説明

末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法

【課題】末端に水酸基を高い比率で有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法、それら重合体を用いた硬化性組成物、ならびに、前記重合体から誘導される、末端にアルケニル基、あるいは架橋性シリル基を有する重合体の製造方法、および、それらを主成分とする硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを、水酸基含有置換基に変換することにより、該重合体を得る。
−CH−C(R)(CO)(X) (1)
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアリール基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法、該重合体を用いた硬化性組成物、ならびに、前記重合体から誘導される、末端にアルケニル基、あるいは架橋性シリル基を有する重合体の製造方法、および、それらを主成分とする硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
末端に水酸基を有する重合体は、水酸基と反応する官能基を有する化合物、例えばイソシアネート系化合物等を硬化剤として用いることにより架橋し、耐熱性、耐久性等の優れた硬化物を与えることが知られている。
このような、水酸基を末端に有する重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド等のポリエーテル系重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレンあるいはそれらの水素添加物等の炭化水素系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトン等のポリエステル系重合体等が例示され、主鎖骨格と架橋形式に基づき、様々な用途に用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上に例示した、イオン重合や縮重合で得られる重合体の一方で、ラジカル重合で得られるビニル系の重合体で末端に水酸基を有するものは、まだほとんど実用化されていない。ビニル系重合体の中でも、(メタ)アクリル系重合体は、高い耐候性、透明性等、上記のポリエーテル系重合体や炭化水素系重合体、あるいはポリエステル系重合体では得られない特性を有しており、水酸基を側鎖に有するものは耐候性の塗料等に利用されている。
【0004】
水酸基を分子鎖末端に有する(メタ)アクリル系重合体を簡便な方法で得ることができれば、側鎖に水酸基を有するものに比べて弾性等の硬化物物性の優れた硬化物を得ることができる。従って、これまで多くの研究者によってその製造法が検討されてきたが、それらを工業的に製造することは容易ではない。
特開平5−262808には、連鎖移動剤としてヒドロキシル基を有するジスルフィドを用いて両末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を合成する方法が開示されているが、この方法で両末端に確実にアルケニル基を導入するためには、連鎖移動剤を開始剤に対して大量に用いなければならず、製造工程上問題である。また、特公平1−19402には、過酸化水素を開始剤とする末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造法が開示されているが、この方法において両末端に確実に水酸基を導入することは困難であり、実際には、水酸基を有するビニル系モノマー(例えば、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル)を共重合させる方法が採られている。さらに特開平4−132706には、四塩化炭素等のテロゲンを用いる(メタ)アクリル系モノマーの重合により、末端にハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体を得、末端のハロゲンをジオール化合物、水酸基含有カルボン酸、水酸基含有アミン等の求核剤を反応させて置換することを特徴とする、末端に水酸基を有するビニル系ポリマーの製造法が開示されている。この方法においても、テロゲンの連鎖移動が十分ではないので両末端に官能基を高い比率で導入することは困難である。
【0005】
従って本発明においては、末端に水酸基を、従来の方法に比較して高い比率で有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法ならびにそれらを主成分とする硬化性組成物を提供することを課題とする。また、末端の水酸基の反応性を利用して、さらに他の官能基(アルケニル基、架橋性シリル基)を導入し、それらを用いた硬化性組成物を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のうち、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換することにより製造することができる。
−CH−C(R1)(CO)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
このような製造法の具体例としては、例えば、有機ハロゲン化物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することによって一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、重合性のアルケニル基と水酸基を併せ有する化合物を反応させる方法、あるいは、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製した後、アルデヒド類またはケトン類を反応させる方法、水酸基を有するオキシアニオンや水酸基を有するカルボキシレートアニオンを反応させる方法等が挙げられる。
【0007】
また、該重合体は、水酸基を有するハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することによって、一方の末端に水酸基、他方の末端が一般式1で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらにハロゲンを水酸基含有置換基に変換することによっても製造することができる。さらに、上記水酸基を有するハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として、一方の末端に水酸基、他方の末端に一般式1で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに一般式1のハロゲンを置換することのできる、同一または異なった官能基を2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングすることによっても、該重合体を製造することができる。
【0008】
本発明の硬化性組成物は、下記の2成分:(A)末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体、(B)水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物、を必須成分とするものである。
本発明における、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の末端水酸基を、アルケニル基含有置換基に変換することによって製造することができる。このような方法で得られる、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物は、下記の2成分:(C)末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体、(D)ヒドロシリル基含有化合物、を必須成分とするものである。
【0009】
さらに本発明における、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させることにより、また、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体に、架橋性シリル基と、水酸基と反応する官能基を併せ有する化合物を反応させることにより製造することができる。このような方法により得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分として、硬化性組成物を得ることができる。
【0010】
また、本発明で得られる末端に各種官能基を有する(メタ)アクリル系重合体は、分子量分布が狭いという特徴も有する。
【0011】
本発明は、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造の際に、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより製造される一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを、水酸基含有置換基に変換することを特徴とする。
−CH−C(R1)(CO)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
末端にハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体の製造法としては例えば、ハロゲン化物を連鎖移動剤(テローゲン)として用いる重合において、四塩化炭素や四臭化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等を用いる方法が利用されてきた。しかしこの方法では両末端に確実にハロゲンを導入することは困難である。
【0012】
この方法に対し、最近精力的に研究されているリビングラジカル重合を用いると、末端にハロゲンが高い比率で導入される(例えば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614、Macromolecules、1995、28、7901、Science 1996、272、866。あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721を参照)。これらの方法はラジカル重合でありながら重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0013】
このリビングラジカル重合では、開始剤として有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物が用いられる。
この重合法を用いて架橋性の(メタ)アクリル系重合体を得るために、開始点を2個以上有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いられる。それらの具体例としては、
o−,m−,p−XCH−C−CHX、o−,m−,p−CHC(H)(X)−C−C(H)(X)CH、o−,m−,p−(CHC(X)−C−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニレン基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
ROC−C(H)(X)−(CH−C(H)(X)−COR、ROC−C(CH)(X)−(CH−C(CH)(X)−COR、RC(O)−C(H)(X)−(CH−C(H)(X)−C(O)R、RC(O)−C(CH)(X)−(CH−C(CH)(X)−C(O)R、
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、nは0〜20の整数、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
XCHC(O)CHX、CHC(H)(X)C(O)C(H)(X)CH、(CHC(X)C(O)C(X)(CH、CC(H)(X)−(CH−C(H)(X)C
(上の式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHCO−(CH−OCOCHX、CHC(H)(X)CO−(CH−OCOC(H)(X)CH、(CHC(X)CO−(CH−OCOC(X)(CH
(上の式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数)
XCHC(O)C(O)CHX、CHC(H)(X)C(O)C(O)C(H)(X)CH、(CHC(X)C(O)C(O)C(X)(CH、o−,m−,p−XCHCO−C−OCOCHX、o−,m−,p−CHC(H)(X)CO−C−OCOC(H)(X)CH、o−,m−,p−(CHC(X)CO−C−OCOC(X)(CH、o−,m−,p−XSO−C−SOX、
(上の式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0014】
