説明

杭式桟橋

【課題】軽量で、塩害に強く、高耐力で、従来に比べて低コストにて構築できる杭式桟橋の提供。
【解決手段】複数列配置に立設した支持杭10の各杭列18毎にその杭頭間に跨らせコンクリート製の床版支持用の床版受梁16を形成し、その互いに隣り合う床版受梁16間にプレキャストコンクリート製の床版部材13を掛け渡すことによって床版11を形成し、各床版受梁16の下側位置でこれと平行配置のアーチリブ受け梁20を杭列18の各杭に支持させて形成し、そのアーチリブ受梁18間にプレキャストコンクリート製のアーチリブ12を掛け渡して固定し、そのアーチリブ12のアーチクラウン部12aの上面に床版部材13の中央部分を支持させ、床版部材及びアーチリブは、高強度繊維補強モルタルをもって形成したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてパイルベントを用いた港湾用の桟橋であって、支持杭に支持させた床版受梁間にプレキャストコンクリート製の床版部材を架設して構成される杭式桟橋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パイルベントを用いた杭式桟橋には、所謂RC桟橋とPC桟橋がある。RC桟橋は、図9に示すように水底地盤に立設した支持杭1の杭頭に支持させる上部構造2を場所打ちの鉄筋コンクリート構造(RC構造)としたものである。
【0003】
またPC桟橋には、図10に示すように、複数列配置に立設した支持杭1の各列毎の杭頭に跨らせて場所打ちコンクリートからなる床版受梁3,3……を構築し、その床版受梁3,3間にプレキャスト製品であるプレストレストコンクリート主桁4,4……を平行配置に並べて架設し、各主桁4,4間に間詰めコンクリート5を打設することによって床版6となし、この主桁4、間詰めコンクリート5を含めて床版6の幅方向(主桁の長さ方向と直行する方向)PC緊張材7を挿通し、これを床版6の両側部にて緊張定着して幅方向のプレストレスを付与することによって主桁4及び間詰めコンクリート5を強固に一体化させるものがある(例えば非特許文献1及び2)。
【非特許文献1】沿岸センター研究論文集No.1(2001)・2001年8月発行「PC桟橋の設計・施工に関する共同研究」
【非特許文献2】港湾PC構造研究会 2007年6月18日ウェブサイト 「港湾PC構造物実績集 2005年7月改訂版」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の杭式桟橋においては以下のごとき問題がある。
1.塩害対処
港湾用の桟橋は、水面からの高さが大きく取れない場合が多く、従って常時海水にさらされるため、コンクリート構造部分の塩害劣化を防止するため、鉄筋のかぶり、即ち鋼材の外側のコンクリート厚を大きくし、かつ鋼材の防錆効果を高めるために、樹脂被覆等によって防錆処理を施した鋼材を使用する必要がある。
【0005】
鉄筋のかぶりが大きくなると部材の有効断面の比率が小さくなり、必要な有効断面を得るためには、部材の断面形状を大きくする必要がある。このため上部工の重量が大きくなり、杭に対する負担が大きくなる。また、部材が大きくなるとその製造費が高くなり、防錆処理した鋼材の使用と相俟って、工事費が高くなるという問題がある。
2.杭間隔
杭式桟橋は、軟弱地盤上での桟橋として用いられることが多く、一般に杭長は30mを越える場合が多いため、杭の鉛直支持力や曲げ耐力が大きく取れず、上部構造の重量をあまり重くすることができない。このため、RC桟橋の場合における杭間隔(桟橋支間長)は7.5m程度、PC桟橋でも15.0m程度となり、杭本数が多くなり、桟橋の全体工事費が高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題にかんがみ、軽量で、塩害に強く、高耐力で、従来に比べて低コストにて構築できる杭式桟橋の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載する発明の特徴は、複数列配置に多数の支持杭を水底に立設し、該支持杭の杭列毎にその杭頭間に跨らせてコンクリート製の床版受梁を形成し、互いに隣り合う前記床版受梁間にプレキャストコンクリート製の床版部材を掛け渡すことによって床版を形成してなる杭式桟橋において、前記各床版受梁の下側にあって、前記杭列を構成する支持杭に跨らせて支持させたアーチリブ受け梁形成し、該アーチリブ受梁間にプレキャストコンクリート製のアーチリブを掛け渡して固定し、該アーチリブのアーチクラウン部の上面に前記床版部材の中央部分を支持させ、前記床版部材及びアーチリブは、高強度繊維補強モルタルをもって形成した高強度プレキャストコンクリートにより構成されていることにある。
【0008】
