一般には達成できる。バルーンは、採血期間中膨張することで、血管壁に対して密封効果を奏する。さもなければ、バルーンが縮小すると血管壁との間に隙間が生じることになる。
また、個人的な解剖学的な相違点も、例えば、バルーンまたは密閉部材に近い冠状静脈洞に流れ込む冠状血管に影響を及ぼす結果となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記課題に鑑みて、密閉部材の近位側に位置する造影剤または灌流液を一般的に回収するために、カテーテルシステムや回収方法の改良が要望されるが、一方で、回収した逆流血液の容量を最小に止めることも要望される。よって、本発明の目的は、血管内の各種部位から、および回収システムに沿って、造影剤または灌流液を位置選択的および/または位置特異的に回収することがさらに可能なシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好適な実施形態を用いて、患者の血管(例えば、冠状静脈洞など)から液体を回収する方法およびカテーテルシステムを説明する。前記方法は、長く延びる柔軟な管状部分と、末端部分とを有する回収部材とに成形したカテーテルを使用することを含む。管状部材から成る1つ以上の回収管腔は、密閉部材の近位側で適度な大きさの液体吸入口を有するのみならず、密閉部材の抹消側に位置する液体吸入口も有する。管状部材の近位側末端部は1つ以上の回収管腔内を吸引するために、吸引用真空源に接続できるように適応できる。前記方法は、順方向血流をもつ血管内の前記カテーテル末端部を、密閉部材に向かう末端方向への血管内に設置する方法である。前記密閉部材は血管内部に配置する。1つ以上の回収管腔に真空系を用いて、血液および造影剤/灌流液を、前記液体吸入口を通して、血管から前記回収管腔内に十分な容量を抜き取る。また、前記カテーテルシステムを適宜設計することで、血液および造影剤/灌流液の予め決められた容量を、前記密閉部材の近位側および末梢側にある液体吸入口を通して抜き取れるようにする。さらに、末梢側にある液体吸入口から流入する液体の所望の容量を、特有な装置を設計することで制御できる。
所望の製品特長または方法について様々な例を、以下に記載してその部分を明示し、さらに前記記載からその部分を明確にし、または、本発明の様々な態様を実施することで、容易に理解し得ると思われる。本発明の態様は、個々の特徴に関連するだけではなくそれら特徴の組み合わせにも含んでいる。例えば、別々の実施形態で開示した特徴の組み合わせも含む。なお、前述した記載および後述する詳細な記載の両方は、単に例として挙げただけであり、ここで請求する発明を何ら限定するものではないことを理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)患者の血管から血液を回収する、本発明の回収用カテーテルを有するカテーテルシステムを示し、また任意の容器支持器具を示す。(b)図1(a)のシステムの概念図を示す。
【図2】カテーテルの管腔を吸引しないときの密閉部材と血管壁との隙間を示す、患者の冠状静脈洞内にある図1(a)の回収用カテーテルの側面長手方向図である。
【図3】カテーテルの管腔を吸引するときの図2を示し、カテーテルの密閉部材が接合するまで血管壁内を移動させた状態を示す図である。
【図4】近位側の吸入口近傍の主要血管とつなぐ冠状静脈の一部分を示す、密閉部材(バルーン)に近い吸入口を組み入れた回収用カテーテルの側面長手方向図である。
【図5】(a)伸長させ、非拘束的状態で拘束用支持器を置いた図4の回収用カテーテルの側面長手方向図である。 (b)カテーテルを引き込み、拘束状態で拘束用支持器を示した図4の回収用カテーテルの側面長手方向図である。
【図6】(a)カテーテル本体周りに拘束用スリーブ管を備えた回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限しないようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。 (b)カテーテル本体周りに拘束用スリーブ管を備えた回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限するようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。 (c)カテーテル本体の管腔内に拘束機構を備えた回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限するようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。 (d)カテーテル本体の管腔内に拘束機構を備えた回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限しないようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。
【図7】(a)カテーテル管腔内に拘束用支持器を備えた図4の回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限するようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。 (b)カテーテル管腔内に拘束用支持器を備えた図4の回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限しないようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。 (c) カテーテル管腔内に拘束用支持器を備えた図4の回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限するようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。 (d)カテーテル管腔内に拘束用支持器を備えた図4の回収用カテーテルが、末梢用吸入口を通る血流を制限しないようにカテーテル本体を置いた状態を示す側面長手方向図である。
