説明

末端イソシアネート基含有プレポリマーおよびそれを用いたウレタンの製造方法ならびにロール用ポリウレタン

【課題】例えばロール用途に適したポリウレタン、並びにそれを製造するために適した末端イソシアネート基含有プレポリマーとそれを用いたポリウレタンの製造方法を提供する。
【解決手段】有機ポリイソシアネート化合物(c)に対してポリエーテルポリオール(b1)を反応させ、さらにポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を反応させて末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)を製造する。ここで、前記(b1)は不飽和度が0.05meq/g以下、数平均分子量が4500〜20000、および平均官能基数が1.5〜6.0であり、かつ前記(b2)は数平均分子量が500〜4000、および平均官能基数が2であり、さらに(b1の質量):(b2の質量)=5:95〜95:5となるように(b1)および(b2)を用いる。さらに、前記プレポリマー(A)および平均分子量500以下のポリオール(D)を反応させてポリウレタンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮永久歪みが小さく、硬度が低く、かつ高摩擦係数を有するポリウレタンの製造方法および前記ポリウレタンを製造するために用いる末端イソシアネート基含有プレポリマーの製造法、並びに前記ポリウレタンからなるロール用ポリウレタンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂(以下、単に「ポリウレタン」とも記す)は、その優れた機械的、熱的、および化学的性質により、各種工業用ロール、ベルト、事務機器部品、およびキャスター等の工業部品ならびに機械部品に用いられ、最終製品としては例えばエスカレーター、スポーツ用品、およびレジャー用品等に幅広く使用されている。
【0003】
ポリウレタンを製造する方法としては、末端イソシアネート基含有プレポリマーをポリオール等の硬化剤と反応させて硬化させる方法が一般に知られている。ポリウレタンを用いたロールとしては、分子内に特定の基を有するポリウレタンからなるロールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリオキシテトラメチレングリコールおよびポリオキシプロピレンポリオールを特定の混合比で用いて得られた、高摩擦係数を有するロール用ポリウレタンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、圧縮永久歪みが小さくかつ硬度が低いポリウレタン系ロールを製造するための成型用組成物の製造方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−26613号公報
【特許文献2】特開2002−226540号公報
【特許文献3】特開2003−128744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来公知のロール用ポリウレタンは摩擦係数が低いために、これを用いたロールと搬送物との間で滑りが生じやすいという問題が生じる場合があり、また、従来公知のポリウレタンの製造方法を用いた場合はロール用として好ましい低い弾性を有するポリウレタンを得ることが困難だった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、摺動特性の低下、例えばテーバー摩耗量の増大がなく、しかも圧縮永久歪みが小さく、硬度が低く、かつ高摩擦係数を有するポリウレタンの製造方法および前記ポリウレタンを製造するために用いる末端イソシアネート基含有プレポリマーの製造方法、並びに前記ポリウレタンからなるロール用ポリウレタンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)の製造方法は、水酸基に対しイソシアネート基過剰の条件下で、有機ポリイソシアネート化合物(c)に対してポリエーテルポリオール(b1)を反応させた後さらにポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を反応させることを特徴とする、末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)の製造方法であって、
前記ポリエーテルポリオール(b1)は不飽和度が0.05meq/g以下、数平均分子量が4500〜20000、および平均官能基数が1.5〜6.0であり、かつ前記ポリオキシテトラメチレングリコール(b2)は数平均分子量が500〜4000、および平均官能基数が2であり、
