説明

杭打機を用いた貫入量の検出方法及び回転杭の施工方法

【課題】固い地盤に回転杭を施工する際でも正確な貫入量を検出することができる杭打機を用いた貫入量の検出方法を提供する。
【解決手段】少なくとも先端部に螺旋状の羽根を備えた回転杭を杭打機のリーダに沿って昇降するオーガで回転させることによって地中に圧入する際に計測した前記回転杭の回転数と回転杭の深度との関係から貫入量を求めるにあたり、新たに計測した回転杭の深度が、回転杭の圧入開始から今回の深度計測時までの間の回転杭圧入中に計測された最大深度を超えて深くなっているときにのみ、回転杭の回転数を計測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機を用いた貫入量の検出方法及び回転杭の施工方法に関し、詳しくは、先端部あるいは先端部及び杭軸部に螺旋状の羽根を備えた回転杭(鋼管杭)を杭打機のオーガで回転させることにより、回転杭を地中に圧入する際の貫入量の検出方法及び検出した貫入量に基づいた回転杭の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先端部あるいは先端部及び杭軸部に螺旋状の羽根を備えた回転杭を回転させて建築物の基礎杭を地中に圧入する際には、基礎杭が支持地盤に到達したか否かを確認する必要がある。このため、回転杭を回転させるためのトルク値と回転杭の貫入量とを監視し、トルク値と貫入量との関係から基礎杭が支持地盤に到達したと判定することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−96776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭打機のリーダに沿って昇降するオーガで回転杭を回転させて地中に圧入する場合、エンコーダを使用した深度検出器、圧力センサ又は電流検出器を使用したトルク検出器、オーガの回転パルスを検出する回転数検出器などから各データを得るとともに、各データから、深度、深度ごとのトルク値、圧入力、深度ごとの貫入量などを求めてディスプレイに表示するとともに、記録手段に記録しながら施工を行っている。
【0005】
基本的に、貫入量は、回転杭の1回転当たりの掘進量とされ、あらかじめ設定した区間深度ごとに、回転杭の回転数と掘進量(深度差)とから計算して求められている。この貫入量は、基礎杭が支持地盤に到達したか否かを確認するための判定条件として用いられるとともに、施工途中において、回転トルクが回転杭の圧入に作用しているか否かの確認、周辺地盤を乱しているか否かの確認を行うための材料ともなる。
【0006】
しかし、一部の地盤が硬く、オーガのトルクが上限に上昇してオーガの回転が止まってしまった場合には、オーガを逆転させて回転杭を一旦引上げた後、オーガを正転して再度掘削するようにしている。このように、オーガの正転と逆転、回転杭の圧入と引上げとを繰り返して回転杭を圧入する場合、オーガの逆転方向と正転方向との両方向で回転パルスを検出してしまうと、掘進量に対して回転数が大きくなるので、貫入量の値が実際の貫入量に比べて小さく計測されてしまう。また、回転数検出器として回転方向を区別できる2相式の検出器を使用した場合でも、同じ深度でオーガが正転方向に回転した場合にはカウントされるので、前記同様に貫入量が実際より小さく計測される。
【0007】
すなわち、本来は、同じ地盤の同じ区間であれば、途中の操作が異なっていても、同じ貫入量でなければならないが、深さに関係なく回転信号を検出して貫入量を検出する方法では、途中の操作が異なると計測した貫入量が実際の貫入量と異なることがある。このようなことから、固い地盤に回転杭を施工する際に回転杭の圧入と引上げとを繰り返し行うと、正確な貫入量を検出できなくなることがある。
【0008】