触媒としては、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体が用いられる。金属種としては特に、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、2価のニッケルが好適である。具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、酢酸第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2−ビピリジル、およびその誘導体、1,10−フェナントロリン、およびその誘導体等の配位子を添加することが有効である。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することが有効である。さらに二価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、二価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)も触媒として好適である。
【0015】
本発明の重合において用いられる(メタ)アクリル系のモノマーとしては特に制約はなく、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等を挙げることができる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。また、必要に応じてスチレンやα−メチルスチレン、アクリロニトリル等の他のビニル系モノマーを共重合させることも可能である。
【0016】
本発明の重合は無溶剤または各種の溶剤中で行うことができる。また、重合は室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃である。
末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体は、上記の重合によって得られる、末端にハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンの変換反応をおこなうことによって得ることができる。
【0017】
そのような方法として、まず、上記の重合により、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法が挙げられる。上記の重合では、重合末端は重合活性を保持しており、新たにビニル系モノマーを添加すれば、再び重合が進行する。従って、重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つビニル系モノマーを添加すれば、重合活性なアルケニル基部分にラジカル付加反応が起こり、水酸基はそのまま残るため、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。このような第2のモノマーは、第1の重合が終了して重合体を単離してから、触媒とともに添加して新たに反応させてもよいし、重合の途中で(in−situ)添加して反応させてもよい。後者の場合、第1の重合のモノマー転化率は高いほどよく、好ましくは80%以上である。80%以下であると、水酸基が分子末端ではなく、側鎖に分布し、硬化物の機械特性を損なうことになる。
【0018】
この際、このような重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物は、重合末端の数(リビング重合であるので、開始剤の開始点の数にほぼ等しい)と等しい量を添加すれば、原理的にすべての末端に一つずつの水酸基が導入されることになるが、全末端に水酸基を確実に導入するためには、過剰量、具体的には、末端の数に対し、1〜5倍用いるのがよい。5倍より多く用いると重合体の末端に高密度で水酸基が導入されることになり、期待通りの硬化物物性が得られない場合が多い。
【0019】
重合性のアルケニル基と水酸基を併せ持つ化合物としては特に制限はないが、例えば、一般式2
C=C(R)−R−R−OH (2)
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは−C(O)O−(エステル基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、Rは直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)
で示される化合物が挙げられる。Rがエステル基のものは(メタ)アクリレート系化合物、Rがフェニレン基のものはスチレン系の化合物である。一般式2におけるRとしては、メチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基、o−,m−,p−フェニレン基等のフェニレン基、ベンジル基等のアラルキル基、−CHCH−O−CHCH−や−OCHCH−等のエーテル結合を含むアルキレン基等が例示される。
【0020】
これらの中でも、入手が容易であるという点から、
C=C(H)C(O)O(CH−OH、HC=C(CH)C(O)O(CH−OH、
(上記の各式において、nは1〜20の整数)
C=C(H)C(O)O(CH−O−(CHOH、HC=C(CH)C(O)O(CH−O−(CH−OH、
(上記の各式において、n、mは1〜20の整数)
o−,m−,p−HC=CH−C−(CH−OH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−(CH−OH、
(上記式中、nは0〜20の整数)
o−,m−,p−HC=CH−C−O(CH−OH、o−,m−,p−HC=C(CH)−C−O(CH−OH、
(上記式中、nは1〜20の整数)
が好ましい。
【0021】
末端ハロゲンを水酸基含有置換基に変換する方法としては、ハロゲンを末端に有する(メタ)アクリル系重合体に対し、金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後に、アルデヒド類またはケトン類を反応させる方法を用いることも可能である。
金属単体としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛等が挙げられる。これらのうち、生成したエノレートアニオンが他のエステル基を攻撃したり、転移するような副反応が起こりにくいという点から亜鉛が特に好ましい。有機金属化合物の具体例としては、有機リチウム、有機ナトリウム、有機カリウム、Grignard反応剤等の有機マグネシウム、有機アルミニウム、有機亜鉛等が挙げられる。ハロゲンを効率的にメタル化させるには、有機リチウム、有機マグネシウムを用いるのが好ましい。
【0022】
アルデヒド類、ケトン類としては特に制限はなく各種のものを用いることができる。例示するならば、
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等である。
【0023】
亜鉛とアルデヒド類またはケトン類を用いる水酸基含有置換基の導入法はいわゆるReformatsky反応であり、特に好ましい実施の形態である。この反応においては種々の溶媒を用いることができるが、非プロトン性の溶媒が好ましく、それらの中でもテトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル系溶媒が特に好ましい。反応は室温〜100℃の範囲で行うことができる。
【0024】
末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の別の製造法としては、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を、一般式3で示す水酸基含有オキシアニオンと反応させる方法が挙げられる。
+-−R−OH (3)
(式中、Rは炭素数1〜20の2価のアルキル基、炭素数6〜20の2価のアリール基、炭素数7〜20の2価のアラルキル基で、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、M+はアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオン)
+はオキシアニオンの対イオンであり、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ジメチルピペリジニウムイオン等の4級アンモニウムイオンが例示される。
【0025】
一般式3のオキシアニオンは、その前駆体であるジオール化合物に、適当な塩基を作用させることにより得ることができる。そのような前駆体としては以下のような化合物:
HO−(CH−OH(nは2〜20の整数)、HO−CH(CH)CHOH、HO−CH(CH)CHCHOH、HO−CHCH(CH)CH−OH、HO−CHC(CHCH−OH、HO−CHC(CH)(C)CH−OH、HO−CHC(CCH−OH、CHCHCH(OH)CH−OH、CHCH(OH)CH(OH)CH、HO−(CHO)−H(nは1〜20の整数)、HO−(CHCHO)−H(nは1〜10の整数)、HO−(CHCH(CH)O)−H(nは1〜6の整数)、o−,m−,p−HO−C−OH、o−,m−,p−HO−C−(CHOH(nは1〜14の整数)、o−,m−,p−HO−(CH−C−(CHOH(n、mは1〜13の整数でn+m≦14)、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール、メチルハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビフェノール、4,4−ビフェノール、4,4−イソプロピリデンジフェノール、等が挙げられる。これらのうち、オキシアニオンの反応性がマイルドで一般式1の末端ハロゲンを選択的に置換し、かつ入手容易であるという点から、o−,m−,p−HO−C−OH、o−,m−,p−HO−C−(CHOH(nは1〜14の整数)が好ましい。これらジオール化合物は、式1の末端に対してモル比で1当量用いればよいが、好ましくは1〜5当量である。
【0026】
上記の化合物からプロトンを引き抜き式3のカルバニオンとするためには各種の塩基が使用される。これらの塩基としては:
ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等が例示される。前駆体であるジオールに対する塩基の使用量は、通常0.5〜3.0当量であるが、好ましくは0.8〜1.5当量である。上記前駆物質と塩基の反応により式3のカルバニオンを調製する際に用いられる溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等が用いられる。
【0027】
式1の末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に対し、一般式4で示される水酸基含有カルボキシレートアニオンを作用させることによっても、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。
+OC-(O)−R−OH (4)
(式中、R、M+は上記に同じ)
式4のカルボキシレートアニオンは、その前駆体である水酸基含有カルボン酸に適当な塩基を作用させることにより調整することができる。そのような前駆体としては以下に示す化合物:
HOC−(CH−OH(nは1〜20の整数)、HOC−CH(OH)CH、HOC−CHCH(OH)CH、o−,m−,p−HOC−C−OH、o−,m−,p−HOC−(CH−C−OH、o−,m−,p−HOC−C−(CH−OH(nは1〜14の整数)、o−,m−,p−HOC−(CH−C−(CH−OH、
(n、mは1〜13の整数で、n+m≦14)
が例示される。
【0028】
上記の化合物からプロトンを引き抜き式4のカルボキシレートアニオンとするためには、式3のオキシアニオンの調整の際に例示した塩基を好適に用いることができる。上記の水酸基含有カルボン酸に塩基を作用させると、より酸性度の高いカルボン酸のプロトンが引き抜かれ、式4のカルボキシレートアニオンが選択的に得られる。塩基の使用量は、水酸基含有カルボン酸に対して通常0.5〜3.0当量であるが、好ましくは0.8〜1.5当量である。
【0029】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として用いる(メタ)アクリル系モノマーの重合において、開始剤として、水酸基を有するハロゲン化物を用いれば、一方の末端に水酸基、他の末端に式1で示されるハロゲンを有する(メタ)アクリル系重合体が得られる。このようにして得られる重合体の末端のハロゲンを水酸基含有置換基に変換すれば、両末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造することができる。
【0030】
水酸基を有するハロゲン化物としては特に制限はないが、一般式5、または6に示す構造を有するものが好ましい。
C(X)−R−R−OH (5)
(式中、Rは上記に同じ、R、Rは水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、または、他端において相互に連結したもの、Rは−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
HO−R−C(R)(X)−R−R (6)
(式中、R、R、R、R、Xは上記に同じ)
一般式5に示す化合物の具体例としては、
XCHC(O)O(CH−OH、HCC(H)(X)C(O)O(CH−OH、(HC)C(X)C(O)O(CH−OH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CH−OH、
【0031】
【化1】

