説明

杭材供給装置及び杭材供給方法

【課題】杭材の好適な供給を可能にする杭材供給装置及び杭材供給方法を実現する。
【解決手段】杭材供給装置10は、旋回可能なベース部3、回動可能で伸縮可能なブーム4、回転可能な先端側ベース部5、揺動可能なチャック支持部6、回転可能で杭材Pを把持可能なチャック装置7を備えており、各部の動作を組み合わせることで、様々な移動制限を避けつつ、杭材Pの移動軌跡を小さくするように杭材Pを所定位置(杭圧入機30)に好適に近付けて供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に杭材を埋設する機器に杭材を供給する杭材供給装置及び杭材供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭材供給装置として、装置の後方に搬送された杭材をブームの先端側に設けられている保持体で挟持し、ブームの伸縮や回動を伴う搬送動作を行うことで、装置の前方に設置されている杭圧入機に対して杭材を供給するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−33459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の場合、杭材供給装置が杭材を搬送して杭圧入機に供給する規定の動作を行う際、ブームやブームに挟持されている杭材の移動範囲に障害物があると、杭材の供給が困難になることがある。特に、杭材の大型化・長尺化に伴い作業機械が大型化したり、作業範囲が拡大したりすると、杭材の供給がより一層困難になるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、杭材の好適な供給を可能にする杭材供給装置及び杭材供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、杭材供給装置であって、
既設の杭列上に設置される基台と、
前記基台の上面に鉛直方向を軸心として旋回可能に設けられたベース部と、
前記ベース部に基端側が水平方向を軸心として回動可能に設けられた伸縮可能なブームと、
前記ブームの先端側に、そのブームの伸縮方向を軸心として回転可能に設けられた先端側ベース部と、
前記先端側ベース部に、前記ブームの伸縮方向と直交する方向を軸心として揺動可能に設けられたチャック支持部と、
前記チャック支持部に回転可能に設けられ、杭材を把持可能とするチャック装置と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の杭材供給装置を用いて、杭材を前記杭列に沿う所定位置に供給する杭材供給方法であって、
前記チャック装置で杭材を把持した後、前記ブームをその伸縮方向にほぼ鉛直となるまで回動させる際に、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が鉛直となる姿勢に切り替え、
次いで、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作によって、前記杭材を所定位置側に配し、
次いで、前記杭材を前記杭列方向に沿って下降させるように前記ブームを回動させる際に、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材の鉛直姿勢を維持しつつ、前記杭材を所定位置に位置合わせするように供給することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の杭材供給装置を用いて、杭材を前記杭列に沿う所定位置に供給する杭材供給方法であって、
前記チャック装置で杭材を把持した後、前記ブームをその伸縮方向にほぼ水平となるまで回動させる際に、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が前記ブームの下方の配置で前記ブームと平行になる姿勢に切り替え、
次いで、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作によって、前記杭材が前記ブームの上方の配置で前記ブームと平行になるように切り替え、
次いで、前記ブームをその伸縮方向にほぼ鉛直となるまで回動させる間、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が水平且つ前記杭列と平行になる姿勢を維持させ、
次いで、前記杭材を前記杭列方向に沿って下降させるように前記ブームを回動させる際に、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が鉛直となる姿勢に切り替えつつ、前記杭材を所定位置に位置合わせするように供給することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の杭材供給装置を用いて、杭材を前記杭列に沿う所定位置に供給する杭材供給方法であって、
