説明

杭打方法

【課題】杭を引き起こす際の安定性を考慮し、杭の損傷を防止する杭打方法を提供することを目的とする。
【解決手段】杭打機とクレーンとを使用して杭打する杭打方法において、水平に置かれている杭を等分した位置及び杭の両端を支持点とし、杭の一端の支持点を上端部分玉掛ワイヤに緊結し、この上端部分玉掛ワイヤを杭打機フックに掛止させる。そして、上端部分玉掛けワイヤに緊結された支持点を除く隣り合う支持点を複数の玉掛ワイヤに緊結させ、この玉掛ワイヤをクレーンから延びるクレーンワイヤロープに滑車を介して掛止させる。その後、玉掛ワイヤを緊張させながら杭を引き起こし、杭打を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打作業を行う際に杭を引き起こして杭打する杭打方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭打を行う場合、引用文献1のように、杭材用ワイヤをフックに取付け、杭材の上端部分を杭材用ワイヤに取り付け、フックを引き上げることにより杭を引き起こし、杭打していた。
【特許文献1】特開平10−114940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の方法によれば、杭を引き起こした際に杭を支えているのは、杭の上端部分の1箇所のみである。このため、引き起こし時の杭の安定性に問題があった。さらに、杭の不安定性から起因する杭の損傷の発生を生ずる。
そこで、本願発明は、杭を引き起こす際の安定性を考慮し、杭の損傷を防止する杭打方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、杭打機とクレーンとを使用して杭打する杭打方法において、水平に置かれている杭を等分した位置及び杭の両端を支持点とし、杭の一端の支持点を上端部分玉掛ワイヤの一端に緊結する上端部分緊結工程と、その後、この上端部分玉掛ワイヤの他端を、上記杭打機から延びる杭打機ワイヤロープの先端に取り付けられた杭打機フックに掛止させる杭打機フック掛止工程と、上端部分玉掛ワイヤを緊結させた支持点を除く隣り合う支持点を複数の玉掛ワイヤの両端に緊結する支持部分緊結工程と、その後、これらの玉掛ワイヤを、上記クレーンから延びるクレーンワイヤロープの先端にそれぞれ取り付けられた滑車に、それぞれ掛止させる玉掛ワイヤ掛止工程と、その後、これらの玉掛ワイヤを緊張させながら上記杭打機にて上記杭打機フックを引き上げることにより上記上端部分玉掛ワイヤに緊結されている支持点を上に向けて杭を垂直に引き起こす引き起こし工程と、その後、この杭打機にてこの杭を杭打する杭打工程とを有する杭打方法である。
【0005】
上記杭打機とは、地表面、又は水底に杭を打ち込む機械であり、杭打機リーダと、杭打ハンマとを備えている。この杭打機には、作業車に取り付けられているもの、または作業船に取り付けられているものがある。
【0006】
上記クレーンは、リーダとクレーンワイヤロープを有するものであり、リーダが伸縮自在に構成されているものである。このクレーンは、上記杭打機と同様に作業車に取り付けられているもの、または作業船に取り付けられているものがある。たとえば、この杭打機とクレーンが同じ1台の作業船に取り付けられている。
【0007】
上記杭は、1本の棒材であり、長さは任意である。一般的に50m杭が用いられている。この杭は、コンクリート杭、鉄鋼杭などがあり、いずれも適用できる。
【0008】
上端部分玉掛ワイヤと玉掛ワイヤは、ともに鋼線の素線をより合わせて製作されたロープである。
【0009】
杭打機で杭打するとは、杭打機にハンマが設けられ、このハンマを用いて杭を叩打することである。このハンマは、ディーゼルハンマ、油圧ハンマなどがあり、いずれも適用できる。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、複数の支持点にて杭を玉掛ワイヤにて支持されているため、杭の一箇所にかかる曲げモーメントが小さくなる。そのため、杭が屈曲することなく、杭を引き起こすことができる。また、玉掛ワイヤを滑車に掛止しているため、杭を引き起こす際のバランスを保つことができる。このため安全に杭を引き起こすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、複数の支持点にて杭を玉掛ワイヤにて支持されているため、杭の一箇所にかかる曲げモーメントが小さくなる。そのため、杭が屈曲することなく、杭を引き起こすことができる。また、玉掛ワイヤを滑車に掛止しているため、杭を引き起こす際のバランスを保つことができる。このため安全に杭を引き起こすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、作業船にて本願発明における杭打方法について図1〜図2を用いて説明する。
【0013】
1.支持点を決める
船上に杭10を、載置する。杭10は、一本のコンクリート杭である。この杭10の長さは50mである。
この杭10を等分した位置、及び杭の両端を支持点30とする。本実施例では、杭を4等分した位置、及び杭の両端が支持点30となる。
この支持点30に後述する上端部分玉掛ワイヤ11及び、後述する玉掛ワイヤ14が緊結される。
【0014】
2.上端部分緊結工程
上記支持点30のうち、一方の端部の支持点30aに上端部分玉掛ワイヤ11が緊結される。
この上端部分玉掛ワイヤ11は、鋼線の素線をより合わせて製作されたロープである。
この支持点30aを通るように上端部分玉掛ワイヤ11の一端をあだ巻き掛けで緊結する。あだ巻き掛けで緊結することにより、杭10を持ち上げても、杭10が滑り落ちることが無く、安全に作業を行うことができる。なお、杭10にフックが固着している場合、上端部分玉掛ワイヤ11をフックに掛止してもよい。
【0015】
3.杭打機フック掛止工程
作業船に取り付けられている杭打機本体100から延びる杭打機ワイヤロープ13の先端には杭打機フック12が設けられている。この杭打機フック12は金属製である。この杭打機ワイヤロープ13と杭打機フック12は、25tの荷重に耐えることができる。