請求項2に記載する発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記アーチリブのアーチクラウン部の上面と前記床版部材の下面との間にゴム状の弾性材からなる沓を介在させ、前記床版部材の下面に前記アーチクラウン部により前記該沓を介して上向きの力与えた状態で架設されていることにある。
【0009】
請求項3に記載する発明の特徴は、前記請求項1又は2のいずれかの1の請求項の構成に加え、前記アーチリブは、前記各床版部材に対応させて設置していることにある。
【0010】
請求項4に記載する発明の特徴は、前記請求項1〜3のいずれか1の請求項の構成に加え、前記床版部材は、プレキャスト製のプレストレストコンクリート桁をもって構成し、該床版部材を多数並べて前記床版受梁に掛け渡し、該コンクリート桁の幅方向に跨らせて設置したPC緊張材によってプレストレスを付与することにより床版を構成させていることにある。
【0011】
請求項5に記載する発明の特徴は、前記請求項4の構成に加え、前記アーチリブは、複数おきの床版部材に対応させた状態に設置していることにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、杭列毎にその杭頭間に跨らせ形成した間にプレキャストコンクリート製の床版部材を掛け渡すことによって床版を形成し、その各床版受梁の下側にあって、前記各杭列毎に、該杭列を構成する支持杭に跨らせて支持させたアーチリブ受け梁備え、該アーチリブ受梁間にプレキャストコンクリート製のアーチリブを掛け渡して固定し、該アーチリブのアーチクラウン部の上面に前記床版部材の中央部分を支持させる構造としたことにより、アーチリブによるアーチ効果により軸圧縮力が卓越した部材となって、アーチリブ橋と同様に床版に対する曲げモーメントが小さくなり、高耐力構造となる。
【0013】
しかし、桟橋の場合には、水面からの高さを大きくとれないためにアーチライズを大きく取ることができない場合が多く、その場合には、アーチリブには軸方向の圧縮力のみならず、曲げモーメントも発生する。これに対し、本発明では、床版部材及びアーチリブを、高強度繊維補強モルタルをもって形成しているため、所望の耐圧縮力及び耐曲げモーメントを得るに必要な部材厚さが小さくでき、このためアーチライズが小さい場合でも軽量で高耐力の桟橋とすることができる。
【0014】
また、アーチリブのアーチクラウン部の上面と前記床版部材の下面との間にゴム状の弾性材からなる沓を介在させ、床版部材の下面に前記アーチクラウン部により沓を介して上向きの力を与えた状態で架設されていることにより、床版部材に発生する断面力(曲げモーメント)を調整することができ、架設直後においては、床版部材は、単純梁として正の曲げモーメントが卓越した部材となるが、上記上向きの力があたえられることにより、連続梁としての断面力(曲げモーメント)状態となり、正の曲げモーメントと負の曲げモーメントの大きさを同じ程度とすることができる。この結果、床版部材に作用する断面力(曲げモーメント)の絶対値としては小さくなり、床版部材の部材厚を小さくできる。
【0015】
また、桟橋の床版部材に作用する変動荷重としては、車両等の重量が下向きに作用する反面、波による上揚力が上向きに作用し、桟橋の床版部材には、変動加重によって正負反対方向の断面力(曲げモーメント)が作用するため、床版部材に導入するプレストレスは軸力配置が望ましい。このとき、変動荷重作用時のコンクリート圧縮応力度は大きくなるので、床版部材に高強度繊維補強モルタルを用いることによりプレストレスによる軸力を多く導入することができ、その結果、床版部材の部材厚を小さくできる。
【0016】
更に、床版部材は、プレキャスト製のプレストレストコンクリート桁をもって構成し、該床版部材を多数並べて前記床版受梁に掛け渡し、該コンクリート桁の幅方向に跨らせて設置したPC緊張材によってプレストレスを付与することにより床版を構成させることにより、アーチリブは各床版部材に対してではなく、これらが一体化された床版に対してその底面を支持する構造とすることができ、アーチリブは、複数おきの床版部材に対応させた状態に設置することによりその数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の好適な実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1〜図4は本発明を実施した杭式桟橋の一例を示しており、図において符号10は水底地盤に支持させて立設した支持杭、11は支持杭10に支持させた床版、12は床版下面中央を支えるアーチリブである。
【0018】