そこで本発明は、固い地盤に回転杭を施工する際でも正確な貫入量を検出することができる杭打機を用いた貫入量の検出方法及び及び検出した貫入量に基づいた回転杭の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機を用いた貫入量の検出方法は、少なくとも先端部に螺旋状の羽根を備えた回転杭を杭打機のリーダに沿って昇降するオーガで回転させることによって地中に圧入する際に計測した前記回転杭の回転数と回転杭の深度との関係から貫入量を求めるにあたり、新たに計測した回転杭の深度が、回転杭の圧入開始から今回の深度計測時までの間の回転杭圧入中に計測された最大深度を超えて深くなっているときにのみ、回転杭の回転数を計測することを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の貫入量の検出方法は、前記回転杭の回転数の計測を、前記オーガを操作する操作レバーの位置が回転杭の圧入方向の位置になっているときにのみ行うこと、また、回転杭圧入中の前記最大深度にあらかじめ設定した深度加算値を加えた深度を超えて深くなったときに行うことを特徴としている。
【0011】
加えて、前記回転杭の最大深度更新時における前記回転数を最新回転数として記憶するとともに、該最新回転数からの回転数を補助カウンタで補助回転数として計測し、今回計測した回転杭の深度が前記最大深度を超えて深くなったときに、今回計測した深度と前記最大深度と前記補助回転数とから区間貫入量を算出し、算出した前記区間貫入量があらかじめ設定された貫入量設定値以下のときには前記最新回転数を保持するとともに前記補助回転数を初期値にリセットし、算出した区間貫入量が前記貫入量設定値を超えたときに前記補回転数を前記最新回転数に加算して新たな最新回転数を算出して記憶するとともに、前記補助回転数を初期値にリセットすることを特徴としている。
【0012】
また、回転杭の施工方法は、前記杭打機を用いた貫入量の検出方法で検出した貫入量に基づいて回転杭の回転又は回転杭の押込力を制御することを特徴とし、さらに、前記杭打機を用いた貫入量の検出方法で検出した貫入量と、前記回転杭の螺旋状の羽根のピッチとが略同一になるように回転杭の回転又は回転杭の押込力を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固い地盤に回転杭を施工する際に回転杭の圧入と引上げとを繰り返し行っても正確な貫入量を検出することができる。また、検出した貫入量に基づいて回転杭の回転を制御することにより、特に、貫入量と羽根ピッチとが同一になるように回転杭の回転又は回転杭の押込力を制御することにより、周囲の地盤への影響を最小限に抑えて効率よく回転杭を施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で使用する杭打機の一例を示す側面図である。
【図2】深度と回転数との関係を示す説明図である。
【図3】リーダの撓みを示す説明図である。
【図4】圧入を繰り返したときの回転信号のずれを示す説明図である。
【図5】深度信号と回転信号との関係を示す説明図である。
【図6】補助回転数を使用したときの深度信号と回転信号との関係の一例を示す説明図である。
【図7】補助回転数を使用したときの深度信号と回転信号との関係の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明は、杭打機を使用して先端部あるいは先端部及び杭軸部に螺旋状の羽根を備えた鋼管杭、いわゆる回転杭を地中に圧入する際の貫入量を検出する方法である。図1に示すように、先端部に螺旋羽根10aを有する回転杭10を圧入する杭打機11は、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に設けられたフロントブラケット15に起伏可能に設けられたリーダ16と、該リーダ16を後方から支持する起伏シリンダ17と、前記リーダ16に昇降可能に設けられたオーガドライブ18と、該オーガドライブ18を昇降用チェーン19を介して昇降させる昇降用モータ20と、上部旋回体13の前後左右にそれぞれ設けられたジャッキ装置21と、上部旋回体13に設けられた運転室22及びエンジンや油圧ユニットを収納した機器室23とを備えている。
【0016】
さらに、前記リーダ16の上部に配置されている昇降用チェーン19の上部従動スプロケットには、該上部従動スプロケット24の回転状態をロータリーエンコーダで検出することによって回転杭10の深度を計測するための深度検出器が設けられるとともに、前記オーガドライブ18には、駆動モータの駆動力を回転杭10に伝達する歯車の歯を検出したパルスを回転信号としてカウントすることによって回転杭10の回転数を計測するための回転数検出器が設けられている。これらの検出器で検出した深度及び回転数は、運転室22に設けられた制御装置にそれぞれ伝達され、深度及び回転数に基づいて貫入量が算出される。また、制御装置には、駆動モータの油圧や電流を検出することによって計測される回転トルクなどの各種データも伝達されている。
