説明

杭穴掘削ヘッド

【課題】礫などの異物が出現した場合であっても、掘削ヘッド中に挟まれず、掘削作業を中断させることがない。
【解決手段】杭穴掘削ヘッド30は、ヘッド本体1の水平軸12、12に掘削腕15、15を揺動自在に取り付けて構成する。ヘッド本体1の下面6aに高さHの固定掘削刃10、10を、間隔Wを空けて固定する。掘削腕15の下端10aに、高さHの腕掘削刃24、24を、隔Wを空けて固定する。予め地盤調査をして、最大径Dの礫などの異物が存在することが分かった場合、「固定掘削刃11の高さH及び間隔W>D」「腕掘削刃24の高さH及び間隔W>D」の少なくとも1方の条件を満たすように構成する。また、「腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の水平方向の距離L>D」「腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10先端11の鉛直方向の距離h>D」の条件を満たすことが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、この発明は、建築、土木等の分野で杭基礎工事として杭穴掘削を行う掘削ロッドの掘削ヘッドおよびこれを使用する杭穴掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削ロッドに連結するヘッド本体に螺旋翼を形成し、螺旋翼の下端に掘削刃を固定した掘削ヘッドでは、その掘削刃としては、一般に、刃先の角度(掘削角度)が浅く平板形状で、全数の掘削刃の刃先が地盤に対して同じ深さ(略水平位置)に配置されていた(特許文献1)。この掘削ヘッドを回転しながら掘削刃の全部の先端(刃先)がほぼ同時に接地し、杭穴の底を掘削していた。この場合、ヘッド本体の下端から掘削刃の先端までの距離、即ち掘削刃の長さは、掘削径50〜80cm程度の場合、通常10cm程度に設定してあった。なお、この掘削ヘッドの場合、径を拡大して掘削するために、可動して外方に突出する拡底掘削刃を取り付けていた。
【0003】
また、土質により異なる掘削刃を使用し、地盤の掘削性を良くして掘削効率を高める工夫もなされていた(非特許文献1)。
【0004】
また、掘削ヘッド本体に揺動自在に掘削腕を取り付けた掘削ヘッドの提案されている(特許文献2)。この掘削ヘッドでは、礫がある場合において礫の最大寸法の2倍の長さに固定掘削刃、補助掘削刃を設定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平7−50468
【特許文献2】特開2005−307496
【非特許文献1】社団法人コンクリートパイル建設技術協会、「既製コンクリート杭の施工管理」、第5版、社団法人コンクリートパイル建設技術協会、2008年6月、274頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
玉石などの粒径の大きなものが混じる地盤での杭穴掘削において、従来の掘削ヘッドの内、螺旋翼を有する掘削ヘッドの場合(特許文献1、非特許文献1)、通常は、玉石などの粒径の大きなものがあると、固定掘削刃に玉石などが絡み、固定掘削刃が接地せず、掘削不能に陥る場合もあった。
【0007】
また、従来の掘削ヘッドの内、掘削腕を有する掘削ヘッドの場合(特許文献2)、通常は、礫等があると掘削腕により、礫等は杭穴中央部に寄せられて、ヘッド本体と掘削腕の間に位置し、杭穴底の中央(ヘッド本体の中心辺り)で転がりながら、掘削腕の補助掘削刃と固定掘削刃で、杭穴の掘削ができた。しかし、礫や玉石などの最大粒径が掘削刃間隔以上となると、礫や玉石などが掘削刃の間に挟まったり絡んだりして、掘削刃の先端が杭穴底(掘削面)に設置せず、掘削できない場合があった。
【0008】
従って、掘削刃間に異物が挟まって掘削速度が低下したときは、その程度によりそのまま続行し、あるいは一旦掘削ヘッドを引き上げるなどして、その異物を除去して掘削を再開する場合もあった。いずれにしても杭穴掘削時間が余分にかかり、所要工程が大幅に遅れることもあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこでこの発明では、予めの地盤調査で判明した最大粒径Dに対して、掘削ヘッドの固定掘削刃の高さH及び間隔W、腕掘削刃の高さH及び間隔W、腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の水平距離L、鉛直距離hを定めたので、前記問題点を解決した。
【0010】
即ちこの発明は、掘削ロッドの下端に連結する連結部を有するヘッド本体に設けた水平軸に、掘削腕を揺動自在に取り付けなり、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(a) 前記ヘッド本体の下面に下方に向けて、長さHの固定掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(b) 前記掘削腕の下端に、下方に向けて、長さHの腕掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(c) 前記腕掘削刃は、鉛直に対して先端が外方を向くように斜めに配置され、前記腕掘削刃の先端と、前記固定掘削刃の先端との距離で、前記水平軸方向の距離をL とする。
