札発行装置
【課題】無線タグを埋込んだ札の表面に印刷する場合において、印刷面に段差が形成されている場合でも、印刷した文字等に色の濃淡及びかすれが生じない札発行装置を提供する。
【解決手段】この札発行装置は、無線タグを埋込んだことにより印刷面に段差がある複数の札を順次搬送する札搬送手段と、プラテンに対向配置したサーマルヘッドを通電することにより前記プラテンと前記サーマルヘッドとの間に搬送された前記札の印刷面にデータを印刷する印刷部と、前記サーマルヘッドに与える通電エネルギーを制御する通電エネルギー制御手段とを備えている。前記通電エネルギー制御手段は、前記札の印刷面の段差により前記印刷面と前記サーマルヘッドとの距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする。
【解決手段】この札発行装置は、無線タグを埋込んだことにより印刷面に段差がある複数の札を順次搬送する札搬送手段と、プラテンに対向配置したサーマルヘッドを通電することにより前記プラテンと前記サーマルヘッドとの間に搬送された前記札の印刷面にデータを印刷する印刷部と、前記サーマルヘッドに与える通電エネルギーを制御する通電エネルギー制御手段とを備えている。前記通電エネルギー制御手段は、前記札の印刷面の段差により前記印刷面と前記サーマルヘッドとの距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル、タグ、カード等の札を発行する札発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の札発行装置としては、ラベルを発行するラベル発行装置がある。ラベル発行装置は、発行しようとするラベルの表面に文字、記号、バーコード、2次元コード等を印刷して発行する。
【0003】
また、近年RFID(Radio Frequency Identification)タグと呼ばれる無線タグをラベル紙に埋め込んだ無線タグラベルを発行する無線タグラベル発行装置が普及している。この無線タグラベル発行装置は、無線タグに無線で情報を書込む機能に加え、ラベル発行装置と同様に、ラベル紙の表面に文字等を印字する機能を備えたものである(例えば、特許文献1参照)。これにより、人が目で認識できない無線タグ内の情報を、ラベル紙表面への印字情報により認識可能とすることができる。この際、シリコン等の素材を用いた硬質である無線タグを、ラベル紙で覆っているために、1枚のラベル紙においてラベル表面に段差が生じる。特許文献1の札発行装置では、この段差がある部分(無線タグがある部分)を印刷ヘッドの上下運動により避けて印字し、無線タグを埋め込んだ部分が印刷ヘッドに衝突することを防いでいる。
【特許文献1】特開平11−138941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無線タグがない部分のみを印刷対象とするのでは、印刷面積が減少してしまう。無線タグがない部分も印刷対象とした場合は、サーマルプリンタにおいては、印刷ヘッドをラベルの印刷面に押付けて印刷を行うため、印刷面の段差により印刷した文字等に色の濃淡、かすれ等が生じてしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、その目的は、無線タグを埋込んだ札の印刷面に印刷する場合において、印刷面に段差が形成されている場合でも、印刷した文字等に色の濃淡及びかすれが生じない札発行装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る札発行装置は、無線タグを埋込んだことにより印刷面に段差がある複数の札を順次搬送する札搬送手段と、プラテンに対向配置したサーマルヘッドを通電することにより前記プラテンと前記サーマルヘッドとの間に搬送された前記札の印刷面にデータを印刷する印刷部と、前記サーマルヘッドに与える通電エネルギーを制御する通電エネルギー制御手段とを具備し、前記通電エネルギー制御手段は、前記札の印刷面の段差により前記印刷面と前記サーマルヘッドとの距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
かかる手段を講じた本発明の札発行装置によれば、無線タグを埋込んだ札の印刷面に印刷する場合において、印刷面に段差が形成されていても、印刷した文字等に色の濃淡及びかすれが生じることはなく、印刷面全面に高品質の印字を行うことができる札発行装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施の形態は、無線タグを構成する無線アンテナ及び無線チップにより生じたラベル印刷面の段差を予め設定し、その情報に基づいて印刷部のサーマルヘッドに加える通電エネルギーを制御する場合である。通電エネルギーは、サーマルヘッドの発熱素子に通電する際の電圧または通電時間を変えることで制御可能である。
【0009】
図1は、本実施形態にかかる札発行装置の内部構成を示す模式図である。同図において、符号1は、札発行装置の筐体1を示しており、この筐体1内には、複数のラベル2を間隔をあけて貼付けた台紙3が、台紙コア6に巻回されている。
図2にこのラベル2を貼付けた台紙3の模式図を示す。同図(a)は上面図、(b)はそのA−A矢視断面図である。台紙3の上に配置された無線タグは、無線アンテナ4と無線チップ5からなる。この無線タグを一定長のラベル2で覆ったものが、台紙3の上に間隔をあけて多数設置されている。このように、ラベル2と台紙3の間に無線アンテナ4と無線チップ5を挟んでいるため、ラベル2の印刷面側に段差が形成される。
【0010】
台紙3は、台紙コア6から送り出され、図示しない搬送路に沿って搬送されて巻取ローラ15に巻き取られる。搬送路の途中には、搬送方向上流側(台紙コア6側)から順に搬送ローラ7、無線通信部8及びプラテンローラ9が設けられている。無線通信部8は、無線を利用して無線チップ5へのデータ書込み及び無線チップ5からのデータ読込みを非接触で行う。
【0011】
プラテンローラ9には、サーマルヘッド11が対向して配置されている。サーマルヘッド11は、図示しないスプリングによって付勢されることでプラテンローラ9に圧接して取付けられており、サーマルヘッド11とプラテンローラ9との間に、インクリボン12と台紙3とが搬送されて、台紙3上のラベル2の印刷面に文字などが印刷出力されるようになっている(印刷部)。この印刷部で印刷されたラベル2は、台紙3から剥がされ、発行部10から外部に排出される。