【0017】
オーガドライブ18は、運転室22に設けられた操作レバーを正転(圧入方向)位置、逆転(引き上げ方向)位置及び停止位置に切り替えることによって作動し、操作レバーを正転位置にしてオーガドライブ18で回転杭10を螺旋羽根10aのねじ込み方向に回転させることにより、回転杭10の圧入を行う。このとき、定常的には、昇降用モータ20の駆動力は使用せず、螺旋羽根10aの回転による推進力によって回転杭10を圧入する。一般的に、軟らかい地盤では回転杭10の回転を速くし、固い地盤では回転杭10の回転を遅くして掘削速度を調整する。このように螺旋羽根10aの回転により生じる推力で回転杭10を圧入することにより、貫入量と螺旋羽根10aの羽根ピッチとが略同一になるように施工することができ、周辺の地盤に悪影響を及ぼすことなく、回転杭10を圧入することができる。また、地盤が固くて螺旋羽根10aの推進力では十分に回転杭10を圧入できないようなときには、昇降用モータ20を作動させてオーガドライブ18を下降させ、オーガドライブ18による押込力を回転杭10に加えて回転杭10を圧入することも行われる。
【0018】
回転杭10が正常に圧入されているときには、図2(a)に示すように、回転杭10の螺旋羽根10aのピッチ及び回転杭10の回転数に応じて前記深度と前記回転数とが直線的に変化する。例えば、深度D1から深度D2まで掘進したときの回転数の計測(回転信号のカウント)は、点a0,a1,a2,a3での4回となる。
【0019】
一方、図2(b)に示すように、地盤が固くて深度D1から深度D2までの途中、深度Daで操作レバーを逆転位置に切り替えて回転杭を引き上げた後、深度Dbで再び操作レバーを正転位置に切り替えて回転杭の圧入を再開したときには、深度D1から深度D2まで掘進したときの回転信号のカウントは、点b0〜点b7での8回となる。また、図2(c)に示すように、地盤が固くて深度D1から深度D2までの途中の深度Dcで回転杭の圧入が一時的に停止してしまった場合、深度D1から深度D2まで掘進したときの回転信号のカウントは、点c0〜点c5での6回となる。
【0020】
この場合、回転杭の圧入開始から今回の深度計測時までの間の回転杭圧入中に計測された最大深度、すなわち、図2(b)で回転信号をカウントした点b2における深度Da、図2(c)で回転信号をカウントした点c1における深度Dcを、最大深度D0としてそれぞれ記憶しておき、回転信号をカウントするときに新たに計測した回転杭の深度Dと記憶した最大深度D0(各最大深度Da,Dc)とを比較し、計測した深度Dと各最大深度Da,Dcとの関係が、D>Da又はD>Dcとなっているときにのみ深度更新と判断し、回転信号をカウントするとともに最大深度を更新するように設定する。これにより、図2(b)の場合に回転信号をカウントするのは、点b0,点b1,点b2,点b7の4回となり、図2(c)の場合に回転信号をカウントするのは、点c0,点c1,点c4,点c5の4回となるので、図2(a)の場合と同じ計測回数となり、回転杭の正確な回転数を計測することができる。これにより、図2(a),(b),(c)のいずれの状態でも、算出した貫入量の値を同じ値にすることができる。
【0021】
また、昇降用モータ20を作動させずに螺旋羽根10aのねじ込みによる推進力で回転杭10を圧入しながら、回転杭の深度を昇降用チェーン19の上部従動スプロケット24に設けた深度検出器で計測する場合、操作レバーを正転位置にして回転杭を圧入しているときの昇降用チェーン19は、オーガドライブ18の上部側では張った状態になり、オーガドライブ18の下部側では弛んだ状態になっている。したがって、操作レバーを正転位置から停止位置又は逆転位置に切り替えると、オーガドライブ上部側の張った状態の昇降用チェーン19がオーガドライブ下部側の弛んだ状態の昇降用チェーン19を引っ張る力が発生し、オーガドライブ下部側の昇降用チェーン19がリーダ16の後部側を通ってオーガドライブ上部側に移動する。この昇降用チェーン19の移動方向は、深度検出器の深度を増加させる方向であるから、操作レバーを正転位置から停止位置又は逆転位置に切り替えたときに計測した深度が操作レバー切替前より深くなってしまう。