前記チャック装置で杭材を把持した後、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作によって前記杭材を前記杭列に近接させる際に、前記ブームの回動動作と、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が水平且つ前記杭列と平行になる姿勢を維持させ、
次いで、前記杭材を上昇させるように前記ブームを回動させる際に、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作と、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が鉛直となる姿勢に切り替えつつ、前記杭材を所定位置に位置合わせするように供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、杭材供給装置は、杭列上に設置される基台と、基台の上面に旋回可能に設けられたベース部と、ベース部に基端側が回動可能に設けられたブームと、ブームの先端側に回転可能に設けられた先端側ベース部と、先端側ベース部に揺動可能に設けられたチャック支持部と、チャック支持部に回転可能に設けられて杭材を把持可能とするチャック装置と、を備えており、各部が独立して動作するので、各部の動作を組み合わせることで、チャック装置で把持した杭材を様々な移動経路を通じて、所定位置に供給することができる。
具体的には、杭列の側方に障害物などがあって移動制限があり、杭列の上方に移動制限がない場合、ブームをほぼ鉛直向きとして杭材を鉛直向きに配した状態で、ベース部の旋回動作を行うように杭材を移動させれば、ブームや杭材の移動軌跡を小さくして、杭材を好適に所定位置に供給することができる。
また、杭列の上方に障害物などがあって更に杭列の側方に障害物などがあり移動制限がある場合、杭材を水平向きに配した状態で、ブームの回動動作を行うように杭材を移動させれば、杭材の移動軌跡を小さくして、杭材を好適に所定位置に供給することができる。
また、杭材供給装置で杭材を所定位置に供給するために杭列側に近付ける際に、ブームの上方に障害物などがあって移動制限がある場合、ブームを側方に延出させた状態で杭材を杭列に平行に保ちつつ、ベース部の旋回動作を行うように杭材を移動させれば、その移動制限を避けるように杭材を所定位置に好適に近付けて供給することができる。
特に、伸縮可能なブームを回動させる際に、ブームを縮めるようにすることで、ブームや杭材の移動軌跡を小さくすることができるので、よりコンパクトな動作で杭材を所定位置に好適に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る杭材供給装置を示す側面図(a)と、図1(a)の矢印b方向から矢視した背面図(b)である。
【図2】杭材供給装置を用いた杭材供給方法の実施例1を示す説明図であり、チャック装置が杭材を把持した状態(a)、ブームが上方に回動した状態(b)、ブームがより回動した状態(c)、杭材を鉛直に配した状態(d)である。
【図3】杭材供給装置を用いた杭材供給方法の実施例1を示す説明図であり、杭材を鉛直に配した状態でベース部が旋回した状態(e)、ブームが下方に回動した状態(f)、杭材が杭圧入機に供給された状態(g)である。
【図4】杭材供給装置を用いた杭材供給方法の実施例2を示す説明図であり、チャック装置が杭材を把持した状態(a)、杭材を水平に配した状態(b)、ブームが上方に回動した状態(c)、ブームがほぼ鉛直となるまで回動した状態(d)である。
【図5】杭材供給装置を用いた杭材供給方法の実施例2を示す説明図であり、ブームが下方に回動した状態(e)、ブームがより下方に回動した状態(f)、杭材が杭圧入機に供給された状態(g)である。
【図6】杭材供給装置を用いた杭材供給方法の実施例3を示す説明図であり、上面図(a)と、正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態たる杭材供給装置及び杭材供給装置を用いる杭材供給方法を、図面を参照して説明する。
【0013】
杭材供給装置10は、図1に示すように、鋼矢板などの複数の杭材が地盤に圧入されてなる既設の杭列P上に設置される基台2と、基台2の上面に旋回可能に設けられたベース部3と、ベース部3に基端側の一端部41が回動可能に設けられたブーム4と、ブーム4の先端側の他端部42に回転可能に設けられた先端側ベース部5と、先端側ベース部5に揺動可能に設けられたチャック支持部6と、チャック支持部6に回転可能に設けられて杭材を把持可能とするチャック装置7等を備えている。
【0014】
基台2は、杭列Pの上端側を掴んで支持するクランプ装置1…を備える下台21と、クランプ装置1…を備えるとともに下台21に対してスライド可能な上台22と、を備えている。
下台21と上台22が備えるクランプ装置1…は、図示しない駆動源によって駆動され、杭列Pの上端側を掴むことで杭材供給装置10を杭列P上に設置し、また、所定の駆動に応じて杭材供給装置10が杭列P上を自走するように移動可能とする。
上台22の上方には、旋回ベアリングを有する旋回駆動機構部23が設けられており、この旋回駆動機構部23を介して、上台22(基台2)にベース部3が配設されている。