床版11は、平行に多数並べられた床版部材13とその間の間詰めコンクリート14とによって構成され、床版11の幅方向即ち床版部材13の長さ方向に直行する方向にPC緊張材15を挿通し、これを床版11の両側部に緊張定着することによって幅方向のプレストレスが導入されている。
【0019】
床版部材13は、プレキャスト製のコンクリート桁であってその長さ方向にプレストレスを付与したPC桁をもって構成されている。この床版部材13の両端を前記支持杭10に支持させた互いに平行配置の床版受梁16,16に掛け渡して支持させている。
床版受梁16上では、床版部材13の延長線方向に隣り合う床版11,11間に間詰めコンクリート17を打設し、各床版11,11間を一体化させている。これら床版11,11及び間詰めコンクリート17の上面には必要に応じて舗装を施す。
【0020】
支持杭10は、所望の広さに互いに平行な複数列配置に立設されており、床版受梁16は各杭列18毎に、各支持杭10の柱頭部を埋め込んだ場所打ちコンクリートによって形成されている。
【0021】
各床版受梁10のやや下側にあって該床版受梁10と平行にアーチリブ受梁20が、各杭列18の各支持杭10に支持させて形成されている。このアーチリブ受梁20は、その幅方向の中央に各支持杭10を貫通させた状態に場所打ちコンクリートによって形成されている。
【0022】
互いに隣り合う杭列18,18のアーチリブ受梁20,20間にアーチリブ12が掛け渡されている。このアーチリブ12はプレキャストコンクリートからなるアーチ材をもって構成されている。そして、アーチリブ12のアーチクラウン部12aの上面にゴム状の弾性材からなる沓21を介して床版部材13の下面が支持されており、アーチクラウン部12aと沓21及び床版部材13は例えば図4に示すようにボルト22によってヒンジ結合させる。
【0023】
アーチリブ12は、図3に示すように全ての床版部材13毎に、その下側に架設しても良く、また図5に示すように、数本置きの床版部材13下に設置するようにしてもよい。例えばアーチライジング量、即ちアーチリブ両端を結ぶ線からアーチクラウン部までの高さが大きい場合には、アーチリブの数を少なくし、小さい場合には多くする。
【0024】
また、各杭列18,18……間を連結する配置にタイ部材23が掛け渡されている。このタイ部材23は、杭列18,18間において互いに隣り合う支持杭10,10間に掛け渡されているものであり、各支持杭10には、アーチリブ受梁20の下側に鞘管からなるタイ部材受け24が設置され、このタイ部材受け24,24間に前記タイ部材23が掛け渡されている。
【0025】
このタイ部材23は、図6に示すように、アーチリブ12の自重及び下向きの外力が作用した際に生じる軸力によって、支持杭10に水平力が生じるが、これに対抗させるように設置し、支持杭10に対し前記アーチリブの軸力による曲げモーメントが作用しないようするものであり、例えば鋼管やPC鋼材が使用できる。
【0026】
上述したプレキャスト製のアーチリブ12及び床版部材13は、何れも高強度繊維補強モルタルをもって形成した高強度プレキャストコンクリートにより構成されている。この高強度繊維補強モルタルとしては、例えば次の超高強度高じん性モルタルの使用が好ましい。
【0027】
この超高強度高じん性モルタルは、少なくとも、セメント、ポゾラン質微粉末、粒径5mm以下の細骨材、短繊維補強材、減水剤および水を含むものである。
【0028】
使用されるセメントの種類は限定されるものでなく、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメントを使用することが出来る。また、セメント質量部の40〜50%がビーライトである高ビーライトセメントも使用することが出来る。なお、モルタルの早期強度を向上しようとする場合は早強ポルトランドセメントが望ましく、モルタルの流動性を向上しようとする場合は、高ビーライトセメントや中庸熱セメント又は低熱ポルトランドセメントを使用することが望ましい。シリカフュームをプレミックスしたセメントはシリカフュームの分散性がよく、優れた流動性と超高強度とが得られるため、さらに望ましい。
【0029】
ポゾラン質微粉末としては、シリカフューム、シリカダスト、高炉スラグ、シリカゾル、沈降シリカ等が挙げられる。一般にシリカフュームやシリカダストではその平均粒径が1.0μm以下であり、粉砕等をする必要が無く、本発明のポゾラン質微粉末として好適である。ポゾラン質微粉末を配合することにより、そのマイクロフィラー効果およびボールベアリング効果によりモルタルが緻密化し、圧縮強度が向上する。シリカフュームの配合量は、効果とコストとを考慮して、セメント100質量部に対し5〜20質量部が望ましい。5質量部を下廻るとモルタルの緻密化が十分でなく圧縮強度向上効果も乏しい。一方20質量部を越えると効果が飽和すると共にコストアップを招来するので20質量部以下とするのがよい。