さらに(b1の質量):(b2の質量)=5:95〜95:5となるように前記ポリエーテルポリオール(b1)およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を用いることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のポリウレタンの製造方法は、前記末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)、および平均分子量500以下のポリオール(D)を反応させることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のロール用ポリウレタンは、上記製造方法を用いて製造されたポリウレタンからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の末端イソシアネート基含有プレポリマーの製造法を用いて製造されたプレポリマー(A)とポリオール(D)を反応させて得られるポリウレタンは、摺動特性に優れ、低硬度であり、圧縮永久歪みが小さく、高い摩擦係数を有する。本発明のポリウレタンはロール用として極めて優れ、特に紙を搬送するためのロールとして用いた場合、ロールが低硬度であり、しかも高摩擦係数を有するということから、紙とロールの間に滑りが生じにくいという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては、まず有機ポリイソシアネート化合物(c)をポリエーテルポリオール(b1)と反応させ、さらにポリオキシテトラメチレングリコール(b2)と反応させて末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)(以下、単にプレポリマー(A)とも記す)を製造し、さらにこのプレポリマー(A)とポリオール(D)を反応させてポリウレタンを製造する。以下本発明において用いる原料および製造条件等について説明する。
【0012】
[末端イソシアネートプレポリマー(A)]
上述のとおり、本発明においては、水酸基に対してイソシアネート基が過剰の条件下で、まず有機ポリイソシアネート化合物(c)に対してポリエーテルポリオール(b1)を反応させてイソシアネート基含有反応混合物を得る。さらに、得られたイソシアネート基含有反応生成物とポリオキシテトラメチレングリコール(b2)とを水酸基に対してイソシアネート基過剰の条件下で反応させることにより、プレポリマー(A)を製造する。イソシアネート基と水酸基とが反応してウレタン結合等を生じる反応は公知である。
【0013】
(有機ポリイソシアネート化合物(c))
プレポリマー(A)の製造に用いる有機ポリイソシアネート化合物(c)としては、ポリウレタン系エラストマーの製造に一般に用いることができるいずれの化合物も使用することができる。本発明に用いることができる有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(以下、2,4−TDIと略す)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'−MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4'−MDIと略す)、および4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(クルードMDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物;1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、およびテトラメチルキシレンジイソシアネート等のアラルキルポリイソシアネート化合物;トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソアネート、および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;ならびに、前記ポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変成体、ビウレット変成体、アロファネート変成体、二量体、三量体等が挙げられる。 これらのうち本発明においては、芳香族ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましく、2,4−TDI、2,6−TDI、および4,4'−MDIから選ばれる少なくとも一種を用いることがさらに好ましい。有機ポリイソシアネート化合物は単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0014】
(ポリエーテルポリオール(b1))
本発明で用いるポリエーテルポリオール(b1)は、ポリオキシアルキレンポリオールが好ましく、ポリオキシプロピレンポリオールが特に好ましい。ポリエーテルポリオール(b1)は、不飽和度が0.05meq/g(ミリ当量/g)以下であることが好ましく、0.01meq/g以下であることがさらに好ましい。不飽和度が0.05meq/g以下のものを用いることにより、最終的に得られるウレタン硬度を低くした場合でも、圧縮永久歪みが小さいウレタンを製造することができ、このウレタンはロール用として特に好ましい。また、硬度および圧縮永久歪み等の物性のバランスが非常に優れたウレタンが得られることから、ポリエーテルポリオール(b1)の数平均分子量は4500〜20000であることが好ましく、5000〜10000であることがさらに好ましい。また、ポリエーテルポリオール(b1)の1分子当たりの平均官能基数は1.5〜6.0であることが好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。
【0015】