この杭打機フック12に、上記上端部分玉掛ワイヤ11の他端を掛止させる。
【0016】
4.支持部分緊結工程
上記上端部分玉掛ワイヤ11を緊結された支持点30a以外の支持点30bにおいて、隣り合う支持点30bを玉掛ワイヤ14の両端に緊結する。本実施例では、4箇所の支持点30bにおいて、隣り合う支持点30bを2本のワイヤの両端に緊結する。
この玉掛ワイヤ14は、この上端部分玉掛ワイヤ11と同様、鋼線の素線をより合わせて製作されたロープである。この玉掛ワイヤ14は、隣り合う支持点間の長さの2倍の長さを有する。
この支持点30bを通るように、この玉掛ワイヤ14の両端をあだ巻き掛けで緊結する。あだ巻き掛けで緊結することにより、杭10を持ち上げても、杭10が滑り落ちることが無く、作業を安全に行うことができる。なお、杭10に溝が形成されている場合、この溝に嵌合するように玉掛ワイヤを緊結してもよい。
【0017】
5.玉掛ワイヤ掛止工程
作業船に取り付けられているクレーン200から延びる複数のクレーンワイヤロープ18の先端に、クレーンフック17が設けられている。本実施例ではクレーン200からクレーンワイヤロープ18が2本延びている。このクレーンワイヤロープ18にそれぞれクレーンフック17が設けられている。このクレーンワイヤロープ18とクレーンフック17は、25tの荷重に耐えることができる。
このクレーンフック17に、台付ワイヤ16の一端が掛止される。そして、この台付ワイヤ16の他端には滑車15が掛止される。そして、上記玉掛ワイヤ14の中間部分を滑車15に掛止する。玉掛ワイヤ14の中間部分とは、玉掛ワイヤ14の両端に挟まれた部分をいう。
この滑車15は、スナッチブロックである。つまり、この滑車15は、円盤と、軸と、枠とフックから構成されており、枠には側板を有し、この側板が開閉することにより、玉掛ワイヤ14を円盤に掛止することができる。台付ワイヤ16は、スナッチブロックのフックに掛止される。
【0018】
6.引き起こし工程
上記クレーンワイヤロープ18をウィンチで巻き上げることにより玉掛ワイヤ14を緊張させる。このとき、滑車15の円盤が回転し、玉掛ワイヤ14が安定した角度で滑車15に支持される。
同時に杭打機100にて杭打機フック12を引き起こす。つまり、上端部分玉掛ワイヤ11に緊結されている支持点30aを上に向けて、杭10を上に向けて、杭10を垂直に引き起こす。このとき、クレーンリーダを旋回させ、杭打ハンマの直下、すなわち、杭打する地点に杭が垂直に引き起こす。このときも、ウィンチでクレーンワイヤロープ18を巻き上げることにより、玉掛ワイヤ14を緊張させる。
このとき、杭の引き起こし角度が大きくなる。玉掛ワイヤ14は滑車15に支持されているため、杭10の引き起こし角度が大きくなっても、緊張させながら、玉掛ワイヤ14は杭を支持することができる。
玉掛ワイヤ14は滑車15の溝に掛止されている。このため玉掛ワイヤ14が滑車15から外れずに、杭10を引き起こすことができる。
【0019】
7.杭打工程
杭10を引き起こした後、杭10に緊結されている玉掛ワイヤ14を取り外す。玉掛ワイヤ14を取り外した後において、杭10は、上端部分玉掛ワイヤ11のみにより支持されている。玉掛ワイヤ14を取り外した後、杭打機100に取り付けられているハンマで叩打する。
【0020】
以上の工程を経ることにより、杭10を屈曲させることなく、安全に杭打することができる。また、作業船にクレーンと杭打機本体が備えられていれば、1台の作業船にて安全に作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)杭が水平に置かれ、玉掛ワイヤと上端部分玉掛ワイヤを緊結した時の側面図である。(b)杭を引き起こしている時の側面図である。
【図2】杭打船において、杭を引き起こしているときの側面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 杭、
11 上端部分玉掛ワイヤ、
12 杭打機フック、
13 杭打機ワイヤロープ、
14 玉掛ワイヤ、
15 滑車、
18 クレーンワイヤロープ、
30 支持点、
100 杭打機、
200 クレーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打機とクレーンとを使用して杭打する杭打方法において、
水平に置かれている杭を等分した位置及び杭の両端を支持点とし、杭の一端の支持点を上端部分玉掛ワイヤの一端に緊結する上端部分緊結工程と、
その後、この上端部分玉掛ワイヤの他端を、上記杭打機から延びる杭打機ワイヤロープの先端に取り付けられた杭打機フックに掛止させる杭打機フック掛止工程と、
上端部分玉掛ワイヤを緊結させた支持点を除く隣り合う支持点を複数の玉掛ワイヤの両端に緊結する支持部分緊結工程と、
その後、これらの玉掛ワイヤを、上記クレーンから延びるクレーンワイヤロープの先端にそれぞれ取り付けられた滑車に、それぞれ掛止させる玉掛ワイヤ掛止工程と、
その後、これらの玉掛ワイヤを緊張させながら上記杭打機にて上記杭打機フックを引き上げることにより上記上端部分玉掛ワイヤに緊結されている支持点を上に向けて杭を垂直に引き起こす引き起こし工程と、
その後、この杭打機にてこの杭を杭打する杭打工程とを有する杭打方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−31593(P2010−31593A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196966(P2008−196966)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【特許番号】特許第4205147号(P4205147)
【特許公報発行日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(501433804)株式会社小山 (3)
【Fターム(参考)】