【0032】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CH−OH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−OH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CH−OH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−OH、
【0033】
【化2】

【0034】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、n、mは1〜20の整数)
o−,m−,p−XCH−C−(CH−OH、o−,m−,p−CHC(H)(X)−C−(CH−OH、o−,m−,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−OH、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o−,m−,p−XCH−C−(CH−O−(CH−OH、o−,m−,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−OH、o−,m−,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−OH、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数、mは1〜20の整数)
o−,m−,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−OH、o−,m−,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−OH、o−,m−,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−OH、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、n、mは1〜20の整数)
等が挙げられる。
【0035】
一般式6に示す化合物の具体例としては、
HO−CHC(H)(X)−COR、HO−(CHC(H)(X)−COR、HO−(CHC(H)(X)−COR、HO−(CHC(H)(X)−COR、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
HO−CHC(H)(X)−C、HO−(CHC(H)(X)−C、HO−(CHC(H)(X)−C
等を挙げることができる。
【0036】
水酸基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−HO−(CH−C−SOX、
(上式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o−,m−,p−HO−(CH−O−C−SOX、
(上式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数)
等である。
【0037】
水酸基を有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として(メタ)アクリル系モノマーを重合すると、片末端には水酸基が導入され、他の末端が一般式1で表される末端構造を有する重合体が得られる。この末端のハロゲンを水酸基に変換する方法としては、既に述べた方法をすべて好適に用いることができる。
【0038】
水酸基を有する有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いると、片末端が水酸基、他の末端が式1で示されるハロゲン末端である重合体が得られるが、この重合体の式1のハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングさせることによっても、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を得ることができる。
【0039】
式1で示される末端ハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有するものとしては特に制限はないが、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、およびそれらの塩、アルカリ金属硫化物等が好ましい。これらの化合物を具体的に例示するならば、
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビフェノール、4,4−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−イソプロピリデンフェノール、3,3−(エチレンジオキシ)ジフェノール、α,α−ジヒドロキシ−p−キシレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、および、上記ポリオール化合物のアルカリ金属塩、
エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、α,α−ジアミノ−p−キシレン、および上記ポリアミン化合物のアルカリ金属塩、
シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、1,8−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、および上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、
1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2−メルカプトエチルエーテル、p−キシレン−α,α−ジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、および、上記ポリチオール化合物のアルカリ金属塩、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、等である。
【0040】
上記のポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオールを用いる際は、置換反応を促進させるために、塩基性化合物が併用され、その具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシカリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
【0041】
上記の各種の方法で得られる、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体より、これを主成分とする硬化性組成物を得ることができる。
この硬化性組成物は以下の2成分:(A)末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体、(B)水酸基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物、を必須成分とするものである。
【0042】
(A)成分の末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体は単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。分子量としては特に制限はないが、500〜50000の範囲にあるのが好ましい。500以下であると(メタ)アクリル系重合体の本来の特性が発現されにくく、50000以上になると、非常に高粘度あるいは溶解性が低くなり、取り扱いが困難になる。
【0043】
(B)成分の水酸基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物としては、特に限定はないが、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート化合物、メチロール化メラミンおよびそのアルキルエーテル化物または低縮合化物等のアミノプラスト樹脂、多官能カルボン酸およびそのハロゲン化物等が挙げられる。
【0044】
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート化合物としては従来公知のものを使用することができ、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、一方社油脂製B−45のごときトリイソシアネート、等のイソシアネート化合物、スミジュールN(住友バイエルウレタン社製)のごときビュレットポリイソシアネート化合物、デスモジュールIL、HL(バイエルA.G.社製)、コロネートEH(日本ポリウレタン工業社製)のごときイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、スミジュールL(住友バイエルウレタン社製)のごときアダクトポリイソシアネート化合物、コロネートHL(日本ポリウレタン社製)のごときアダクトポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。また、ブロックイソシアネートを使用しても構わない。これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
末端に水酸基を有する重合体と2個以上のイソシアネート基を有する化合物との配合比については特に限定されないが、例えば、イソシアネート基と末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の水酸基の比率(NCO/OH(モル比))が0.5〜3.0であることが好ましく、0.8〜2.0であることがより好ましい。
【0046】
この発明の組成物である末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体と2個以上のイソシアネート基を有する化合物の硬化反応を促進させるために、必要に応じて、有機スズ化合物や3級アミン等の公知の触媒を添加してもよい。