【0012】
図3にサーマルヘッド11の印刷出力位置(サーマルヘッド11とプラテンローラ9との対向位置)P付近の模式図を示す。矢印は、ラベル2の搬送方向を示している。サーマルヘッド11の印刷出力位置P付近には、発熱素子40が全て距離kで等間隔のライン状に多数設置されている。本実施の形態では、発熱素子40がn個設置されているとし、個々の発熱素子40を識別するために1〜nまでの番号をサーマルヘッド11の一端から順に付す。以下この番号を発熱素子番号と呼ぶ。
【0013】
これら発熱素子40は、インクリボン12に熱を与えてラベル2に印刷出力を行う。インクリボン12は、リボンコア13に巻回されており、そこから送り出された後、サーマルヘッド11を介してリボンコア14に巻き取られる。
【0014】
搬送ローラ7と無線通信部8の間には、ラベル2の有無を検出するラベルエッジセンサ16が配設されている。このラベルエッジセンサ16は、台紙3の上にラベル2が貼付けられている部分とそうでない部分との厚みの違いによりラベル2の先端部を検出する。そして、ラベルエッジセンサ16の出力は、後述する札発行装置のCPU20で監視し、CPU20はラベルエッジセンサ16がラベル2の先端部を検出したと判断すると、そこから所定距離だけ搬送することにより、ラベル2を印刷出力位置Pまで搬送するようになっている。
【0015】
図4は、本実施の形態にかかる札発行装置の要部構成を示すブロック図である。
この札発行装置は、本体にCPU20、ROM21、RAM22、通信インターフェース23、センサドライバ24、モータドライバ25、ヘッドドライバ26、無線通信部コントローラ27、操作パネルコントローラ28を搭載している。そして、CPU20、ROM21、RAM22、通信インターフェース23、各ドライバ24〜26、各コントローラ27、28をアドレスバス、データバス等のバスライン29で接続して、札発行装置の制御部を構成している。
【0016】
ROM21は、CPU20が各部を制御するためのプログラムデータ等を格納している。RAM22は、データ処理のために使用するメモリエリアである。通信インターフェース23は、ホストコンピュータと通信ケーブル等で接続可能であり、接続した際にはホストコンピュータとの通信を行う。
【0017】
センサドライバ24は、ラベルエッジセンサ16を駆動し、このセンサからの信号を入力する。モータドライバ25は、CPU20からの命令に応じて用紙搬送モータ30の駆動を制御する。用紙搬送モータ30の回転により、台紙3は搬送路に沿って搬送される。ここに、用紙搬送モータ30と搬送路とは、札搬送手段を構成する。ヘッドドライバ26は、CPU20から与えられる印字データに従いサーマルヘッド11の各発熱素子40の通電オン,オフを制御する
無線通信部コントローラ27は、CPU20からの命令に応じて無線通信部8を制御し、無線チップ5へのデータの書込み及び読込みを行う。操作パネルコントローラ28は、操作パネル31からの入力信号を処理し、CPU20に伝達する。
【0018】
本実施の形態では、オペレーターが前もって操作パネル31を操作して、図2に示したラベル2の搬送方向に対して下流側端から無線アンテナ4の下流側端までの距離a1、無線チップ5の上流側端までの距離a2、無線アンテナ4の上流側端間での距離a3、ラベル2の上流側端までの距離a4、紙面向かって台紙3の上端からラベル2の上端までの距離b1、無線アンテナ4の上端までの距離b2、無線チップ5の上端間での距離b3、無線チップ5の下端までの距離b4、無線アンテナ4の下端までの距離b5、ラベル2の下端までの距離b6、ラベル2のみの部分とラベル2が無線アンテナ4を挟んでいる部分の印刷面の段差h1、ラベル2が無線アンテナ4を挟んでいる部分とラベル2が無線チップ5を挟んでいる部分の印刷面の段差h2を入力しておく。
【0019】
これらの入力データは、RAM22の設定テーブルに設定される(設定手段)。CPU20は、予めROM21に格納された段差位置計算プログラムにより、上記設定テーブルに設定されたデータに基づいてラベル2と無線アンテナ4及び無線チップ5との位置関係を把握する。このとき、ラベル2と、無線アンテナ4及び無線チップ5との位置関係は、図5に示すように、ラベル2の搬送方向はラインカウント数に、ラベル2の搬送方向と鉛直を成す方向は発熱素子番号に変換される。図5中の数値Lは、ラベルエッジセンサ16がラベル2の先端を検出したときからラベル2の先端が印刷出力位置Pに到達するまでのラインカウント数である。さらに距離a1〜a4をラインカウント数A1〜A4に変換し、ラベル2の上端、無線アンテナ4の上端、無線チップ5の上端、無線チップ5の下端、無線アンテナ4の下端、ラベル2の下端をそれぞれその位置の印刷を担当する発熱素子40の発熱素子番号B1〜B6に変換している。
【0020】
さらに、CPU20は、印刷面の高さによって異なる段差コードを設定する。この実施の形態では印刷面が3段階に分かれているので、ラベル2のみの部分を段差コードx、ラベル2が無線アンテナ4を挟んでいる部分を段差コードy、ラベル2が無線チップ5を挟んでいる部分を段差コードzとする。
【0021】
RAM22には、ラベル2の搬送方向をラインカウント数に、ラベル2の搬送方向と鉛直を成す方向を発熱素子番号に変換した二次元テーブルである段差位置テーブルt1が作成してある。CPU20は、段差位置計算プログラムにより計算した各位置関係及び操作パネル31から入力した段差高さh1,h2を基にして、段差位置テーブルt1に特定のラインカウント数及び発熱素子番号における段差コードを入力する。
【0022】
図6に前記段差位置計算プログラムを用いてCPU20が計算した段差位置テーブルt1の一例を示す。行番号は発熱素子番号、列番号はラインカウント数である。段差位置テーブルt1は、例えばラインカウント数L+A1からL+A2,発熱素子番号B3からB4の領域では、無線チップ5がラベル2に挟まれている位置にあたるため、段差コードはzとなる。
【0023】