ここで上記ポリエーテルポリオール(b1)は、例えば、活性水素原子含有化合物を開始剤として、重合触媒の存在下、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシド等から選ばれるアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造することができるが、この場合、1分子当たりの平均官能基数は前記開始剤が有する活性水素原子の数をいう。例えば、開始剤としてジオール例えばプロピレングリコール、またはトリオール例えばグリセリンをそれぞれ開始剤として用いてアルキレンオキシド重合を行って得られたポリエーテルポリオールの平均官能基数は、前者は2であり、後者は3である。また、ジオールおよびトリオールを50モル%ずつ開始剤として用いてアルキレンオキシド重合を行った場合に得られるポリエーテルポリオールの官能基数は2.5である。また、平均官能基数が1.5であるポリエーテルポリオールは、開始剤として例えばモノオールとジオールを50モル%ずつ用いてアルキレンオキシド重合を行って得られるポリエーテルポリオールなどが該当する。
【0016】
開始剤として使用しうる活性水素原子含有化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、meso−エリスリトール、メチルグリコシド、グルコース、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコール類;ビスフェノールA等のフェノール系化合物類;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノジフェニルメタン、ヘキサメチレンジアミン、およびプロピレンジアミン等のアミン類;ならびに、ジエタノールアミンおよびモノエタノールアミン等のアルカノールアミン類などが挙げられる。また、上記活性水素原子含有化合物に少量のアルキレンオキシドを開環付加して得た数平均分子量1000以下程度の化合物も開始剤として用いることができる。
【0017】
また、上記重合触媒としては、水酸化カリウムおよび水酸化セシウム等のアルカリ触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、ならびにホスファゼン触媒等が挙げられる。ポリエーテルポリオール(b1)の不飽和度を0.05meq/g以下にするには、水酸化セシウム等のセシウム系アルカリ触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、およびホスファゼン触媒からなる群から選ばれる触媒を用いることが好ましい。ポリエーテルポリオール(b1)の分子量分布をより狭い分子量分布のものとすることができ、不飽和度を0.01meq/g以下にすることができることから、複合金属シアン化物錯体触媒を用いることが特に好ましい。
【0018】
また、本発明のポリエーテルポリオール(b1)およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)の数平均分子量とは、それぞれの水酸基価(OHv、単位はmgKOH/g)に基づいて以下の式:
数平均分子量=(56100/OHv)×1分子当たりの平均官能基数
を用いて計算した値をいう。ここで、水酸基価とは、JIS K1557 6.4に準拠して測定した値である。
【0019】
また、上記の不飽和度(meq/g)とは、ポリエーテルポリオール(b1)1g当たりに含まれる不飽和基の量のことであり、JIS K1557 6.7に規定された方法に準拠して測定した値である。
【0020】
(ポリオキシテトラメチレングリコール(b2))
本発明に用いるポリオキシテトラメチレングリコール(b2)は、数平均分子量が500〜4000であることが好ましく、650〜3000であることがさらに好ましい。また、ポリオキシテトラメチレングリコール(b2)の1分子当たりの平均官能基数は2であることが好ましい。
【0021】
(ポリエーテルポリオール(b1)およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)の使用量比)
本発明のプレポリマー(A)の製造方法においては、ポリエーテルポリオール(b1)およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)の使用量が、(b1の質量):(b2の質量)=5:95〜95:5であることが好ましく、20:80〜60:40であることがさらに好ましく、20:80〜50:50であることが特に好ましい。プレポリマー(A)を製造する場合に、ポリエーテルポリオール(b1)を用いずにポリオキシテトラメチレングリコール(b2)のみを用いて得られるポリウレタンは、テーバー摩耗量が低くなるものの、圧縮永久歪みは高くなり、摩擦係数が低いものになりやすい。一方、プレポリマー(A)を製造する場合に、ポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を用いずにポリエーテルポリオール(b1)のみを用いて得られるポリウレタンは、圧縮永久歪みが低く、摩擦係数は高くなるが、テーバー摩耗量が多くなる傾向にある。本発明のように、プレポリマー(A)を製造する場合にポリエーテルポリオール(b1)およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を併用することにより、圧縮永久歪み、摩擦係数、およびテーバー摩耗量の間のバランスが優れたウレタンを製造することができる。