(d) 前記固定掘削刃の下端から、前記腕掘削刃の先端までの距離をhとする。
(e) 掘削予定の地盤の土質調査により判明した最大粒径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、以下の「ア.の条件」及び/又は「イ.の条件」を満たす。
ア.固定掘削刃の高さH及び間隔W>最大粒径D
イ.腕掘削刃の高さH及び間隔W>最大粒径D
【0011】
また、前記において、掘削予定の地盤の土質調査により判明した最大粒径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、前記「ア.の条件」及び「イ.の条件」を満たし、かつ以下の条件以下を満たすことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
ウ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の水平方向の距離L>最大粒径D
エ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の鉛直方向の距離h>最大粒径D
【0012】
また、他の発明は、以下(1)〜(5)の手順で、杭穴を掘削することを特徴とする杭穴掘削方法である。
(1) 掘削ロッドの下端に連結する連結部を有するヘッド本体に設けた水平軸に、掘削腕を揺動自在に取り付けなり、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドを用意する。
(a) 前記ヘッド本体の下面に下方に向けて、長さHの固定掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(b) 前記掘削腕の下端に、下方に向けて、長さHの腕掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(c) 前記腕掘削刃は、鉛直に対して先端が外方を向くように斜めに配置され、前記腕掘削刃の先端と、前記固定掘削刃の先端との距離で、前記水平軸方向の距離をL とする。
(d) 前記固定掘削刃の下端から、前記腕掘削刃の先端までの距離をhとする。
(2) 予め、掘削予定の地盤の土質調査により最大粒径Dを決定する。
(3) 前記最大外径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、以下の「ア.の条件」及び/又は「イ.の条件」を満たすように、前記掘削ヘッドを構成する。
ア.固定掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
イ.腕掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
(4) 地上から、前記選択した掘削ヘッドを回転しながら地盤を掘削する。
(5) 掘削途中で、外径Dの礫類が生じた場合には、該礫類を、杭穴底で転がしながら、前記掘削ヘッドで掘削する。
【0013】
また、他の発明は、以下(1)〜(5)の手順で、杭穴を掘削することを特徴とする杭穴掘削方法である。
(1) 掘削ロッドの下端に連結する連結部を有するヘッド本体に設けた水平軸に、掘削腕を揺動自在に取り付けなり、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドを用意する。
(a) 前記ヘッド本体の下面に下方に向けて、長さHの固定掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(b) 前記掘削腕の下端に、下方に向けて、長さHの腕掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(c) 前記腕掘削刃は、鉛直に対して先端が外方を向くように斜めに配置され、前記腕掘削刃の先端と、前記固定掘削刃の先端との距離で、前記水平軸方向の距離をL とする。
(d) 前記固定掘削刃の下端から、前記腕掘削刃の先端までの距離をhとする。
(2) 予め、掘削予定の地盤の土質調査により最大粒径Dを決定する。
(3) 前記最大外径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、以下の「ア.の条件」乃至「エ.の条件」を満たすように、前記掘削ヘッドを構成する。
ア.固定掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
イ.腕掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
ウ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の水平方向の距離L>最大粒径D
エ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の鉛直方向の距離h>最大粒径D
(4) 地上から、前記選択した掘削ヘッドを回転しながら地盤を掘削する。