図7に段差コードとヘッドドライバ26が発熱素子40に与える通電エネルギーを対応させた通電エネルギーテーブルt2を示す。CPU20はラベル2への印刷を制御するとき、段差コードxのときに強い通電エネルギーを、段差コードyのときに通常の通電エネルギーを、段差コードzのときに弱い通電エネルギーを発熱素子40に与えるようにヘッドドライバ26を制御する。つまり、図8に示すようにラベル2の印刷面に対し、無線アンテナ4の部分に与える通電エネルギーを中程度とすれば、ラベル2のみの部分に強く、無線チップ5の部分に弱く通電エネルギーを与える。通電エネルギーの強弱により、発熱素子40の発熱温度が変化する。このため、通電エネルギーが強い部分では印刷データの色が濃くなり、通電エネルギーが弱い部分では印刷データの色が薄くなる。これにより、段差があるラベル2の印刷面に対して濃淡が均一な印刷を行うことができる。
【0024】
かかる構成の札発行装置において、CPU20は、無線チップ5へ書込む無線データ及びラベル2に印刷する印刷データがホストコンピュータから送られてくるのを待機している。
【0025】
ホストコンピュータから無線データ及び印刷データを受信すると、それらをRAM22に記録し、CPU20は、印刷処理の開始命令である印刷発行コマンドの受信待ちを行う。ホストコンピュータから印刷発行コマンドを受信すると、CPU20は、無線チップ5への無線データの書込みを行う。すなわち、RAM22の搬送ラインカウンタをリセットしてカウント値を0にし、用紙搬送モータ30を制御してラベルエッジセンサ16より上流側までいったんラベル2を後退させてから、前進させる。このとき、ラベルエッジセンサ16がラベル2の先端を検出したときに、RAM22の搬送ラインカウンタのカウントを開始させる。その後はラベル2を1ライン分搬送するごとに搬送ラインカウンタのカウント値をインクリメントしていく。
【0026】
このように後退させるのは、ラベル2の処理を行う場合、ラベル2のホームポジションとしてラベル2が無線通信部8の無線の届く範囲を通り過ぎて印刷出力位置Pまで搬送されることから、無線データ書込位置、すなわち無線通信部8からの電波が無線アンテナ4に十分届く範囲内で無線通信を行うようにするためである。なお、データをより確実に送信するため、無線通信部8の対向位置まで後退させることが好ましい。その対向位置で、無線データの書込処理を行う。
【0027】
無線データの無線チップ5への書込みが終了すると、CPU20は、続いてラベル2への印刷処理を行う。このとき、用紙搬送モータ30を制御してラベル2を前進させてラベル2を印刷出力位置Pまでフィードさせる。そして、1枚分のラベル2ごとに図9に示す印刷処理を実行する。CPU20がこの印刷処理を行うための印刷処理プログラムは、ROM21に記録されている。
【0028】
先ず、CPU20は、ST(ステップ)1として変数i、jをそれぞれ初期値“L”,“1”に初期化する。ここに、変数iは搬送ラインカウンタのカウント値、変数jは発熱素子番号に対応する。次にCPU20は、ST2として段差位置テーブルt1からラインカウント数i,発熱素子番号jの位置での段差コードを読取る。さらに、CPU20は、ST3としてRAM22に記録した印刷データのラインカウント数i、発熱素子番号jに対応する位置が印刷の実行位置であるかどうか検索する。印刷の実行位置であった場合、CPU20は、ST4として通電エネルギーテーブルt2中の、ST2で読取った段差コードに対応する通電エネルギーで、発熱素子番号jの発熱素子40が通電されるように、当該発熱素子40に対する通電量(電圧または通電時間)を決定する。
【0029】
ST4の処理が完了すると、CPU20は、ST5として変数jとサーマルヘッド32に設けられた発熱素子40の個数nとを比較する。つまり、CPU20は、サーマルヘッド32に設けられた全ての発熱素子40に対して通電エネルギーを決定したか否かを判断する。通電エネルギーの決定が完了していない場合、CPU20は、ST6として変数jの値をインクリメントし、ST2の処理に戻る。各発熱素子40に対する通電エネルギーの決定が完了した場合、CPU20は、ST7として発熱素子40毎に決定した通電エネルギーで各発熱素子が通電されるようにヘッドドライバ26を制御する(通電エネルギー制御手段)。
【0030】
かくして、ラインカウント数iのラインの印刷が行われるので、印刷後、CPU20は、ST8としてモータドライバ25を介して用紙搬送モータ30を制御し、ラベル2を1ラインフィードする。そしてCPU20は、ST9として変数iとラベル2の終端であるラインカウント数L+A4とを比較する。つまり、CPU20は、1枚分のラベル2への印刷が完了したかを判断する。1枚分のラベル2への印刷が完了していない場合、CPU20は、ST10として変数iの値をインクリメントし、さらに変数jの値を“1”に初期化してST2の処理に戻る。1枚分のラベル2への印刷が完了した場合、CPU20は、印刷処理プログラムの実行を終了する。
【0031】
このように本実施の形態の札発行装置では、予めオペレーターが操作パネル31からラベル2、無線アンテナ4及び無線チップ5の位置と、ラベル2の印刷面の段差とを入力すると、CPU20は、ホストコンピュータから受信した印刷データ及びROM21に記録された印刷処理プログラムに基づいて、無線アンテナ4及び無線チップ5により形成されたラベル2の印刷面の段差ごとに発熱素子40への通電エネルギーを変化させて印刷を行う。その際、ラベル2の印刷面とサーマルヘッド11の発熱素子40との距離が遠い位置に印刷する際には通電エネルギーを強く、印刷面が隆起している近い位置に印刷する際には通電エネルギーを弱く制御している。したがってラベル2の印刷面に段差がある場合でも、印刷した文字等に段差による濃淡が生じないので、無線チップ5を埋込んだラベル2の印刷面全面に印刷しても、高品質の印字結果を得られるようになる。
【0032】
なお、本実施の形態では操作パネル31から入力したラベル2、無線アンテナ4、無線チップ5の位置データ及びラベル2の印刷面における段差データに基づいて発熱素子40に与える通電エネルギーを変化させるための段差位置テーブルt1を作成したが、この入力に代えてホストコンピュータから受信した位置データ及び段差データから段差位置テーブルt1を作成するようにしてもよい。