【0030】
また、材料コストを考慮して、粒径5mm以下の一般コンクリート用の細骨材を用いる。粒径2mm以上の細骨材があることによりモルタルの粘性が低減し、充填性が向上するという効果もある。細骨材としては川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂またはこれらの混合物を使用することができる。細骨材の混合量は、モルタルの作業性や材料分離抵抗性、硬化後の強度や収縮低減効果の観点から、セメント100質量部に対し、50〜150質量部が好ましい。
【0031】
細骨材に含まれる微粉分(150μm以下)が少ない場合、モルタルの材料分離や強度低下を起こすことがあるので、微粉分が少ない場合には、細骨材の一部を不活性な微粉末例えば、粉末度がセメントと同程度の石灰石微粉末(例えば、平均粒径15μm程度のもの)で置換し、微粉分を補うと良好な材料分離抵抗性と高い圧縮強度が得られる。不活性な粉末を添加することによって、水和熱の抑制や温度ひび割れの防止にも効果がある。
【0032】
短繊維補強材として、金属繊維、無機繊維及び有機繊維からなる群から選ばれた1又は2以上を用いる。これらを混入するとひび割れ抵抗性と靱性が向上する。添加量は、施工性、経済性を考慮して、モルタル全体に対して3vol%以下とするのが望ましい。
【0033】
減水剤としては、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系の減水剤、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤を使用することができる。これらのうち、減水効果が大きい高性能減水剤又は高性能AE減水剤を使用することが好ましい。減水剤の配合量は、モルタルの流動性、材料分離抵抗性、凝結時間、硬化後の強度、さらにはコスト等に鑑み、セメント100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が望ましい。なお、減水剤は液状又は粉末状どちらでも使用可能である。また、強度を発現させるためにはモルタル中に過剰な空気が入ることは望ましくなく、消泡剤を混入することが望ましい。
【0034】
収縮低減を目的として、石灰系またはカルシウムスルホアルミネート系の膨張剤や、アルミ粉などの発泡剤を添加しても良い。膨張剤はセメント100質量部に対して3〜15質量部、発泡剤はセメント100質量部に対し、0.0005〜0.0025質量部とするのが好ましい。
【0035】
また、この超高強度高じん性モルタルの製造方法は、特に限定するものではないが、例えば次の(1)又は(2)の手段等によることができる。
(1)全材料(水、混和剤、セメント、ポゾラン質微粉末、細骨材および短繊維補強材)を一度に練混ぜる。
(2)短繊維補強材以外の材料を練混ぜた後に、短繊維補強材を加え、再度練混ぜる。短繊維補強材はアジテータ車に添加しても良い。
【0036】
練混ぜに用いるミキサは、通常のモルタルやコンクリートの練混ぜに用いられるものであれば、いずれのタイプでもよく、例えば、ホバートミキサ、ハンドミキサ、強制練りパン型ミキサ、強制練り水平二軸ミキサ等が用いられる。短繊維補強材の練混ぜにはアジテータ車を使用することもできる。
【0037】
また、モルタルの養生方法は、常温養生、蒸気養生、加熱養生、断熱養生等を行えばよい。ただし、早期に強度を発現させ、初期ひび割れを防止又は低減させる目的で、蒸気養生、加熱養生、断熱養生などの促進養生を行うことが望ましい。
【0038】
この桟橋の構築に際しては、予め工場にてアーチリブ12及び床版部材13を形成しておき、これを施工現場に搬入する。施工現場では、支持杭10を所望の間隔に立設した後、所定の高さ位置にタイ部材受け24を設置するとともに、各杭列18毎にその杭頭部に支持させて床版受梁16及びその下のアーチリブ受梁20をそれぞれ場所打ちコンクリートにより形成する。
【0039】
各杭列間において隣り合う支持杭10,10のタイ部材受け24,24間にタイ部材23を掛け渡した後、アーチリブ12をアーチリブ受梁20間に支持させて架設する。しかる後、床版部材13を床版受梁20,20間に掛け渡し、必要な場所打ちコンクリートを打設するとともに幅方向のプレストレスを導入して床版11を形成する。
【0040】
しかる後、アーチクラウン部12aの近傍と床版11の下面との間隔内にジャッキ(図示しない)を挿入し、該ジャッキによって前記間隔を広げることにより床版11の中央部分に上向きの力与えたる。この状態で広がった状態のアーチクラウン部12aの上面と床版11の下面との間に沓21を圧入し、ボルトによる結合作業の後、ジャッキを取り外す。これによって、床版11の下面中央に常時アーチリブ12による上向きの力が作用された状態とする。