有機スズ化合物の具体例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズチオカルボキシレート、ジブチルスズジマレエート、ジオクチルスズチオカルボキシレート等が挙げられる。また、3級アミン系触媒としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N,N−テトラメチルプロパン1,3−ジアミン、
N,N,N,N−テトラメチルヘキサン1,6−ジアミン、N,N,N,N,N−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N,N,N−ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(3−ジメチル)アミノプロピルエーテル等が例示される。
【0047】
本発明における硬化性組成物に使用されるアミノプラスト樹脂としては特に限定はなく、メラミンとホルムアルデヒドとの付加反応物(メチロール化合物)、メラミンとホルムアルデヒドの低縮合物、それらのアルキルエーテル化物、ならびに尿素樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用しても構わない。末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体と、アミノプラスト樹脂の硬化反応を促進する目的で、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の公知の触媒を添加してもよい。
【0048】
本発明の硬化性組成物に用いられる、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、特に限定されず、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの多官能カルボン酸またはその無水物、および、これらのハロゲン化物等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の2成分(A)、(B)、および必要に応じて硬化触媒を混合し硬化させれば、深部硬化性に優れた均一な硬化物が得られる。硬化条件については特に制限はないが、一般に0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃である。硬化物の性状は用いる(A)成分の重合体および(B)成分の硬化剤の主鎖骨格や分子量に依存するが、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作成することができる。
【0050】
上記の組成物より得られる硬化物の具体的な用途を挙げるならば、シーリング材、接着剤、粘着材、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、成形材料、人工大理石等である。
次に、本発明の、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、既に述べた各種の方法により得られる、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の水酸基をアルケニル基含有置換基に変換することにより製造することができる。
【0051】
末端の水酸基をアルケニル基含有置換基に変換する方法としては特に制限はなく、各種の方法を用いることができる。例えば、塩化アリルのようなアルケニル基含有ハロゲン化物とナトリウムメトキシドのような塩基を作用させる方法、アリルイソシアネート等のアルケニル基含有イソシアネート化合物を作用させる方法、(メタ)アクリル酸クロリドのようなアルケニル基含有酸ハロゲン化物を反応させる方法、アクリル酸等のアルケニル基含有カルボン酸を酸触媒の存在下に反応させる方法等が挙げられる。
【0052】
アルケニル基含有ハロゲン化物と塩基を作用させる方法において用いられるアルケニル基含有ハロゲン化物としては、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、4−クロロ−1−ブテン、4−ブロモ−1−ブテン、4−ヨード−1−ブテン、3−クロロ−2−メチル−1−ブテン、3−ブロモ−2−メチル−1−ブテン、3−ヨード−2−メチル−1−ブテン、等が挙げられ、塩基としては、ナトリウム、カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム等が挙げられる。
【0053】
アルケニル基含有イソシアネート化合物としては、アリルイソシアネート、ブテニルイソシアネート等が挙げられ、これら化合物を反応させる場合、水酸基とイソシアネート基の反応に通常用いられるスズ系、アミン系等の触媒を用いてもよい。
アルケニル基含有酸ハロゲン化物としては(メタ)アクリル酸クロライド、3−ブテン酸クロライド、4−ペンテン酸クロライド、5−ヘキセン酸クロライド、10−ウンデセン酸クロライド等が挙げられ、実際の反応においては、トリエチルアミンやピリジン等の塩基を併用してもよい。
【0054】
アルケニル基含有カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、10−ウンデセン酸等が挙げられ、実際の反応においては、p−トルエンスルホン酸等の縮合触媒を用いてもよい。
上記の各種の方法で得られる、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、これを主成分とする硬化性組成物とすることができる。
【0055】
この硬化性組成物は以下の2成分: (C)上記のいずれかの方法により得られる、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体、(D)ヒドロシリル基含有化合物、を必須成分とするものである。
(C)成分の末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体は単独で用いても、また、2種類以上を混合して用いても良い。(C)成分の分子量としては特に制限はないが、500〜50000の範囲にあるのが好ましい。500以下であると、(メタ)アクリル系重合体の本来の特性が発現されにくく、50000以上であると、非常に高粘度あるいは溶解性が低くなり、取り扱いが困難になる。
【0056】
(D)成分のヒドロシリル基含有化合物としては特に制限はなく、各種のものを用いることができる。すなわち、一般式7または8で表される鎖状ポリシロキサン
10SiO−[Si(R10O]a−[Si(H)(R11)O]b−[Si(R11)(R12)O]c−SiR10 (7)
HR10SiO−[Si(R10O]a−[Si(H)(R11)O]b−[Si(R11)(R12)O]c−SiR10H (8)
(式中R10およびR11は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R12は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基、aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100の整数を示す)、
一般式9で表される環状シロキサン
【0057】
【化3】

【0058】
(式中R13およびR14は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R15は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基、dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を示し、かつ3≦d+e+f≦10である)を用いることができる。
これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもかまわない。これらのシロキサンの中でも(メタ)アクリル系重合体との相溶性の観点から、フェニル基を有する、一般式10、11で示される鎖状シロキサンや、一般式12、13で示される環状シロキサンが好ましい。
(CHSiO−[Si(H)(CH)O]g−[Si(CO]h−Si(CH (10)
(CHSiO−[Si(H)(CH)O]g−[Si(CH){CHC(H)(R16)C}O]h−Si(CH (11)
(式中、R16は水素またはメチル基、gは2≦g≦100、hは0≦h≦100の整数、Cはフェニル基を示す)
【0059】
【化4】

【0060】
(式中、R16は水素、またはメチル基、iは2≦i≦10、jは0≦j≦8、かつ3≦i+j≦10である整数、Cはフェニル基)
(D)成分の少なくとも2個以上のヒドロシリル基を有する硬化剤としてはさらに、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物に対し、式7〜13に示したヒドロシリル基含有化合物を、反応後にも一部のヒドロシリル基が残るようにして付加反応させて得られる化合物を用いることもできる。分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物としては、各種のものを用いることができる。例示するならば、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン等の炭化水素系化合物、O,O−ジアリルビスフェノールA、3,3−ジアリルビスフェノールA等のエーテル系化合物、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート等のエステル系化合物、ジエチレングリコールジアリルカーボネート等のカーボネート系化合物が挙げられる。
【0061】
式7〜13に示した過剰量のヒドロシリル基含有化合物に対し、ヒドロシリル化触媒の存在下、上に挙げたアルケニル基含有化合物をゆっくり滴下することにより該化合物を得ることができる。このような化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたシロキサンの除去のしやすさ、さらには(C)成分の重合体への相溶性を考慮して、下記のものが好ましい。
【0062】
【化5】