(5) 掘削途中で、外径Dの礫類が生じた場合には、該礫類を、杭穴底で転がしながら、前記掘削ヘッドで掘削する。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、予め事前の地盤(土質)調査により、掘削する地盤にある礫などの異物の最大径Dに応じて、掘削ヘッドの固定掘削刃の高さH及び間隔W、腕掘削刃の高さH及び間隔W、腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の水平距離L、鉛直距離hを定めたので、礫などの異物が出現した場合であっても、異物が掘削ヘッド中に挟まれることがないので、掘削作業を中断されること無く、計画通りに掘削作業ができる。
【0015】
また、固定掘削刃の間隔W、腕掘削刃の間隔Wを掘削地盤内にある最大粒径D以上とすることで、最大粒径Dの異物が発生したとしても、異物が、両掘削刃の間に挟まることなく、掘削刃間を通過できる。従って、掘削刃先端は杭穴底面(掘削面)に到達でき、掘削効率を低下させること無く掘削を継続して、杭穴を構築できる効果がある。
【0016】
従って、杭穴掘削の遅延が無くなり、杭基礎の築造工期が確実となり、安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明の実施例の掘削ヘッドの非回転状態で、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図2】図2は、同じく右側面図である。
【図3】図3は、この発明の実施例の掘削ヘッドの小径掘削状態で、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図4】図4は、同じく右側面図である。
【図5】図5は、この発明の実施例の掘削ヘッドの大径掘削状態で、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【図6】図6は、同じく右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
掘削ロッド40の下端に連結して、杭穴掘削に使用する杭穴掘削ヘッド30である(図1、図2)。杭穴掘削ヘッド30は、掘削ロッド40に連結する連結部軸5を有するヘッド本体1に設けた水平軸12、12に、掘削腕15、15を揺動自在に取り付けて構成する。さらに、以下の(a)〜(e)のように構成する。
【0019】
(a) ヘッド本体1の下面6aに下方に向けて、高さHの固定掘削刃10、10を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(b) 掘削腕15の下端10aに、下方に向けて、高さHの腕掘削刃24、24を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(c) 腕掘削刃24は、鉛直に対して先端25が外方を向くように斜めに配置されている。この場合、腕掘削刃24の先端25と、固定掘削刃10の先端11との距離で、水平軸12方向の距離をL とする。
(d) 固定掘削刃10の下端11から、腕掘削刃24の先端25までの鉛直方向の距離をhとする。
(e) 予め地盤調査をして、地層内に最大径Dの礫などの異物(通常は、Dは2cm〜10cm程度)が存在することを調査しておく。この場合に、最大径Dに従って、高さH及び間隔W、高さH及び間隔W、水平距離L、鉛直距離hの各寸法を、Dとの関係で、以下のように調節する。
ア.固定掘削刃11の高さH及び間隔W>D
イ.腕掘削刃24の高さH及び間隔W>D
ウ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の水平方向の距離L>D
エ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10先端11の鉛直方向の距離h>D
ここで、条件ア.条件イ.はいずれか一方又は両方の条件を満たすことが必要であるが、条件ウ.エ.は条件を満たすことが望ましい。
【実施例】
【0020】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0021】
1.掘削ヘッド30の実施例
【0022】
(1) ヘッド 本体1は、四角柱状の基部2の上端2aに、掘削ロッドと連結するための連結軸部5を、基部2と軸を一致させて連設し、基部2の下端に連続して、扁平の膨出部6を形成してなる。
基部2の4つの側面を、互いに平行な第1側面3、3aと、互いに平行な第2側面4、4aとする。膨出部6で、基部2の第1側面3、3aと連続した面を第1側面7、7aとし、基部2の第2側面4、4aと連続して、かつ第1側面7、7aと隣接する(反対側の)面を第2側面8、8aとする。すなわち、膨出部6の膨出方向に第2側面8、8aが位置する。したがって、膨出部6の第1側面7、7は扁平面となり、膨出部6は水平方向に膨出して、扁平面の幅が大きくなるように形成される。また、膨出部6の下面6aは、中央部が直線状に形成され、両端部6b、6bが上方に向けて傾斜して形成されている。膨出部6の下面6aの中央部に、地上から杭穴内にセメントミルクなどを吐出するための吐出口13を設けてあり、膨出部6の下面6aで吐出口13の両側に、長さLの固定掘削刃10、10を、先端11、11を下方に向けて、かつ間隔Wを空けて、取付ける。