【図8】末梢静脈内から回収用カテーテルの管腔内に血流を分離する末梢吸収口に近い拘束部材を備える回収用カテーテルの側面長手方向図である。
【図9】本発明のキットを示す分解透視図である。
【図10】(a)および(b)ともに、例えば、小孔、または右心房内の冠状静脈洞血管の開口部などの血管開口部近傍内に配置できる回収用カテーテルの側面長手方向図である。
【図11】種々の末端部吸入口の構造を示す回収用カテーテルの様々な種類の末端部分の側面長手方向図である。
【図12】種々の近位側吸入口の構造を示す回収用カテーテルの様々な種類の近位側部分の側面長手方向図である。
【図13】回収用カテーテルの末端部または/および近位側の吸入口の別の構造例を示す側面図である。
【図14】少なくとも2つの回収用管腔をもつ、管状回収部材の本体を縦に切って図示した、別の構造を示す断面図である。
【図15】回収用カテーテルおよび複数の吸入口の長手方向に沿って、血管内で密閉部材が閉塞する位置を可変できる調節型密閉部材を有する回収用カテーテルの1例を示す側面長手方向図である。
【図16】回収用カテーテルの長手方向に沿って、密閉する位置を相対的に変えることが可能な回収用カテーテルの1例を示す側面長手方向図である。
【図17】図16に示すように、複数の密閉部材をそれぞれ別個に膨張させる複数の管腔がある、管状回収用部材の本体を縦に切って図示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本開示添付した図面に示す本発明の態様例を参照しながら、詳細に本発明を説明する。なお、全く同じまたは同様の部品を参照する図面では、可能な限り同じ参照番号を使用するものとする。
図1(a)は、本発明の回収用カテーテル10を有するカテーテルシステム100を示す。好適な実施形態では、回収用カテーテル10は、血管造影法または同様な手法で冠状動脈内に注射した灌流液または造影剤と一緒に吸引する血流を回収するために使用する。回収用カテーテル10を用いて、患者の残りの体内にまで全身的に造影剤等を含む血流が流れる以前に、冠状静脈洞からこうした血流を回収する。このような実施形態は好適ではあるが、本発明のシステムは、如何なる種類の透析やその他同様な血液回収システムを含む任意の血液回収システムに使用できる。従って、血管として冠状静脈洞を参照したのは単なる例示であり、他の如何なる血管にも本発明のシステムは使用できる。
【0009】
また、回収用カテーテル10に加えて、システム100は、回収容器102および真空調節器104(たとえば、負圧調節器)を有する。回収容器102は、大気圧から密閉されている。図1(a)に示すシステムは、図1(b)に概念図として示しており、回収容器102内の回収血液のレベル、つまり血液面120を明示している。
また、チューブ106は、回収用カテーテルの吸入口119に接続し、回収用カテーテル10の中央回収管腔26(後に述べるが)と連通する。チューブ106は、回収用管腔26を回収容器102の内部と接続する。
チューブ108は回収容器102の内部と負圧調節器104を接続する。負圧調節器104は、真空源111(図1(b)参照)とつながる供給用チューブ110を有する。こうした負圧(つまり、真空)源は、一般的に病院やその他同様な設備に設置されている。
さらに、カテーテルシステム100は、チューブ114からチューブ106までのチューブによって接続した圧力計112に接続されている。圧力計112は、回収用カテーテル10の管腔26内部の圧力に対応するチューブ106内の圧力を測定して表示する。
また、回収用カテーテル10の近位側末端部17(図1(a)参照)は、後に説明するが、カテーテル10の抹消側末端部または抹消側先端部16に接する密閉バルーン18(例えば、閉塞バルーンや環状密閉部材)を加圧する加圧用流体(空気や生理食塩水など)の供給源と接続する吸入口118を有している。近位側末端部17は、誘導ワイヤ等を回収管腔26の中に通す吸入口121も有している。
【0010】
また、図1(a)、(b)および図2の両方をよく参照すると、カテーテル10は、近位側末端部17(図1(a)と図12にのみ表示)および抹消側先端部16(図2参照)を有し、細長い柔軟性のあるチューブの形状のカテーテル本体12を有する。なお、図1(a)が図の縮尺に応じたものではなく、カテーテル本体12の長さが図1(a)に示した長さよりも実質的にはかなり長く、近位側末端部17が患者の体外にある間、抹消側先端部16を患者の血管系を通して冠状静脈洞CS(coronary sinus)にまで伸ばすことができる。
また、図2に示すように、環状密閉部材18を抹消側端末部16の近傍に設置する。好適な実施例では、環状密閉部材18は、膨張するに従い、周囲にその形状を整合させ、かつ膨らむことができる材料で成形した対応型バルーンである。
また、図2の実施形態では、バルーンでは、圧環の抹消側末端部20の直径は、圧環の近位側末端部22の直径よりも小さい。この結果、両末端部20および22に挟まれた環状表面24は、カテーテル本体12の長手軸方向X−Xに対して相対的に傾きをもつ。所望ならば、両末端部20および22は同じ直径をもち、環状表面24が前記軸X−Xと平行にしてもよい。環状表面24を、軸X−Xに対して相対的に湾曲(凸面状または凹面状に)させることも可能である。
【0011】
また、図3では、末端部16がカテーテル本体12の長さにわたって伸びる回収管腔26に対して開いており連通している。回収管腔26は、吸入口119(図1(a)参照)に連通している。また、膨張用管腔28を、膨張用流体をバルーン18内に流し込んで、カテーテル本体12の璧厚になるように設置する。膨張用管腔28は吸入口118(図1(a)参照)に連通する。