【0033】
また、前記実施の形態では、サーマルヘッド11のライン方向に配列された発熱素子40毎に通電量を決定したが、1ラインを印字する際の各発熱素子の通電量は同一値としてもよい。すなわち、図9のST2にて段差位置テーブルt1からラインカウント数iの位置での発熱素子番号1〜nの段差コード列を一括して読取り、ST3にてそのラインに1ドットでも印刷データがある場合、ST4にて読み取った段差コード列に“z”が含まれる場合は各発熱素子の通電エネルギーを”弱”に決定し、“z”がなく“y”を含む場合は”中”に決定し、“z”も“y”のない場合は“強”に決定する。このような構成であっても、無線チップ4により印刷面が隆起しているラインに対しては、他のラインよりも通電エネルギーが弱くなるので、印字濃度の均一化を図ることができる。
【0034】
また、前記実施の形態では、予めラベル2、無線アンテナ4及び無線チップ5の位置と、ラベル2の印刷面の段差とを入力する場合を示したが、ラベル2の印刷面の段差をセンサにより検出し、この検出データに基づいて段差位置テーブルt1を作成するようにしてもよい。図10は、段差を検出するセンサを備えた札発行装置の要部構成を示す模式図である。この札発行装置は、図1に記載の札発行装置に段差センサ50をさらに加えたものである(段差位置検出手段)。段差センサ50は、例えば図10に示すように搬送ローラ7の対向位置に取付け、その間を台紙2が搬送される形にするとよい。
【0035】
図11に段差センサ50の要部構成の模式図を示す。この段差センサ50内には、ラベル2に当接するように設けたローラ51、このローラ51の上下運動に応じて矢印方向に平行移動する検出板52、この検出板52が押圧する圧力を検出する圧力センサ53、ローラによるたるみの発生を抑えるためにローラ51をラベル2を下方へ押付ける方向に付勢する付勢バネ54を備えている。
【0036】
このような段差センサ50の配置位置にラベル2が搬送されると、圧力センサ53の出力は、ラベル2の下流側端から無線アンテナ4の下流側端まではローレベル(図11(aを参照)、無線アンテナ4の下流側端から無線チップ5の下流側端まではノーマルレベル(図11(b)を参照)、無線チップ5の下流側端から上流側端まではハイレベル、無線チップ5の上流側端から無線アンテナ4の上流側端まではノーマルレベル、無線アンテナ4の上流側端からラベル2の上流側端まではローレベルとなる。これを利用して、本実施の形態におけるCPU20では、圧力センサ53の出力を監視し、この出力がハイレベル、ノーマルレベル、ローレベルである位置に対応する段差位置テーブルt1中のラインカウント数の列に段差コードを書込む。この実施の形態の場合は、出力がハイレベルのとき段差コードがz、ノーマルレベルのとき段差コードがy、ローレベルのとき段差コードがxとなる。そしてその後、CPU20は、前記段差位置情報を操作パネル31から入力した場合と同様の処理を実行する。
【0037】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全体構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態である札発行装置の要部構成を示す側面図。
【図2】同実施の形態におけるラベルを貼付けた台紙の構成を示す図。
【図3】同実施の形態におけるサーマルヘッドに取付けた発熱素子の模式図。
【図4】同実施の形態における札発行装置の構成のブロック図。
【図5】同実施の形態におけるラベル、無線アンテナ、無線チップの位置関係を示す図。
【図6】同実施の形態における段差位置テーブルのデータ構造を示す模式図。
【図7】同実施の形態における通電エネルギーテーブルのデータ構造を示す模式図。
【図8】同実施の形態におけるラベルの印刷面の段差により発熱素子に与えられる通電エネルギーの強さを表す模式図。
【図9】同実施の形態における札発行装置のCPUが実行する印刷処理の流れ図。
【図10】同実施の形態における段差センサを備えた札発行装置の要部構成を示す側面図。
【図11】同実施の形態における段差センサの要部構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0039】
2…ラベル、3…台紙、4…無線アンテナ、5…無線チップ、6…台紙コア、7…搬送ローラ、8…無線通信部、9…プラテンローラ、10…発行口、11…サーマルヘッド、12…インクリボン、13,14…リボンコア、16…ラインエッジセンサ、20…CPU、40…発熱素子、t1…段差位置テーブル、t2…通電エネルギーテーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル、タグ、カード等の札を発行する札発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の札発行装置としては、ラベルを発行するラベル発行装置がある。ラベル発行装置は、発行しようとするラベルの表面に文字、記号、バーコード、2次元コード等を印刷して発行する。
【0003】
また、近年RFID(Radio Frequency Identification)タグと呼ばれる無線タグをラベル紙に埋め込んだ無線タグラベルを発行する無線タグラベル発行装置が普及している。この無線タグラベル発行装置は、無線タグに無線で情報を書込む機能に加え、ラベル発行装置と同様に、ラベル紙の表面に文字等を印字する機能を備えたものである(例えば、特許文献1参照)。これにより、人が目で認識できない無線タグ内の情報を、ラベル紙表面への印字情報により認識可能とすることができる。この際、シリコン等の素材を用いた硬質である無線タグを、ラベル紙で覆っているために、1枚のラベル紙においてラベル表面に段差が生じる。特許文献1の札発行装置では、この段差がある部分(無線タグがある部分)を印刷ヘッドの上下運動により避けて印字し、無線タグを埋め込んだ部分が印刷ヘッドに衝突することを防いでいる。