【0015】
ベース部3は、旋回駆動機構部23による旋回駆動によって鉛直方向を軸心として旋回可能に、基台2の上面に設けられている。
また、ベース部3は、ブーム4の一端部41を回動可能に軸支しており、4箇所に備えられたブーム回転モータ34の駆動により、ブーム4を水平方向を軸心に回動させる。
なお、ここでの鉛直方向、水平方向とは、厳密な角度(例えば、真の水平を基準とする90度、0度)に沿う方向であることが好ましいが、本発明を実施する上で、装置の駆動や動作に影響がない程度であれば、数度のゆとりを有する角度範囲を含む方向であってもよい。
【0016】
ブーム4は、回動駆動機構部としてのブーム回転モータ34の駆動によって回動可能にベース部3に設けられている。
このブーム4は、図示しない駆動源によって、その延在方向に伸縮可能とされている。
また、ブーム4の他端部42には、回転ベアリングを有する回転駆動機構部45が設けられており、この回転駆動機構部45を介して、ブーム4に先端側ベース部5が配設されている。
【0017】
先端側ベース部5は、回転駆動機構部45による回転駆動によってブーム4の伸縮方向を軸心として回転可能に、ブーム4の他端部42に設けられている。
また、先端側ベース部5は、チャック支持部6を揺動可能に軸支しており、チャック角度調整機構部56よる揺動駆動により、チャック支持部6を揺動させる。
【0018】
チャック支持部6は、チャック角度調整機構部56の揺動駆動によって、ブーム4の伸縮方向と直交する方向を軸心として揺動可能に先端側ベース部5に設けられている。
また、チャック支持部6には、回転ベアリングを有する回転駆動機構部67が設けられており、この回転駆動機構部67を介して、チャック支持部6にチャック装置7が配設されている。
【0019】
チャック装置7は、回転駆動機構部67による回転駆動によってチャック支持部6に回転可能に設けられている。
このチャック装置7は、図示しない駆動源により開閉駆動されて、杭材を放したり掴んだりするようになっている。
【0020】
このような構成の杭材供給装置10は、ベース部3の旋回動作やブーム4の回動及び伸縮動作によりチャック装置7が届く範囲に置かれた杭材をチャック装置7で把持することができる。なお、置かれた杭材の向きに応じて、先端側ベース部5の回転動作と、チャック支持部6の揺動動作と、チャック装置7の回転動作とを組み合わせて行うことで、チャック装置7の向きや角度を杭材に合わせて、その杭材を掴むことができる。
また、杭材供給装置10は、ベース部3の旋回動作やブーム4の回動及び伸縮動作によりチャック装置7が届く範囲に杭材を供給することができる。なお、所定の供給位置に応じて、先端側ベース部5の回転動作と、チャック支持部6の揺動動作と、チャック装置7の回転動作とを組み合わせて行うことで、チャック装置7に把持された杭材の姿勢を調整して、その杭材を所定の供給位置に好適に位置合わせすることができる。
【0021】
次に、本発明に係る杭材供給方法について説明する。
【0022】
(実施例1)
図2、図3に示すように、複数の杭材Pが地盤に圧入されてなる既設の杭列P上に、杭材供給装置10が設置されており、杭列Pの後端側となる杭材供給装置10の後方に杭搬送機20が設置され、杭列Pの前端側となる杭材供給装置10の前方に杭圧入機30が設置されている。
なお、杭搬送機20は、杭材Pを搭載し、杭列P上を自走して搬送する装置であり、杭圧入機30は、杭列P上を自走して、杭列Pに杭材Pを連設する装置であり、これら杭搬送機20と杭圧入機30の構成や動作は従来公知のものと同様であるので、ここでは詳述しない。
【0023】
まず、図2(a)に示すように、ブーム4を後方に向け、先端側を下ろすように回動させて、杭搬送機20に搭載されている杭材Pを、チャック装置7で把持する。
【0024】
チャック装置7で杭材Pを把持した後、図2(b)(c)(d)に示すように、ブーム4をその伸縮方向にほぼ鉛直となるまで回動させる。このブーム4をほぼ鉛直となるまで回動させる際に、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作と、先端側ベース部5に対するチャック支持部6の揺動動作と、チャック支持部6に対するチャック装置7の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、杭材Pが鉛直となる姿勢に切り替える。なお、先端側ベース部5の回転動作と、チャック支持部6の揺動動作と、チャック装置7の回転動作との何れかを組み合わせて行う場合、それぞれの動作を連動するように同じタイミングで行ってもよく、また、各動作を個々に段階的に行ってもよい。
特に、ブーム4をほぼ鉛直となるまで回動させる際、そのブーム4を縮めつつ回動させることで、ブーム4や杭材Pの移動軌跡を小さくすることができる。
【0025】
次いで、図3(e)に示すように、基台2に対するベース部3の旋回動作によって、ブーム4の先端側のチャック装置7に把持された杭材Pを、前方の所定位置である杭圧入機30側に配するように向ける。