【0012】
これらの図面において、カテーテル10は、任意の血管支持器30と組み合わせて使用する状態が示されている。血管支持器30は、曲がった先端部34をもつ、長く柔軟な末梢末端部32を有する。これら抹消側末端部32および曲がった先端部34は、患者の血管系を通して非侵襲的に伸ばせる周知の誘導ワイヤを形成する従来技術に応じて形成してもよい。
血管支持ケージ36は抹消側末端部32(例えば、抹消系ワイヤ部分)と近位系ワイヤ部分38(図2参照)とを接続する。ケージ36は、一般的に弾力のある複数の支柱37(血管内で使用するのに適したニチノールまたは他の弾力のある材料)の環状配列(X−X軸周りの)で作られる。後述部分で明示するが、ケージ36は冠状静脈洞(CS)が潰れることを防いでいる。また、冠状静脈洞内にケージ36を設置することによって、冠状静脈洞に沿ってケージ36が軸方向に移動することを防止するので、血管内のカテーテル10の位置を安定させる。この結果、ケージ36は冠状静脈洞CS内でカテーテル10の位置を確保する器具として便利である。
【0013】
血管支持器30を使用する場合、冠状静脈洞CSの対向する表面と接するケージ36がある図2に示す位置にまで、任意の好適な機器を用いて冠状静脈洞CS内に血管支持器30を前進させて送り込む。図2に示すように、正常な(即ち、順方向の)血流は、右心房(図示なし)方向に冠状静脈洞CSを通って、正常な血流方向を表す矢印Aで示すように流れる。こうした位置に設置することで、カテーテル10は、抹消側末端部16がケージ36に当接するまで血管支持器のワイヤ部分38を超えて前進し送り込まれる。
この前進操作中、密閉バルーン18は完全にしぼんでいる。この前進操作に続いて、外科医はバルーン18を膨張させてもよい。冠状静脈洞CSの対向する壁面に対してバルーン18がうまく当接するような範囲まで、バルーン18を膨張させない。その代り、図2に示すように、環状表面24および冠状静脈洞CSの対向する両者の表面の間に環状の血流となるように、バルーン18を部分的にだけ膨張させる。この血流方向は、図2の矢印Bで表される。回収管腔26に吸引操作を適用しないとき、冠状静脈洞CS内の血流はバルーン18の周りを通って右心房にまで流れる。回収管腔26は、冠状静脈洞CSから回収管腔26に吸引した血流の損失がないように生理食塩水等を注入してもよい。
【0014】
圧力計112で血圧を測定することで、回収管腔26を吸引しない場合には、外科医は、バルーン18で冠状静脈洞CSを閉塞するように十分膨張させる。こうした膨張状況をモニターする場合、外科医は、血管を閉塞させないように冠状静脈洞CS内にバルーン18を配置していることを確認するまで、バルーン18を僅かにしぼんだままにしておく。あるいは、随意にバルーン18の対向面に接して、カテーテル本体12上に圧力計40および41(図2だけに表示)を設置する。圧力計40および41間の圧力差は、冠状静脈洞CSの閉塞状態を表す。このように配置した後、外科医は、回収管腔26を選択的に吸引するために真空調節器104を操作してもよい。このようにして吸引することで、環状表面24に向かい合う冠状静脈洞CSの表面部分が、密閉で接する位置において前記表面24に対して移動するように、冠状静脈洞CSを少なくとも一部潰れるようにする。こうすることで、冠状静脈洞CS内の血流は回収管腔26に完全に流入する。こうした密閉して当接することにより、右心房からバルーン18を通過して抹消側末端部16に向かう逆流血流を最小限にする。図3に、この密閉当接状態を示す。冠状静脈洞CSが潰れやすい傾向をうまく利用することで、密閉部材18に対して冠状静脈洞CSを閉塞できる。この結果、吸引したときに、自然に密閉状態となり、バルーン18を膨張させたりしぼませたりする必要がなくなる。
【0015】
回収管腔26を吸引するタイミングは、冠状動脈内に注入した造影剤を回収できる時が好適である。例えば、造影剤注入後の所定の時間(約3乃至6秒)後に、回収管腔26を吸引できる。あるいは、患者の心電図をモニターし、造影剤注入に続いて、決まった心拍数(例えば、5拍)後に吸引してもよい。所望ならば、検出素子を先端部16に設置できる。または、検出素子をシステム内のどの場所にでも設置して、灌流液または造影剤を検出し、回収管腔26を吸引することもできる。例えば、図2の圧力計40は、造影剤センサーの代用にもなる。
回収管腔26に流入した血液は、容器102内に回収する。回収後、この血液は廃棄する。あるいは、この回収血液中にある好ましくない成分を除去するために、前記血液を何か適当な処理装置(図示しない)で処理してもよい。こうして処理した血液は、続いて患者の体内に戻される。
【0016】
回収管腔26に対する吸引圧力は、低圧であり(例えば、−600mmHg)、冠状静脈洞CSから血液を確実に除去する。冠状静脈洞CSは、とてももろい血管である。上述した吸引によって、前記血管は潰れやすい。血管が潰れることは、血管支持部36を用いることで防ぐことができる。図3に、冠状静脈洞CSか完全に潰れることを防止する、先端部分16から抹消方向にあるケージ36を示す。代わって、ケージ36を直径方向に狭め(つまり、軸方向に伸ばし)るが、しかし冠状静脈洞CSが完全には潰れないように、または抹消側管腔開口に血管組織を陥入させないようにする。
図2および図3に示す設計によって、カテーテルの抹消側先端部に至った造影剤または他の灌流液を効果的に密閉して除去できる。しかし、前記機器では、密閉部材またはバルーンに近い静脈を通って冠状静脈洞CSに流入する灌流液または造影剤は全く回収されない。図4に、冠状静脈200が、閉塞バルーン16および抹消側吸入口または抹消側管腔開口51に近い冠状静脈洞CSに入り込んでいる状態を示す。本実施形態では、カテーテル10の回収管腔CSに吸入口50を配置している。前記吸入口は、バルーン18近傍および冠状静脈200近傍に配置する。また、前記吸入口は近傍の静脈開口部近くの場所にあって、カテーテルの円周上に設置している。また、カテーテルの予備成形湾曲に基づいて、カテーテル10の円周上特定の位置に吸入口50を設置する。カテーテルの湾曲を用いて、カテーテルを上位または下位位置の一方から、容易にカテーテルを冠状静脈洞CSに挿入できる。カテーテルを冠状静脈洞CS内に一旦設置すると、カテーテルの形状に従って、近位側静脈200近くの下位位置に近位側吸入口50が配置される。