【0041】
このようにアーチリブ12のアーチクラウン部の上面と前記床版部材の下面との間にゴム状の弾性材からなる沓21を介在させ、床版部材13の下面に前記アーチクラウン部により沓を介して上向きの力を与えた状態で架設されていることにより、図7(a)に示すように架設直後においては、床版部材13は、単純梁として正の曲げモーメント(+M)が卓越した部材となるが、上記上向きの力があたえられることにより、図7(b)に示すように、連続梁としての断面力(曲げモーメント)状態となり、正の曲げモーメント(+M)と負の曲げモーメント(−M)の大きさを同じ程度とすることができる。この結果、床版部材13に作用する断面力(曲げモーメント)の絶対値としては小さくなり、床版部材の部材厚を小さくできる。
【0042】
また、桟橋の床版部材13に作用する変動荷重としては、図8に示すように車両などの車両等の重量が下向きに作用する反面、波による上揚力が上向きに作用し、桟橋の床版部材13には、変動荷重によって正負反対方向の断面力(曲げモーメント)(+M)(−M)が作用するため、床版部材13に導入するプレストレスは軸力配置が望ましく、PC緊張材15,15を偏心させないで、上下に平行に設置する。このとき、変動荷重作用時における荷重とプレストレスとの合成応力度、即ちコンクリート圧縮応力度は大きくなるので、床版部材13に高強度繊維補強モルタルを用いることによりプレストレスによる軸力を多く導入することができ、その結果、床版部材13の部材厚を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る杭式桟橋の実施の一例を示す平面図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図1中のB−B線断面図である。
【図4】図1に示す実施例のアーチクラウンと床版部材との結合状態を示す拡大断面図である。
【図5】本発明に係る杭式桟橋の他の実施例の断面図である。
【図6】本発明におけるアーチ部材の軸力に対抗させるためのタイ部材の作用説明図である。
【図7】本発明における床版部材に発生する断面力(曲げモーメント)の説明図である。
【図8】本発明における床版部材に対する変動荷重作用時の剛性応力度の説明図である。
【図9】従来の杭式桟橋の一例を示す断面図である。
【図10】従来の杭式桟橋の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 支持杭
11 床版
12 アーチリブ
12a アーチクラウン部
13 床版部材
14 間詰めコンクリート
15 PC緊張材
16 床版受梁
17 間詰めコンクリート
18 杭列
20 アーチリブ受梁
21 沓
22 ボルト
23 タイ部材
24 タイ部材受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列配置に多数の支持杭を水底に立設し、該支持杭の杭列毎にその杭頭間に跨らせてコンクリート製の床版受梁を形成し、互いに隣り合う前記床版受梁間にプレキャストコンクリート製の床版部材を掛け渡すことによって床版を形成してなる杭式桟橋において、
前記各床版受梁の下側にあって、前記杭列を構成する支持杭に跨らせて支持させたアーチリブ受け梁形成し、該アーチリブ受梁間にプレキャストコンクリート製のアーチリブを掛け渡して固定し、該アーチリブのアーチクラウン部の上面に前記床版部材の中央部分を支持させ、前記床版部材及びアーチリブは、高強度繊維補強モルタルをもって形成した高強度プレキャストコンクリートにより構成されていることを特徴としてなる杭式桟橋。
【請求項2】
前記アーチリブのアーチクラウン部の上面と前記床版部材の下面との間にゴム状の弾性材からなる沓を介在させ、前記床版部材の下面に前記アーチクラウン部により前記該沓を介して上向きの力与えた状態で架設されている請求項1に記載の杭式桟橋。
【請求項3】
前記アーチリブは、前記各床版部材に対応させて設置してなる請求項1又は2のいずれかに記載の杭式桟橋。
【請求項4】
前記床版部材は、プレキャスト製のプレストレストコンクリート桁をもって構成し、該床版部材を多数並べて前記床版受梁に掛け渡し、該コンクリート桁の幅方向に跨らせて設置したPC緊張材によってプレストレスを付与することにより床版を構成させてなる請求項1〜3の何れかに記載の杭式桟橋。
【請求項5】
前記アーチリブは、複数おきの床版部材に対応させた状態に設置してなる請求項4に記載の杭式桟橋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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