固定掘削刃10、10の先端11、11はほぼ一直線上に揃えてある。また、固定掘削刃10、10で、吐出口13より第2側面8側に位置する固定掘削刃10、10が、第1側面7a側に先端11を向けて傾斜して形成されている。また、吐出口13より第2側面8a側に位置する固定掘削刃10、10が、第1側面7側に先端11を向けて傾斜して形成されている。
また、基部2及び膨出部6は、下方に向けて第1側面3、3a、第1側面7、7aが互いに近づくような(第2側面4、4a、第2側面8、8aの幅が縮まるような)寸法に設定してある。
【0023】
(2) ヘッド 本体1の基部2の第1側面3、3aに水平軸12、12を形成する。水平軸12は第1側面3、3aで軸が一致してあれば、一体の軸でも、分割された軸でもいずれでも可能である。
水平軸12、12に、掘削腕15の基端部20を、夫々揺動自在に取り付ける。また、水平軸12は掘削腕15を回動できる軸が形成されれば良いので、掘削腕15に水平軸12を設けて、ヘッド 本体1に軸受けを設けても良い(図示していない)。
【0024】
(3) 掘削腕15は、ヘッド本体1側の面を内面16a、内面16aの反対側を外面16とする。
掘削腕15の基端部20で、水平軸12の周りを大径に形成し、中間部21で幅が小さく、先端部22を幅広く形成する。また、両掘削腕15、15は、基端部20、20の内面16a、16aが平行に形成され、中間部21、21は、下方に向けて内面16a、内面16aが互いに近づき、かつ外面16、外面16が近づくように屈曲して形成されている。よって、中間部21の下端を最も近接した形状として、先端部22、22は逆に下方に向けて内面16a、内面16aが遠ざかるように、かつ外面16、外面16も遠ざかるように形成する。
したがって、掘削腕15、15の先端部22、22は外側に向けて開くように形成され、掘削腕15、15の下端部に、開き方向に連続するように、外側に向けて掘削刃24、24を突設する。
【0025】
腕掘削刃24の先端25は、外側を向き、腕掘削刃の外面は、垂直に対して、角度θ1で傾斜して取り付けられている(図2)。また、掘削腕15の下端15aから腕掘削刃24の先端25までの長さをLとし、腕掘削刃24、24の間隔をWとする(図1(a))。
【0026】
また、固定掘削刃10の先端11と、腕掘削刃24の先端25との鉛直方向の距離をhとする(図2)。この場合、腕掘削刃24の刃先25、25は正面視で斜めに揃えて配置されているので、最も上方に位置する腕掘削刃24の先端25と、固定掘削刃10との距離を指す。
また、固定掘削刃10の先端11と、腕掘削刃24の先端25との水平方向の距離(水平軸12方向の距離)をLとする(図2)。この場合、腕掘削刃24の刃先25、25は底面視で斜めに揃えて配置されているので、吐出口13に近い位置の固定掘削刃10と、その固定掘削刃10に最も近い腕掘削刃24との水平距離を指す。
また、掘削腕15、15の内面16a及び外面16に隣接する面(基部2の第2側面4と同じ方向にある面)を一側面17とし、他側(基部2の第1側面4aと同じ方向にある面)を他側面18とする。一側面17は、正回転で揺動する際に前面側に向く側面で、他側面18は正回転で揺動する際に後面側に向く側面である。
【0027】
(4) また、掘削ロッドの基部20の上端に上方に突出する操作突部26を形成する。掘削腕15、15が正回転して揺動して、大径掘削する際に、操作突部26が当たり最大揺動を規制するストッパー32をヘッド本体1の基部2の第1側面3、3aに夫々突設する。また、この際に、掘削腕15、15の中間部の他側面18が当たるストッパー33、33を膨出部6に突設する。
また、ヘッド本体1の基部2の第2面4、4a(水平軸12、12を設けていない面)に、板状の撹拌板34、34を斜めに突設する。
【0028】
以上のようにして、この発明の掘削ヘッド30を構成する(図1、図2)。この掘削ヘッド30において、以下の値は、事前に地盤調査した際に、判明した最大粒径の礫類の径Dより大きくなるように設定する。
ア.固定掘削刃10の高さH及び間隔W
イ.腕掘削刃24の高さH及び間隔W
ウ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の水平方向の距離L
エ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の鉛直方向の距離h
【0029】
2.杭穴施工方法
【0030】
(1) 施工現場内又は施工現場周辺で、予め地盤調査をする。この場合、通常のボーリング調査以外に、礫など異物が存在するか否か、また存在する場合にはその異物の径を調査する。そして、判明した異物の最大径をDとして設定する。この場合、異物の存在は、全ての地層で調査することが望ましいが、少なくとも「層が厚い地層(例えば、2m程度より厚い層)」及び/又は「掘削が困難と考えられる地層(N値が比較的大きい層、特にN値≧20)」で、調査する。
【0031】
(2) 前記構成の掘削ヘッド30で、
ア.固定掘削刃11の高さH及び間隔W>D
イ.腕掘削刃24の高さH及び間隔W>D
ウ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の水平方向の距離L>D