【0022】
(末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)の製造)
プレポリマー(A)は、具体的には以下のように製造することが好ましい。
有機ポリイソシアネート化合物(c)に、まずポリエーテルポリオール(b1)を反応させ、さらにポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を反応させる。有機ポリイソシアネート化合物(c)に含まれるイソシアネート基(NCO)の当量と、ポリエーテルポリオール(b1)およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)の水酸基(OH)の合計の当量とをNCO当量/OH当量=1.2〜4.0とすることが好ましく、1.5〜2.5とすることがさらに好ましい。また、得られるプレポリマー(A)のイソシアネート基含有量(NCO含量)は0.3〜35質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明のプレポリマー(A)の製造方法の特徴の一つは、有機ポリイソシアネート化合物(c)に対してポリエーテルポリオール(b1)を反応させた後に、ポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を反応させることである。全く同じ原料を用いた場合でも、有機ポリイソシアネート(c)に先にポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を反応させた後にポリエーテルポリオール(b1)を反応させた場合や、これらの化合物を同時に反応させた場合は、得られたプレポリマー(A)にさらにポリオール(D)を反応させて得られるポリウレタンに硬度の低下(初期硬度に比べ硬度の低下が発生する)や表面状態の変化(タック性が出てくる)等の不具合が生じる場合がある。この理由は明らかではないが、例えば以下のように考えることができる。ポリエーテルポリオール(b1)の分子量がポリオキシテトラメチレングリコール(b2)の分子量よりも高いために、イソシアネート基に対する反応性はポリオキシテトラメチレングリコール(b2)のほうが高い。したがって、ポリエーテルポリオール(b1)とポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を同時に有機ポリイソシアネート(c)と反応させた場合、およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)をポリエーテルポリオール(b1)よりも先に有機ポリイソシアネート(c)と反応させた場合は、結果としてポリエーテルポリオール(b1)の反応性の低い水酸基がイソシアネート基と完全に反応する前に反応混合物中のイソシアネート基濃度が低くなり、ポリエーテルポリオール(b1)の水酸基が完全にイソシアネートと反応しきれないと推定される。このため、最終的に得られるポリウレタン中に、一部の末端基が未反応のポリエーテルポリオール(b1)が含まれ、これによりポリウレタンの性状変化が起るのではないかと考えられる。特に、ポリエーテルポリオール(b1)がポリオキシプロピレンポリオールである場合、ポリエーテルポリオール(b1)の末端基の多くは2級水酸基であってポリオキシテトラメチレングリコール(b2)の1級水酸基よりも反応性が低いため、上記の傾向がいっそう顕著である。
【0024】
プレポリマー(A)を製造する際には、所望により、有機金属系、アミン系等の公知のウレタン化触媒を用いて、イソシアネート基と水酸基とを反応させてもよい。プレポリマー(A)製造の反応温度および反応装置等は、ウレタンの技術分野で一般に用いられる条件および装置を用いて行うことができる。また、本明細書中のNCO含量の値(質量%)は、JIS K7301 6.3に準拠して測定した値である。
【0025】
[ポリオール(D)]
本発明においては、上記プレポリマー(A)とポリオール(D)を反応させることにより、ウレタンを製造することが好ましい。ここで、ポリオール(D)は、プレポリマー(A)のいわゆる架橋硬化剤として作用するものであり、平均分子量500以下のポリオールまたはポリオールの混合物であることが好ましい。本発明に用いることができるポリオール(D)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、並びにこれらのポリオールへのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、およびビスフェノールAへのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。好ましいポリオール(D)としては、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、およびこれらの混合物からなる群から選ばれるポリオールである。ここで、上記のポリオールへのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、および上記のビスフェノールAへのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物の平均分子量とは、それら付加物の水酸基価(OHv、単位はmgKOH/g)に基づいて以下の式:
平均分子量=(56100/OHv)×1分子当たりの平均官能基数
を用いて計算した値をいい、ここで1分子当たりの平均官能基数とはエチレンおよび/またはプロピレンオキシド付加のための開始剤として用いた原料化合物1分子当たりの平均活性水素原子数をいう。
【0026】
[ポリウレタンの製造]
本発明においては、上記プレポリマー(C)とポリオール(D)を反応させてポリウレタンを製造する。この場合、イソシアネート基と水酸基の当量比(NCO/OH)が好ましくは0.8〜1.5となるような割合で、プレポリマー(C)とポリオール(D)とを混合することによってウレタンを製造することが好ましい。プレポリマー(C)とポリオール(D)がともに常温で固体や高粘度である場合は予めこれらを加熱して液状とした後、混合攪拌することが好ましい。この混合物を例えば約80℃〜150℃に加熱硬化させてウレタンを得ることができる。この硬化反応の際にも、所望により公知のウレタン化触媒や三量化触媒を用いることができる。
【0027】
本発明のウレタンをロール用に用いる場合は、プレポリマー(C)とポリオール(D)との混合物を所望により減圧脱泡した後、ロール用の金型に注入し、硬化させる。この場合、金型は、例えば約80℃〜150℃にあらかじめ加熱しておくことが好ましい。金型に注入した反応混合物は、通常、約10分〜数時間加熱硬化された後に脱型可能となるが、脱型後もさらに加熱することが好ましく、脱型の前後を合わせて上記温度で10〜24時間程度加熱硬化させることが好ましい。また、所望により、加熱硬化後さらに室温で3〜7日間程度静置して熟成させる。これにより、低硬度のロール用ポリウレタンが製造される。なお、ロール用として本発明のポリウレタンを用いる場合は、JIS K6253に規定される方法に準拠して測定したA硬度(以下、単にA硬度とも記す)を60°未満とすることが好ましい。当業者であれば、上記プレポリマー(C)を製造する場合のポリエーテルポリオール(b1)、ポリオキシテトラメチレングリコール(b2)、有機ポリイソシアネート化合物(c)、およびポリオール(D)の種類および量を適宜調整してA硬度を容易に60未満とすることができるが、一般的には、ポリエーテルポリオール(b1)およびポリテトラメチレングリコール(b2)の分子量を大きくすることによりA硬度は低くなり、これらの平均官能基数を小さくすることによりA硬度は低くなる。
【0028】
(ポリウレタンへの他の添加剤)
本発明のポリウレタンには、所望により、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、脱水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、および体質顔料等から選ばれる公知の添加剤を適宜配合することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお表1および表2中の単位の記載のない数字は質量部を表す。プレポリマー(A)の製造に用いた原料の使用量(質量部)および得られたプレポリマー(A)のNCO含量(質量%;JIS K7301 6.3に準拠して測定した値)を表1に示した。
【0030】
表1中に示した記号およびその意味は以下の通りである:2,4−TDI(2,4−トリレンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業製);PTMG2000(ポリオキシテトラメチレングリコール、平均官能基数=2、数平均分子量=2000、旭化成工業株式会社製);PTG−2000SN(ポリオキシテトラメチレングリコール、平均官能基数=2、数平均分子量=2000、保土谷化学工業株式会社製);PPG−1(ポリオキシプロピレングリコール、不飽和度=0.005meq/g、水酸基価=33mgKOH/g、平均官能基数=3、数平均分子量=5100);PPG−2(ポリオキシプロピレントリオール、不飽和度=0.007meq/g、水酸基価=17mgKOH/g、平均官能基数=3、数平均分子量=9900);PPG−3(ポリオキシプロピレントリオール、不飽和度=0.007meq/g、水酸基価=21mgKOH/g、平均官能基数=3、数平均分子量=8000);PPG−4(ポリオキシプロピレントリオール、不飽和度=0.04meq/g、水酸基価=56mgKOH/g、平均官能基数=3、数平均分子量=3000);および、PPG−5(ポリオキシプロピレンジオール、不飽和度=0.09meq/g、水酸基価=56mgKOH/g、平均官能基数=2、数平均分子量=2000)。
【0031】
〔実施例1(末端イソシアネート基含有プレポリマー(p1)の合成)〕
123gの2,4−TDIに、ポリオキシプロピレントリオール(PPG−2)を219g加え、窒素雰囲気下で、90℃×3時間攪拌して反応させた。反応途中のイソシアネート基含量を滴定により測定し、イソシアネート基含量の減少が止まってから、次にポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG2000)を658g加え、窒素雰囲気下、90℃で更に1.5時間攪拌して反応させた。反応途中のイソシアネート基含有量を滴定により測定し、イソシアネート基含有量の減少が止まった時点で加熱を停止して、イソシアネート含有量2.85質量%のプレポリマー(p1)を合成した。