この際、ブーム4がほぼ鉛直向きであり、杭材Pが鉛直向きになっているので、ベース部3の旋回動作によるブーム4や杭材Pの移動軌跡を小さくすることができる。
【0026】
次いで、図3(f)(g)に示すように、杭材Pを杭列P方向に沿って下降させるようにブーム4を回動させる際に、ブーム4の伸縮動作と、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作と、先端側ベース部5に対するチャック支持部6の揺動動作と、チャック支持部6に対するチャック装置7の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、杭材Pの鉛直姿勢を維持しつつ、杭材Pを杭圧入機30に位置合わせするように供給する。
特に、ベース部3の旋回動作によってチャック装置7に把持された杭材Pを杭圧入機30側に向けた際に(図3(e)参照)、その杭材Pを杭列P上で鉛直な姿勢としていれば、ブーム4を杭列P方向に沿って下降させる回動の際に、ブーム4の伸縮動作と、チャック支持部6の揺動動作との組み合わせによって、杭材Pの鉛直姿勢を維持しつつ、杭材Pを杭圧入機30に位置合わせすることができる。
【0027】
そして、図3(g)に示すように、杭材供給装置10により杭圧入機30のチャック部に供給された杭材Pは、杭圧入機30によって地中に圧入される。
【0028】
このように、杭材供給装置10で杭材Pを杭圧入機30に供給する際に、杭列Pの左右側に障害物などがあって移動制限があり、杭列Pの上側に移動制限がない場合、ブーム4をほぼ鉛直向きとして杭材Pを鉛直向きに配した状態で、ベース部3の旋回動作を行うように杭材Pを移動させれば、ブーム4や杭材Pの移動軌跡を小さくして、杭材Pを好適に杭圧入機30に供給することができる。
また、杭材Pを鉛直向きに配した状態で移動させるので、杭材Pが長尺化しても、チャック装置7より上部の寸法を長くして対応できるので、作業機械を大型化する必要がない。
【0029】
(実施例2)
図4、図5に示すように、複数の杭材Pが地盤に圧入されてなる既設の杭列P上に、杭材供給装置10が設置されており、杭列Pの後端側となる杭材供給装置10の後方に杭搬送機20が設置され、杭列Pの前端側となる杭材供給装置10の前方に杭圧入機30が設置されている。
【0030】
まず、図4(a)に示すように、ブーム4を後方に向け、先端側を下ろすように回動させて、杭搬送機20に搭載されている杭材Pを、チャック装置7で把持する。
【0031】
チャック装置7で杭材Pを把持した後、図4(b)に示すように、ブーム4をその伸縮方向にほぼ水平となるまで回動させる。このブーム4をほぼ水平となるまで回動させる際に、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作と、先端側ベース部5に対するチャック支持部6の揺動動作と、チャック支持部6に対するチャック装置7の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、杭材Pがブーム4の下方の配置でブーム4と平行になる姿勢に切り替える。なお、先端側ベース部5の回転動作と、チャック支持部6の揺動動作と、チャック装置7の回転動作との何れかを組み合わせて行う場合、それぞれの動作を連動するように同じタイミングで行ってもよく、また、各動作を個々に段階的に行ってもよい。
【0032】
次いで、図4(b)に示すように、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作によって、杭材Pがブーム4の上方の配置でブーム4と平行になるように切り替える。
この際、ブーム4がほぼ水平向きであり、杭材Pが水平向きになっているので、先端側ベース部5の回転動作による杭材Pの移動軌跡を小さくすることができる。
【0033】
次いで、図4(c)(d)に示すように、ブーム4をその伸縮方向にほぼ鉛直となるまで回動させる間、基台2に対するベース部3の旋回動作と、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作と、先端側ベース部5に対するチャック支持部6の揺動動作と、チャック支持部6に対するチャック装置7の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、杭材Pが水平且つ杭列Pと平行になる姿勢を維持させる。
特に、ブーム4をほぼ鉛直となるまで回動させる際、そのブーム4を縮めつつ回動させることで、ブーム4や杭材Pの移動軌跡を小さくすることができる。
【0034】
次いで、図5(e)(f)(g)に示すように、杭材Pを杭列P方向に沿って下降させるようにブーム4を回動させる際に、ブーム4の伸縮動作と、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作と、先端側ベース部5に対するチャック支持部6の揺動動作と、チャック支持部6に対するチャック装置7の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、杭材Pが鉛直となる姿勢に切り替えつつ、杭材Pを所定位置である杭圧入機30に位置合わせするように供給する。