エ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10先端11の鉛直方向の距離h>D
となるように、高さH及び間隔W、高さH及び間隔W、水平距離h、鉛直距離hの各寸法を調節した掘削ヘッド30を用意する。
例えば、D=10cm の場合、
ア.固定掘削刃11の高さH=15cm、間隔W=15cm
イ.腕掘削刃24の高さH=15cm、間隔W=15cm
ウ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の水平方向の距離L=15cm
エ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10先端11の鉛直方向の距離h=15cm
と設定した掘削ヘッド30を使用する。
【0032】
(3) 続いて、通常の杭穴掘削と同様に、掘削ロッド40の下端部に掘削ロッド30の連結軸部5を差込んで連結して、掘削ロッド40を正回転する。掘削腕15の腕掘削刃10の先端が地面に当たり(図1(a)、図2)、掘削を開始するに従って、土圧で掘削腕15が開き、所定径DDで杭穴軸部を掘削する(図3(a)、図4)。この場合、腕掘削刃24が杭穴の底の周囲と側壁とを削り、固定掘削刃10が杭穴の底の中心付近を削る。従って、地層から径D程度の異物(礫など)が存在した場合であっても、固定掘削刃10、10の間、腕掘削刃24、24の間、あるいは固定掘削刃10と腕掘削刃24の間に挟まることなく、効率良く杭穴掘削ができる。
また、この状態の掘削腕15、15の揺動角度は、ヘッド本体1又は掘削腕15に設けたストッパー(図示していない)により維持される。
【0033】
(4) 続いて、杭穴の軸部の掘削に続いて、同様に、正回転して、更に、ストッパー32、33に掘削腕15及び操作突部26が当たるまで、掘削腕15を揺動する。この状態で、所定径DDで杭穴拡底部を掘削する(図5(a)(b)、図6)。この場合、同様に、腕掘削刃24が杭穴の底の周囲と側壁とを削り、固定掘削刃10が杭穴の底の中心付近を削る。従って、地層から径D程度の異物が存在した場合であっても、固定掘削刃10、10の間、腕掘削刃24、24の間、あるいは固定掘削刃10と腕掘削刃24の間に挟まることなく、効率良く杭穴掘削ができる。
【0034】
(5) また、異物は、掘削泥土などの杭穴充填物を、注入したセメントミルクと置換した際に、他の杭穴充填物とともに、掘削腕15、15の先端部22、撹拌板34、34を介して、上方に上げられ地上に排土される。残った異物は注入したセメントミルクと混練されてソイルセメントとなる。
【0035】
(6) なお、掘削ロッド40は正回転して、小径掘削及び大径掘削したが、逆回転して他側に掘削腕15、15を揺動させて、掘削することもできる(図示していない)。
【0036】
3.他の実施例
【0037】
前記実施例において、
ア.固定掘削刃11の高さH及び間隔W>D
イ.腕掘削刃24の高さH及び間隔W>D
ウ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の水平方向の距離L>D
エ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10先端11の鉛直方向の距離h>D
とすることが望ましいが、少なくともア.又はイ.の少なくとも1つを満たしていることが必要である。
ア.固定掘削刃11の高さH及び間隔W>D
イ.腕掘削刃24の高さH及び間隔W>D
特に、
ウ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11の水平方向の距離L>D
エ.腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10先端11の鉛直方向の距離h>D
の条件は、掘削開始直後に重要な条件であるが、掘削を進めると掘削腕24が揺動して、「腕掘削刃24の先端25と固定掘削刃10の先端11」とは相対的に離れるので、前記条件は必ず充たした状態となる。
【符号の説明】
【0038】
1 ヘッド本体
2 ヘッド本体の基部
2a 基部の上端
3、3a 基部の第1側面
4、4a 基部の第2側面
5 連結軸部
6 ヘッド本体の膨出部
6a 膨出部の下面
6b 膨出部の下面で両端部
7、7a 膨出部の第1側面
8、8a 膨出部の第2側面
10 固定掘削刃
11 固定掘削刃の先端
12 水平軸
13 吐出口
15 掘削腕
15a 掘削腕の下端
16 掘削腕の外面
16a 掘削腕の内面
17 掘削腕の一側面
18 掘削腕の他側面
20 掘削腕の基部
21 掘削腕の中間部
22 掘削腕の先端部
24 腕掘削刃
25 腕掘削刃の先端
30 掘削ヘッド
32、33 ストッパー
34 撹拌板
40 掘削ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ロッドの下端に連結する連結部を有するヘッド本体に設けた水平軸に、掘削腕を揺動自在に取り付けなり、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(a) 前記ヘッド本体の下面に下方に向けて、長さHの固定掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(b) 前記掘削腕の下端に、下方に向けて、長さHの腕掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(c) 前記腕掘削刃は、鉛直に対して先端が外方を向くように斜めに配置され、前記腕掘削刃の先端と、前記固定掘削刃の先端との距離で、前記水平軸方向の距離をL とする。