【0022】
さらに、図3に示すように、螺旋羽根10aの推進力によってリーダ16の前部側に位置するオーガドライブ上部側の昇降用チェーン19がリーダ16の上部を前方に引っ張る力として作用するため、昇降用モータ20を作動させずに螺旋羽根10aの推進力で回転杭10を圧入しているときには、リーダ16の上部が前方に撓んだ状態になる。この場合も、操作レバーを正転位置から停止位置又は逆転位置に切り替えると、昇降用チェーンによるリーダ上部の引張力が解放されるため、リーダ16が図3に想像線で示すように直立状態に復元する。このときの昇降用チェーン19の移動方向も、前記同様に、深度検出器の深度を増加させる方向であるから、操作レバー切替時に深度が深く計測されることになる。
【0023】
このように、操作レバーを正転位置から停止位置又は逆転位置に切り替えたときに、図2(b)に破線で示すように計測した深度が前記最大深度を超えると、点bxで回転信号をカウントしてしまうため、深度D1から深度D2までの回転信号のカウント数が5回となり、図2(a)の場合に比べて回転数が多くなり、算出した貫入量は小さな値となってしまう。
【0024】
このため、操作レバーの位置を検出するためのレバー位置検出手段(図示せず)を設け、操作レバーの位置が回転杭の圧入方向の位置、即ち正転位置にあることを前記レバー位置検出手段が検出したときにのみ、前記回転信号のカウントを行うことにより、操作レバーを停止位置又は逆転位置に切り替えた後の前記点bxで回転信号をカウントすることがなくなり、正確な回転数を計測することができ、正確な貫入量を求めることができる。
【0025】
また、回転杭の圧入中に、圧入と引き上げとを繰り返して行うと、深度と回転数との関係が乱れることがある。通常、螺旋羽根10aの回転による圧入と引き上げであるから、圧入と引き上げとを繰り返しても深度と回転数との関係が乱れることはないはずであるが、オーガドライブ18を逆転させて回転杭を引き上げた後、オーガドライブ18を正転させて回転杭を圧入したとき、深度とオーガドライブ18の歯車の位置とにずれが生じ、オーガドライブ18の歯車の位置が同じでも深度が深くなっていることがある。この場合には、逆転前の正転時に計測を済ませたオーガドライブ18の歯車の同じ歯を逆転後の正転時に再び計測してしまうため、一つの歯を二度計測することになる結果、回転数が多く計測されて算出した貫入量が小さな値となってしまう。
【0026】
例えば図4において、図4(a)に示すように、1回目の圧入の際にオーガドライブ18の歯車の一つの歯からのパルスP1で回転信号をカウントしたときに深度D0(最大深度)を計測した後、逆転させて回転杭を一旦引き上げてから2回目の圧入を行ったときに、図4(b)に示すように、オーガドライブ18の歯車の回転が僅かに遅れた場合は、パルスP1と同じ歯を計測したパルスP2のときの深度D1が前記深度D0より深いと判定すると、同じ歯からのパルスを再び回転信号としてカウントすることになり、回転信号が1パルス分、多く計測されてしまう。
【0027】
このとき、あらかじめ深度加算値Dαを設定しておき、図4(c)に示すように、2回目に圧入したときの歯からのパルスP3に対応する深度がD0+Dαを超えていないときには深度更新とは判定せずにパルスP3を回転信号としてカウントしないように設定し、深度がD0+Dαを超えたときに深度更新と判定して歯からのパルスを回転信号としてカウントすることにより、正確な回転数を計測することができる。深度加算値Dαの値は、歯車の歯を計測するタイミングや旋回羽根のピッチなどの条件に応じて設定すればよく、貫入量の算出に問題のない値を設定すればよい。
【0028】
一方、僅かに逆転させただけの場合には、歯車位置と深度との関係が狂うことはほとんどなく、回転信号カウント時に計測した深度が最大深度を超えて深くなっていなければ回転信号をカウントしないので、深度加算値Dαを用いなくても正確な回転数を計測することができる。したがって、逆転させたときの引き上げ量を深度減算値として設定しておき、該深度減算値を最大深度D0から差し引いた深度まで回転杭を引き上げたときに前記深度加算値Dαを用いて回転数を計測することが好ましい。