【0063】
重合体(C)と硬化剤(D)は任意の割合で混合することができるが、硬化性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.2の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.4であることが特に好ましい。モル比が5以上になると硬化が不十分でべとつきのある強度の小さい硬化物しか得られず、また、0.2より小さいと、硬化後も硬化物中に活性なヒドロシリル基が大量に残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある硬化物が得られない。
【0064】
重合体(C)と硬化剤(D)との硬化反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒が添加される。このようなヒドロシリル化触媒としては、有機過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤、および遷移金属触媒が挙げられる。
ラジカル開始剤としては特に制限はなく各種のものを用いることができる。例示するならば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタール等が挙げられる。
【0065】
また、遷移金属触媒としては、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体が挙げられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh, RhCl, RuCl, IrCl,FeCl, AlCl, PdCl・HO, NiCl, TiCl等が挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもかまわない。触媒量としては特に制限はないが、(A)成分のアルケニル基1molに対し、10-1〜10-8molの範囲で用いるのが良く、好ましくは10-3〜10-6 molの範囲で用いるのがよい。10-8molより少ないと硬化が十分に進行しない。またヒドロシリル化触媒は高価であるので10-1mol以上用いないのが好ましい。
【0066】
本発明の2成分(C)、(D)、および必要に応じてヒドロシリル化触媒を混合し硬化させれば、深部硬化性に優れた均一な硬化物が得られる。硬化条件については特に制限はないが、一般に0℃〜200℃、好ましくは30℃〜150℃で10秒〜24時間硬化するのがよい。特に80℃〜150℃の高温では10秒〜1時間程度の短時間で硬化するものも得られる。硬化物の性状は用いる(C)成分の重合体および(D)成分の硬化剤の主鎖骨格や分子量に依存するが、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作成することができる。本組成物から得られる硬化物の具体的な用途を挙げるならば、シーリング材、接着剤、粘着材、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、ガスケット、各種成形材料、人工大理石等である。 本発明における、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、上記の種々の方法により得られる末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させることにより製造することができる。末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体としては、既に説明した方法により得られるものをすべて好適に用いることができる。
【0067】
ヒドロシラン化合物としては特に制限はないが、代表的なものを示すと、一般式14
H−[Si(R172-b(Y)bO]−Si(R183-a(Y)a (14)
(式中、R17およびR18は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R)SiO−(Rは炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のRは同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R17またはR18が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0, 1, 2, または3 を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。)
で表される化合物が例示される。
【0068】
上記Yで示される加水分解性基としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、具体的には、水素、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられ、加水分解性がマイルドで取り扱いやすいという点から、アルコキシ基が特に好ましい。該加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、a+mb、すなわち、加水分解性基の総和は、1〜5の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上結合するときは、それらは同一であっても、異なっていてもよい。架橋性ケイ素化合物を構成するケイ素原子は、1個でもよく、2個以上であってもよいが、シロキサン結合により連結されたケイ素原子の場合には20個程度まであってもよい。
【0069】
一般式14におけるR17やR18の具体例としては、例えば、メチル基やエチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、Rがメチル基やフェニル基等である(R)SiO−で示されるトリオルガノシリル基等が挙げられる。これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式15
H−Si(R183-a(Y)a (15)
(式中、R18、Y、aは前記と同じ。)で表される架橋性基を有するヒドロシラン化合物が、入手容易な点から好ましい。一般式14または15で示される架橋性基を有するヒドロシラン化合物の具体例としては、
HSiCl、HSi(CH)Cl、HSi(CHCl、HSi(OCH、HSi(CH)(OCH、HSi(CHOCH、HSi(OC、HSi(CH)(OC、HSi(CHOC、HSi(OC、HSi(C)(OCH、HSi(COCH、HSi(C)(OCH、HSi(C(OCH)、HSi(CH)(OC(O)CH、HSi(CHO−[Si(CHO]−Si(CH)(OCH、HSi(CH)[O−N=C(CH
(但し、上記化学式中、Cはフェニル基を示す)
等が挙げられる。
【0070】
このような架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体に付加させる際には、ヒドロシリル化触媒を使用することが可能で、上述のヒドロシリル化触媒をすべて用いることができる。
末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体に、架橋性シリル基および水酸基と反応する官能基を併せ有する化合物を反応させることによっても得ることができる。水酸基と反応する官能基としては、例えばハロゲン原子を有する基、カルボン酸ハライド、カルボン酸、イソシアネート基等が挙げられるが、化合物の入手容易性や、水酸基と反応させる際の反応条件がマイルドで、架橋性シリル基の分解が起こりにくい点で、イソシアネート基が好ましい。
【0071】
このような、架橋性シリル基を有するイソシアネート系化合物としては特に制限はなく、公知のものを使用することができる。具体例を示すならば、
(CHO)Si−(CH−NCO、(CHO)(CH)Si−(CH−NCO、(CO)Si−(CH−NCO、(CO)(CH)Si−(CH−NCO、(i−CO)Si−(CH−NCO、(i−CO)(CH)Si−(CH−NCO、(CHO)Si−(CH−NH−(CH−NCO、(CHO)(CH)Si−(CH−NH−(CH−NCO、(CO)Si−(CH−NH−(CH−NCO、(CO)(CH)Si−(CH−NH−(CH−NCO、(i−CO)Si−(CH−NH−(CH−NCO、(i−CO)(CH)Si−(CH−NH−(CH−NCO、
(上記式中、n、mは1〜20の整数)
等が挙げられる。
【0072】
末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体と、架橋性シリル基を有するイソシアネート化合物の反応は、無溶媒、または各種の溶媒中で行うことができ、反応温度は、0℃〜100℃、好ましくは、20℃〜50℃である。この際、水酸基とイソシアネート基の反応を促進するために既に例示したスズ系触媒、3級アミン系触媒を使用することができる。
【0073】
上記の各方法で得られた、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、これを主成分とする硬化性組成物にすることができる。
主成分である(メタ)アクリル系重合体は、単独で用いても、また、2種類以上を混合して用いてもよい。また、その分子量については特に制限はないが、500〜50000の範囲にあるのが好ましい。分子量が500以下であると、(メタ)アクリル系重合体の本来の特性が発現されにくく、また、50000以上であると、ハンドリングが困難になる。
【0074】
末端に加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、水分と接触すると縮合反応による網目を形成し、3次元網目構造を有する硬化物(架橋体)を与える。加水分解速度は温度、湿度、加水分解性基の種類により異なるので、使用条件に応じて適切な加水分解性基を選択しなければならない。また、加水分解性シリル基を末端に有する(メタ)アクリル系重合体を保存する時には、水分との接触を可能な限り断つ必要がある。
【0075】
硬化反応を促進するために硬化触媒を添加してもよい。縮合触媒としてはテトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫等の有機錫化合物;オクチル酸鉛、ブチルアミン、オクチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、1,3−ジアザビシクロ(5,4,6)ウンデセン−7等のアミン系化合物あるいはそれらのカルボン酸塩;過剰のポリアミンと多塩基酸から得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物の反応生成物;アミノ基を有するシランカップリング剤、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等の公知のシラノール触媒1種または2種以上を必要に応じて用いればよい。硬化触媒の使用量は末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体に対し、0〜10重量%で使用するのが好ましい。加水分解性基Yがアルコキシ基である場合は、この重合体のみでは硬化速度が遅いので、硬化触媒を使用することが好ましい。
【0076】
主成分である末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体に、必要に応じて硬化触媒を混合し硬化させれば、均一な硬化物を得ることができる。硬化条件としては特に制限はないが、一般に0〜100℃、好ましくは10〜50℃で1時間〜1週間程度である。硬化物の性状は用いる重合体の主鎖骨格や分子量に依存するが、ゴム状のものから樹脂状のものまで幅広く作成することができる。
【0077】
上記の組成物より得られる硬化物の具体的な用途としては、シーリング材、接着剤、粘着材、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、発泡体、電気電子用ポッティング材、フィルム、成形材料、人工大理石等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0078】
本発明によれば、これまで製造することが困難であった、末端に水酸基を高い比率で有する(メタ)アクリル系重合体を簡便に得ることができ、硬化特性の優れた硬化性組成物を得ることができる。また、該水酸基の反応性を利用して末端にアルケニル基あるいは架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を簡便に得ることができ、それぞれの末端官能性(メタ)アクリル系重合体から硬化特性の優れた硬化性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下に、この発明の具体的な実施例を示すが、この発明は、下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
30mLの耐圧反応容器に、アクリル酸−n−ブチル(5mL、4.47g、34.9mmol)、α,α−ジブロモ−p−キシレン(185mg、0.70mmol)、臭化第一銅(100mg、0.70mmol)、2,2−ビピリジル(326mg、2.10mmol)、酢酸エチル(4mL)、アセトニトリル(1mL)を仕込み、窒素バブリングを10分間行って溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、3時間反応させた。反応容器を室温にもどし、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(0.352mL、364mg、2.80mmol)を加えて封管し、80℃で2時間反応させた。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、10%塩酸で3回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、下式に示す末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を4.11g得た(82%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により5900、分子量分布は1.45であった。また、1H−NMR分析より、重合体1分子あたりの水酸基は平均3.2個であった。
【0080】
【化6】