【0032】
〔実施例2〜7および比較例1〜2(末端イソシアネート基含有プレポリマー(p2〜p9)の合成)〕
実施例1と同様の方法を用いてイソシアネート基含有プレポリマー(p2〜p9)を製造した。ただし、実施例1で用いた原料に代えて、表1の実施例2〜7、比較例1〜2に示す各原料を用いた。得られたプレポリマー(p2〜p9)のイソシアネート含量の結果を表1に示した。また、実施例3においては、PPG−2の代わりに、PPG−1とPPG−3の混合物を用いた。
【0033】
〔ポリウレタンの合成および物性〕
(実施例8〜14、および比較例3〜4)
上記合成例で合成したプレポリマー(p1〜p9)のそれぞれ100質量部に対し、表2に示した質量部の1,4−ブタンジオール(分子量90.12)とトリメチロールプロパン(分子量134.0)を1:1(モル比)で混合した混合物を架橋硬化剤として添加し、硬化させてポリウレタンを得た。具体的には、プレポリマー(p1〜p9)の100質量部を60℃に予備加熱し、表2に示した量の架橋硬化剤を加え、均一になるように攪拌混合した。これをすばやく減圧脱泡した後、130℃に予備加熱しておいたJIS K6262に準じた圧縮永久歪み測定用サンプルの成型用金型およびシート成型用金型に注ぎ、130℃で20分間加熱した。その後、各金型からポリウレタンを脱型し、さらに、125℃で16時間加熱硬化させた。これをさらに、7日間常温に静置して熟成させ、各種物性測定用試料を得た。このとき、プレポリマー(p1〜p9)と架橋硬化剤との混合比は、いずれの場合もイソシアネート基/水酸基の当量比が1.05となるようにした。
【0034】
(ポリウレタンの物性評価)
上記のようにして得られた物性測定用試料を用いて物性評価を行った。A硬度の測定は、JIS K6253に準拠して行った。摩擦係数は、JIS K7312に準拠して測定した。テーバー摩耗量(耐摩耗性の指標)は、JIS K6264に準拠し、荷重4.9Nで、試験回数1000回で測定した値を示した。圧縮永久歪みは、JIS K6262に準拠し、圧縮永久歪み測定用サンプルの成型用金型とシート成型用金型を用いて作成したポリウレタンシートを用いて測定した。得られた評価結果を表2に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表2に示したように、比較例3および4と比べて実施例8〜14のポリウレタンは、A硬度が56〜58と低く、摩擦係数が2.03〜2.23と高く、しかも圧縮永久歪みが低い。また、テーバー磨耗量は、実用的には比較例と同程度と判断される。すなわち本発明の製造法を用いて製造したポリウレタンは、低硬度で、摩擦係数が高く、圧縮永久歪みが低く、しかもテーバー磨耗量が低いことに見られるように摺動特性が優れている。
このような優れた特性は特にロール用に用いるポリウレタンとして好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法を用いて製造したポリウレタンは、紙搬送用ロール等の各種工業用ロール、ベルト、OA機器部品、およびキャスター等の工業部品ならびに機械部品に用いられ、最終製品としては例えばエスカレーター、スポーツ用品、およびレジャー用品等に幅広く使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基に対しイソシアネート基過剰の条件下で、有機ポリイソシアネート化合物(c)に対してポリエーテルポリオール(b1)を反応させた後さらにポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を反応させることを特徴とする、末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)の製造方法であって、
前記ポリエーテルポリオール(b1)は不飽和度が0.05meq/g以下、数平均分子量が4500〜20000、および平均官能基数が1.5〜6.0であり、かつ前記ポリオキシテトラメチレングリコール(b2)は数平均分子量が500〜4000、および平均官能基数が2であり、
さらに(b1の質量):(b2の質量)=5:95〜95:5となるように前記ポリエーテルポリオール(b1)およびポリオキシテトラメチレングリコール(b2)を用いる末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の前記末端イソシアネート基含有プレポリマー(A)、および平均分子量500以下のポリオール(D)を反応させることを特徴とするポリウレタンの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の製造方法を用いて製造されたポリウレタンからなるロール用ポリウレタン。


【公開番号】特開2006−2054(P2006−2054A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180530(P2004−180530)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】