説明

材料噴射システム

【課題】熱溶融タイプの材料噴射システムに、進歩した固体材料供給部を提供する。
【解決手段】材料噴射システムは、噴射される溶融噴射材料の容器(3)と、前記噴射材料を溶融し、および/または溶融状態で保持する加熱手段(4)と、前記噴射材料の噴射液滴(8)を形成するよう噴射する噴射手段(5,6,7)と、を備える。システムは、さらに、前記材料を絶え間なく供給する手段(2)を備え、前記材料は、固体形状の金属を含み、前記材料は、好ましくは線材、棒材またはテープ材形状である。さらに、システムは固体形状の材料を封止する封止手段と、前記容器の中で断熱用の流体の圧力を制御する圧力制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融噴射システムに関し、とりわけ、比較的高い融点を有する材料を蒸着させるために設計された熱溶融噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
材料噴射システム(しばしば「インクジェットシステム」と呼ばれるシステム)は、流体の状態でプリンターヘッドに供給される材料を処理することができる。しかしながら、いわゆる熱溶融システム、例えばワックスのような材料を用いるシステムにおいては、プリント用の材料は、高温では流体のみとなり、それゆえ、プリント用の材料は、加熱された噴射プリンターヘッドにより処理される必要がある。しかしながら、固体のインク(一般に、材料のこと)を規則正しく、規定量だけ供給することが、問題となり得る。加熱された供給システムにおいては、相当大きな貯蔵容器の中において、融点を超える温度までインクが加熱され、加熱されたインクが保持され、そして、溶融状態のインクが、プリンターヘッドに供給される。既知の代替手段では、時々固体インクの一片が追加されることで満たされている加熱された容器をプリンターヘッドで使用している。このタイプのシステムの不利な点は、かなりの量のインクが、プリンターヘッドの近傍において、その温度が保持される必要があるという点である。
【0003】
例えば、特許文献1において開示されている、棒状の固体インク供給部を有するプリンターにより、固体インク材料による従来の印刷が知られている。しかしながら、これらのプリンターは、高い融点を有するプリント用固体材料、例えば鉛、錫、銅、銀などには適していない温度で作動する。従って、システムは高い温度まで加熱される必要があり、実際には、このシステムは非常に複雑になるだけでなく、流体状態の金属の反応性という点からも、このシステムはほぼ不可能である。
【0004】
特許文献2は、熱溶融インクのしなやかな薄板を有するプリントシステムを開示している。この場合、インクは、インクの劣化を防ぐために、ヒーターに対して大きく前に位置している。しかしながら、溶融金属に対しては、システムの熱負荷をより小さくしたいという要求がある。
【特許文献1】E.P.Application 1552941
【特許文献2】U.S.Patent No.4682185
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、熱溶融タイプの材料噴射システムに、進歩した固体材料供給部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明における新しい材料噴射システムは、請求項1における特徴、すなわち、噴射される溶融噴射材料の容器と、前記噴射材料を溶融し、および/または溶融状態で保持する加熱手段と、前記噴射材料の液滴(粒子)を形成するよう噴射する噴射手段と、さらに、前記材料を固体形状で絶え間なく供給する手段と、を備えている。本発明によれば、供給手段は金属を固体形状で供給し、前記システムは、さらに、固体形状の材料を封止する封止手段と、前記容器の中で、断熱用の流体の圧力を制御する圧力制御手段と、を備えている。好ましくは、前記固体形状の材料は、線材、棒材、またはテープ材の形状を有している。
【0007】
材料が、例えば線材(または、棒材、または、テープ材)で供給される場合、固体材料を、比較的容易に供給し、そして制御することができる。これによって、材料が、印刷をさえぎることなく、連続的に供給され得るので、溶融材料の量を、最小量にまで削減することが可能となる。同種の技術においては、これまで、20〜50ccの桁の材料を溶融していたが、本発明では、封止された環境により、粘性の低い金属が流出すること、とりわけ、重力方向においてシステムの下側に設けられているプリンターヘッドへ流出することを防ぐことができ、これによって、溶融材料の量を1ccの桁にすることができる。溶融材料の量が、このように相当に削減されることにより、金属などを溶かすのに必要とされる高い温度に到達することがより容易になる。なぜなら、プリンターヘッドのうちのほんの少しの部分のみが、この種の材料からの攻撃性に対して耐性を有していればよいからである。