【0017】
抹消側先端部にある管腔開口部51と比較すると、近位側の吸入口50に流入する灌流液または造影剤の相対的な割合は、前記2つの開口部の相対的な大きさにより決まる。図4に示すように、吸引操作中、血流全体の特定の割合が吸入口50を通って来ることを可能にする直径を近位側の吸入口50が有し、一方、残部の血流が抹消側管腔開口部51を通って流入するようにする。回収管腔26の前記2つの吸入開口部の相対的な大きさは、各吸入口を通して所望の配分割合となるように調節できし、近位側の吸入口は、2つ以上のさらに小さな開口部として形成することもできる。この結果、2つの吸入口全体の大きさは、血流全体に対する近位側での配分割合により決定される。また、追加の複数の吸入口を、カテーテルの抹消側領域に付け加えることもできる。再度述べるが、抹消側の吸入口全体の全表面積は、血流全体に対する抹消側での配分割合で決定される。
【0018】
近位側および抹消側の吸入口の相対的な大きさ並びに数によって、回収管腔26を通る血流全体に対する各吸入口の配分割合が決まる。また、別の実施形態では、カテーテルを血管内に設置した後に、各々吸入口の配分割合を調節する1つの吸入口または複数の吸入口の機能区域面積を調節する手段を有していてもよい。ある1設計例を、図5(a)および(b)に示す。本実施形態では、ケージ36は抹消方向に延びており、抹消側管腔開口部51に入る血流を妨害する。図5(b)では、ケージ36を抹消側吸入口51に接するように引き込み、抹消側吸入口51が機能する直径を小さくする。同様に、この操作によって近位側にある吸入口50に比較して、抹消側管腔開口部51(つまり、抹消側吸入口)の相対的配分割合を減少する。この例では、近位側の吸入口50を通って流入する残部の血流が増加する一方で、抹消側管腔開口部51を通って回収管腔26に流入する血流全体の割合は減少する。近位側の吸入口50を通って流入する血流の割合が増加するに従い、大部分の灌流液または造影剤は近位側静脈200から回収されることになる。
【0019】
また、近位側および抹消側吸入口が機能する区域面積を調節する他の実施形態も、想到できる。こうした1実施形態では、図6(a)−(b)に示すように、カテーテル本体12sの周囲に、移動調節可能な外側にスリーブまたは外側シース60を有する。カテーテルに近い領域内に複数の吸入口を使用する場合、近位側の吸入口50の、あるいは多数の吸入口の一部または全部を塞ぐように、前記胴枠を配置できる。図6(c)−(d)には、回収管腔26周囲で移動可能ではあるが、しかしカテーテル管腔を通る血流を妨害しない構造体61を合体できる、所望の近位側血流を遮断するための移動調節可能な部品を示す。
【0020】
あるいは、近位側の吸入口を通る血流を同様に制限するために、ケージ36を内側に設けることもできる。また、開口部の近くにあるケージ支柱部は、血流絞り弁としても作用する。また、前記ケージ支柱の特性を増やすために、ビーズ、平面体または縮小チューブなど複数の特性要素を追加してもよく、これにより血流をさらに抑制する。カテーテルに対して、相対的に内部部材を押し込んだり、引き出したりのいずれかの操作を行うことで、この血流抑制特性を使用できる。こうした吸引制御用の特性要素を使用することに加えて、静脈造影図法を用いる場合のように、近位側の吸入口からの漏えいを防ぎながら、カテーテル管腔を介する造影剤の注入を容易にするために、上記技法を用いてもよい。
【0021】
また、近位側および抹消側吸入口が機能する面積を調節する別の実施形態を、図7(a)−(b)に示す。本実施形態では、血管支持ケージ36に変更を加えることで、近位側の吸入口50を部分的に閉塞する。血管支持ケージ36は、カテーテルの回収管腔26を通る血流を顕著には制限しないが、しかし近位側の吸入口50に近接して前記吸入口を通る血流を制限する第2支持ケージ構造体37を組み込んでいる。第2支持ケージ構造体37は、近位側の吸入口50を容易に閉塞できる平面形の複数の帯状体から構成される。
【0022】
また、図7(c)−(d)に示すように、支持ケージ38は、近位側の吸入口50の位置に管腔を組み入れることもできる。支持ケージ38の管腔を通って、回収管腔26を通る血流に激しい衝撃を与えないで、支持ケージ38の管腔を通して血液を流すことができる。また、支持ケージ38は、近位側の吸入口50(図7(c)参照)を通る血流を、閉塞または制限するように配置するか、または近位側の吸入口50(図7(d)参照)を通る血流を制限しないように配置することができる。
【0023】
また、別の実施形態では、図8に示すように、近位側の吸入口50の近くに位置するバルーン18または膜状体18Aなどの血流制限器具を用いて、灌流液を含有しない(例えば、右心房からの逆流血液)血液の回収容量を制限できる。血流制限器具を用いることで、抹消側のバルーンに近い冠状静脈洞に入り込む(複数の)静脈を分離できる。また、真空システムを作動する前に、複数の吸入口を開口および閉鎖するバルーンの膨張によって、膜状体または他の同様な機構において、使用者は血流制限器具を作動することができる。回収操作を作動中は、血流制限器具を用いて、灌流液を含有しない血液の逆流血が近位側の吸入口に流入するのを制限する。
【0024】