【特許文献1】特開平11−138941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無線タグがない部分のみを印刷対象とするのでは、印刷面積が減少してしまう。無線タグがない部分も印刷対象とした場合は、サーマルプリンタにおいては、印刷ヘッドをラベルの印刷面に押付けて印刷を行うため、印刷面の段差により印刷した文字等に色の濃淡、かすれ等が生じてしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、その目的は、無線タグを埋込んだ札の印刷面に印刷する場合において、印刷面に段差が形成されている場合でも、印刷した文字等に色の濃淡及びかすれが生じない札発行装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る札発行装置は、無線タグを埋込んだことにより印刷面に段差がある複数の札を順次搬送する札搬送手段と、プラテンに対向配置したサーマルヘッドを通電することにより前記プラテンと前記サーマルヘッドとの間に搬送された前記札の印刷面にデータを印刷する印刷部と、前記サーマルヘッドに与える通電エネルギーを制御する通電エネルギー制御手段とを具備し、前記通電エネルギー制御手段は、前記札の印刷面の段差により前記印刷面と前記サーマルヘッドとの距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
かかる手段を講じた本発明の札発行装置によれば、無線タグを埋込んだ札の印刷面に印刷する場合において、印刷面に段差が形成されていても、印刷した文字等に色の濃淡及びかすれが生じることはなく、印刷面全面に高品質の印字を行うことができる札発行装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて説明する。なお、この実施の形態は、無線タグを構成する無線アンテナ及び無線チップにより生じたラベル印刷面の段差を予め設定し、その情報に基づいて印刷部のサーマルヘッドに加える通電エネルギーを制御する場合である。通電エネルギーは、サーマルヘッドの発熱素子に通電する際の電圧または通電時間を変えることで制御可能である。
【0009】
図1は、本実施形態にかかる札発行装置の内部構成を示す模式図である。同図において、符号1は、札発行装置の筐体1を示しており、この筐体1内には、複数のラベル2を間隔をあけて貼付けた台紙3が、台紙コア6に巻回されている。
図2にこのラベル2を貼付けた台紙3の模式図を示す。同図(a)は上面図、(b)はそのA−A矢視断面図である。台紙3の上に配置された無線タグは、無線アンテナ4と無線チップ5からなる。この無線タグを一定長のラベル2で覆ったものが、台紙3の上に間隔をあけて多数設置されている。このように、ラベル2と台紙3の間に無線アンテナ4と無線チップ5を挟んでいるため、ラベル2の印刷面側に段差が形成される。
【0010】
台紙3は、台紙コア6から送り出され、図示しない搬送路に沿って搬送されて巻取ローラ15に巻き取られる。搬送路の途中には、搬送方向上流側(台紙コア6側)から順に搬送ローラ7、無線通信部8及びプラテンローラ9が設けられている。無線通信部8は、無線を利用して無線チップ5へのデータ書込み及び無線チップ5からのデータ読込みを非接触で行う。
【0011】
プラテンローラ9には、サーマルヘッド11が対向して配置されている。サーマルヘッド11は、図示しないスプリングによって付勢されることでプラテンローラ9に圧接して取付けられており、サーマルヘッド11とプラテンローラ9との間に、インクリボン12と台紙3とが搬送されて、台紙3上のラベル2の印刷面に文字などが印刷出力されるようになっている(印刷部)。この印刷部で印刷されたラベル2は、台紙3から剥がされ、発行部10から外部に排出される。
【0012】
図3にサーマルヘッド11の印刷出力位置(サーマルヘッド11とプラテンローラ9との対向位置)P付近の模式図を示す。矢印は、ラベル2の搬送方向を示している。サーマルヘッド11の印刷出力位置P付近には、発熱素子40が全て距離kで等間隔のライン状に多数設置されている。本実施の形態では、発熱素子40がn個設置されているとし、個々の発熱素子40を識別するために1〜nまでの番号をサーマルヘッド11の一端から順に付す。以下この番号を発熱素子番号と呼ぶ。
【0013】
これら発熱素子40は、インクリボン12に熱を与えてラベル2に印刷出力を行う。インクリボン12は、リボンコア13に巻回されており、そこから送り出された後、サーマルヘッド11を介してリボンコア14に巻き取られる。
【0014】
搬送ローラ7と無線通信部8の間には、ラベル2の有無を検出するラベルエッジセンサ16が配設されている。このラベルエッジセンサ16は、台紙3の上にラベル2が貼付けられている部分とそうでない部分との厚みの違いによりラベル2の先端部を検出する。そして、ラベルエッジセンサ16の出力は、後述する札発行装置のCPU20で監視し、CPU20はラベルエッジセンサ16がラベル2の先端部を検出したと判断すると、そこから所定距離だけ搬送することにより、ラベル2を印刷出力位置Pまで搬送するようになっている。
【0015】
図4は、本実施の形態にかかる札発行装置の要部構成を示すブロック図である。
この札発行装置は、本体にCPU20、ROM21、RAM22、通信インターフェース23、センサドライバ24、モータドライバ25、ヘッドドライバ26、無線通信部コントローラ27、操作パネルコントローラ28を搭載している。そして、CPU20、ROM21、RAM22、通信インターフェース23、各ドライバ24〜26、各コントローラ27、28をアドレスバス、データバス等のバスライン29で接続して、札発行装置の制御部を構成している。
【0016】
ROM21は、CPU20が各部を制御するためのプログラムデータ等を格納している。RAM22は、データ処理のために使用するメモリエリアである。通信インターフェース23は、ホストコンピュータと通信ケーブル等で接続可能であり、接続した際にはホストコンピュータとの通信を行う。
【0017】
センサドライバ24は、ラベルエッジセンサ16を駆動し、このセンサからの信号を入力する。モータドライバ25は、CPU20からの命令に応じて用紙搬送モータ30の駆動を制御する。用紙搬送モータ30の回転により、台紙3は搬送路に沿って搬送される。ここに、用紙搬送モータ30と搬送路とは、札搬送手段を構成する。ヘッドドライバ26は、CPU20から与えられる印字データに従いサーマルヘッド11の各発熱素子40の通電オン,オフを制御する