【0008】
溶融噴射材料は、印刷工程において噴射が可能となるように、断熱用の流体、例えば希ガスにより制御された圧力のもとにある必要がある。既知のDrop On Demand(DOD)原理によると、材料は、単にノズルから流出するだけではいけない。可能な限り臨界近傍で平衡を保ち、これによって、低い圧力でも液滴を噴射することができる。他の原理では、既知のContinuous Ink Jet(CIJ)原理によると、供給圧力は、材料を噴射して液滴を形成するために供給されなければならない。したがって、噴射材料のチャンバーにおいて圧力を制御すること、そして、封止手段を有する線材供給部を備えることが重要となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、材料噴射システムを、液滴の連続噴射を供給する、連続供給システムとして、または、選択した液滴のみを供給する、必要に応じた液滴システムとして利用することができる。
【0010】
線材供給部の入力部と、(少しの)加熱容量部との距離をある程度保つことにより、通常の封止方法、例えばOリングを用いて、本発明における材料噴射システムを実現することができる。噴射手段は、噴射液滴を形成する上で、圧電素子による振動部材を備えることができ、これによって、ある程度の距離を保つことができる。振動を、例えばセラミックピンを介して生じさせることで、圧電素子を加熱された容量部から熱的に隔離することができる。振動伝導体として、あるいは、プリンターヘッドの材料としてセラミック材料を使用することにより、噴射材料だけを加熱することが、例えば誘導加熱手段により、可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示す形態は、噴射される溶融噴射材料の容器3と、前記噴射材料を電気的に加熱し、そして溶融する(および溶融状態を保持する)高周波誘導加熱手段4とを備える材料噴射システムの典型的な形態である。さらに、この形態は、噴射ノズル5と、噴射手段と振動伝導体6と、振動駆動素子7とを有する噴射手段を備え、これらは、材料の液滴(粒子)8を形成し、噴射ノズル5を介して液滴を噴射するために配置されている。これによって、例えば微細な寸法の部品(図示せず)を造ることができる。このシステムは、さらに、絶え間なく前記材料、例えば金属を、好ましくは線材1、棒材、またはテープ材の形状を有する固体形状により、供給する手段を備えている。
【0012】
図2に詳細に示すように、線材1は、制御手段14(図3)により制御可能な一対の駆動ホイール9により、容器3に向って供給される。容器3の中で十分な圧力を維持するために、断熱流体20が圧力制御され、容器3の中に封入されている。断熱流体20は、例えば、図1および図3において“p”で示されている圧力の希ガスである。そして、線材1は、一対の、例えばゴム製Oリングにより封止されることができる。
【0013】
このように材料を供給することの不利な点は、材料を予めフィルターに通すことができない点である。その結果、システムの中に汚染物が持ち込まれる可能性がある。金属をインクとして用いる場合、この問題は現実的ではない。なぜなら、この場合、すべての汚染物(例えば酸化物)はおそらく表面に浮くからである。しかしながら、比較的に汚染された材料が使用され、かつ、システムが頻繁に使用される場合は、システムが汚染され、短い間使用できなくなる可能性がある。
【0014】
図3に示すように、オーバーフロー排出口9を使用することにより、この問題を解決することができる。システムが清掃されるべきとき、例えば、一定期間使用されたとき、通常より多くの(固体)材料が供給され、これによって、浮いている汚染物があふれて、汚染物貯蔵器10の中に流れ込む。次に、この貯蔵器を空にすることができる。分離バルブ11を使えば、汚染物貯蔵器10を取り外すとき、システムの噴射動作が中断される必要がない。(一時的に閉められた)分離バルブ11により、溶融材料容器の中で、システムの圧力が維持される。しかしながら、高温で十分に機能するバルブは容易ではない。バルブ11を使用しなくても、汚染物貯蔵器10を外して空にすることができる。しかしながら、この場合、印刷工程が一時的に中断される必要がある。
【0015】