また、密閉部材の近く、例えば、冠状静脈洞小孔近くに入り込んでいる(複数の)静脈から血流配分を決定する必要がさらにある。こうした静脈の決定は、密閉部材の抹消側および近位側にある全ての静脈の血流配分を測定できるセンシングシステムによって行なうことができる。このセンシングシステムは、例えば、造影剤の代わりに生理食塩水などの、標的灌流液よりも低毒性である灌流液類似液を使用して、リアルタイムで機能しうることが理想的である。このように機能すれば、カテーテルの抹消側および近位側の両吸入口からの相対的な流量を調節できる、確実な設定操作を行える。
【0025】
抹消側および近位側静脈の相対的配分程度を評価する一方法として、本願中先述した実施形態の器具を用いて、近位側の吸入口を閉塞する方法がある。生理食塩水などの灌流液類似液を右心房部位に注入し、カテーテルシステムを作動させて冠状静脈洞領域に流入する灌流液類似液を除去する。こうして回収した灌流液類似液の容量を、リアルタイムで実測することで、決定できる。次に、抹消側の吸入口を閉塞し、近位側の吸入口を開口してこの操作を繰り返し行う。近位側および抹消側吸入口を通して回収した灌流液類似液の容量を比較することで、抹消側および近位側静脈からの相対的な配分割合を測定する。このデータを利用して、抹消側および近位側静脈への配分割合に一致するように、抹消側および近位側の吸入口の開通程度を設定する。この過程では、抹消側および近位側静脈から相対的な割合の血液を回収しなければならないために、こうして、カテーテルシステムの造影剤除去能力を極大化できる。また、抹消側の吸入口から回収した灌流液類似液の容量が、閾値より低い場合にのみ、近位側の吸収口も開口できる。この操作を行うことで、抹消側の(複数の)吸入口からは回収不可能な、顕著な量の静脈血流に近位側の(複数の)静脈が寄与していることを示している。よって、一旦近位側の吸入口を開口すると、増加した回収量を確かめることができる。
【0026】
先に述べた複数の例や実施形態は、血管に負圧がかかると、血管を閉塞させる密閉部材を有するカテーテルについて説明している。しかし、密閉部材に近い静脈血流を回収する近位側の吸入口を組み込むことで、様々な種類の密閉部材を用いることもできる。この使用により、カテーテルシステムを作動して、密閉バルーンを膨張させたり、しぼませたりできる。また、閉塞はしないが、しかしカテーテル管腔内に入る抹消血流の流入を制限し、または流入部分を狭くしたカテーテル部材をもつカテーテルシステムに、密閉部材を組み入れることもできる。
近位側の吸入口に遠い閉塞または制限部材を用いて、近位側の(複数の)静脈または近位側の(複数の)吸入口の一部領域で血流速度を遅くすることもできる。一部領域で血流速度を遅くすることで、近位側の(複数の)吸入口を通して回収用カテーテル内に近位側の(複数の)静脈から血流を回収するのが容易になる。
【0027】
好適な実施形態では、図9に示すように、カテーテル10はキット300として梱包されている。カテーテル10およびその部品類は、ヒトの血管系内設置用プラスチックまたは他の好適な材料から成る。カテーテル10のサイズは、冠状静脈洞CSなどの静脈内に設置する先端部16とともに、血管系を通して前進させて伸ばせるような長さをもつ。カテーテル本体12は十分な柔軟性をもち、先端部16は十分非侵襲的であるので、当該技術で周知のように、前進させて伸ばすことができる。
図9に示すように、カテーテル10を、透明なプラスチック製ケース212の中に渦巻状に入れて、ヒト臨床用に滅菌した内容物とともに前記ケース212内に密閉する。ケース212は、綴じ蓋204をもつ厚紙製の箱202などの好適な容器内に梱包する。
【0028】
前記の箱202の中には、カテーテルの使用説明206を記載した印刷物も梱包する。使用説明書206には、要約や特定のカテーテルおよび/またはシステムの使用方法を記載する。例えば、使用者は説明書に従って、カテーテルの抹消側先端部16を血管内(例えば、冠状静脈洞CS)に挿入して設置し、バルーン18を膨張させて血流がバルーン18を通過する程度に血管璧との間に隙間を作る。カテーテル10を用いて血液を回収したいときは、カテーテル10の回収管腔26を吸引し、バルーン18で当接させて密閉した部分に血管壁を引き寄せる。
【0029】
また、カテーテル10およびその使用方法の別の例について、図10(a)および(b)で説明する。これらの図は、回収用カテーテルの設置方法を図示したものであり、血管のもつ解剖学的制約を、血管の小孔の近くに密封部材18を配置することでうまく克服している。例えば、心臓の右心房の冠状静脈洞にある小孔などである。図10(a)に示すように、回収用カテーテルの密閉部材18を小孔の近位側近くに配置し、カテーテルの抹消側部分を冠状静脈洞に挿管する。この場合、図10(a)の回収システムを吸引することで、前記小孔を取り囲む組織に一部分当接し密閉する箇所までカテーテルの密閉部材18を引き入れる。次に、吸引を解除し、冠状静脈洞から右心房まで順方向に流れる血流を供給する。なお、配置については、排出/回収管腔26を吸引するときに、一般的には、血管の小孔周り、および小孔内に密閉要素を引っかけて収納するために、密閉部材18が多様な形状(不定形、湾曲形、鉄床形など)をもつのが好適である。密閉部材/バルーン18の形状の1例を、図2に示す。また、図10(a)に、密閉部材18を膨張させる前の、および吸引操作前の回収用カテーテル10を示す。次に、図10(b)に、密閉部材18を膨張させて吸引操作を開始した後の回収用システムを示す。なお、図10(a)および(b)の各々で、血流方向Bを矢印で示す。さらに、この密閉部材について以下説明する。
【0030】
回収用カテーテル10の密閉部材18は、血管を密閉したり血管内からの排出を促進するために、様々な長さを有してもよい。例えば、密閉部材/バルーンを、図10(a)に示す冠状静脈洞などの血管内にまで、より長く実際に伸長できる。こうして、密閉部材と血管壁とをさらに広範囲に当接できる。こうした当接状態については、図2の接触面24で以前説明した。また、密閉部材を伸ばすことで、伸ばした密閉部材18の長さ方向に沿って流れる血流に対して、少なくとも部分的に抵抗を増す結果となるため、カテーテルの吸入口(50および/または51)を通る液体の回収を促進できる。