無線通信部コントローラ27は、CPU20からの命令に応じて無線通信部8を制御し、無線チップ5へのデータの書込み及び読込みを行う。操作パネルコントローラ28は、操作パネル31からの入力信号を処理し、CPU20に伝達する。
【0018】
本実施の形態では、オペレーターが前もって操作パネル31を操作して、図2に示したラベル2の搬送方向に対して下流側端から無線アンテナ4の下流側端までの距離a1、無線チップ5の上流側端までの距離a2、無線アンテナ4の上流側端間での距離a3、ラベル2の上流側端までの距離a4、紙面向かって台紙3の上端からラベル2の上端までの距離b1、無線アンテナ4の上端までの距離b2、無線チップ5の上端間での距離b3、無線チップ5の下端までの距離b4、無線アンテナ4の下端までの距離b5、ラベル2の下端までの距離b6、ラベル2のみの部分とラベル2が無線アンテナ4を挟んでいる部分の印刷面の段差h1、ラベル2が無線アンテナ4を挟んでいる部分とラベル2が無線チップ5を挟んでいる部分の印刷面の段差h2を入力しておく。
【0019】
これらの入力データは、RAM22の設定テーブルに設定される(設定手段)。CPU20は、予めROM21に格納された段差位置計算プログラムにより、上記設定テーブルに設定されたデータに基づいてラベル2と無線アンテナ4及び無線チップ5との位置関係を把握する。このとき、ラベル2と、無線アンテナ4及び無線チップ5との位置関係は、図5に示すように、ラベル2の搬送方向はラインカウント数に、ラベル2の搬送方向と鉛直を成す方向は発熱素子番号に変換される。図5中の数値Lは、ラベルエッジセンサ16がラベル2の先端を検出したときからラベル2の先端が印刷出力位置Pに到達するまでのラインカウント数である。さらに距離a1〜a4をラインカウント数A1〜A4に変換し、ラベル2の上端、無線アンテナ4の上端、無線チップ5の上端、無線チップ5の下端、無線アンテナ4の下端、ラベル2の下端をそれぞれその位置の印刷を担当する発熱素子40の発熱素子番号B1〜B6に変換している。
【0020】
さらに、CPU20は、印刷面の高さによって異なる段差コードを設定する。この実施の形態では印刷面が3段階に分かれているので、ラベル2のみの部分を段差コードx、ラベル2が無線アンテナ4を挟んでいる部分を段差コードy、ラベル2が無線チップ5を挟んでいる部分を段差コードzとする。
【0021】
RAM22には、ラベル2の搬送方向をラインカウント数に、ラベル2の搬送方向と鉛直を成す方向を発熱素子番号に変換した二次元テーブルである段差位置テーブルt1が作成してある。CPU20は、段差位置計算プログラムにより計算した各位置関係及び操作パネル31から入力した段差高さh1,h2を基にして、段差位置テーブルt1に特定のラインカウント数及び発熱素子番号における段差コードを入力する。
【0022】
図6に前記段差位置計算プログラムを用いてCPU20が計算した段差位置テーブルt1の一例を示す。行番号は発熱素子番号、列番号はラインカウント数である。段差位置テーブルt1は、例えばラインカウント数L+A1からL+A2,発熱素子番号B3からB4の領域では、無線チップ5がラベル2に挟まれている位置にあたるため、段差コードはzとなる。
【0023】
図7に段差コードとヘッドドライバ26が発熱素子40に与える通電エネルギーを対応させた通電エネルギーテーブルt2を示す。CPU20はラベル2への印刷を制御するとき、段差コードxのときに強い通電エネルギーを、段差コードyのときに通常の通電エネルギーを、段差コードzのときに弱い通電エネルギーを発熱素子40に与えるようにヘッドドライバ26を制御する。つまり、図8に示すようにラベル2の印刷面に対し、無線アンテナ4の部分に与える通電エネルギーを中程度とすれば、ラベル2のみの部分に強く、無線チップ5の部分に弱く通電エネルギーを与える。通電エネルギーの強弱により、発熱素子40の発熱温度が変化する。このため、通電エネルギーが強い部分では印刷データの色が濃くなり、通電エネルギーが弱い部分では印刷データの色が薄くなる。これにより、段差があるラベル2の印刷面に対して濃淡が均一な印刷を行うことができる。
【0024】
かかる構成の札発行装置において、CPU20は、無線チップ5へ書込む無線データ及びラベル2に印刷する印刷データがホストコンピュータから送られてくるのを待機している。
【0025】
ホストコンピュータから無線データ及び印刷データを受信すると、それらをRAM22に記録し、CPU20は、印刷処理の開始命令である印刷発行コマンドの受信待ちを行う。ホストコンピュータから印刷発行コマンドを受信すると、CPU20は、無線チップ5への無線データの書込みを行う。すなわち、RAM22の搬送ラインカウンタをリセットしてカウント値を0にし、用紙搬送モータ30を制御してラベルエッジセンサ16より上流側までいったんラベル2を後退させてから、前進させる。このとき、ラベルエッジセンサ16がラベル2の先端を検出したときに、RAM22の搬送ラインカウンタのカウントを開始させる。その後はラベル2を1ライン分搬送するごとに搬送ラインカウンタのカウント値をインクリメントしていく。
【0026】
このように後退させるのは、ラベル2の処理を行う場合、ラベル2のホームポジションとしてラベル2が無線通信部8の無線の届く範囲を通り過ぎて印刷出力位置Pまで搬送されることから、無線データ書込位置、すなわち無線通信部8からの電波が無線アンテナ4に十分届く範囲内で無線通信を行うようにするためである。なお、データをより確実に送信するため、無線通信部8の対向位置まで後退させることが好ましい。その対向位置で、無線データの書込処理を行う。
【0027】
無線データの無線チップ5への書込みが終了すると、CPU20は、続いてラベル2への印刷処理を行う。このとき、用紙搬送モータ30を制御してラベル2を前進させてラベル2を印刷出力位置Pまでフィードさせる。そして、1枚分のラベル2ごとに図9に示す印刷処理を実行する。CPU20がこの印刷処理を行うための印刷処理プログラムは、ROM21に記録されている。
【0028】