【0029】
また、深度検出器及び回転数検出器は、共にパルスを検出して深度や回転数を検出しているため、計測される深度Dは、深度検出器のパルス検出に応じて深度Dを更新するので、圧入中に計測される深度Dは、例えば図5に示すように階段状に変化する。通常、回転数検出器のパルス検出周期と深度検出器のパルス検出周期との関係は、回転数検出器のパルス検出周期より深度検出器のパルス検出周期を短く設定し、回転数検出器がパルスを検出したときには、深度検出器が少なくとも1回のパルスを検出して深度Dが更新されているようにしている。
【0030】
しかし、支持層付近の固い地盤に回転杭を圧入するときには、回転数に比べて圧入速度が遅くなり、回転数検出器のパルス検出周期より深度検出器のパルス検出周期が長くなることがある。例えば図5に示すように、回転数検出器がパルスP2を検出したときに深度Dが最大深度D0から更新されていないときが発生する。このように深度更新と回転パルス検出とのタイミングが合わなくなったような場合、深度D0のパルスP1と深度D1のパルスP3の2回分しかカウントされないため、実際の回転数より少なく計測され、算出する貫入値が大きな値となってしまう。
【0031】
この場合は、図6に示すように、補助回転数Knを計測する補助カウンタを設け、深度Dの更新状況を判定しながら回転数を計測するように設定しておく。すなわち、図6において最初に回転数検出器がパルスP0を検出したときは、深度D0(最大深度)に更新された直後なので、通常通りパルスP0が回転数K1(最新回転数)として計測されるとともに、補助カウンタによって補助回転数Knが計測されてKn=1となる。回転数検出器が2回目及び3回目にパルスP1,P2を検出したときは、深度が更新されずに深度D0のままなので回転数としては計測されないが、前記補助カウンタによって補助回転数Knが計測され、この場合は、パルスP1でKn=2、パルスP2でKn=3となる。
【0032】
次に回転数検出器がパルスP3を検出したときには、深度が深度D0から深度D1に更新されているので、深度D0から深度D1までの区間貫入量を補助回転数Knを用いて計算する((D1−D0)/Kn)。算出した区間貫入量があらかじめ設定した貫入量設定値以下の場合は、同じ深度での回転と見なして補助回転数Knを初期値の1にリセットするとともに、前回計測した回転数K1を保持する。一方、算出した区間貫入量があらかじめ設定した貫入量設定値を超えた場合は、前回計測した回転数K1に補助回転数Knを加算し、新たな回転数K2(=K1+Kn)を算出するとともに、補助回転数Knを1にリセットする。また、計測した深度が最大深度D0より浅かった場合や、操作レバーが逆転位置に切り替えられたときも、補助回転数Knを保持する(図7参照)。
【0033】
同様に、回転数検出器が検出したパルスP4〜P6のときには、深度が更新されておらず、深度D1のままなので補助回転数がパルスP3〜P6の間に1ずつ加算されてKn=4となる。そして、パルスP7のときには深度D2に更新されているので、深度D1から深度D2までの区間貫入量をKn=4を用いて計算し「(D2−D1)/Kn」、算出した区間貫入量が前記貫入量設定値以下の場合は、補助回転数Knを初期値にリセットして前回計測した回転数K2を保持し、算出した区間貫入量が前記貫入量設定値を超えた場合には、回転数K2に補助回転数Knを加算して新たな回転数K3(=K2+Kn)を算出するとともに、補助回転数Knを初期値にリセットする。図6に示す状態の場合、深度更新のみを回転数の計測(回転信号のカウント)の条件としたときには、パルスP3,P7の2回になるのに対し、各区間貫入量の計算値が貫入量設定値を超えているときには、回転信号をカウント数はパルスP0からパルスP7までの8回となる。
【0034】