抹消側の複数の吸入口について以前述べたように、造影剤または灌流液を含んだ回収血液から選択的に標的液を分離除去することは、抹消側吸入口を1つ以上用いることで実施可能である。密閉部材18の抹消側に位置する(複数の)抹消側吸入口51は、多くの形状を有し、回収用カテーテル10の抹消側の長さ方向に沿って様々な場所に配置できる。図11に、回収用システムの抹消側部分を通って流れる液体を選択的に除去することを改良するために用いる、抹消側部分の吸入口51の種々の構成を例示する。こうした様々な構成では、前記抹消側部分の長さ方向に沿って多数の穴を有しているのみならず、これら多数の穴は様々な大きさや位置関係を有している。図示するように、抹消側の部分では、管に沿って複数の穴を均等に配置可能であるが、これらの穴は、選択的な位置関係で不均等に配置もでき、および/または様々に異なった大きさや形状(例えば、細長い小孔形、楕円形、三角形、または長方形など)を有することができる。こうした多様な吸入口を組み合わせて使用してもよく、なお、前記の複数の例は、吸収口の構成を説明するために用いたものなので、吸収口の構成はこうした具体例に限定されるものではない。また、このように様々な構成とすることで、多様な構成によって生み出された流体動力学の結果として、回収用カテーテルの抹消側端部に沿って液体除去の配分割合を選択的に行うことができる。これらの抹消側部分にある複数の吸入口は、本明細書中に開示したその他の実施形態と組み合わせて用いることができる。例えば、図5(b)の(複数の)制限用部品などが挙げられる。この場合、他の(複数の)吸入口を通って液体が選択的に除去される間に、制限用部材(ケージ36および部材42)を使用して、カテーテルの先端部を閉塞できる。
【0031】
次に、同様にしてカテーテル10の近位側部分を通って流れる造影剤または灌流液を含んだ血液を、より効果的に回収するために有利に使用できる、様々な近位側の(複数の)吸入口(50)構成を、図12に示す。様々な個数、大きさ、および位置関係をもつ複数の吸入口50を有する回収用カテーテルの近位側部分を吸引できる様々な構造を例示している。また、これら多様な構造を本明細書中説明した他の実施形態と組み合わせて使用することも可能である。例えば、図6(a)−(d)の回収用システムの周囲に配置した、外側シース60である制限用部品と組合すことができる。
管状部材に沿って様々な大きさ、構造、および位置関係をもつ複数の吸入口に加えて、回収用カテーテルの外周面から、(吸入口50および/または51に沿った)回収管腔26の内表面につながる貫通孔を使って、図13に例示するように、回収用カテーテル10の長手方向軸に対して角度θをもつ貫通孔がある構造体にすることが可能になる。この場合、1つ以上の吸入口(50または51)は、管状部材の長手方向軸に対して約20度から約70度の角度で管状部材の経路を横切って配置される。カテーテル本体12の壁を通して様々な角度で貫通孔が配置されることで、吸引操作をするときに、血管から液体を除去する液流の動力学を変化させることができる。さらに、多様な構造をもつことで、カテーテル10を血管壁に当接させて密閉しやすくなる。また、複数の吸入口が多様な構造をもち、回収用カテーテルに沿って様々に配置することで、液体の回収および/または密閉効果を高めるが、本例は説明用として挙げただけである。
【0032】
液流を最適化して、位置選択的または位置特異的に血管内から液体を回収できるように、回収用カテーテルの管状部材に沿って複数の吸入口を有利に配置してもよい。また、吸入口の多様な構造を利用して、さらに密閉部材を血管に当接させて密閉できるように、および/または密閉度を高めるようにしてもよい。また、複数の吸入口を様々に配置し、および様々な構造をもたせることで、カテーテルに沿って柔軟性を変えられるようにして、例えば、ねじれた血管系を迂回させる機能を高めることもできる。
また、単一の回収管腔26で、カテーテルの抹消側部位および近位側部位(両者に挟まれた位置に密閉部材を有する)の両方から液体を回収する方法を説明してきたが、別の構造では2つ以上の回収管腔を有してもよい。多数の分離した回収管腔26により、回収システム上の2つ以上の領域から、液体をさらに選択的に回収できる。図14に、分離形の近位側吸入口26Pおよび回収用カテーテルの範囲内で、分離形近位側吸引口の除去用管腔26Pおよび抹消側吸入口の除去用管腔26Dがあることを特徴とする、断面図例(つまり、管状部材の本体を横切る)を示す。多数の回収管腔26により、複数の各吸入口(50および/または51)を通る液体の回収をより効率的に制御できる。また、前記両方の管腔は、管状部材の近側部位で単一の真空/吸引源に取り付けることができる。あるいは、各管腔を別々の吸引源に接続する構成にもできる。また、2種類の回収管腔を用いることは単なる例示であって、複数の管腔を任意に組み合わせて使用し、回収用カテーテルの様々な部分から液体を効果的に回収し、および/または吸引操作を行うことができる。1例として、回収用カテーテル10が3種類の回収用/採集用管腔を有する構成とし、管腔26のうち2種類が抹消側および近位側部位で、血管から液体を可変的に回収する機能を高める役割を主に果たすようにできる。一方で、管腔26中の1種類は、回収用カテーテル10を血管璧に当接させて密封度を高める役割を主に果たすようにできる。つまり、後者の1種類の管腔は、回収用の別の2種類の管腔26とは別個に、吸引操作で密閉度を高めるように構成できる。同様に、1つ以上の真空源を用いて、1つまたは複数の採集用/回収用管腔26で、回収と密閉の両方の機能を最適化する構造をもつ様々な回収用カテーテルであってもよい。
【0033】