先ず、CPU20は、ST(ステップ)1として変数i、jをそれぞれ初期値“L”,“1”に初期化する。ここに、変数iは搬送ラインカウンタのカウント値、変数jは発熱素子番号に対応する。次にCPU20は、ST2として段差位置テーブルt1からラインカウント数i,発熱素子番号jの位置での段差コードを読取る。さらに、CPU20は、ST3としてRAM22に記録した印刷データのラインカウント数i、発熱素子番号jに対応する位置が印刷の実行位置であるかどうか検索する。印刷の実行位置であった場合、CPU20は、ST4として通電エネルギーテーブルt2中の、ST2で読取った段差コードに対応する通電エネルギーで、発熱素子番号jの発熱素子40が通電されるように、当該発熱素子40に対する通電量(電圧または通電時間)を決定する。
【0029】
ST4の処理が完了すると、CPU20は、ST5として変数jとサーマルヘッド32に設けられた発熱素子40の個数nとを比較する。つまり、CPU20は、サーマルヘッド32に設けられた全ての発熱素子40に対して通電エネルギーを決定したか否かを判断する。通電エネルギーの決定が完了していない場合、CPU20は、ST6として変数jの値をインクリメントし、ST2の処理に戻る。各発熱素子40に対する通電エネルギーの決定が完了した場合、CPU20は、ST7として発熱素子40毎に決定した通電エネルギーで各発熱素子が通電されるようにヘッドドライバ26を制御する(通電エネルギー制御手段)。
【0030】
かくして、ラインカウント数iのラインの印刷が行われるので、印刷後、CPU20は、ST8としてモータドライバ25を介して用紙搬送モータ30を制御し、ラベル2を1ラインフィードする。そしてCPU20は、ST9として変数iとラベル2の終端であるラインカウント数L+A4とを比較する。つまり、CPU20は、1枚分のラベル2への印刷が完了したかを判断する。1枚分のラベル2への印刷が完了していない場合、CPU20は、ST10として変数iの値をインクリメントし、さらに変数jの値を“1”に初期化してST2の処理に戻る。1枚分のラベル2への印刷が完了した場合、CPU20は、印刷処理プログラムの実行を終了する。
【0031】
このように本実施の形態の札発行装置では、予めオペレーターが操作パネル31からラベル2、無線アンテナ4及び無線チップ5の位置と、ラベル2の印刷面の段差とを入力すると、CPU20は、ホストコンピュータから受信した印刷データ及びROM21に記録された印刷処理プログラムに基づいて、無線アンテナ4及び無線チップ5により形成されたラベル2の印刷面の段差ごとに発熱素子40への通電エネルギーを変化させて印刷を行う。その際、ラベル2の印刷面とサーマルヘッド11の発熱素子40との距離が遠い位置に印刷する際には通電エネルギーを強く、印刷面が隆起している近い位置に印刷する際には通電エネルギーを弱く制御している。したがってラベル2の印刷面に段差がある場合でも、印刷した文字等に段差による濃淡が生じないので、無線チップ5を埋込んだラベル2の印刷面全面に印刷しても、高品質の印字結果を得られるようになる。
【0032】
なお、本実施の形態では操作パネル31から入力したラベル2、無線アンテナ4、無線チップ5の位置データ及びラベル2の印刷面における段差データに基づいて発熱素子40に与える通電エネルギーを変化させるための段差位置テーブルt1を作成したが、この入力に代えてホストコンピュータから受信した位置データ及び段差データから段差位置テーブルt1を作成するようにしてもよい。
【0033】
また、前記実施の形態では、サーマルヘッド11のライン方向に配列された発熱素子40毎に通電量を決定したが、1ラインを印字する際の各発熱素子の通電量は同一値としてもよい。すなわち、図9のST2にて段差位置テーブルt1からラインカウント数iの位置での発熱素子番号1〜nの段差コード列を一括して読取り、ST3にてそのラインに1ドットでも印刷データがある場合、ST4にて読み取った段差コード列に“z”が含まれる場合は各発熱素子の通電エネルギーを”弱”に決定し、“z”がなく“y”を含む場合は”中”に決定し、“z”も“y”のない場合は“強”に決定する。このような構成であっても、無線チップ4により印刷面が隆起しているラインに対しては、他のラインよりも通電エネルギーが弱くなるので、印字濃度の均一化を図ることができる。
【0034】
また、前記実施の形態では、予めラベル2、無線アンテナ4及び無線チップ5の位置と、ラベル2の印刷面の段差とを入力する場合を示したが、ラベル2の印刷面の段差をセンサにより検出し、この検出データに基づいて段差位置テーブルt1を作成するようにしてもよい。図10は、段差を検出するセンサを備えた札発行装置の要部構成を示す模式図である。この札発行装置は、図1に記載の札発行装置に段差センサ50をさらに加えたものである(段差位置検出手段)。段差センサ50は、例えば図10に示すように搬送ローラ7の対向位置に取付け、その間を台紙2が搬送される形にするとよい。
【0035】
図11に段差センサ50の要部構成の模式図を示す。この段差センサ50内には、ラベル2に当接するように設けたローラ51、このローラ51の上下運動に応じて矢印方向に平行移動する検出板52、この検出板52が押圧する圧力を検出する圧力センサ53、ローラによるたるみの発生を抑えるためにローラ51をラベル2を下方へ押付ける方向に付勢する付勢バネ54を備えている。
【0036】
このような段差センサ50の配置位置にラベル2が搬送されると、圧力センサ53の出力は、ラベル2の下流側端から無線アンテナ4の下流側端まではローレベル(図11(aを参照)、無線アンテナ4の下流側端から無線チップ5の下流側端まではノーマルレベル(図11(b)を参照)、無線チップ5の下流側端から上流側端まではハイレベル、無線チップ5の上流側端から無線アンテナ4の上流側端まではノーマルレベル、無線アンテナ4の上流側端からラベル2の上流側端まではローレベルとなる。これを利用して、本実施の形態におけるCPU20では、圧力センサ53の出力を監視し、この出力がハイレベル、ノーマルレベル、ローレベルである位置に対応する段差位置テーブルt1中のラインカウント数の列に段差コードを書込む。この実施の形態の場合は、出力がハイレベルのとき段差コードがz、ノーマルレベルのとき段差コードがy、ローレベルのとき段差コードがxとなる。そしてその後、CPU20は、前記段差位置情報を操作パネル31から入力した場合と同様の処理を実行する。