特に、杭材Pがブーム4の上方の配置で、そのブーム4と平行になるように切り替えた際に(図4(b)参照)、ブーム4の延在方向を杭列P方向に合わせ、杭列P上に配した杭材Pの延在方向を杭列P方向に合わせていれば、ブーム4を杭列P方向に沿って下降させる回動の際に、ブーム4の伸縮動作と、チャック支持部6の揺動動作との組み合わせによって、杭材Pを鉛直姿勢に切り替えつつ、杭材Pを杭圧入機30に位置合わせすることができる。
【0035】
そして、図5(g)に示すように、杭材供給装置10により杭圧入機30のチャック部に供給された杭材Pは、杭圧入機30によって地中に圧入される。
【0036】
このように、杭材供給装置10で杭材Pを杭圧入機30に供給する際に、杭列Pの上方に障害物などがあって更に杭列の側方に障害物などがあり移動制限がある場合、杭材Pを水平向きに配した状態で、ブーム4の回動動作を行うように杭材Pを移動させれば、杭材Pの移動軌跡を小さくして、杭材Pを好適に杭圧入機30に供給することができる。
また、杭材Pが大型化しても、作業機械の真上(杭列Pの中心線上)を移動させるので、杭材Pが幅方向に大型化する場合でも、移動軌跡を最小限に抑えることができる。
【0037】
(実施例3)
図6に示すように、複数の杭材Pが地盤に圧入されてなる既設の杭列P上に、杭材供給装置10が設置されている。
【0038】
まず、図6(a)に示すように、ブーム4を側方に向け、先端側を下ろすように回動させて、杭列Pの側方に搬送されて置かれた杭材Pを、チャック装置7で把持する。
【0039】
チャック装置7で杭材Pを把持した後、図6(a)に示すように、基台2に対するベース部3の旋回動作によって杭材Pを杭列Pに近接させる際に、ブーム4の回動動作と、ブーム4の伸縮動作と、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作と、先端側ベース部5に対するチャック支持部6の揺動動作と、チャック支持部6に対するチャック装置7の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、杭材Pが水平且つ杭列Pと平行になる姿勢を維持させる。なお、ブーム4の回動動作と、ブーム4の伸縮動作と、先端側ベース部5の回転動作と、チャック支持部6の揺動動作と、チャック装置7の回転動作との何れかを組み合わせて行う場合、それぞれの動作を連動するように同じタイミングで行ってもよく、また、各動作を個々に段階的に行ってもよい。
特に、ブーム4を杭列P寄りに回動させる際、そのブーム4を縮めつつ回動させることで、ブーム4や杭材Pの移動軌跡を小さくすることができる。
【0040】
次いで、杭材Pを上昇させるようにブーム4を回動させる際に、基台2に対するベース部3の旋回動作と、ブーム4の伸縮動作4と、ブーム4に対する先端側ベース部5の回転動作と、先端側ベース部5に対するチャック支持部6の揺動動作と、チャック支持部6に対するチャック装置7の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、チャック装置7に把持された杭材Pを所定位置(杭圧入機)側に配するように、その杭材Pが鉛直となる姿勢に切り替えつつ、杭材Pを所定位置(杭圧入機)に位置合わせするように供給することができる。
【0041】
このように、杭材供給装置10で杭材Pを所定位置(杭圧入機)に供給するために、杭材Pを杭列P側に近付ける際に、ブーム4の上方に障害物などがあって移動制限がある場合、ブーム4を側方に延出させた状態で、杭材Pを杭列Pに対し平行に保ちつつ、ベース部3の旋回動作を行うように杭材Pを移動させれば、その移動制限を避けるように杭材Pを所定位置(杭圧入機)に好適に近付けて供給することができる。
特に、杭材Pを杭列Pと平行になる姿勢を維持して、杭列P側に近付けるようにすれば、杭材Pの移動軌跡を小さくして、所定位置(杭圧入機)に好適に供給することができる。
【0042】
以上のように、本発明に係る杭材供給装置10は、旋回可能なベース部3、回動可能で伸縮可能なブーム4、回転可能な先端側ベース部5、揺動可能なチャック支持部6、回転可能で杭材Pを把持可能なチャック装置7を備えており、各部が独立して動作するので、各部の動作を組み合わせることで、様々な移動制限を避けるように杭材Pを所定位置(杭圧入機30)に好適に近付けて供給することができる。つまり、施工箇所の移動制限に応じて、杭材Pを適切な移動経路で最適に移動させて、所定位置(杭圧入機30)に供給することができる。
特に、伸縮可能なブーム4を回動させる際に、ブーム4を縮めるようにすることで、ブーム4や杭材Pの移動軌跡を小さくすることができるので、よりコンパクトな動作で杭材Pを所定位置(杭圧入機30)に好適に供給することができる。
【0043】
なお、以上の実施形態(実施例1、実施例2)においては、杭列P上を自走する杭搬送機20によって、杭材供給装置10の後方に杭材Pが搬送されて載置されるように説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、杭材Pは任意の位置に任意の向きに載置されてもよく、その杭材Pの位置や向きに応じて、杭材供給装置10の各部が動作することで、チャック装置7が杭材Pを把持すればよい。