【0081】
製造例1(水酸基含有開始剤の製造)
窒素雰囲気下、エチレングリコール(10.9mL、195mmol)とピリジン(3g、39mmol)のTHF溶液(10mL)に2−ブロモプロピオン酸クロライド(2mL、3.35g、19.5mmol)を0℃でゆっくり滴下した。そのままの温度で溶液を2時間攪拌した。希塩酸(20mL)と酢酸エチル(30mL)を加え、2層を分離した。有機層を希塩酸、およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した後、揮発分を減圧下留去し、粗成生物を得た(3.07g)。この粗生成物を減圧蒸留することにより(70〜73℃、0.5mmHg)、下式に示す、ヒドロキシエチル−2−ブロモプロピオネートを得た(2.14g、56%)。
CC(H)(Br)C(O)O(CH−OH
実施例2
30mLの耐圧反応容器に、アクリル酸−n−ブチル(5mL、4.47g、34.9mmol)、製造例1で得られた水酸基含有開始剤(138mg、0.698mmol)、臭化第一銅(100mg、0.698mmol)、2,2−ビピリジル(218mg、1.40mmol)、酢酸エチル(4mL)、アセトニトリル(1mL)を仕込み、窒素バブリングを行って溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、2時間反応させた。反応容器を室温にもどし、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(0.176mL、182mg、1.40mmol)を加え、100℃で2時間反応させた。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、不溶分を濾別した後、濾液を10%塩酸で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、下式に示す末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を4.44g得た(収率93%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により、6100、分子量分布は1.32であった。また、1H−NMR測定により、重合体1分子当たりの水酸基は、平均3.3個であった。
【0082】
【化7】

【0083】
実施例3
実施例2において、アクリル酸−n−ブチルを10mL使用する以外は全く同様にして、化7に示すポリ(アクリル酸−n−ブチル)を6.96g得た(収率75%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により、8300、分子量分布は1.32であった。また、1H−NMR測定により、重合体1分子当たりの水酸基は、平均2.2個であった。
実施例4
実施例2において、アクリル酸−n−ブチルを7.5mL使用する以外は全く同様にして、化7に示すポリ(アクリル酸−n−ブチル)を5.75g得た(収率82%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により、7500、分子量分布は1.36であった。また、1H−NMR測定により、重合体1分子当たりの水酸基は、平均2.1個であった。
実施例5
50mLの耐圧反応容器に、アクリル酸−n−ブチル(10.94mL、9.78g、76.3mmol)、製造例1で得られた水酸基含有開始剤(301mg、1.53mmol)、臭化第一銅(219mg、1.53mmol)、2,2−ビピリジル(476mg、3.05mmol)、酢酸エチル(8.8mL)、アセトニトリル(2.2mL)を仕込み、窒素バブリングを行って溶存酸素を除去した後、封管した。混合物を130℃に加熱し、1.3時間反応させた。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、10%塩酸で3回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNaSOで乾燥した後、溶媒を減圧下留去し、片末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を5.23g得た(53%)。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により3400、分子量分布は1.31であった。また、1H−NMR分析より、重合体1分子あたりの水酸基は平均1.09個であった。
【0084】
次に、攪拌子、還流冷却管を備えた50mLの3つ口フラスコに、上で得られた片末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)(2.15g)、NaS・9HO(76.3mg、0.318mmol)、およびエタノール(3mL)を仕込み、還流温度で3時間攪拌した。室温に冷却した後、酢酸エチル(5mL)、10%塩酸(5mL)を加え、2層を分離した。有機層を10%塩酸とブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した後、揮発分を減圧下留去することにより、下式に示す両末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を1.93g得た。重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により、5700、分子量分布は1.39であった。
【0085】
【化8】