以上説明したように、通常の回転杭の圧入操作では、深度更新の有無によって回転数を計測することにより、回転杭の正転、逆転を繰り返しても施工状態を確実に把握できるとともに、各深度ごとの貫入量を正確に検出することができ、支持層への到達を確実に判断することができる。また、操作レバーの位置を検出することにより、リーダ16の撓みや昇降用チェーン19の張り及び弛みにも対応することができる。さらに、あらかじめ深度更新状況を判定するための深度加算値や深度減算値を設定しておくことにより、正転、逆転を繰り返したときの回転数を更に正確に計測することができる。加えて、補助カウンタによって補助回転数を計測するようにしておくことにより、深度更新と回転数検出とのタイミングが合わなくなった場合でも回転数を確実に計測することができる。なお、使用する回転杭は、先端部のみに螺旋羽根を有するものでもよく、先端部及び杭軸部に螺旋羽根を有するものであってもよい。
【0035】
そして、検出した貫入量をモニタやプリンタなどの表示手段に表示し、表示された貫入量を確認しながら杭の圧入を行い、特に、必要に応じて昇降用モータ20を作動させて回転杭10に押込力や引上力を追加して検出した貫入量と羽根のピッチとが略同一になるように管理することにより、周囲の地盤への影響を最小限に抑えて効率よく回転杭を施工することができる。
【符号の説明】
【0036】
10…回転杭、10a…螺旋羽根、11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…フロントブラケット、16…リーダ、17…起伏シリンダ、18…オーガドライブ、19…昇降用チェーン、20…昇降用モータ、21…ジャッキ装置、22…運転室、23…機器室、24…上部従動スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも先端部に螺旋状の羽根を備えた回転杭を杭打機のリーダに沿って昇降するオーガで回転させることによって地中に圧入する際に計測した前記回転杭の回転数と回転杭の深度との関係から貫入量を求めるにあたり、新たに計測した回転杭の深度が、回転杭の圧入開始から今回の深度計測時までの間の回転杭圧入中に計測された最大深度を超えて深くなっているときにのみ、回転杭の回転数を計測することを特徴とする杭打機を用いた貫入量の検出方法。
【請求項2】
前記回転杭の回転数の計測は、前記オーガを操作する操作レバーの位置が回転杭の圧入方向の位置になっているときにのみ行うことを特徴とする請求項1記載の杭打機を用いた貫入量の検出方法。
【請求項3】
前記回転杭の回転数の計測は、回転杭圧入中の前記最大深度にあらかじめ設定した深度加算値を加えた深度を超えて深くなったときに行うことを特徴とする請求項1又は2記載の杭打機を用いた貫入量の検出方法。
【請求項4】
前記回転杭の最大深度更新時における前記回転数を最新回転数として記憶するとともに、該最新回転数からの回転数を補助カウンタで補助回転数として計測し、今回計測した回転杭の深度が前記最大深度を超えて深くなったときに、今回計測した深度と前記最大深度と前記補助回転数とから区間貫入量を算出し、算出した前記区間貫入量があらかじめ設定された貫入量設定値以下のときには前記最新回転数を保持するとともに前記補助回転数を初期値にリセットし、算出した区間貫入量が前記貫入量設定値を超えたときに前記補回転数を前記最新回転数に加算して新たな最新回転数を算出して記憶するとともに、前記補助回転数を初期値にリセットすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の杭打機を用いた貫入量の検出方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の杭打機を用いた貫入量の検出方法で検出した貫入量に基づいて回転杭の回転又は回転杭の押込力を制御することを特徴とする回転杭の施工方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の杭打機を用いた貫入量の検出方法で検出した貫入量と、前記回転杭の螺旋状の羽根のピッチとが略同一になるように回転杭の回転又は回転杭の押込力を制御することを特徴とする回転杭の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−62623(P2012−62623A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205348(P2010−205348)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】