【0044】
また、本実施形態における杭材供給方法の実施例1、実施例2、実施例3での動作の一部を組み合わせて、杭材Pを移動させて所定位置(杭圧入機30)に供給するようにしてもよい。
【0045】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 クランプ装置
2 基台
21 下台
22 上台
23 旋回駆動機構部
3 ベース部
34 ブーム回転モータ(回動駆動機構部)
4 ブーム
41 一端部(基端)
42 他端部(先端)
45 回転駆動機構部
5 先端側ベース部
56 チャック角度調整機構部
6 チャック支持部
67 回転起動機構部
7 チャック装置
10 杭材供給装置
20 杭搬送機
30 杭圧入機
P 杭列
杭材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の杭列上に設置される基台と、
前記基台の上面に鉛直方向を軸心として旋回可能に設けられたベース部と、
前記ベース部に基端側が水平方向を軸心として回動可能に設けられた伸縮可能なブームと、
前記ブームの先端側に、そのブームの伸縮方向を軸心として回転可能に設けられた先端側ベース部と、
前記先端側ベース部に、前記ブームの伸縮方向と直交する方向を軸心として揺動可能に設けられたチャック支持部と、
前記チャック支持部に回転可能に設けられ、杭材を把持可能とするチャック装置と、
を備えることを特徴とする杭材供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の杭材供給装置を用いて、杭材を前記杭列に沿う所定位置に供給する杭材供給方法であって、
前記チャック装置で杭材を把持した後、前記ブームをその伸縮方向にほぼ鉛直となるまで回動させる際に、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が鉛直となる姿勢に切り替え、
次いで、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作によって、前記杭材を所定位置側に配し、
次いで、前記杭材を前記杭列方向に沿って下降させるように前記ブームを回動させる際に、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材の鉛直姿勢を維持しつつ、前記杭材を所定位置に位置合わせするように供給することを特徴とする杭材供給方法。
【請求項3】
請求項1に記載の杭材供給装置を用いて、杭材を前記杭列に沿う所定位置に供給する杭材供給方法であって、
前記チャック装置で杭材を把持した後、前記ブームをその伸縮方向にほぼ水平となるまで回動させる際に、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が前記ブームの下方の配置で前記ブームと平行になる姿勢に切り替え、
次いで、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作によって、前記杭材が前記ブームの上方の配置で前記ブームと平行になるように切り替え、
次いで、前記ブームをその伸縮方向にほぼ鉛直となるまで回動させる間、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が水平且つ前記杭列と平行になる姿勢を維持させ、
次いで、前記杭材を前記杭列方向に沿って下降させるように前記ブームを回動させる際に、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が鉛直となる姿勢に切り替えつつ、前記杭材を所定位置に位置合わせするように供給することを特徴とする杭材供給方法。
【請求項4】
請求項1に記載の杭材供給装置を用いて、杭材を前記杭列に沿う所定位置に供給する杭材供給方法であって、
前記チャック装置で杭材を把持した後、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作によって前記杭材を前記杭列に近接させる際に、前記ブームの回動動作と、前記ブームの伸縮動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が水平且つ前記杭列と平行になる姿勢を維持させ、
次いで、前記杭材を上昇させるように前記ブームを回動させる際に、前記基台に対する前記ベース部の旋回動作と、前記ブームに対する前記先端側ベース部の回転動作と、前記先端側ベース部に対する前記チャック支持部の揺動動作と、前記チャック支持部に対する前記チャック装置の回転動作の、少なくとも1つの動作を行うことにより、前記杭材が鉛直となる姿勢に切り替えつつ、前記杭材を所定位置に位置合わせするように供給することを特徴とする杭材供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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