【0086】
実施例6〜10(硬化物の作成)
実施例1〜5で得られた両末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)と、下式に示す3官能イソシアネート化合物(一方社油脂製B−45)、およびスズ系触媒(株式会社日東化成製、U−220、ジブチルスズジアセチルアセトネート)をよく混合した。なお、混合割合は、(メタ)アクリル系重合体の水酸基と、イソシアネート化合物のイソシアネート基がモル比で1/1となる量、また、スズ系触媒は、重合体100重量部に対し、0.1重量部とした。
【0087】
上記混合物を減圧下に脱泡し、型枠に流し込んで80℃で15時間加熱硬化させた。得られた硬化物をトルエンに24時間浸漬し、前後の重量変化から、ゲル分率を算出した。結果を表1に示した。
【0088】
【化9】

【0089】
【表1】

【0090】
実施例11
1Lのオートクレーブを用い、実施例2の20倍のスケール(アクリル−n−酸ブチル100g使用)にて、末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を82g得た(75%)。得られた重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により5100、分子量分布は1.29であった。
【0091】
次に、上記のようにして得られた末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)(50g)およびピリジン(10mL)のトルエン溶液(100mL)に、窒素雰囲気下、60℃で、10−ウンデセン酸クロリド(7.22mL、6.81g、33.6mmol)をゆっくりと滴下し、60℃で3時間攪拌した。生成した白色固体を濾過し、有機層を希塩酸およびブラインで洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、減圧下に濃縮することにより、下式に示す末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)(43g)を得た。得られた重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により5400、分子量分布は1.3であった。また、1H−NMR分析により、重合体1分子当たりのアルケニル基の個数は平均2.28個であった。
【0092】
【化10】

【0093】
実施例12
還流冷却管と攪拌子を備え付けた50mLの3つ口フラスコに、実施例5で得られた両末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)(780mg)、ピリジン(0.3mL)およびトルエン(2mL)を仕込んだ。窒素雰囲気下、10−ウンデセン酸クロリド(0.0705mL、0.328mmol)を60℃で滴下し、そのままの温度で3時間攪拌した。酢酸エチル(5mL)、10%塩酸(5mL)を加え、2層を分離した。有機層を10%塩酸およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した後、揮発分を減圧下留去することにより、下式に示す、両末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を得た(560mg)。得られた重合体の数平均分子量はGPC測定(ポリスチレン換算)により、6500、分子量分布は1.31であった。
【0094】
【化11】

【0095】
実施例13〜14
実施例11、12で得られた両末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸ブチル)、下式に示したヒドロシリル基含有化合物、および0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体(8.3×10-8mol/Lキシレン溶液)をよく混合した。ヒドロシリル基含有化合物の使用量は、重合体のアルケニル基とヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基がモル比で1/1.2となる量、また、白金触媒の使用量は、重合体のアルケニル基に対して、モル比で10−4〜10−3当量とした。
【0096】
このようにして得られた組成物の一部を130℃のホットプレート上にて硬化試験を行い、ゲル化時間を測定した。また、残りの組成物を減圧下に脱気し、型枠に流し込んで加熱硬化させ、ゴム状の硬化物を得た。硬化物をトルエンに24時間浸漬し、前後の重量変化からそのゲル分率を測定した。結果を表2に示した。
【0097】
【化12】

【0098】
【表2】

【0099】
実施例15
30mLの耐圧反応容器に、実施例11で得られた両末端にアルケニル基を有するポリ(アクリル酸ブチル)(2g)、メチルジメトキシシラン(0.32mL)、オルトギ酸メチル(0.09mL、アルケニル基に対し3当量)、0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン錯体(8.3×10-8mol/Lキシレン溶液、アルケニル基に対し、10ー4当量)を仕込み、100℃で1時間攪拌した。揮発分を減圧下留去することにより、下式に示す、両末端にメチルジメトキシシリル基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)を2g得た。
【0100】
【化13】

【0101】
次に、上記のようにして得られた両末端に架橋性シリル基を有するポリ(アクリル−n−酸ブチル)(1g)と硬化触媒(株式会社日東化成製、U−220、ジブチルスズジアセチルアセトナート、30mg)をよく混合し、型枠に流し込んで、減圧乾操器を用いて室温で脱泡した。室温に7日間放置することにより、均一なゴム状硬化物が得られた。ゲル分率は78%であった。
製造例2
100mLの反応器に、アクリル酸−n−ブチル(20mL、17.9g、0.140mmol)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(0.628g、1.74mmol)、臭化第一銅(225mg、1.57mmol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.328mL、0.272g、1.57mmol)、トルエン(2.0mL)を仕込み、凍結脱気を行った後、窒素置換した。混合物を70℃に加熱し、45分間反応させた。この時点で、モノマーの反応率は82%であった。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、活性アルミナのカラムを通し、銅触媒を除き、下式に示す末端に臭素基を持つポリ(アクリル酸−n−ブチル)を得た。生成したポリマーの数平均分子量は10200、分子量分布は1.14であった。
【0102】
【化14】

【0103】
実施例16
製造例2で得られたポリ(アクリル酸−n−ブチル)(5.00g)、4−ヒドロキシブチル酸ナトリウム塩(0.248g、1.967mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(10mL)中で混合し、70℃で3時間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄後、有機層の揮発分を減圧留去することにより下式に示す両末端に水酸基を有する重合体を得た。1H NMR測定により、重合体1分子あたりの水酸基数は、平均1.66個であった。
【0104】
【化15】

【0105】
実施例17
実施例16で得られた両末端に水酸基を有するポリ(アクリル酸−n−ブチル)と下式に示す3官能イソシアネート化合物(一方社油脂製B−45)をよく混合した。なお、混合割合は重合体の水酸基とイソシアネート化合物のイソシアネート基がモル比で1/3となる量とした。
【0106】
【化16】