(d) 前記固定掘削刃の下端から、前記腕掘削刃の先端までの距離をhとする。
(e) 掘削予定の地盤の土質調査により判明した最大粒径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、以下の「ア.の条件」及び/又は「イ.の条件」を満たす。
ア.固定掘削刃の高さH及び間隔W>最大粒径D
イ.腕掘削刃の高さH及び間隔W>最大粒径D
【請求項2】
掘削予定の地盤の土質調査により判明した最大粒径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、前記「ア.の条件」及び「イ.の条件」を満たし、かつ以下の条件以下を満たすことを特徴とする請求項1記載の杭穴掘削ヘッド。
ウ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の水平方向の距離L>最大粒径D
エ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の鉛直方向の距離h>最大粒径D
【請求項3】
以下(1)〜(5)の手順で、杭穴を掘削することを特徴とする杭穴掘削方法。
(1) 掘削ロッドの下端に連結する連結部を有するヘッド本体に設けた水平軸に、掘削腕を揺動自在に取り付けなり、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドを用意する。
(a) 前記ヘッド本体の下面に下方に向けて、長さHの固定掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(b) 前記掘削腕の下端に、下方に向けて、長さHの腕掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(c) 前記腕掘削刃は、鉛直に対して先端が外方を向くように斜めに配置され、前記腕掘削刃の先端と、前記固定掘削刃の先端との距離で、前記水平軸方向の距離をL とする。
(d) 前記固定掘削刃の下端から、前記腕掘削刃の先端までの距離をhとする。
(2) 予め、掘削予定の地盤の土質調査により最大粒径Dを決定する。
(3) 前記最大外径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、以下の「ア.の条件」及び/又は「イ.の条件」を満たすように、前記掘削ヘッドを構成する。
ア.固定掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
イ.腕掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
(4) 地上から、前記選択した掘削ヘッドを回転しながら地盤を掘削する。
(5) 掘削途中で、外径Dの礫類が生じた場合には、該礫類を、杭穴底で転がしながら、前記掘削ヘッドで掘削する。
【請求項4】
以下(1)〜(5)の手順で、杭穴を掘削することを特徴とする杭穴掘削方法。
(1) 掘削ロッドの下端に連結する連結部を有するヘッド本体に設けた水平軸に、掘削腕を揺動自在に取り付けなり、以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドを用意する。
(a) 前記ヘッド本体の下面に下方に向けて、長さHの固定掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(b) 前記掘削腕の下端に、下方に向けて、長さHの腕掘削刃を、所定間隔Wを空けて複数個固定する。
(c) 前記腕掘削刃は、鉛直に対して先端が外方を向くように斜めに配置され、前記腕掘削刃の先端と、前記固定掘削刃の先端との距離で、前記水平軸方向の距離をL とする。
(d) 前記固定掘削刃の下端から、前記腕掘削刃の先端までの距離をhとする。
(2) 予め、掘削予定の地盤の土質調査により最大粒径Dを決定する。
(3) 前記最大外径Dに対して、前記掘削ロッドが回転しない状態で、以下の「ア.の条件」乃至「エ.の条件」を満たすように、前記掘削ヘッドを構成する。
ア.固定掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
イ.腕掘削刃の長さ及び間隔W>最大粒径D
ウ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の水平方向の距離L>最大粒径D
エ.腕掘削刃先端と固定掘削刃先端の鉛直方向の距離h>最大粒径D
(4) 地上から、前記選択した掘削ヘッドを回転しながら地盤を掘削する。
(5) 掘削途中で、外径Dの礫類が生じた場合には、該礫類を、杭穴底で転がしながら、前記掘削ヘッドで掘削する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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