【0037】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全体構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態である札発行装置の要部構成を示す側面図。
【図2】同実施の形態におけるラベルを貼付けた台紙の構成を示す図。
【図3】同実施の形態におけるサーマルヘッドに取付けた発熱素子の模式図。
【図4】同実施の形態における札発行装置の構成のブロック図。
【図5】同実施の形態におけるラベル、無線アンテナ、無線チップの位置関係を示す図。
【図6】同実施の形態における段差位置テーブルのデータ構造を示す模式図。
【図7】同実施の形態における通電エネルギーテーブルのデータ構造を示す模式図。
【図8】同実施の形態におけるラベルの印刷面の段差により発熱素子に与えられる通電エネルギーの強さを表す模式図。
【図9】同実施の形態における札発行装置のCPUが実行する印刷処理の流れ図。
【図10】同実施の形態における段差センサを備えた札発行装置の要部構成を示す側面図。
【図11】同実施の形態における段差センサの要部構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0039】
2…ラベル、3…台紙、4…無線アンテナ、5…無線チップ、6…台紙コア、7…搬送ローラ、8…無線通信部、9…プラテンローラ、10…発行口、11…サーマルヘッド、12…インクリボン、13,14…リボンコア、16…ラインエッジセンサ、20…CPU、40…発熱素子、t1…段差位置テーブル、t2…通電エネルギーテーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグを埋込んだことにより印刷面に段差がある複数の札を順次搬送する札搬送手段と、
プラテンに対向配置したサーマルヘッドを通電することにより前記プラテンと前記サーマルヘッドとの間に搬送された前記札の印刷面にデータを印刷する印刷部と、
前記サーマルヘッドに与える通電エネルギーを制御する通電エネルギー制御手段とを具備し、
前記通電エネルギー制御手段は、前記札の印刷面の段差により前記印刷面と前記サーマルヘッドとの距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする札発行装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドは、前記札の搬送方向に対して直交する方向に複数の発熱素子をライン上に配列してなるラインサーマルヘッドであり、
前記通電エネルギー制御手段は、前記発熱素子毎に、印刷面とその発熱素子との距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする請求項1記載の札発行装置。
【請求項3】
前記札の搬送方向先端からの距離とその距離における前記印刷面の段差量とを設定する設定手段をさらに具備し、
前記通電エネルギー制御手段は、前記設定手段により設定されたデータに基づき、前記通電エネルギーの強弱を制御することを特徴とする請求項1または2記載の札発行装置。
【請求項4】
前記札の前記印刷面の段差量とその位置とを検出する検出手段をさらに具備し、
前記通電エネルギー制御手段は、前記検出手段により検出されたデータに基づき、前記通電エネルギーの強弱を制御することを特徴とする請求項1または2記載の札発行装置。
【請求項5】
搬送される前記札の前記無線タグに対して無線通信によるデータの読込み及び書込みを行う無線通信部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の札発行装置。
【請求項1】
無線タグを埋込んだことにより印刷面に段差がある複数の札を順次搬送する札搬送手段と、
プラテンに対向配置したサーマルヘッドを通電することにより前記プラテンと前記サーマルヘッドとの間に搬送された前記札の印刷面にデータを印刷する印刷部と、
前記サーマルヘッドに与える通電エネルギーを制御する通電エネルギー制御手段とを具備し、
前記通電エネルギー制御手段は、前記札の印刷面の段差により前記印刷面と前記サーマルヘッドとの距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする札発行装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドは、前記札の搬送方向に対して直交する方向に複数の発熱素子をライン上に配列してなるラインサーマルヘッドであり、
前記通電エネルギー制御手段は、前記発熱素子毎に、印刷面とその発熱素子との距離が遠い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを強く、近い位置に印刷する際には前記通電エネルギーを弱く制御することを特徴とする請求項1記載の札発行装置。
【請求項3】
前記札の搬送方向先端からの距離とその距離における前記印刷面の段差量とを設定する設定手段をさらに具備し、
前記通電エネルギー制御手段は、前記設定手段により設定されたデータに基づき、前記通電エネルギーの強弱を制御することを特徴とする請求項1または2記載の札発行装置。
【請求項4】
前記札の前記印刷面の段差量とその位置とを検出する検出手段をさらに具備し、
前記通電エネルギー制御手段は、前記検出手段により検出されたデータに基づき、前記通電エネルギーの強弱を制御することを特徴とする請求項1または2記載の札発行装置。
【請求項5】
搬送される前記札の前記無線タグに対して無線通信によるデータの読込み及び書込みを行う無線通信部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の札発行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−302681(P2008−302681A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154536(P2007−154536)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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