液面センサ13により、溶融噴射材料の(最大)液面高さをモニタすることが好ましい。これによって、制御手段14および線材供給手段2と協働することで、材料がシステムの中に過剰に加えられることを避けることができる。しかしながら、(周期的な)清掃工程において、上述したように、固体材料の供給が一時的に増加している間、液面センサ13への入力は一時的に無効化されなければならない。この結果、溶融材料の液面が一時的にオーバーフロー排出口9の高さを超えることが許され、このことにより、浮いている汚染物があふれて汚染物貯蔵器10の中に流れ込む。
【0016】
加えて、第2の液面センサ15は、制御手段14と協働して、溶融材料の液面高さが低くなりすぎるのを防ぐように使用されることができる。溶融材料の液面高さが低くなりすぎると、溶融材料容器が乾燥する可能性があり、これによって容器が過熱され、そして/またはノズル5を塞ぐ材料汚染を生じさせる可能性がある。この場合、制御手段14が供給手段2に命令し、固体材料の供給速度を増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の典型的な形態を示す図である。
【図2】本発明の典型的な形態の詳細を示す図である。
【図3】本発明の形態を拡大して示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射される溶融噴射材料の容器(3)と、
前記噴射材料を溶融し、および/または溶融状態で保持する加熱手段(4)と、
前記噴射材料の噴射液滴(8)を形成するよう噴射する噴射手段(5,6,7)と、を備える材料噴射システムにおいて、
システムはさらに、制御手段(14)による制御のもとで前記材料を固体形状で絶え間なく供給する手段(2)を備え、
前記供給手段は、金属を含む材料を固体形状で供給し、
前記システムはさらに、固体形状の材料を封止する封止手段と、前記容器の中で断熱用の流体の圧力を制御する圧力制御手段と、を備えることを特徴とする材料噴射システム。
【請求項2】
前記固体形状は線材、棒材またはテープ材形状であることを特徴とする請求項1に記載の材料噴射システム。
【請求項3】
前記圧力制御手段は希ガス供給部を有することを特徴とする請求項1に記載の材料噴射システム。
【請求項4】
溶融噴射材料の容器(3)は、溶融材料の上に浮いている汚染物を、貯蔵器(10)の中へ流出させる排水手段(9)を有することを特徴とする請求項1に記載の材料噴射システム。
【請求項5】
制御手段(14)は、溶融材料の上に浮いている汚染物を取り除くため、固体形状の前記材料の供給量を一時的に増加させ、これによって、溶融材料の上に浮いている汚染物を貯蔵器内へ流出させることを特徴とする請求項4に記載の材料噴射システム。
【請求項6】
制御手段(14)は、周期的に固体形状の材料の供給を少しの期間増加させ、これによって、溶融材料の上に浮いている汚染物を周期的に取り除くことを特徴とする請求項5に記載の材料噴射システム。
【請求項7】
貯蔵器(10)は着脱可能であり、
システムは排出手段(9)と着脱可能な貯蔵器(10)との間にバルブ(11)を備え、
貯蔵器を取り外すときにバルブを閉めることができることを特徴とする請求項4に記載の材料噴射システム。
【請求項8】
モニタ手段(13)を備え、
モニタ手段は、溶融噴射材料の表面高さをモニタし、
制御手段(14)は、溶融噴射材料の表面高さが最大高さよりも高い間、表面固体形状の材料供給を減少させることを特徴とする請求項1に記載の材料噴射システム。
【請求項9】
モニタ手段(15)を備え、
モニタ手段は、溶融噴射材料の表面高さをモニタし、
制御手段(14)は、溶融噴射材料の表面高さが最小高さよりも低い間、表面固体形状の材料供給を増加させることを特徴とする請求項1に記載の材料噴射システム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−521327(P2009−521327A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548448(P2008−548448)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000669
【国際公開番号】WO2007/075084
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(501259662)ネイダーランゼ、オルガニザティー、ボー、トゥーゲパストナトゥールウェテンシャッペルーク、オンダーツォーク、ティーエヌオー (28)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPASTNATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【Fターム(参考)】