【0107】
上記混合物を減圧下に脱泡し、100℃で24時間加熱硬化させた。得られた硬化物をトルエンに24時間浸漬し、前後の重量変化から、ゲル分率を算出すると97%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換することを特徴とする、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
−CH−C(R)(CO)(X) (1)
(式中、Rは水素またはメチル、Rは炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
【請求項2】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに、重合性のアルケニル基と水酸基を併せ有する化合物と反応させることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
重合性のアルケニル基と水酸基を併せ有する化合物が一般式2で示される化合物である請求項2記載の製造方法。
C=C(R)−R−R−OH (2)
(式中、Rは水素またはメチル基、Rは−C(O)O−(エステル基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、Rは直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)
【請求項4】
一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製した後、アルデヒド類またはケトン類を作用させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
金属単体が亜鉛であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
一般式1で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に一般式3で示す水酸基含有オキシアニオン、あるいは式4で示す水酸基含有カルボキシレートアニオンを作用させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
+-−R−OH (3)
(式中、Rは炭素数1〜20の2価のアルキル基、炭素数6〜20の2価のアリール基、または炭素数7〜20の2価のアラルキル基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、M+はアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオン)
+-C(O)−R−OH (4)
(式中、R、M+は上記に同じ)
【請求項7】
開始剤である有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が水酸基を有するハロゲン化物であることを特徴とする請求項1〜6記載の製造方法。
【請求項8】
水酸基を有するハロゲン化物が、一般式5または6で示される化合物である請求項7記載の製造方法。
C(X)−R−R−OH (5)
(式中、Rは上記に同じ、R、Rは水素、または、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、または、他端において相互に連結したもの、Rは−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
HO−R−C(R)(X)−R−R (6)
(式中、R、R、R、R、Xは上記に同じ)
【請求項9】
請求項7または8記載の方法により、一方の末端に水酸基、他方の末端が一般式1で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに一般式1のハロゲンを置換することのできる、同一、または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングすることを特徴とする、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
【請求項10】
一般式1のハロゲン末端のカップリング反応を、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、およびそれらの塩、アルカリ金属硫化物からなる群より選ばれる化合物を用いて行うことを特徴とする請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10記載のいずれかの方法により得られる、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体。
【請求項12】
下記の2成分:(A)末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体、(B)水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物、を必須成分とする硬化性組成物。
【請求項13】
(A)成分の末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体が請求項1〜10のいずれかの方法で得られる末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体である請求項12記載の硬化性組成物。
【請求項14】
(B)成分の、水酸基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する化合物が、多価イソシアネート化合物である請求項12または13記載の硬化性組成物。
【請求項15】
末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体の分子量が500〜50000の範囲にある請求項12〜14記載の硬化性組成物。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかの方法で得られる(メタ)アクリル系重合体の末端水酸基を、アルケニル基含有置換基に変換することを特徴とする、末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
【請求項17】
下記の2成分:(C)請求項16の方法で得られる末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体、(D)ヒドロシリル基含有化合物、を必須成分とする硬化性組成物。
【請求項18】
請求項16記載の方法で得られる(メタ)アクリル系重合体に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させることを特徴とする、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれかの方法により得られる、末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体に、架橋性シリル基および水酸基と反応する官能基を併せ有する化合物を反応させることを特徴とする、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
【請求項20】
水酸基と反応する官能基がイソシアネート基である請求項19記載の製造方法。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかの方法により得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に、重合性のアルケニル基と水酸基を併せ有する化合物を第二のモノマーとして反応させて前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
得られた(メタ)アクリル系重合体の末端水酸基をアルケニル基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項2】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に、金属単体あるいは有機金属化合物を反応させて(メタ)アクリル系重合体の末端構造をエノレートアニオンに変換した後、当該エノレートアニオンにアルデヒド類またはケトン類を反応させることによって、前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
得られた(メタ)アクリル系重合体の末端水酸基をアルケニル基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項3】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に、一般式3
+−R6−OH (3)
(式中、R6は炭素数1〜20の2価のアルキル基、炭素数6〜20の2価のアリール基、または炭素数7〜20の2価のアラルキル基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、M+はアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオン)
で示す水酸基含有オキシアニオン、あるいは式4
+C(O)−R6−OH (4)
(式中、R6、M+は上記に同じ)
で示す水酸基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
得られた(メタ)アクリル系重合体の末端水酸基をアルケニル基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項4】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合する際、開始剤である有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物として水酸基を有するハロゲン化物を用いて、一方の末端に水酸基、他方の末端が一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに一般式1のハロゲンを置換することのできる、同一、または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングすることにより前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
得られた(メタ)アクリル系重合体の末端水酸基をアルケニル基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を付加させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項5】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に、重合性のアルケニル基と水酸基を併せ有する化合物を第二のモノマーとして反応させて前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基および水酸基と反応する官能基を併せ有する化合物を反応させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項6】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に、金属単体あるいは有機金属化合物を反応させて(メタ)アクリル系重合体の末端構造をエノレートアニオンに変換した後、当該エノレートアニオンにアルデヒド類またはケトン類を反応させることによって、前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基および水酸基と反応する官能基を併せ有する化合物を反応させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項7】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合することにより得られる、一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示す末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体に、一般式3
+−R6−OH (3)
(式中、R6は炭素数1〜20の2価のアルキル基、炭素数6〜20の2価のアリール基、または炭素数7〜20の2価のアラルキル基で1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、M+はアルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオン)
で示す水酸基含有オキシアニオン、あるいは式4
+C(O)−R6−OH (4)
(式中、R6、M+は上記に同じ)
で示す水酸基含有カルボキシレートアニオンを反応させて前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基および水酸基と反応する官能基を併せ有する化合物を反応させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項8】
有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として(メタ)アクリル系モノマーを重合する際、開始剤である有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物として水酸基を有するハロゲン化物を用いて、一方の末端に水酸基、他方の末端が一般式1
−CH2−C(R1)(CO22)(X) (1)
(式中、R1は水素またはメチル、R2は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
で示される構造を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに一般式1のハロゲンを置換することのできる、同一、または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングすることにより前記(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを水酸基含有置換基に変換し、
更に、架橋性シリル基および水酸基と反応する官能基を併せ有する化合物を反応させることにより得られる、末端に架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体を主成分とする硬化性組成物。
【請求項9】
重合性のアルケニル基と水酸基を併せ有する化合物が一般式2で示される化合物である請求項1又は5記載の硬化性組成物。
2C=C(R3)−R4−R5−OH (2)
(式中、R3は水素またはメチル基、R4は−C(O)O−(エステル基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、R5は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)
【請求項10】
金属単体が亜鉛であることを特徴とする請求項2又は6記載の硬化性組成物。
【請求項11】
開始剤である有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が水酸基を有するハロゲン化物であることを特徴とする請求項1〜3、5〜7、9及び10のいずれか1項記載の硬化性組成物。
【請求項12】
水酸基を有するハロゲン化物が、一般式5または6で示される化合物である請求項4、8及び11のいずれか1項記載の硬化性組成物。
78C(X)−R9−R5−OH (5)
(式中、R5は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、R7、R8は水素、または、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基、または、他端において相互に連結したもの、R9は−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−、m−、p−フェニレン基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
HO−R5−C(R7)(X)−R9−R8 (6)
(式中、R5、R7、R8、R9、Xは上記に同じ)
【請求項13】
一般式1のハロゲン末端のカップリング反応を、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、およびそれらの塩、アルカリ金属硫化物からなる群より選ばれる化合物を用いて行うことを特徴とする請求項4又は8記載の硬化性組成物。
【請求項14】
水酸基と反応する官能基がイソシアネート基である請求項5〜13のいずれか1項記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2006−89753(P2006−89753A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322877(P2005−322877)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【分割の表示】特願平9−325857の分割
【原出願日】平成9年11月27日(1997.11.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】