図8に示すように、および、さらに図16で説明したように、カテーテル10の本体に沿って、様々な各々独立したバルーン/密閉部材構造体18を設置するのが好適である。この場合、各バルーン(または、バルーンの集合体)は、液体を回収する血管内での設置状況に応じて、それぞれ別個に膨張させる。図16に、血管内の回収領域を吸引する以前に、別個に、または一緒にして設置できる4個の密閉部材18を有する回収用カテーテルを示す。別個の密閉部材18により、より選択的、または特異的に血管から液体を回収することが容易にできる。図16の回収用カテーテル10は、複数の様々な密閉部材18に膨張媒体を入れ込むために、本体12の璧厚以内で設置した複数の膨張管腔28を備える。つまり、図17に、例えば、4個の別個の膨張管腔28を組み入れたカテーテル10の本体璧の断面図を示す。密閉部材膨張管腔28には、膨張管腔(例えば、複数のチューブ)を備える、各々分離独立した構造体を使用することもできる。
【0034】
次に、図15に、回収用カテーテルの別の実施形態を示す。回収用カテーテル10の構成例では、密閉部材18をチューブに接続し、または、誘導部品72を、回収用カテーテル10の管状部分長手方向に沿って、少なくとも部分的に移動可能である、外側シース周囲に位置する膨張部材(例えば、バルーン)18に接続する。誘導部品72は、バルーン18膨張用に、管腔を少なくとも1つもつ。回収用カテーテルをこのような構成にすることによって、冠状静脈洞などの血管内にカテーテルの抹消側部分を挿入した後に、密閉部材の位置を各々別個に調節できる。この点において、回収用カテーテル10および複数の吸入口(50および/または51)の長手方向に沿って、外科医が作動させるときに、カテーテルが血管内で密閉する位置を変えることができる。この例では、管状をした誘導部品を使用しているが、密閉部材の位置を変えるのと同じ効果を奏すことができる、長手方向に沿って複数の貫通孔があるか、または貫通孔がない外側シースとして誘導部品を形成することができる。また、本明細書で説明した別の実施形態を、図15の回収用カテーテルと組み合わせて使用し、回収用カテーテル10の密閉特性および回収特性をさらに最適化する、および/または高めることができる。1例として、図14を参照して詳しく説明したように、複数の吸入口から液体を特異的に除去するために、カテーテル本体内にある複数の回収用/採集用管腔26を、図15の回収用カテーテル10に用いることも可能である。
【0035】
先述した本発明の大部分の説明では、複数の(抹消側および/または近位側)吸入口を回収用カテーテルの管状部材長手方向に沿って設置して使用する例を挙げている。しかし、(複数の)吸入口を密閉部材の近位側に接して、近位側を通って、または近位側内部に、あるいは、近位側に配置することができる。また、図10(a)に、密閉部材の一部分を通リ抜ける吸入口51を、実施形態の1例として示す。この図では、他の部品中、吸引口は血管璧に当接する密閉部材の閉塞程度をさらに高めることができる。
【0036】
以上述べてきた明細書は、本発明の全てにわたり説明したものである。なお、本発明の数多くの実施形態は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく製造しうるので、本発明の複数の態様は後に添付して記載する請求の範囲において記載する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収部材および血流配分調節ユニットを有する、血管から血流を回収するカテーテルシステム(10)であって、
(ア)前記回収部材は、
(i)抹消側末端部(16)を終点とする、長く伸びて柔軟性をもつ管状部分(12)と、
(ii)前記抹消側末端部から離れた位置にある前記管状部材に保持された環状の密閉部材(18)と、
(iii)回収管腔(26)と、
(iv)前記回収管腔(26)吸引用の吸引源(111)に接続するために形成した近位側末端部(17)と、
(v)少なくとも1個の抹消側吸入口が前記密閉部材(18)よりも抹消側に位置しており、前記回収管腔(26)と液体で連通する前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)と、
(vi)少なくとも1個の近位側吸入口が前記密閉部材(18)よりも近位側に位置しており、前記回収管腔(26)と液体で連通する前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)と、を有し、
(イ)前記血流配分調節ユニットは、
前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)および前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)から、前記回収管腔(26)に流入する血流配分を調節することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)および前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)から、前記回収管腔(26)に流入する血流配分を調節する、回収部材に取り付けた部品(36または60)を有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項3】
請求項2に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記部品(36)が位置選択的に移動可能であることを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項4】
請求項1に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記回収管腔(26)に流入する血流配分を調節する手段の一つとして、
(i)前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)および前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)の各所定の大きさと、
(ii)前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)および前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)から流入する各所定の液量と、のどちらか一方で調節することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項5】
請求項4に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記回収管腔(26)に流入する血流配分を、前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)および前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)の各所定の大きさおよび各所定の液量の両方で調節することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項6】
前記複数の請求項中、任意の請求項に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、回収管腔から血液を回収する近位側末端部に接続する密閉回収容器(102)をさらに有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項7】
前記複数の請求項中、任意の請求項に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、真空源(111)に接続する調節器(104)をさらに有し、前記調節器は前記回収管腔(26)に接続した流出用末端口を用いて前記回収管腔(26)に対する真空度を調節し、前記調節器によって血管から複数の液体流入口を通して前記回収管腔(26)内に血液を吸引するに十分な真空度に調節できることを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項8】
請求項1に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記カテーテルが血管中配置された位置を変更することで、前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)または前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)の各関与を調節し、どちらかの前記吸引口の動作面積を調節するユニット(36)を有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項9】
請求項2に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記少なくとも1個の抹消側吸入口(51)または前記少なくとも1個の近位側吸入口(50)の動作面積を調節する、抹消側および近位側で移動可能なケージ(36)を有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項10】
請求項9に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記ケージ(36)内の近位側領域に取り付けた非多孔性または一部多孔性である膜(42)を前記ケージ(36)が有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項11】
請求項9に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記ケージ(36)は前記近位側吸入口(50)に隣接して設置できる第2ケージ構造体をさらに組み入れており、前記近位側吸入口(50)の動作面積を調節することで、前記近位側吸入口(50)を通る血流を制限することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項12】
請求項9に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記近位側吸入口(50)を容易に閉塞するために、複数の平面形の帯状体を前記ケージ(36)が有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項13】
請求項1に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記近位側吸入口(50)の近位側に位置するバルーンまたは膜(18A)を有する血流制限用素子をさらに有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。
【請求項14】
請求項1に記載する前記血流回収カテーテルシステムであって、前記カテーテル本体(12)の周囲にある位置調節可能なスリーブまたは外側シース(60)を有する血流制限素子をさらに有することを特徴とする血流回収カテーテルシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−513436(P2013−513436A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543251(P2012−543251)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059505
【国際公開番号】WO2011/072035
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(512152411)オスプレー メディカル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】